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明細書 :表面処理材とその製造方法、交通輸送手段の構体及び鉄道車両の構体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4102723号 (P4102723)
公開番号 特開2005-042172 (P2005-042172A)
登録日 平成20年3月28日(2008.3.28)
発行日 平成20年6月18日(2008.6.18)
公開日 平成17年2月17日(2005.2.17)
発明の名称または考案の名称 表面処理材とその製造方法、交通輸送手段の構体及び鉄道車両の構体
国際特許分類 C23C   8/64        (2006.01)
B29C  65/02        (2006.01)
B61D  17/00        (2006.01)
B61D  17/04        (2006.01)
C23C  26/00        (2006.01)
B29K 105/22        (2006.01)
B29K 705/00        (2006.01)
B29L   9/00        (2006.01)
FI C23C 8/64
B29C 65/02
B61D 17/00 C
B61D 17/04
C23C 26/00 Z
B29K 105:22
B29K 705:00
B29L 9:00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 7
出願番号 特願2003-279319 (P2003-279319)
出願日 平成15年7月24日(2003.7.24)
審査請求日 平成17年11月25日(2005.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
【識別番号】591212523
【氏名又は名称】東 健司
発明者または考案者 【氏名】森 久史
【氏名】辻村 太郎
【氏名】柏谷 賢治
【氏名】喜多川 眞好
【氏名】道浦 吉貞
【氏名】東 健司
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】瀬良 聡機
参考文献・文献 特開平04-328517(JP,A)
特開2000-233448(JP,A)
特開2003-027255(JP,A)
特開平11-189805(JP,A)
特開2001-288556(JP,A)
特開平01-205064(JP,A)
特開昭63-141722(JP,A)
特開平10-286906(JP,A)
森田良治 外1名著,マグネシウム合金の化成処理,表面技術,日本,社団法人 表面技術協会,2002年,Vol.53,No.3,p.182-184
調査した分野 C23C 8/00-12/02
B29C 63/00-65/82
特許請求の範囲 【請求項1】
マグネシウム合金を表面処理した表面処理材であって、
前記マグネシウム合金とこのマグネシウム合金を被覆する固体バルクの炭素材料からなる炭素層との間に拡散層が形成されており、
前記拡散層は、前記マグネシウム合金の表面に熱拡散反応によって炭素を拡散させて形成されていること、
を特徴とする表面処理材。
【請求項2】
請求項1に記載の表面処理材において、
前記マグネシウム合金は、Mg-Zn-Al合金又はMg-Al-Si合金であること、
を特徴とする表面処理材。
【請求項3】
マグネシウム合金を表面処理した表面処理材の製造方法であって、
前記マグネシウム合金の表面に固体バルクの炭素材料を密着させて加熱し、このマグネシウム合金の表面に熱拡散反応によって炭素を拡散させて拡散層を形成し、このマグネシウム合金の表面を固体バルクの炭素材料からなる炭素層によって被覆すること、
を特徴とする表面処理材の製造方法。
【請求項4】
請求項に記載の表面処理材の製造方法において、
前記マグネシウム合金の表面に前記炭素材料を温度100~550℃で1~10時間加熱すること、
を特徴とする表面処理材の製造方法。
【請求項5】
マグネシウム合金を表面処理した表面処理材の製造方法であって、
高分子材料が溶融しない程度の温度150~300℃で前記マグネシウム合金を10分~1時間加熱して、このマグネシウム合金の表面に高分子材料を密着させて、このマグネシウム合金の表面にこの高分子材料を半溶融状態で接着被覆させて被覆層を形成すること、
を特徴とする表面処理材の製造方法。
【請求項6】
請求項に記載の表面処理材において、
前記高分子材料は、ポリメタクリル酸メチル、ポリエステル樹脂又はフェノールホルムアルデヒドであること、
