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明細書 :海底トンネル内の鋼材の劣化予測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4041033号 (P4041033)
公開番号 特開2005-043221 (P2005-043221A)
登録日 平成19年11月16日(2007.11.16)
発行日 平成20年1月30日(2008.1.30)
公開日 平成17年2月17日(2005.2.17)
発明の名称または考案の名称 海底トンネル内の鋼材の劣化予測方法
国際特許分類 G01N  17/00        (2006.01)
G01M  19/00        (2006.01)
FI G01N 17/00
G01M 19/00
請求項の数または発明の数 1
全頁数 11
出願番号 特願2003-277725 (P2003-277725)
出願日 平成15年7月22日(2003.7.22)
審査請求日 平成17年11月24日(2005.11.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】坂井 宏行
個別代理人の代理人 【識別番号】100085394、【弁理士】、【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
審査官 【審査官】福田 裕司
参考文献・文献 特開平05-113397(JP,A)
特開平09-318586(JP,A)
特開2003-004599(JP,A)
特開2003-075327(JP,A)
特開2002-294681(JP,A)
国際公開第03/006957(WO,A1)
特開2003-185563(JP,A)
特開2003-161692(JP,A)
特開2003-121341(JP,A)
特開2002-372507(JP,A)
特開2002-333398(JP,A)
特開2001-264240(JP,A)
特開2001-141545(JP,A)
特開2000-283978(JP,A)
特開平07-311192(JP,A)
特開平06-138079(JP,A)
特開平02-118446(JP,A)
特開昭64-053146(JP,A)
特開昭64-046641(JP,A)
調査した分野 G01N 17/00
G01M 19/00
特許請求の範囲 【請求項1】
鋼材劣化の促進物を含有する水が付着する鋼材の劣化予測をする方法であって、鋼材が置かれている海底トンネルの環境下で測定される前記促進物の累積量と鋼材の劣化度合いとの関係を求め、該求めた関係に、上記環境下で実際に測定される前記促進物の測定量の累積値を算入して前記環境下に置かれる鋼材の劣化予測をするにあたり、促進物の累積量は、海底トンネルを通過する交通設備の延べの交通量と、定期的に測定した促進物の累積濃度とであることを特徴とする海底トンネル内の鋼材の劣化予測方
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、海底トンネルに配設され、海水等の鋼材劣化の促進物を含有する水(水溶液)が付着する鋼材に関するものであって海底トンネル内の鋼材の劣化予測方法の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
こんにち、地下水面や海面より低い位置にトンネルやボックスカルバート等の地下構造物を築造することが頻繁に行われ、このような地下構造物に鋼材が露出する状態で設けられることがある。そしてこのような鋼材のなかには、例えば地下水に海水を含有する漏水(以下「海水含有漏水」という。)が継続的に付着するものがあり、このような場合、鋼材は、漏水含有物である海水が付着することにより、さらに詳しくは、海水中の塩分の付着により劣化(腐食)していくことになる。そして海水含有漏水のような水が鋼材に付着した場合における腐食の電気化学的な仕組みは次のものと考えられる。まず鋼材が腐食するには、付着溶液中に酸化剤である溶存酸素の存在が前提で、該存在する溶存酸素により水が付着している部分の鋼材の表面に電気的な偏りが生じ、付着している水によって電子が輸送され、これにより鉄イオン(鉄(II)イオン(Fe2+)、鉄(III)イオン(Fe3+))が鋼材表面に生成する。ここで付着水が海水含有漏水である場合のように多量の塩化物イオンが溶解していると、該塩化物イオンが前記生成した鉄イオンに配位して鉄のクロロコンプレックスを生成することになって水に溶けにくい鉄の水酸化物の生成を妨害する。鉄のクロロコンプレックスは水に溶け易く、かつ、水に安定に存在することから、前記生成した鉄のクロロコンプレックスは付着水に溶け出していくことになり、この結果、鋼材は、鉄の水酸化物により表面被覆がなされて保護されるようなことがなく、常に新鮮な腐食表面が腐食環境中に暴露され続けることになる。そして通常の環境下では海水含有漏水中には溶存酸素が十分に存在していることから、結果的に、海水含有漏水に曝露され続ける鋼材は、前記生成した鉄のクロロコンプレックスが継続的(連続的)に漏水に溶け出すことになって痩せ細り状態で腐食し、劣化が進行していくことになる。
