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明細書 :パンタグラフ、パンタグラフの構成部分、および、パンタグラフの構成部分の形状の最適化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3909314号 (P3909314)
公開番号 特開2005-020834 (P2005-020834A)
登録日 平成19年1月26日(2007.1.26)
発行日 平成19年4月25日(2007.4.25)
公開日 平成17年1月20日(2005.1.20)
発明の名称または考案の名称 パンタグラフ、パンタグラフの構成部分、および、パンタグラフの構成部分の形状の最適化方法
国際特許分類 B60L   5/20        (2006.01)
FI B60L 5/20 Z
請求項の数または発明の数 11
全頁数 12
出願番号 特願2003-179607 (P2003-179607)
出願日 平成15年6月24日(2003.6.24)
審査請求日 平成17年6月28日(2005.6.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】鈴木 昌弘
【氏名】池田 充
個別代理人の代理人 【識別番号】100099715、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 聡
審査官 【審査官】本庄 亮太郎
参考文献・文献 特開2000-125404(JP,A)
特開2002-329433(JP,A)
調査した分野 B60L 5/19-32
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の曲線により定義された形状を配置した流れ場のシミュレーションを実行し、目的関数が最小となるように、最適化手法を利用して得られた形状を有することを特徴とするパンタグラフ。
【請求項2】
所定の曲線により定義された形状を配置した流れ場のシミュレーションを実行し、目的関数が最小となるように、最適化手法を利用して得られた形状を有することを特徴とするパンタグラフの構成部分。
【請求項3】
前記パンタグラフの構成部分が舟体であることを特徴とする請求項2に記載の構成部分。
【請求項4】
前記曲線が、Bスプライン(B-spline)曲線であることを特徴とする請求項3に記載の構成部分。
【請求項5】
前記曲線が、三次スプライン曲線であることを特徴とする請求項3に記載の構成部分。
【請求項6】
前記舟体の断面が、進行方向に平行な直線に関して線対称であることを特徴とする請求項4または5に記載の構成部分。
【請求項7】
前記シミュレーションにおいて、舟体の迎角を上下に所定の角度だけ変動させ、かつ、目的関数として、
【数1】
JP0003909314B2_000006t.gif
(なお、上記式において、Clは揚力係数、newはすり板が摩耗していない状態、oldはすり板が摩耗している状態、αは迎角(度)をそれぞれ示す。)
を最小にするような形状を有することを特徴とする請求項3ないし6の何れか一項に記載の構成部分。
【請求項8】
前記シミュレーションにおいて、舟体の迎角を上限に所定の角度だけ変動させ、かつ、目的関数として、
【数2】
JP0003909314B2_000007t.gif
(なお、上記式において、a,bは係数、Clは揚力係数、newはすり板が摩耗していない状態、oldはすり板が摩耗している状態、aveは平均値、rmsは実効値、αは迎角(度)をそれぞれ示す。)
を最小にするような形状を有することを特徴とする請求項3ないし6の何れか一項に記載の構成部分。
【請求項9】
前記最適化手法が、Downhill Simplex法と焼き鈍し法との組み合わせであることを特徴とする請求項3ないし8の何れか一項に記載の構成部分。
【請求項10】
前記最適化手法が、進化的アルゴリズムであることを特徴とする請求項3ないし8の何れか一項に記載の構成部分。
【請求項11】
パンタグラフ或いはその構成部分の形状を最適化する方法であって、
所定の曲線により定義された形状を配置した流れ場のシミュレーションを実行するステップと、
