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明細書 :クリープ力測定装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4065831号 (P4065831)
公開番号 特開2005-156505 (P2005-156505A)
登録日 平成20年1月11日(2008.1.11)
発行日 平成20年3月26日(2008.3.26)
公開日 平成17年6月16日(2005.6.16)
発明の名称または考案の名称 クリープ力測定装置及び方法
国際特許分類 G01N  19/02        (2006.01)
G01L   5/00        (2006.01)
FI G01N 19/02 C
G01N 19/02 A
G01L 5/00 Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 15
出願番号 特願2003-399122 (P2003-399122)
出願日 平成15年11月28日(2003.11.28)
審査請求日 平成18年3月6日(2006.3.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】宮本 岳史
【氏名】大江 晋太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
【識別番号】100110858、【弁理士】、【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
審査官 【審査官】福田 裕司
参考文献・文献 大山忠夫 外1名,”高速ころがり接触下のすべりと摩擦”,日本機械学会論文集 第431号 C編,日本機械学会,1982年 7月25日,1005~1013頁
井口雅一 外3名,”実体鉄道車輪とレールによるクリープ特性実験”,日本機械学会論文集(C編)59巻559号,日本機械学会,1993年 3月25日,777~781頁
宮本昌幸,”クリープ力の特定の研究”,JREA 1985年 VOL.28 No.7,1985年 7月 1日,38~41頁
調査した分野 G01N 19/02
G01L 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄道レールと鉄道車輪間に作用するクリープ力(接線力)を測定するクリープ力測定装置であって、
レール上に固定され、レール長手方向に延びるフレームと、
該フレーム上でレール長手方向に沿って駆動されるローラーブロックと、
前記フレームに設けられた、前記ローラーブロックを低摩擦で案内する案内手段と、
前記ローラーブロックに回転自在に取り付けられ、レール上をレール長手方向に転動する測定ローラーと、
該測定ローラーの回転角速度を検出する回転角速度検出手段と、
前記測定ローラーに回転モーメントを付与するモーメント付与手段と、
該回転モーメントを検出するモーメント検出手段と、
前記測定ローラーのレールへの押付力を設定する押付力設定手段と、
該押付力を検出する押付力検出手段と、
前記ローラーブロックの駆動速度を検出する駆動速度検出手段と、
前記各検出手段の検出値に基づいて、前記クリープ力を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とするクリープ力測定装置。
【請求項2】
前記算出手段が、前記測定ローラーのレールに対するすべり率s、及び、前記測定ローラーとレール間の等価摩擦係数μをさらに算出することを特徴とする請求項1記載のクリープ力測定装置。
【請求項3】
前記ローラーブロックが、前記フレームに設けられた駆動機構により駆動され、
該駆動機構が、
前記ローラーブロックを一定速度で駆動するモータ付送り機構と、
前記ローラーブロックの前記フレームに対する移動限界点を検知する検知手段と、
を具備することを特徴とする請求項1又は2記載のクリープ力測定装置。
【請求項4】
前記モーメント付与手段が、
前記フレームに設けられたプーリーと、
該プーリーと前記測定ローラー間に架け渡された第1のワイヤと、
前記フレームに設けられたバネと、
該バネと前記プーリー間に架け渡された第2のワイヤと、
を具備することを特徴とする請求項1~いずれか1項記載のクリープ力測定装置。
【請求項5】
前記モーメント付与手段が、前記測定ローラーの転動に伴い引張される前記バネのバネ力により、前記測定ローラーにモーメントを付与することを特徴とする請求項記載のクリープ力測定装置。
【請求項6】
鉄道レールと鉄道車輪間に作用するクリープ力(接線力)を測定するクリープ力測定装置であって、
レール上に固定され、レール長手方向に延びるフレームと、
該フレーム上でレール長手方向に沿って駆動されるローラーブロックと、
前記フレームに設けられた、前記ローラーブロックを低摩擦で案内する案内手段と、
