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明細書 :微生物の新規スクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4686721号 (P4686721)
公開番号 特開2007-252244 (P2007-252244A)
登録日 平成23年2月25日(2011.2.25)
発行日 平成23年5月25日(2011.5.25)
公開日 平成19年10月4日(2007.10.4)
発明の名称または考案の名称 微生物の新規スクリーニング方法
国際特許分類 C12Q   1/02        (2006.01)
C12N   1/00        (2006.01)
FI C12Q 1/02
C12N 1/00 T
請求項の数または発明の数 2
全頁数 14
出願番号 特願2006-078789 (P2006-078789)
出願日 平成18年3月22日(2006.3.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成17年11月17日 社団法人日本生物工学会主催の「平成17年度日本生物工学会大会」において文書をもって発表
審査請求日 平成19年3月7日(2007.3.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】田中 秀夫
【氏名】青柳 秀紀
個別代理人の代理人 【識別番号】100112874、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 薫
審査官 【審査官】白井 美香保
参考文献・文献 特開平06-046869(JP,A)
特開平06-022769(JP,A)
特開平06-055153(JP,A)
特開平06-296711(JP,A)
特開平07-328385(JP,A)
特開平04-169186(JP,A)
特開2000-245436(JP,A)
日本農芸化学会2006年度大会講演要旨集,2006年 3月 5日,p.242 3C22a08
日本生物工学会大会講演要旨集(平成13年度),2001年,p.322 823
日本生物工学会大会講演要旨集(平成17年度),2005年,p.158 3E09-1
調査した分野 IPC
C12Q 1/02

DB名
CA/BIOSIS/MEDLINE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
CiNii
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
環境汚染物質を含む人工餌をイエシロアリに摂食させて飼育する第1段階と、
前記第1段階の飼育期間後に生き残っている生存イエシロアリのみを収得する第2段階と、
前記生存生物の腸を摘出し、腸懸濁液を調整する第3段階と、
前記腸懸濁液を、炭素源として前記人工餌に用いたものと同じ前記環境汚染物質のみを含有する培地に接種して培養する第4段階と、
前記培地から収得した単一コロニーを、前記人工餌に用いたものと同じ前記環境汚染物質を含有する培養液に接種し、該培養液中の前記所定成分の濃度を定量することによって、当該単一コロニーを形成する微生物の前記所定成分の分解能力を評価する第5段階と、からなる微生物スクリーニング方法。
【請求項2】
前記環境汚染物質はフェノールであり、
前記微生物はフェノール分解菌である請求項1記載の微生物スクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物スクリーニング方法に関する。より詳しくは、生物に人餌を摂取させることにより、生物の腸内微生物叢が変化することを利用した微生物スクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、微生物を利用した試みが注目されている。例えば、バイオメディエーションのように微生物を利用した環境汚染物質の浄化や、農薬、医薬品、又は工業薬品等に利用される物質を、微生物を利用して生産する方法などが挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、土壌や地下水等に存在する環境汚染物質を微生物で分解除去する方法が開示されている。また、特許文献2では、各種工業薬品、農薬及び医薬品の製造中間体である光学活性2-アルキル-D-システインエステルを、微生物を利用して製造する方法が開示されている。
【0004】
