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明細書 :リチウムイオン電池用正極材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4403279号 (P4403279)
公開番号 特開2007-250203 (P2007-250203A)
登録日 平成21年11月13日(2009.11.13)
発行日 平成22年1月27日(2010.1.27)
公開日 平成19年9月27日(2007.9.27)
発明の名称または考案の名称 リチウムイオン電池用正極材料の製造方法
国際特許分類 H01M   4/58        (2010.01)
H01M  10/0525      (2010.01)
C01B  25/37        (2006.01)
C01B  25/45        (2006.01)
FI H01M 4/58 101
H01M 10/00 103
C01B 25/37 Z
C01B 25/45 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2006-067784 (P2006-067784)
出願日 平成18年3月13日(2006.3.13)
審査請求日 平成21年1月27日(2009.1.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
発明者または考案者 【氏名】大川 浩一
【氏名】矢吹 順平
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100110537、【弁理士】、【氏名又は名称】熊谷 繁
審査官 【審査官】近野 光知
参考文献・文献 国際公開第2005/041327(WO,A1)
国際公開第2004/036671(WO,A1)
国際公開第2004/036672(WO,A1)
調査した分野 H01M 4/02~4/04
H01M 4/36~4/62
H01M 10/00
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄化合物と燐酸化合物及びリチウム化合物、又は鉄化合物と燐酸化合物を出発原料とし、イオン交換水又は純水に前記出発原料を投入し、200kHz-600kHzの超音波を照射することによって特異反応場を生成することにより、LiFePO4,FePO4,Fe3PO7,Li3Fe2(PO43から選ばれた正極材料を合成することを特徴とするリチウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項2】
超音波による請求項1記載のリチウムイオン電池用正極材料の製造方法により合成されたLiFePO4,FePO4,Fe3PO7,Li3Fe2(PO43から選ばれた正極材料を用いたことを特徴とするリチウムイオン電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用正極材料に関し、特にリチウムイオン電池用正極材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の正極活物質としては、LiCoO2が主に用いられ、その優れた性能から携帯電話、パーソナルコンピューター等の小型電子機器の発展に貢献してきた。
しかしながら、最近では中国とのリチウム電池の価格競争、また、携帯電話等の高機能化から、より高性能で低価格のリチウムイオン電池が望まれている。
そこでCoより価格の安価なMnを用いた、LiMn24がLiCoO2と同様に実用化され始めている。
しかしながら、リチウムイオン電池は今後より大きな形態へと変化する可能性がある。
それはハイブリットカー用や風車、太陽光といった自然エネルギー発電の負荷平準化システムがあげられる。
工場における大型タービン駆動用電池としても、大型なリチウムイオン電池の誕生は望ましい。
現在これら大型電池にはニッケル水素電池が主に用いられている。
非水系のリチウムイオン二次電池に比べ安全であるからという理由もあるが、主な理由は価格にあると思われる。
ニッケル水素電池は、頻繁に使用したSOC付近での電圧降下がおこるという、メモリー降下と呼ばれる欠点を持つ。
そのため、電圧による正確な残存容量等が把握しづらい。
リチウムイオン二次電池にはその欠点がない。
また電圧が1本あたり約3.6Vとニッケル水素電池の3倍であるため、大きな仕事をなすために、直列に連結される電池の個数が少なくて済む。
リチウムイオン二次電池の大型化の課題は低価格で高性能な正極材料の誕生である。
注目されている材料がLiFePO4,FePO4であり、鉄を種元素としており、価格面で優位である。
また、電圧も現在のLiCoO2と匹敵する3.4V(v.s.Li+)を有し、理論容量も170mAh/gと大きい。
問題は、LiFePO4は水熱合成、FePO4酸化還元剤、Fe3PO7は高温長時間焼成を必要とし、いずれも手間がかかる。
鉄系正極材料(LiFePO4,FePO4,Fe3PO7,Li3Fe2(PO4)3等)は合成主原料が安価であるが、水熱合成法、酸化還元剤の添加、高温長時間焼成といった合成方法では手間および製造コストがかかってしまう。
出来るだけ簡単な装置で、低温短時間で合成できることが必要である。
【0003】

【特許文献1】特開2005-38772号公報
【非特許文献1】Wang, X. :Yang, X. :Zheng, H. :Jin, J.: Zhang, Z. Synthesis and electrochemical performance of amorphous hydrated iron phosphate nanoparticles. J.Crystal Growth. 274(2005) 214-217
