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明細書 :レール締結装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3974546号 (P3974546)
公開番号 特開2004-300691 (P2004-300691A)
登録日 平成19年6月22日(2007.6.22)
発行日 平成19年9月12日(2007.9.12)
公開日 平成16年10月28日(2004.10.28)
発明の名称または考案の名称 レール締結装置
国際特許分類 E01B  29/28        (2006.01)
E01B   9/30        (2006.01)
FI E01B 29/28
E01B 9/30
請求項の数または発明の数 6
全頁数 17
出願番号 特願2003-092940 (P2003-092940)
出願日 平成15年3月28日(2003.3.28)
審査請求日 平成17年6月28日(2005.6.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】阿部 則次
【氏名】若月 修
【氏名】田淵 剛
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】田畑 覚士
参考文献・文献 特開2001-081704(JP,A)
特開平03-157510(JP,A)
実開昭63-086103(JP,U)
特開2002-168224(JP,A)
実開平05-094301(JP,U)
実開平03-025601(JP,U)
実開昭53-128604(JP,U)
実開昭51-056462(JP,U)
実開昭60-154402(JP,U)
調査した分野 E01B 29/28
E01B 9/30
特許請求の範囲 【請求項1】
レールを支持体に締結するレール締結装置であって、
前記レールを押さえ付けて締結する締結ばねと、
前記締結ばねの長孔を貫通する締結ボルトと、
前記締結ばねと前記締結ボルトとの間に挟み込まれる座金とを備え、
前記座金は、前記締結ボルトの球面座と接触する球面と、前記締結ばねの長孔と嵌合してこの座金の回転を防止する回転防止部とを備え、
前記回転防止部と前記締結ばねの長孔との間には、レールの上下方向及び左右方向の位置を調整可能なように、この締結ばねの長孔の長さ方向に隙間が形成されていること、
を特徴とするレール締結装置。
【請求項2】
請求項に記載のレール締結装置において、
前記締結ボルト及び前記座金は、この締結ボルトの球面座の円周部とこの座金の球面の円周部とが互いに接触すること、
を特徴とするレール締結装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレール締結装置において、
前記締結ボルトの球面座及び前記座金の球面は、一方が凸状の球面を有し、他方がこの凸状の球面と接触する凹状の球面を有すること、
を特徴とするレール締結装置。
【請求項4】
レールを支持体に締結するレール締結装置であって、
前記レールを押さえ付けて締結する締結ばねと、
前記締結ばねの長孔を貫通する締結ボルトと、
前記締結ボルトに装着される締結ナットと、
前記締結ばねと前記締結ナットとの間に挟み込まれる座金とを備え、
前記締結ボルトは、前記締結ばねの長孔と嵌合してこの締結ボルトの回転を防止するボルト側回転防止部を備え、
前記座金は、前記締結ナットの球面座と接触する球面と、前記締結ばねの長孔と嵌合してこの座金の回転を防止する座金側回転防止部とを備え、
前記ボルト側回転防止部と前記締結ばねの長孔との間には、レールの上下方向及び左右方向の位置を調整可能なように、この締結ばねの長孔の長さ方向に隙間が形成されており、
前記座金側回転防止部と前記締結ばねの長孔との間には、レールの上下方向及び左右方向の位置を調整可能なように、この締結ばねの長孔の長さ方向に隙間が形成されていること、
を特徴とするレール締結装置。
【請求項5】
請求項に記載のレール締結装置において、
前記締結ナット及び前記座金は、この締結ナットの球面座の円周部とこの座金の球面の円周部とが互いに接触すること、
を特徴とするレール締結装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項に記載のレール締結装置において、
前記締結ナットの球面座及び前記座金の球面は、一方が凸状の球面を有し、他方がこの凸状の球面と接触する凹状の球面を有すること、
を特徴とするレール締結装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、レールを支持体に締結するレール締結装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