を特徴する表面処理材の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項に記載の表面処理材の製造方法において、
前記マグネシウム合金は、Mg-Zn-Al合金又はMg-Al-Si合金であること、
を特徴とする表面処理材の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の表面処理材を備える交通輸送手段の構体。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の表面処理材を備える鉄道車両の構体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、マグネシウム合金を表面処理した表面処理材とその製造方法、交通輸送手段の構体及び鉄道車両の構体に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金は、活性金属であり表面耐食性が乏しく、水中では水素を放出し炭酸化合物を生成して容易に腐食する。このような腐食は、水中のみならず大気中でも起こるため、マグネシウム合金を実用材として大気中で使用する場合には表面処理を施す必要がある。従来のマグネシウム合金の表面処理では、金属及び窒化チタンなどの無機材料が防食として使用されており、前処理、酸洗い又は活性処理を経て、酸性及び重金属液中での化成処理、電気化学反応による陽極酸化処理、スプレー塗装や粉体塗装法、スパッタリングなどの物理蒸着や化学気相蒸着、溶射、電気めっき又は無電解めっきなどが行われていた。化成処理では、ノンクロム化成処理が行われりん酸亜鉛皮膜やマンガン系化成皮膜などが施されている(例えば、特許文献1参照)。また、マグネシウム合金の塗装については、JIS H 8651(金属表面処理)にマグネシウム合金の防食処理について規定されており、JIS Z 0103には化成処理及び陽極酸化について規定されている。
【0003】

【特許文献1】特開2003-003277号公報(段落番号0010)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマグネシウム合金の表面処理では、金属などの被覆が多いがマグネシウム合金は異種金属と接触すると電気化学腐食し易く、被覆膜自体の特性や密着性に問題があった。また、従来のマグネシウム合金の表面処理では、素材表面に合金成分が偏析していたり表面層に加工汚染層が残留し易いため均一に表面処理することが難しく、この加工汚染層は素材形状、金型、加工速度によって程度が異なるため処理工程を適切に設定することが難しいという問題があった。さらに、従来のマグネシウム合金の表面処理では、前処理や化成処理において酸やアルカリなどを適用するため廃水負荷が大きく、りん酸などの化学処理にも問題があるとともに、脱脂、酸洗い、化成処理などの数多くのプロセスを経るためコストや処理時間を要するという問題があった。
【0005】
一方、スプレー塗装の場合には、塗装液の損失や飛散が少なく作業時間の短縮化と自動塗装化とを図ることができるが、静電気の帯電や導電性の被着材に限られるという問題があった。また、粉体塗装法の場合には、融点が高いため被塗装物の予熱に高温加熱が必要であり加熱中にだれが生じて汚染したり、熱可塑性粉体塗料の多くは金属密着性が悪いためプライマが必要になったり、酸化アミンを添加しなければならないという問題があった。さらに、溶射の場合には、溶融させるために火炎中に材料を投入する際に樹脂が酸化熱分解し易いという問題があった。
【0006】
この発明の課題は、耐久性や密着性に優れ簡便であり環境負荷を低減してコストを抑えることができる表面処理材とその製造方法、交通輸送手段の構体及び鉄道車両の構体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、マグネシウム合金(3a)を表面処理した表面処理材であって、前記マグネシウム合金とこのマグネシウム合金を被覆する固体バルクの炭素材料からなる炭素層(3b)との間に拡散層(3c)が形成されており、前記拡散層は、前記マグネシウム合金の表面に熱拡散反応によって炭素を拡散させて形成されていることを特徴とする表面処理材(3)である。
【0008】
請求項2の発明は、前記マグネシウム合金は、Mg-Zn-Al合金又はMg-Al-Si合金であることを特徴とする表面処理材である。
【0009】
請求項3の発明は、マグネシウム合金(3a)を表面処理した表面処理材(3)の製造方法であって、前記マグネシウム合金の表面に固体バルクの炭素材料を密着(#110)させて加熱(#120)し、このマグネシウム合金の表面に熱拡散反応によって炭素を拡散させて拡散層(3c)を形成し、このマグネシウム合金の表面を固体バルクの炭素材料からなる炭素層(3b)によって被覆(#100)することを特徴とする表面処理材の製造方法である。
