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明細書 :鋼材の下地調整材および下地調整方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4343570号 (P4343570)
公開番号 特開2004-299979 (P2004-299979A)
登録日 平成21年7月17日(2009.7.17)
発行日 平成21年10月14日(2009.10.14)
公開日 平成16年10月28日(2004.10.28)
発明の名称または考案の名称 鋼材の下地調整材および下地調整方法
国際特許分類 C04B  28/02        (2006.01)
C04B  22/06        (2006.01)
C04B  22/10        (2006.01)
C04B  24/28        (2006.01)
B05D   5/00        (2006.01)
B05D   7/00        (2006.01)
E01D   1/00        (2006.01)
E01D  22/00        (2006.01)
C04B 103/61        (2006.01)
C04B 111/26        (2006.01)
FI C04B 28/02
C04B 22/06 Z
C04B 22/10
C04B 24/28 A
B05D 5/00 K
B05D 7/00 M
E01D 1/00 E
E01D 22/00 A
C04B 103:61
C04B 111:26
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2003-095853 (P2003-095853)
出願日 平成15年3月31日(2003.3.31)
審査請求日 平成17年8月11日(2005.8.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】503119111
【氏名又は名称】株式会社ジェイアール総研エンジニアリング
【識別番号】597170368
【氏名又は名称】アサヒボンド工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】佐々木 孝彦
【氏名】立松 英信
【氏名】半谷 公明
個別代理人の代理人 【識別番号】100085394、【弁理士】、【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
審査官 【審査官】正 知晃
参考文献・文献 特開昭60-243169(JP,A)
特開平09-086997(JP,A)
特開2002-173643(JP,A)
特開平01-236283(JP,A)
調査した分野 C04B 7/00 - 28/36
C09D 5/08
B05D 5/00
B05D 7/00
E01D 1/00
E01D 22/00
特許請求の範囲 【請求項1】
塗替え塗装がなされる鋼材の表面に塗布される下地調整材であって、該下地調整材は、セメントと炭酸カルシウムが1:1の重量比の割合で混入された水硬性粉体と、エポキシ樹脂およびポリアミドアミンを混和する混和材とを主成分とするセメント系下地調整材に陰イオン吸着剤を含有することを特徴とする鋼材の下地調整材。
【請求項2】
請求項1において、陰イオン吸着剤はセメントと反応して消費されることがないカルシウム・アルミニウム複合水酸化物であることを特徴とする鋼材の下地調整材。
【請求項3】
請求項1または2において、陰イオン吸着剤の含有量は、1.0重量%以上であることを特徴とする鋼材の下地調整材。
【請求項4】
セメントと炭酸カルシウムが1:1の重量比の割合で混入された水硬性粉体と、エポキシ樹脂およびポリアミドアミンを混和する混和材とを主成分とするセメント系下地調整材に陰イオン吸着剤を含有する下地調整材を、塗替え塗装がなされる鋼材の表面に塗布するようにしたことを特徴とする鋼材の下地調整方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁、タンク、橋脚、鉄骨、屋根等の鋼構造物を構成する鋼材表面に下地調整材として塗布される防錆効果の優れた下地調整材の技術分野に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、橋梁等の鋼構造物は、長期間の使用を前提とするため、鋼の防食および外観確保を目的として表面が塗装されている。この場合に、塗装塗膜の耐久性が鋼構造物の期待耐用年数より短いため、複数回の塗り替え塗装が必要となる。一般環境用塗装系の塗膜劣化状態の調査結果では、新設塗装塗膜に比べて塗替え塗装塗膜の劣化進展は早いことが確認されている。これは、適用している塗装材に違いがない場合にも一般的に発生していることを考慮すれば、下地調整時残存したさび面上の塗膜が早期に劣化するためと考えられる。