(従来技術1)
図17は、従来のレール締結装置(従来技術1)の平面図である。図18は、従来のレール締結装置(従来技術1)の正面図である。図19は、従来のレール締結装置(従来技術1)の高さ調整後の状態を示す正面図である。
図17及び図18に示す従来のレール締結装置(従来技術1)103は、軌道パッド104と、調節パッキン105と、締結ばね107と、ばね受台108と、埋込栓109と、締結ボルト110と、座金111a,111bと、絶縁カラー111cとを備える直結4形のレール締結装置である。
【0003】
この従来技術1では、路盤コンクリートの沈下などによってレール101が上下方向に変位する軌道狂いが発生したときに、図19に示すように調節パッキン105の厚みを調節してこの軌道狂いが修正される。また、この従来技術1では、レール101が長手方向と直交する方向(左右方向)に変位する軌道狂いが発生したときに、厚みの異なる左右のばね受台108の左右を入れ替えたり、くさび状のばね受台108の差込量を変化させたりしてこの軌道狂いが修正される。
【0004】
(従来技術2)
図20は、従来のレール締結装置(従来技術2)の平面図である。図21は、従来のレール締結装置(従来技術2)の正面図である。
図20及び図21に示す従来のレール締結装置(従来技術2)203は、鋼板204a付きの軌道パッド204と、調節パッキン205と、タイプレート206と、締結ばね207と、調整鋼板208と、絶縁板209と、座金211aと、締結ボルト212aと、締結ナット213aと、ばね座金211bと、平座金211c,211dと、絶縁カラー211eと、カバープレート211fと、Tボルト212bと、締結ナット213bとを備える直結8形のタイプレート式レール締結装置である。この従来技術2では、レール201の左右方向の調整はタイプレート206を左右に調整(±10mm)可能であり、上下方向の調整は調整パッキン205で行い(10mm)、さらにタイプレート206の下に調整鋼板208を挿入することで、調整量(10~30mm)を大きくすることができる。
【0005】
(従来技術3)
図22は、従来のレール締結装置(従来技術3)の高さ調整後の状態を示す正面図である。なお、図17~図21に示す部分と同一の部分については、対応する番号を付して詳細な説明を省略する。
図22に示す従来のレール締結装置(従来技術3)303は、締結ばね307と締結ナット313との間に挟み込まれる補助ばね311を備えるタイプレート式レール締結装置である(例えば、特許文献1参照)。この補助ばね311は、高さの異なる二つの脚部311a,311bを備えている。この従来技術3では、補助ばね311を水平方向にスライドさせて締結ばね307と脚部311a,311bとが接する位置を調節したり、脚部311a,311bが入れ替わるように補助ばね311の姿勢を左右で変化させたりすることができる。その結果、締結ばね307の傾斜角度に応じて補助ばね311が水平になるようにこの補助ばね311を締結ばね307上に位置決めして、補助ばね311と締結ナット313とを密着させることができる。
【0006】
【特許文献1】
特開2001-81704号公報(段落番号0017~0018、図1及び図2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術1は、上下方向の調節量が0~10mmであり、左右方向の調節量が-6~6mmであるため、レール101の調整量を大きくすることができないという問題があった。また、この従来技術1は、図19に示すように、締結ばね107の姿勢が変化して傾きが大きくなると、座金111bと締結ばね107との間に隙間が生じてこれらが完全に密着しないため、締結ボルト110と締結ばね107との間の締結力が不均一になる問題があった。
【0008】
従来技術2は、従来技術1に比べて、レール201の上下方向及び左右方向の調整量を大きくすることができる。しかし、この従来技術2では、従来技術1と同様に、締結ばね207の姿勢が変化して傾きが大きくなると、座金211aと締結ばね207との間に隙間が生じてしまう問題があった。また、従来技術2は、上下方向の調整量を大きくするために使用されるタイプレート206の材料コストが高価であり、締結装置を構成する部品数が多くなり組立作業に手間がかかるという問題があった。
【0009】
従来技術3は、従来技術1,2と異なり、締結ばね307の姿勢が変化しても補助ばね311と締結ナット313とを略均一に密着させることができる。しかし、この従来技術3は、従来技術2と同様にタイプレート306の材料コストが高価であり、補助ばね311を水平にするための位置決め作業が必要になるため、組立作業に手間がかかるという問題があった。
