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明細書 :保守支援システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4163047号 (P4163047)
公開番号 特開2004-051087 (P2004-051087A)
登録日 平成20年8月1日(2008.8.1)
発行日 平成20年10月8日(2008.10.8)
公開日 平成16年2月19日(2004.2.19)
発明の名称または考案の名称 保守支援システム
国際特許分類 B61L  23/06        (2006.01)
FI B61L 23/06
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2003-149784 (P2003-149784)
出願日 平成15年5月27日(2003.5.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第38回鉄道サイバネ・シンポジウム論文集(平成13年11月28日)日本鉄道サイバネティクス協議会発行論文番号607に発表
優先権出願番号 2002154444
優先日 平成14年5月28日(2002.5.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成17年12月2日(2005.12.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
発明者または考案者 【氏名】長谷川 敏明
【氏名】浅野 晃
【氏名】原 陽一郎
【氏名】大津 光雄
【氏名】立石 貞雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100090033、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 博司
【識別番号】100093045、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 良男
審査官 【審査官】日比谷 洋平
参考文献・文献 特開平05-330429(JP,A)
特開2000-016294(JP,A)
特開2001-069162(JP,A)
特開2001-138917(JP,A)
特開2000-309274(JP,A)
特開2002-002486(JP,A)
特開平07-038665(JP,A)
調査した分野 B61L 1/00 - 29/32
特許請求の範囲 【請求項1】
CTCセンターに通信接続してTID情報を収集する保守支援サーバと、無線電話機能を備える携帯端末と、沿線に所定間隔で配置され、前記保守支援サーバと有線通信を行うとともに前記携帯端末と無線通信を行う複数の制御端局と、前記保守支援サーバと前記制御端局間を接続した有線回線と、を具備して構成される保守支援システムであって、
前記有線通信は、前記有線回線で接続された前記保守支援サーバ及び前記制御端局間に形成された通信リンク上を一定方向に周回するように所定の伝送フレームが伝送される第1の伝送方式であり、
前記伝送フレームは、TID情報と音声情報及び制御情報から成る特別情報とを格納する格納領域を有し、
前記音声情報は、前記携帯端末同士で通話する音声情報であり、
前記制御情報は、前記携帯端末で生成する作業番号、作業者名、作業種別を含む作業着手前情報と、前記保守支援サーバで生成する作業着手の承認を与える情報と、作業箇所単位で作業着手前列車及び列車遅延を通知する通知情報であり、
前記携帯端末は、
前記制御端局を介して前記保守支援サーバに前記作業着手前情報を送信する送信手段と、
前記制御端局を介して前記保守支援サーバから前記通知情報を受信する受信手段と、を有し、
前記保守支援サーバは、
前記第1の伝送方式で伝送された前記伝送フレームに格納されたTID情報を前記保守支援サーバが収集したTID情報の内容に更新して、前記制御端局に送信するTID更新手段と、
前記伝送フレームに格納された前記特別情報の中の前記制御情報を取り出し、前記各制御端局に対する新たな制御情報にして前記制御端局に送信する第1の特別情報更新手段と、を備え、
前記各制御端局は、
