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明細書 :分岐器用潤滑剤組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4926368号 (P4926368)
公開番号 特開2004-292732 (P2004-292732A)
登録日 平成24年2月17日(2012.2.17)
発行日 平成24年5月9日(2012.5.9)
公開日 平成16年10月21日(2004.10.21)
発明の名称または考案の名称 分岐器用潤滑剤組成物
国際特許分類 C10M 169/04        (2006.01)
B61K   3/00        (2006.01)
C10M 101/02        (2006.01)
C10M 105/04        (2006.01)
C10M 105/18        (2006.01)
C10M 105/38        (2006.01)
C10M 107/08        (2006.01)
C10M 107/50        (2006.01)
C10M 145/14        (2006.01)
C10N  20/02        (2006.01)
C10N  30/06        (2006.01)
C10N  30/08        (2006.01)
C10N  40/00        (2006.01)
C10N  40/02        (2006.01)
FI C10M 169/04 ZAB
B61K 3/00
C10M 101/02
C10M 105/04
C10M 105/18
C10M 105/38
C10M 107/08
C10M 107/50
C10M 145/14
C10N 20:02
C10N 30:06
C10N 30:08
C10N 40:00 Z
C10N 40:02
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2003-089939 (P2003-089939)
出願日 平成15年3月28日(2003.3.28)
審判番号 不服 2008-032139(P2008-032139/J1)
審査請求日 平成17年8月12日(2005.8.12)
審判請求日 平成20年12月18日(2008.12.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000162423
【氏名又は名称】協同油脂株式会社
発明者または考案者 【氏名】曽根 康友
【氏名】鈴木 政治
【氏名】近藤 信也
【氏名】木村 浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
参考文献・文献 特開2002-348586(JP,A)
特開平8-209179(JP,A)
特開昭63-280797(JP,A)
特開2001-234183(JP,A)
特開平6-228530(JP,A)
特表平11-507678(JP,A)
日本潤滑学会編,潤滑ハンドブック,株式会社養賢堂,1975年6月1日,第3版,316頁
調査した分野 C10M101/00-177/00
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄道用分岐器のトングレールが接触移動する床板に自動給油器によって給油される基油と増粘剤とを含有し、増ちょう剤を含有しない分岐器用潤滑剤組成物であって、
前記基油として植物油を包含しないポリオールエステル油を50~90重量%含み、前記増粘剤としてポリメタクリレートを2025重量%含むこと、
を特徴とする分岐器用潤滑剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の分岐器用潤滑剤組成物において、
前記基油として鉱油、合成炭化水素油、ポリフェニルエーテル、シリコーン油を1種又は2種以上含むこと、
を特徴とする分岐器用潤滑剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の分岐器用潤滑剤組成物において、
前記ポリメタクリレートの動粘度は、100°Cにおいて800mm2 /s以上であること、
を特徴とする分岐器用潤滑剤組成物。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄道用分岐器のトングレールが接触移動する床板に自動給油器によって給油される基油と増粘剤とを含有し、増ちょう剤を含有しない分岐器用潤滑剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄道用分岐器のトングレールが転換するときに接触移動する床板に、駅作業者や保線作業者によって潤滑剤が塗布されていた。しかし、交通量の増大によって駅作業者や保線作業者による床板への潤滑剤の塗布が困難になり、床板に潤滑油を自動的に給油する自動給油器が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特許第2525137号公報(段落番号0017~0019、図5及び図6)
【0004】
図1は、従来の自動給油器の外観図である。なお、図1では、トングレール、基本レール及び自動給油器の一方のみを図示し他方については図示を省略している。
図1に示す鉄道用分岐器1は、一つの軌道を二つ以上の軌道に分ける装置である。鉄道用分岐器1は、図1に示すように、矢印方向に移動して転換するトングレール2と、このトングレール2の先端部が密着及び分離する基本レール3と、トングレール2を転換自在に支持する床板4などを備えている。自動給油器5は、鉄道用分岐器1のトングレール2が接触移動する床板4に自動的に潤滑油を供給する装置である。自動給油器5は、収容部6と、供給ローラ7と、傾斜板8と、塗布ローラ9などを備えている。収容部6は、潤滑油を収容する油槽であり、供給ローラ7は収容部6から傾斜板8に潤滑油を供給する回転体である。供給ローラ7は、外周面に潤滑油を受ける溝部7aを有し、トングレール2の転換動作に応じて回転する。傾斜板8は、供給ローラ7の溝部7aから滴下した潤滑油を塗布ローラ9に供給する油受け板であり、塗布ローラ9は傾斜板8から滴下した潤滑油を床板4に塗布する回転体である。
