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明細書 :亀裂監視材及び亀裂監視システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4102296号 (P4102296)
公開番号 特開2005-181108 (P2005-181108A)
登録日 平成20年3月28日(2008.3.28)
発行日 平成20年6月18日(2008.6.18)
公開日 平成17年7月7日(2005.7.7)
発明の名称または考案の名称 亀裂監視材及び亀裂監視システム
国際特許分類 G01N  27/20        (2006.01)
G01N  27/00        (2006.01)
FI G01N 27/20 A
G01N 27/00 L
請求項の数または発明の数 9
全頁数 21
出願番号 特願2003-422392 (P2003-422392)
出願日 平成15年12月19日(2003.12.19)
審査請求日 平成18年3月9日(2006.3.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】田中 誠
【氏名】江成 孝文
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 特開昭61-241644(JP,A)
特開昭63-132151(JP,A)
特開2001-174429(JP,A)
特開平05-157721(JP,A)
特開平06-109684(JP,A)
国際公開第2005/033475(WO,A1)
特開2002-257668(JP,A)
調査した分野 G01N 27/00-27/24
特許請求の範囲 【請求項1】
亀裂を検出する亀裂発生検出部とこの亀裂発生検出部が検出した亀裂の進展を検出する亀裂進展検出部とを、この亀裂の発生が予測される監視対象物の表面に重ねて形成、この監視対象物の亀裂の発生及びこの亀裂の進展を監視する亀裂監視材であって、
前記亀裂発生検出部は、
前記亀裂の発生に応じて電気抵抗が変化する亀裂発生検出用導電層と、
前記亀裂発生検出用導電層に電流を流す亀裂発生検出用電極層とを備え、
前記亀裂進展検出部は、
前記亀裂の進展に応じて電気抵抗が変化する亀裂進展検出用導電層と、
前記亀裂進展検出用導電層に電流を流す亀裂進展検出用電極層とを備え、
前記亀裂発生検出用導電層及び前記亀裂進展検出用導電層は、前記監視対象物に発生が予測される亀裂の起点側に長辺側が位置するように、導電性塗料を塗布して帯状に形成されており、
前記亀裂発生検出用導電層は、前記亀裂進展検出用導電層よりも幅が狭く形成されていること、
を特徴とする亀裂監視材。
【請求項2】
請求項1に記載の亀裂監視材において、
前記亀裂進展検出部は、前記亀裂の発生した位置を検出すること、
を特徴とする亀裂監視材。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載の亀裂監視材において、
前記亀裂進展検出用導電層は、前記監視対象物に許容される亀裂長さに応じた幅に形成されていること、
を特徴とする亀裂監視材。
【請求項4】
請求項から請求項までのいずれか1項に記載の亀裂監視材において、
前記亀裂進展検出用導電層は、前記亀裂進展検出用電極層によって複数の監視領域に区画されており、この亀裂進展検出用導電層の長さ方向の隣接する一対の前記亀裂進展検出用電極層によって一つの監視領域が形成されていること、
を特徴とする亀裂監視材。
【請求項5】
亀裂の発生及びこの亀裂の進展を監視する亀裂監視システムであって、
請求項から請求項までのいずれか1項に記載の亀裂監視材と、
前記亀裂発生検出用導電層及び前記亀裂進展検出用導電層の通電状態を測定する通電状態測定部と、
前記通電状態測定部の測定結果に基づいて前記監視対象物に発生する亀裂を評価する評価部と、
を備える亀裂監視システム。
【請求項6】
請求項に記載の亀裂監視システムにおいて、
前記通電状態測定部は、前記亀裂進展検出用電極層によって前記亀裂進展検出用導電層が複数の監視領域に区画されているときに、前記監視領域毎に通電状態を測定し、
前記評価部は、前記監視領域毎の通電状態の測定結果に基づいて亀裂の発生した監視領域を特定すること、
を特徴とする亀裂監視システム。
【請求項7】
請求項又は請求項に記載の亀裂監視システムにおいて、
前記通電状態測定部の測定結果を補正する補正部を備え、
前記評価部は、補正後の測定結果に基づいて前記亀裂を評価すること、
を特徴とする亀裂監視システム。
【請求項8】
請求項に記載の亀裂監視システムにおいて、
前記通電状態測定部は、前記亀裂進展検出用電極層によって前記亀裂進展検出用導電層が複数の監視領域に区画されているときに、前記監視領域毎に通電状態を測定し、
前記補正部は、前記亀裂進展検出用導電層に亀裂が発生したときに、亀裂の発生していない監視領域の通電状態の測定結果に基づいて、亀裂の発生した監視領域の通電状態の測定結果を補正すること、
を特徴とする亀裂監視システム。
【請求項9】
請求項又は請求項に記載の亀裂監視システムにおいて、
前記通電状態測定部は、前記亀裂進展検出用電極層によって前記亀裂進展検出用導電層が複数の監視領域に区画されているときに、隣接する2つの前記監視領域毎に通電状態を測定し、
前記補正部は、前記亀裂進展検出用電極層に亀裂が発生したときに、亀裂の発生していない前記亀裂進展検出用電極層を含む隣接する2つの監視領域の通電状態の測定結果に基づいて、亀裂の発生した前記亀裂進展検出用電極層を含む隣接する2つの監視領域の通電状態の測定結果を補正すること、
を特徴とする亀裂監視システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、亀裂の発生が予測される監視対象物の表面に形成され、この監視対象物の亀裂の発生及びこの亀裂の進展を監視する亀裂監視材、並びに亀裂の発生及びこの亀裂の進展を監視する亀裂監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼構造物には、繰り返し荷重を受けることで引張荷重のかかる部位に疲労亀裂が発生したり、接合部のリベットやボルトの緩みや脱落などの重大変状が発生したりする。このような重大変状が構造物の耐力に影響するほどの大きさに成長すると構造物の破壊に至るため、変状部位別に許容される変状程度を超えるおそれがある場合には補修や補強のための工事が行われている。鋼構造物の重大変状は、通常の状態では複数年かけて進展するため変状発生時に直ちに補修や補強を行う必要はない。また、変状の中には進展が途中で止まる場合もあるため、補修や補強の必要性を判定するためには変状発生後の進展を監視する必要がある。
【0003】
【表1】
JP0004102296B2_000002t.gif

【0004】
表1は、鋼構造物に発生する重大変状として直ちに補修や補強が必要になる場合の例である。例えば、表1に示すように、主桁フランジ、縦桁、横桁引張り側フランジの亀裂は20mmに達した場合には、直ちに補修や補強が必要な状態であると判定される。ここで、表1に示す一群とは、継手を構成する一枚の母材に用いられるリベット又はボルトの全体を意味する。重大変状は、リベットやボルトの緩みや破断による接合力の低下、部材の疲労亀裂による破断強度の低下、地盤沈下による構造物全体の変位による走行安定性の低下に大きく分けられる。疲労亀裂は、繰り返し荷重の載荷時に引っ張り力が作用する部位に発生するため、発生箇所は構造形式によってある程度想定できる。また、発生した亀裂の構造物に与える影響が部位で異なることが知られている。