【0010】
この発明の課題は、低コストで作業性を向上させることができるレール締結装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図1~図4及び図14~図16に示すように、レール(1)を支持体(2)に締結するレール締結装置であって、前記レールを押さえ付けて締結する締結ばね(7)と、前記締結ばねの長孔(7g)を貫通する締結ボルト(10;18)と、前記締結ばねと前記締結ボルトとの間に挟み込まれる座金(11;19)とを備え、前記座金は、前記締結ボルトの球面座(10b;18b)と接触する球面(11b;19b)と、前記締結ばねの長孔と嵌合してこの座金の回転を防止する回転防止部(11c;19c)とを備え、前記回転防止部と前記締結ばねの長孔との間には、レールの上下方向及び左右方向の位置を調整可能なように、この締結ばねの長孔の長さ方向に隙間が形成されていることを特徴とするレール締結装置(3)である。
【0012】
請求項2の発明は、請求項に記載のレール締結装置において、図3及び図15に示すように、前記締結ボルト及び前記座金は、この締結ボルトの球面座の円周部(10d;18d)とこの座金の球面の円周部(11d;19d)とが互いに接触することを特徴とするレール締結装置である。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のレール締結装置において、前記締結ボルトの球面座及び前記座金の球面は、一方が凸状の球面を有し、他方がこの凸状の球面と接触する凹状の球面を有することを特徴とするレール締結装置である。
【0014】
請求項4の発明は、図5~図8に示すように、レール(1)を支持体(2)に締結するレール締結装置であって、前記レールを押さえ付けて締結する締結ばね(7)と、前記締結ばねの長孔(7g,7f)を貫通する締結ボルト(12)と、前記締結ボルトに装着される締結ナット(13)と、前記締結ばねと前記締結ナットとの間に挟み込まれる座金(11)とを備え、前記締結ボルトは、前記締結ばねの長孔(7f)と嵌合してこの締結ボルトの回転を防止するボルト側回転防止部(12c)を備え、前記座金は、前記締結ナットの球面座(13b)と接触する球面(11b)と、前記締結ばねの長孔(7g)と嵌合してこの座金の回転を防止する座金側回転防止部(11c)とを備え、前記ボルト側回転防止部と前記締結ばねの長孔との間には、レールの上下方向及び左右方向の位置を調整可能なように、この締結ばねの長孔の長さ方向に隙間が形成されており、前記座金側回転防止部と前記締結ばねの長孔との間には、レールの上下方向及び左右方向の位置を調整可能なように、この締結ばねの長孔の長さ方向に隙間が形成されていることを特徴とするレール締結装置(3)である。
【0015】
請求項5の発明は、請求項に記載のレール締結装置において、図7に示すように、前記締結ナット及び前記座金は、この締結ナットの球面座の円周部(13d)とこの座金の球面の円周部(11d)とが互いに接触することを特徴とするレール締結装置である。
【0016】
請求項6の発明は、請求項4又は請求項に記載のレール締結装置において、前記締結ナットの球面座及び前記座金の球面は、一方が凸状の球面を有し、他方がこの凸状の球面と接触する凹状の球面を有することを特徴とするレール締結装置である。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係るレール締結装置の平面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係るレール締結装置の高さ調整前後の状態を示す正面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係るレール締結装置の締結ボルトと座金との接触状態を示す断面図である。図4は、この発明の第1実施形態に係るレール締結装置の回転防止部の断面図であり、図4(A)は横断面図であり、図4(B)は縦断面図である。なお、図1及び図2では、軌道を構成する一対のレールのうち一方のレールを締結するレール締結装置のみを図示し、他方のレールを締結するレール締結装置については図示を省略する。
【0026】
図1及び図2に示すレール1は、鉄道車両の車輪を支持し案内してこの鉄道車両を走行させる部材である。レール1は、鉄道車両の車輪と接触するレール頭部1aと、支持体2に取り付けられるレール底部1bと、レール頭部1aとレール底部1bとを繋ぐレール腹部1cとから構成されている。支持体2は、レール1を支持する部材である。支持体2は、プレストレスコンクリートまくらぎ(PCまくらぎ)、又はコンクリートスラブなどのコンクリート道床である。支持体2は、凹状の段差部分に所定の傾斜角度で形成されたショルダ部2aと、凹状の平坦部分に形成されたレール座面2bとを備えている。