このような背景の下、特定の機能を有する微生物をより簡単にスクリーニングする方法が求められている。一般に、微生物のスクリーニング方法は、自然界の微生物を含む土壌や水中、または生物の臓器等から得られるサンプルを、そのまま寒天培地等を用いて単離培養を行う方法や、人工的な培地を用いて試験管やフラスコなどの装置内で集積培養を行った後に、寒天培地を用いて微生物の単離を行う方法などが挙げられる。
【0005】
例えば、特許文献3では、写真感光材料生産工場の排水中の細菌を銀含有培地上で培養することで、銀担持菌をスクリーニングする方法が開示されている。また、特許文献4では、シロアリの腸を摘出してすりつぶし、フェノール性化合物を有する培地に加えて培養することで、フェノール性化合物分解能を有する微生物をスクリーニングする方法が開示されている。

【特許文献1】特開平09-150139号公報。
【特許文献2】特開2006-6号公報。
【特許文献3】特開2004-180582号公報。
【特許文献4】特開平06-22769号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な微生物のスクリーニング方法である自然界の微生物を含む土壌や水中、または生物の臓器等から得られるサンプルを、そのまま寒天培地等を用いて単離培養を行う方法では、自然界に目的の微生物が少数である場合には、非常に非効率である。
【0007】
また、上記のように得られたサンプルを人工的な培地を用いて集積培養をおこなった後に、寒天培地等で単離培養を行う方法では、人工的な環境に適応できる微生物しか獲得できないといった問題がある。
【0008】
そこで、本発明では、あらゆる微生物を、容易に、かつ効率的に獲得できる微生物スクリーニング方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、生物の腸内微生物叢が生物の食す餌成分の分解に大きく寄与していることから、餌成分を変化させると、腸内微生物叢が、変化後の餌成分を分解できる微生物叢に変化することを突き止めた。そして、生物に所定の成分を含む人工餌を与えることで、一定期間生き残った生物の腸内では、この所定成分を分解利用する微生物が濃縮されることを見出し、これまで生物の腸内からスクリーニングすることが難しかった微生物を、容易に、かつ効率的にスクリーニングすることができる、新規な微生物スクリーニング方法を開発した。
【0010】
本発明に係る微生物スクリーニング方法は、所定成分を含む人工餌を生物に摂食させる第1段階と、第1段階を経た後に生存している生物のみを収得する第2段階と、前記生存生物の腸を摘出し、腸懸濁液を調整する第3段階と、前記腸懸濁液を、前記所定成分を栄養源とする培地に接種して培養する第4段階と、前記培地から収得した単一コロニーを、前記所定成分を含有する培養液に接種し、該培養液中の所定成分の濃度を定量することによって、当該単一コロニーを形成する微生物の前記所定成分の分解能力を評価する第5段階と、からなる方法である。
【0011】
この微生物スクリーニング方法では、培養前に、人工的ではなく、より自然に近い状態の生きた生物の腸内で、目的の微生物を濃縮することができるため、それらの微生物を容易に、かつ効率的に獲得することができる。
【0012】
目的の微生物を培養する際、目的の微生物によっては、前記所定成分以外の炭素源により影響を受け易い場合がある。その場合は、前記第4段階で用いる培地に、前記所定成分以外の炭素源が含まれないようにすることもできる。
【0013】
また、前記微生物スクリーニング方法で使用される生物は、微生物叢を腸内に共生させている生物であれば、昆虫、土壌生物、水系生物等のあらゆる生物を用いることができる。
【0014】
前記第1段階で用いる人工餌に含まれる所定成分を環境汚染物質にすれば、環境汚染物質を分解利用する微生物をスクリーニングすることができる。そして、この微生物を用いて、環境汚染物質の浄化を行うことができる。
【0015】
また、前記人工餌の所定成分を微生物分解により有用物質を提供し得る物質にすれば、有効物質を生産し得る微生物をスクリーニングすることができる。そして、この微生物を用いて有用物質の生産を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る微生物スクリーニング方法は、生物の腸内微生物叢の変化を利用することで、大量獲得が難しかった微生物や人工的な環境下では獲得が難しかった微生物を、容易に、かつ効率的に獲得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態は、本発明の一実施形態を例示したものであり、これにより本発明が狭く解釈されることはない。
【0018】
