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明細書 :集電摺動用鉄系焼結合金

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4083633号 (P4083633)
公開番号 特開2005-015828 (P2005-015828A)
登録日 平成20年2月22日(2008.2.22)
発行日 平成20年4月30日(2008.4.30)
公開日 平成17年1月20日(2005.1.20)
発明の名称または考案の名称 集電摺動用鉄系焼結合金
国際特許分類 C22C  38/00        (2006.01)
B22F   5/00        (2006.01)
C22C  33/02        (2006.01)
C22C  38/18        (2006.01)
FI C22C 38/00 304
B22F 5/00 S
C22C 33/02 103A
C22C 38/18
請求項の数または発明の数 2
全頁数 5
出願番号 特願2003-180151 (P2003-180151)
出願日 平成15年6月24日(2003.6.24)
審査請求日 平成17年7月22日(2005.7.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000215752
【氏名又は名称】帝国カーボン工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】久保 俊一
【氏名】土屋 広志
【氏名】池内 実治
【氏名】畔津 巌
【氏名】畔津 秀明
【氏名】畔津 健太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】110000073、【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
審査官 【審査官】木村 孔一
参考文献・文献 特開昭62-284036(JP,A)
特開昭54-043808(JP,A)
特開平04-110442(JP,A)
特開昭58-133346(JP,A)
特開平05-320817(JP,A)
特開昭62-010238(JP,A)
特開平03-170639(JP,A)
調査した分野 C22C 38/00-38/60
B22F 5/00
C22C 33/02
特許請求の範囲 【請求項1】
耐摩耗、耐アーク成分として単体Cr8~28重量%、潤滑成分としてMoS(またはWS)2~8重量%、潤滑強化成分としてBi0.3~5重量%、残部Feからなる粉末原料を混合後、圧縮成形し、これを非酸化性ないしは還元性雰囲気中で加熱して焼結体を得ることを特徴とする集電摺動用鉄系焼結合金。
【請求項2】
耐摩耗,耐アーク成分として単体Cr8~28重量%、潤滑成分としてMoS(またはWS)2~8重量%、潤滑強化成分としてBi0.3~5重量%、ならびにBN0.1~3重量%、残部Feからなる粉末原料を混合後、圧縮成形し、これを非酸化性ないしは還元性雰囲気中で加熱して焼結体を得ることを特徴とする集電摺動用鉄系焼結合金。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、集電摺動部分に使用される耐摩耗性と潤滑性に優れた鉄系焼結合金、特に速度220~400km/hで走行する高速電気車のパンタグラフすり板として好適な集電摺動用鉄系焼結合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現行速度220~300km/hで使用されている新幹線電車用パンタグラフすり板は、Feを母材とした焼結組織中に、耐摩耗、耐アーク性保持のためCrなどの硬質、耐熱成分を点在させる一方、相手方トロリー線の損耗を軽減するための潤滑成分としてMoSなどを添加するほか、各種すり板銘柄とも共通して2~15%のPbを含有している。本発明者の一部は高速度用パンタグラフすり板として特許1519154号、1756787号を得ており、現在、新幹線電車のパンタグラフすり板用に供されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、環境保全の観点から各種部材の無鉛化が進められており、集電摺動材としてのすり板も埒外ではなくなった。新幹線電車の現用パンタグラフすり板すべてに潤滑成分としてPbが含有されていることから、早期の代替材質の出現が望まれていた。
【0004】
