TOP > 国内特許検索 > 鉄道保安システム > 明細書

明細書 :鉄道保安システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3810002号 (P3810002)
公開番号 特開2003-237581 (P2003-237581A)
登録日 平成18年6月2日(2006.6.2)
発行日 平成18年8月16日(2006.8.16)
公開日 平成15年8月27日(2003.8.27)
発明の名称または考案の名称 鉄道保安システム
国際特許分類 B61L  23/14        (2006.01)
FI B61L 23/14 C
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2002-034286 (P2002-034286)
出願日 平成14年2月12日(2002.2.12)
審査請求日 平成15年9月26日(2003.9.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
発明者または考案者 【氏名】佐藤 和敏
【氏名】宗方 江一郎
【氏名】加納 政貴
個別代理人の代理人 【識別番号】100106345、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 香
審査官 【審査官】森林 克郎
参考文献・文献 特開平11-240451(JP,A)
特開平09-175397(JP,A)
特開2001-216247(JP,A)
特開平06-338962(JP,A)
調査した分野 B61L1/00-29/32
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄道車両に搭載されて軌道側の地上子との非接触伝送を可能とする車上子と、この車上子を介して伝文の送受を行う送受信手段と、前記車両に搭載され前記伝文に基づいて自動列車停止の作動を行う自動列車停止作動手段と、前記車両に搭載され伝文の送受を伴って自動閉そくの作動を行う閉そく車載器とを備えた鉄道保安システムにおいて、前記閉そく車載器の直近の伝文送受先が、前記送受信手段および前記自動列車停止作動手段を有する自動列車停止車上装置にされ、前記自動列車停止作動手段からの伝文および前記電子閉そく車載器からの伝文を前記送受信手段に転送するとともに前記送受信手段からの伝文を伝文種別に応じて前記自動列車停止作動手段と前記電子閉そく車載器との何れかに振り分けて転送する伝文経路切替手段が、前記自動列車停止作動手段と前記送受信手段との伝文伝達経路に介挿して設けられ、さらに、前記電子閉そく車載器から前記自動列車停止作動手段へ直に情報を伝える手段が設けられ、前記自動列車停止作動手段が自動列車停止の作動を行うに際し前記送受信手段および前記伝文経路切替手段を介して得た伝文に加えて前記電子閉そく車載器から直に得た情報にも応動するものであることを特徴とする鉄道保安システム。
【請求項2】
鉄道の軌道に付設されて車上子との非接触伝送を可能とする地上子と、この地上子を介して伝文の送受を行う地上側送受信手段と、地上側に設けられ前記伝文の生成および処理を伴って自動列車停止の判定および制御を行う自動列車停止制御装置と、地上側に設けられ車上側の作動装置と送受する伝文の生成および処理を伴って自動閉そく処理を行う電子閉そく駅装置と、前記地上側送受信手段と前記自動列車停止制御装置との伝文伝達経路に介挿して設けられ且つ前記電子閉そく駅装置と伝文送受可能に接続されて前記自動列車停止制御装置からの伝文および前記電子閉そく駅装置からの伝文を前記地上側送受信手段に転送するとともに前記地上側送受信手段からの伝文を伝文種別に応じて前記自動列車停止制御装置と前記電子閉そく駅装置との何れかに振り分けて転送する地上側伝文経路切替手段と鉄道車両に搭載されて軌道側の地上子との非接触伝送を可能とする車上子と、この車上子を介して伝文の送受を行う車上側送受信手段と、前記車両に搭載され前記伝文に基づいて自動列車停止の作動を行う自動列車停止作動手段と、前記車両に搭載され伝文の送受を伴って自動閉そくの作動を行う閉そく車載器とを備えた鉄道保安システムであって、前記閉そく車載器の直近の伝文送受先が、前記車上側送受信手段および前記自動列車停止作動手段を有する自動列車停止車上装置にされ、前記自動列車停止作動手段からの伝文および前記電子閉そく車載器からの伝文を前記車上側送受信手段に転送するとともに前記車上側送受信手段からの伝文を伝文種別に応じて前記自動列車停止作動手段と前記電子閉そく車載器との何れかに振り分けて転送する車上側伝文経路切替手段が、前記自動列車停止作動手段と前記車上側送受信手段との伝文伝達経路に介挿して設けられ、さらに、前記電子閉そく車載器から前記自動列車停止作動手段へ直に情報を伝える手段が設けられ、前記自動列車停止作動手段が自動列車停止の作動を行うに際し前記車上側送受信手段および前記車上側伝文経路切替手段を介して得た伝文に加えて前記電子閉そく車載器から直に得た情報にも応動するものであることを特徴とする鉄道保安システム。