【0027】
レール締結装置3は、レール1を支持体2に締結する装置である。レール締結装置3は、PCまくらぎやコンクリートスラブなどにレール1を直接締結する直結型レール締結装置であり、列車が通過する際に発生する振動を吸収する緩衝機能を有する。レール締結装置3は、図1及び図2に示すように、軌道パッド4と、調節パッキン5と、高低調整板6と、締結ばね7と、ばね受台8と、埋込栓9と、締結ボルト10と、座金11とを備えている。レール締結装置3は、レール底部1bとレール座面2bとの間に軌道パッド4などを挟み込み、締結ばね7によってレール1を支持体2に締結する二重弾性締結装置である。
【0028】
図2に示す軌道パッド4は、レール1と支持体2との間に挿入する弾性体である。軌道パッド4は、列車が通過する際に発生する衝撃荷重を緩和するとともに、レール1が長手方向に移動するふく進に対する抵抗力を確保するために、レール底部1bとレール座面2bとの間に挟み込まれる加硫ゴム製やウレタン製の板状部材である。軌道パッド4には、レール底部1bと接触する側の表面に鋼板4aが接着され固定されている。軌道パッド4は、支持体2がPCまくらぎや軌道スラブの場合に、これらの表面を保護し電気的に絶縁する機能を有する。
【0029】
調節パッキン5は、レール1と支持体2との間に挿入してレール1の上下位置を調節する部材である。調節パッキン5は、例えば、レール1の高低が調節された後に軌道パッド4と高低調整板6との間の間隙部にシート状の袋を挿入し、この袋に合成樹脂を圧入し硬化させてレール1の高さを任意に修正する可変パッドである。
【0030】
高低調整板6は、レール1と支持体2との間に挿入してレール1の高低の不整を修正する部材である。高低調整板6は、例えば、地盤沈下によってレール1が沈下したときに未沈下の高さに合わせるために、レール座面2bと調節パッキン5との間に挿入されるプラスチック製のはさみ木である。高低調整板6は、各種の厚さのものが用意されており沈下量に応じて挿入される。高低調整板6は、レール座面2b上に設置されており、高低調整板6には貫通孔6aが形成されている。
【0031】
締結ばね7は、レール1を押さえ付けて締結するばねである。締結ばね7は、板状のばね鋼を略U字状に折り曲げて形成した板ばね(主ばね)であり押さえ金(ばねクリップ)として機能する。締結ばね7は、先端部7a,7bと、板状部7c,7dと、屈曲部7eとから構成されている。先端部7a,7bは、レール底部1bの上面を板ばねの弾性力によって押さえ付ける部分であり、先端部7aは先端部がフック状に形成されておりレール底部1bの上面及び側面を押さえ付け、先端部7bは先端部7aを上部側から押さえ付ける。板状部7c,7dは、締結ばね7の板状に形成された平坦な部分であり、板状部7c,7dにはレール1の左右方向における穴径が長い貫通孔(長孔)7f,7gが形成されている。屈曲部7eは、ばね鋼を略U字状に折り曲げて形成した端部である。
【0032】
ばね受台8は、締結ばね7を支持する部材である。ばね受台8は、支持体2のショルダ部2aと締結ばね7の屈曲部7eとの間に挿入されており、図1に示すようにレール1と支持体2とを電気的に絶縁するプラスチック製のくさび状の部材である。ばね受台8は、図2に示すように、締結ばね7の屈曲部7eと密着してこの締結ばね7を支持し、列車が通過する際にレール1の左右方向に発生する横圧力をショルダ部2aに伝達させる。ばね受台8は、ショルダ部2aと屈曲部7eとの間に挿入されたときに、この挿入量を調節することによってレール1の左右方向の位置を調節する。
【0033】
埋込栓9は、締結ボルト10を締結するために支持体2に埋め込まれる部材である。埋込栓9は、レール1と支持体2とを電気的に絶縁する不飽和ポリエステル樹脂製又はナイロン製の受け栓である。埋込栓9の内周部には雌ねじ部9aが形成されている。
【0034】
締結ボルト10は、締結ばね7を締め付ける部材である。締結ボルト10は、雄ねじ部10aと球面部10bとを有し締結ばね7に装着される球座六角ボルトである。雄ねじ部10aは、埋込栓9の雌ねじ部9aと噛み合う部分であり締結ボルト10の先端部に形成されている。図2及び図3に示す球面部10bは、締結ボルト10の球面座でありこの締結ボルト10のフランジ部の座が球面状(凸状の球面)に形成されている。締結ボルト10は、図2に示すように、締結ばね7の貫通孔7f,7g及び高低調整板6の貫通孔6aを貫通して雌ねじ部9aにねじ込まれて固定される。
【0035】