【0005】
鋼構造物の検査には、2年を超えない範囲で行われる定期検査と、地震などの異常時に大きな荷重を受けた場合に行われる不定期検査と、定期検査などで異常が想定された場合に実施される詳細検査とがある。定期検査と不定期検査は、巡回による検査通路からの目視検査が主体であり、この目視検査では亀裂の発生が想定される箇所に近接して防食塗膜の破断箇所を目視で観察する。鋼材の亀裂発生に伴う塗膜破断は、応力集中箇所と想定される部位から直線的に成長しているので、他の塗膜破断原因と容易に区別することができる。また、過去の経験から鋼材の疲労亀裂時に防食塗膜が破断に至ることが知られている。リベットやボルトの破断は、接合部が観察できれば双眼鏡などを用いて容易に発見することができる。リベットやボルトの緩みは、これらの周りの塗膜の破断状況を近接して観察し、ハンマーなどで叩き音の変化を確認する打音検査によって発見することができる。一方、詳細検査は、検査目的によって異なるが検査のために足場の架設を伴うことがある。巡回による目視によって変状が発見されるのは検査通路に近い部位のみであり、多くの場合には足場を架設して接近観察が必要になるが、足場の架設には多くの費用が必要になる。このため、緊急性の高い詳細検査以外では、10~15年毎に実施されている塗替え塗装工事の塗装足場を活用して検査されている。
【0006】
従来の亀裂検知方法には、超音波式や磁粉探傷式による亀裂検知と長さの計測方法がある。この方法では、極めて小さい亀裂の発見と長さの高精度な評価は可能であるが、従来の目視による検査で亀裂が発見された後に近接して測定することになるため、亀裂の発見の目的に適さないとともに、目視による観察以上の高精度な計測の必要性も少ない。また、従来の亀裂検知方法には、鋼構造物に加わる繰返し応力を素子によってモニタして疲労寿命を予測する方法がある。この方法では、構造物の適当な箇所に設置した素子に加わる繰返し応力をモニタし、使用鋼材の経験的に知られる破壊までの繰返し数によってマイナー則を用いて期間を予測することができる。しかし、この方法では、亀裂の発生時期の確定や亀裂の成長に関する情報が得られず、構造物に補修や補強が必要であるか否かを判定することができず、補修や補強の時期も知ることができない。さらに、従来の亀裂検知方法には、鋼構造物の電気抵抗などの特性変化から亀裂の発生と進展を検知する方法がある。この方法では、鋼構造物自体の電気特性の変化をモニタして、鋼材の抵抗値の変化から亀裂の発生を求めることができる。しかし、この方法では、鋼材自体の抵抗が極めて低いため、印加した電流の流れる経路が短い小型試験片や小型構造物では検知が可能であるが、大型構造物では電流の経路が大きいため、亀裂による抵抗の減少量が極僅かになり、抵抗の変化を効果的に検知することが困難になる。
【0007】
近年、導電性薄膜を構造物に配置しこの構造物に亀裂が発生したときにこの導電性薄膜が破断することで亀裂を検知する方法が提案されている。例えば、従来の亀裂検知材(従来技術1)は、防水性を有する絶縁塗料をトンネルの壁面に塗布して形成された下地層と、線状模様の電気回路を形成するように下地層の表面に導電性塗料を塗布して形成された導電層と、下地層と同様の絶縁塗料を導電層及び下地層に塗布して形成されこれらを被覆する保護層とを備えている(特許文献1参照)。このような従来の亀裂検知材では、壁面にひび割れが発生して異常が発生するとこの異常箇所の周辺が剥離して導電層が断線し導電層が非通電状態になるため、センサが導電層の非通電状態を検出して壁面の異常を検出することができる。
【0008】

【特許文献1】特開2001-201477号公報(段落番号0010~0015及び図2)
【0009】
また、従来の亀裂検知材(従来技術2)は、加工対象物や試験片に取り付けられる誘電体層と、この誘電体層に亀裂が発生し進展したときに破壊される抵抗層と、この抵抗層の表面に形成されこの抵抗層に電流を流す2つの湾曲状の電極とを備える(特許文献2参照)。このような従来の亀裂検知材では、亀裂の進展方向に対して略均一な感度を有するように電極層が湾曲状に形成されているため、2つの電極間の抵抗値の変化から亀裂の成長を評価することができる。
【0010】

【特許文献2】特開平11-094787号公報(段落番号0021~0048及び図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、塗装周期(塗替え塗装周期)の延伸と無塗装構造物の登場という2つの環境の変化が鋼構造物におきている。高耐久型塗装系の導入により塗替え塗装周期が30年ほどに延伸しているため、塗装足場を活用した近接による検査では検査期間が長期化している。また、耐候性鋼の採用による無塗装化により塗装足場の活用が期待できなくなっている。このため、このような環境の変化により検査のためだけの足場の架設が将来必要になり、足場の架設によって検査費用が増大してしまう問題がある。
【0012】
また、従来技術1では、マスキングテープなどを使用して下地層、導電層及び保護層を塗装する必要があるため、作業が困難で手間がかかるとともに、亀裂の発生を検知することはできるが亀裂の成長を評価することができないという問題がある。さらに、従来技術2では、2つの湾曲状の電極の中心に亀裂が発生するようにこれらの電極を配置する必要があり、亀裂の発生箇所を正確に予測できない場合には、亀裂の発生前に電極を配置することができないという問題がある。
【0013】
この発明の課題は、検査費用を節減し検査の確実性を向上させ現場施工が容易であり検知機能を長時間維持することができる亀裂監視材及び亀裂監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、亀裂(C1)を検出する亀裂発生検出部(5)とこの亀裂発生検出部が検出した亀裂の進展を検出する亀裂進展検出部(4)とを、この亀裂の発生が予測される監視対象物(1)の表面(1b)に重ねて形成、この監視対象物の亀裂の発生及びこの亀裂の進展を監視する亀裂監視材であって、前記亀裂発生検出部は、前記亀裂の発生に応じて電気抵抗が変化する亀裂発生検出用導電層(5a)と、前記亀裂発生検出用導電層に電流を流す亀裂発生検出用電極層(5b,5c)とを備え、前記亀裂進展検出部は、前記亀裂の進展に応じて電気抵抗が変化する亀裂進展検出用導電層(4a)と、前記亀裂進展検出用導電層に電流を流す亀裂進展検出用電極層(4c~4f)とを備え、前記亀裂発生検出用導電層及び前記亀裂進展検出用導電層は、前記監視対象物に発生が予測される亀裂の起点側に長辺側が位置するように、導電性塗料を塗布して帯状に形成されており、前記亀裂発生検出用導電層は、前記亀裂進展検出用導電層よりも幅が狭く形成されていることを特徴とする亀裂監視材(3)である。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1に記載の亀裂監視材において、前記亀裂進展検出部は、前記亀裂の発生した位置を検出することを特徴とする亀裂監視材である。
【0016】
請求項の発明は、請求項1又は請求項に記載の亀裂監視材において、前記亀裂進展検出用導電層は、前記監視対象物に許容される亀裂長さに応じた幅に形成されていることを特徴とする亀裂監視材である。