前記保守支援サーバ又は上流の制御端局から前記伝送フレームを受信した場合に、当該受信した伝送フレームに格納されているTID情報及び自局宛の特別情報を取り出して前記携帯端末に送信し、前記携帯端末から受信した特別情報を前記保守支援サーバ及び下流の制御端局に搬送するための前記特別情報を生成し、前記伝送フレームに格納された前記特別情報を前記生成した特別情報で更新して前記保守支援サーバ又は下流の制御端局に送信する第2の特別情報更新手段を備えたことを特徴とする保守支援システム。
【請求項2】
隣接する制御端局は異なる搬送波周波数で前記無線通信を行うことを特徴とする請求項1に記載の保守支援システム。
【請求項3】
前記制御端局と前記携帯端末との間の無線通信は、前記制御情報から成るデータ情報と音声情報とが統合された第2の伝送方式であることを特徴とする請求項1又は2に記載の保守支援システム。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、保守支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道輸送の分野において、車両の高性能化、輸送の高速化、高密度化及び輸送システムの巨大化に伴い、沿線の保守作業者は、本来の保守業務に加え、より複雑な作業状況や判断に遭遇する機会が増える傾向にある。しかし、沿線作業の作業防護の多くは、人的な列車監視にゆだねられているのが実情である。
【0003】
保守作業は、通常、線路閉鎖や間合い作業で行われており、旅客会社によっては独自の防護システムを積極的に導入しているところもある。だが、その他の多くは、作業マニュアルや安全指導で対処する方法が最も多く、結果的には人間の注意力に依存する事故防止が主流となっている。
【0004】
保守作業に伴う事故の原因として、作業当日の列車ダイヤ未確認や作業着手列車の誤認、列車見張りの指示遅れ、作業者の退避遅延などの多くのヒューマンエラーが報告されている。これらの事故原因は、人間の過失や失念、注意力などの判断ミスが要因とされている。
【0005】
ところで、作業統制下で行われる保守作業は、作業当日の打ち合わせで臨時列車や車番変更といった列車運行の状況把握から始まり、作業着手へと移行する。そして、作業時には、列車見張員による列車の進来・通過監視で作業の安全を保つ。この過程で特に重要視されるのは、作業着手列車の現認であり、当該列車の通過後は、見張用ダイヤで作業終了までの通過列車を順次監視することになる。
【0006】
しかし、この監視方法の欠点として、思い込みによる列車の誤認や注意転換の遅れ、突発的な運行乱れによるダイヤ誤認などの人的ミスが、直ちに作業員の退避遅れや接車等の事故につながる危険な環境下で作業を行っているという問題がある。
【0007】
また、見張用ダイヤは、列車が定時運行であれば退避予測を行う上でも最も重要な情報となるが、一度、列車運行に乱れが生じると誤った情報になる恐れがある。従って、安全な作業を確実に確保するためには、作業現場において、常に最新の列車ダイヤが知れ、危険予知がリアルタイムに行える仕組みが必要となる。しかし、保守作業現場に対して人的ミスの防止に有用な情報を提供するといった、本願発明に関連する技術を開示した先行技術文献を見つけることができなかった。このため、先行技術文献は記載していない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、保守作業時の人的ミスを防止する保守支援システムを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、
CTCセンターに通信接続してTID情報を収集する保守支援サーバと、無線電話機能を備える携帯端末と、沿線に所定間隔で配置され、前記保守支援サーバと有線通信を行うとともに前記携帯端末と無線通信を行う複数の制御端局と、前記保守支援サーバと前記制御端局間を接続した有線回線と、を具備して構成される保守支援システムであって、
前記有線通信は、前記有線回線で接続された前記保守支援サーバ及び前記制御端局間に形成された通信リンク上を一定方向に周回するように所定の伝送フレームが伝送される第1の伝送方式であり、
前記伝送フレームは、TID情報と音声情報及び制御情報から成る特別情報とを格納する格納領域を有し、
前記音声情報は、前記携帯端末同士で通話する音声情報であり、
前記制御情報は、前記携帯端末で生成する作業番号、作業者名、作業種別を含む作業着手前情報と、前記保守支援サーバで生成する作業着手の承認を与える情報と、作業箇所単位で作業着手前列車及び列車遅延を通知する通知情報であり、
前記携帯端末は、
前記制御端局を介して前記保守支援サーバに前記作業着手前情報を送信する送信手段と、
