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明細書 :現場打ち工法及び掘削装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4205551号 (P4205551)
公開番号 特開2005-126922 (P2005-126922A)
登録日 平成20年10月24日(2008.10.24)
発行日 平成21年1月7日(2009.1.7)
公開日 平成17年5月19日(2005.5.19)
発明の名称または考案の名称 現場打ち工法及び掘削装置
国際特許分類 E02D   5/34        (2006.01)
E21B   7/00        (2006.01)
FI E02D 5/34 Z
E21B 7/00 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2003-361012 (P2003-361012)
出願日 平成15年10月21日(2003.10.21)
審査請求日 平成17年11月29日(2005.11.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】吉川 正
【氏名】村田 俊彦
【氏名】田島 新一
【氏名】小滝 裕
【氏名】齎藤 茂
【氏名】北本 幸義
【氏名】神田 政幸
【氏名】棚村 史郎
【氏名】西岡 英俊
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100092657、【弁理士】、【氏名又は名称】寺崎 史朗
【識別番号】100114270、【弁理士】、【氏名又は名称】黒川 朋也
【識別番号】100116920、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 光
審査官 【審査官】石村 恵美子
参考文献・文献 特開昭60-188524(JP,A)
特開平09-177071(JP,A)
調査した分野 E02D 5/34
E21B 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
掘削装置におけるロッド管を回転駆動すると共に下降させ、前記ロッド管の下端部に設けられたカッタヘッドにより掘削を行う第1ステップと、
安定液を前記ロッド管の下端開口部から掘削孔に供給する第2ステップと、
安定液を前記掘削孔の孔口の近傍から該掘削孔に供給する第3ステップと、
揚泥管の吸引口を前記掘削孔の最深部から所定高さの範囲内に配置し、前記掘削孔の底部の泥水を回収する第4ステップと、
を同時に実施し、その後、生コンクリート又はモルタルを前記掘削孔に打設する現場打ち工法。
【請求項2】
前記第1~第4ステップの完了後、生コンクリート又はモルタルの打設前に、安定液を前記掘削孔の孔口の近傍から該掘削孔に供給すると共に、前記ロッド管の前記下端開口部から前記掘削孔の底部の泥水を吸引し排出する第5ステップを更に含む請求項1に記載の現場打ち工法。
【請求項3】
前記第5ステップにおいて、前記掘削孔の底部の泥水を吸引する際、前記カッタヘッドを回転させる請求項2に記載の現場打ち工法。
【請求項4】
前記揚泥管の前記吸引口の位置を前記カッタヘッドから所定の距離、上方に離れた位置とする請求項1~3のいずれか1項に記載の現場打ち工法。
【請求項5】
固定架台と、
前記固定架台に回転可能に且つ上下動可能に支持され、下端に開口部を有するロッド管と、
前記ロッド管を回転させる回転駆動手段と、
前記ロッド管の下端部に設けられたカッタヘッドと、
前記ロッド管の上下動可能に伴って上下方向に伸縮可能であり、吸引口が前記ロッド管の下端から上方に所定の距離を置いて配置されている揚泥管と、
掘削孔の孔口の近傍にて安定液を供給する安定液供給管と、
同時に前記ロッド管及び前記安定液供給管を通して安定液を供給する安定液供給手段と、
を備える掘削装置。
【請求項6】
前記揚泥管の前記吸引口と前記ロッド管との間の水平距離を略一定に保持するスペーサを更に備える請求項5に記載の掘削装置。
【請求項7】