【0017】
請求項の発明は、請求項から請求項までのいずれか1項に記載の亀裂監視材において、前記亀裂進展検出用導電層は、前記亀裂進展検出用電極層によって複数の監視領域(A1~A3)に区画されており、この亀裂進展検出用導電層の長さ方向の隣接する一対の前記亀裂進展検出用電極層によって一つの監視領域が形成されていることを特徴とする亀裂監視材である。
【0018】
請求項の発明は、亀裂(C1)の発生及びこの亀裂の進展を監視する亀裂監視システムであって、請求項から請求項までのいずれか1項に記載の亀裂監視材(3)と、前記亀裂発生検出用導電層(5a)及び前記亀裂進展検出用導電層(4a)の通電状態を測定(S110,S150,S180~S200,S250,S280~S300)する通電状態測定部(9)と、前記通電状態測定部の測定結果に基づいて前記監視対象物(1)に発生する亀裂を評価(S170,S210,S230,S270)する評価部(11)とを備える亀裂監視システム(2)である。
【0019】
請求項の発明は、請求項に記載の亀裂監視システムにおいて、前記通電状態測定部は、前記亀裂進展検出用電極層によって前記亀裂進展検出用導電層が複数の監視領域(A1~A3)に区画されているときに、前記監視領域毎に通電状態を測定(S150)し、前記評価部は、前記監視領域毎の通電状態の測定結果に基づいて亀裂の発生した監視領域を特定(S170)することを特徴とする亀裂監視システムである。
【0020】
請求項の発明は、請求項又は請求項に記載の亀裂監視システムにおいて、前記通電状態測定部の測定結果を補正(S200,S300)する補正部(12)を備え、前記評価部は、補正後の測定結果に基づいて前記亀裂を評価(S210,S230)することを特徴とする亀裂監視システムである。
【0021】
請求項の発明は、請求項に記載の亀裂監視システムにおいて、前記通電状態測定部は、前記亀裂進展検出用電極層によって前記亀裂進展検出用導電層が複数の監視領域に区画されているときに、前記監視領域毎に通電状態を測定(S150)し、前記補正部は、前記亀裂進展検出用導電層(4a)に亀裂が発生したときに、亀裂の発生していない監視領域(A2,A3)の通電状態の測定結果に基づいて、亀裂の発生した監視領域(A1)の通電状態の測定結果を補正(S200)することを特徴とする亀裂監視システムである。
【0022】
請求項の発明は、請求項又は請求項に記載の亀裂監視システムにおいて、前記通電状態測定部は、前記亀裂進展検出用電極層によって前記亀裂進展検出用導電層が複数の監視領域に区画されているときに、隣接する2つの前記監視領域(A1,A2;A2,A3)毎に通電状態を測定(S250)し、前記補正部は、前記亀裂進展検出用電極層(4d)に亀裂が発生したときに、亀裂の発生していない前記亀裂進展検出用電極層(4e)を含む隣接する2つの監視領域(A2,A3)の通電状態の測定結果に基づいて、亀裂の発生した前記亀裂進展検出用電極層(4d)を含む隣接する2つの監視領域(A1.A2)の通電状態の測定結果を補正(S300)することを特徴とする亀裂監視システムである。
【発明の効果】
【0027】
この発明によると、検査費用を節減し検査の確実性を向上させ現場施工が容易であり検知機能を長時間維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る亀裂監視システムによって監視される鋼構造物に亀裂が発生した状態を示す斜視図であり、図1(A)は主桁下フランジに亀裂が発生した状態を示し、図1(B)は腹板に亀裂が発生した状態を示し、図1(C)は主桁切欠部から亀裂が発生した状態を示す。
【0029】
図1に示す鋼構造物1は、鋼材によって構成された固定構造物である。鋼構造物1は、例えば、鉄道車両が走行する線路の下部に空間を確保し列車の荷重を支持する橋梁である。鋼構造物1は、図1に示すように、鋼板と山形鋼とを溶接などによって接合してI形の桁に組み立てた主桁1aを備えており、この主桁1aは主桁1aの下部板を形成する下フランジ1bと、主桁1aの上部板を構成する上フランジ1cと、下フランジ1bと上フランジ1cとを結合する腹板1dと、主桁1aのせん断力による座屈を防止する中間補剛材1eと、主桁1aの一部を切り欠いて形成した切欠部1fなどから構成されている。例えば、図1(A)に示す鋼構造物1には、主桁1aの長さ方向の略中間における下フランジ1bの縁部から亀裂C1が発生しており、下フランジ1bと腹板1dとが接合する接合部から亀裂C2,C3が発生している。図1(B)に示す鋼構造物1には、腹板1dと中間補剛材1eとが接合する接合部から腹板1dに亀裂C4,C5が発生している。図1(C)に示す鋼構造物1には、下フランジ1bと腹板1dとが接合する接合部から亀裂C6が発生している。
【0030】
図2は、この発明の実施形態に係る亀裂監視システムの構成図である。
亀裂監視システム2は、鋼構造物1の亀裂の発生及びこの亀裂の進展を監視するシステムである。亀裂監視システム2は、図2に示すように、亀裂監視材3と、リード線6,7と、電源部8と、通電状態測定部9と、制御部10と、評価部11と、補正部12と、通信部13と、収容部14とを備えている。亀裂監視システム2は、図1に示す亀裂C1~C6の発生が予測される鋼構造物1の部位にそれぞれ設置されている。以下では、図1(A)に示すように、下フランジ1bの縁部(長辺部)に亀裂監視材3を形成した場合を例に挙げて説明する。
【0031】
図3は、この発明の実施形態に係る亀裂監視システムの亀裂監視材の一部を破断して示す斜視図である。図4は、この発明の実施形態に係る亀裂監視システムの亀裂監視材の平面図である。図5は、図4のV-V線で切断した状態を示す断面図である。
亀裂監視材3は、亀裂C1の発生が予測される鋼構造物1の表面に形成され、この鋼構造物1の亀裂C1の発生及びこの亀裂C1の進展を監視する部材である。亀裂監視材3は、図3~図5に示すように、亀裂進展検出部4と、亀裂発生検出部5とを備えている。亀裂監視材3は、図1に示すように、亀裂C1の発生が予測される鋼構造物1の縁部に、刷毛、ローラ又はスプレーなどによって塗布され形成されている。
【0032】
亀裂進展検出部4は、亀裂発生検出部5が検出した亀裂C1の進展を検出する部分であり、亀裂進展検出用導電層4aと、防錆絶縁層4bと、亀裂進展検出用電極層4c~4fと、環境遮断層4gとを備えている。亀裂進展検出部4は、亀裂発生検出部5が検出した亀裂C1の進展を検出可能なようにこの亀裂発生検出部5の下側に形成されている。亀裂進展検出部4は、長期間にわたり耐久性が期待できる塗装系材料によって構成されており鋼構造物1の表面に形成されている。
【0033】
亀裂進展検出用導電層4aは、亀裂C1の発生に応じて電気抵抗が変化する塗膜である。亀裂進展検出用導電層4aは、図3及び図4に示すように、鋼構造物1に発生が予測される亀裂C1の起点側に長辺側が位置するように、防錆絶縁層4bの表面に帯状に形成されている。亀裂進展検出用導電層4aは、鋼構造物1に許容される亀裂長さに応じた幅に形成されており、鋼構造物1に許容される亀裂長さが長いときには幅が広く形成され、鋼構造物1に許容される亀裂長さが短いときには幅が狭く形成される。亀裂進展検出用導電層4aは、亀裂進展検出用電極層4c~4fによって複数の監視領域A1,A2,A3に区画されている。亀裂進展検出用導電層4aは、亀裂進展検出用導電層4aの長さ方向の隣接する一対の亀裂進展検出用電極層4c,4dによって監視領域A1が形成され、一対の亀裂進展検出用電極層4d,4eによって監視領域A2が形成され、一対の亀裂進展検出用電極層4e,4fによって監視領域A3が形成されている。亀裂進展検出用導電層4aは、例えば、導電顔料と有機樹脂とを含む導電性塗料を塗布して形成されており、導電顔料としてはカーボンブラック、グラファイト、ニッケル、銅、銀などが好ましく、有機樹脂としてはエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキルシリケート樹脂などが好ましい。