前記制御端局を介して前記保守支援サーバから前記通知情報を受信する受信手段と、を有し、
前記保守支援サーバは、
前記第1の伝送方式で伝送された前記伝送フレームに格納されたTID情報を前記保守支援サーバが収集したTID情報の内容に更新して、前記制御端局に送信するTID更新手段と、
前記伝送フレームに格納された前記特別情報の中の前記制御情報を取り出し、前記各制御端局に対する新たな制御情報にして前記制御端局に送信する第1の特別情報更新手段と、を備え、
前記各制御端局は、
前記保守支援サーバ又は上流の制御端局から前記伝送フレームを受信した場合に、当該受信した伝送フレームに格納されているTID情報及び自局宛の特別情報を取り出して前記携帯端末に送信し、前記携帯端末から受信した特別情報を前記保守支援サーバ及び下流の制御端局に搬送するための前記特別情報を生成し、前記伝送フレームに格納された前記特別情報を前記生成した特別情報で更新して前記保守支援サーバ又は下流の制御端局に送信する第2の特別情報更新手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
この請求項1に記載の発明によれば、保守支援サーバ及び制御端局間に形成される通信リンク上を所定の伝送フレームが周回することで、保守支援サーバが収集したTID情報と音声情報及び制御情報から成る特別情報とが制御端局に送信され、この制御端局を介して携帯端末に送信されるとともに、携帯端末からの情報が制御端局に送信され、更に他の制御端局を介して他の携帯端末に送信される。また、TID情報と音声情報及び制御情報から成る特別情報とが1つの伝送フレームに格納されるので、TID情報と音声情報及び制御情報とから成る特別情報といった異なる二種類の情報を同一に扱って送信可能な有線通信を実現できる。このため、保守作業時の人的ミスを防止する保守支援システムを実現できる。
【0017】
また、請求項に記載の発明のように、請求項に記載の保守支援システムにおいて、
隣接する制御端局は異なる搬送波周波数で前記無線通信を行うこととしても良い。
【0018】
この請求項に記載の発明によれば、請求項に記載の発明と同様の効果を奏するとともに、隣接する制御端局が異なる搬送波周波数で無線通信を行うことで、携帯端末は、制御端局から発信されている搬送波周波数から、発信元である制御端局を識別することができる。従って、隣接した制御端局間で発生する混信を防止することができる。
【0019】
更に、請求項に記載の発明のように、請求項1又は2に記載の保守支援システムにおいて、
前記制御端局と前記携帯端末との間の無線通信は、前記制御情報から成るデータ情報と音声情報とが統合された第2の伝送方式であることとしても良い。
【0020】
この請求項に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明と同様の効果を奏するとともに、要求される伝送品質が異なる2種類の情報、即ち、確実に伝送されることが要求されるデータ情報と、伝送遅延が最小となることが要求される音声情報とを統合した無線通信を実現できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下においては、本発明の保守支援システムをCTC区間用保守支援システムに適用した場合について説明する。このCTC区間用保守支援システムとは、CTC情報を用いて保守作業を支援するためのシステムである。
【0022】
1.CTC情報の活用と伝達方式
1.1 CTC情報の活用
CTCセンタにおいて、列車番号とその在線位置を示す運転状況情報(以下、「TID」情報と記す)が生成される。このTID情報は、作業現場で列車番号とその在線位置をリアルタイムで知ることができる列車ダイヤに相当する情報であり、本システムに最も適した情報である。
【0023】
1.2 情報伝達方式
CTCセンタに蓄積されているTID情報を、沿線作業現場まで伝達する方式について述べる。新たな設備導入に伴うコスト低減を含めると、伝達方式として無線を活用する方法が望ましいが、鉄道沿線は、山間部やトンネル、橋梁等の無線を阻害する要因も多く、これらの改善処置を含めると逆にコスト増となることが考えられる。また、従来の通信ケーブルの増設による処置も考えられるが、やはりコスト増になると考えられる。
【0024】