目的関数が最小となるように、最適化手法を利用するステップとを備え、前記シミュレーションの実行および最適化手法の利用を繰り返すことにより、目的関数が最小となる形状を得ることを特徴とする方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、空力特性が最適化されたパンタグラフ、および、その形状を最適化する手法に関する。
【0002】
【従来の技術】
パンタグラフは、鉄道車両を構成する主要部品であり、その機能は、架線から走行車両へ安定して電気エネルギーを取り入れることにある。その機能を実現するためには、安定した揚力性能、つまり、架線とパンタグラフとの間の接触力を適正範囲に保つことが求められる。さらに、列車が高速に走行するのにしたがって、低騒音を実現することも求められる。
【0003】
パンタグラフは架線を一定の力で押し上げながら走行する。架線は、所定の間隔で配置された電柱によって、つり下げられているため、同じ力で押し上げても、場所によって変位量が変わってくる。そのため、パンタグラフは架線の動きに追随して、上下に動くことになる。すなわち、列車の走行速度と上下運動速度との合成ベクトルを考えると、パンタグラフに当たる流れの迎角が常に変化していることになる。また、トンネルや対向列車とのすれ違い等の走行条件から迎角が変化することもある。
【0004】
図1に示すように、パンタグラフ10は、台枠12、枠組み14、舟支え16、舟体18を備えている。このうち、最も上下方向の空気力(揚力)を受ける部分は舟体18である。迎角変化に揚力が敏感な舟体形状では、押し上げる力が過大になり架線を損傷させたり、逆に下向きの揚力が発生すると架線から離れ(離線)、受電できなくなったりする恐れがある。そこで、今までは、迎角変化に鈍感な舟体形状として、角張った断面(横断面)形状の舟体が主に採用されてきた。
【0005】
【非特許文献1】
「新幹線用パンタグラフの空気力学的課題」(池田 充著、 日本機械学会誌 2002.6 Vol.105 No.1003 2002年6月発行)
【0006】
【非特許文献2】
「フォートラン77における数値的秘法(Numerical Recipes in FORTRAN77)」(ダブリュ・エイチ・プレス (W.H.Press)他著、科学的計算の手法
第2版(the art of scientific computing 2nd ed) 1992年発行 第443頁~第447頁)
【0007】
【非特許文献3】
「遺伝的アルゴリズムの基礎 -GAの謎を解く-」(伊庭斉志、オーム社、1994(平成6)年9月20日第1版第1刷発行)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
一方、パンタグラフは、列車から発生する空力音の主音源のひとつである。角張った形状では、空力音を低減することは、難しい。空力音を低減するためには、なるべく剥離を抑えた流線形状、すなわち、飛行機の翼型のようなものが望ましいと考えられる。ところが、このような形状は迎角変化に対して敏感に揚力が反応してしまう。この相矛盾する、迎角変化に鈍感な揚力と低空力音を同時に達することはきわめて難しい。
【0009】
さらに、舟体は、架線と接触する部分(すり板)があり、走行するにしたがって、摩耗していき、その形状が変化することも、揚力の安定化および低騒音化の実現を、よりいっそう難しくしている。
無論、揚力の安定化および低騒音化を実現するためには、舟体以外のパンタグラフの要素(たとえば、枠組み)の形状も考慮することが望ましい。
【0010】
たとえば、非特許文献1には、安定した揚力特性を得るためにある程度の角部を有する形状であるが、カルマン渦のような大規模渦構造の発達がないよう、断面のアスペクト比を、従来の「1」から数倍以上大きく取った舟体を有するパンタグラフが提案されている。また、非特許文献1には、舟体に回転自由度を与え、大きな揚力が作用しないように舟体の迎角をパッシブに変化させる機構を有するパンタグラフも提案されている。
【0011】
しかしながら、揚力の安定化および低騒音化を実現するために、従来、風洞実験を用いて試行錯誤的に望ましい形状を求めていたため、実験回数などの制約から、最適な形状を得ることは容易ではないという問題点があった。