前記ローラーブロックに回転自在に取り付けられ、レール上をレール長手方向に転動する測定ローラーと、
該測定ローラーの転動に伴い引張れるバネを有し、該バネのバネ力により前記測定ローラーにモーメントを付与するモーメント付与手段と、
を備えることを特徴とするクリープ力測定装置。
【請求項7】
前記フレームに、該フレームをレールに着脱自在に固定する固定機構が設けられていることを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載のクリープ力測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道レールと鉄道車輪間に作用するクリープ力(接線力)を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道技術においては、レール・車輪の動摩擦係数や、これら両者間に作用するクリープ力(接線力)の、脱線等に与える影響を解明することが重要である。従来より、レール・車輪の動摩擦係数を測定する装置としては、例えば鉄道総合技術研究所製の『トリボメータ』や『μテスター』等が知られている。一方、クリープ力については、2円筒の回転試験機を用いて、すべり率とクリープ力を測定する方法が知られている。
【0003】
クリープ力は、レール上における車輪の転がり状態のすべり率に応じて発生する力であり、このすべり率をパラメータとして、法線力に摩擦係数を掛けた値に飽和するとされている。さらに、クリープ力は、左右両車輪のレールへの接触状態、車輪とレールの各々の表面状態、油や水等の介在物、あるいは、レール長手方向と幅方向とによって、飽和傾向に違いが生じることがわかっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した『トリボメータ』や『μテスター』等の装置は、動摩擦係数を測定することは可能であるが、すべり率とクリープ力との関係(クリープ飽和特性)までは測定することができない。一方、2円筒の回転試験機は、すべり率とクリープ力を測定することは可能であるが、試験機が大掛かりであるとともに室内試験に限られるため、実際のレール上でのクリープ力飽和特性までは測定することができない。さらに、本発明者等が2円筒の回転試験機を用いてクリープ力測定試験を実施したが、クリープ力を決定する要因中での摩擦係数の影響を特定することは困難であることがわかっている。
【0005】
このため、実際のレール-鉄道車輪の接触面の表面状態の変化に伴って、クリープ力飽和特性と摩擦係数がどのように変化し得るのかを、現状では充分に把握できていない。そこで、実際のレール-鉄道車輪においてクリープ力を測定することができ、ひいてはクリープ力が脱線等に与える影響を解明する一助となる装置又は方法が求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、実際のレール-鉄道車輪においてクリープ力を簡易に測定することができるクリープ力測定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のクリープ力測定装置は、鉄道レールと鉄道車輪間に作用するクリープ力(接線力)を測定するクリープ力測定装置であって、レール上に固定され、レール長手方向に延びるフレームと、該フレーム上でレール長手方向に沿って駆動されるローラーブロックと、前記フレームに設けられた、前記ローラーブロックを低摩擦で案内する案内手段と、前記ローラーブロックに回転自在に取り付けられ、レール上をレール長手方向に転動する測定ローラーと、該測定ローラーの回転角速度を検出する回転角速度検出手段と、前記測定ローラーに回転モーメントを付与するモーメント付与手段と、該回転モーメントを検出するモーメント検出手段と、 前記測定ローラーのレールへの押付力を設定する押付力設定手段と、該押付力を検出する押付力検出手段と、前記ローラーブロックの駆動速度を検出する駆動速度検出手段と、前記各検出手段の検出値に基づいて、前記クリープ力を算出する算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、実際のレール-鉄道車輪においてクリープ力を簡易に測定することができる。そして、この装置によるクリープ力の測定結果と、従来より提供されている『トリボメータ』や『μテスター』等の装置による摩擦係数の測定結果を併せることで、クリープ力が脱線等に与える影響を解明できるようになることも期待できる。
【0009】
本発明のクリープ力測定装置においては、前記算出手段が、前記測定ローラーのレールに対するすべり率s、及び、前記測定ローラーとレール間の等価摩擦係数μをさらに算出することができる。
この場合、算出手段により、実際のレール-鉄道車輪におけるすべり率s、等価摩擦係数μを簡易に算出できるので、すべり率とクリープ力との関係(クリープ飽和特性)や、クリープ力飽和特性と摩擦係数との関係を解明できるようになることも期待できる。
【0011】