【0034】
亀裂進展検出用導電層4aの塗膜厚さは、10μm以下では現場施工によって連続した塗膜が得られないおそれがあり、100μm以上では塗装したときに垂れなどの塗膜欠陥が多く発生し、この塗膜欠陥を防止するために粘度を高くすると施工性が犠牲になるおそれがある。このため、亀裂進展検出用導電層4aの塗膜厚さは、10~100μmが好ましく、特に30~60μmが望ましい。亀裂進展検出用導電層4aの塗膜の物性は、引張試験による破断時の伸びが10%以下では鋼構造物1の温度差による伸縮などの他の要因によって割れるおそれがあり、30%以上では鋼構造物1の亀裂発生時やボルトの緩み時に亀裂進展検出用導電層4aが同時に破壊しないおそれがある。このため、亀裂進展検出用導電層4aの塗膜の物性は、引張試験による破断時の伸びが10~30%であることが好ましい。亀裂進展検出用導電層4aは、体積抵抗率が1~10Ω・cmとなり、塗布後の電極間の抵抗が200~10000Ω、好ましくは200~2000Ωとなるように、導電顔料と有機樹脂との配合量を調整して形成されている。亀裂進展検出用導電層4aの塗料粘度は、現場で刷毛、ローラ又はスプレーなどによって塗布できる程度に調整することが好ましい。
【0035】
防錆絶縁層4bは、鋼構造物1と亀裂進展検出用導電層4aとを電気的に絶縁するとともに鋼構造物1の腐食を防止する塗膜である。防錆絶縁層4bは、図3及び図5に示すように、鋼構造物1の表面(鋼素地)に亀裂C1の検知範囲を含むように広く塗布され形成されている。防錆絶縁層4bは、例えば、防錆顔料入りエポキシ樹脂や有機ジンクリッチペイントなどのような鋼構造物用防食塗装系に適用されている下塗り塗料である。防錆絶縁層4bの塗膜厚さは、30~100μmが好ましい。
【0036】
亀裂進展検出用電極層4c~4fは、亀裂進展検出用導電層4aに電流を流す塗膜である。亀裂進展検出用電極層4c~4fは、図4及び図5に示すように、亀裂進展検出用導電層4aの長さ方向に、この亀裂進展検出用導電層4aの表面に等間隔で4箇所配置されている。亀裂進展検出用電極層4c~4fは、亀裂進展検出用導電層4aの短辺と平行になるように、この亀裂進展検出用導電層4aの幅と同じ長さで帯状に塗布されている。亀裂進展検出用電極層4c~4fは、図3及び図4に示すように、亀裂進展検出用導電層4aを複数の監視領域A13に区画している。亀裂進展検出用電極層4c~4fは、亀裂進展検出用導電層4aと同一の導電性塗料を塗布して形成されており、塗膜厚さ、塗膜の物性及び塗料粘度も亀裂進展検出用導電層4aと同一である。亀裂進展検出用電極層4c~4fは、体積抵抗率が1~10Ω・cmとなるように、導電顔料と有機樹脂との配合量を調整して形成することが好ましい。
【0037】
環境遮断層4gは、亀裂進展検出用導電層4a及び亀裂進展検出用電極層4c~4fを保護するとともに鋼構造物1の防食性を向上させる塗膜である。また、環境遮断層4gは、亀裂進展検出部4と亀裂発生検出部5とを電気的に絶縁する塗膜である。環境遮断層4gは、図3及び図5に示すように、亀裂進展検出用導電層4a及び亀裂進展検出用電極層4c~4fを被覆するように、これらの表面に塗布され形成されている。環境遮断層4gは、例えば、環境遮断性に優れたエポキシ樹脂系塗料などのような鋼構造物用防食塗装系に適用される中塗り塗料である。環境遮断層4gの塗膜厚さは、60~120μmが好ましい。
【0038】
亀裂発生検出部5は、鋼構造物1に発生する亀裂C1を検出する部分であり、図3~図5に示すように亀裂発生検出用導電層5aと、亀裂発生検出用電極層5b,5cと、環境遮断層5dと、耐候層5eとを備えている。亀裂発生検出部5は、亀裂進展検出部4と同様の塗装系材料によって構成されており、亀裂進展検出部4に重ねて塗布されている。
【0039】
亀裂発生検出用導電層5aは、亀裂C1の発生に応じて電気抵抗が変化する塗膜である。亀裂発生検出用導電層5aは、図3に示すように、鋼構造物1に発生が予測される亀裂C1の起点側に長辺側が位置するように、環境遮断層4gの表面に帯状に形成されている。亀裂発生検出用導電層5aは、亀裂発生時の極僅かな亀裂長さを検知可能なように、亀裂進展検出用導電層4aよりも幅が狭く形成されており、亀裂進展検出用導電層4aの長辺を含むように線状に塗布されている。亀裂発生検出用導電層5aは、亀裂進展検出用導電層4aと同一の導電性塗料を塗布して形成されており、塗膜厚さ、塗膜の物性及び塗料粘度も亀裂進展検出用導電層4aと同一である。亀裂発生検出用導電層5aの塗膜幅は、5mm以下が望ましい。亀裂発生検出用導電層5aは、亀裂進展検出用導電層4aよりも体積抵抗率が0.01~1Ω・cmと低く、塗布後の電極間の抵抗が200~10000Ω、好ましくは200~2000Ωとなるように、導電顔料と有機樹脂との配合量を調整して形成されている。
【0040】
亀裂発生検出用電極層5b,5cは、亀裂発生検出用導電層5aに電流を流す塗膜である。亀裂発生検出用電極層5b,5cは、図3~図5に示すように、亀裂発生検出用導電層5aの長さ方向の両端部に配置されており、亀裂発生検出用導電層5aの短辺と平行になるように、亀裂発生検出用導電層5aの幅と同じ幅で帯状に塗布されている。亀裂発生検出用電極層5b,5cは、亀裂進展検出用導電層4aと同一の導電性塗料を塗布して形成されており、塗膜厚さ、塗膜の物性及び塗料粘度も亀裂進展検出用導電層4aと同一である。亀裂発生検出用電極層5b,5cは、亀裂進展検出用電極層4c~4fと体積抵抗率が同一になるように、導電顔料と有機樹脂との配合量を調整して形成することが好ましい。
【0041】
環境遮断層5dは、亀裂発生検出用導電層5a及び亀裂発生検出用電極層5b,5cを保護するとともに鋼構造物1の防食性を向上させる塗膜である。環境遮断層5dは、図3及び図5に示すように、亀裂発生検出用導電層5a及び亀裂発生検出用電極層5b,5cを被覆するように、これらの表面に塗布されている。環境遮断層5dは、環境遮断層4gと同様の中塗り塗料であり、環境遮断層5dの塗膜厚さは環境遮断層4gと同一であることが好ましい。
【0042】
耐候層5eは、環境遮断層5dを自然因子の作用から保護する塗膜である。耐候層5eは、環境遮断層5dを被覆するようにこの表面に耐候性塗料を塗布して形成されている。耐候層5eは、例えば、耐紫外線性及び耐薬品性に優れたポリウレタン樹脂やふっ素樹脂などのような鋼構造物用防食塗装系に適用される上塗り塗料である。
【0043】
リード線6は、亀裂進展検出用導電層4aに電流を流す電線である。リード線6は、図2に示すように、一方の端部が亀裂進展検出用電極層4c~4fにそれぞれ取り付けられ接続されており、他方の端部が通電状態測定部9に接続されている。リード線7は、亀裂発生検出用導電層5aに電流を流す電線である。リード線7は、一方の端部が亀裂発生検出用電極層5b,5cに取り付けられ接続されており、他方の端部が通電状態測定部9に接続されている。