【0005】
次に、この従来の自動給油器の動作を説明する。
トングレール2がA1 ,A2 方向に転換するとこのトングレール2と一体となって自動給油器5がA1 ,A2 方向に移動し、塗布ローラ9が床板4と回転接触する。その結果、塗布ローラ9がB1 ,B2 方向に回転して、この塗布ローラ9の外周面に付着した潤滑油が床板4上に塗布される。塗布ローラ9がB1 ,B2 方向に回転すると、この供給ローラ7と一体となって回転するギヤと、塗布ローラ9と一体となって回転するギヤの双方と噛み合う1枚のギヤによって、塗布ローラ9の回転が供給ローラ7に減速されて伝達される。その結果、供給ローラ7がC1 ,C2 方向に回転して収容部6から溝部7aに潤滑油が受け取られ、この溝部7a内の潤滑油が傾斜板8上に供給される。
【0006】
このような従来の自動給油器5では、夏季には直射日光の影響により周囲の温度が60°C以上になると潤滑剤が劣化を起こしやすく、冬季には低温に曝されると潤滑剤が硬化して給油不良を起こすことが懸念される。また、従来の鉄道用分岐器1では、床板4に鉱油が使用されていたが、この鉱油は生分解性が低く、降雨時に雨水とともに周辺に流出して土壌汚染や水質汚染を起こすおそれがあった。このため、鉄道用分岐器1の床板4に存在する潤滑剤には、生分解性を有することが要望されていた。このような潤滑性及び付着性を有する潤滑剤として、基油として植物油を含み、増ちょう剤として脂肪酸の金属塩からなる金属石ケンを含み、増粘剤を含む鉄道用生分解性グリース組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献2】
特開平11-228983号公報(段落番号0006~0008)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の鉄道用生分解性グリース組成物では、自動給油器5内に長期間保存されるとグリースが固化して流動性が不十分になり、その結果潤滑が不十分になるという問題があった。このため、鉄道用分岐器1が転換不良を起こすおそれがあった。
【0009】
この発明の課題は、潤滑性を有し、広範囲の温度条件において安定であり、適度な付着性を付与することができる分岐器用潤滑剤組成物を提供することである。
【0010】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、鉄道用分岐器(1)のトングレール(2)が接触移動する床板(4)に自動給油器(5)によって給油される基油と増粘剤とを含有し、増ちょう剤を含有しない分岐器用潤滑剤組成物であって、前記基油として植物油を包含しないポリオールエステル油を50~90重量%含み、前記増粘剤としてポリメタクリレートを2025重量%含むことを特徴とする分岐器用潤滑剤組成物である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の分岐器用潤滑剤組成物において、前記基油として鉱油、合成炭化水素油、ポリフェニルエーテル、シリコーン油を1種又は2種以上含むことを特徴とする分岐器用潤滑剤組成物である。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の分岐器用潤滑剤組成物において、前記ポリメタクリレートの動粘度は、100°Cにおいて800mm2 /s以上であることを特徴とする分岐器用潤滑剤組成物である。
【0017】
【発明の実施の形態】
この発明の実施形態に係る潤滑剤組成物は、基油と増粘剤とを含有する組成物であり、基油としてエステル油を含み、増粘剤としてポリマーを含む。
【0018】
基油は、エステル油であり生分解性が高い成分である。エステル油としては付着性の観点から高粘度を有することが望ましく、植物油若しくは特定のアルコール成分と酸成分とをエステル化することにより調製されるポリオールエステル化合物である。植物油は、生分解性が高いものが好ましい。このような植物油としては、例えば、菜種油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、コーン油が挙げられる。
【0019】
ポリオールエステルにおけるアルコール成分としては、高粘度特性、熱安定性を有するために3価以上のアルコールを使用することが望ましく、具体例としては、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトールが挙げられ、ペンタエリスリトールが最も好ましい。酸成分としては、通常、飽和脂肪族モノカルボン酸を使用する。具体的には、n-ペンタン酸、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、n-ノナン酸、ラウリン酸、2-エチルヘキサン酸、2-メチルブタン酸、3-エチルペンタン酸、3-メチルヘキサン酸、3-メチルブタン酸、4-エチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、カプリル酸、2-エチルブタン酸、2-エチルペンタン酸、3,5-ジメチルヘキサン酸、2,2-ジメチルへキサン酸、2-メチルヘプタン酸、3-メチルへプタン酸、4-メチルへプタン酸、2-プロピルペンタン酸、3,4-ジメチルヘキサン酸、i-ヘプタン酸、i-オクタン酸、i-ノナン酸が挙げられる。上記の飽和脂肪族モノカルボン酸は、単独で又は2種類以上混合して用いられる。
【0020】
この発明の実施形態に係る潤滑剤は、エステル油以外にその性能を低下させない範囲で他の潤滑剤基油を混合することもできる。潤滑剤基油としては、例えば、鉱油、合成炭化水素油、ポリフェニルエーテル、シリコーン油などが挙げられ、これらを1種又は2種以上を混合することが可能である。特に、生分解性を損なわない範囲で入手が容易で低コストである鉱油をエステル油に混合することによって、熱安定性を向上させることができる。