本発明は、安定した揚力性能および低騒音を実現するパンタグラフ、および、その構成部分を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、所定の曲線により定義された形状を配置した流れ場のシミュレーションを実行し、目的関数が最小となるように、最適化手法を利用して得られた形状を有することを特徴とするパンタグラフにより達成される。
【0013】
シミュレーションの実行と最適化手法による目的関数の最小化を繰り返すことにより、風洞実験を行なって試行錯誤することなく、適切な形状のパンタグラフを得ることが可能となる。
【0014】
また、本発明の目的は、所定の曲線により定義された形状を配置した流れ場のシミュレーションを実行し、目的関数が最小となるように、最適化手法を利用して得られた形状を有することを特徴とするパンタグラフの構成部分により達成される。たとえば、パンタグラフの構成部分には、舟体が相当する。当該構成部分がアームに相当しても良い。
【0015】
好ましい実施態様においては、前記曲線が、Bスプライン(B-spline)曲線である。或いは、前記曲線が、三次スプライン曲線などの自由曲線であっても良い。また、前記舟体の断面が、進行方向に平行な直線に関して線対称とすれば、計算時間を短縮することができる。
【0016】
より好ましい実施態様において、前記シミュレーションにおいて、舟体の迎角を上下に所定の角度だけ変動させ、かつ、目的関数として、
【0017】
【数3】
JP0003909314B2_000002t.gif(なお、上記式において、Clは揚力係数、newはすり板が摩耗していない状態、oldはすり板が摩耗している状態、αは迎角(度)をそれぞれ示す。)を最小にするような形状を有する。
【0018】
別の好ましい実施態様において、前記シミュレーションにおいて、舟体の迎角を上限に所定の角度だけ変動させ、かつ、目的関数として、
【0019】
【数4】
JP0003909314B2_000003t.gif(なお、上記式において、a,bは係数、Clは揚力係数、newはすり板が摩耗していない状態、oldはすり板が摩耗している状態、aveは平均値、rmsは実効値、αは迎角(度)をそれぞれ示す。)を最小にするような形状を有する。
【0020】
たとえば、前記最適化手法として、Downhill Simplex法と焼き鈍し法との組み合わせを用いても良いし、或いは、進化的アルゴリズムを用いても良い。
【0021】
また、本発明の目的は、パンタグラフ或いはその構成部分の形状を最適化する方法であって、所定の曲線により定義された形状を配置した流れ場のシミュレーションを実行するステップと、目的関数が最小となるように、最適化手法を利用するステップとを備え、前記シミュレーションの実行および最適化手法の利用を繰り返すことにより、目的関数が最小となる形状を得ることを特徴とする方法によっても達成される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、舟体の断面形状を最適化するために、図2にその機能的ブロックダイヤグラムを示すようなシステムを利用して、その形状を算出した。図2に示すシステムは、実際にはコンピュータにより実現される。システム20は、シミュレーション実行および最適化の演算に必要なプログラムおよびデータを記憶した記憶装置22と、シミュレーションに必要なパラメータを設定して、シミュレーションを実行するシミュレーション実行部24と、最適化演算を実行する最適化演算部26と、ユーザインタフェース(I/F)28と、キーボード、マウスなどの入力装置30と、表示装置32とを備えている。
【0023】
本実施の形態においては、所定の曲線を定義し、流れ場のシミュレーションをシミュレーション実行部24にて実行し、目的関数が最小となるよう所定の最適化手法を利用した演算を最適化演算部26にて実行する。これらにおける処理を繰り返すことにより、舟体の最適な断面形状を得ることができる。
【0024】
最適化とは、制約条件を満たすものの中で、目的関数を最小あるいは最大にするような設計変数の値を決定するものである。目的関数とは、流体力学的な問題では、揚力、抗力等の流体力学的な性能となる。最適化法は、決定論的な方法と確率論的な方法に分けられる。これらについて、以下に簡単に説明を加える。
【0025】