これは、大気中で腐食した鋼は、例えば図1に示すように、鋼とさび層の界面近くに環境中の腐食を促進する因子(塩分等)である陰イオンが濃縮してネストとなる。ネストは、鋼の腐食で鋼表面に形成された腐食セルにより、陰イオンがアノード部に電気化学的に補足され濃縮したものであり、塗替え塗装塗膜下のネストが存在する部分では鋼材の腐食反応は抑制されない。このために、新設塗装塗膜にに比べて耐久性が劣ることになる。従って、塗装などの防食を施す場合に、さび層の除去のみならず、鋼とさび層界面に濃縮する腐食促進性の陰イオンの効果的な除去が必要となる。
ところで、塗替え塗装における腐食箇所の下地調整(素地調整)は、新設塗装時のように短期問で発生したさびの除去とは異なり、複数年をかけて生成したさび層の除去作業となる。このようなさび層およびネストの除去にはブラスト装置を用いる、あるいはディスクサンダーやエアーハンマー等の動力工具とハンマー、スクレーパーなどの手工具を併用して劣化個所を除去作業するなどの物理的な除去方法が一般に採用されている。しかし、鋼とさび層の界面に生成したネスト中の陰イオンは、前記のような物理的な除去作業では完全に除去できないといわれている。
そこで従来、塗替え塗装系の下地材として亜鉛等の防錆顔料を含有した塗料を塗布し、防錆する方法が実施されているが、このものは前記陰イオンを積極的に除去するものでないため、鋼表面でのさび発生の抑制効果に乏しく、塗替え塗装した場合、新規塗装の場合より短期間のうちにさびが発生するケースがある。そこで、下塗り材としてアルキルメタアクリレートの共重合体を含有する塗料を塗布し、これによって防錆効果を高めようとするものが提唱されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000-42485号公報
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記特許文献1のものはさび発生の要因である陰イオンの外部からの侵入を阻止して防食性を向上しようとするものであって、ネスト中の陰イオンを除去するものでないため、仮に防錆効果に優れていたとしても塗替え塗装系の耐久性の改善が期待できるものではなく、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような実情に鑑み鋭意検討した結果、完成したものであって、請求項1の発明は、塗替え塗装がなされる鋼材の表面に塗布される下地調整材であって、該下地調整材は、セメントと炭酸カルシウムが1:1の重量比の割合で混入された水硬性粉体と、エポキシ樹脂およびポリアミドアミンを混和する混和材とを主成分とするセメント系下地調整材に陰イオン吸着剤を含有することを特徴とする鋼材の下地調整材である。
請求項2の発明は、請求項1において、陰イオン吸着剤はセメントと反応して消費されることがないカルシウム・アルミニウム複合水酸化物であることを特徴とする鋼材の下地調整材である。
請求項3の発明は、請求項1または2において、陰イオン吸着剤の含有量は、1.0重量%以上であることを特徴とする鋼材の下地調整材である。
請求項4の発明は、セメントと炭酸カルシウムが1:1の重量比の割合で混入された水硬性粉体と、エポキシ樹脂およびポリアミドアミンを混和する混和材とを主成分とするセメント系下地調整材に陰イオン吸着剤を含有する下地調整材を、塗替え塗装がなされる鋼材の表面に塗布するようにしたことを特徴とする鋼材の下地調整方法である。
そしてこれらのようにすることで、塗替え塗装がなされる鋼材の表面に付着する陰イオンの積極的な除去ができることになって、塗替え塗装の場合であっても鋼材の腐食を抑制し、塗装塗膜の耐久性が向上するとともに、鋼材自体の腐食からの保護も図れる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は、さび層と鋼材の界面に生成した陰イオンを積極的に除去して高い防錆効果を発揮し、もって塗替え周期の延伸等、塗替え塗装系の耐久性を向上させようとしたものである。下地調整材は、陰イオン吸着剤を添加したものであり、このような陰イオン吸着剤としては、セメントと反応して消費されることがないカルシウム・アルミニウム複合水酸化物、マグネシウム・アルミニウム複合水酸化物が適当で、具体的にはハイドロカルマイト、ハイドロタルサイトが例示されるが、ハイドロカルマイトは、特に鋼材腐食の促進因子として影響の大きい塩分の吸着能が高いものである。そして本発明が実施された下地調整材は、塗替え塗装時は勿論のこと、新規塗装をする場合に使用しても良いものである。
【0006】
本発明は、セメント系下地調整材を採用しているが、ここに採用されるセメントとしては、例えば普通ポルトランドセメント、アルミナセメント、早強セメント等、通常知られたセメントを採用することができる。
また、下地組成物としてはエポキシ樹脂が一般的であるが、アクリル樹脂等、通常知られた下地組成物を採用することができる。
さらにまた、下地調整材には、オクチルアルコール等の消泡材を添加したものでもよく、また塗装作業性の向上等のため炭酸カルシウム、カオリン等の充填材を添加したものであってもよい。
【0007】