本発明のクリープ力測定装置においては、前記ローラーブロックが、前記フレームに設けられた駆動機構により駆動され、 該駆動機構が、 前記ローラーブロックを一定速度で駆動するモータ付送り機構と、 前記ローラーブロックの前記フレームに対する移動限界点を検知する検知手段と、を具備することができる。
この場合、ローラーブロックを一定速度で駆動できるので、より正確なクリープ力測定を実現することができる。そして、このローラーブロックは、検知手段で移動限界点が検知されるので、この検知に応じて自動停止させる等によって、ローラーブロックの過剰な移動を制限することができる。
【0012】
本発明のクリープ力測定装置においては、前記モーメント付与手段が、 前記フレームに設けられたプーリーと、 該プーリーと前記測定ローラー間に架け渡された第1のワイヤと、 前記フレームに設けられたバネと、 該バネと前記プーリー間に架け渡された第2のワイヤと、を具備することができる。
さらに、前記モーメント付与手段が、前記測定ローラーの転動に伴い引張される前記バネのバネ力により、前記測定ローラーにモーメントを付与することができる。
レール上を測定ローラーが転動すると第1のワイヤを介してプーリーが回転し、プーリーが回転すると第2のワイヤを介してバネが引かれる。このようにして、ワイヤ・プーリーを介して、バネ力によるモーメントが測定ローラーに付与される。
【0013】
本発明のクリープ力測定装置においては、前記フレームに、該フレームをレールに着脱自在に固定する固定機構が設けられているものとすることができる。
この場合、固定機構を用いることで、装置のレールへの固定及び別場所への設置時の固定解除を容易に行なうことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、実際のレール-鉄道車輪においてクリープ力を簡易に測定することができるクリープ力測定装置及び方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るクリープ力測定装置を示す概念図である。
図1には、本実施例に係るクリープ力測定装置1がレールRに固定された状態の概念的構成が示されている。このクリープ力測定装置1は、大きく分けて、以下の各部を備えている。
【符号の説明】
【0017】
(1)フレーム10。
(2)フレーム10に組み付けられたローラーブロック20、並びに、このローラーブロック20に付設された測定ローラー30、押付力設定機構40、ブロック昇降機構50を有するクリープ力測定部。
(3)ローラーブロック20をレールR長手方向(図中矢印前後方向)に沿って駆動する駆動機構60。
(4)測定ローラー30に回転モーメントを付与するモーメント付与機構70。
(5)フレーム10をレールRに着脱自在に固定する固定機構90。
(6)ローラーブロック20のフレーム10に対する移動限界点を検知するリミットスイッチ部100。
(7)測定ローラー30の回転角速度を検出する回転角速度検出ロータリーエンコーダ81、ローラーブロック20の駆動速度を検出する駆動速度検出ロータリーエンコーダ82、回転モーメントを検出するモーメント検出ロードセル83、押付力を検出する押付力検出ロードセル84の各検出値に基づいて、クリープ力を算出するクリープ力算出部(算出手段)80。
【0018】
以下、各部の詳細について、主に図2~図8を参照しつつ説明する。
図2は、本実施例に係るクリープ力測定装置の左側面図である。
図3は、同クリープ力測定装置の右側面図である。
図4は、同クリープ力測定装置の上面図である。
図5は、図2又は図3のI-I線断面図である。
図6は、図2又は図3のII-II線断面図である。
図7は、同クリープ力測定装置のクリープ力測定部(ローラーブロック、測定ローラー、押付力設定機構、ブロック昇降機構)の詳細を示す左側面図である。
図8は、図7の測定部の下部の詳細を示す正面断面図である。
【0019】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、レールの長手方向(車両の進行方向)を前後方向、軌道面におけるレール長手方向と直角の方向を左右方向、軌道面に垂直な方向を上下方向と呼ぶ。これらの方向は、各図中に矢印で示す。
【0020】
(1)フレーム10
図2~図6に示すように、フレーム10は、上板11を備えている。この上板11には、長穴11aが形成されている(図4参照)。上板11の四隅からは、立板13a~13dが垂下している。左右2つずつの立板13aと13c、13bと13dの下端は、それぞれ左側板15a、右側板15bで繋がれている。さらに、前後2つずつの立板13aと13b、13cと13dの下端は、それぞれ連結板17、18(図5及び図6参照)で連結されている。クリープ力測定装置1のレールRへの設置状態において、各連結板17、18はレールR上を横断し、立板13a・13c、左側板15aと、立板13b・13d、右側板15bとでレールRを跨ぐ状態となる。