一方、作業者側から考えると、安定した品質で情報が届けられ、作業現場では移動性に追随できる伝達方式が望まれる。これらのことから、CTCセンタと沿線との間は、既設の通信回線の情報を統合化することで本システムに必要な回線を生成し、また、作業現場では、無線による自在な作業行動を追随できる、有線通信と無線通信とを結合した複合通信方式を採用する。
【0025】
2.CTC区間用保守支援システムの概要
保守作業者が犯しやすい人的ミスを防止するためには、線区における最新の列車ダイヤに相当するTID情報をリアルタイムに提供する仕組みを築き、列車監視業務をアシストすることで、見張員等が危険予知を即時に判断できる支援方法が必要とされる。
【0026】
また、CTC関連設備が停止又は正確な情報を提供できない場面を想定し、鉄道沿線電話(以下、「沿線電話」と記す)を同時に使用できる機構を併設する。沿線電話を併設するのは、予想外の事態発生時に独自の判断を避け、コミュニケーションを活用することで適切な情報を容易に収集し、危険回避を行い易くするためである。
【0027】
本実施の形態におけるCTC区間用保守支援システムの概要構成を、図1に示す。同図に示すように、CTC区間用保守支援システムは、CTCセンタのTID情報を集信するための保守支援サーバ100と、現場設備である駅伝送装置200、制御端局300、作業者が保持する携帯端末400及び警報器500と、本システムのインフラ技術である鉄道用マルチメディア・移動アクセス方式の通信ネットワークで構成される。以下、各装置の概要を説明する。
【0028】
2.1 保守支援サーバ
2.1.1 運行状況情報の集配信
保守支援サーバ100は、TID中央装置600とTID端末装置とが接続されている回線に接続することで、TID情報を収集する。TID情報の通信速度は、1200b/s又は2400b/sの何れかを選択できる構成である。集信したTID情報は、受信毎に沿線の制御端局300に向けて156Kb/sの通信速度で配信される。また、保守支援サーバ100は、必要に応じて鉄道電話交換機(以下、「電話交換機」と記す)700と音声情報を授受できるインターフェースを備える。
【0029】
2.1.2 作業管理
保守支援サーバ100は、後述する作業者が所持する携帯端末400から、作業着手直前に、作業番号や作業者名、作業種別(線閉、間合い等)、作業開始・終了時間、保守用車使用などを入力し、同情報を受付完了することで、携帯端末400に作業着手の承認を与える。また、本入力は、以下の機能を起動させる条件になる。
【0030】
2.1.3 列車リンク管理
作業管理の登録で、本線の何れかの場所で作業を行うことを保守支援サーバ100が認識し、作業箇所単位に接近してくる列車の抽出をTID情報に基づいて行う。列車リンク管理は、作業箇所単位に作業着手を行う直前の列車(作業着手列車)を上・下線別に抽出するとともに、作業時間帯における通過列車の遅延管理を行う。遅延そのものは、採時駅で記録した運転時間を用いる。
【0031】
保守支援サーバ100は、列車リンク管理で把握した作業箇所単位の作業着手列車及び列車遅延を通知情報として携帯端末400に送信することで、作業現場の見張員や作業責任者へ伝達する。作業現場では、伝達された通知情報とTID情報とにより、最新の列車ダイヤに相当する運行状況を自らリアルタイムに把握するとともに、作業着手列車の特定や列車遅延を把握することができる。
【0032】
これらの支援効果により、作業者の思い込みや注意転換遅れ、情報の誤認等を防止でき、危険予測の向上による新たな作業防護が可能となる。尚、以下において、作業着手列車や列車遅延情報等の通知情報を含めて、TID情報と表現することにする。
【0033】
2.2 制御端局
制御端局300は、無線出力に合わせて、約500m間隔に沿線に配置される。また、制御端局300は、保守支援サーバ100から送られてくるTID情報、電話交換機700からの音声情報、携帯端末400からの線閉制御や保守用車接近通知の各種情報を集配信する、有線通信と無線通信とを同時に使用できる複合伝送装置であり、有線通信を担う有線部310と、無線通信を担う無線部320と、を備えている。
【0034】
2.2.1 制御端局の送信・受信
有線部310は、保守支援サーバ100からのTID情報を、受信毎に無線部320に伝達する。そして、無線部320は、有線部310からのTID情報を、サイクリックブロードキャスト方式(連続送信)で携帯端末400に送信する。この送信方法により、携帯端末400を所有する作業者は、沿線内であれば自在且つリアルタイムにTID情報を受け取ることができる。また、制御端局300は、後述する携帯端末400から沿線電話や線閉制御が送られてきた場合には、受信した情報を、有線部310を介して保守支援サーバ100に伝達する。