【0044】
図2に示す電源部8は、亀裂進展検出用電極層4c~4及び亀裂発生検出用電極層5b,5cに電力を供給する直流電源又は交流電源である。電源部8は、制御部10からの指令に基づいて、亀裂進展検出用電極層4c,4d間、亀裂進展検出用電極層4d,4e間、亀裂進展検出用電極層4e,4f間、及び亀裂発生検出用電極層5b,5c間に電力を供給する。
【0045】
通電状態測定部9は、亀裂進展検出用導電層4a及び亀裂発生検出用導電層5aの通電状態を測定する抵抗測定器などである。通電状態測定部9は、制御部10からの指令に基づいて、監視領域A13毎に通電状態を測定するとともに、隣接する2つの監視領域A1,A2;A2,A3毎に通電状態を測定する。通電状態測定部9は、電源部8に接続されており、電源部8からの電力を亀裂進展検出用電極層4c~4f及び亀裂発生検出用電極層5b,5cに供給する。
【0046】
図6は、この発明の実施形態に係る亀裂監視システムの通電状態測定部の測定動作を説明するための平面図であり、図6(A)は亀裂進展検出用導電層に亀裂が発生した状態を示し、図6(B)は亀裂進展検出用電極層に亀裂が発生した状態を示す。
通電状態測定部9は、図6(A)に示すように、監視領域A1に亀裂C1が発生したときには、亀裂進展検出用電極層4c,4d間(監視領域A1)の亀裂進展検出用導電層4aの電気抵抗を測定するとともに、亀裂進展検出用電極層4d,4e間(監視領域A2)の電気抵抗又は亀裂進展検出用電極層4e,4f間(監視領域A3)の電気抵抗を測定する。一方、通電状態測定部9は、図6(B)に示すように、亀裂進展検出用電極層4dに亀裂C1が発生したときには、亀裂進展検出用電極層4c,4e間(監視領域A1,A2)の亀裂進展検出用導電層4aの電気抵抗を測定するとともに、亀裂進展検出用電極層4d,4f間(監視領域A2,A3)の電気抵抗を測定する。
【0047】
図2に示す制御部10は、亀裂監視システム2の種々の動作を制御する中央処理部(CPU)である。制御部10は、電源部8に電力の供給を指令したり、通電状態測定部9に通電状態の測定を指令したり、通電状態測定部9の測定結果を補正部12に送信してこの補正部12にこの測定結果を補正させたり、補正部12の補正結果を評価部11に送信してこの評価部11に亀裂C1を評価させたり、評価部11の評価結果を通信部13から送信させたりする。制御部10には、電源部8と、通電状態測定部9と、評価部11と、補正部12と、通信部13とが接続されている。
【0048】
評価部11は、通電状態測定部9の測定結果に基づいて鋼構造物1に発生する亀裂C1を評価する部分である。評価部11は、監視領域A1~A3毎の通電状態の測定結果に基づいて、亀裂C1の発生した監視領域A1を特定したり亀裂C1の規模を評価したりする。評価部11は、通電状態測定部9の測定結果を補正部12が補正したときには、補正後の測定結果に基づいて亀裂C1を評価する。
【0049】
補正部12は、通電状態測定部9の測定結果を補正する部分である。補正部12は、外気温による変化や経年による特性変化などの影響を受けたときに、通電状態測定部9の測定結果を補償する。補正部12は、図6(A)に示すように、亀裂進展検出用導電層4aに亀裂C1が発生したときに、亀裂C1の発生していない監視領域A2,A3の通電状態の測定結果に基づいて、亀裂C1の発生した監視領域A1の通電状態の測定結果を補正する。また、補正部12は、図6(B)に示すように、亀裂進展検出用電極層4dに亀裂C1が発生したときに、亀裂C1の発生していない亀裂進展検出用電極層4eを含む隣接する2つの監視領域A2,A3の通電状態の測定結果に基づいて、亀裂C1の発生した亀裂進展検出用電極層4dを含む隣接する2つの監視領域A1,A2の通電状態の測定結果を補正する。
【0050】
図2に示す通信部13は、評価部11の評価結果を送信する部分である。通信部13は、制御部10が出力する評価情報を図示しない中央監視室内の送受信機に有線又は無線により送信したり、この中央監視室内の送受信機からの評価情報の送信指令を受信したりする送受信機などである。
【0051】
収容部14は、電源部8、通電状態測定部9、制御部10、評価部11及び補正部12を収容する部分である。収容部14には、リード線6,7が引き込まれており図示しない接続端子にこれらが接続されている。収容部14は、図2に示すように、電源部8及び通電状態測定部9などをユニット化した状態で収容しており、図3に示すように鋼構造物1の表面に取り付けられ固定されている。
【0052】
次に、この発明の実施形態に係る亀裂監視システムにおける亀裂監視材の製造方法を説明する。
図1に示すように、鋼構造物1では構成部材のエッジ部などの限られた範囲を起点として亀裂C1~C6が発生するおそれがある。例えば、図1(A)に示すように、下フランジ1bのエッジ部を起点として亀裂C1の発生が予測される場合には、図3に示すように鋼構造物1の塗替え塗装時にこのエッジ部に沿って、鋼構造物1の表面に防錆絶縁塗料を塗布し防錆絶縁層4bを形成する。次に、防錆絶縁層4bの表面に導電性塗料を帯状に塗布して、亀裂進展検出用導電層4aを形成する。その後に、亀裂進展検出用導電層4aの表面に導電性塗料を等間隔に4本線状に塗布して亀裂進展検出用電極層4c~4fを形成し、亀裂進展検出用電極層4c~4fにそれぞれリード線6を接続する。次に、亀裂進展検出用導電層4a及び亀裂進展検出用電極層4c~4fの表面に環境遮断性を有する塗料を帯状に塗布して環境遮断層4gを形成し、鋼構造物1の表面に亀裂進展検出部4が形成される。
【0053】
次に、下フランジ1bのエッジ部に沿って環境遮断層4gの表面にこの環境遮断層4gよりも狭い幅で導電性塗料を帯状に塗布して、亀裂発生検出用導電層5aを形成する。その後に、亀裂発生検出用導電層5aの表面の両端部に導電性塗料をそれぞれ線状に塗布して亀裂発生検出用電極層5b,5cを形成し、亀裂発生検出用電極層5b,5cにそれぞれリード線7を接続する。次に、亀裂発生検出用導電層5a及び亀裂発生検出用電極層5b,5cの表面に環境遮断性を有する塗料を帯状に塗布して環境遮断層5dを形成する。その後に、環境遮断層5dの表面に耐候性塗料を帯状に塗布して耐候層5eを形成し、亀裂進展検出部4の表面に亀裂発生検出部5が形成され、鋼構造物1の表面に亀裂監視材3が形成される。最後に、鋼構造物1の表面に収容部14を固定して、リード線6,7が収容部14の接続端子に接続される。
【0054】
次に、この発明の実施形態に係る亀裂監視システムの動作を説明する。
図7は、この発明の実施形態に係る亀裂監視システムの動作を説明するためのフローチャートである。
ステップ(以下Sという)100において、電源がONする。図2に示す制御部10が電源部8に電力の供給を指令すると、図3に示す亀裂進展検出用電極層4c~4f及び亀裂発生検出用電極層5b,5cに電源部8が電力を供給し、亀裂進展検出用導電層4a及び亀裂発生検出用導電層5aに電流が流れる。
【0055】
S110において、亀裂発生検出用導電層5aの通電状態が測定される。図2に示す制御部10が通電状態測定部9に通電状態の測定開始を指令すると、図3に示す亀裂発生検出用導電層5aの通電状態の変化を通電状態測定部9が測定して測定結果を制御部10に送信する。
【0056】
