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明細書 :振動遮断壁及びその構築方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4074570号 (P4074570)
公開番号 特開2005-076214 (P2005-076214A)
登録日 平成20年2月1日(2008.2.1)
発行日 平成20年4月9日(2008.4.9)
公開日 平成17年3月24日(2005.3.24)
発明の名称または考案の名称 振動遮断壁及びその構築方法
国際特許分類 E02D  31/08        (2006.01)
E02D   5/18        (2006.01)
FI E02D 31/08
E02D 5/18 101
請求項の数または発明の数 12
全頁数 18
出願番号 特願2003-305180 (P2003-305180)
出願日 平成15年8月28日(2003.8.28)
審査請求日 平成17年12月8日(2005.12.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000133881
【氏名又は名称】株式会社テノックス
発明者または考案者 【氏名】増田 幸宏
【氏名】吉岡 修
【氏名】神田 仁
【氏名】舟橋 秀麿
【氏名】堤 要二
【氏名】村田 修
【氏名】神田 政幸
【氏名】大木 基裕
【氏名】福田 厚生
【氏名】吉田 茂
【氏名】菱沼 登
【氏名】上 周史
【氏名】太田 和善
【氏名】平山 勇治
個別代理人の代理人 【識別番号】100070091、【弁理士】、【氏名又は名称】久門 知
【識別番号】100087491、【弁理士】、【氏名又は名称】久門 享
審査官 【審査官】深田 高義
参考文献・文献 特開2000-282036(JP,A)
特開平08-326085(JP,A)
実開平05-083013(JP,U)
特開2001-241035(JP,A)
特開平08-133804(JP,A)
特開平05-255924(JP,A)
特開2000-045265(JP,A)
特開平06-136743(JP,A)
特開2001-098574(JP,A)
調査した分野 E02D 31/08
E02D 5/18
特許請求の範囲 【請求項1】
水硬性粉体と粘土粉体と水を含む人造ソイルセメント、粒径の小さい小粒径樹脂製発泡粒子、並びに前記小粒径樹脂製発泡粒子の2~20倍の径を有する大粒径樹脂製発泡粒子を混合した混合材からなり、前記小粒径樹脂製発泡粒子と前記大粒径樹脂製発泡粒子が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触し、前記小粒径樹脂製発泡粒子と前記大粒径樹脂製発泡粒子間の空隙に前記人造ソイルセメントが存在している振動遮断壁。
【請求項2】
人造ソイルセメント中の水硬性粉体、粘土粉体、水の各配合比率がそれぞれ質量比で1~2、2~14、10~40である請求項1記載の振動遮断壁。
【請求項3】
水硬性粉体と粘土粉体とフライアッシュ及び水を含む人造ソイルセメント、粒径の小さい小粒径樹脂製発泡粒子、並びに前記小粒径樹脂製発泡粒子の2~20倍の径を有する大粒径樹脂製発泡粒子を混合した混合材からなり、前記小粒径樹脂製発泡粒子と前記大粒径樹脂製発泡粒子が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触し、前記小粒径樹脂製発泡粒子と前記大粒径樹脂製発泡粒子間の空隙に前記人造ソイルセメントが存在している振動遮断壁。
【請求項4】
人造ソイルセメント中の水硬性粉体、粘土粉体、フライアッシュ、水の各配合比率がそれぞれ質量比で1~2、2~12、2~12、10~40である請求項3記載の振動遮断壁。
【請求項5】
水硬性粉体はセメント系固化材、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグを加えた普通ポルトランドセメントのいずれかである請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の振動遮断壁。
【請求項6】
粘土粉体はベントナイトである請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の振動遮断壁。
【請求項7】
小粒径樹脂製発泡粒子と大粒径樹脂製発泡粒子はスチロール樹脂、もしくはビニル樹脂である請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の振動遮断壁。
【請求項8】
小粒径樹脂製発泡粒子と大粒径樹脂製発泡粒子を合わせた全樹脂製発泡粒子の体積に対する小粒径樹脂製発泡粒子の体積の比率は0.2~0.4である請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の振動遮断壁。
【請求項9】
小粒径樹脂製発泡粒子と大粒径樹脂製発泡粒子が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触した状態における全樹脂製発泡粒子の体積の、人造ソイルセメントの体積に対する倍率は1.85~5である請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の振動遮断壁。
【請求項10】
水硬性粉体と粘土粉体と水を含む人造ソイルセメント、もしくは水硬性粉体と粘土粉体とフライアッシュ及び水を含む人造ソイルセメント、粒径の小さい小粒径樹脂製発泡粒子、並びに前記小粒径樹脂製発泡粒子の2~20倍の径を有する大粒径樹脂製発泡粒子を混合して混合材を製造する一方、掘削装置により排土しつつ地中を所定深度まで掘削し、掘削後の掘削孔内にその最深部より前記混合材を充填し、前記小粒径樹脂製発泡粒子と前記大粒径樹脂製発泡粒子が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触し、前記小粒径樹脂製発泡粒子と前記大粒径樹脂製発泡粒子間の空隙に前記人造ソイルセメントが存在する振動遮断壁を地中に構築する振動遮断壁の構築方法。