【0021】
(2)クリープ力測定部
フレーム10の内側には、ローラーブロック20、測定ローラー30、押付力設定機構40、ブロック昇降機構50を有するクリープ力測定部が配置されている。
クリープ力測定部のローラーブロック20は、直方体状の外形を有する。図6~図8にわかり易く示すように、ローラーブロック20は、左右の側板21、22と、これらの上端にボルト結合された天板23を備えている。このローラーブロック20の内側には、測定ローラー30が回転可能に支持されている。
【0022】
図8に示すように、ローラーブロック20の両側板21、22のそれぞれには、ラジアルベアリング21B、22Bが組み込まれている。これらベアリング21B、22B間には、段付きシャフト25が支持されている。この段付きシャフト25の中央部には、前述の測定ローラー30が外嵌している。段付きシャフト25と測定ローラー30とは、キー30aを介して固定されている。測定ローラー30の両側面とベアリング21B、22Bとの間において、段付きシャフト25にはブッシュ21C、22Cが外嵌している。そして、これらブッシュ21C、22Cには、それぞれ巻取プーリー21D、22Dが外嵌している。両巻取プーリー21D、22Dと測定ローラー30とは、ビス30bで結合されている。したがって、両巻取プーリー21D、22D、測定ローラー30、段付きシャフト25は、測定ローラー30のレールR上での転動に伴い同期回転する。
【0023】
図8に示すように、左側板21の外面には、端板26がビス固定されている。この端板26には、ノブ付きネジ27が捩じ込まれている。このノブ付きネジ27の端部は、段付きシャフト25の左端部25Rに捩じ込まれている。端板26及びノブ付きネジ27により、ベアリング21B・段付きシャフト25が抜け止めされる。一方、右側板22の外面には、回転角速度検出ロータリーエンコーダ81のハウジング81Hの接続端部81H′が結合されている。ハウジング81Hの接続端部81H′内側において、段付きシャフト25の右端部25Lと回転角速度検出ロータリーエンコーダ81の回転軸81aとは、ボス28を介して接続されている。回転角速度検出ロータリーエンコーダ81は、測定ローラー30の回転角速度を検出し、図1のクリープ力算出部80においてデータ格納する(詳しくは後述する)。
【0024】
図4~図7にわかり易く示すように、ローラーブロック20には、押圧力設定機構40及びブロック昇降機構50が付設されている。
図7に最もよく示すように、ローラーブロック20の前面には、2個のブラケット32を介してスライドフレーム31が固定されている。このスライドフレーム31は、上下方向に延びる断面コ字状の部材であって、前述したフレーム10の上板11の長穴11a内を上下に貫通して配置されている(図4参照)。スライドフレーム31の上端側にはネジガイド33Aが固定されており、このネジガイド33Aにはノブ付きネジ33Bが螺合している。ネジガイド33Aの下側には、立プレート35が設けられている。これらスライドフレーム31、ネジガイド33A及びノブ付きネジ33B等により、立プレート35に対してローラーブロック20を上下に昇降させるブロック昇降機構50が構成される。
【0025】
ネジガイド33Aの下側に設けられた立プレート35は、後述するようにフレーム10の上板11下面側に取り付けられている。ガイドフレーム31及びローラーブロック20は、この立プレート35に対して上下にスライド昇降する。すなわち、ノブ付きネジ33Bを締め付ける方向に回すと、これに外嵌しているネジガイド33Aが立プレート35に対して上側へ移動しようとする。このとき、ガイドフレーム31内に収容されているコロ(図示されず)によって、ネジガイド33Aとともにガイドフレーム31が上方へ移動する。逆に、ノブ付きネジ33Bを緩める方向に回すと、ネジガイド33Aが立プレート35に対して下側へ移動し、ネジガイド33Aとともにガイドフレーム31が下方へ移動する。このようなブロック昇降機構50は、レールR上でクリープ力測定装置1全体を移動させる際に、一時的にローラーブロック20全体を上方に退避させる際に用いる。
【0026】
図6及び図7に示すように、立プレート35の後面側上部には支持プレート41がビス固定されている。そして、支持プレート41の下方において、前述の立プレート35が横板37にビス固定されている。図5及び図6に示すように、この横板37は、左右方向に延びる帯状の部材であって、フレーム10の上板11下面側にリニアガイド(案内手段)39を介して取り付けられている。このリニアガイド39は、フレーム10の上板11下面に固定された固定部39aと、この固定部39aの下側にスライド可能に組み付けられたスライド部39bとからなり、左右両側にそれぞれ設けられている。横板37は、フレーム10に対して、リニアガイド39のスライド部39bとともに前後方向に移動する。立プレート35は、横板37及びリニアガイド39のスライド部39bとともに、フレーム10の上板11の長穴11a内を前後方向に移動する。リニアガイド39は、ローラーブロック20を低摩擦で案内する役割を果たす。