前記揚泥管の前記吸引口が、前記カッタヘッドから所定の距離、上方に離れた位置に配置されている、請求項5又は6に記載の掘削装置。
【請求項8】
前記揚泥管が前記ロッド管と一体的に設けられている請求項5~7のいずれか1項に記載の掘削装置。
【請求項9】
前記掘削孔内における所定の泥水濃度の部分に位置するよう前記ロッド管に沿って上下動可能となっている分離体を更に備え、
前記揚泥管の下部が前記分離体に固定されており、
前記分離体の単位容積当たりの重量が、所望の泥水濃度における泥水に対して比重が1となるように設定されている、請求項5~8のいずれか1項に記載の掘削装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、現場打ち杭(「場所打ち杭」ともいう)を築造するための工法及び掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現場打ち工法としては、正循環工法(サーキュレーション工法)と逆循環工法(リバースサーキュレーション工法)を用いたものが従来から知られている。
【0003】
サーキュレーション工法は、カッタヘッドを回転させて掘削を行いながら、カッタヘッドが取り付けられているロッド管の下端開口部から安定液を供給し、掘削孔の底部に溜まる土砂混入泥水(以下、本明細書及び添付の特許請求の範囲では単に「泥水」という)を孔口まで押し上げて、掘削孔内から排出するという工法である。
【0004】
また、リバースサーキュレーション工法は、カッタヘッドを回転させて掘削を行いながら、孔口近傍から安定液を補充しつつロッド管の下端開口部から泥水を安定液と共に吸い上げて掘削孔内から排出するという工法である。
【0005】
しかしながら、従来のサーキュレーション工法では、泥水を孔口まで上昇させるため、掘削孔内全体の安定液の比重、砂分率、粘性が大きくなり、孔壁にマッドケーキが付着しやすいという問題がある。マッドケーキとは、泥水の水分が減少し流動性がなくなったものをいい、これが孔壁に多量に付着すると、後工程で打設する杭の支持力が低減するおそれがある。このため、サーキュレーション工法は、通常、土砂(スライム)の発生量の少ない径の小さな掘削孔に適用されている。
【0006】
一方、リバースサーキュレーション工法は、孔壁に対するマッドケーキ付着量が少なく、比較的大径の掘削孔に適している工法である。しかし、泥水と共に安定液も多量に排出されるため、安定液供給・回収設備が大規模なものとなるという問題がある。
【0007】
そこで、従来においては、例えば下記の特許文献1に記載されているような現場打ち工法が提案、採用されている。この特許文献1に記載の工法は、まず第1ステップとして、掘削を行いながら、ロッド管の下端開口部から安定液を供給する共に、揚泥管の下端の吸引口を掘削孔の最深部から所定高さの位置に配置して、孔底部の泥水を吸引し孔外部に排出する。そして、この第1ステップの終了後、ロッド管を引き抜き、孔壁を洗浄し、次いで揚泥管の吸引口を掘削孔の最深部まで下げて、孔口近傍から安定液を補充しつつ孔最深部の泥水を回収する第2ステップを行う。その後、生コンクリートやモルタル等を打設して現場打ち杭を築造するのである。
【0008】
この工法では、第1ステップが従来のサーキュレーション工法に相当するが、揚泥管の吸引口を孔口付近ではなく、孔底部に配置するため、泥水を孔口まで上昇させる必要がない。よって、孔壁に付着するマッドケーキの量を低減することができるという効果がある。
【0009】
また、第2ステップでは、揚泥管の吸引口を孔最深部に配置することで、泥水を効率よく排出でき、安定液の補充量は少なくて済む。よって、泥水排出及び安定液補充の開始から比較的短時間のうちに、掘削孔内の液体分を良質な安定液に置換することができ、後工程で築造される杭は安定したものとなる。

【特許文献1】特許第3058319号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したような特許文献1に記載の工法においては次のような問題点がある。
【0011】
まず、第1ステップにおいて揚泥管を孔底部に配置することとしているため、掘削孔の底部の泥水を効率よく回収することができるものの、ロッド管の下端開口部から噴出される安定液により孔底部の泥水が巻き上がる。このため、この工法でも、揚泥管の吸引口よりも上方の孔壁に若干のマッドケーキが付着してしまう。