ところで鋼材が振動や熱負荷によって劣化する場合、その劣化度合いを超音波で評価しようとしたものが知られている(特許文献1)が、このものは、鋼材が繰り返し振動や熱負荷を受けることで鋼材内部の結晶粒界に炭化物が析出して層となり、この炭化物層では超音波の伝播速度が速く、これを利用して劣化度合いを評価するようにしたものである。しかるにこのものは振動や熱等の負荷を受けた鋼材の劣化の評価であり、腐食による鋼材の劣化度合いを評価することはできない。
そして鋼材の腐食による劣化度合は、点検作業員が現場に行って目視で行っているのが現状であるため、鋼材の腐食による劣化度合いを予測する手法については記載すべき先行技術文献情報はない。

【特許文献1】特開平7-260753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように海水含有漏水が付着され続ける鋼材は、腐食して劣化が進行していくことにより強度低下を招くことになる。そして劣化が進行した鋼材は、必要強度以下になる前に交換する等のメンテナンス処理を施すことが要求されるが、前述したように従来は、鋼材の劣化状態の予測をすることができないため、鋼材の劣化度合を、点検作業員により実施される常日頃の点検によりいちいち確認しているのが現状で、このような点検作業は、人員がとられるだけでなく、熟練も必要なうえ、点検結果に個人差もあってばらつきが発生するという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記のような実情に鑑み、これらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、鋼材劣化の促進物を含有する水が付着する鋼材の劣化予測をする方法であって、鋼材が置かれている海底トンネルの環境下で測定される前記促進物の累積量と鋼材の劣化度合いとの関係を求め、該求めた関係に、上記環境下で実際に測定される前記促進物の測定量の累積値を算入して前記環境下に置かれる鋼材の劣化予測をするにあたり、促進物の累積量は、海底トンネルを通過する交通設備の延べの交通量と、定期的に測定した促進物の累積濃度とであることを特徴とする海底トンネル内の鋼材の劣化予測方である。
【発明の効果】
【0005】
そして本発明は、これらのように鋼材劣化促進物の累積量を、延べの交通量も含めて測定することで、従来できなかった鋼材劣化の促進物を含有する水が付着する環境下にある鋼材の劣化予測が簡単にできることになって、劣化鋼材の交換等、メンテナンス性が著しく向上することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前述したように、海水のように鋼材劣化の促進物を含有する水が付着する鋼材は、例えば鋼材劣化の促進物が海水である場合、塩化物イオンによって腐食されて劣化が進行していくが、その劣化度合いは、鉄のクロロコンプレックスの生成量に影響される。そしてこれは、鋼材設置時から現在に至るまで鋼材に付着した塩化物イオンの総量、つまり累積量(絶対量、積算量または延べ通過量としても表現できる。)に関連付けられると推論できる。ところが実際には鋼材に付着している塩化物イオンの測定はスポット的にしかできず、経時的に付着した塩化物イオンの累積量を測定することは事実上不可能である。
【0007】
一方、鋼材に実際に付着する水が海水含有漏水のようなものである場合、含有する漏水量は、個々の鋼材が置かれている環境によって異なるものの、置かれている環境に大きな変化がないものであれば、その場所において漏出する漏水の流水量のうちの一定割合のものが鋼材に付着すると推定できる。そして、このような地下構造物から漏出する海水含有漏水は地下水と海水とが混合したものであるが、該漏水中の海水分量は、海水量に変動がないことから一年を通してほとんど変化がないのに対し、地下水分量は、梅雨や台風による集中的な大雨や逆に渇水等の自然環境(特に雨量)に左右されることもあって、緩慢ではあるが変化する。しかしながら、海水中の塩化物イオンの濃度は一定であるから、海水含有漏水中の塩化物イオンの含有量は、漏水中の海水分量の絶対量と一義的な関係にあると考えられる。