【0027】
図6及び図7にわかり易く示すように、支持プレート41と横板37間には、3点配置された3本の連結シャフト43がボルト固定されている。これら連結シャフト43の3点中央部において、支持プレート41にはネジシャフト45が捩じ込まれている。図6に最もよく示すように、このネジシャフト45の上端には六角穴付き頭部45aが設けられており、下端には下方に開口したスリーブ46が固定されている。このスリーブ46内には、接点バー47が収容されている。この接点バー47の下端側にはフランジ部47aが設けられており、このフランジ部47aとスリーブ46上板との間には押付バネ49が介装されている。接点バー47の下端は、押付バネ49の付勢力を受けて、ローラーブロック20の天板23上に固定された押付力検出ロードセル84に当接可能となっている。これらネジシャフト45、スリーブ46、接点バー47、押付バネ49等により、測定ローラー30のレールRへの押付力を設定する押付力設定機構40が構成される。
【0028】
ここで、押付力設定機構40の作用について説明する。
ネジシャフト45の六角穴付き頭部45aに図示せぬレンチ等を係合して回すと、ネジシャフト45は支持プレート41に螺合しつつ下方に進む。すると、ネジシャフト45の下端に当たっているスリーブ46が、押付バネ49を縮めつつ下方に移動する。この場合は、接点バー47が、押付力検出ロードセル84を介して、ローラーブロック20をレールR踏面に向けて押し付ける力が強く設定される。一方、ネジシャフト45を前述とは逆側に回すと、ネジシャフト45が上方に進み、スリーブ46と接点バー47間で押付バネ49が伸びようとする。すると、このバネ力でスリーブ46が上方に押されるとともに、接点バー47が押付力検出ロードセル84を介してローラーブロック20を押し付ける力が弱まる。押圧力検出ロードセル84は、このような押し付け力を検出し、その検出値を図1のクリープ力算出部80においてデータ格納する(詳しくは後述する)。
【0029】
(3)駆動機構60
図3に示すように、ローラーブロック20の右方において、横板37の下面にはL字ブラケット61が固定されている。このL字ブラケット61の後方において、フレーム10の上板11下面には、シャフトホルダ63が固定されている。このシャフトホルダ63内には、2個のベアリング63aを介して、回転シャフト65が保持されている。この回転シャフト65の後端側には、カップリング67を介して、ステッピングモーター69が連結されている。このステッピングモーター69は、モーターホルダ69Aを介して、フレーム10の上板11下面に固定されている。ステッピングモーター69の後端には、クリーンダンパ69Bが取り付けられている。
【0030】
一方、回転シャフト65の前端側には、ネジシャフト68が連結されている。このネジシャフト68には、送りナット62が外嵌している。この送りナット62は、前述のL字ブラケット61に固定されている。ネジシャフト68の前端側は、フレーム10の上板11下面に固定された支持フレーム64に支持されている。ネジシャフト68と支持フレーム64の間には、図示せぬベアリングが介装されている。さらに、ネジシャフト68の前端には、カップリング66を介して、駆動速度検出ロータリーエンコーダ82が連結されている。
【0031】
前述の通り、フレーム10の上板11下面には、リニアガイド39を介して横板37が取り付けられている(図5等参照)。さらに、横板39には立プレート35が固定されており、立プレート35にはスライドフレーム31を介してローラーブロック20が取り付けられている(図7等参照)。したがって、横板37の下面にL字ブラケット61を介して固定された送りナット62が、ネジシャフト68に外嵌しつつ前後方向に螺進すると、同時に横板37も前後方向に移動する。そして、横板37の移動に伴って、立プレート35・スライドフレーム31・ローラーブロック20(クリープ力測定部)が一体でリニアガイド39に案内されつつ前後方向に移動する。
【0032】
駆動機構60自体は、次のように作動する。すなわち、ステッピングモーター69の正逆回転駆動に伴い、カップリング67を介して接続されている回転シャフト65及びネジシャフト68が正逆回転する。すると、ネジシャフト68に外嵌している送りナット62が螺進し、前述の通りにローラーブロック20が前後方向に移動する。ネジシャフト68の回転は、駆動速度検出ロータリーエンコーダ82で検出される。駆動速度検出ロータリーエンコーダ82は、ネジシャフト68の回転からローラーブロック20の駆動速度を検出し、その検出値を図1のクリープ力算出部80においてデータ格納する(詳しくは後述する)。
【0033】
(4)モーメント付与機構70