座金11は、締結ボルト10の球面部10bと締結ばね7との間に挟み込まれる部材である。座金11は、図2及び図3に示すように、貫通孔11aと、球面部11bと、回転防止部11cとを有する球面座金である。貫通孔11aは、締結ボルト10が貫通する部分である。球面部11bは、球面部10bと接触する座金11の球面部分であり、球面部10bと接触する側の座金11の表面が球面状(凹状の球面)に形成されている。このように、この第1実施形態では、締結ばね7と締結ボルト10との間に球面部10bとこの球面部10bと接触する球面部11bとを備えている。締結ボルト10及び座金11は、図3に示すように、球面部10bの円周部10dと球面部11bの円周部11dとが互いに接触するように、球面部10bの曲率半径よりも球面部11b曲率半径のほうが僅かに小さく形成されている。この第1実施形態では、締結ボルト10によって座金11を締め付けたときにこれらの間に発生する締付トルクが大きくなり締結ボルト10が緩み難くなるように、締結ボルト10及び座金11の中心軸Oから可能な限り外側に離れた位置に円周部10d,11dを形成することが好ましい。
【0036】
図2及び図4に示す回転防止部11cは、締結ばね7の貫通孔7gと嵌合して座金11の回転を防止する部分である。回転防止部11cは、図4に示すように、球面部11bと対向する側とは反対側の座金11の表面に形成されたリブ状の突起部であり、貫通孔11aを囲むようにこの貫通孔11aを中心に2箇所に形成されている。回転防止部11cの長さは、この回転防止部11cが貫通孔7gと嵌合したときに座金11が回転しないように、レール1の長手方向における貫通孔7gの幅よりも僅かに小さく形成されている。
【0037】
次に、この発明の第1実施形態に係るレール締結装置の作用を説明する。
図2に示すように、レール底部1bとレール座面2bとの間に調節パッキン5を挿入していない状態(図2に示す左側の状態)では、締結ばね7の姿勢が水平であり締結ボルト10の中心軸Oに対して板状部7dが略直交している。この状態では、図3に示すように、締結ボルト10の球面部10bと座金11の球面部11bとが円周部10d,11dにおいて密着している。例えば、地盤沈下によって支持体2が沈下したような場合には、レール底部1bとレール座面2bとの間に調節パッキン5及び高低調整板6を挿入してレール1の高低の不整が修正される。その結果、図2に示すように、締結ばね7の姿勢が変化して締結ボルト10の中心軸Oに対して板状部7dが傾斜し、締結ボルト10の中心軸Oに対して座金11が傾いた状態(図2に示す右側の状態)になる。
【0038】
この状態で、図4に示すように、座金11の回転防止部11cが板状部7dの貫通孔7gに嵌め込まれて、締結ばね7上に座金11が位置決めされ装着される。次に、図2に示すように、座金11の貫通孔11a、板状部7c,7dの貫通孔7f,7g及び高低調整板6の貫通孔6aに締結ボルト10が挿入されて、この締結ボルト10の雄ねじ部10aが埋込栓9の雌ねじ部9aにねじ込まれる。このときに、図4に示すように、座金11の回転防止部11cが板状部7dの貫通孔7gと嵌合しているため、締結ボルト10を回転させて締め付けても板状部7d上で座金11が回転しない。
【0039】
図2に示すように、締結ボルト10には凸状の球面部10bが形成されており、座金11にはこの球面部10bと接触する凹状の球面部11bが形成されている。このため、板状部7d及び座金11が傾いた状態で締結ボルト10を回転させて締結ばね7を締め付けても、円周部10dと円周部11dとが締結ばね7の姿勢に関わらず略均一に接触する。その結果、締結ボルト10によって締結ばね7が適正な締付力によって締め付けられる。締結ボルト10をさらに締め付けて締結ばね7の先端部7a,7bが接触すると締結トルクが上昇し、所定のレール押さえ力によってレール1が支持体2に締結される。
【0040】
この発明の第1実施形態に係るレール締結装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、締結ばね7と締結ボルト10との間に球面部10bとこの球面部10bと接触する球面部11bとを備える。このため、レール1の高さを調整して締結ばね7及び座金11の姿勢が変化しても、球面部10b,11bにおいて締結ボルト10と座金11とを略均一に接触させることができる。その結果、図17~図21に示す従来技術1,2と異なり、略均一な締付力によって締結ボルト10が締結ばね7を締め付けるため、適正な押し付け力によってレール1を支持体2に締結することができる。
【0041】