S120において、通電状態が変化したか否かが評価される。通電状態測定部9の測定結果を制御部10が評価部11に送信すると、亀裂発生検出用導電層5aの電気抵抗の変化を評価部11が評価する。図1(A)に示すように、下フランジ1bのエッジ部を起点として亀裂C1が発生すると、図2~図5に示すようにこのエッジ部側の亀裂監視材3の縁部が部分的に破断して亀裂監視材3に亀裂C1が発生する。亀裂発生時の極僅かな亀裂長さでは、亀裂進展検出用導電層4aの電気抵抗の変化量は小さいが、亀裂進展検出用導電層4aの幅に比べて亀裂発生検出用導電層5aの幅が狭く形成されているため、亀裂発生検出用導電層5aの電気抵抗の変化量は大きい。通電状態が変化したときにはS130に進み、通電状態が変化していないときには通電状態が変化するまで判断を繰り返す。
【0057】
S130において、亀裂C1の発生が評価される。亀裂発生検出用導電層5aの電気抵抗が変化したときには、鋼構造物1に亀裂C1が発生したと評価部11が評価する。
【0058】
S140において、評価結果が送信される。亀裂C1の発生を評価部11が評価情報として制御部10に送信するとこの評価情報を制御部10が通信部13に送信し、図示しない中央監視室にこの評価情報を通信部13が送信する。
【0059】
S150において、監視領域A1~A3毎に通電状態が測定される。制御部10が通電状態測定部9に通電状態の測定開始を指令すると、監視領域A1~A3毎に亀裂進展検出用導電層4aの通電状態の変化を通電状態測定部9が測定して、測定結果を制御部10に送信する。
【0060】
S160において、通電状態が変化したか否かが評価される。通電状態測定部9の測定結果を制御部10が評価部11に送信すると、監視領域A1~A3毎に電気抵抗の変化を評価部11が評価する。通電状態が変化したときにはS170に進み、通電状態が変化していないときにはS250に進む。
【0061】
S170において、亀裂発生領域が評価される。図6(A)に示すように、亀裂進展検出用導電層4aの監視領域A1内に亀裂C1が発生してこの亀裂C1がさらに成長し進展すると、監視領域A2,A3内の電気抵抗の変化量に比べて監視領域A1内の電気抵抗の変化量が大きくなる。このため、各監視領域A1~A3内の亀裂進展検出用導電層4aの電気抵抗を通電状態測定部9がそれぞれ測定して、各監視領域A1~A3内の電気抵抗の変化を評価部11が評価する。その結果、電気抵抗の変化が最も大きい監視領域A1内に亀裂C1が発生したことが評価部11によって評価されて亀裂C1の発生位置が特定される。
【0062】
S180において、亀裂C1の発生していない監視領域A2又は監視領域A3の抵抗値が測定される。亀裂進展検出用導電層4aや亀裂進展検出用電極層4c~4fが外気温の変化や経年による特性の変化などの影響を受ける場合には、通電状態測定部9の測定結果を補償する必要がある。このため、図6(A)に示すように、監視領域A1内の亀裂進展検出用導電層4aに亀裂C1が発生したときには、監視領域A2内又は監視領域A3内の電気抵抗の測定値を通電状態測定部9が測定してこの測定結果を制御部10に送信し、制御部10がこの測定結果を補正部12に送信する。
【0063】
S190において、亀裂C1の発生した監視領域A1の抵抗値が測定される。通電状態測定部9が監視領域A1内の抵抗値を測定してこの測定結果を制御部10に送信し、制御部10がこの測定結果を補正部12に送信する。
【0064】
S200において、亀裂C1の発生した監視領域A1の抵抗値が補正される。監視領域A2内又は監視領域A3内の電気抵抗の測定値の初期値からの変化量(外気温の変化や経年による影響値)を補正部12が演算する。その結果、監視領域A1内の電気抵抗の測定値からこの変化量を補正部12が減算することで温度や材質の変化が補償される。補正後の測定結果を補正部12が制御部10に送信すると、この補正後の測定結果を制御部10が評価部11に送信する。
【0065】
S210において、亀裂長さが評価される。補正部12が補正した補正後の抵抗値の変化量に基づいて、外気温の変化や経年による影響されない実際の亀裂C1の長さが評価部11によって評価される。
【0066】
S220において、評価結果が送信される。亀裂C1の発生及び長さを評価部11が評価情報として制御部10に送信するとこの評価情報を制御部10が通信部13に送信し、図示しない中央監視室にこの評価情報を通信部13が送信する。
【0067】
S230において、許容亀裂長さに亀裂C1が到達したか否かが評価される。例えば、表1に示すように、下フランジ1bに亀裂C1が発生した場合には、許容亀裂長さ20mmにこの亀裂C1が達したときに鋼構造物1が直ちに補強が必要な状態になる。このため、通電状態測定部9の測定結果に基づいて許容亀裂長さに亀裂C1が到達したか否かを評価部11が評価する。許容亀裂長さに亀裂C1が到達したときにはS240に進み、許容亀裂長さに亀裂C1が到達していないときにはS180に戻り亀裂長さの評価を繰り返す。
【0068】
S240において、評価結果が送信される。鋼構造物1に直ちに補強が必要であるという評価結果を評価部11が評価情報として制御部10に送信すると、この評価情報を制御部10が通信部13に送信して、図示しない中央監視室にこの評価情報を通信部13が送信する。
【0069】
S250において、隣接する監視領域A1,A2;A2,A3毎に亀裂進展検出用導電層4aの通電状態が測定される。図6(B)に示すように、亀裂進展検出用電極層4dに亀裂C1が発生したときには、各監視領域A1,A2,A3毎に亀裂進展検出用導電層4aを通電状態測定部9が測定しても抵抗値に変化が見られないおそれがある。このため、制御部10が通電状態測定部9に通電状態の測定開始を指令すると、隣接する監視領域A1,A2及び隣接する監視領域A2,A3の通電状態の変化を通電状態測定部9が測定して測定結果を制御部10に送信する。
【0070】
S260において、通電状態が変化したか否かが評価される。通電状態が変化していないときには、鋼構造物1に亀裂C1が発生していないと考えられるためS110に戻り亀裂発生検出用導電層5aの通電状態が繰返し測定され、通電状態が変化したときにはS270に進む。
【0071】
S270において、亀裂発生領域が評価される。図6(B)に示すように、亀裂進展検出用電極層4d内に亀裂C1が発生してこの亀裂C1がさらに成長し進展すると、亀裂進展検出用電極層4d,4f間の電気抵抗の減少量に比べて亀裂進展検出用電極層4c,4e間の電気抵抗の減少量が大きくなる。その結果、電気抵抗の変化が最も大きい監視領域A1,A2内の亀裂進展検出用電極層4dに亀裂C1が発生したことが評価部11によって評価されて亀裂C1の発生位置が特定される。
【0072】
S280において、亀裂C1の発生していない亀裂進展検出用導電層4dを含む監視領域A2,A3の抵抗値が測定される。亀裂進展検出用導電層4aや亀裂進展検出用電極層4c~4fが外気温の変化や経年による特性の変化などの影響を受ける場合には、通電状態測定部9の測定結果を補償する必要がある。このため、図6(B)に示すように、亀裂進展検出用電極層4d内に亀裂C1が発生したときには、亀裂進展検出用電極層4d,4f間(監視領域A2,A3内)の抵抗値を通電状態測定部9が測定してこの測定結果を制御部10に送信し、制御部10がこの測定結果を補正部12に送信する。
【0073】