最大値を求める最適化を考えるとき、目的関数の分布が1つの山のような場合(単峰)、決定論的な方法が適する。一方、目的関数の分布が連なった山のようになっている場合(多峰)、決定論的な方法では、局所最適化になってしまうことがあり、このような場合は確率論的な方法が適している。一般に決定論的な方法は計算時間が少なくてすむが、確率論的な方法は長時間の計算時間を必要とする。流体力学的な問題は、多峰性をもつことが多い。
【0026】
本実施の形態においては、最適化のために、2つの方法を実行することができる。ひとつは、Downhill Simplex法と焼き鈍し法とを組み合わせた方法である(非特許文献2参照)。Downhill Simplex法は、決定論的な方法の一種である。ここでは、設計変数が2つの場合について図3を参照して、Downhill
Simplex法を説明する。始めに、適当な3つの設計変数の組み合わせ(この3点からなる三角形をSimplexという:符号300参照)に対して、それぞれの目的関数を計算する。求めた目的関数の大小関係から、最適値の方向(たとえば図3における矢印の方向)にSimplexを折り返す。折り返した点での目的関数を計算し、Simplex内の目的関数の大小関係からSimplexを再度折り返す。この折り返す手順を繰り返すことで、最適解に近づいていく方法である。
【0027】
一方、焼き鈍し法は、確率論的な方法の一種であり、統計物理学で用いられる焼き鈍しとの類似から考案されたものである。ボルツマンの分布に従う確率で、悪い解も受け入れることで、局所解に陥らず大域的な最適解の探索が期待できる。この焼き鈍し法とDownhill Simplex法とは組み合わせることができ、大域的な解を探し出せるようになる。
【0028】
また、本実施の形態において、実行可能なもう一つの方法である進化的アルゴリズムは、確率論的な方法の一種であり、進化論を模擬した計算手法である(非特許文献3参照)。ある一定数の設計候補(個体)からなる集団を考えて、その各個体に目的関数に応じた適応度を与える。適応度に応じて親となる個体を選び、設計変数としての遺伝情報に交叉、突然変異等の操作をして子を作る。親と子を適当に入れ替え、世代を交代させていく。世代を進めることで、大局的な最適解に近づいていく。
【0029】
また、最適化を行うにあたり、パンタグラフ舟体形状をどのように定義するのかは、極めて重要である。形状の定義の仕方により、暗黙のうちに拘束条件が入ってくるからである。しかし、大きな自由度を与える、すなわち、設計変数を多くすると、最終的な形状が実用的にならない、収束し難いなどの問題が生じることがある。本実施の形態においては、簡便ながら,最適化手法の形状定義に比較的適していると言われている3次のB-Spline関数を用いた。
【0030】
図4は、本実施の形態で用いられるB-Spline関数を用いて定義された舟体の断面形状の例を示す図である。ここでは、上下対称翼として、半面を7つの節点(コントロールポイント:たとえば符号401、402参照)で定義している。図4においては、舟体の断面形状の上側が示される。下側は、簡単にするため線対称の形状としているが、上下非対称であっても良い。また、制約条件として、舟体が薄すぎると構造上問題があるので、最低厚みも定義される。
【0031】
空力音の数値シミュレーションは、流れ場の変動量を計算した上で、Lighthill-Curl方程式に基づく遠距離場の理論により推測する方法が広く用いられている。しかしながら、現状では、最適化手法と組み合わせるのは、その計算量から困難である。そこで、本実施の形態においては、2次元非定常非圧縮ナビエ・ストークス方程式を、風上差分を用いたMAC法により解き、求めたパンタグラフ舟体の揚力係数の時間変化から、その空力特性を評価することとした。空力音は、物体から受ける力の変動により物体の周りの空気に生じた微少な加速度運動の伝搬であることから、低周波域の二重極音源だけを考えれば、揚力変動の小さい物体は空力音が小さいと見なせる。以下に、本実施の形態において用いた目的関数の例を示す。いずれの場合も目的関数の最小化を目指す。
【0032】
【数5】
JP0003909314B2_000004t.gif【0033】
【数6】
JP0003909314B2_000005t.gif【0034】
