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明細書 :パンタグラフの接触力測定方法及び接触力測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4012108号 (P4012108)
公開番号 特開2004-301591 (P2004-301591A)
登録日 平成19年9月14日(2007.9.14)
発行日 平成19年11月21日(2007.11.21)
公開日 平成16年10月28日(2004.10.28)
発明の名称または考案の名称 パンタグラフの接触力測定方法及び接触力測定装置
国際特許分類 G01L   5/00        (2006.01)
B60L   5/24        (2006.01)
FI G01L 5/00 Z
B60L 5/24 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2003-093281 (P2003-093281)
出願日 平成15年3月31日(2003.3.31)
審査請求日 平成17年6月30日(2005.6.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】池田 充
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】松浦 久夫
参考文献・文献 特開平11-136804(JP,A)
特開2002-328063(JP,A)
特開2001-235310(JP,A)
調査した分野 G01L 5/00
B60L 5/22 - 5/24
特許請求の範囲 【請求項1】
トロリ線(給電線)とパンタグラフ(集電装置)の舟体との間に作用する接触力Fcを測定する方法であって、
前記舟体が前記支持部材上に左右2箇所で支持されており、
該舟体の左右2箇所の支持部(両支持部間の距離D)における断面力Fr、Flを測定して前記舟体を支持する支持部材が該舟体を押し上げる押上力Fsを測定し、
前記舟体上における前記トロリ線の左右偏位dを測定し、
前記断面力Fr、Fl及び左右偏位dから、
Fz=(-D/2d-1)・Fl+(D/2d-1)・Fr
に基づき、前記舟体に作用する揚力成分Fzを求め、
前記舟体の慣性力Fiを測定し、
前記揚力Fzに前記押上力Fsと前記慣性力Fiを加えて接触力Fcを求めることを特徴とするパンタグラフの接触力測定方法。
【請求項2】
前記舟体の左右方向中心位置と、前記舟体に作用する揚力Fzの合力が作用する位置との間の距離uを測定し、
Fz=(D/(d-u))・[-(1/2+d/D)・Fl+(1/2-d/D)・Fr]、に基づき、前記揚力成分Fzを求めることを特徴とする請求項記載のパンタグラフの接触力測定方法。
【請求項3】
トロリ線(給電線)とパンタグラフ(集電装置)の舟体との間に作用する接触力Fcを測定する装置であって、
前記舟体を支持する支持部材を有するとともに、該舟体が該支持部材上に左右2箇所の支持部(両支持部間の距離D)で支持されており、
前記支持部材が前記舟体を押し上げる押上力Fsとして前記舟体の左右2箇所の支持部における断面力Fr、Flを測定する押上力測定手段と、
前記舟体の慣性力Fiを測定する慣性力測定手段と、
前記舟体上における前記トロリ線の左右偏位dを測定する偏位測定手段と、
前記断面力Fr、Fl及び左右偏位dから、
Fz=(-D/2d-1)・Fl+(D/2d-1)・Fr
に基づき、前記接触力Fcのうち前記舟体に作用する揚力成分Fzを求める揚力成分算出手段と、
前記揚力Fzに前記押上力Fsと前記慣性力Fiを加えて前記接触力Fcを求める接触力算出手段と、を具備することを特徴とするパンタグラフの接触力測定装置。
【請求項4】
前記舟体の左右方向中心位置と、前記舟体に作用する揚力Fzの合力が作用する位置との間の距離uを、前記トロリ線の左右偏位dの関数として予め求めておき、
前記揚力成分算出手段が、
Fz=(D/(d-u))・[-(1/2+d/D)・Fl+(1/2-d/D)・Fr]、に基づき、前記揚力成分Fzを求めることを特徴とする請求項記載のパンタグラフの接触力測定装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気鉄道におけるトロリ線とパンタグラフの舟体との間に作用する接触力を測定する方法及び装置に関する。特には、接触力をより正確に測定することのできるパンタグラフの接触力測定方法及び接触力測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