【0012】
また、この工法では、第1ステップの完了後、第2ステップ(底ざらえ・安定液置換)を行うためには、ロッド管を掘削孔の外部に撤去し、更に安定液供給管を設置しなければならないので、安定液置換を開始するまでの準備に手間がかかるという問題点がある。
【0013】
本発明は、上述したような従来における事情に鑑みてなされたものであり、その主目的は、掘削孔内の安定液を良質に維持すると共に、掘削時に孔壁へのマッドケーキの付着を防止ないし抑制することのできる現場打ち工法、及び、かかる工法に適した掘削装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、掘削が完了した後、効率よく底ざらえを行うことのできる現場打ち工法及び掘削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明による現場打ち工法は、掘削装置におけるロッド管を回転駆動すると共に下降させ、ロッド管の下端部に設けられたカッタヘッドにより掘削を行う第1ステップと、安定液をロッド管の下端開口部から掘削孔に供給する第2ステップと、安定液を掘削孔の孔口の近傍から該掘削孔に供給する第3ステップと、揚泥管の吸引口を掘削孔の最深部から所定高さの範囲内に配置し、掘削孔の底部の泥水を回収する第4ステップとを同時に実施し、その後、生コンクリートやモルタル等を掘削孔に打設することを特徴としている。
【0016】
この工法によれば、安定液をロッド管の下端開口部からのみならず、掘削孔の孔口近傍からも供給するため、掘削孔内の安定液の流れが安定し、泥水の巻き上がりが抑制され、掘削孔の底部の限られた部分に泥水層を形成することが可能となる。その結果、泥水層よりも上方は良質の安定液で占められることとなる。
【0017】
また、本発明による工法では、前記の第1~第4ステップの完了後、生コンクリートやモルタル等の打設前に、安定液を掘削孔の孔口の近傍から該掘削孔に供給すると共に、ロッド管の下端開口部から掘削孔の底部の泥水を吸引し排出することが好ましい。この場合、ロッド管を揚泥管として使用するものであり、ロッド管を揚泥管に交換する手間が不要となる。泥水を吸引する際、必要に応じて、カッタヘッドを回転させることが好ましい。攪拌効果により孔底部の泥水の除去がより完全となるからである。
【0018】
また、揚泥管の吸引口の位置をカッタヘッドから所定の距離、上方に離れた位置とすることが有効である。カッタヘッドによる掘削で生じた泥水を効率よく吸引するためである。
【0019】
本発明は、更に、掘削装置に係るものであり、固定架台と、固定架台に回転可能に且つ上下動可能に支持され、下端に開口部を有するロッド管と、ロッド管を回転させる回転駆動手段と、ロッド管の下端部に設けられたカッタヘッドと、ロッド管の上下動可能に伴って上下方向に伸縮可能であり、吸引口がロッド管の下端から上方に所定の距離を置いて配置されている揚泥管と、掘削孔の孔口の近傍にて安定液を供給する安定液供給管と、同時にロッド管及び安定液供給管を通して安定液を供給する安定液供給手段とを備えることを特徴としている。このような構成の掘削装置は、上記の本発明による現場打ち工法に適している。

【0020】
また、揚泥管の吸引口を常に一定の位置とし、吸引効率を安定化するためには、吸引口とロッド管との間の水平距離を略一定に保持するスペーサを設けることが好ましい。
【0021】
また、泥水吸引効果を高めるために、揚泥管の吸引口は、カッタヘッドから所定の距離、上方に離れた位置とすることが有効である。
【0022】
なお、揚泥管はロッド管とは別体であってもよいが、装置のコンパクト化という観点からは、一体的に設けたものであってもよい。
【0023】