【非特許文献2】Scaccia, S. :Carewska, M. :Wisniewski, P. :Prosini, P. P. Morphological investigation of sub-micron FePO4 and LiFePO4 particles for rechargeable lithium batteries. Materials Research Bulletin. 38(2003)1155-1163
【非特許文献3】Hong, Y. :Park, Y. P. :Ryu, K. S. :Chang, S. H. Crystalline Fe3PO7 as an electrode material for lithium secondary batteries. Solid State Ionics. 136(2003)27-33
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、出発原料に超音波を照射し、化学反応させて鉄含有正極活物質を得るリチウム電池用正極材料の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のリチウム電池用正極材料の製造方法は、鉄化合物と燐酸化合物及びリチウム化合物、又は鉄化合物と燐酸化合物を出発原料とし、イオン交換水又は純水に前記出発原料を投入し、200kHz-600kHzの超音波を照射することによって特異反応場を生成することにより、LiFePO4,FePO4,Fe3PO7,Li3Fe2(PO43から選ばれた正極材料を合成するものである。
本発明のリチウムイオン電池は、超音波によるリチウムイオン電池用正極材料の製造方法により合成されたLiFePO4,FePO4,Fe3PO7,Li3Fe2(PO43から選ばれた正極材料を用いたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のリチウム電池用正極材料の製造方法は、大掛かりな装置が必要なく、容易に正極材料の合成が可能である。
本発明のリチウム電池用正極材料の製造方法は、合成において時間や手順が短縮でき、反応酸化・還元剤の添加が不必要である。
また、均一で微細な結晶が得られる為、放電容量に優れたリチウム2次電池を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のリチウム電池用正極材料の製造方法の実施例について説明するが、本発明はこれらの記述により限定されるものではない。
また、以下の実施例に記載された活物質の出発原料、原料の混合比率、製造方法、正極、負極、電解質、セパレータおよび電池形状などに限定されるものではない。
本実施例は、本発明により合成した活物質を正極に用い、負極には金属リチウムを用いた。
リチウム含有材料、炭素材料を負極に用いてもかまわない。
また、電解質、セパレータの代わりに固体電解質を用いてもかまわない。
本発明のリチウム電池用正極材料は、組成式に鉄Feを含む化合物で、超音波により合成されるものである。
出発原料に超音波を照射し、化学反応させて鉄含有正極活物質を得るものである。
本発明は超音波による電極材料合成手法それにより合成された電極材料、それを用いたリチウムイオン電池である。
超音波発生装置は200kHz-600kHzの高周波で、出力は200W程度を用いる。
定常波を発生させ、その力は溶液を媒体として伝え、原料に照射することにより合成する。
主に3価の鉄を含有する材料を合成するときは大気下で行い、2価の鉄を有する材料はAr等の雰囲気下で合成する。
このように合成された本発明の正極活物質は、均一な微粒子をしており、表面積の増大による電池特性の向上が期待できる。
これは、FePO4等合成に酸化剤が必要なものに関しては、超音波の照射により水がOHラジカルとHラジカルに分かれることから生ずる過酸化水素がゆっくりと発生することにより、局所的な反応を避けられ、偏らない反応がおこり、粒子の均一化につながると考えられる。
超音波を用いることで酸化剤は不要となる。
また、LiFePO4はアルゴン雰囲気下で行い、超音波照射による定常波から水の疎、密部が生まれ、急激な圧力変化による特異反応場のため水溶系で生成が可能となったと考えられる。
Fe3PO7の合成は一般には、まず溶液法でFePO4を合成した後、Fe23を混合し固相法で合成する2段ステップが主であるが、超音波ではFeSO4・7H2O,Fe23,(NH4)2HPO4を出発原料とすることで1ステップの合成が可能である。
この理由もLiFePO4の場合と同様、強力な定常波による高温高圧な特異反応場のためと考えられる。
【実施例1】
【0008】
図1は超音波合成装置の概略図を示し、1は多周波超音波発生装置、2は振動子、3はナス型フラスコ、4は撹拌器、5はガス注入口、6は水槽である。
図2は、本実験条件で純水に超音波を照射した時の、時間に対するpH変化と過酸化水素発生量を示したグラフ図である。
FePO4の超音波合成は出発原料にFeSO4・7H2O,(NH4)2HPO4を用い、モル比が1:1になるよう秤量し、ナス型フラスコ3に入れ純水を40ml加えた後、ガス注入口5から空気を注入し、また撹拌器4で攪拌しながら、多周波超音波発生装置1の振動子2により200kHz,200Wの超音波を3時間照射し空気中350度で乾燥させることでアモルファス型のFePO4を得た。
また、空気中700度で3時間乾燥させることで結晶型のFePO4を得た。
図3は、超音波照射により合成したFePO4の各温度、(a)700℃、3時間乾燥、(b)350℃、3時間乾燥、(c)25℃、12時間乾燥におけるX線チャートである。
測定されたX線回折パターン、図3より、結晶の単一相が得られていることがわかった。
【0009】
