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明細書 :発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5045876号 (P5045876)
公開番号 特開2007-246329 (P2007-246329A)
登録日 平成24年7月27日(2012.7.27)
発行日 平成24年10月10日(2012.10.10)
公開日 平成19年9月27日(2007.9.27)
発明の名称または考案の名称 発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子とその製造方法
国際特許分類 C01B  33/02        (2006.01)
C23C  16/27        (2006.01)
C23C  16/505       (2006.01)
C09K  11/08        (2006.01)
C09K  11/59        (2006.01)
FI C01B 33/02 Z
C23C 16/27
C23C 16/505
C09K 11/08 G
C09K 11/59
請求項の数または発明の数 12
全頁数 11
出願番号 特願2006-071644 (P2006-071644)
出願日 平成18年3月15日(2006.3.15)
審査請求日 平成21年1月14日(2009.1.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 慶介
【氏名】平栗 健二
【氏名】松本 哲矢
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100113918、【弁理士】、【氏名又は名称】亀松 宏
【識別番号】100111903、【弁理士】、【氏名又は名称】永坂 友康
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 特開平05-224261(JP,A)
特開2005-268337(JP,A)
特開2005-036275(JP,A)
特開平11-201972(JP,A)
特開2004-296161(JP,A)
特開2005-287579(JP,A)
国際公開第2007/086321(WO,A1)
国際公開第2007/086225(WO,A1)
柳澤 聡 ほか,表面酸化処理によるナノSi粒子の光学的性質,2005年(平成17年)秋季 第66回応用物理学会学術講演会講演予稿集,2005年 9月 7日,第3分冊,第1288ページ中段
調査した分野 C01B33/00-33/193
C09K11/08
C09K11/59
C23C16/27
C23C16/505
CAplus(STN)
JSTPlus(JDreamII)
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
紫外光線又は可視光線を照射することにより蛍光発光する粒子サイズ3.5nm以下のナノシリコン粒子を炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜で被覆したことを特徴とする発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【請求項2】
前記炭素膜がダイヤモンド状炭素膜であることであることを特徴とする請求項に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【請求項3】
前記ダイヤモンド状炭素膜が、高周波プラズマCVD法で作製したものであることを特徴とする請求項に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【請求項4】
前記炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜が、各種溶液に対して、耐薬品性、耐腐食性があり、生体適合性に優れていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【請求項5】
前記溶液が、エタノール、トルエン、純水、又は、生理食塩水であることを特徴とする請求項に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【請求項6】
前記溶液内において、ナノシリコン粒子が高輝度でかつ安定的に蛍光発光することを特徴とする請求項又はに記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【請求項7】
炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜を有する粒子サイズ3.5nm以下のナノシリコン粒子の製造方法において、
(a)基板上に、ナノシリコン粒子を分散した溶液を塗布し、次いで、
(b)上記ナノシリコン粒子の表面に、高周波プラズマCVD法により、発光輝度の劣化防止保護膜を被覆する
ことを特徴とする発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
【請求項8】
前記炭素膜がダイヤモンド状炭素膜であることを特徴とする請求項に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
【請求項9】
前記ダイヤモンド状炭素膜が、高周波プラズマCVD法で作製したものであることを特徴とする請求項に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
【請求項10】
前記炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜が、各種溶液に対して耐薬品性、耐腐食性があり、生体適合性に優れていることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
【請求項11】
前記溶液が、エタノール、トルエン、純水、又は、生理食塩水であることを特徴とする請求項10に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
【請求項12】
前記溶液内において、ナノシリコン粒子が高輝度でかつ安定的に蛍光発光することを特徴とする請求項10又は11に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、直径が数~数十nm(ナノメートル)の、蛍光発光する半導体粒子材料が注目されており、ディスプレイ用蛍光材、照明器具材、化粧品、衣料品、服飾品、医薬品、医療用デバイスなど様々な応用分野に適応されようとしている。
【0003】
しかし、現段階までに研究又は開発されている蛍光発光半導体ナノ粒子材料の中には、地球環境に対し負荷が大きいものや、人体に有害なものがあるので、環境に直接関係するディスプレイ、照明器具への応用や、化粧品、衣料品、服飾品、医薬品、医療用デバイスなどにおける人体に直接関係する応用においては、環境・人体に対する無毒性や無害性(環境保全性)を確認せずに、従来の蛍光発光半導体ナノ粒子材料をそのまま使用することはできない。
【0004】
それ故、蛍光発光半導体ナノ粒子材料を、より多くの分野で適用するには、自然環境にやさしく、特に、人体への影響のない、無毒性・無害性に重点を置いた蛍光発光半導体ナノ粒子材料の開発が重要である。
【0005】
最近、脚光を浴びつつある蛍光発光半導体ナノ粒子材料として、可視領域(青色~赤色)で蛍光発光するナノシリコン粒子がある(特許文献1、参照)。そして、このナノシリコン粒子は、直径約3.5nm以下であり、しかも、ナノシリコン粒子自体がシリコンで構成されていて、環境に対してだけでなく、人体にも優しい、無毒性・無害性の物質であるので、広範囲な分野への応用材料として有望である。
【0006】
しかし、ナノシリコン粒子からの蛍光発光の輝度や寿命は、ナノシリコン粒子を保存している環境下において様々である。例えば、大気中では、ナノシリコン粒子の表面に、非発光再結合中心である欠陥の少ない良質な酸化ケイ素膜が形成されるので、高輝度でかつ安定的な蛍光発光を実現しているが、エタノール、トルエン、純水、生理食塩水などの各種溶液中では、ナノシリコン粒子の表面に、欠陥の多い酸化ケイ素膜が形成されるため、時間経過とともに輝度が低下し、その結果、寿命も短く不安定になっている。
【0007】
以上のことから、ナノシリコン粒子の応用用途を拡大するためには、溶液中などの環境下においても、高輝度でかつ安定した蛍光発光を得ることができ、しかも、ナノシリコン粒子の劣化を阻止することができる保護膜を被覆することを検討する必要がある。
【0008】
さらには、医薬品、医療用デバイスなどの医用工学分野に応用する際には、ナノシリコン粒子の表面に、各種溶液に対して耐薬品性、耐腐食性があり、生体適合性に優れている保護膜を被覆することも重要なことである。
【0009】
従来の技術では、ナノシリコン粒子の保護膜としては、シリコン表面に対して最も安定な酸化ケイ素膜が、一般的に使用されていた。しかし、酸化ケイ素膜の形成方法として、溶液中においても、大気中と同様な良質な酸化ケイ素膜を得ることは不可能であった。また、医用工学分野に応用する際に、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子、細胞などとの結合が酸化ケイ素膜では不十分であった。