上記式において、a,bは係数、Clは揚力係数、newはすり板が摩耗していない状態、oldはすり板が摩耗している状態、aveは平均値、rmsは実効値、αは迎角(度)をそれぞれ示す。また、摩耗した時のすり板の高さは新品のすり板の6mm減とした。「目的関数1」(数1参照)の場合は、すべてのケースにおける揚力の時間変化の最大値と最小値の幅により、迎角変化やすり板の摩耗による揚力変化と空力音の評価を同時に行っている。一方、「目的関数2」(数2参照)では、平均値の最大値と最小値の幅から揚力変化を、実効値から空力音の評価を行っている。
【0035】
図5(a)、(b)は、それぞれ、本実施の形態において利用した「目的関数1」および「目的関数2」をより具体的に説明する図である。各図において、曲線は、舟体に加えられる揚力の時間変化を表す。
【0036】
「目的関数1」は、設定された、あるコントロールポイントにより定義される形状における、迎角が±3度の場合の揚力の値、および、上記形状の上部が所定の大きさ(実施の形態では6mm)だけ摩耗した状態で、迎角が±3度の場合の揚力の値について、その最大値と最小値の差異を表している。
【0037】
「目的関数2」は、「目的関数1」と同一の形状について、揚力が最大となるものの平均値と、揚力が最小になるものの平均値との差、および、実効値(曲線の振れ幅)が最大となるものの当該実効値の和(それぞれを重み付けた和)を表している。つまり、「目的関数2」は、図5(b)における「a×▲1▼+b×▲2▼(a、bはそれぞれ重み)」に相当する。
【0038】
なお、本実施の形態において、迎角の変化に関する目的関数を最小化することにより、最適な形状を求めている。ここで、空力音は、物体から受ける力の変動により物体の周りの空気に生じた微妙な加速度運動の伝搬と考えられるため、周波数空間を無視すれば、揚力変動の小さい物体は空力音が小さいとみなせる。特に、「目的関数2」については、数2における係数「a」を乗じる部分(図5(b)における▲1▼に対応する部分)を最小にすることが、揚力変動が最小化することに関連し、かつ、係数「b」を乗じる部分(図5(b)における▲2▼に対応する部分)を最小にすることが、実効値が加速度運動を生じる原因と考えることができるため、騒音を最小にすることに関連する。
【0039】
以下、より具体的に、システムにて実行される処理について、図6を参照して説明する。まず、オペレータは、入力装置30を操作して、シミュレーションを実行するための条件や、最適化演算のための条件を設定する(ステップ601)。たとえば、シミュレーションを実行するための条件には、形状の定義に利用するための関数の選択、舟体の最低厚み、迎角、利用する目的関数の選択などが含まれる。また、最適化演算のための条件には、アルゴリズムの選択(本実施の形態においては、Downhill Simplex法と焼き鈍し法との組み合わせ、或いは、進化的アルゴリズムの選択)などが含まれる。
【0040】
シミュレーション実行部24は、設定された条件にしたがって、初期的な舟体の断面形状を発生させる(ステップ602)。次いで、シミュレーション実行部24は、当該発生させた形状に関してシミュレーションを実行して、それぞれの迎角における揚力(の時間的変化)を算出する(ステップ603)。なお発生させた舟体の形状やシミュレーションの結果は、記憶装置22に記憶される。
【0041】
次いで、最適化演算部26は、選択されたアルゴリズムにしたがって、目的関数を計算し、当該目的関数の値に基づいて、次に演算すべきコントロールポイントの値を設定する(ステップ606)。これは、図4に示す7つのコントロールポイントのうち、横軸方向(X軸方向)の原点に位置する2つ(最下部両端に位置する2つのコントロールポイント)を除く5つのコントロールポイントの値を変更することにより実現される。なお、本実施の形態においては、上記横軸方向の原点に位置する2つのコントロールポイントのそれぞれについては、縦軸方向(Y軸方向)にのみ移動させることができ、他の3つのコントロールポイントについては、横軸方向および縦軸方向の双方に移動させることができる。このような最適化演算の結果やコントロールポイントの値の変更にかかる情報は、記憶装置22に記憶される。
【0042】
シミュレーション実行部603は、新たに設定されたコントロールに基づいて再度シミュレーションを実行する。ステップ603ないし606の処理は、最適化が完了した場合、つまり、最適化演算部26において最適解が得られたと判断されるまで繰り返される(ステップ605参照)。