更に、掘削孔内における所定の泥水濃度の部分に位置するようロッド管に沿って上下動可能となっている分離体を更に設け、揚泥管の下部をこの分離体に固定することが好ましい。分離体の単位容積当たりの重量は、所望の泥水濃度における泥水に対して比重が1となるように設定されている。この分離体は、泥水層の厚さの変動に伴って上下し、泥水層の上面位置に常に位置されるようにすることができる。従って、揚泥管の吸引口を常に泥水層の中に配置させておくことができ。泥水回収効率が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明による現場打ち工法によれば、上述したように、掘削時、掘削孔底部の限られた部分の泥水層よりも上方は良質の安定液で占められることとなる。従って、掘削孔内の安定液の比重、砂分率、粘性等を適正な範囲に管理でき、また、マッドケーキの付着量も減らすことができる。従って、打設された杭の支持力が向上する。
【0025】
また、掘削工程から掘削孔内の安定液が良質に維持されることから、次工程の底ざらえ・安定液置換工程に要する手間も軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
【0027】
図1は、本発明による現場打ち工法に用いられる掘削装置10の一実施形態を概略的に示している。図示するように、掘削装置10は、掘削を行う地盤の基礎面に設置、固定される固定架台12を備えている。固定架台12上には、上下方向に伸縮可能な枠体14が設けられている。枠体14は、固定架台12上に立設された1対のガイドロッド16と、ガイドロッド16に摺動可能に嵌合された1対のスライド管18と、これらのスライド管18の上端部間に横架された横ロッド20とから構成されており、適当な伸縮手段、例えば油圧シリンダ(図示しない)により上下方向に伸縮、すなわちスライド管18及び横ロッド20からなる昇降部分を昇降させることが可能となっている。
【0028】
枠体14の昇降部分18,20には回転テーブル22が取り付けられている。回転テーブル22は、鉛直方向の軸線を中心にして回転可能に昇降部分18,20に取り付けられている。この回転テーブル22は、昇降部分18,20に設置された例えば電動モータのような回転駆動手段(図示しない)により回転駆動される。
【0029】
回転テーブル22の回転中心には貫通孔(図示しない)が形成されており、この貫通孔には、下側から、ロッド管24が接続されるようになっている。ロッド管24は、その下端部にカッタヘッド26が設けられた中空の管状体であるが、回転テーブル22の回転力をカッタヘッド26に伝え掘削を行うために十分な剛性を有している。また、ロッド管24は、後述するように、安定液を掘削孔28に供給する安定液供給管、及び、泥水を回収する揚泥管としての機能も有するものである。
【0030】
ロッド管24の下端部のカッタヘッド26は、多数のビット30と、これを支持するビット支持体とを備えるものである。本実施形態では、図2に示すように、ビット支持体は、ロッド管24の下端部の外周面に放射状に突設された複数のスパイダアーム32であり、ビット30は各スパイダアーム32の下縁に固定されている。また、スパイダアーム32は上下2段に設けられており、下側のスパイダアーム32は上側のものよりも短くされている。
【0031】
一方、回転テーブル22の上方には、安定液供給・回収装置34の配管36が、固定架台12に設置された支持フレーム38により吊支されている。この配管36は、回転テーブル22の上面に取り付けられた自在管継手40を介して、貫通孔、ひいてはロッド管24と連通するようになっている。なお、自在管継手40は、固定されている配管36に対して回転可能且つ摺動可能に接続することができ、また、液密性を維持できるような構成となっている。
【0032】
安定液供給・回収装置34は、安定液を安定液槽42から配管44を通して配管36、そして自在管継手40、ロッド管24に圧送するためのポンプ(グラウトポンプ)46を備えている。また、安定液供給・回収装置34は、掘削孔28から泥水を吸引・回収するサクションポンプ48と、サクションポンプ48から配管50を経て送られる回収泥水から土砂を濾過し安定液のみを安定液槽42に戻す濾過装置52、例えばサイクロンスクリーンとを備えている。サクションポンプ48の吸込み口から延びる配管54は配管44に、ポンプ46の下流側で接続されており、これらの配管44,54に取り付けられているバルブ56,58を操作することで、配管36の接続先をサクションポンプ48とグラウトポンプ46のいずれか一方に切り換えることが可能となっている。