そしてこの場合に、海水含有漏水中の海水分は海底と地下構造物とのあいだの地盤を通り抜けるという長い流路を経て流れ込むものであるのに対し、地下水分は該地盤自体にある水脈から直接的に流れ込むものであるため地下水分量の方が海水分量よりも多くなるのが通常で、海水含有漏水中の海水分量はせいぜい数十パーセントであることが一般的である。この場合において、鋼材の劣化速度は、海水含有漏水中の塩化物イオンの累積濃度あるいは述べ通過量によって支配されているものと考え、個々の鋼材が置かれている環境下での塩化物イオンの累積濃度あるいは累積通過量と鋼材の劣化度合いとの関係を予め求めておけば、以降はこの関係から、同一環境下に置かれる鋼材の劣化予測をすることができるのではないかと推測し、これを立証するため、海水含有漏水中の塩化物イオンの累積量(例えば累積濃度あるいは累積重量)と、鋼材の劣化度合いとの関係を調べたところ、これらは何れも一定の関係にあることを見出し、これによって本発明を完成するに至った。
【0008】
ところで海水には、ナトリウムイオンや塩化物イオンを代表とする各種の陽イオン、陰イオンが存在するが、海水においてこれらイオンの含有比率(割合)は一定であるから、前記一定の関係は、各種イオンにおいて存在するものと考え、ナトリウムイオンや塩化物イオンだけでなく、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、硫酸イオン等の海水由来イオンの累積量と劣化度合いとの関係をそれぞれ検討したところ、何れも一定の関係にあることが確認された。
【0009】
また、海水含有漏水のような鋼材劣化の促進物を含有する水が鋼材に付着する場合、その付着環境に大きな変化がないところであれば漏水中の鋼材劣化の促進物の割合は略一定であるということになり、このことからこのような環境下に置かれる鋼材の劣化度合いというものが漏水の累積流量に対して一定の関係があるものと推論でき、これをさらに敷衍すると、漏水の累積流量は鋼材が設置された累積時間(設置時間)と一定の関係があるものと推論でき、この推論から、鋼材の劣化度合いは、鋼材の設置時間と一定の関係があるものと推論でき、これら推論が正しいか否かを検討したところ、これらは何れも一定の関係にあることを見出し、これによって本発明を完成するに至った。
【0010】
さらにまた、本発明の発明者は、海水含有漏水は、海水と地下水とのあいだで成立する単純な希釈律に支配されていると仮定した場合、漏水の電気伝導率と高濃度のそれらイオン種の濃度とのあいだに一次の関係が成立していると推論し、そこで実際に、海底構造物から採取した漏水試料を用いてこれらの関係を実測したところ、一次の関係にあることが確認され、「海水を含有する地下構造物の漏水中のイオン濃度の簡易測定方法および簡易測定装置」を特願2002-86435号として特許出願した。そしてこの発明により、海水含有漏水に含まれる各種イオン種の濃度を、測定現場での維持管理が容易な電気伝導率測定装置を用いて簡易に測定できるようにしたものであり、しかも電気伝導率の測定は継続的に行うことができるため、前述した鋼材劣化促進物の累積量は、測定した電気伝導率の測定値の累積値(延べの電気伝導率)と一義的な関係にあるものと判断され、そこで鋼材の劣化速度と電気伝導率の累積値との関係を検討したところ、これについても一次の関係にあり、これによっても本発明を完成した。
【0011】
そしてこれら累積される濃度、重量(絶対量)、流量そして電気伝導率等の測定は、連続測定することが好ましいが、鋼材の劣化促進には長時間を要するものであるから、例えば1週間毎あるいは1月毎等、定期的に測定した測定値を累積するようにしても勿論良い。
【0012】
さらにまた、海底トンネル等のような海底構造物では、海水含有漏水を排水するための排水溝があるが、この排水溝を流れる海水含有漏水は、車両等の交通設備が通過する際に巻き上げられ、該巻き上げられた漏水が鋼材に付着して鋼材劣化を促進する。このような環境化において、交通設備の通過量(交通量)が一定(凡そ一定を含む)であれば、前述した各手法により鋼材の劣化予測ができるが、通過量が不定期である場合の鋼材の劣化予測は難しいものとなる。これに対し、排水溝の近傍を通過する1個(1両)の交通設備が海水含有漏水を巻き上げる量は一定(凡そ一定を含む)ではないかと推論し、そこで、排水溝近傍の交通量(通過交通設備の述べ数)と鋼材の劣化度合いとの関係を求めたところ、一義的な関係にあることが確認され、そこでこの関係に、交通量を算入することで鋼材の劣化予測ができることになり、本発明を完成した。因みにこのことは、測定環境下において、1個の交通設備が巻き上げる海水含有漏水の量が一定(凡そ一定を含む)であることを意味することになる。
【実施例】
【0013】
次に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。図1は既存の海底トンネルの概略縦断面図であって、該海底トンネルは、本坑1および作業坑2を有し、そのうちの本坑1は、トンネルの中間に向かうほど深くなるこう配変更点を有する略V字形の傾斜状態で築造されている。これに対して作業抗2は、前記本坑1の最深位置をこう配変更点として坑口に至るほど深くなるよう傾斜した略逆V字形に築造され、そして各坑口側の地上位置においてたて坑3および4が築造されている。