【0010】

【特許文献1】特開平11-201972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
溶液内において、可視領域で蛍光発光するナノシリコン粒子の劣化防止を図る保護膜の開発は、環境や人体に優しい蛍光発光半導体ナノ粒子材料を用いたディスプレイ、照明器具、化粧品、衣料品、服飾品、医薬品、医療用デバイス、その他の製品の商品化を促進することになる。
【0012】
そこで、本発明は、各種分野での応用を可能にするナノシリコン粒子を、各種溶液内において、(i)高輝度でかつ安定的に蛍光発光させること、及び、(ii)ナノシリコン粒子の劣化を防止する保護膜を得ること、を課題(又は目的)とする。
【0013】
また、本発明は、表面を劣化防止保護膜で被覆したナノシリコン粒子を製造する製造方法を確立すること、も課題(又は目的)とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(i)高周波プラズマCVD法を用いて、各種溶液に対して耐薬品性、耐腐食性があり、かつ、生体適合性に優れているダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC;Diamond-like Carbon膜)を、ナノシリコン粒子の表面に被覆すると、溶液中において、高輝度でかつ安定的な蛍光発光を得ることができることを見いだした。
【0015】
また、本発明者は、(ii)溶液内においてナノシリコン粒子の劣化を防止する保護膜を、ナノシリコン粒子の表面に被覆する方法を見いだした。
【0016】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は、以下のとおりである。
【0017】
(1) 紫外光線又は可視光線を照射することにより蛍光発光する粒子サイズ3.5nm以下のナノシリコン粒子を炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜で被覆したことを特徴とする発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【0019】
) 前記炭素膜がダイヤモンド状炭素膜であることを特徴とする前記()に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【0020】
) 前記ダイヤモンド状炭素膜が、高周波プラズマCVD法で作製したものであることを特徴とする前記()に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【0021】
) 前記炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜が、各種溶液に対して、耐薬品性、耐腐食性があり、生体適合性に優れていることを特徴とする前記(1)~()のいずれか1項に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【0022】
) 前記溶液が、エタノール、トルエン、純水、又は、生理食塩水であることを特徴とする前記()に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【0023】
) 前記溶液内において、ナノシリコン粒子が高輝度でかつ安定的に蛍光発光することを特徴とする前記()又は()に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子。
【0024】
炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜を有する粒子サイズ3.5nm以下のナノシリコン粒子の製造方法において、
(a)基板上に、ナノシリコン粒子を分散した溶液を塗布し、次いで、
(b)上記ナノシリコン粒子の表面に、高周波プラズマCVD法により、発光輝度の劣化防止保護膜を被覆する
ことを特徴とする発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
【0026】
) 前記炭素膜がダイヤモンド状炭素膜であることを特徴とする前記()に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
【0027】
) 前記ダイヤモンド状炭素膜が、高周波プラズマCVD法で作製したものであることを特徴とする前記()に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
【0028】