【請求項11】
掘削と共に掘削土を上方へ排出する機能を有する掘削装置を用いて排土しつつ地中を所定深度まで掘削した後、掘削装置を引き上げながら掘削装置の先端部から混合材を吐出し、掘削孔内にその最深部より前記混合材を充填して柱状混合体を形成し、隣接する柱状混合体を互いに接触、もしくは一部重複させて振動遮断壁を構築する請求項10記載の振動遮断壁の構築方法。
【請求項12】
掘削装置はスパイラルスクリューオーガである請求項11に記載の振動遮断壁の構築方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は鉄道や道路等の交通振動の他、工場等から発生して地盤を伝播する振動を遮断する、樹脂製発泡粒子を用いた振動遮断壁とその構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂製発泡粒子を用いて振動遮断壁を構築する方法には従来、粉砕したゴムや樹脂製の発泡体と、セメントと水及び土を含む流動化処理土とを混練し、これを地中の掘削孔内に充填して固化させる方法(特許文献1参照)と、切削刃を有する無端チェーンの循環により粒状の発泡プラスチックやゴム材をソイルセメント壁体の全深度に行き亘らせる方法(特許文献2参照)がある。

【特許文献1】特開2001-98574号公報
【特許文献2】特開2001-226998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の方法では振動遮断壁を構築すべき箇所の地盤を掘削した後に、その掘削孔に地上で混練された流動化処理土を充填することから、流動化処理土の土としては振動遮断壁構築現場の土を使用することになるため、施工現場毎に振動遮断壁の物性が異なり、振動遮断効果も異なることになる。
【0004】
また流動化処理土内に占めるゴムや発泡体の小粒径体積割合率が高くない限り、流動化処理土が固化した時点でゴムや発泡体同士が固化した流動化処理土内で互いに分離し、流動化処理土が連続した状態になり易くなるため、周波数によっては振動遮断壁に到達した振動波が固化した流動化処理土中を伝播し易く、振動遮断効果が低下する可能性がある。
【0005】
特許文献2の方法でもソイルセメントの土として施工現場の土を使用しているため、施工現場毎に振動遮断効果が異なる他、ソイルセメントの固化によりゴムや発泡体が固化したソイルセメント中で分離し、ソイルセメントが連続した状態になるため、振動遮断壁に到達した振動波が固化したソイルセメント中を伝播し易くなり、振動遮断効果が低下する可能性がある。
【0006】
この発明は上記背景より、施工現場毎に振動遮断効果に差が生じず、構築後の振動遮断壁中で施工前の混合状態を保持し得、安定した振動遮断効果を発揮する振動遮断壁とその構築方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では請求項1に記載のように固化するソイルセメントとして水硬性粉体と粘土粉体と水を含む人造ソイルセメントを用い、施工現場の土を含めないことにより、振動遮断壁自身の振動遮断性能を一定に保ち、施工現場の土を用いることによる施工現場毎の振動遮断効果の変動を回避する。
【0008】
また樹脂製発泡粒子として粒径の小さい小粒径樹脂製発泡粒子(以下小粒径発泡粒子という)と、この小粒径発泡粒子の2~20倍の径を有する大粒径樹脂製発泡粒子(以下大粒径発泡粒子という)の、粒径の異なる2種類の発泡粒子を用い、両者と人造ソイルセメントを混合した混合材から振動遮断壁を構築することにより、人造ソイルセメントの固化による振動遮断壁の完成後にも小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触し、小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子間の空隙に人造ソイルセメントが存在する状態を得、振動遮断壁に到達した振動波が固化した人造ソイルセメント中を伝播することを遮断し、前記従来の振動遮断壁より振動遮断効果を向上させる。
【0009】
人造ソイルセメントの構成材料として施工現場の土を用いず、代わりに粘土粉体を用いることで、土の組成の相違に起因する振動遮断壁の振動遮断性能の変動が回避される。粘土粉体にはベントナイトやカオリンその他の粘土鉱物の粉末が使用され、水の添加により粘性を発揮し、水の存在によりその粘性を保持し得る性質を持てば、粘土鉱物の種類は問われないが、入手のし易さの点では請求項6に記載のようにベントナイトが適当である。
【0010】
粒径の異なる2種類の発泡粒子を用いることで、人造ソイルセメントと小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子を混合した状態では、大粒径発泡粒子同士が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触し、接触した大粒径発泡粒子間の空隙を埋めるようにその空隙に小粒径発泡粒子が入り込んで全体として、互いに接触乃至ほとんど接触し、更に小粒径発泡粒子間の空隙を埋めるようにその空隙に人造ソイルセメントが入り込む。このとき、大粒径発泡粒子同士と小粒径発泡粒子同士、及び大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子同士が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触した状態となる。
【0011】
この結果、構築後の振動遮断壁中で発泡粒子同士が分離することがなく、人造ソイルセメントが連続せず、発泡粒子が連続する混合状態が得られるため、固化した人造ソイルセメント中を振動波が伝播する可能性が低下し、振動遮断壁の振動遮断効果が向上する。