陰イオン吸着剤の下地調整材への添加量は、好ましくは4.0重量%以上の範囲であり、さらに好ましくは8重量%以上である。陰イオン吸着剤の添加量が少ないと鋼材の表面にさび発生が発生してしまうことになり、また添加量が多くなると上塗り、中塗り等の塗装塗膜のふくれ抵抗性等を低下させる。
【0008】
以下、本発明を実験例によりさらに詳しく説明する。
【0009】
[供試体の作成]
供試体用の鋼板として、縦横100×100ミリメートル(mm)、厚さ1mmの冷間圧延鋼板(SS40)を用意し、この鋼板の表面を脱脂後、メッシュ#120のサンダーでケレンし、試験片を作成した。この試験片を、40℃の人工海水に48時間浸漬後、40℃の恒温槽内に50日間静置したが、この静置の間、24時間毎に人工海水を噴霧することでさびを発生させた。このさび発生の条件は、鋼材を海底トンネル内に1年間、曝露したと略同じものに相当することは既に他の実験により確認されている。そして該発生した鋼板のさびを肉眼では目視できない状態となるまでスクレーパーで除去した後、溶剤で汚れを除去し、その後、水洗し、乾燥させ、供試体を得た。
【0010】
[供試体の塗装実験]
前記得た供試体の表面について、図2に示す表図の条件で下地調整材を塗布し、3時間自然乾燥させた後、再度同じ下地調整材を塗布した。そして該塗布した供試体を、前記供試体にさびを発生させた場合に対し、静置期間が1月間であることを除いて同じ条件下でさび発生を試みた。尚、各実験において使用した供試体は3枚ずつとし、後述する結果についてはその平均とした。また、下地調整材は、水性エポキシ樹脂を混和材としたセメント系下地調整材で、セメントと炭酸カルシウムが1:1の重量比の割合で混入された水硬性粉体と、エポキシ樹脂およびポリアミドアミンを混和する混和材(反応性硬化剤)とを主成分としたもので、このようなものとして例えばアサヒボンド工業株式会社製の「レジアンダー」がある。また、陰イオン吸着剤としては塩分の吸着能が高いハイドロカルマイト(塩分吸着剤)を採用したが、このものとしては日本化学工業株式会社製の「ソルカット」がある。
【0011】
[結果と考察]
前記曝した供試体の表面を肉眼にて観察した結果を前記図2に示すとともに、塗布塗膜の補正自然電位を求めた。その結果を図3に示す。尚、補正自然電位の求め方は特許第3096240号に記載されるものである。ここで求められる補正自然電位から前記特許の手法と同じに鋼材の腐食度合いを知ることができることが確認されており、供試体に発生しているさびの促進度合いの指標となる。
【0012】
供試体表面の状態を肉眼で観察した結果、陰イオン吸着剤を入れないもの(試験番号1=ブランク)はひび割れが発生しているのが確認され、また塗膜を剥離したところ、供試体表面にさびの発生が確認された。一方、補正自然電位は-496ミリボルト(mV)であり、図4に示す補正自然電位と腐食度との関係から腐食度IVまたはVの範疇で、膨張性のさびが発生している状態である。塗膜を剥離したところ、供試体表面の全面にさびが発生しているのが確認された。
一方、塩分吸着剤を5/300(=1.67重量%)の重量比で入れたもの(試験番号2)は外観は良好であった。補正自然電位については-350mVで、腐食度としてはIIIの判定の範疇であった。塗膜を剥離したところ、供試体表面に点さびが生じていたが、前記試験番号1の場合に比してさび発生が明らかに抑制されていることが確認された。
さらに、塩分吸着剤を10/300(=3.33重量%)の重量比で入れたもの(試験番号3)の補正自然電位は-272mVで、腐食度としてはIIの範疇であり、供試体表面に僅かの点さびが発生しているのが塗膜の剥離後、目視により確認された。さび発生がこの程度であれば、実用上としては全く問題ないと判断される。
また、塩分吸着剤を30/300(=10.0重量%)の重量比で入れたもの(試験番号4)の補正自然電位は-209mVで、腐食度としてはさび発生のないIの範疇であり、また塗膜剥離後のさびの発生は目視では視認できず、さび発生は明らかに抑制されていることが確認された。
さらにまた、塩分吸着剤を50/300(=16.7重量%)の重量比で入れたもの(試験番号5)の補正自然電位は-204mVで、腐食度としてはさび発生のないIの範疇であり、また塗膜剥離後のさび発生は目視で視認できずさびの発生が抑制されていることが確認された。このものは試験番号4とほぼ同じ結果であることから、10.0重量%程度までが添加量として適当なものと判断される。
【0013】
【効果】
このように、本発明を実施したものにおいては、下地調整材に陰イオン吸着剤を含有させることで、さび層と鋼材の界面に生成するネスト中の陰イオンの積極的な除去ができることになって、塗替え塗装の場合であっても鋼材の腐食を抑制し、塗装塗膜の耐久性が向上するとともに、鋼材自体の腐食からの保護も図れることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】腐食セルの状態を示す概略図である。
【図2】試験条件およびその結果を目視したときの状態を示す表図である。
【図3】測定した自然電位を示すグラフ図である。
【図4】補正自然電位と腐食度との関係を示す表図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3