図2~図4に示すように、モーメント付与機構70は、第1ワイヤ71を備えている。第1ワイヤ71の一端側(後端側)は2本であり、前述の各巻取プーリー21D、22Dにそれぞれ固定されているとともに、所定長さ分が巻き取られている。第1ワイヤ71の途中には、モーメント検出ロードセル83が組み込まれている。このモーメント検出ロードセル83を境として、第1ワイヤ71の他端側(前端側)は1本となっている。この第1ワイヤ71の他端は、フレーム10の後方に配置された大プーリー73に固定されている。この大プーリー73の中心は、シャフト75に外嵌固定されている。図4にわかり易く示すように、大プーリー73の両側において、シャフト75には2個の小プーリー74が固定されている。これらの小プーリー74には、それぞれ第2ワイヤ72の一端が固定されている。
【0034】
図4にわかり易く示すように、フレーム10の上板11上面には、各小プーリー74・第2ワイヤ72のそれぞれに対応した一対のモーメント付与バネ76が配置されている。各モーメント付与バネ76は、円筒状のバネホルダ78内に収容されて、互いに並行に横たわった状態で配置されている。各モーメント付与バネ76は、後端側がホルダブロック78Aに固定された固定端部76bとなっており、前端側が自由端部76aとなっている。各第2ワイヤ72の他端側は、各モーメント付与バネ76の内側を通って延びており、端部がモーメント付与バネ76の自由端部76aに固定されている。
【0035】
大小プーリー73、74が外嵌固定されたシャフト75の両端は、ボス77Aを介して、横支持棒77B及び縦支持棒77Cに支持されている。図4に示すように、横支持棒77Bはフレーム10の立板13c、13dに繋がっている。図2及び図3に示すように、縦支持棒77Cは左右側板15a、15bに繋がっている。これら横支持棒77B、縦支持棒77Cは、フレーム10上で大小プーリー73、74及びシャフト75を回転可能に支持する。
【0036】
このようなモーメント付与機構70は、ローラーブロック20の駆動時において、測定ローラー30にモーメントを付与する。詳しくは、駆動機構60の駆動によってローラーブロック20が前側に移動すると、レールR踏面に摺接しつつ測定ローラー30が図2中の矢印X方向に転動する。これに伴い、測定ローラー30と同軸固定されている巻取プーリー21D、22Dが回転し、第1ワイヤ71を徐々に巻き取っていく。そして、第1ワイヤ71がある程度張った状態となると、大プーリー73が図2中の矢印X′方向に回転するとともに、両小プーリー74も同X′方向に回転し、第2ワイヤ72が後側に引かれてモーメント付与バネ76が縮められる。
【0037】
このような作動において、レールRと測定ローラー30間の摩擦力がモーメント付与バネ76のバネ力よりも大きい間は、測定ローラー30はレールR上を転動し続け、第1ワイヤ71が巻取プーリー21D、22Dに巻き取られるとともに、第2ワイヤ72が引かれてモーメント付与バネ76は縮められていく。このときのモーメント付与バネ76のバネ力により、測定ローラー30にはモーメントが付与される。その後、縮められているモーメント付与バネ76のバネ力がレールRと測定ローラー30間の摩擦力よりも大きくなると、モーメント付与バネ76が伸びて第2ワイヤ72を前側に引き、大小プーリー73、74を図2中の矢印Y′方向に回転させる。この大小プーリー73、74の回転とともに、第1ワイヤ71が後側に引かれて巻取プーリー21D、22Dが回転し、この巻取プーリー21D、22Dと同軸固定されている測定ローラー30も回転する。このモーメント(測定ローラー30が引かれて回転し始めた時点での第1ワイヤ71の引張力)は、モーメント検出ロードセル83で検出される。モーメント検出ロードセル83は、このモーメント(引張力)を検出して図1のクリープ力算出部80においてデータ格納する(詳しくは後述する)。
【0038】
(5)固定機構90
図5に最もよく示すように、固定機構90は、フレーム10下部の四隅に設けられている。左側の2つの固定機構90Lと、右側の2つの固定機構90Rとは、構成が若干異なる。
左側の固定機構90Lは、くの字型をした一対の揺動プレート91Lを備えている。両揺動プレート91Lは、中央屈曲部においてシャフト92Lで揺動可能に支持されている。両揺動プレート91L間の下端には、ローラー93Lが保持されている。両揺動プレート91Lの上端には、ノブ付きネジ95が取り付けられている。一方、右側の固定機構90Rは、同様に揺動プレート91R、シャフト92R、ローラー93Rを備えているが、左側の固定機構90Lにおけるノブ付きネジ95の代わりに、六角穴付きボルト96が設けられている。
【0039】
クリープ力測定装置1のフレーム10をレールRに固定する際、右固定機構90Rは固定状態としておき、左固定機構90Lのノブ付きネジ95は締め付けた状態としておく。そして、右固定機構90Rのローラー93RをレールR側部に当て込んでフレーム10をレールR上に載置し、左固定機構90Lのノブ付きネジ95を徐々に緩めると、シャフト92Lを支点として揺動プレート91Lが揺動し、ローラー93LがレールR側部に近づいていく。さらにノブ付きネジ95を徐々に緩めると、左右固定機構90L、90Rのローラー93L、93R間でレールRを挟み込んだ状態となり、クリープ力測定装置1がレールRに固定される。逆に、クリープ力測定装置1をレールRから取り外す際には、ノブ付きネジ95を緩め、レールR側部からローラー93Lを離すようにする。