【0035】
2.2.2 保守用車接近通知
保守用車の接近は、保守用車に携帯端末400を搭載し、携帯端末400から制御端局300に向けて接近通知を発信することで伝達する。制御端局300は、接近通知を受信すると、この受信した接近通知を保守支援サーバ100に送信し、保守支援サーバ100の保守用車管理により指示された制御端局300が、沿線に向けて接近通知を発信する。
【0036】
2.3 携帯端末
携帯端末400は、沿線作業者と当該システムを結ぶマンマシーン部であり、以下の2モードを備えている。
【0037】
2.3.1 作業者モード
作業者モードは、作業者が、保守支援サーバ100から送られてくるTID情報に基づいて最新の運行状況を把握する他、沿線電話や線閉制御が行えるモードである。
【0038】
TID情報を受信すると、携帯端末400は、2駅3中間に在線する列番と在線位置を表示し、同時に作業着手列車や遅延時間を注視する表示形式で表示する。また、携帯端末400は、TIDの表示窓番号を活用し、作業現場に最も近い表示窓に列車が在線した場合、接近予鈴を促す通知を行う。
【0039】
沿線電話は、画面インターフェース上からダイヤルを入力し、制御端局300経由で電話交換機700に接続されて通話が行える。尚、通話中であってもTID情報は表示できる。
【0040】
また、線閉制御は、制御端局300経由で保守支援サーバ100に伝送され、制御完了の応動或いは表示情報を制御端局300経由で携帯端末400に送信されて制御が完了する。
【0041】
2.3.2 保守用車モード
保守用車モードは、携帯端末400を保守用車に搭載し、保守用車接近通知を制御端局300に出力するモードであり、中継見張員の省力化を図る機能として位置付けられる。また、グループ作業のように中継見張員から離れた場所で行う作業者に対して列車の接近通知のみを行う警報器500が設けられている。
【0042】
3. 有線と無線の複合通信方式
上述の各機能を迅速に処置する、本システムのインフラ技術になる有線と無線の複合通信方式のネットワーク概要を述べる。
【0043】
本ネットワークは、有線通信と無線通信とを結合することで、有線通信と同様な通信品質を確保し、作業場所においては移動性に追随でき、自在に情報授受が行えることを特長とする。また、本システムで必要となる有線回線を自ら生み出すために、沿線情報を統合するための情報取り込み機能を有し、TID情報と沿線電話の音声情報とを統合する方法を用いた。
【0044】
音声情報を統合化するのは、本システムの性質及び技術面では音声情報が高速で連続性を要求する伝達処理が必要であり、本統合化を行うことで沿線情報の利便性を高める通信路を確保するためである。
【0045】
これらの条件を満たす通信仕様は、将来の鉄道沿線で新しい情報伝達体系を築く将来性が期待できるものである。以下に、各諸元とその概要を述べる。
【0046】
3.1 メタリック回線による高速ネットワーク化
CTCセンタと沿線との間を結ぶネットワークである。従来使用している通信回線のデータ容量は9.6Kb/sを標準規格としてきたが、情報量としては十分な容量とはいえなかった。そのため、本実施の形態では、156Kb/sの容量をもつベースバンド方式の伝送装置を採用する。図2に、有線通信の諸元を示す。
【0047】
ベースバンド方式は、伝送距離を長く確保できない欠点もあるが、直流から高周波までの広い帯域を持つ伝送路に適しており、デジタル信号をそのまま伝送路にのせることができ、コスト的に優位になることから本システムに採用している。
【0048】
また、伝送符号は、バイポーラ符号を用いる。バイポーラ符合は、極性の異なる二つの信号で交互に逆電位が現れるため、直流成分が減少して伝送路の低周波遮断の影響を受けにくい符合となり、ノイズに強い平衡伝送が行える特徴をもつ。
【0049】
3.2 無線通信
制御端局300と携帯端末400との間を結ぶネットワークであり、使用実績が豊富な40MHz帯の無線周波数を選定した。また、副搬送波周波数を用いたゾーン識別方式により、周波数の利用効率と混信防止を図った。図3に、無線通信の諸元を示す。
【0050】
3.2.1 無線系統
鉄道沿線に配置される制御端局300、携帯端末400(保守用車搭載分を含む)及び警報器500の無線系統を図4に示す。同図において、便宜上、制御端局300からの送信周波数をf1(429.50MHz)、携帯端末400からの送信周波数をf2(429.90MHz)、保守用車接近通知としての2波をそれぞれf3(下り:429.30MHz)、f4(上り;429.30MHz)と表記する。