(2) この第1実施形態では、球面部10bが締結ボルト10の球面座であり、球面部11bが締結ボルト10の球面座と締結ばね7との間に挟み込まれる座金11の球面である。このため、図20~図22に示す従来技術2,3のようなタイプレート206,306や補助ばね311が必要なくなるため、部品数が少なくなって作業性を大幅に改善することができる。また、従来技術2,3とは異なり、高価なタイプレート206,306を使用せずに締結ばね7の姿勢変化のみによって、レール1の上下方向及び左右方向の位置を調整することができる。例えば、このレール締結装置3では、締結ばね7の姿勢変化のみによってレール1の上下方向の調整量を0~20mmにすることができる。また、このレール締結装置3では、レール底部1bとレール座面2bとの間に調節パッキン5及び高低調整板6を挿入することによって、レール1の上下方向の調整量を最大0~55mmにすることができる。さらに、このレール締結装置3では、大小2種類の締結ばね7及び大小2種類のばね受台8の左右を入れ替えることによって、レール1の左右方向の調整量を-10~10mmにすることができる。その結果、新規の軌道敷設時や補修によるレール位置調整時において必要な材料コストを低減することができるとともに、作業性を改善することができる。
【0042】
(3) この第1実施形態では、締結ばね7の貫通孔7gと嵌合して座金11の回転を防止する回転防止部11cをこの座金11が備える。その結果、締結ボルト10を回転して締結ばね7を締め付けるときに、締結ばね7上で座金11が回転するのを防止することができるとともに、締結ボルト10の緩みを防止することができる。
【0043】
(4) この第1実施形態では、締結ボルト10の球面座の円周部10dと座金11の球面の円周部11dとが互いに接触する。このため、図3に示すように、締結ボルト10及び座金11の中心軸Oから円周部10d,11dまでの距離が長くなって、締結ボルト10の締付トルクが大きくなり締結ボルト10の緩むのを防ぐことができる。その結果、列車が通過する際にレール1に作用する横圧力によってレール1が左右方向に変位するのを防ぐことができる。
【0044】
(5) この第1実施形態では、球面部10bが凸状の球面であり、球面部11bが凹状の球面であるため、締結ばね7の姿勢が変化しても球面部10bと球面部11bとを略均一に接触させることができる。
【0045】
(第2実施形態)
図5は、この発明の第2実施形態に係るレール締結装置の平面図である。図6は、この発明の第2実施形態に係るレール締結装置の高さ調整前後の状態を示す正面図である。図7は、この発明の第2実施形態に係るレール締結装置の締結ボルトと座金との接触状態を示す断面図である。図8は、この発明の第2実施形態に係るレール締結装置の回転防止部の断面図であり、図8(A)は横断面図であり、図8(B)は縦断面図である。以下では、図1~図4に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
図5及び図6に示すレール締結装置3は、締結ボルト12と締結ナット13とを備えている。締結ボルト12は、図6に示すように、雄ねじ部12a,12bと回転防止部12cとを有し、締結ばね7に装着される二重ねじボルトである。雄ねじ部12aは、埋込栓9の雌ねじ部9aと噛み合う部分であり締結ボルト12の一方の先端部に形成されており、雄ねじ部12bは締結ナット13の雌ねじ部13aと噛み合う部分であり締結ボルト12の他方の先端部に形成されている。回転防止部12cは、締結ばね7の貫通孔7fと嵌合して締結ボルト12の回転を防止する部分である。回転防止部12cは、図8に示すように、締結ボルト12の略中間部に形成された角型(横断面が四角形)の部分であり、この締結ボルト12が回転しないように締結ばね7の板状部7cの貫通孔7fと嵌合する。
【0047】
締結ナット13は、図5に示す雌ねじ部13aと、図6及び図7に示す球面部13bとを有し、締結ボルト12に装着される球座ナットである。雌ねじ部13aは、締結ボルト12の雄ねじ部12aよりもピッチが小さく形成されている。球面部13bは、締結ナット13の球面座でありこの締結ナット13のフランジ部の座が球面状(凸状の球面)に形成されている。この第2実施形態では、図6及び図7に示すように、締結ナット13の球面部13bと締結ばね7との間に座金11が挟み込まれており、締結ばね7と締結ナット13との間に球面部13bとこの球面部13bと接触する球面部11bとを備えている。締結ナット13及び座金11は、図7に示すように、球面部11bの円周部11dと球面部13bの円周部13dとが互いに接触するように、球面部13bの曲率半径よりも球面部11bの曲率半径のほうが僅かに小さく形成されている。この第2実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0048】
(第3実施形態)
図9は、この発明の第3実施形態に係るレール締結装置の平面図である。図10は、この発明の第3実施形態に係るレール締結装置の高さ調整前後の状態を示す正面図である。