【0010】
請求項の発明は、請求項に記載の表面処理材の製造方法において、前記マグネシウム合金の表面に前記炭素材料を温度100~550℃で1~10時間加熱(#120)することを特徴とする表面処理材の製造方法である。
【0011】
請求項の発明は、マグネシウム合金(4a)を表面処理した表面処理材(4)の製造方法であって、高分子材料が溶融しない程度の温度150~300℃で前記マグネシウム合金を10分~1時間加熱(#210)して、このマグネシウム合金の表面に高分子材料を密着(#220)させて、このマグネシウム合金の表面にこの高分子材料を半溶融状態で接着被覆させて被覆層(4b)を形成(#200)することを特徴とする表面処理材の製造方法である。
【0012】
請求項の発明は、請求項に記載の表面処理材において、前記高分子材料は、ポリメタクリル酸メチル、ポリエステル樹脂又はフェノールホルムアルデヒドであることを特徴する表面処理材の製造方法である。
【0013】
請求項の発明は、請求項5又は請求項に記載の表面処理材の製造方法において、前記マグネシウム合金は、Mg-Zn-Al合金又はMg-Al-Si合金であることを特徴とする表面処理材の製造方法である。
【0014】
請求項の発明は、請求項1又は請求項2に記載の表面処理材を備える交通輸送手段(1)の構体(2)である。
【0015】
請求項の発明は、請求項1又は請求項2に記載の表面処理材を備える鉄道車両(1)の構体(2)である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によると、耐久性や密着性に優れ簡便であり環境負荷を低減してコストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る表面処理材を備える交通輸送手段の構体の断面図である。
交通輸送手段1は、電車や気動車などの鉄道車両である。構体2は、交通輸送手段1の主構造である。構体2は、図1に示すように、乗客などの重量を支持し車体の床部分や台枠を構成する床構え2aと、この床構え2aの両縁に固定され車体の側面部分を構成する一対の側構え2b,2cと、この一対の側構え2b,2cの上縁に固定され車体の屋根部分を構成する屋根構え2dと、車両の両端部分を構成する図示しない妻構えなどから構成されている。構体2は、例えば、表面処理材3によって形成された車外面板と室内面板とをトラスやリブで結合したダブルスキン構体である。
【0020】
図2は、この発明の第1実施形態に係る表面処理材の断面図である。
表面処理材3は、マグネシウム合金3aを表面処理した部材である。表面処理材3は、図2に示すように、マグネシウム合金3aと、炭素層3bと、拡散層3cとから構成されている。表面処理材3は、マグネシウム合金3aの表面の腐食を抑えるために表面防食処理が施されており、このマグネシウム合金3aの表面が耐食性皮膜によって被覆されている。表面処理材3は、例えば、従来の鉄道車両の構体を構成する板材と同じ厚さに形成して、マグネシウム合金3aを車外側に向け、炭素層3bを車内側に向けて構体2を構成することが好ましい。
【0021】
マグネシウム合金3aは、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、希土類元素などのうち一つ以上を加えて合金として使用される母材(基材)である。マグネシウム合金3aとしては、例えば、Mg-Zn-Al合金又はMg-Al-Si合金が好ましい。
【0022】
炭素層3bは、マグネシウム合金3aの表面の腐食を抑えるためにこのマグネシウム合金3aを被覆する被覆層である。炭素層3bは、例えば、炭素粉末を硬化させて形成した固体バルクの炭素材料(カーボン)である。拡散層3cは、マグネシウム合金3aの表面に炭素を拡散させて形成した層であり、マグネシウム合金3aと炭素層3bとの間に形成されておりマグネシウムと炭素とからなる層である。
【0023】
次に、この発明の第1実施形態に係る表面処理材の製造方法について説明する。図3は、この発明の第1実施形態に係る表面処理材の製造方法を示す工程図である。
拡散層形成工程#100は、図2に示すマグネシウム合金3aの表面に炭素を拡散させて拡散層3cを形成する工程であり、密着工程#110と加熱工程#120とを含む。密着工程#110は、マグネシウム合金3aの表面に炭素材料を密着させる工程であり、加熱工程#120はマグネシウム合金3aの表面に炭素材料を密着させた状態でこれらを温度100~550°Cで1~10時間加熱する工程である。その結果、熱拡散反応によってマグネシウム合金3a上に炭素が拡散してマグネシウムと炭素とからなる拡散層3cがこのマグネシウム合金3aの表面に析出され、マグネシウム合金3aの表面が耐食性皮膜である炭素層3bによって被覆される。