現状の営業用の電気鉄道においては、トロリ線からパンタグラフを介して車両に電力を送る方式が一般的である。トロリ線とパンタグラフの舟体との接触力は、トロリ線の高さ変動や車両・パンタグラフの振動等によって変動する。この接触力の変動が大きすぎると、パンタグラフの舟体がトロリ線から離れる離線が生じるおそれがある。離線が頻発すると、舟体とトロリ線との間にスパークが生じて、摺り板の損耗が進み、問題となる。また、離線に至らない場合でも、パンタグラフの接触力は極力変動の小さい方がよい。
【0003】
そこで、電車の走行中のトロリ線とパンタグラフの舟体との接触力を測定し、得られた測定結果を離線の抑制対策の参考としたいとの要請がある。あるいは、このような接触力の測定技術は、離線の抑制対策だけではなく、トロリ線—パンタグラフ系の集電性能の評価や、電車線の設備診断方法の1つとして活用することも考えられている。
【0004】
ところで、走行中の電車のパンタグラフの舟体には、上下方向下向きの力として接触力が作用する。一方、接触力とは別に、舟体を支持する支持部材(舟支えや復元バネ等)が舟体を押し上げる力、舟体に生じる慣性力、及び、舟体にかかる揚力も作用する。支持部材が舟体を押し上げる力は、支持部材の性状(復元バネの歪等)から予め把握することができる。また、舟体に生じる慣性力は、舟体に取り付けた加速度計等により測定することができる。そこで、接触力の絶対値を正確に測定するため、舟体にかかる揚力を正確に推定し、接触力に含まれる揚力の寄与を正確に知る必要が生じる。
【0005】
従来より、現車におけるパンタグラフの舟体の揚力測定は、パンタグラフを中腰状態、すなわち、ワイヤ等を用いて舟体をトロリ線から150~250mm程度低い位置に固定した状態として、ワイヤ等に作用する張力を測定し、この張力から揚力を推定することが行われている。
このような揚力測定方法では、パンタグラフを中腰状態とするため、測定時の舟体の位置は、実際に電車が走行する際の位置よりも低いこととなる。ところが、舟体の揚力特性はパンタグラフの高さに依存して変化するうえ、走行中の電車の屋根上では空気の境界層が発達するため、舟体の受ける空気の相対流速も高さに応じて変化する。したがって、測定時に得られる揚力と、実際の電車の走行時に作用する揚力とが同一であるという保証があまりないという問題がある。
【0006】
一方、舟体にかかる揚力測定を、風洞試験によって実施することもしばしば行われている。
風洞試験による揚力測定は、高い測定精度が得られ易いという利点はあるが、走行中の電車の屋根上における空気の流速分布を再現することが困難であり、この流速分布を正しく再現できない場合は、高い測定精度を確保できなくなるという難点がある。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであって、接触力をより正確に測定することのできるパンタグラフの接触力測定方法及び接触力測定装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するため、本発明のパンタグラフの接触力測定方法は、トロリ線(給電線)とパンタグラフ(集電装置)の舟体との間に作用する接触力Fcを測定する方法であって、 前記舟体を支持する支持部材が該舟体を押し上げる押上力Fsを測定し、 前記舟体の慣性力Fiを測定し、 前記舟体にかかる揚力Fzを推定し、 該揚力Fzに前記押上力Fsと前記慣性力Fiを加えて前記接触力Fcを求める。
【0009】
本発明によれば、走行中の現車におけるパンタグラフの舟体にかかる揚力Fzの寄与を考慮した、より正確な接触力Fcの測定を行うことができる。
【0010】
本発明のパンタグラフの接触力測定方法においては、前記舟体が前記支持部材上に左右2箇所で支持されており、 該舟体の左右2箇所の支持部(両支持部間の距離D)における断面力Fr、Flを測定し、 前記舟体上における前記トロリ線の左右偏位dを測定し、 これら断面力Fr、Fl及び左右偏位dから、
Fz=(-D/2d-1)・Fl+(D/2d-1)・Fr
に基づき、前記接触力Fcのうち前記舟体に作用する揚力成分Fzを求めることができる。
この場合、断面力Fr、Fl及び左右偏位dに基づき揚力成分Fzを求めることができる。
【0011】