【0051】
制御端局300から発信するf1は、CTCセンタから送られてくるTID情報、鉄道電話交換機700経由の音声情報、線閉等の制御応動、保守用車からの接近通知(上・下別)情報をパケット化した9.6b/sの電文情報で送信する。f1は常時発信であるため、保守者業者は、巡回等を含めた保守作業時に常にTID情報を受け取ることができるとともに、沿線電話の同時使用もできる。携帯端末400から発信されるf2は、沿線電話の音声情報及び線閉等の制御情報を出力し、応動が必要な情報は、f1の受信で行う。
【0052】
3.2.2 混信防止のゾーン識別
制御端局300は500m毎に配置しており、上述した無線周波数を各々の制御端局300で使用する場合、隣接する制御端局300間で混信が発生する可能性が有る。そこで、制御端局300毎に、図5に示す固有の副搬送波周波数を制御端局300に割り当てた3ゾーンを設け、混信防止を行う。
【0053】
携帯端末400は、制御端局300から発信されている副搬送波周波数を判別し、ゾーンの自動識別を行う。また、作業移動などで携帯端末400がゾーン境界付近に移動した場合には、両方の電波を受けることになるため、電界が最も大きい制御端局300のサービスを受けるゾーンの自動切換方式を採用した。
【0054】
3.3 TID情報と沿線電話との統合
TID情報と沿線電話とを同時に使用できる構成は、データ情報と音声情報とを統合することで通信回線の使用効率の向上及びコスト低減化を図ることができる。しかし、この2種類の情報は、取り扱う装置において全く異なる異質な情報となる。
【0055】
即ち、コンピュータネットワーク上で、データ情報は正しく伝送されることが要求される情報であり、再送処理などでデータ伝送の品質を確保する。一方、音声情報は、伝送遅延が通話品質に直接影響してくる情報であり、データ情報ように再送処理を行うと会話に遅延が発生する。
【0056】
そのため、本システムでは、この異質な2種類の情報の伝送を成立させるために、サイクリックブロードキャスト方式の伝送コントロール(伝送制御)を採用する。特に、音声は、ITU´sG.144推奨値である音声遅延ガイドライン150~400ms/片方以下を目標としている。尚、音声は、IMBEを基本とした音声符号化方式のボコーダ・チップで2kb/sに圧縮して伝送する。
【0057】
以上のように、CTCセンタと沿線の間は、図2に示す諸元の有線通信で、TID情報を代表に音声情報3CHや線閉制御、本システムの回線を生み出すための統合化による情報、並びに、図3に示す諸元の無線通信による情報伝送が行える。
【0058】
3.4 サイクリックブロードキャスト
有線通信及び無線通信に適用するサイクリックブロードキャストのプロトコル概要を述べる。本プロトコルは、連続通信を行う手法であり、異質な情報の伝達及び有線通信と無線通信との品質差を吸収する利点を持つ規約である。
【0059】
3.4.1 保守支援サーバと制御端局
保守支援サーバ100と制御端局300との間の伝送概要を図6に示す。同図に示すように、上流・下流別に、各々50msインターバルで、1パケット7.8Kb/sが連続的に送出される。尚、ここで「上流」とは、制御端局300から保守支援サーバ100への情報の伝達方向を意味し、「下流」とは、保守支援サーバ100から各制御端局300への情報の伝達方向を意味している。
【0060】
保守支援サーバ100と制御端局300と間の有線通信ネットワークの物理構成を図7に示す。尚、同図では、1つの保守支援サーバ100と2つの制御端局300(以下、各々を「制御端局300-1、300-2」と記す)とを備える場合を示している。同図に示すように、有線通信ネットワークは、保守支援サーバ100と制御端局300とをリング状に接続して通信リンクを形成している。そして、該通信リンク上を1つの伝送フレームFLが一方向へ一定周期で周回(伝送)することで、保守支援サーバ100と制御端局300との間の情報伝送がなされる。
【0061】
より詳細には、保守支援サーバ100の送信端子100aと制御端局300-1の受信端子300b-1とが接続され、制御端局300-1の送信端子300a-1と制御端局300-2の受信端子300b-2とが接続され、制御端局300-2の送信端子300a-2と保守支援サーバ100の受信端子100bとが接続されている。各装置(保守支援サーバ100及び制御端局300-1、2)は、50ms毎に伝送フレームFLを次の装置へ送出し、従って、伝送フレームFLは、保守支援サーバ100→制御端局300-1→制御端局300-2、の順で伝送されることになる。