図9及び図10に示すレール締結装置3は、締結ばね14と座金15とを備えている。締結ばね14は、図1~図8に示す締結ばね7と同様な構造であり、以下では締結ばね7と対応する部分については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。締結ばね14には、締結ばね7の平坦面状の板状部7dとは形状の異なる円弧面部14hが形成されており、この円弧面部14hは締結ばね14の円弧面状の表面(凸状の円弧面)である。座金15は、締結ばね14と締結ボルト10との間に挟み込まれており、貫通孔15aと円弧面部15bとを有する円弧座金である。貫通孔15aは、締結ボルト10が貫通する長孔であり、円弧面部15bは締結ばね14の円弧面部14hと接触する側の座金15の表面が円弧面状(凹状の円弧面)に形成されている。この第3実施形態では、締結ばね14と締結ボルト10との間に円弧面部14hとこの円弧面部14hと接触する円弧面部15bとを備えている。このため、この第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、レール1の高さを調整して締結ばね14及び座金15の姿勢が変化しても、円弧面部14h,15bにおいて締結ボルト10と座金15とを略均一に接触させることができる。
【0049】
(第4実施形態)
図11は、この発明の第4実施形態に係るレール締結装置の平面図である。図12は、この発明の第4実施形態に係るレール締結装置の高さ調整前後の状態を示す正面図である。
図11及び図12に示すレール締結装置3は、締結ボルト16と締結ナット17とを備えている。締結ボルト16は、図5及び図6に示す締結ボルト12と同様な構造であり、雄ねじ部16a,16bと回転防止部16cとを有し、締結ばね14に装着される二重ねじボルトである。回転防止部16cは、締結ばね14の貫通孔14fと嵌合してこの締結ボルト16の回転を防止する部分である。締結ナット17は、締結ボルト16の雄ねじ部16aよりもピッチが大きい雌ねじ部17aを有し、締結ボルト16に装着されるフランジナット(フランジ付きナット)である。円弧面部15bは、図12に示すように、締結ばね14と締結ナット17との間に挟み込まれる座金15の円弧面であり、円弧面部14hは締結ばね14の円弧面状の表面である。この第4実施形態には、第3実施形態と同様の効果がある。
【0050】
(第5実施形態)
図13は、この発明の第5実施形態に係るレール締結装置の平面図である。図14は、この発明の第5実施形態に係るレール締結装置の高さ調整前後の状態を示す正面図である。図15は、この発明の第5実施形態に係るレール締結装置の締結ボルトと座金との接触状態を示す断面図である。図16は、この発明の第5実施形態に係るレール締結装置の回転防止部の断面図であり、図16(A)は横断面図であり、図16(B)は縦断面図である。
【0051】
図13及び図14に示すレール締結装置3は、締結ボルト18と座金19とを備えている。締結ボルト18は、図14に示す雄ねじ部18aと、図15に示す球面部18bとを有し、締結ばね7に装着される凹球座六角ボルトである。雄ねじ部18aは、埋込栓9の雌ねじ部9aと噛み合う部分である。球面部18bは、図1及び図2に示す締結ボルト10の球面部10bとは異なり、この締結ボルト18のフランジ部の座が凹状の球面に形成されている。座金19は、図16に示すように、貫通孔19aと、球面部19bと、回転防止部19cとを有する凸球面座金である。球面部19bは、図14及び図15に示すように、球面部18bと接触する座金19の球面部分であり、この球面部18bと接触する側の座金19の表面が球面状(凸状の球面)に形成されている。締結ボルト18及び座金19は、図15に示すように、球面部18bの円周部18dと球面部19bの円周部19dとが互いに接触するように、球面部18bの曲率半径よりも球面部19b曲率半径のほうが僅かに大きく形成されている。この第4実施形態では、第1実施形態と同様に、レール1の高さを調整して締結ばね7及び座金19の姿勢が変化しても、球面部18b,19bにおいて締結ボルト18と座金19とを略均一に接触させることができる。
【0052】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、レール締結装置3として二重弾性締結装置を例に挙げて説明したが、軌道パッド4などを省略して締結ばね7,14によってレール1を支持体2に直接締結する一重締結装置についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、支持体2としてPCまくらぎやコンクリートスラブなどを例に挙げて説明したが、他の構造のまくらぎや道床についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、締結ばね7として板ばねを例に挙げて説明したが、丸棒から形成した線ばねを締結部材によって締結する場合についてもこの発明を適用することができる。