図1は、本発明に係る微生物スクリーニング方法のフロー図である。以下、方法の段階毎に説明する。
【0019】
<所定成分の選択段階A>
まず、本微生物スクリーニング方法では、微生物に分解等させたい所定の成分を選択する。所定成分は特に限定しないが、例えば、フェノール、ダイオキシン類等の環境汚染物質を選択すれば、本微生物スクリーニング方法によって、環境汚染物質を分解利用できる微生物を獲得することができる。そして、この微生物を用いて、環境汚染物質の浄化を行うことができる。
【0020】
また、所定成分を、微生物により分解させることで農薬、医薬品、又は工業薬品等に利用される有用物質へと変化する物質を選択すれば、本スクリーニング方法によって、有用物質を生産しうる微生物を獲得することができる。そして、この微生物を用いて、前記有用物質の生産を行うことができる。
【0021】
<人工餌の作製段階B>
次に、前記所定成分の選択段階Aで選択した所定成分を含む人工餌を作製する。人工餌の作製方法は、特に限定しないが、例えば、所定成分を含む溶液を滅菌し、この溶液を寒天溶液等と混合した後ゲル化し、このゲル中に固定することで作製する方法が挙げられる。
【0022】
<第1段階:生物の人工餌摂食P1>
第1段階では、前記人工餌の作製段階Bで作製した人工餌を生物に摂食させる。上記生物は特に限定されず、微生物叢を腸内に共生させている生物であれば、昆虫、土壌生物、水系生物等あらゆる生物を用いることができる。
【0023】
<第2段階:生存生物の収得P2>
第2段階では、前記第1段階P1を経た生物であって、一定期間後に生き残っている生物を収得する。この一定期間は、特に限定されず、前記所定成分に基づいて決定すればよい。このときの生存生物の腸内微生物叢には、前記所定成分を分解利用する微生物が濃縮されている。
【0024】
<第3段階:腸懸濁液の作製P3>
第3段階では、前記第2段階P2で収得した生存生物の腸を摘出し、腸懸濁液を調整する。腸懸濁液の調整方法は特に限定しないが、例えば、生存生物の腸を無菌的に摘出し、摘出した腸を粉砕することで、懸濁液を調整する方法が挙げられる。
【0025】
<第4段階:微生物の培養P4>
第4段階では、前記第3段階P3で調整した腸懸濁液を、前記所定成分を栄養源とする培地に接種し培養させる。前記培地は特に限定しないが、例えば、液体培地、半流動培地、固形培地等いずれの培地を用いてもよい。また、目的の微生物のみを培養するために、選択増菌培地等を用いることも可能である。
【0026】
更に、前記所定成分以外の炭素源により影響を受け易い微生物を培養させる場合には、前記所定成分以外の炭素源が含まれない培地を用いることも可能である。一例を挙げると、飲食物等の不純物濾過で使用されているメンブランフィルターを、微生物の培養法に応用することができる。この方法では、メンブランフィルターを通過できる成分のみで目的の微生物を培養することができるのでより好適である。
【0027】
<第5段階:分解能力の評価P5>
第5段階では、前記第4段階P4で培養し、得られた単一コロニーの前記所定成分の分解能力を評価する。評価方法は、得られた単一コロニーを、前記所定成分を含有する培養液に接種し、培養後の前記所定成分の濃度を測定することにより行う。該濃度の低下が見られれば分解能力ありと、該濃度の低下が見られないときは分解能力なしと評価する。
【0028】
以上の微生物スクリーニング方法で得られた微生物は、前記所定成分に応じて、環境汚染物質の浄化に用いたり、有用物質の生産に用いたりすることができる。
【実施例1】
【0029】
実施例1では、イエシロアリの人餌摂取による生存率の変化と、腸内原生動物叢の変化について調べた。
【0030】
<イエシロアリの飼育条件>
まず、イエシロアリを25匹ずつ3群に分けた。それぞれの餌条件は、木材(赤松)を与えた群(以下「木材群I」と称する。)、1.5%アガロースゲルであるアガロース人餌を与えた群(以下「アガロース群II」と称する。)、1.5%アガロースゲルに100mg/Lのフェノールを添加したフェノール人口餌を与えた群(以下「フェノール群III」と称する。)と設定した。温度条件は、30℃で行った。図2中のIからIIIにそれぞれの群の飼育の様子を示す。なお、アガロース群IIは、フェノール群IIIのコントロールとした。
【0031】
<イエシロアリの生存率の変化>
それぞれの群の経時的な生存数を表1に、また、アガロース群IIとフェノール群IIIの経時的な生存率の変化を図3に示す。
【表1】
JP0004686721B2_000002t.gif

【0032】