【0021】
増粘剤は、基油に付着性及び粘着性を付与する成分(付着性向上剤)である。増粘剤としては、ポリメタクリレートである。ポリメタクリレートは、メタクリル酸メチルなどを重合して得られる高分子で、メタクリル樹脂とも呼ばれる。ポリメタクリレートの動粘度は、100°Cにおいて800mm2/s以上であることが必要である。増粘剤は、基油であるエステル油の生分解性を損なうことなく適当な付着性を確保する観点から、5~25%程度含むことが適当である。
【0022】
この発明の実施形態に係る潤滑剤は、その性能を向上させるために、酸化防止剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、金属不活性剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤などの添加剤の1種又は2種以上を適宜配合することも可能である。
【0023】
この発明の実施形態に係る潤滑剤組成物には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、潤滑剤組成物が基油としてエステル油を含むため、自然環境において微生物などによりH2 ,O2 ,CO2 ,バイオマスなどの自然的副産物に分解される性質(生分解性)に優れ、自然環境汚染などを防止することができる。その結果、図1に示す鉄道用分岐器1の床板4にこの潤滑剤組成物を給油した場合に、降雨時に雨水とともに周辺に流出しても土壌汚染や水質汚染を起こしにくい。また、この実施形態では、潤滑剤組成物が増粘剤としてポリマーを含むため、自動給油器5内で長期間保存されても固化が起こり難く、適度な潤滑性及び付着性を付与させることができる。その結果、鉄道用分岐器1にスプリンクラによって散水して融雪した場合に、潤滑剤組成物を流出し難くすることができる。
【0024】
(2) この実施形態では、基油としてポリオールエステル油を含むため、夏季の直射日光によって自動給油器5が高温に曝されたり、冬季には低温に曝されたりしても、高粘度を維持し付着性を向上させることができる。また、この実施形態では、増粘剤としてポリメタクリレートを含むため、高温でも粘着性を維持させることができる。
【0025】
【実施例】
次に、この発明の実施例について説明する。
以下では、実施例1,2及び比較例1~4の組成及び性状を表1に示す。
【0026】
【表1】
JP0004926368B2_000002t.gif【0027】
表1に示す組成は、重量%であり、ポリオールエステルの動粘度は40°Cにおいて30.8mm2/sであり、菜種油の動粘度は40°Cにおいて34.9mm2/sであり、精製鉱油の動粘度は40°Cにおいて153.0mm2/sである。増粘剤は、100°Cにおいて動粘度が1000mm2/sであるポリメタクリレートである。増ちょう剤は、比較例1,4が12-ヒドロキシステアリン酸リチウムであり、比較例2,3が12-ヒドロキシステアリン酸カルシウムである。酸化防止剤は、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールであり、防錆剤はジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩であり、摩耗防止剤はイオン-リン系極圧剤である。
【0028】
(評価試験方法)
表1に示す性状は、ウベローデ粘度計による試験温度条件(40°C)における動粘度の測定結果である。高温放置試験は、100mlガラスビーカにサンプル50gを秤量し、60°Cの恒温槽において300時間暴露後、動粘度の変化を確認した結果である。生分解性は、OECD 301C法による分解度(%)である。
【0029】
(評価結果)
表1に示すように、基油としてエステル油を使用し、増粘剤としてポリメタクリレートを使用した実施例1,2のサンプルは、動粘度も高く、高温放置後の粘度の変化も少なく生分解性も良好である。これに対して、増ちょう剤を使用して付着性を向上させた比較例1~4のサンプルは、高温放置後の粘度変化が大きい。その結果、比較例1については、動粘度がマイナスの大きな値を示すため自動給油器5内に放置された場合には外部に漏れ出し、比較例2~4については動粘度がプラスの大きな値を示すため自動給油器5内に放置された場合には給油不良を起こすことが予測される。以上の結果より、実施例1,2は、生分解性が高く、付着性を有し、長期間の保存においても初期特性を失わない潤滑剤であることが確認された。
【0030】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。この実施形態では、潤滑剤組成物を自動給油器5に使用する場合を例に挙げて説明したがこれに限定するものではない。例えば、固定体とこの固定体に対して接触移動する移動体とを備える装置であって、この固定体とこの移動体との間に潤滑剤組成物を供給することもできる。また、この実施形態では分岐器用潤滑剤組成物を例に挙げて説明したがこれに限定するものではなく、電車線と集電装置との接触部やレールと車輪との接触部などの鉄道用潤滑剤組成物としてもこの発明を適用することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によると、潤滑性を有し、広範囲の温度条件において安定であり、適度な付着性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の自動給油器の外観図である。
【符号の説明】
1 鉄道用分岐器
2 トングレール
3 基本レール
4 床板
5 自動給油器
6 収容部
7 供給ローラ
7a 溝部
8 傾斜板
9 塗布ローラ
図面
【図1】
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