【0043】
図7は、「目的関数1」を最小にするように最適化演算を実行した結果得られた舟体の形状の例を示す図、図8も、「目的関数1」を最小にするように最適化演算を実行した結果得られた舟体の形状の例を示す図である。それぞれの図において、図(a)は、すり板が摩耗していない状態を示し、図(b)はすり板が6mmだけ摩耗している状態を示している。また、図において、列車は左に向かって進行する。
【0044】
図7の例では、舟体の進行方向の長さを200mmになるようコントロールポイントを設定し、かつ、全長を基準としたレイノルズ数は10とした。図8の例では、舟体の進行方向の長さを120mmになるようにコントロールポイントを設定し、かつ、全長を基準としたレイノルズ数は10とした。
【0045】
図7および図8に示すように、舟体の形状は、迎角の変化に対して鈍感となるために、進行方向の側の先端が丸くなり、全体的にずんぐりとした形状となる。その一方、後端付近では、剥離域とその後領域を小さくするために絞り込んだ形状となる。
【0046】
本実施の形態によれば、所定の関数およびコントロールポイントにより定義された形状から、流れ場のシミュレーションを利用して、設定された目的関数が最小となるような最適化手法を利用して、舟体の形状を得た。このような手法を利用すれば、試行錯誤的に徐々に形状を決定するのではなく、適切な形状を得ることが可能となる。また、目的関数の変更、コントロールポイントの変更なども容易である。
【0047】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
たとえば、前記実施の形態においては、舟体の形状を定義するために、B-Spline関数を利用したが、これに限定されるものではなく、他の関数、たとえば、三次Spline関数などを利用することもできる。また、流れ場のシミュレーションにおいて、ナビエ・ストークス方程式を利用しているが、これに限定されるものではない。可能であれば、Lighthill-Curl方程式に基づく遠距離場の理論により推測しても良い。
【0048】
さらに、前記実施の形態においては、Downhill Simplex法と焼き鈍し法との組み合わせ、或いは、進化的アルゴリズムを使用したが、これに限定されるものではなく、決定論的な方法或いは確率論的な方法に属する他の手法を利用しても良いことは言うまでも無い。
【0049】
また、前記実施の形態においては、パンタグラフ中、最適な断面形状を有する舟体を提供するが、これに限定されるものではなく、安定した揚力性能と低騒音を両立するために、上記手法を利用して得た形状のアームなどを提供することも可能である。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、安定した揚力性能および低騒音を実現するパンタグラフ、および、その構成部分を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、パンタグラフの構造を概略的に示す図である。
【図2】 図2は、本実施の形態にかかるパンタグラフの形状を決定するためのシステムのブロックダイヤグラムである。
【図3】 図3は、本実施の形態において利用したDownhill Simplex法を説明するための図である。
【図4】 図4は、本実施の形態で用いられるB-Spline関数を用いて定義された舟体の断面形状の例を示す図である。
【図5】 図5(a)、(b)は、それぞれ、本実施の形態において利用した「目的関数1」および「目的関数2」をより具体的に説明する図である。
【図6】 図6は、本実施の形態にかかるシステムにおいて実行される処理を示すフローチャートである。
【図7】 図7は、「目的関数1」を最小にするように最適化演算を実行した結果得られた舟体の形状の例を示す図である。
【図8】 図8は、「目的関数1」を最小にするように最適化演算を実行した結果得られた舟体の形状の他の例を示す図である。
【符号の説明】
10 パンタグラフ
12 台枠
14 枠組み
16 舟支え
18 舟体
20 システム
22 記憶装置
24 シミュレーション実行部
26 最適化演算部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7