図3に示すように、20日後の生存率は、アガロース群IIでは80%の生存率を維持していたのに対し、フェノール群では20%以下に低下している。この結果から、フェノールの毒性により、イエシロアリの生存が阻害されることが分かった。
【0033】
<イエシロアリの腸内原生動物叢の変化>
それぞれの群の経時的な腸内原生動物数を図4に示す。図4に示すように、木材群Iでは、ほぼ一定に原生動物が存在しているのに対し、アガロース群II、及びフェノール群IIIでは、腸内原生動物数は初期から激減し、10日以内に消失した。
【0034】
実施例1では、フェノールの毒性によりイエシロアリの生存が阻害され、アガロース、及びフェノールによりイエシロアリの腸内原生動物の生存が阻害されることが分かった。
【実施例2】
【0035】
実施例2では、フェノール分解菌の検出、及び定量を試みた。
【0036】
<イエシロアリの飼育>
実施例1と同様の条件で、イエシロアリを、木材群I、アガロース群II、フェノール群IIIに分けて10日間飼育した。
【0037】
<コロニーの検出>
まず、上記で飼育し、生き残ったイエシロアリの腸を摘出し、腸懸濁液の調整を行った。具体的には、イエシロアリの腸5匹分を無菌的に摘出し、表2に示す組成を含むMP500培地中で、ペレットミキサーを用いて粉砕し、懸濁液を調整した。この懸濁液100μLを900μLのMP500培地にいれ希釈した。この操作を数回繰り返し適当な細胞濃度の腸懸濁液を調整した。次に、調製した懸濁液を、表2に示す組成を含む培地に寒天15g/Lを加えたMP500寒天培地に接種した。温度条件30℃で1週間培養した。
【表2】
JP0004686721B2_000003t.gif

【0038】
<コロニー数のカウント>
前記培養後、各群の寒天培地に生じたコロニー数をカウントした。カウントしたコロニー数を図5に示す。腸1匹分当たり、木材群Iでは約3万5千、アガロース群IIでは約6万、フェノール群では約18万~20万のコロニーが生じた。
【0039】
<コロニーのフェノール分解能の確認>
まず、シングルコロニーを一つずつピックアップして、MP500液体培地の入ったL字管に接種し、温度条件30℃で振とう培養を行った。次に、培養後の培養液中のフェノール濃度をFhenol Test Wako(和光純薬工業株式会社)を使い定量し、フェノール濃度の低下が見られたコロニーをフェノール分解菌として評価した。
【0040】
総計85コロニーを調査したところ、83コロニーがフェノール分解能を示さなかった。これにより、MP500寒天培地から得られたコロニーのうち、90%以上がフェノール分解菌でないことが分かった。
【0041】
実施例2では、フェノール含有の人工餌によりイエシロアリの腸内微生物は濃縮されるが、その微生物のほとんどは、フェノール分解菌ではないことが分かった。
【0042】
上記のように、ほとんどがフェノール分解菌でない原因としては、寒天若しくは寒天由来の低分子の糖を利用し、500mg/Lフェノールに耐性を有する微生物がコロニーを形成することが考えられる。
【実施例3】
【0043】
実施例3では、実施例2でほとんど得られなかったフェノール分解菌のみの特異的な検出、及び定量を試みた。
【0044】
フェノール以外の炭素源を排除するために、培養法としてメンブランフィルター法を採用した。メンブランフィルター法の概略を図6に示す。メンブランフィルター法とは、非常に難分解なPVDFフィルター(φ0.45μm)1上に微生物2を接種し、その下に液体培地3をしみこませた濾紙を置いて培養する方法である。この方法は、PVDFフィルター1を通じて供給される液体培地3の成分を利用できる微生物2しか培養されないといった特徴がある。培地成分の移動の様子を矢印Tで示す。本実施例では、メンブランフィルター法のキットとしてMilliflex(Millipore Corporation)を用いた。
【0045】
<イエシロアリの飼育>
実施例2と同様に、イエシロアリを、木材群I、アガロース群II、フェノール群IIIに分けて10日間飼育した。
【0046】
<コロニーの検出>
上記で飼育し、生き残ったイエシロアリの腸を摘出し、実施例2と同様の方法で腸懸濁液の調整を行い、図7に示すように、腸懸濁液をPVDFフィルター1上に接種し、PVDFフィルター1の下から、吸引濾過により液体を除去した(図7中(a)参照)。そして、MP500液体培地3を含む培地カセットをPDVFフィルター1の下部へ装着した(図7中(b)参照)。この状態のまま、温度条件30℃で1週間培養した(図7中(c)参照)。
【0047】
<コロニー数のカウント>