【0014】
そして前記本坑1の位置Aおよび位置Bに鋼材を設置すると共に、前記両位置での漏水の流量(m day-1:メートルの3乗 日のマイナス1乗)を三角ぜき法にて測定した。さらに該漏水中の海水分量(m)並びにナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオンおよび硫酸イオンの濃度(μg mL-1:マイクログラム ミリリットルのマイナス1乗)をそれぞれ測定すると共に、鋼材の劣化度合い(鋼材の痩せ量:mm)を測定した(測定は近接している2部位について行った)。図2に鋼材の劣化度合い(mm)とナトリウムイオンの累積濃度(μg mL-1)とをプロットしたものを、図3に鋼材の劣化度合い(mm)とカリウムイオンの累積濃度(μg mL-1)とをプロットしたものを、図4に鋼材の劣化度合い(mm)とマグネシウムムイオンの累積濃度(μg mL-1)とをプロットしたものを、図5に鋼材の劣化度合い(mm)とカルシウムイオンの累積濃度(μg mL-1)とをプロットしたものを、図6に鋼材の劣化度合い(mm)と塩化物イオンの累積濃度(μg mL-1)とをプロットしたものを、図7に鋼材の劣化度合い(mm)と硫酸イオンの累積濃度(μg mL-1)とをプロットしたものを、図8に鋼材の劣化度合い(mm)とナトリウムイオンの累積通過重量(kg)とをプロットしたものをそれぞれ示す。さらにまた、図9に鋼材の劣化度合い(mm)と漏水に含有する海水の累積流量(m)とをプロットしたものを、また、図10に鋼材の劣化度合い(mm)と海水含有漏水の累積通過量(m)とをプロットしたものをそれぞれ示す。そしてこれらプロットされたグラフ図をそれぞれ観察したときに、劣化促進物の累積量と鋼材の劣化度合いとの関係において、何れのものも一次関数に極めて合致していることが確認され、そこで最小二乗法により一次関数を求め、これを線引きした。
このように鋼材の劣化度合いは、鋼材劣化の促進物が海水である場合、海水由来成分であるナトリウムイオン等のイオンの累積濃度、累積通過重量だけでなく、海水の累積流量、さらには該海水を含有する漏水の累積流量とそれぞれ一次の関係にあることが確認され、そこで鋼材の劣化度合いとこれらの累積値との関係を予め求めておけば、その環境下に置かれる鋼材の劣化状態を間接的に判断できることになる。そして例えば図2において、位置Aと位置Bとの鋼材の劣化度合いを見た場合、位置Bの方がナトリウムイオンの累積濃度が少ない状態で劣化が進行していくが、これは鋼材への漏水被着量が測定場所によって異なることに起因するものと推定される。
【0015】
次に、図11に、同様にして鋼材の劣化度合い(mm)と電気伝導率(mS cm-1:ミリジーメンス センチメートルのマイナス1乗)との累積値との関係をプロットしたところ、同じく鋼材の劣化度合いと電気伝導率の累積値とは一次の関係にあることが確認され、これによって、前述した濃度や流量のような割合の測定ではなく、電気伝導率のように簡単にできる測定によっても鋼材の劣化予測ができることが確認される。
【0016】
さらには、海底トンネル内のように日々の気象の影響を受けにくいところでは、鋼材に付着する劣化促進物の量は一定(殆ど一定を含む)であると推定され、そうすると、鋼材の劣化度合いは鋼材の設置時間と一定の関係にあるのではないかと予測され、そこでこれらの関係を調べたところ、図12のようになった。この図表から、鋼材の劣化度合いと設置時間とは一次の関係にあることが確認され、これによって、付着環境が一定のところでは、前述した濃度や流量のような割合の測定、さらには電気伝導率の測定ではなく、設置時間からも鋼材の劣化予測ができることが確認される。
【0017】
また、海底トンネルのようなものでは交通設備が通過する際、排水溝を流れる海水含有漏水の巻上げがあり、この巻き上げられた漏水が鋼材に付着し、鋼材劣化を促進する。ところが交通設備の通過量は不定期であり、このような場合には前述した各種の測定では鋼材の劣化予測に無理がある。これに対し、交通設備が通過する際に巻き上げる漏水量は一定(凡そ一定を含む)であるのではないかと推論し、そこで鋼材劣化度合いと累積交通量(累積移動体数量:台、両または個)との関係を調べたところ、図13のようになった。この図表から、鋼材の劣化度合いと累積交通量とは一次の関係にあることが確認され、これによって、交通量のように不定期な場合においても、鋼材の劣化予測ができることが確認される。
【0018】