【0040】
(6)リミットスイッチ部100。
図2~図4にわかり易く示すように、フレーム10の上板11の両側面には、長検知プレート101、短検知プレート102が取り付けられている。一方、図2、図3、図5、図6に示すように、横板37の両端面には、リミットスイッチ部100が取り付けられている。これらのリミットスイッチ部100はほぼ同一の構成である。左側の長検知プレート101・リミットスイッチ部100はローラーブロック20の長距離移動限界点を検知し、右側の短検知プレート102・リミットスイッチ部100はローラーブロック20の短距離移動限界点を検知するが、これら両者を組み合わせて用いることで、ローラーブロック20の移動始点と移動終点とを判別することができる。各リミットスイッチ部100は、前述した駆動機構60のステッピングモーター69に接続されている。ステッピングモーター69は、リミットスイッチ部100の限界点検出に伴い自動停止するようになっている。
【0041】
(7)クリープ力算出部80
図1に概念的に示すように、クリープ力算出部80は、回転角速度検出ロータリーエンコーダ81、駆動速度検出ロータリーエンコーダ82、モーメント検出ロードセル83、押付力検出ロードセル84の各検出値をデータ格納し、これらの検出値に基づいて、次のステップ1~ステップ4の手順でクリープ力を算出する。
【0042】
ステップ1:前記測定ローラー30の半径rと、回転角速度検出ロータリーエンコーダ81の検出値(測定ローラー30がレールR上を転動する際の回転角速度ω)とから、測定ローラー30の周速度V=r・ωを算出する。
ステップ2:ステップ1において算出した測定ローラー30の周速度Vと、駆動速度検出ロータリーエンコーダ82の検出値(前記ローラーブロック20の駆動速度V)とから、測定ローラー30のレールRに対するすべり率s=(V-V)/Vを算出する。
ステップ3:モーメント検出ロードセル83の検出値(前記モーメント付与機構70に基づく測定ローラー30のレールRに対する接線力f)、並びに、押付力検出ロードセル84の検出値(前記押付力設定機構40で設定される測定ローラー30のレールRに対する法線力N)から、測定ローラー30とレールR間の等価摩擦係数μ=f/Nを算出する。
ステップ4:ステップ2で算出したすべり率s、及び、ステップ3で算出した等価摩擦係数μに基づき、クリープ力を算出する。
【0043】
クリープ力算出部80は、より具体的には次のようにしてクリープ力を算出する。
(A)設定パラメータは、次の通りである。
・駆動機構60により駆動するローラーブロック20の設定速度:V(単位cm/s)
・測定ローラー30のレールRに対する接触円直径:D(単位m)
・モーメント付与機構70により引かれる測定ローラー30の引張直径:D(単位m)
・回転角速度検出ロータリーエンコーダ81のパルス数:P
・駆動機構60のステッピングモーター69の駆動パルス幅:W(単位m/rot)
・サンプリング周波数:f(単位Hz)
・速度演算基準クロック:S(単位Hz)
【0044】
(B)測定パラメータは、次の通りである。
・測定ローラー30の速度カウント数:n
・ローラーブロック20の速度カウント数:n
・押付力検出ロードセル84における押付荷重電圧:x(単位V)
・モーメント検出ロードセル83におけるバネ引張荷重電圧:x(単位V)
・測定ローラー30の位置カウント数:nd
・ローラーブロック20の位置カウント数:nd
・測定ローラーの引張力:F(単位N)
【0045】
(C)モニタ出力は3画面を用意し、それぞれ次のグラフを表示する。
・第1画面は、横軸:すべり率s、縦軸:等価摩擦係数μ
・第2画面は、横軸:時間t、縦軸:ローラーブロック20の速度V、及び、測定ローラー30の速度V
・第3画面は、横軸:時間t、縦軸:測定ローラー30の押付力N、及び、接線力T
【0046】
(D)演算式は、以下(a)~(g)の通りである。
(a)ローラーブロック走行距離d=nd・W(単位m)
(b)測定ローラー走行距離d=nd・π・D/P(単位m)
(c)測定ローラー速度V=(π・D・S)/(n・P)(単位m/s)
(d)ローラーブロック速度V=W・(S/n)(単位m/s)
(e)すべり率s=(V-V)/V
(f)接線力T=F・(D/D)(単位N)
(g)等価摩擦係数μ=T/N
【0047】
ここで、クリープ力測定装置1の総合的な作用について述べる。