【0012】
小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触する、すなわち大粒径発泡粒子同士と小粒径発泡粒子同士、及び大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子同士が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触する、とは必ずしも全発泡粒子が接触状態になければならないことではなく、振動遮断壁中で発泡粒子が全体的に連続する状態、もしくは実質的に連続する状態にあればよく、発泡粒子同士の接触部に薄膜状の人造ソイルセメントが存在することや、一部の発泡粒子間に薄膜状でない人造ソイルセメントが存在することは許容される趣旨である。
【0013】
大粒径発泡粒子の粒径が小粒径発泡粒子の2~20倍であるのは、2倍未満であれば、小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子を合わせた全発泡粒子の体積に対する小粒径発泡粒子の体積の割合が高くなる結果、人造ソイルセメントの使用量が多くなることで振動遮断性能が低下する可能性があり、安定した振動遮断性能を発揮することが難しくなる一方、20倍を超えれば、理由は不明であるが、結果として大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子が分離してしまい、発泡粒子が全体として接触しにくくなることによる。
【0014】
振動遮断壁の施工後には人造ソイルセメントが固化した固化体中の水硬性粉体が水和するが、水和に使用された水以外の水が自由水や吸着水として粘土粉体を膨潤させると共に、これらの水が膨潤した粘土粉体中に残り、水和反応した水硬性粉体と膨潤した粘土粉体とが均一に分散した状態で人造ソイルセメントが固化するため、固化前の人造ソイルセメントと小粒径発泡粒子、及び大粒径発泡粒子の混合状態は固化後も維持される。この結果、施工後の日数が経過しても振動遮断壁の初期の性能に変化がないため、振動遮断効果が継続して発揮されることになる。
【0015】
施工後の振動遮断壁中の混合状態を施工前の混合状態のまま保持することが可能であれば、人造ソイルセメント中の水硬性粉体、粘土粉体、水の各配合比率は特定されないが、配合時に材料分離を起こすことなく安定した配合が可能であり、施工後の振動遮断壁中でも安定して施工前の配合状態、すなわち人造ソイルセメントと小径発泡粒子及び大径発泡粒子が均一に分散した状態を長期に亘って保持させる上では、請求項2に記載のように人造ソイルセメント中の水硬性粉体、粘土粉体、水の各配合率がそれぞれ質量比で1~2、2~14、10~40に設定される。
【0016】
この配合率であるのは、水硬性粉体の質量比が1未満であれば、振動遮断壁としての必要な強度が得られず、且つ人造ソイルセメントの必要な粘性が得られないために発泡粒子等が分離し易くなり、2を超えれば人造ソイルセメントの強度や粘性が高くなり過ぎるために振動遮断壁中に空隙ができる可能性があり、それに起因して振動遮断壁が全体として不均質な断面構造となる可能性があり、粘土粉体の質量比が2未満であれば、人造ソイルセメントの粘性不足により発泡粒子等が分離し易くなり、14を超えれば粘性が高くなり過ぎるために振動遮断壁の構築の際のポンプ圧送時に材料供給が不能になる可能性があり、水の質量比が10未満であれば、人造ソイルセメントの粘性が高くなり過ぎるために振動遮断壁の構築の際のポンプ圧送時に材料供給が不能になり、40を超えれば粘性不足により発泡粒子等が分離し易くなることによる。
【0017】
人造ソイルセメントには請求項3に記載のように水硬性粉体と粘土粉体と水の他に、フライアッシュを加えることもある。フライアッシュを加えれば、人造ソイルセメントの流動性がよくなり、ワーカビリティーが向上する一方、添加しても混合材としての初期の性能が施工後の振動遮断壁の性能として維持される。すなわち配合時には材料分離することのない安定した配合状態が得られ、施工後には振動遮断壁中で長期のポゾラン反応により強度低下することもなく、振動遮断壁中で安定して施工前の配合状態を維持できるためである。
【0018】
この場合、振動遮断壁は水硬性粉体と粘土粉体とフライアッシュ及び水を含む人造ソイルセメント、粒径の小さい小粒径発泡粒子、並びに小粒径発泡粒子の2~20倍の径を有する大粒径発泡粒子を混合した混合材から形成される。
【0019】
この場合も、人造ソイルセメントと小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子を混合した状態では、請求項1と同様に大粒径発泡粒子同士が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触し、接触した大粒径発泡粒子間の空隙を埋めるようにその空隙に小粒径発泡粒子が入り込んで全体として、互いに接触乃至ほとんど接触し、更に小粒径発泡粒子間の空隙を埋めるようにその空隙に人造ソイルセメントが入り込み、小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子間の空隙に人造ソイルセメントが存在する状態が得られるため、構築後の振動遮断壁中で発泡粒子同士が分離することがなくなる。振動遮断壁中では大粒径発泡粒子同士と小粒径発泡粒子同士、及び大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子同士が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触した状態となる。
【0020】
構築後の振動遮断壁中で発泡粒子同士が分離することがなく、全体として、互いに接触乃至ほとんど接触することで、人造ソイルセメントが連続せず、実質的に発泡粒子が連続する混合状態が得られるため、固化した人造ソイルセメント中を振動波が伝播する可能性が低下し、振動遮断効果が向上する。