【0033】
支持フレーム38には、更に、揚泥管60が吊支されている。本実施形態では、揚泥管60は2本設けられている。各揚泥管60は、枠体14の伸縮に伴って伸縮可能となっている。また、各揚泥管60の下端はロッド管24の下端の近傍で且つカッタヘッド26の直上位置、具体的にはロッド管24の下端から所定の高さ(例えば2~3m)に配置されている。更に、揚泥管60の下端は泥水の吸引口となっており、これらの吸引口はロッド管24を中心とした回転対称に配置されている。揚泥管60の下部は、回転するロッド管24に巻き込まれないよう、図2に示す如く、ロッド管24に対して回転自在に取り付けられたスペーサ62に保持されている。このスペーサ62により、揚泥管60の吸引口はロッド管24に比較的近い位置に置かれる。
【0034】
揚泥管60の上端部は配管54から分岐している分岐管64に接続されている。分岐管64にはバルブ66が取り付けられている。
【0035】
本実施形態に係る掘削装置10はまた、比較的短い安定液供給管68を備えている。この安定液供給管68も支持フレーム38に吊支されており、その下端は掘削孔28の孔口の近傍、すなわち固定架台12の下面から所定の距離を置いた位置に配置されている。安定液供給管68は伸縮せず、その下端開口部は常に一定の位置にある。また、安定液供給管68は、配管44から分岐した分岐管70に接続されている。この分岐管70にもバルブ72が介設されている。
【0036】
次に、以上のような構成の掘削装置10を用いて現場打ち杭を築造する現場打ち工法について図3及び図4も参照して説明する。
【0037】
まず、掘削を行う地盤の基礎面上に掘削装置10を設置する。掘削を開始する際、バルブ56,66,72は開放状態、バルブ58は閉鎖状態とされる。また、枠体14の昇降部分18,20は高い位置に持ち上げた状態とされる。
【0038】
掘削装置10の設置が完了したならば、電動モータを駆動して回転テーブル22を回転させる。これにより、ロッド管24を介してカッタヘッド26が回転し、掘削が開始される。カッタヘッド26には、ロッド管24、自在管継手40及び枠体14の昇降部分18,20の重量が荷重として加えられるため、カッタヘッド26の回転に伴って掘削は下方へと進行していく。
【0039】
この掘削工程と同時に、グラウトポンプ46を駆動して安定液を安定液槽42から配管44,36,70を通してロッド管24及び安定液供給管68に供給し、それぞれの管24,68の下端開口部から安定液を噴出させる。ロッド管24からの安定液はカッタヘッド26に対する潤滑油的な働きもする。安定液は、通常、掘削孔28の孔口近傍まで満たされる。安定液は、孔壁の安定を保つために、掘削孔28内に注入する液体をいい、地盤の性質等により適当な種類の安定液が選択される。
【0040】
また、掘削に伴い発生する土砂が安定液に混入して泥水として掘削孔28の底部に溜まるが、この泥水は、サクションポンプ48を駆動することで、揚泥管60の下端の吸引口から吸引される。泥水は、揚泥管60から配管64,54,50を通って濾過装置52に送られ、そこで土砂が分離された後、安定液として安定液槽42に回収される。泥水の回収量は、掘削孔28内の安定液の液面位置を一定の高さに保つよう、安定液の供給量に応じて適宜調整される。掘削が進行するにつれて、枠体14の昇降部分18,20が下がりロッド管24も下降するが、その動きに伴って揚泥管60も延びるため、揚泥管60の吸引口は常に掘削孔28の最深部から一定の高さ位置に保持される。
【0041】
図3は以上の掘削工程での状態を示している。図3に示すように、安定液はロッド管24と安定液供給管68から供給されるが、安定液供給管68からの安定液は掘削孔28の孔口近傍に供給されるため、ロッド管24からの安定液による上向流を抑える下向流が発生する。このため、ロッド管24及び安定液供給管68のそれぞれの安定液供給量を、バルブ56,72の開度を制御する等して調整することで、掘削孔28内の安定液を比較的穏やかな状態に保たせることができる。その結果、土砂を含んだ比重の高い安定液、すなわち泥水は掘削孔28の底部の限られた部分に泥水層74を形成する。泥水は揚泥管60により回収されるため、泥水層74の上面は掘削孔28の最深部から概ね一定の高さ位置に保たれ、泥水層74の上方は良質の安定液で占めることとなる。