S290において、亀裂C1の発生した亀裂進展検出用導電層4cを含む監視領域A1,A2の抵抗値が測定される。亀裂進展検出用電極層4c,4e間(監視領域A1,A2内)の抵抗値を通電状態測定部9が測定してこの測定結果を制御部10に送信し、制御部10がこの測定結果を補正部12に送信する。
【0074】
300において、亀裂C1の発生した亀裂進展検出用導電層4cを含む監視領域A1,A2の抵抗値が補正される。亀裂進展検出用電極層4d,4f間(監視領域A2,A3内)の電気抵抗の測定値の初期値からの変化量(外気温の変化や経年による影響値)を補正部12が演算する。その結果、亀裂進展検出用電極層4c,4e間(監視領域A1,A2内)の電気抵抗の測定値からこの変化量を補正部12が減算することで温度や材質の変化が補償される。S300以降はS210に進み同様の処理がされる。
【0075】
この発明の実施形態に係る亀裂監視システム及び亀裂監視材には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、鋼構造物1に発生する亀裂C1を亀裂発生検出部5が検出し、この亀裂発生検出部5が検出した亀裂C1の進展を亀裂進展検出部4が検出する。その結果、鋼構造物1の疲労亀裂のような鋼構造物1の健全性に影響する重大な変状の発生を検出することができるとともに、この変状の進展も検出することができるため、目視検査による不確実性を解消することができる。
【0076】
(2) この実施形態では、亀裂C1の発生した位置を亀裂進展検出部4が検出する。このため、鋼構造物1の健全性に影響する重大な変状の発生位置を特定することができるため、この亀裂C1の発生した位置を重点的に監視することができる。
【0077】
(3) この実施形態では、亀裂進展検出部4及び亀裂発生検出部5が塗料を塗布して形成されている。このため、例えば、鋼構造物1の塗替え塗装工事に合わせて塗料を塗布して亀裂進展検出部4及び亀裂発生検出部5を形成することができる。その結果、屋外や現場で容易に施工することができるとともに、検査のためだけに足場を架設する必要がなくなり経費を節減することができる。
【0078】
(4) この実施形態では、亀裂C1の進展に応じて電気抵抗が変化する亀裂進展検出用導電層4aと、この亀裂進展検出用導電層4aに電流を流す亀裂進展検出用電極層4c~4fとを亀裂進展検出部4が備える。また、この実施形態では、亀裂C1の発生に応じて電気抵抗が変化する亀裂発生検出用導電層5aと、この亀裂発生検出用導電層5aに電流を流す亀裂発生検出用電極層5b,5cとを亀裂発生検出部5が備える。このため、亀裂C1の発生や進展などの鋼構造物1の変状を検査通路などの遠隔地から電気抵抗の変化として確認することができる。
【0079】
(5) この実施形態では、鋼構造物1に発生が予測される亀裂C1の起点側に長辺側が位置するように、亀裂発生検出用導電層5aが帯状に形成されている。その結果、亀裂発生時の極僅かな亀裂長さであっても電気抵抗の変化が大きくなり、亀裂C1の発生を容易に検出することができる。
【0080】
(6) この実施形態では、亀裂発生検出用導電層5aは亀裂進展検出用導電層4aよりも幅が狭く形成されている。このため、亀裂C1が発生したときの電気抵抗の変化が亀裂進展検出用導電層4aに比べて亀裂発生検出用導電層5aのほうが大きくなり、亀裂発生検出用導電層5aによって極僅かな亀裂C1の発生も検出することができる。
【0081】
(7) この実施形態では、亀裂進展検出用導電層4aは鋼構造物1に許容される亀裂長さに応じた幅に形成されている。このため、鋼構造物1に許容される亀裂長さに達するまで亀裂C1の成長を監視し評価することができる。
【0082】
(8) この実施形態では、亀裂進展検出用導電層4aが亀裂進展検出用電極層4c~4fによって複数の監視領域A1~A3に区画されており、この亀裂進展検出用導電層4aの長さ方向の隣接する一対の亀裂進展検出用電極層4c~4fによって一つの監視領域A1~A3が形成されている。その結果、いずれの監視領域A1~A3内に亀裂C1が発生したかを容易に検出することができる。
【0083】
(9) この実施形態では、通電状態測定部9の測定結果に基づいて鋼構造物1に発生する亀裂C1を評価部11が評価するため、通電状態の変化に基づいて鋼構造物1に発生する亀裂C1及びこの亀裂C1の進展を簡単に検出することができる。
【0084】
(10) この実施形態では、監視領域A1~A3毎の通電状態測定部9の測定結果に基づいて亀裂C1の発生した監視領域A1を評価部11が特定するため、亀裂C1の発生位置を検出することができる。
【0085】
(11) この実施形態では、通電状態測定部9の測定結果を補正部12が補正し、補正後の測定結果に基づいて亀裂C1を評価部11が評価するため、外気温の変化や経年による特性の変化などの影響を補償することができる。
【0086】
(12) この実施形態では、亀裂進展検出用導電層4aに亀裂C1が発生したときに、亀裂C1の発生していない監視領域A2又は監視領域A3の通電状態の測定結果に基づいて、亀裂C1の発生した監視領域A1の通電状態の測定結果を補正部12が補正する。その結果、亀裂C1の発生した監視領域A1内の電気特性に含まれる外気温や材料特性の変化分を考慮して、監視領域A1内の測定値を補正することができる。
【0087】
(13) この実施形態では、亀裂進展検出用電極層4dに亀裂C1が発生したときに、亀裂C1の発生していない亀裂進展検出用電極層4eを含む隣接する2つの監視領域A2,A3の通電状態の測定結果に基づいて、亀裂C1の発生した亀裂進展検出用電極層4dを含む隣接する2つの監視領域A1,A2の通電状態の測定結果を補正部12が補正する。その結果、亀裂C1の発生した亀裂進展検出用電極層4dを含む隣接する監視領域A1,A2内の電気特性に含まれる外気温や材料特性の変化分を評価して、監視領域A1,A2内の測定値を補正することができる。
【実施例】
【0088】
次に、この発明の実施例を説明する。
(抵抗測定実験)
図8は、この発明の実施例に係る亀裂検出用塗膜の抵抗測定実験の構成図であり、図8(A)は平面図であり、図8(B)は正面図である。
図8に示す亀裂検出用塗膜15は、亀裂の発生が予測される検出対象物に塗布されこの検出対象物の亀裂を検出する塗膜である。亀裂検出用塗膜15は、亀裂検出用塗料を帯状に塗布して形成されており、亀裂の発生に応じて電気抵抗が変化する。亀裂検出用塗膜15は、導電顔料としてカーボンブラックを含み、有機材料として液状エポキシを含む樹脂/顔料割合が500%の亀裂検出用塗料を塗布して形成されている。電極16a,16bは、亀裂検出用塗膜15に電流を流す部分であり、距離L1=700mm間隔をあけて亀裂検出用塗膜15の表面に形成されている。図8に示す亀裂検出用塗膜15を長さL=720mm、厚さt=0.06mmで形成し、亀裂検出用塗膜15を幅W=1~300mmまで変化させ、亀裂検出用塗膜15の一方の長辺から亀裂Cを導入して電極16a,16b間の電気抵抗を測定した。
【0089】
図9は、この発明の実施例に係る亀裂検出用塗膜の亀裂長さと抵抗値の増加量との関係を示すグラフである。図10は、この発明の実施例に係る亀裂検出用塗膜を幅=50mmで塗布したときの亀裂長さと抵抗値の増加量との関係を示すグラフである。