まず、クリープ力測定装置1のフレーム10をレールR上の所定位置に載置し、固定機構90を用いてフレーム10をレールRに固定する。次いで、ローラーブロック20に付設されたブロック昇降機構50を操作して、測定ローラー30がレールR上面に接するまで下げてから、押圧力設定機構40を操作して測定ローラー30のレールRに対する法線力Nを設定する。
【0048】
次いで、駆動機構60を駆動して、ローラーブロック20をレールR長手方向(前側)に沿って一定速度で移動させる。この際、測定ローラー30がレールR上面に摺接しつつ図2中の矢印X方向に転動するとともに、巻取プーリー21D、22Dに第1ワイヤ71が徐々に巻き取られていく。そして、第1ワイヤ71がある程度張った状態となると、大プーリー73及び小プーリー74が図2中の矢印X′方向に回転するとともに、第2ワイヤ72が後側に引かれてモーメント付与バネ76が縮められ、このモーメント付与バネ76のバネ力により測定ローラー30にはモーメントが付与される。その後、縮められているモーメント付与バネ76のバネ力がレールRと測定ローラー30間の摩擦力よりも大きくなると、モーメント付与バネ76が伸びて第2ワイヤ72を前側に引き、大小プーリー73、74を図2中の矢印Y′方向に回転させ、測定ローラー30が第1ワイヤ71に引かれて回転する。
【0049】
ローラーブロック20の移動は、リミットスイッチ部100で検知される。リミットスイッチ部100が移動限界点を検知し、駆動機構60のステッピングモーター69が停止すると、ローラーブロック20も停止する。そして、このようなローラーブロック20の移動中、各ロータリーエンコーダ81、82、各ロードセル83、84のそれぞれにおいて検出された検出値に基づき、クリープ力算出部80が前記ステップ1~ステップ4に従ってクリープ力を算出する。
【0050】
以下、具体的な数値例について述べる。
本実施例では、想定される実際の鉄道車輪条件を考慮し、測定ローラーの半径rを30mmとし、押付荷重Nを30kgfとした。この場合、接触円半径は0.388mmであり、ヘルツ圧は932MN/mである。この条件は、例えば半径430mmの車輪がレール頭部半径80mmの部分で接触し、輪重が6500kgfのときにヘルツ圧が1.79GN/mであるものに相当する。なお、前述の半径r=30mmの測定ローラーにおけるヘルツ圧は、実際の輪重が約3.4tの車両の接触力に相当するものである。
【0051】
モーメント付与機構70のモーメント付与バネ76については、押付力設定機構40で設定可能なある一定の押付力Nに対し、測定ローラー30のレールRに対する摩擦係数μが0.3、0.5、0.7の各値をとるものと想定した。そして、これら想定された各摩擦係数μ=0.3、0.5、0.7のそれぞれについて、次式に基づき各バネ定数kを計算した:
k=μ・N/L。
但し、Lはローラーブロック20の移動距離である。
【0052】
そして、このバネ定数kを有するバネ力Fのモーメント付与バネ76を用い、測定ローラー30とレールR間の摩擦係数μを次式に基づき計算した:
μ=(D/D)・(F/N)。
但し、Dは、前述の(A)設定パラメータにおける、モーメント付与機構70により引かれる測定ローラー30の引張直径(単位m)であり、Dは、測定ローラー30のレールRに対する接触円直径(単位m)である。引張直径Dは、一例で40mmに設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例に係るクリープ力測定装置を示す概念図である。
【図2】本実施例に係るクリープ力測定装置の左側面図である。
【図3】同クリープ力測定装置の右側面図である。
【図4】同クリープ力測定装置の上面図である。
【図5】図2又は図3のI-I線断面図である。
【図6】図2又は図3のII-II線断面図である。
【図7】同クリープ力測定装置のクリープ力測定部(ローラーブロック、測定ローラー、押付力設定機構、ブロック昇降機構)の詳細を示す左側面図である。
【図8】図7の測定部の下部の詳細を示す正面断面図である。
【0054】
R レール 1 クリープ力測定装置
10 フレーム 20 ローラーブロック
30 測定ローラー 39 リニアガイド
40 押付力設定機構
45 ネジシャフト 46 スリーブ
47 接点バー 49 押付バネ
50 ブロック昇降機構 60 駆動機構
62 送りナット 68 ネジシャフト
69 ステッピングモーター 70 モーメント付与機構
71 第1ワイヤ 72 第2ワイヤ
73 大プーリー 74 小プーリー
75 シャフト 76 モーメント付与バネ
80 クリープ力算出部
81 回転角速度検出ロータリーエンコーダ
82 駆動速度検出ロータリーエンコーダ
83 モーメント検出ロードセル 84 押付力検出ロードセル
90R、90L 固定機構 100 リミットスイッチ部
101 長検知プレート 102 短検知プレート
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
6
【図8】
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