10)前記炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜が、各種溶液に対して耐薬品性、耐腐食性があり、生体適合性に優れていることを特徴とする前記()~()のいずれか1項に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
【0029】
11)前記溶液が、エタノール、トルエン、純水、又は、生理食塩水であることを特徴とする前記(10)に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
【0030】
12) 前記溶液内において、ナノシリコン粒子が高輝度でかつ安定的に蛍光発光することを特徴とする前記(10)又は(11)に記載の発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、溶液内において、ナノシリコン粒子の表面に、安定した保護膜を被覆し、従来の手法では得ることが困難であった、高輝度でかつ安定的に蛍光発光するナノシリコン粒子を製造することができる。
【0032】
そして、ナノシリコン粒子は、地球環境や人体に対して優しく、無毒性・無害性であり、可視領域で蛍光発光するから、各種溶液に対して耐薬品性、耐腐食性があり、生体適合性に優れている粒子劣化防止保護膜(ダイヤモンド状炭素膜)で被覆された本発明のナノシリコン粒子は、ナノシリコン粒子の利用を、ディスプレイ、照明器具、化粧品、衣料品、服飾品、医薬品、医療用デバイス、その他の分野にまで拡大するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
まず、本発明における重要な点を簡単に説明する。それは、粒子サイズ3.5nm以下のナノシリコン粒子表面に炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜を被覆すると、溶液内において、可視領域にて高輝度でかつ安定的な蛍光発光を得ることができるということである。
【0034】
このことを達成するため、本発明の製造方法においては、ナノシリコン粒子の表面に、直接、炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜を被覆するための塗布処理、及び、該保護膜を均一に被覆する高周波プラズマCVD法を採用する。
【0035】
まず、ナノシリコン粒子を分散した溶液を作製し、マイクロピペットにより、該溶液を基板上に塗布する。その後、高周波プラズマCVD法により、ナノシリコン粒子の表面に劣化防止保護膜、例えば、ダイヤモンド状炭素膜を成膜することで、溶液内において高輝度でかつ安定的な蛍光発光を示すナノシリコン粒子を製造することができる。
【0036】
劣化防止保護膜としては、ダイヤモンド状炭素膜が、耐薬品性、耐腐食性、及び、生体適合性の点で最適なものである
【0037】
上記方法により炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜を被覆したナノシリコン粒子(本発明粒子)は、溶液内において、可視領域で、高輝度かつ安定した蛍光発光を示すので、ディスプレイ、照明器具、化粧品、衣料品、服飾品、医療用デバイス等の原材料としての開発基盤を築くものである。
【0038】
以下に、本発明粒子を製造する製造方法(本発明製造方法)について詳述する。
【0039】
図1に、ナノシリコン粒子の表面に炭素膜からなる発光強度の劣化防止保護膜を被覆する過程の概要を示す。基板1を温熱版2上に設置する(図1(A)、参照)。基板1上に、ナノシリコン粒子3を分散した溶液(揮発性の高いエタノール4を使用)からマイクロピペット5により抽出したナノシリコン粒子3を塗布する。この時のナノシリコン粒子3のサイズは、可視領域での蛍光発光を示す3.5nm以下である。
【0040】
温熱板2の温度は、30~100℃程度に調整するが、好ましく40~60℃である。処理時間は、5~120秒とするが、好ましくは15~60秒であり、さらに好ましくは25~35秒である。塗布処理後、温熱板2で基板1を加熱し、基板1上上のナノシリコン粒子に付着しているエタノール4を蒸発させ、ナノシリコン粒子3の表面から、エタノールとともに不純物を完全に除去する。
【0041】
次に、高周波プラズマCVD法6を用いて、ナノシリコン粒子3の表面に、均一に、ダイヤモンド状炭素膜7を堆積させる(図1(B)、参照)。この時、ダイヤモンド状炭素膜を、ナノシリコン粒子3の表面全体を被覆するように堆積させる。
【0042】