本発明により得られた活物質を粉砕した粉末、導電助剤、及び結着剤を重量比70:25:5で混合して断面積1cm2の円形型ペレットに成形したものを正極材料とする。
充放電特性の測定は、活物質を測定するために用いた電気化学セルを図4に示す、コインタイプセル法を用いる。
充放電特性を行う際に、電流密度が一定になるように断面積を加工した正極材料(Cathode material)に、集電材としてニッケルメッシュ(Ni mesh)を、この正極材料(Cathode material)と同じ面積に切りとり、正極材料(Cathode material)と重なるようにのせ、加圧し、正極材料(Cathode material)とニッケルメッシュ(Ni mesh)を完全に密着させる。
負極には、金属リチウム箔(Anode of Li metal foil)を正極と同じ面積に切り取って加工したものを用いる。
電解液(Electrolyte)は、炭酸プロピレン(PC)とジメトキシエタン(DME)を体積比で1:1で混合したものに対してLiClO4を1mol/lで溶解させたものを用いる。
図5は、350℃、3時間加熱により合成したアモルファスFePO4を電気化学セルを用いて測定した結果である。
図6は、700℃、3時間加熱により合成した結晶性FePO4を電気化学セルを用いて測定した結果である。
充放電測定は、二端子法にて、2.0-3.9Vの範囲で電流レート2C(電流密度0.5-1mA/cm2)で行う。
また充放電容量は、2.0Vから3.9Vまでにかかる時間(h)に電流(A)をかけた値から求められる。
図7は、本発明により合成した活物質を任意温度で3時間加熱して得た化合物の表面積をBET測定器により測定した結果で、(a)本発明法、(b)従来法による結果を示した。
表1は、本発明と従来法の結晶性FePO4の放電容量を比較したものである。
【0010】
【表1】
JP0004403279B2_000002t.gif

【実施例2】
【0011】
図1は超音波合成装置の概略図を示し、1は多周波超音波発生装置、2は振動子、3はナス型フラスコ、4は撹拌器、5はガス注入口、6は水槽である。
LiFePO4の超音波合成は出発原料にLiOH・H2O,FeSO4・7H2O,(NH4)2HPO4を用い、モル比が2.5:1:1になるよう秤量し、ナス型フラスコ3に入れ、あらかじめ脱気した純水を40ml加えた後、ガス注入口5からアルゴンガスを注入し、多周波超音波発生装置1の振動子2により200kHz,200Wの超音波を3時間照射したあと、アルゴンガス中700度で乾燥させることでLiFePO4を得た。
図8は、超音波照射により合成したLiFePO4のアルゴンガス中700℃加熱後のX線チャートである。
測定されたX線回折パターンより、図8より、単一相であるLiFePO4の生成を確認した。
【実施例3】
【0012】
図1は超音波合成装置の概略図を示し、1は多周波超音波発生装置、2は振動子、3はナス型フラスコ、4は撹拌器、5はガス注入口、6は水槽である。
Fe3PO7の超音波合成は出発原料にFeSO4・7H2O,(NH4)2HPO4,Fe23を用い、モル比が1:1:0.8になるように秤量し、ナス型フラスコ3に入れ純水を40ml加えた後、ガス注入口5から空気を注入し、多周波超音波発生装置1の振動子2により200kHz,200Wの超音波を3時間照射したあと、空気中950度で1時間乾燥させたあと、1050℃10時間焼成することでFe3PO7を得た。
測定されたX線回折パターンより、図9より、単一相であるFe3PO7の生成を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は超音波の力により発生する特異反応場を利用したソフトケミストリーで、均一微粒子の合成が可能である。
そのため、高性能な電池材料の合成だけではなく、他の分野の材料開発、LiMnPOなどの合成にも利用が可能である。
また本発明で生成した活物質の粒径は1μm以下であったのでナノテクノロジー分野においても新しい手法として利用できると考えられる。
超音波照射により、水のHラジカルとOHラジカルへの分解により酸化還元剤(主にH22)が生成するので、酸化還元剤が必須な合成に関してはその添加量を0もしくは減量できるため、コストや手間の削減につながる。
雰囲気制御により、水溶液中に硝酸、亜硝酸を容易に生成できる為、硝酸添加が必要な反応にも効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実験で用いた超音波合成装置の概略図である。
【図2】本実験条件で純水に超音波を照射したときの、時間に対するpH変化と過酸化水素発生量を示したグラフ図である。
【図3】超音波照射により合成したFePO4の各乾燥温度(a)700℃3時間乾燥(b)350℃3時間乾燥(c)25℃12時間乾燥におけるX線チャート図である。
【図4】本発明により合成した活物質を測定する為に用いた電気化学セルの構成図である。
【図5】本発明により合成したアモルファスFePO4を電気化学セルを用いて測定した結果であるグラフ図である。
【図6】本発明により合成した結晶性FePO4を電気化学セルを用いて測定した結果であるグラフ図である。
【図7】本発明により合成した活物質を任意温度で3時間過熱して得た化合物の表面積をBET測定器により測定した結果であるグラフ図である。
【図8】超音波照射により合成したLiFePO4のアルゴンガス中700℃加熱後のX線チャート図である。
【図9】超音波照射により合成したFe3PO7のアルゴンガス中700℃加熱後のX線チャート図である。
【符号の説明】
【0015】
1 多周波超音波発生装置
2 振動子
3 ナス型フラスコ
4 攪拌器
5 ガス注入口
6 水槽
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
8