【0053】
(2) この実施形態では、図6及び図7に示すように、球面部13bを凸状に形成し球面部11bを凹状に形成した場合を例に挙げて説明したが、球面部13bを凹状に形成し球面部11bを凸状に形成することもできる。同様に、この実施形態では、図10及び図12に示すように、円弧面部14hを凸状に形成し円弧面部15bを凹状に形成した場合を例に挙げて説明したが、円弧面部14hを凹状に形成し円弧面部15bを凸状に形成することもできる。また、この実施形態では、締結ボルト10,18又は締結ナット13,17と締結ばね7,14との間に球面部10b,11b,13b,18b,19bを備えているが、通常の構造の締結ボルト又は締結ナットと締結ばね7,14との間に凸状の球面部を有する座金と凹状の球面部を有する座金とを2枚挟み込むこともできる。さらに、この実施形態では、地盤沈下によってレール1が沈下した場合を例に挙げて説明したが、凍土区間用のレール締結装置としてこのレール締結装置3を利用することもできる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によると、低コストで作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態に係るレール締結装置の平面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係るレール締結装置の高さ調整前後の状態を示す正面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係るレール締結装置の締結ボルトと座金との接触状態を示す断面図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係るレール締結装置の回転防止部の断面図であり、(A)は横断面図であり、(B)は縦断面図である。
【図5】この発明の第2実施形態に係るレール締結装置の平面図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係るレール締結装置の高さ調整前後の状態を示す正面図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係るレール締結装置の締結ボルトと座金との接触状態を示す断面図である。
【図8】この発明の第2実施形態に係るレール締結装置の回転防止部の断面図であり、(A)は横断面図であり、(B)は縦断面図である。
【図9】この発明の第3実施形態に係るレール締結装置の平面図である。
【図10】この発明の第3実施形態に係るレール締結装置の高さ調整前後の状態を示す正面図である。
【図11】この発明の第4実施形態に係るレール締結装置の平面図である。
【図12】この発明の第4実施形態に係るレール締結装置の高さ調整前後の状態を示す正面図である。
【図13】この発明の第5実施形態に係るレール締結装置の平面図である。
【図14】この発明の第5実施形態に係るレール締結装置の高さ調整前後の状態を示す正面図である。
【図15】この発明の第5実施形態に係るレール締結装置の締結ボルトと座金との接触状態を示す断面図である。
【図16】この発明の第5実施形態に係るレール締結装置の回転防止部の断面図であり、(A)は横断面図であり、(B)は縦断面図である。
【図17】従来のレール締結装置(従来技術1)の平面図である。
【図18】従来のレール締結装置(従来技術1)の正面図である。
【図19】従来のレール締結装置(従来技術1)の高さ調整後の正面図である。
【図20】従来のレール締結装置(従来技術2)の平面図である。
【図21】従来のレール締結装置(従来技術2)の正面図である。
【図22】従来のレール締結装置(従来技術3)の高さ調整後の正面図である。
【符号の説明】
1 レール
2 支持体
3 レール締結装置
4 軌道パッド
5 調節パッキン
6 高低調整板
7 締結ばね
7f,7g 貫通孔
8 ばね受台
9 埋込栓
10 締結ボルト
10b 球面部
10d 円周部
11 座金
11b 球面部
11c 回転防止部
11d 円周部
12 締結ボルト
12c 回転防止部
13 締結ナット
13b 球面部
13d 円周部
14 締結ばね
14f 貫通孔
14h 円弧面部
15 座金
15b 円弧面部
16 締結ボルト
16c 回転防止部
17 締結ナット
18 締結ボルト
18b 球面部
18d 円周部
19 座金
19b 球面部
19c 回転防止部
19d 円周部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21