ここで、図6に、高周波プラズマCVD装置の一態様を示す。この装置は、概略、側面下部にメタンガス導入口12と排気口13を備える真空チャンバー14、真空チャンバー14の上面に絶縁材料15を介して取り付けられ、冷却管16から導入、排出される冷却水17で冷却される基板ホルダー18、及び、真空チャンバー14の下面に絶縁材料15を介して取り付けられ、冷却管16から導入、排出される冷却水17で冷却される陰極シールド19を備える高周波電極20から構成されている。
【0043】
そして、上記装置において、メタンガスを、真空チャンバー14内に、メタンガス導入口12から導入し、高周波コントローラ21によりメタンガスをイオン化し、イオン化されたメタンイオンを、高周波電極20上に配置された基板1上のナノシリコン粒子3の表面上で化学反応させ、その表面に、ダイヤモンド状炭素膜7を形成する。
【0044】
この時の堆積条件である高周波電力、ガス圧(作製中の圧力であり、本製造プロセスではメタンガスの圧力)、及び、堆積時間は、ナノシリコン粒子3の表面に被覆するダイヤモンド状炭素膜7の膜厚に直接関係する。
【0045】
ダイヤモンド状炭素膜7の膜厚は、光の透過率に影響するので、ナノシリコン粒子3からの蛍光発光の輝度に対して非常に重要な因子となる。それ故、高周波電力は、50~250Wを採用するが、好ましくは75~150Wであり、さらに好ましくは80~120Wである。ガス圧は、1.332~133.2Paに調整するが、好ましくは6.66~66.6Paであり、さらに好ましくは66.6~20.0Paである。また、堆積時間は、30~300秒に調整するが、好ましくは60~240秒であり、さらに好ましくは100~140秒である。
【0046】
これらの条件下で、ナノシリコン粒子3の表面に、膜厚10~100nmのダイヤモンド状炭素膜7を堆積するが、膜厚は、好ましくは15~80nmであり、さらに好ましくは15~25nmである。
【0047】
次に、基板1上のナノシリコン粒子3の表面を、ダイヤモンド状炭素膜7で被覆し後、基板1を、溶液9(エタノール4、トルエン、純水、又は、生理食塩水)を収容した容器10に浸漬し、容器10を超音波洗浄器11に載置して、攪拌処理8を施す(図1(C)、参照)。
【0048】
攪拌処理8の処理時間は、通常、10~600秒とするが、好ましくは、30~300秒であり、さらに好ましくは60~120秒である。攪拌処理8により、基板1上のナノシリコン粒子3は、基板1から分離・離散し、溶液9内に分散する(図1(C)、参照)。そして、攪拌処理8の後、容器10内から基板1を取り出すと、溶液中にダイヤモンド状炭素膜7を被覆したナノシリコン粒子3が分散した溶液9を得ることができる(図1(D)、参照)。
【0049】
ダイヤモンド状炭素膜7が被覆されたナノシリコン粒子3は、溶液9内に長期間保存しても、蛍光発光輝度が低下せず、安定的に可視領域における何れかの色で蛍光発光する。
【0050】
図2に、X線光電子分光法により、劣化防止保護膜を被覆した試料の表面層を、最表面層からアルゴンイオンエッチングしたときの炭素とシリコンの定量強度の変化を示す。
【0051】
劣化防止保護膜を被覆した試料は、カーボン1s軌道及びシリコン2p軌道のX線光電子分光スペクトルより、結合エネルギーが、それぞれ、284.2eVと99.3eVにピークをもつ信号が得られている。ここで、284.2eVの信号は、ダイヤモンド状炭素膜中のグラファイト構造(π結合)に起因するものであり、また、99.3eVの信号は、ナノシリコン粒子内のシリコン-シリコン結合に起因するものである。
【0052】
これら各信号の深さ方向に対する変化についてみると、図2に示すように、炭素の信号は、400秒までのイオンエッチングに対して検出されているが、それ以後は検出されていない。これに対し、シリコンの信号は、400秒以後で検出されている。このことは、劣化防止保護膜としてのダイヤモンド状炭素膜が、ナノシリコン粒子の全表面に堆積していることを示している。
【0053】
図3に、劣化防止保護膜を被覆した試料と被覆していない試料に係るラマンスペクトルを示す。劣化防止保護膜を被覆した試料においては、1260cm-1と1510cm-1にピークをもつラマン信号が現れている。
【0054】
ここで、1260cm-1のラマン信号は、sp2混成軌道結合炭素不規則構造に起因しているD(Disorder)バンドによるものである。また、1510cm-1のラマン信号は、グラファイトの面内振動E2gモードに起因しているG(Graphitic)バンドによるものである。これらのピークは、ダイヤモンド状炭素膜の特有の信号であり、DバンドとGバンドがそれぞれ混合されたスペクトル形状になる。
【0055】
これに対し、劣化防止保護膜を被覆していない試料においては、DバンドとGバンドに起因するラマン信号は検出されていない。このことから、ナノシリコン粒子の表面を被覆している劣化防止保護膜は、一般的に成膜されている膜と同様な構造を持つダイヤモンド状炭素膜であることが示唆される。