【0042】
前述したように、安定液は孔壁の安定を保つためのものであるので、その比重、砂分率、粘性等を適切な範囲に維持することが重要であるが、本実施形態によれば、掘削孔28の大部分において安定液の管理を適正に行うことができる。
【0043】
また、泥水の巻き上がりが抑制されることから、孔壁に対する土砂、すなわちマッドケーキの付着量を低減することができる。特に、本実施形態においては、揚泥管60の吸引口はスペーサ62によりロッド管24に近い位置でカッタヘッド26の直上に配置されているため、掘削により生じた土砂を効率よく吸引することができる。その結果、図3において、点線の矢印で示すように泥水が流動するため、ロッド管24の下端開口部から噴出された良質の安定液は短時間のうちに孔壁に接することとなり、孔口からの安定液供給の効果と相俟って、マッドケーキの付着量を大幅に低減することができる。
【0044】
従って、掘削孔28内を良質な安定液で満たすことができ、且つ、マッドケーキの付着量を低減することができるので、本実施形態の工法を用いて築造される現場打ち杭の支持力は極めて高く、本設杭のような大径の杭の築造をも可能となる。
【0045】
図には示さないが、掘削を所定深度まで行ったならば、ロッド管24の上端部を固定架台12等に仮固定した後、ロッド管24を回転テーブル22及び自在管継手40から切り離す。そして、枠体14の昇降部分18,20を初期位置に上昇させる。この後、仮固定したロッド管24に延長用のロッド管を接続し、その延長用ロッド管の上端部を回転テーブル22及び自在管継手40に接続する。また、揚泥管60についても同様に延長用の揚泥管を接続する。以上の作業が完了したならば、掘削を再開する。
【0046】
掘削作業が完了したならば、バルブ56,58,66,72を全て閉じ、底ざらえ工程に移る。底ざらえ工程では、まず図4に示すように、揚泥管60を掘削孔28から引き上げる。次に、バルブ58,72を開けて、安定液供給管68から安定液を供給しながら、ロッド管24の下端開口部から掘削孔28の底部の泥水を全て回収し、掘削孔28内の全体を良質な安定液に置換する。この際、必要に応じて、電動モータを駆動し、ロッド管24を介してカッタヘッド26を回転させることが好ましい。カッタヘッド26が回転することで泥水が攪拌され、局所的な停滞が防止され、泥水の吸引・回収効果が格段に向上する。
【0047】
従来であれば、掘削孔28内の安定液の質が低かったため、泥水の回収と共に、安定液全体の置換が必要であったが、本実施形態では、泥水層74の上側の安定液は良質な状態となっているため、回収される泥水に相当する分量の安定液を供給するのみでもよい場合がある。
【0048】
このように図4の底ざらえ工程では安定液の供給量は少なくて済むが、掘削工程においても安定液が良質に維持されることから掘削に伴って補充すべき安定液も少量でよい。従って、小型の安定液供給・回収装置34を使用することが可能となる。
【0049】
また、掘削工程における安定液が良質でマッドケーキの付着量も極めて少なくなるため、掘削工程から底ざらえ工程に移行する間に孔壁を洗浄する必要性が少なく、洗浄したとしても簡単に行える。加えて、ロッド管24をそのまま底ざらえに使用でき、新たに安定液供給管を設置する必要もないので、掘削工程から底ざらえ工程までを短時間で完了させることができる。
【0050】
底ざらえの後、掘削孔28に鉄筋の建て込みを行い、次いで生コンクリート又はモルタル等を打設して施工を完了する。前述したように、掘削孔28内には常に良質の安定液が満たされ、且つ、マッドケーキ付着量が少ないため、築造された杭の支持力は極めて高いものとなる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0052】
例えば、上記実施形態の掘削装置10においては、揚泥管60は2本設けられているが、図5の(a)に示すように1本のみでもよく、また、その1本の揚泥管60の先端を二叉状としてもよい。