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電子閉そく装置と自動列車停止装置とを備えた鉄道保安システムに関し、詳しくは、車上側の作動装置すなわち鉄道車両に搭載される装置部分と地上側の装置部分とで伝文を送受する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの鉄道10の路線に対して(図5参照)、軌道11を走行する車両12のデッドロックや冒進を防止するために、電子閉そく装置20や自動列車停止装置30が付設されるが、従来の鉄道保安システムでは、両装置20,30が共に付設されていても、地上側装置と車上側装置との交信がそれぞれ別個に行われていた。自動列車停止装置30の改良が進み、自動列車停止装置30でも伝文(電文)が交わされるようになっても、伝文の送受は別個に行われている。
【0003】
すなわち(特開平9-309436号公報、特開2000-318611号公報など参照)、自動列車停止装置30のうち地上側に設置される装置部分には、軌道11に設けられて車上子35との磁気結合や電磁結合による非接触伝送を可能とするループコイル等の地上子31と、この地上子31を介してFSK変調等のデジタル変調方式にて伝文(磁気伝文、電文)の送受を行う接続箱32及び送受信装置33(送受信手段、検知部、インターフェイス部)と、地上側に設けられ上記伝文を受理するとそれに基づいて自動列車停止の判定処理を行うとともにその判定結果に応じて停止制御の処理を行うべく指令伝文を生成しそれを送受信装置33に送出するATS制御装置34(自動列車停止制御装置、情報処理設備)とが具わっている。
【0004】
また、自動列車停止装置30のうち車上側の作動装置部分には、鉄道車両12の車体等に装着されて地上子31との非接触伝送を可能とする車上子35と、車両12の運転室内に設置されるATS車上装置36とが具わっている。ATS車上装置36には、車上子35を介して伝文の送受を行う電子回路である送受信回路や、その伝文に基づいて自動列車停止の作動を行う電子回路であるATS回路が設けられていて、列車識別番号等を含ませた伝文を作成して送出したり、受けた伝文に基づいて警報器から警報を発したりするようになっている。
【0005】
電子閉そく装置20も、地上側の制御装置部分と車上側の作動装置とからなる。地上側装置は各駅A,B毎に設けられ、それぞれに、軌道11脇の空中等に張られたアンテナ21(地上子)と、それに接続された地上無線機22(送受信装置)と、それを介して車上側の作動装置との伝文(電文)の送受を行うとともに閉そく回線24を介して他の閉そく駅装置23とも交信して自動閉そく処理を行う閉そく駅装置23とが具わっている。
また、電子閉そく装置20の車上側装置には、アンテナ25(車上子)と、これを介して閉そく駅装置23と伝文を送受しながら作動する閉そく車載器26とが具わっている。
【0006】
そして、車両12が駅に進入するときには、該当駅の閉そく駅装置23からのポーリングに閉そく車載器26が応答して、進入状況の把握が可能となる。車両12を駅から出発させるときには、閉そく車載器26の出発ボタンを押下操作等すると、それに応じて閉そく車載器26から閉そく駅装置23に出発要求の伝文が送られ、それから、その要求と閉そく条件との照査および照査結果に基づく応答伝文の生成が閉そく駅装置23によって行われるとともに、その応答伝文が閉そく駅装置23から閉そく車載器26に返送される。
【0007】
このような電子閉そく装置20では、無線にて電子地上側装置と車上側装置とが伝文を送受することで、閉そくの制御および作動が自動で行われる。