【0021】
請求項1の人造ソイルセメントは基本的に水硬性粉体と粘土粉体と水から構成され、請求項3の人造ソイルセメントは水硬性粉体と粘土粉体と水、及びフライアッシュから構成されるが、いずれにおいても一定の振動遮断性能が確保される限り、その他の物質、例えばフライアッシュ以外の混和材や混和剤が含まれることは排除されない。
【0022】
請求項3においても施工後の振動遮断壁中で施工前の混合状態が保持可能であれば、人造ソイルセメント中の水硬性粉体、粘土粉体、フライアッシュ、水の各配合比率は特定されないが、配合時に材料分離を起こすことのない安定した配合が可能で、施工後の振動遮断壁中でも安定して施工前の配合状態を保持させる上では、請求項4に記載のように人造ソイルセメント中の水硬性粉体、粘土粉体、フライアッシュ、水の各配合率がそれぞれ質量比で1~2、2~12、2~12、10~40に設定される。
【0023】
この配合率であるのは、粘土粉体の質量比が2未満であれば人造ソイルセメントの必要な粘性が得られずに発泡粒子等が分離し易くなり、12を超えれば粘性が高くなり過ぎるために振動遮断壁の構築の際のポンプ圧送時に材料の供給が不能になる可能性があり、フライアッシュの質量比が2未満であればフライアッシュを添加した効果が認められ難く、12を超えれば人造ソイルセメントの粘性が高くなり過ぎるために振動遮断壁の構築の際のポンプ圧送時に材料の供給が不能になる可能性があることによる。
【0024】
フライアッシュを併用するか否かに関係なく、発現強度を高くし、かつ長期に亘って安定した人造ソイルセメントの物性を発揮させる上では、請求項5に記載のように水硬性粉体としてセメント系固化材、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグを加えた普通ポルトランドセメントのいずれかを使用することが適当である。
【0025】
人造ソイルセメントに混合される小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子としては、安定した材料供給がされ、安定した振動遮断効果を発揮させる上では請求項7に記載のようにスチロール樹脂、もしくはビニル樹脂を使用することが適切である。スチロール樹脂やビニル樹脂に限らず、樹脂製発泡粒子は径の大小に拘わらず、球形が変形した形もあるが、全体としては球形とみなすことができる。
【0026】
前記の通り、人造ソイルセメントと小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子が混合した状態では、振動遮断壁に優れた振動遮断効果を発揮させる上で、振動遮断壁中で発泡粒子同士を分離させず、人造ソイルセメントを連続させないこと、すなわち大粒径発泡粒子同士と小粒径発泡粒子同士、及び大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子同士が接触した状態になることが有効であるが、この状態を得るには小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子を合わせた全発泡粒子の体積に対する小粒径発泡粒子の体積の比率(小粒径体積割合)が小さい程よく、請求項8に記載のように0.2~0.4の範囲にあることが適切である。この体積の比率が0.2~0.4の範囲外の場合には範囲内にある場合より実験的に振動遮断性能が低下する傾向にあることによる。
【0027】
更に大粒径発泡粒子同士と小粒径発泡粒子同士、及び大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子同士が接触し、小粒径発泡粒子間の空隙を埋めるようにその空隙に人造ソイルセメントが入り込む状態を確実に得る上では、請求項9に記載のように小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触した状態における全発泡粒子の体積の、人造ソイルセメントの体積に対する倍率(体積倍率)を1.85~5にすることが適切である。体積倍率が1.85~5の範囲外にある場合には1.85倍~5の範囲内にある場合より実験的に振動遮断性能が低下する傾向にあることによる。この人造ソイルセメントは請求項1に記載の水硬性粉体と粘土粉体と水を含む場合と、請求項3に記載の水硬性粉体と粘土粉体とフライアッシュ及び水を含む場合がある。
【0028】
請求項8と請求項9から、例えば全発泡粒子の体積が人造ソイルセメントの体積の1.85倍のとき、すなわち全発泡粒子の体積が相対的に小さいときには、小粒径発泡粒子の径に対する大粒径発泡粒子の径の比を2倍程度に小さくすれば、大粒径発泡粒子同士が互いに接触する状態を得易くなるため、大粒径発泡粒子同士と小粒径発泡粒子同士、及び大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子同士が接触し、小粒径発泡粒子間の空隙を埋めるようにその空隙に人造ソイルセメントが入り込む状態を確実に得ることが可能になる。
【0029】
逆に全発泡粒子の体積が人造ソイルセメントの体積の5倍のとき、すなわち全発泡粒子の体積が相対的に大きいときには1.85倍のときより全発泡粒子の絶対数が多くなることから、小粒径発泡粒子の径に対する大粒径発泡粒子の径の比に関係なく、大粒径発泡粒子同士と小粒径発泡粒子同士、及び大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子同士が接触し、小粒径発泡粒子間の空隙を埋めるようにその空隙に人造ソイルセメントが入り込む状態を得易くなる。全発泡粒子の体積が相対的に大きくなるに従って、小粒径発泡粒子の径に対する大粒径発泡粒子の径の比を大きくすれば、小粒径発泡粒子の径の下限が一定値を取るため、相対的に大粒径発泡粒子数が削減されることになる。
【0030】