【0062】
有線通信ネットワーク上を周回する伝送フレームFLのフォーマットの概略を図8に示す。同図に示すように、伝送フレームFLのフォーマットは、TIDデータ部10、音声データ部20、制御データ部30、を備えて構成される固定フォーマットである。
【0063】
TIDデータ部10は、保守支援サーバ100にて生成され、各制御端局300に伝送されるTID情報を格納する。
【0064】
音声データ部20は、沿線電話の使用に伴う音声情報を格納する。より詳細には、保守支援サーバ100から制御端局300-1に伝送される音声情報用の音声データ部20aと、保守支援サーバ100から制御端局300-2に伝送される音声情報用の音声データ部20bと、制御端局300-1から保守支援サーバ100に伝送される音声情報用の音声データ部20cと、制御端局300-1から制御端局300-2に伝送される音声情報用の音声データ部20dと、制御端局300-2から保守支援サーバ100に伝送される音声情報用の音声データ部20eと、制御端局300-2から制御端局300-1に伝送される音声情報用の音声データ部20fと、を備えており、各音声データ部20a~20fには、所定時間(例えば、50ms)分のアナログ音声を所定のサンプリングレートでデジタル化した音声情報が格納される。
【0065】
また、制御データ部30は、保守支援サーバ100と各制御端局300との間の通信用の制御情報を格納する。より詳細には、保守支援サーバ100から制御端局300-1に伝送される制御情報用の制御データ部30aと、保守支援サーバ100から制御端局300-2に伝送される制御情報用の制御データ部30bと、制御端局300-1から保守支援サーバ100に伝送される制御情報用の制御データ部30cと、制御端局300-2から保守支援サーバ100に伝送される制御情報用の制御データ部30dと、を備えている。
【0066】
保守支援サーバ100及び制御端局300の有線部310が備える有線通信部910の機能構成を図9に示す。同図に示すように、有線通信部910は、伝送処理部911及び1フレーム分の送信/受信データを一時的に保持する送受信バッファ912を備えて構成される。
【0067】
データ受信時には、伝送処理部911は、受信した1フレーム分の伝送符号をデジタル符号に変換し、受信データとして送受信バッファ912に書き込むとともに、該受信データから自装置宛のデータを取り出して中央制御部920に出力する。そして、送受信バッファ912に書き込まれている受信データの一部内容を更新することで伝送フレームFLを生成し、次装置へ送出する。
【0068】
具体的には、例えば制御端局300-1の場合、受信した伝送フレームFLから、TIDデータ部10に格納されたTID情報、音声データ部20a及び20fに格納された音声情報、そして制御データ部30aに格納された制御情報を取り出すとともに、取り出した音声情報を無線部320に出力する。そして、受信した伝送フレームFLにおいて、音声データ部20c及び20dに格納された音声情報を、無線部320によって受信され、デジタル化された新たな音声情報に更新するとともに、制御データ部30cに格納された制御情報を、保守支援サーバ100に対する新たな制御情報に更新することで、送出用の伝送フレームFLを生成し、制御端局300-2へ送出する。
【0069】
また、保守支援サーバ100の場合、受信した伝送フレームFLから、音声データ部20c及び20eに格納された音声情報、制御データ部30c及び30dに格納された制御情報を取り出し、取り出した音声情報を電話交換機700に送信する。そして、受信した伝送フレームFLにおいて、TIDデータ部10に格納されたTID情報を、TID中央装置600から収集した新たなTID情報に更新するとともに、音声データ部20a及び20bに格納された音声情報を、電話交換機700から受信した新たな音声情報に更新し、更に、制御データ部30a及び30bに格納された制御情報を、制御端局300-1及び300-2に対する新たな制御情報に更新することで送出用の伝送フレームFLを生成し、制御端局300-1へ送出する。
【0070】
3.4.2 制御端局と携帯端末