このように鋼材の劣化度合いは、鋼材劣化の促進物が海水である場合、海水由来成分であるナトリウムイオン等のイオンの累積濃度、累積通過重量だけでなく、海水や漏水の累積流量、さらには電気伝導率の累積値とそれぞれ一次の関係にあることが確認され、そこで鋼材の劣化度合いとこれらの累積値や設置時間との関係を予め求めておけば、その環境下に置かれる鋼材の劣化状態を間接的に判断できることになる。そして例えば図2において、位置Aと位置Bとの鋼材の劣化度合いを見た場合、位置Bの方がナトリウムイオンの累積濃度が少ない状態で劣化が進行していくが、これは鋼材への漏水被着量が測定場所によって異なることに起因するものと推定される。
【0019】
また、鋼材への劣化促進物の付着環境が変化しない環境化においては、設置時間と結果度合いの関係を求めることで劣化予測ができ、また不定期な交通が有るところでは劣化度合いと交通量との関係を求めることで劣化予測ができ、劣化予測をしたい場所の環境をよく見極めて実施することが好適である。
【0020】
次に、図14に、鋼材の劣化予測装置5の概略図を示すが、該劣化予測装置5は、キーボード等の入力手段6、ディスプレイ表示部7を備えた制御部(パーソナル・コンピューター等)8から構成され、該制御部8には、さらに演算手段9、登録(記憶)手段10並びに鋼材の劣化度合いを予測する予測手段11が構成されている。前記劣化予測装置5は、前記各漏水箇所AおよびBにおいて測定される鋼材の劣化度合い、漏水流量、各海水由来物の濃度や通過量、設置時間、電気伝導率、交通量の各測定値が入力手段6を介して入力され、該入力した測定値に基づいて鋼材の劣化度合いと漏水流量等の累積値とのあいだにある一次の関係式を演算手段9で各演算をし、該各一次の関係式が登録手段10に登録されるよう設定してある。そして該劣化予測装置5には、各漏水箇所AおよびBにおいて鋼材設置時から現在までの前記測定値を入力すると、該入力値を累積し、この累積値を前記関係式に算入し、これによって鋼材の劣化度合いを予測し、これをディスプレイ表示部7に表示できるようになっている。
尚、前記測定値は、現場に設置した測定器12から直接あるいは現場を管轄する支社等に設けた端末装置13から直接または間接に劣化予測装置5に入力できるように構成しておけば、例えば本社等に設けた中央管理部において集中的に劣化予測の管理ができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】海底トンネルの概略縦断面図である。
【図2】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いとナトリウムイオンの累積濃度との関係を示すグラフ図である。
【図3】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いとカリウムイオンの累積濃度との関係を示すグラフ図である。
【図4】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いとマグネシウムイオンの累積濃度との関係を示すグラフ図である。
【図5】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いとカルシウムイオンの累積濃度との関係を示すグラフ図である。
【図6】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いと塩化物イオンの累積濃度との関係を示すグラフ図である。
【図7】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いと硫酸イオンの累積濃度との関係を示すグラフ図である。
【図8】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いとナトリウムイオンの累積通過量との関係を示すグラフ図である。
【図9】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いと海水の累積流量との関係を示すグラフ図である。
【図10】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いと漏水の累積流量との関係を示すグラフ図である。
【図11】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いと電気伝導率の累積値との関係を示すグラフ図である。
【図12】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いと設置時間との関係を示すグラフ図である。
【図13】位置Aおよび位置Bでの鋼材の劣化度合いと交通量との関係を示すグラフ図である。
【図14】鋼材の劣化予測装置の概略図である。
【符号の説明】
【0022】
5 鋼材の劣化予測装置
8 制御部
9 演算手段
10 登録手段
11 予測手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13