但し、大粒径発泡粒子同士と小粒径発泡粒子同士、及び大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子同士が接触し、小粒径発泡粒子間の空隙を埋めるようにその空隙に人造ソイルセメントが入り込む状態を得ることができれば、振動遮断壁の構築後も振動遮断性能を維持することができるので、振動遮断壁の一定の固化性能を確保しつつ振動遮断性能をより高めるためには、使用する人造ソイルセメントの体積に対する、互いに接した状態における全発泡粒子の体積の倍率(体積倍率)は小さい方がよい。
【0031】
上記した請求項1乃至請求項9のいずれかの振動遮断壁は請求項10に記載のように水硬性粉体と粘土粉体と水を含む人造ソイルセメント、もしくは水硬性粉体と粘土粉体とフライアッシュ及び水を含む人造ソイルセメント、粒径の小さい小粒径樹脂製発泡粒子、並びに小粒径樹脂製発泡粒子の2~20倍の径を有する大粒径樹脂製発泡粒子を混合して混合材を製造する一方、掘削装置により排土しつつ地中を所定深度まで掘削し、掘削後の掘削孔内にその最深部より混合材を充填し、小粒径樹脂製発泡粒子と大粒径樹脂製発泡粒子が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触し、小粒径樹脂製発泡粒子と大粒径樹脂製発泡粒子間の空隙に人造ソイルセメントが存在する状態を得ることにより構築される。
【0032】
上記した請求項1乃至請求項9のいずれかの振動遮断壁をより確実に構築するためには、請求項11に記載のように掘削と共に掘削土を上方へ排出する機能を有する掘削装置を用いて排土しつつ地中を所定深度まで掘削し、掘削装置を引き上げながら掘削装置の先端部から混合材を吐出し、掘削孔内にその最深部より混合材を充填して柱状混合体を形成し、隣接する柱状混合体を互いに接触、もしくは一部重複させることにより振動遮断壁が構築される。掘削装置には例えば請求項12に記載のようにスパイラルスクリューオーガが使用される。
【発明の効果】
【0033】
請求項1ではソイルセメントとして水硬性粉体と粘土粉体と水を含む人造ソイルセメントを用い、請求項3ではソイルセメントとして水硬性粉体と粘土粉体とフライアッシュ及び水を含む人造ソイルセメントを用い、施工現場の土を含めないため、構築される振動遮断壁の振動遮断性能を一定に保ち、施工現場毎の振動遮断効果の変動を回避することができる。
【0034】
また樹脂製発泡粒子として粒径の小さい小粒径発泡粒子と、この小粒径発泡粒子の2~20倍の径を有する大粒径発泡粒子の、粒径の異なる2種類の粒子を用いることで、人造ソイルセメントと小粒径発泡粒子、及び大粒径発泡粒子を混合した状態で、大粒径発泡粒子同士が互いに接触し、その空隙に小粒径発泡粒子が入り込んで互いに接触し、更に小粒径発泡粒子間の空隙を埋めるようにその空隙に人造ソイルセメントが入り込む状態が得られ、結果的に構築後の振動遮断壁中で発泡粒子同士が分離することがなく、人造ソイルセメントが実質的に連続しない状態が得られるため、固化した人造ソイルセメント中を振動波が伝播する可能性が低下し、振動遮断効果が向上する。
【0035】
施工後には人造ソイルセメントは膨潤した粘土粉体が均一に分散した状態で固化し、固化前の人造ソイルセメントと小粒径発泡粒子、及び大粒径発泡粒子の混合状態は固化後も維持されるため、施工後の日数が経過しても振動遮断壁の初期の性能に変化がなく、振動遮断効果を継続して発揮させることができる。
【0036】
請求項2、請求項4では人造ソイルセメントの粘性を適度に保つことのできる範囲の配合をするため、配合時に材料分離を起こすことなく、安定した配合をし、施工後の振動遮断壁中でも安定して施工前の配合状態を保持させることができる。
【0037】
請求項8では小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子を合わせた全発泡粒子の体積に対する小粒径発泡粒子の体積の比率を小さく設定することで、大粒径発泡粒子同士と小粒径発泡粒子同士、及び大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子同士が接触した状態を得易くしているため、振動遮断壁に優れた振動遮断効果を発揮させることができる。
【0038】
請求項9では人造ソイルセメントの体積に対する、小粒径樹脂製発泡粒子と大粒径樹脂製発泡粒子が互いに接触した状態における全樹脂製発泡粒子の体積の倍率を、大粒径発泡粒子同士と小粒径発泡粒子同士、及び大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子同士が接触し、小粒径発泡粒子間の空隙を埋めるようにその空隙に人造ソイルセメントが入り込む状態を得易くなるような範囲にするため、大粒径発泡粒子同士と小粒径発泡粒子同士、及び大粒径発泡粒子と小粒径発泡粒子同士が接触し、小粒径発泡粒子間の空隙を埋めるようにその空隙に人造ソイルセメントが入り込む状態を確実に得ることができ、振動遮断効果を一定に保つことができる。
【0039】
請求項10では混合材を製造する一方、掘削装置により排土しつつ地中を所定深度まで掘削し、掘削後の掘削孔内にその最深部より混合材を充填して振動遮断壁を構築するため、排土された掘削孔の孔壁が崩壊しない地盤において空気を巻き込むことがなく、且つ原地盤土が混入することのない振動遮断壁を構築することができる。
【0040】
請求項11では掘削と共に掘削土を上方へ排出する機能を有する掘削装置を用いて排土しつつ地中を所定深度まで掘削し、掘削装置を引き上げながら掘削装置の先端部から混合材を吐出して柱状混合体を形成し、振動遮断壁を構築するため、地盤条件に拘わらず、掘削孔の孔壁の崩壊を防止するための安定液を用いる必要がなく、また原地盤土を混合することなく混合材のみを掘削孔内に充填し、振動遮断壁を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