制御端局300と携帯端末400との間の伝送概要を図10に示す。同図に示すように、制御端局300と携帯端末400との間の伝送手順は、基本的に、上述した保守支援サーバ100と制御端局300との間の手順と同様であり、540b/s相当のTID情報及び420b/s相当の音声情報が、各々100msインターバルで送出される。また、携帯端末400からの線閉制御及び沿線電話のダイヤル情報は、500msインターバルで送出される。
【0071】
3.5 システムの安全性
本システムのセフティ技法は、以下の考え方に基づく。即ち、本システムは、沿線の保守業者用に有用な情報を提供することを第1の目的としているため、安定した伝送品質を確保することを基本としている。また、線閉制御については、伝送品質の他、装置間で行う合理性を併用することで誤制御を防止する。従って、本システムは、次の技法を用いて安全を確保する。
【0072】
つまり、通信或いは伝送のみでフェールセーフを達成することは難しいが、本システムでは、「情報は誤りを起こす」と位置付け、伝送システムとしてフォルト検出を含める誤った情報によるフェールアウトを防止するセフティ伝送を行う。特に、有線通信と無線通信とを併用するため、両者の異なる伝送品質を一定の品質として扱うサイクリックブロードキャスト方式や、回線上で発生するバースト誤り及びランダム誤りの検出、見逃し誤りによる誤判定を防止する以下の処置を行う。
【0073】
(1)有線・無線の各通信部は、互いに伝送品質が異なるため、誤動作や弊害を防止する方法として、50ms毎に連続送信を行うことで無線通信の品質を有線品質と同等にする方式とした。
(2)有線、無線の電文情報の誤りは、誤り検定能力が高く実用実績があるCRC検定を用いる。
(3)制御情報の誤り検出を高めるために、1制御2ビット手法を取り入れた。この手法は、制御指示を受けた装置側の合理性判定並びに見逃し誤り時の誤制御発生を1/2以下にできる手法である。
(4)各伝送部の正常動作を監視するため、周期乱れ監視や伝送回路の故障を検出する反転照合を行い、不良伝送部を検出する。
【0074】
以上のように、連続送信を行うサイクリックブロードキャストを主軸に照合判定、CRC検定、制御の2ビット化及び不良伝送部の検出により、セフティ伝送の確保を実現している。
【0075】
3.6 有線と無線の複合通信の応用
尚、本システムで適用した通信方式は、有線通信と無線通信を同時に活用することができるため、その適用用途は広い。特に、有線通信は50msの伝送コントロールで、常時20Hz相当の高速通信を確保する性能である。今回適用した音声情報を除いて他の情報に置き換えて使用する場合、以下の通信が可能となる。
【0076】
▲1▼沿線間の他設備を含めた情報伝送路として活用できる。
▲2▼基幹LANを布設している線区の支援(沿線)ネットワークとして使用できる。
▲3▼鉄道沿線に布設されている多芯ケーブルの統合化、並びに無線の活用による諸設備の配線レス化などが行える。
【0077】
このように、有線と無線の複合通信方式は、本システムへの適用をはじめ、今後の鉄道諸設備に対して新しい情報伝達を提供できる可能性を秘めた通信方式である。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、保守作業時の人的ミスを防止する保守支援システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態におけるCTC区間用保守支援システムの概要構成を示す図。
【図2】有線通信の諸元を示す図。
【図3】無線通信の諸元を示す図。
【図4】無線系統を示す図。
【図5】無線通信における混信防止のためのゾーン識別を説明するための図。
【図6】保守支援サーバ・制御端局間の伝送概要を示す図。
【図7】保守支援サーバ・制御端局間の有線通信ネットワークの物理構成を示す図。
【図8】伝送フレームのフォーマット構成を示す図。
【図9】有線通信部の機能構成を示すブロック図。
【図10】制御端局・携帯端末間の伝送概要を示す図。
【符号の説明】
100 保守支援サーバ
200 駅伝送装置
300 制御端局
400 携帯端末
500 警報器
600 TID中央装置
700 電話交換機
FL 伝送フレーム
10 TIDデータ部
20(20a~20f) 音声データ部
30(30a~30d) 制御データ部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
8
【図10】
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