図9及び図10に示す横軸は、亀裂Cの長さ(mm)であり、縦軸は電極間の抵抗値増加量(Ω)である。図9及び図10に示すように、亀裂Cの長さが長くなるほど電極16a,16b間の抵抗値の増加量が大きくなり、図9に示すように亀裂検出用塗膜15の幅Wが狭いほど微小長さの亀裂Cを検出可能であると考えられる。例えば、図9に示すように、亀裂検出用塗膜15を幅W=5mm以下で塗布した場合には、1mm以下の亀裂Cを検出することができ、亀裂検出用塗膜15を幅W=1mm程度で塗布した場合には、長さ0.5mm程度の亀裂Cを検出することができる。また、亀裂検出用塗膜15を幅W=10mm程度で塗布した場合には、長さ5mm程度の精度で10mm近くの亀裂長さを検出することができる。
【0090】
(実施例1)
図11は、この発明の実施例1に係る亀裂検出用塗料の樹脂/顔料割合と体積抵抗率との関係を示すグラフである。
図11に示す横軸は、樹脂/顔料割合(wt%)であり、縦軸は体積抵抗率(固有抵抗率)(Ω・cm)である。ここで、樹脂/顔料割合は、顔料の質量に対する樹脂の質量の割合を示し、数値が小さいほど樹脂量の少ない塗膜であることを示す。実施例1は、導電顔料としてカーボンブラック(電気化学工業(株)製、商品名:デンカブラック)を含み、有機材料として液状エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:エピクロン)を含む亀裂検出用塗料である。
【0091】
【表2】
JP0004102296B2_000003t.gif

【0092】
表2は、カーボンブラック/液状エポキシ樹脂の体積抵抗率の測定結果を示す。実施例1は、図11及び表2に示すように、樹脂含有量が低下すると体積抵抗率が小さくなり導電性が向上している。図3~図5に示す亀裂進展検出用導電層4aとして実施例1の亀裂検出用塗料を使用する場合には、体積抵抗率が1~10Ω・cm程度になるように、導電顔料の質量に対する有機樹脂の質量を300~700wt%程度に調整することが望ましい。
【0093】
(実施例2)
図12は、この発明の実施例2に係る亀裂検出用塗料の樹脂/顔料割合と体積抵抗率との関係を示すグラフである。
図12に示す横軸は、樹脂/顔料割合(wt%)であり、縦軸は体積抵抗率(mΩ・cm)である。実施例2は、導電顔料としてニッケル粉(関東化学(株)製の試薬)を含み、有機材料として液状エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:エピクロン)を含む亀裂検出用塗料である。
【0094】
【表3】
JP0004102296B2_000004t.gif

【0095】
表3は、ニッケル粉/液状エポキシ樹脂の体積抵抗率の測定結果を示す。実施例2は、図12及び表3に示すように、実施例1と同様に樹脂含有量が低下すると体積抵抗率が小さくなり導電性が向上している。図3~図5に示す亀裂進展検出用電極層4c~4f、亀裂発生検出用導電層5a及び亀裂発生検出用電極層5b,5cとして実施例2の亀裂検出用塗料を使用する場合には、体積抵抗率が0.01~0.04Ω・cm程度になるように、導電顔料の質量に対する有機樹脂の質量を20~80wt%程度に調整することが望ましい。
【0096】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、監視対象物として鋼構造物1を例に挙げて説明したが、コンクリート構造物などの他の構造物についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、疲労亀裂などによって鋼構造物1に亀裂C1が発生する場合を例に挙げて説明したが、リベットやボルトなどの緩みによって塗膜に亀裂が発生する場合についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、亀裂進展検出部4上に亀裂発生検出部5を形成した場合を例に挙げて説明したが、亀裂発生検出部5上に亀裂進展検出部4を形成することもできる。
【0097】
(2) この実施形態では、4本の亀裂進展検出用電極層4c~4fによって亀裂進展検出用導電層4aを3つの監視領域A1~A3に区画する場合を例に挙げて説明したがこれに限定するものではなく、4つ以上の監視領域に区画することもできる。また、この実施形態では、樹脂自体が液状である液状エポキシ樹脂によって亀裂検出用塗料を製造する場合を例に挙げて説明したが、液状エポキシ樹脂に比べて分子量が高く常温で固体である固形エポキシ樹脂によって亀裂検出用塗料を製造することもできる。さらに、この実施形態では、ニッケル粉によって亀裂検出用塗料を製造する場合を例に挙げて説明したがこれに限定するものではない。例えば、酸化物によって表面が覆われたニッケル粉以外の他の金属顔料であっても、樹脂中で粉砕することで導電性塗膜を形成できる場合には、このような他の金属顔料によって亀裂検出用塗料を製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】この発明の実施形態に係る亀裂監視システムによって監視される鋼構造物に亀裂が発生した状態を示す斜視図であり、(A)は主桁下フランジに亀裂が発生した状態を示し、(B)は腹板に亀裂が発生した状態を示し、(C)は主桁切欠部から亀裂が発生した状態を示す。
【図2】この発明の実施形態に係る亀裂監視システムの構成図である。
【図3】この発明の実施形態に係る亀裂監視システムの亀裂監視材の一部を破断して示す斜視図である。
【図4】この発明の実施形態に係る亀裂監視システムの亀裂監視材の平面図である。
【図5】図4のV-V線で切断した状態を示す断面図である。
【図6】この発明の実施形態に係る亀裂監視システムの通電状態測定部の測定動作を説明するための平面図であり、(A)は亀裂進展検出用導電層に亀裂が発生した状態を示し、(B)は亀裂進展検出用電極層に亀裂が発生した状態を示す。
【図7】この発明の実施形態に係る亀裂監視システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】この発明の実施例に係る亀裂検出用塗膜の抵抗測定実験の構成図であり、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【図9】この発明の実施例に係る亀裂検出用塗膜の亀裂長さと抵抗値の増加量との関係を示すグラフである。
【図10】この発明の実施例に係る亀裂検出用塗膜を幅=50mmで塗布したときの亀裂長さと抵抗値の増加量との関係を示すグラフである。
【図11】この発明の実施例1に係る亀裂検出用塗料の樹脂/顔料割合と体積抵抗率との関係を示すグラフである。
【図12】この発明の実施例2に係る亀裂検出用塗料の樹脂/顔料割合と体積抵抗率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0099】
1 鋼構造物(監視対象物)
2 亀裂監視システム
3 亀裂監視材
4 亀裂進展検出部
4a 亀裂進展検出用導電層
4b 防錆絶縁層
4c~4f 亀裂進展検出用電極層
4g 環境遮断層
5 亀裂発生検出部
5a 亀裂発生検出用導電層
5b,5c 亀裂発生検出用電極層
5d 環境遮断層
5e 耐候層
6,7 リード線
8 電源部
9 通電状態測定部
10 制御部
11 評価部
12 補正部
13 通信部
14 収容部
15 亀裂検出用塗膜
16a,16b 電極
1~A3 監視領域
1~C6 亀裂

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11