水硬性粉体と粘土粉体と水を含む人造ソイルセメント、粒径の小さい小粒径樹脂製発泡粒子(すなわち小粒径発泡粒子)、並びに前記小粒径発泡粒子の2~20倍の径を有する大粒径樹脂製発泡粒子(すなわち大粒径発泡粒子)を混合して振動遮断壁を構築するに当たり、使用し得る小粒径発泡粒子の径の例、及び大粒径発泡粒子の径の例、並びに両者を組み合わせたときの小粒径発泡粒子の粒径に対する大粒径発泡粒子の粒径の比率(以下粒径比という)を表1に例示する。表1にはまた、小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子を合わせた全発泡粒子の体積に対する小粒径発泡粒子の体積の適切な割合(以下小粒径体積割合という)も例示してある。粒径比と小粒径体積割合との関係を図1に示す。
【0042】
【表1】
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【0043】
表1に示すように粒径比が2.0~20の範囲になるような小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子の組み合わせでは、小粒径発泡粒子の粒径は4mmを超えることもあり、大粒径発泡粒子の粒径は5mm以下になることもある。但し、樹脂製発泡粒子の製造上の制約により小粒径発泡粒子の粒径を小さくすることには限界があることから、小粒径発泡粒子の粒径が限界以下とならないようにする上では、大粒径発泡粒子の粒径が15mm以上であることが適当である。
【0044】
表1から、粒径比が2.0~20の範囲に納まる小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子の組み合わせの場合、小粒径体積割合が0.2~0.4程度になることが、図1から、粒径比を小さくすれば小粒径体積割合が大きくなり、粒径比を大きくすれば小粒径体積割合が小さくなることが分かる。
【0045】
水硬性粉体と粘土粉体と水を含む人造ソイルセメント、もしくは水硬性粉体と粘土粉体とフライアッシュ及び水を含む人造ソイルセメントと、小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子を混合したときに、小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触し、小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子間の空隙に人造ソイルセメントが存在している状態を得るための粒径比と、小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触した状態における全発泡粒子の体積の、人造ソイルセメントの体積に対する倍率(体積倍率)、すなわち粒径比を変えた際の体積倍率を表2に示す。表2から、粒径比が大きい程、体積倍率が大きく、粒径比が小さい程、体積倍率が小さくなることが分かる。
【0046】
【表2】
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【0047】
表2には発泡粒子の粒径比における体積倍率(すなわち水硬性粉体と粘土粉体と水を含む人造ソイルセメント、もしくは水硬性粉体と粘土粉体とフライアッシュ及び水を含む人造ソイルセメントに対する発泡粒子の体積割合)と、人造ソイルセメントの混合体使用量(すなわち小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子を混合した混合材(振動遮断壁)の使用体積量に対する人造ソイルセメントの使用体積量)の割合も示している。
【0048】
表2には粒径比が20の場合を示していないが、粒径比が20の場合は人造ソイルセメントの混合体使用量(体積%)は約15%となる。このように人造ソイルセメントの混合体使用量(体積%)は15%~35%の範囲で設定され、粒径比に応じて人造ソイルセメントの混合体使用量(体積%)が調整される。
【0049】
ここで、混合材の使用体積量/人造ソイルセメントの使用体積量=1+全発泡粒子の使用体積量/人造ソイルセメントの使用体積量(体積倍率)であるから、体積倍率が大きい程、混合材の使用体積量に対する人造ソイルセメントの使用体積量が小さく、体積倍率が小さい程、混合材の使用体積量に対する人造ソイルセメントの使用体積量が大きくなる。例えば粒径比が19.0のときは、人造ソイルセメントの使用体積量/混合材の使用体積量=1/(1+4.85(体積倍率))=0.17、粒径比が2.0のときは、人造ソイルセメントの使用体積量/混合材の使用体積量=1/(1+1.86)=0.35となっている。
【0050】
表3は水硬性粉体と粘土粉体とフライアッシュ及び水を含む人造ソイルセメントの配合例を示す。水硬性粉体としては高炉セメントを用い、粘土粉体としてはベントナイトを用いている。
【0051】
なお、この使用例で使用した高炉セメントはJIS R5211に規定する高炉セメントB種であり、フライアッシュはJIS R6021に規定するコンクリート用フライアッシュであり、ベントナイトは群馬産ベントナイト250メッシュ(商品名:クニミネアースゲル)である。
【0052】
【表3】
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【0053】
表4に、表3に示す配合例の人造ソイルセメントと小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子からなる混合材の配合割合を混合材の単位体積 (1m3)当たりの体積で示す。ここで使用する発泡粒子は小粒径、大粒径共、50倍発泡タイプ(ρ=32kg/m3)の発泡ポリスチレンビーズであり、表4の配合例毎に表5に示すように粒径は異なり、粒径比も変化している。
【0054】
【表4】
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【0055】
【表5】