前記培養後、各群のPDVFフィルター1上に生じたコロニー(微生物2)数をカウントした。カウントしたコロニー(微生物2)数を図8に示す。腸1匹分当たり、木材群I、アガロース群IIでは全くコロニー(微生物2)が生じていないのに対し、フェノール群では2870のコロニー(微生物2)が生じた。
【0048】
<コロニーのフェノール分解能の確認>
実施例2と同様の方法で、フェノール濃度の定量により、コロニーのフェノール分解能を確認した。50コロニーを調査したところ、50コロニー全てがフェノール分解菌であることが分かった。
【0049】
実施例3の結果から、フェノール人餌接種後に、生き残ったイエシロアリの腸内には、フェノール分解菌が濃縮されていることが示唆された。
【実施例4】
【0050】
実施例4では、人餌によるイエシロアリの腸内微生物叢の変化と、従来のスクリーニング法での腸内微生物叢の変化との比較をした。

【0051】
<微生物叢サンプルの作製>
まず、実施例2、及び実施例3と同様に、イエシロアリを、木材群I、アガロース群II、フェノール群IIIに分けて10日間飼育し、生き残ったイエシロアリの腸内微生物叢をサンプルとした。また、従来のスクリーニング法における微生物叢サンプルとして、木材摂食イエシロアリの腸内微生物叢を、そのままフェノール人工培地に接種して集積培養を行った微生物叢を用いた(以下「集積培養群IV」と称する。)。前記集積培養は、MP500液体培地を用いてL字管を用いて行った。
【0052】
<腸内微生物叢の解析>
腸内微生物叢の全体的な変化を捉えるために、PCR-DGGE法による解析を行った。電気泳動条件は、変性剤濃度勾配20~70%、電圧35V、泳動時間25時間で行った。バンドパターンを図9に示す。
【0053】
バンドパターンの類似度をSorensenの式により求めた。類似度を基に作成した系統樹を図10に示す。図10のように、フェノール群IIIとアガロース群IIの類似度は60%程度であるところ、フェノール群IIIと木材群Iの類似度は40%以下しか示さず、大きく異なっていることが分かる。更に、フェノール群IIIと集積培養群IVの類似度は10%程度の類似度しか示さず、非常に大きく異なっていることが分かる。
【0054】
実施例4の結果から、イエシロアリの腸内微生物叢は、フェノール人工餌摂食によって、大きく変化することが分かった。また、フェノール人工餌摂食によって変化した微生物叢は、従来のスクリーニング法で得られる微生物叢とは大きく異なることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る微生物スクリーニング方法では、培養前に、生物の腸内で目的の微生物を濃縮した後に培養させるため、容易に、かつ効率的に目的の微生物を獲得することができる。また、より自然に近い生きた生物の腸内微生物叢を利用するため、人工的な環境下で獲得される微生物と全く異なる微生物を獲得することができる。さらに、得られた微生物を用いて、環境汚染物質の浄化や有用物質の生産をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る微生物スクリーニング方法のフロー図である。
【図2】イエシロアリの飼育の様子を示す図である。
【図3】実施例1におけるイエシロアリの経時的な生存率の変化を示す図である。
【図4】実施例1におけるイエシロアリの経時的な腸内原生動物数の変化を示す図である。
【図5】実施例2における各群の寒天培地に生じたコロニー数を示す図である。
【図6】実施例3で使用するメンブランフィルター法の概略を示す図である。
【図7】実施例3におけるメンブランフィルターを使った培養方法の概略を示す図である。
【図8】実施例3における各群のPDVFフィルター上に生じたコロニー数を示す図である。
【図9】実施例4における各群のPCR-DGGE法を行った際のバンドパターンを示す図である。
【図10】Sorensenの式により求めた図9で示すバンドパターンの類似度を基に作成した系統樹を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
A 所定成分の選択段階
B 人工餌の作製段階
P1 第1段階:生物の人工餌摂食
P2 第2段階:生存生物の収得
P3 第3段階:腸懸濁液の作製
P4 第4段階:微生物の培養
P5 第5段階:分解能力の評価
I 木材群
II アガロース群
III フェノール群
IV 集積培養群
1 PVDFフィルター
2 微生物
3 液体培地
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図2】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9