なお、一部の電子閉そく装置20では、アンテナ21,25に代えて発光手段および受光手段が地上側にも車上側にも設けられ、その送受光にて伝文を交わすようになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、無線方式では、電波法に基づいて無線従事者が必要とされるため、人件費が嵩む。また、車載器の情報が不要に隣接駅に届いてしまうオーバリーチを回避するために、アンテナに撚り対型漏れケーブル(RPC)が採用され、その架布設が軌道に沿ってなされるので、設置範囲が限定されるうえコストダウンも難しい。
一方、光方式では、交信可能範囲が狭いことから、オーバリーチは問題にならないが、場内進入時にポーリングができないため、駅からの出発ばかりか駅への到着についても車載器を操作して確認することが必要であり、自動化レベルが劣る。
【0009】
これに対し、自動列車停止装置に関して最近導入された上述の非接触伝送方式には、そのような不都合が無い。そこで、同様の磁気結合や電磁結合による非接触伝送方式を電子閉そく装置にも導入することが考えられる。
しかしながら、この伝送方式では地上子を軌道に付設することが必要とされるが、そこには既に自動列車停止装置用の地上子が付設されているので、混信や二重投資を回避するために、既存の地上子を電子閉そく装置の伝文送受にも利用することが要請される。
【0010】
もっとも、電子閉そく装置と自動列車停止装置とを単純に合体させるのでは、既存のATS制御装置や閉そく駅装置が無駄になり却ってコストアップを招来するうえ、大規模な改造を広範囲で一気に行わなければならないため、実用化し難い。
そこで、電子閉そく装置と自動列車停止装置とで非接触伝送用地上子の共用化を図るに際して、閉そく駅装置やATS制御装置の改造が要らないよう、伝送系や車上側装置の構成を工夫することが技術的な課題となる。
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、自動列車停止装置の伝送系を利用して電子閉そく装置が地上側と車上側とで非接触伝送を行う鉄道保安システムを実用に適した態様で実現することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために発明された第1乃至第2の解決手段について、その構成および作用効果を以下に説明する。
【0012】
[第1の解決手段]
第1の解決手段の鉄道保安システムは、出願当初の請求項1に記載の如く、何れも鉄道の路線に付設されて地上側装置と車上側装置とで伝文を送受する電子閉そく装置と自動列車停止装置とを備えた鉄道保安システムにおいて、前記自動列車停止装置の伝文に加え前記電子閉そく装置の伝文も前記自動列車停止装置の伝文伝達経路を通過させる伝文経路切替手段が、前記自動列車停止装置の伝文伝達経路に介挿して設けられている、というものである。
【0013】
より具体的には、地上側に設置される装置部分に関し、出願当初の請求項2に記載の如く、鉄道の軌道に付設されて車上子との非接触伝送を可能とする地上子と、この地上子を介して伝文の送受を行う送受信手段と、地上側に設けられ前記伝文の生成および処理を伴って自動列車停止の判定および制御を行う自動列車停止制御装置と、地上側に設けられ車上側の作動装置と送受する伝文の生成および処理を伴って自動閉そく処理を行う電子閉そく駅装置と、前記送受信手段と前記自動列車停止制御装置との伝文伝達経路に介挿して設けられ且つ前記電子閉そく駅装置と伝文送受可能に接続されて前記自動列車停止制御装置からの伝文および前記電子閉そく駅装置からの伝文を前記送受信手段に転送するとともに前記送受信手段からの伝文を伝文種別に応じて前記自動列車停止制御装置と前記電子閉そく駅装置との何れかに振り分けて転送する伝文経路切替手段とを備えている。
【0014】
また、車上側の作動装置部分に関しては、出願当初の請求項3に記載の如く、鉄道車両に搭載されて軌道側の地上子との非接触伝送を可能とする車上子と、この車上子を介して伝文の送受を行う送受信手段と、前記車両に搭載され前記伝文に基づいて自動列車停止の作動を行う自動列車停止作動手段と、前記車両に搭載され伝文の送受を伴って自動閉そくの作動を行う閉そく車載器とを備えた鉄道保安システムにおいて、前記閉そく車載器の直近の伝文送受先が、前記自動列車停止車上装置にされ、さらに、前記自動列車停止作動手段からの伝文および前記電子閉そく車載器からの伝文を前記送受信手段に転送するとともに前記送受信手段からの伝文を伝文種別に応じて前記自動列車停止作動手段と前記電子閉そく車載器との何れかに振り分けて転送する伝文経路切替手段が、前記自動列車停止作動手段と前記送受信手段との伝文伝達経路に介挿して設けられている。