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【0056】
各配合例の混合材の構成材は次の順序で混練される。
【0057】
最初にスラリープラントやスラリーミキサー中で水とフライアッシュと粘土粉体であるベントナイトが混練される。
【0058】
続いてこの水とフライアッシュとベントナイトの混練物をモルタルミキサーに移し、上記配合例に示されている割合となるように水硬性粉体である高炉セメントと発泡粒子を加えて混練する。この順序での混練により、混合材の構成材である人造ソイルセメントと小径発泡粒子及び大径発泡粒子は均一に分散し、且つ長期に亘ってこの分散性を保持する混合物となる。
【0059】
上記の配合例ではフライアッシュ以外の混和材を使用していないが、この発明の特性である混練時の構成材の配合安定性と、振動遮断壁中での均一な分散性を阻害せずに、振動遮断壁を人造ソイルセメント、小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子が実質的に均一に混合され、かつ発泡粒子同士が互いに接した状態を維持できれば、他のセメント用の混和材や混和剤も添加し得る。
【0060】
実質的に均一に混合とは、振動遮断壁全体として小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子を合わせた発泡粒子が連続し、人造ソイルセメントが実質的に連続しない混合状態となるように、小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子が均一に分散していればよく、一部の発泡粒子間が不連続であっても許容する趣旨である。
【0061】
上記に例示したような水硬性粉体、粘土粉体、水、小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子が実質的に均一に混合された混合材、もしくは水硬性粉体、粘土粉体、フライアッシュ、水、小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子が実質的に均一に混合された混合材を製造する工程と、掘削装置による排土により地中に形成された掘削孔に混合材を充填する工程を経ることにより、人造ソイルセメントと、小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子が実質的に均一に混合され、かつ全発泡粒子が全体として、互いに接触乃至ほとんど接触し、小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子間の空隙に人造ソイルセメントが存在した状態になる振動遮断壁が地中に構築される。
【0062】
掘削孔に混合材を充填する工程では、例えば壁状に空掘した溝内に混合材を投入するか、注入することによっても行えるが、掘削と共に掘削土を上方へ排出する機能を有する掘削装置を用いて排土しつつ地中を所定深度まで掘削し、この掘削装置を引き上げながら掘削装置の先端部から混合材を吐出し、掘削孔内にその最深部より混合材を充填して柱状混合体を形成し、隣接する柱状混合体を互いに接触、もしくは一部重複させて振動遮断壁を構築する方法が適当である。振動遮断壁は実質的に原地盤土が混合材と完全に、またはほとんど完全に置換された状態で完成する。
【0063】
地盤の掘削と共に、掘削土の排出と並行して先端から混合材を吐出する機能を有する掘削装置を用いれば、掘削孔の孔壁の崩壊を防止するための安定液を用いる必要がなく、また原地盤土を混合することなく混合材のみを掘削孔内に充填し、振動遮断壁を構築することができる利点がある。
【0064】
構築される振動遮断壁中に原地盤土が混合されないことで、混合材自体の有する安定した混合状態が振動遮断壁の完成後にも維持され、振動遮断壁の振動遮断性能が安定する。
【0065】
柱状混合体を互いに接触、もしくは一部重複させて振動遮断壁を構築する方法では図2に示すように掘削装置として例えばスパイラルスクリューオーガが用いられるが、この方法の手順は以下の通りである。
【0066】
図2-(a)に示すようにスパイラルスクリューオーガ1を回転させながら、地盤中を地中の所定深度まで掘進させる。(b)に示すようにスパイラルスクリューオーガ1の先端が所定深度に到達した時点で、スパイラルスクリューオーガ1の内部を通じて前記の混合材2をスパイラルスクリューオーガ1の先端部まで送り込み、この先端部から混合材2を吐出しつつ、(c)に示すようにスパイラルスクリューオーガ1を掘進時と同一方向に回転させながら、もしくは回転を停止した状態で引き上げる。
【0067】
スパイラルスクリューオーガ1の引き上げにより原地盤土6が地上に排出されると共に、掘削孔4内に混合材2が充填され、(d)に示すように原地盤土6に代わって混合材2が充填された柱状混合体3が構築される。
【0068】
柱状混合体3は隣接する柱状混合体3と互いに接触、もしくは一部重複させられることにより振動遮断壁5を構成するが、施工直後の柱状混合体3に隣接する少なくとも1個の柱状混合体3を施工すれば、固化が完了していない柱状混合体3の混合材2を流出させる可能性があることから、図3-(a)に示すようにまず、隣接する1個の柱状混合体3を飛ばしながら柱状混合体3を構築した後に、(b)にハッチングで示すようにその飛ばした位置の柱状混合体3を構築する、という要領で施工が実施される。図3中、柱状混合体3の中の四角で囲った数字は構築される順序を示す。
【実施例】
【0069】
柱状混合体の構築に際し、前記表3に示した配合の人造ソイルセメントと、表5に配合例3と配合例4として示した小粒径発泡粒子と大粒径発泡粒子を用い、表4に配合例3と配合例4として示した水硬性粉体、粘土粉体、フライアッシュ、水、小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子が実質的に均一に混合された混合材を製造し、スパイラルスクリューオーガを使用して図2に示す手順により柱状混合体3を構築し、図3に示す手順により振動遮断壁5を構築した。