Pbに替わる潤滑成分を用いたすり板の発明を特許1519154号、1756787号の発明者らは既に為しており、特許2511225号(請求項2)、2042163号がこれに該当する。同発明者らはその後さらに研究を重ね、前掲の各号を凌ぐ高性能の無鉛化すり板を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の如き課題を解決するため、Pbに替わる成分として環境に無害のBiに着目した。Biは軟質金属で、銅とは非凝着であり、非削性でもあるため摺動摩擦時に相手方の銅質トロリー線を傷つけない。また、すり板体の主要構成成分であるFe、Crと固溶体をつくらないので、Pbの場合と同様、固有の潤滑性を保持し続ける。Biの融点は271℃であるが、沸点が1560℃であることから、MoS(またはWS)が酸化によって潤滑機能が低下するとされる空気中での温度約400℃に達しても、Biは流体状となってすり板組織中に存在し、潤滑性を維持し続ける。集電摺動中、離線アークなどによってすり板摺動面が瞬時1000℃を越える場合が発生しても、沸点に達するまでBiはその機能を失わない。Pbは融点327℃、沸点1725℃であるからBiのそれと近似している。以上のことから、Bi含有集電摺動材の潤滑機能はPb含有材に十分比肩しうると推察した。
【0006】
なお、常温にて空気中においてBi粉を取り扱う際、取扱時間の長さによっては酸化に起因する変色を生じることがあるが、その性能は非酸化状態のBiと何ら相違することがないので、そのまま使用することができ、従って、本明細書に記載のBiには酸化したものを含む。
【0007】
Biの配合量は0.3~5重量%が適量で、0.3%未満では潤滑効果が乏しく、5%を越えると過剰となってすり板体の機械的強度を低下させる。
【0008】
MoSは潤滑機能を果たすとともに、Moの一部は母材Feと反応してFe-Mo固溶体をつくり、機械的強度の向上に寄与する。MoSの配合量は2~8重量%が適量で、2%未満では潤滑効果の保持に乏しく、8%を越えると過剰となって機械的強度を低下させる。WSも同様である。
【0009】
BNは900℃という高い温度域まで安定した潤滑性能を維持し、かつ密度の小さい微粉末であるため広範囲に散在し、高温度域でBiと共存してすり板体の潤滑性向上に寄与する。その配合量は、前記の潤滑性能を発揮するために0.1重量%以上必要であるが、BNは、金属粉との焼結性が悪いため機械的強度低下の原因になり易く、3重量%以下にとどめるべきで、BiとMoS(またはWS)にて円滑な潤滑作用が確保できればBNを添加しない場合もある。
【0010】
耐摩耗、耐アーク成分としての粒粉状Crは焼結の際、母材Feと反応してFe-Crの固溶体をつくり、強固な素地形成に寄与する。配合適量は8~28重量%で、8%未満では耐摩耗性、耐アーク性に乏しく、28%を越えると機械的強度の低下を招く。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。原料粉として単体Cr80~150メッシュ、Bi60メッシュ以下を他の原料粉と共に、表1に示す配合組成(重量%)によりV型混合機にて均一に混合の上、その混合粉を金型に装填後600MPaで圧縮成形し、還元雰囲気中で1200℃、80分間焼結し、本発明の焼結合金を得た。同時に、新幹線電車パンタグラフすり板として現用中の特許1756787号相当材を比較例1とし、特許2511225号(請求項2)相当材を比較例2として表1に併記した。
【0012】
【表1】
JP0004083633B2_000002t.gif【0013】
前記表1により得られた焼結合金の機械的特性は表2のとおりである。
【0014】
【表2】
JP0004083633B2_000003t.gif【0015】
また、前記の各実施例ならびに比較例より得られた焼結合金を切り出して各試験片10×25×90mmをつくり、これらを回転式集電摺動試験機に取付け、押上力54N、通電電流AC150A、摺動速度100km/h、左右振れ巾40mm、60分間無潤滑で硬銅トロリー線に接触摺動させ、その時の各試験片の比摩耗量と、相手トロリー線に対しパンタに取付けられた試験片が1万回通過当りのトロリー線の摩耗厚みmmを測定した。その結果を表3に示す。
【0016】
【表3】
JP0004083633B2_000004t.gif【0017】
前記表2より明らかな如く、本発明の実施例1~10により得られた鉄系焼結合金は、高速電気車のパンタグラフすり板として必要な機械的特性を具備し、かつ表3より明らかな如く、現在、220~300km/hで使用されている比較例1相当の新幹線電車用すり板試験片と対比すると、その耐摩耗性を顕著に向上せしめるとともに、すり板摺動面は平滑で光沢があって相手方トロリー線の損耗を大幅に減少させることが実証された。
【0018】
また、特許2511225号(請求項2)相当材である比較例2と対比しても、上記同様、すり板の耐摩耗性、相手方トロリー線の損耗抑制の両面で性能向上が認められた。
【0019】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明は、環境に悪影響を及ぼすPbを含有することなしに、高速電気車におけるパンタグラフすり板としてPb含有材を越える潤滑性能を発揮し、相手方トロリー線の損耗を減少させるとともに、すり板の耐摩耗性をも顕著に向上せしめることができる効果があり、220~400km/hの高速度域での無鉛化すり板として有益である。