【0053】
更に、図5の(b)に示すように、ロッド管24の内部に揚泥管60ないしは同等の流路を形成し、ロッド管24の管壁に当該揚泥管60の内部と連通する開口(泥水吸引口)76を設けるという形態としてもよい。この場合、ロッド管24自体の径を大きくする必要がある。なお、図1の構成において、大径のロッド管24を用いた場合、安定液供給用のポンプ46の容量を向上させることができ、安定液の補給制御も容易となる。
【0054】
また、上記実施形態の工法では、底ざらえ工程の開始時点で揚泥管60を掘削孔28から撤去しているが、この時点で揚泥管60を撤去する必要性は必ずしもなく、揚泥管60を存置させたまま、上記の底ざらえを行ってもよい。
【0055】
更に、上記実施形態では、ロッド管24及び安定液供給管68からの安定液供給量をそれぞれ制御することで、泥水層74の厚さ、すなわちその上面の高さ位置を一定範囲内に維持することとしているが、何らかの原因で泥水層74の上面が大幅に下がった場合には、泥水層74よりも上方の良質な安定液を揚泥管60により回収してしまうことがある。そこで、濃度に応じて泥水層74とその上側の良質な安定液とを積極的に分離させ、その分離境界位置に揚泥管60の下端吸引口を配置させて、常時、泥水を吸引するという手段が考えられる。
【0056】
かかる手段としては、例えば図6の(a)及び(b)に示すように、揚泥管60の下部を伸縮可能な構造、例えば入れ子式の二重管構造とし、その伸縮部分60aを、ロッド管24に摺動可能に取り付けた分離体80に固定するというものが考えられる。分離体80は、ロッド管24に摺動可能に嵌合された内側リング82と、この内側リング82の外側に同軸に配置された外側リング84と、これらのリング82,84間に配置された仕切り部分86とから構成されている。仕切り部分86は、分離透水性の高いシート、膜、或いは、多孔プレート(多数のスリットを有するプレートも含む)等からなり、仕切り部分86を通しての液体の流通を可能としている。また、揚泥管60の伸縮部分60aは、仕切り部分86を貫通した状態で固定されており、その下端吸引口が仕切り部分86よりも下側に配置されている。なお、符号88はリング82,84間を連繋する連繋ビームである。
【0057】
分離体80及び揚泥管60の下部の伸縮部分60aの単位容積当たりの重量は、所望の泥水濃度における泥水に対して比重が概ね「1」となるように設定されている。これにより、分離体80は、掘削孔28内における前記泥水濃度を有する部分に常に位置することとなる。この位置を泥水層74と良質な安定液との境界部分となるよう調整しておくことで、泥水層74の厚さが変動した場合、分離体80はロッド管24に沿って上下する。その結果、揚泥管60の下端吸引口は常に泥水層74内に位置することとなり、泥水の回収率が格段に向上することとなる。
【0058】
なお、分離体80は1枚の多孔プレートから構成されたものであってもよい。また、図2に示すスペーサ62を分離体80として使用できるよう構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による掘削装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のII-II線に沿っての断面図である。
【図3】本発明による現場打ち工法における掘削工程の状態を示す概略説明図である。
【図4】本発明による現場打ち工法における底ざらえ工程の状態を示す概略説明図である。
【図5】(a)及び(b)はそれぞれ揚泥管の他の実施形態を示す概略説明図である。
【図6】(a)は本発明の更に別の実施形態を示す概略縦断面図であり、(b)はその要部の概略横断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10…掘削装置
12…固定架台
14…枠体
24…ロッド管
26…カッタヘッド
28…掘削孔
34…安定液供給・回収装置
46…ポンプ
48…サクションポンプ
60…揚泥管
62…スペーサ
68…安定液供給管
74…泥水層
80…分離体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5