【0070】
この振動遮断壁5の構築終了から7日経過後に振動遮断壁5から円柱状に試料を切り出したところ、表4の配合例3の試料(実施例1)と表4の配合例4の試料(実施例2)を用いた場合のいずれも当初の配合状態を保持していたことが確認された。すなわち水硬性粉体と粘土粉体とフライアッシュと水を含む人造ソイルセメント中の、小粒径発泡粒子及び大粒径発泡粒子が実質的に均一に混合された状態にあり、且つ発泡粒子が実質的に互いに接触した状態にあった。
【0071】
比較例として、表3に示した配合の人造ソイルセメントと、発泡粒子として粒径が4.24mmの発泡粒子のみを使用し、表6に示す配合(小粒径体積割合)の混合材を用い、上記要領で構築した振動遮断壁の構築終了から7日経過後に振動遮断壁から切り出した円柱状の試料(配合例a)の振動遮断性能も併せて評価した。
【0072】
【表6】
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【0073】
これらの振動遮断壁の振動遮断性能は、起振機を使用して実際の振動と同じ振動を発生させて測定する必要があるが、測定場所周辺の道路等からの振動の影響や、地盤条件のために測定値に誤差やバラツキが生じることがあり、また起振機の振動が周辺の家屋に悪影響を及ぼすことがあるため、誤差やバラツキを抑制させた上で室内試験による要素試験で振動遮断性能の評価を行った。
【0074】
すなわち誤差やバラツキを少なくし、且つ簡便に振動遮断壁の振動遮断性能の差を測定するために、円柱状の試料を半径方向に一定圧で拘束したまま、円柱の軸方向に一定振幅、且つ対称な軸荷重を一定の周期で繰り返して加え、その時の軸方向のひずみを測定する繰返し三軸試験を行い、繰返し載荷時の剛性率Gと減衰率hを調べた。
【0075】
繰返し三軸試験は繰返し軸荷重の振幅をせん断ひずみが0.01%~0.3%程度に相当するように変化させて各試料に対して5回行った。その5回の試験結果から各試料の「剛性率Gとせん断ひずみγの関係」と「減衰率hとせん断ひずみγの関係」を求めた。この関係よりせん断ひずみγが0.01%~0.3%程度の各レベルにおける振動遮断性能が評価できる。
【0076】
剛性率Gは繰り返して加える軸荷重の振幅と軸方向の変位から求められ、減衰率hは繰返し載荷時の軸荷重と軸変位の関係を描く曲線の履歴から求められる。この繰返し三軸試験は、地盤工学会基準JGS0542-2000の「地盤材料の変形特性を求めるための繰返し三軸試験」に則して行った。この測定より得られた「剛性率Gとせん断ひずみγの関係」を図4に示す。
【0077】
図4から、同一のせん断ひずみの値で対比したとき、実施例1(配合例3)、実施例2(配合例4)の剛性率Gが共に比較例(配合例a)の剛性率Gより小さく、実施例1と実施例2の対比では実施例1の剛性率Gが実施例2の剛性率Gより小さい、すなわち粒径比(小粒径発泡粒子の粒径に対する大粒径発泡粒子の粒径の比率)が大きい程、剛性率Gが小さくなることが分かる。
【0078】
繰返し三軸試験とは別に測定した上記各試料(実施例1、実施例2、比較例)の密度ρの測定結果を図5に示す。図5から、比較例の密度よりも実施例1、2の密度の方が小さく、実施例1と実施例2の対比では実施例1の密度が実施例2の密度より小さく、粒径比が大きい程、密度が小さくなることが分かる。
【0079】
なお、上記の密度ρと剛性率Gの積の平方根((ρ/G)1/2)の値は遮断壁のインピーダンスzとして示されるので、交通振動で最も対象となることの多いせん断ひずみγ=0.01%~0.02%程度の場合の、上記各試料(実施例1、実施例2、比較例)の密度ρ、剛性率G、インピーダンスzを表7に、粒径比とインピーダンスzの関係を図6に示す。
【0080】
【表7】
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【0081】
表7、図6から、比較例のインピーダンスzより実施例1、2のインピーダンスzの方が小さく、実施例1と実施例2の対比では実施例1のインピーダンスが実施例2のインピーダンスより小さいことが分かる。
【0082】
一方、原地盤のインピーダンスに対する振動遮断壁のインピーダンスが小さい程、振動遮断性能が高いことが知られているため、表7、図6から、粒径比が大きい程、振動遮断効果が優れることが判明した。
【0083】
最後に各試料の減衰率hとせん断ひずみγとの関係を図7に示す。図7から、比較例の減衰率hよりも実施例1、2の減衰率hが大きく、実施例1と実施例2の対比では実施例1の減衰率hが実施例2の減衰率hより大きく、粒径比が大きい程、減衰率hが大きく、振動を低減する効果が高いことが判明した。
【0084】
以上の測定結果より、インピーダンスについても減衰率についても、比較例より実施例の方がより優れた振動遮断効果を発揮し、特に粒径比が大きい程、振動遮断効果が優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】粒径比と小粒径体積割合の関係を示したグラフである。
【図2】柱状混合体の構築手順を示した立面図である。
【図3】柱状混合体から振動遮断壁を構築する場合の施工手順を示した平面図である。
【図4】せん断ひずみと剛性率の関係を示したグラフである。
【図5】配合例毎の密度を示したグラフである。
【図6】配合例毎のインピーダンスを示したグラフである。
【図7】せん断ひずみと減衰率の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0086】
1……スパイラルスクリューオーガ、2……混合材、3……柱状混合体、4……掘削孔、5……振動遮断壁、6……原地盤土。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6