本発明のパンタグラフの接触力測定方法においては、前記舟体の左右方向中心位置と、前記舟体に作用する揚力Fzの合力が作用する位置との間の距離uを測定し、
Fz=(D/(d-u))・[-(1/2+d/D)・Fl+(1/2-d/D)・Fr]、
に基づき、前記揚力成分Fzを求めることが好ましい。
この場合、揚力Fzをより一層正確に推定することができる。
【0012】
本発明のパンタグラフの接触力測定装置は、トロリ線(給電線)とパンタグラフ(集電装置)の舟体との間に作用する接触力Fcを測定する装置であって、 前記舟体を支持する支持部材を有するとともに、該舟体が該支持部材上に左右2箇所の支持部(両支持部間の距離D)で支持されており、 前記支持部材が前記舟体を押し上げる押上力Fsとして前記舟体の左右2箇所の支持部における断面力Fr、Flを測定する押上力測定手段と、 前記舟体の慣性力Fiを測定する慣性力測定手段と、 前記舟体上における前記トロリ線の左右偏位dを測定する偏位測定手段と、 前記断面力Fr、Fl及び左右偏位dから、
Fz=(-D/2d-1)・Fl+(D/2d-1)・Fr
に基づき、前記接触力Fcのうち前記舟体に作用する揚力成分Fzを求める揚力成分算出手段と、 前記揚力Fzに前記押上力Fsと前記慣性力Fiを加えて前記接触力Fcを求める接触力算出手段と、を具備することを特徴とする。
【0013】
本発明のパンタグラフの接触力測定装置においては、前記舟体の左右方向中心位置と、前記舟体に作用する揚力Fzの合力が作用する位置との間の距離uを、前記トロリ線の左右偏位dの関数として予め求めておき、 前記揚力成分算出手段が、
Fz=(D/(d-u))・[-(1/2+d/D)・Fl+(1/2-d/D)・Fr]、
に基づき、前記揚力成分Fzを求めることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る電気鉄道のパンタグラフ周辺を示す模式的正面図である。
図1に示すように、パンタグラフ10は、図示せぬ電車の車体屋根上に設けられている。このパンタグラフ10は、舟体11を備えている。この舟体11は、左右方向(車体幅方向)に沿って延びている。舟体11は、この例では1本の舟体のみで構成されているが、前後方向(車両の進行方向)に離れて1組ずつ計2本設けられているものもある。舟体11は、一例でアルミニウム合金製である。舟体11の上表面には、摺り板13が貼られている。摺り板13は、鉄系や銅系の焼結合金製、あるいは、カーボン系材料等からなる。この摺り板13がトロリ線1に直接接触する。
【0015】
舟体11は、左右2個の復元バネ(コイルバネ)15R、15Lを介して、舟体支え17に支えられている。舟体11は、復元バネ15の弾性力でトロリ線1に押し付けられる。舟体支え17の中央部下には、パンタグラフ10全体を支持する枠組19が設けられている。この枠組19は、図示せぬコイルバネあるいはエアシリンダ等によって上下に昇降する。例えば、パンタグラフ10の非使用時は、枠組19が下がって舟体11はトロリ線1から離れる。枠組19の下端は、ガイシ等を介して車体屋根上に固定されている。
【0016】
舟体11の左右寄り側面には、歪ゲージ20が取り付けられている。この歪ゲージ20により、舟体11の左右2個の復元バネ15R、15Lの位置における断面力(せん断力)Fr、Flが測定される。なお、本実施例においては、舟体支え17の荷重の測定手段として歪ゲージを用いているが、その他に復元バネ15R、15Lに歪ゲージを貼り付けることによってFr、Flを測定する方法や、レーザ変位計により復元バネ15R、15Lの伸びを測定してバネ定数を乗じることによりFr、Flを測定する方法等、様々な手段を用いることができる。
【0017】
以下、本発明に係る接触力測定原理について説明する。
図1に示すように、舟体11下の左右の復元バネ(コイルバネ)15R、15L間の距離をDとし、これら左右2箇所において舟体11に作用する断面力をそれぞれFl、Frとする。これらの断面力Fl、Frは、歪ゲージ20で測定可能な舟体11のせん断力か、あるいは、復元バネ15R、15L及びその下の舟体支え17に作用する荷重とする。さらに、舟体11上におけるトロリ線1の左右偏位をdとする。
【0018】
トロリ線1と舟体11との間に作用する接触力をFcで表し、左右2箇所の支持部が舟体11を押し上げる力をFsで表す。また、接触力Fcのうち舟体11に作用する揚力成分をFzで表す。すると、慣性力は無視するものとして、これらの間に以下の4つの関係式が成り立つ:
Fl=((D-2d)/2D)・Fc-(1/2)・Fz、
Fr=((D+2d)/2D)・Fc-(1/2)・Fz、
Fc=Fs+Fz、
Fr+Fl=Fs。
【0019】
以上の4式からFcを消去すると、
Fz=(-D/2d-1)・Fl+(D/2d-1)・Fr (1)
が得られる。
この式(1)により、断面力Fl、Frと左右偏位dがわかれば舟体11に作用する正確な揚力Fzを推定することができる。断面力Fl、Frは、前述の通り歪ゲージ20等によって測定することができる。左右偏位dは、例えば車体の屋根上に設けた異方倍率レンズを用いてトロリ線1と舟体11の画像を収録して処理することで求めることができる。検側車の場合は、通常、レーザ式の偏位測定装置を備えているので、これを用いてもよい。
【0020】
ところで、以上に述べた測定原理は、舟体11に作用する揚力を、舟体11の長手方向(左右方向)全体にわたる等分布荷重と見なしているが、実際には揚力成分Fzの合力の作用点は常に舟体11の中心にあるとは限らない。そこで、揚力成分Fzの合力の作用点と舟体11の左右方向中心位置との距離uを予め測定し、前述の(1)式を次式
Fz=(D/(d-u))・[-(1/2+d/D)・Fl+(1/2-d/D)・Fr] (2)
のように変形し、この(2)式に基づいて揚力成分Fzを求めることが好ましい。一般に、前述の距離uは、トロリ線1の位置の関数として与えられる(距離uの推定結果は、図3を用いて後述する)。
【0021】
次に、本発明の測定原理を検証した風洞試験の結果について述べる。
図2は、本発明に係る式(1)に基づき舟体揚力Fzを推定した結果を示すグラフである。横軸は舟体揚力の実測値(単位N)を示し、縦軸は本発明に係る式(1)に基づき推定した舟体揚力の値(単位N)を示す。
図2に示すグラフ中の右上がりの直線は、前述の式(1)に基づく推定値の実測値への回帰直線である。このグラフから、回帰直線の近辺に点が分布しているのがわかり、実測値の任意の点に対する推定値の値が有効に定まっているということができる。
【0022】
さらに、前述した揚力成分Fzの合力の作用点と舟体の左右方向中心位置との距離uを考慮した結果について述べる。
図3は、本実施例における揚力成分Fzの合力の作用点と舟体の左右方向中心位置との距離uの推定結果を示すグラフである。縦軸は舟体揚力の合力の作用中心位置の推定値(単位mm)を示し、横軸はトロリ線の偏位(単位mm)を示す。
図4は、本発明に係る式(2)に基づき舟体揚力Fzを推定した結果を示すグラフである。横軸は舟体揚力の実測値(単位N)を示し、縦軸は本発明に係る式(2)に基づき推定した舟体揚力の値(単位N)を示す。
【0023】
前述した通り、距離uはトロリ線の位置の関数として与えられる。図3に示すように、本実施例では、トロリ線の偏位の値xに対し、距離uの推定値yを次の一次式
y=0.2211x-16.401
に基づき求めた。
【0024】
そこで、この距離uを考慮した式(2)に基づき舟体揚力を推定すると、図4に示すような結果が得られた。図2のグラフと図4のグラフを比較すると、図4のグラフの方がより一層強い相関が得られていることがわかる。したがって、式(2)を用いて揚力を推定する方が、式(1)を用いて揚力を推定するよりも、一層精度よく推定することができるといえる。なお、式(1)を用いた場合でも、概略値の推定には充分ということもいえる。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、接触力をより正確に測定することのできるパンタグラフの接触力測定方法及び接触力測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電気鉄道のパンタグラフ周辺を示す模式的正面図である。
【図2】本発明に係る式(1)に基づき舟体揚力Fzを推定した結果を示すグラフである。
【図3】本実施例における揚力成分Fzの合力の作用点と舟体の左右方向中心位置との距離uの推定結果を示すグラフである。
【図4】本発明に係る式(2)に基づき舟体揚力Fzを推定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 トロリ線 10 パンタグラフ
11 舟体 13 摺り板
15R、15L 復元バネ 17 舟体支え
19 枠組 20 歪ゲージ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3