【0024】
この発明の第1実施形態に係る表面処理材とその製造方法には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、マグネシウム合金3aの表面に炭素を拡散させた拡散層3cを表面処理材3が有する。このため、マグネシウム合金3aの表面に耐久性及び密着性に優れた耐食性皮膜を形成して接触腐食や表面腐食を防ぐことができる。
【0025】
(2) この第1実施形態では、マグネシウム合金3aの表面に炭素材料を密着させて加熱し、このマグネシウム合金3aの表面に炭素を拡散させて拡散層3cを形成する。その結果、脱脂、酸洗い、化成処理などの数多くの処理工程が必要なくなるため、低エネルギーであり環境負荷を低減することができるとともに、他の加工技術と併用が可能になり作業が簡便でコストと作業時間を低減することができる。
【0026】
(第2実施形態)
図4は、この発明の第2実施形態に係る表面処理材の断面図である。
表面処理材4は、図4に示すように、マグネシウム合金4aと被覆層4bとから構成されている。表面処理材4は、図2に示す表面処理材3と同様に表面防食処理が施されており、マグネシウム合金4aの表面が耐食性皮膜によって被覆されている。マグネシウム合金4aは、図2に示すマグネシウム合金3aと同様の金属である。被覆層4bは、マグネシウム合金4aの表面に高分子材料(ポリマー)を接着被覆して形成した層である。被覆層4bは、マグネシウム合金4aの表面の腐食を抑えるためにこのマグネシウム合金4aを被覆する層であり、融点が高くて熱硬化性を示す材料が適用される。このような高分子材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリエステル樹脂又はフェノールホルムアルデヒドが好ましい。
【0027】
次に、この発明の第2実施形態に係る表面処理材の製造方法について説明する。図5は、この発明の第2実施形態に係る表面処理材の製造方法を示す工程図である。
被覆層形成工程#200は、図4に示すマグネシウム合金4aの表面に高分子材料を接着被覆して被覆層4bを形成する工程であり、加熱工程#210と密着工程#220とを含む。加熱工程#210は、高分子材料が溶融しない程度の温度150~300°Cで10分~1時間マグネシウム合金4aを加熱する工程であり、密着工程#220は加熱されたマグネシウム合金4aの表面に高分子材料を押し付けてこのマグネシウム合金4a上に熱によって高分子材料を密着させる工程である。その結果、溶融反応によってマグネシウム合金4a上に高分子材料が半溶融接着で接着被覆して、マグネシウム合金4aの表面が耐食性皮膜である被覆層4bによって被覆される。この発明の第2実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0028】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。例えば、この実施形態では、鉄道車両の構体2に表面処理材3,4を適用した場合を例に挙げて説明したが、自動車、船舶、航空機などの他の交通輸送手段の構体についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、マグネシウム合金3a,4aの一方の表面に炭素層3b、拡散層3c又は被覆層4bを形成する場合を例に挙げて説明したが、マグネシウム合金3a,4aの両面に炭素層3b、拡散層3c又は被覆層4bを形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の第1実施形態に係る表面処理材を備える交通輸送手段の構体の断面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る表面処理材の断面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る表面処理材の製造方法を示す工程図である。
【図4】この発明の第2実施形態に係る表面処理材の断面図である。
【図5】この発明の第2実施形態に係る表面処理材の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0030】
1 交通輸送手段(鉄道車両)
2 構体
3 表面処理材
3a マグネシウム合金
3b 炭素層
3c 拡散層
4 表面処理材
4a マグネシウム合金
4b 被覆層

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4