【0056】
図4に、劣化防止保護膜を被覆した試料と被覆していない試料に係る蛍光発光スペクトルを示す。劣化防止保護膜を被覆した試料及び被覆していない試料のいずれも、720nmにピークを持つ赤色発光を示しているが、蛍光発光輝度が相違する。
【0057】
この蛍光発光輝度の相違は、ナノシリコン粒子の表面に劣化防止保護膜として被覆したダイヤモンド状炭素膜の光の透過率の影響によるものである。ダイヤモンド状炭素膜の膜厚に対する透過率は、720nmの波長において約75%であるため、劣化防止保護膜を被覆していない試料に比べ、その蛍光発光輝度は低下する。
【0058】
しかし、劣化防止保護膜を被覆した試料の蛍光発光輝度は、紫外光線又は可視光線照射により、非常に強く、しかも、室内照明下において、肉眼で十分に確認することができるものである。
【0059】
図5に、溶液内における劣化防止膜を被覆した試料と被覆していない試料に係る蛍光発光強度の経時変化を示す。劣化防止保護膜を被覆していない試料では、溶液に浸漬した直後から、時間の経過とともに、その蛍光発光強度が減衰する。これに対し、劣化防止保護膜を被覆した試料については、溶液に浸漬後も安定的な蛍光発光を維持し、長期間の保存後においても、その蛍光発光は、肉眼で認識できる輝度を保持している。
【0060】
このように、本発明製造方法によれば、高周波プラズマCVD法を用い、溶液中にて高輝度でかつ安定的な蛍光発光を示し、環境や人体に対し優しく(無毒性・無害性)、しかも、各種溶液に対して耐薬品性、耐腐食性があり、生体適合性に優れる劣化防止保護膜で被覆されたナノシリコン粒子を製造することができる。
【0061】
本発明の“劣化防止保護膜を有するナノシリコン粒子”は、溶液中において、高輝度でかつ安定した蛍光発光を示すという特有の特性を積極的に生かし、ディスプレイ、照明器具、化粧品、衣料品、服飾品、医薬品、医療用デバイス、その他の応用に有用な材料として使用され得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
前述したように、環境や人体に対して優しく(無害、無毒)、各種溶液に対して耐薬品性、耐腐食性があり、生体適合性に優れる劣化防止保護膜で被覆された本発明のナノシリコン粒子は、溶液内において、高輝度でかつ安定的な蛍光発光を示すので、本発明は、ナノシリコン粒子の利用を、ディスプレイ分野、照明分野、化粧分野、服飾・デザイン分野、医療・薬剤分野、その他の分野にまで拡大するものである。
【0063】
このように、本発明は、ディスプレイ分野、照明分野、化粧分野、服飾・デザイン分野、医療・薬剤分野、さらには、その他の分野において、21世紀における革新的な蛍光発光半導体ナノ粒子材料を利用した各種製品化技術の開発に適用される可能性が非常に大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】劣化防止保護膜をナノシリコン粒子の表面に被覆する過程を示す図である。(A)は、温熱板上の基板にナノシリコン粒子を塗布した態様を示す図であり、(B)は、高周波プラズマCVD法により、ナノシリコン粒子の表面にダイヤモンド状炭素膜を堆積した態様を示す図であり、(C)は、超音波洗浄器による攪拌処理の態様を示す図であり、また、(D)は、劣化防止保護膜で被覆されたナノシリコン粒子の溶液中における分散態様を示す図である。
【図2】劣化防止保護膜を被覆した試料を最表面層からアルゴンイオンエッチングしたときの炭素とシリコンの定量強度の変化を示す図である。
【図3】劣化防止保護膜を被覆した試料と被覆していない試料に係るラマンスペクトルを示す図である。
【図4】劣化防止保護膜を被覆した試料と被覆していない試料に係る蛍光発光スペクトルを示す図である。
【図5】溶液内における劣化防止膜を被覆した試料と被覆していない試料に係る蛍光発光強度の経時変化を示す図である。
【図6】高周波プラズマCVD装置の態様を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 基板
2 温熱板
3 ナノシリコン粒子
4 エタノール
5 マイクロピペット
6 高周波プラズマCVD法
7 ダイヤモンド状炭素膜
8 攪拌処理
9 溶液
10 容器
11 超音波洗浄器
12 メタンガス導入口
13 排気口
14 真空チャンバー
15 絶縁材料
16 冷却管
17 冷却水
18 基板ホルダー
19 陰極シールド
20 高周波電極
21 高周波コントローラ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5