【0015】
このような第1の解決手段の鉄道保安システムにあっては、自動列車停止の制御および作動に必要な伝文伝送が自動列車停止装置の伝文伝達経路を介して行われるとともに、その同じ伝文伝達経路を介して自動閉そくに必要な伝文伝送も行われる。これにより電子閉そく装置と自動列車停止装置とで非接触伝送用地上子等の共用化が達成されるが、共用化されるのは伝文経路切替手段によって伝文経路が纏められる部分に限られるので、振り分け先に閉そく駅装置やATS制御装置を接続する。そうすると、閉そく駅装置とATS制御装置は何れも専用の伝文伝達経路を使用しているときと同様に伝文の送受を行える。
【0016】
このように自動列車停止装置の伝文伝達経路を途中で纏めたり振り分けたりすることにより、閉そく駅装置やATS制御装置を改造しないでも、電子閉そく装置の地上側と車上側とで交わされる伝文の非接触伝送が、自動列車停止装置の非接触伝送用地上子等を共用して行えるようになる。
したがって、この発明によれば、自動列車停止装置の伝送系を利用して電子閉そく装置が地上側と車上側とで非接触伝送を行う実用的な鉄道保安システムを実現することができる。
【0017】
[第2の解決手段]
第2の解決手段の鉄道保安システムは、出願当初の請求項4に記載の如く、上記の第1の解決手段の鉄道保安システムであって、車上側の作動装置に関し、前記電子閉そく車載器から前記自動列車停止作動手段へ直に情報を伝える手段を設けるとともに、前記自動列車停止作動手段を次のようにしたものである。すなわち、この自動列車停止作動手段は、自動列車停止の作動を行うに際し、前記送受信手段および前記伝文経路切替手段を介して得た伝文に加えて、前記電子閉そく車載器から直に得た情報にも、応動するようになっている。
【0018】
このような第2の解決手段の鉄道保安システムにあっては、通常の自動列車停止の制御および作動に加えて、閉そく条件に基づく安全確認も行える。しかも、車上側の装置だけで行える。
これにより、多くの電子閉そく装置と自動列車停止装置とを連動させるための上位装置等を設けても良いが設けるまでもなく簡便に、ATS車上装置など車上側の作動装置の機能を拡張することができる。しかも、その拡張機能の実行が迅速に行われることとなる。
したがって、この発明によれば、自動列車停止装置の伝送系を利用して電子閉そく装置が地上側と車上側とで非接触伝送を行う実用的で高機能の鉄道保安システムを実現することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
このような解決手段で達成された本発明の鉄道保安システムについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の第1~第3実施例により説明する。
図1,図2に示した第1実施例は、上述した第1の解決手段(当初請求項1~3)を具現化したものであり、図3に示した第2実施例は、上述した第2の解決手段(当初請求項4)を具現化したものであり、図4に示した第3実施例は、その変形例である。
なお、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【0020】
【第1実施例】
本発明の鉄道保安システムの第1実施例について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、システム構成を示すブロック図であり、(a)が地上部に関し、(b)が車上部に関し、(c)がその詳細を表している。
この鉄道保安システムが従来と相違するのは、伝文経路切替手段40が導入された点と、それに伴って電子閉そく装置20及び自動列車停止装置30が一部改造されて電子閉そく装置50及び自動列車停止装置60になった点である。
【0021】
伝文経路切替手段40は、地上側に設置される切換装置41(図1(a)参照)と、車上側に搭載される切換回路42(図1(c)参照)とに分かれ、いずれも、伝文(電文)を捌いて転送するために、マイクロプロセッサやバッファーメモリ等を具えた電子機器・電子回路からなり、伝文受渡用I/Oポートを3つ以上具えている。切換装置41は(図1(a)参照)、送受信装置33とATS制御装置34との伝文伝達経路に介挿されて各々の伝文受渡用I/Oポートと1つずつ伝文受渡用I/Oポートが接続されるとともに、もう1つの伝文受渡用I/Oポートが閉そく駅装置23の伝文受渡用I/Oポートに接続されて、送受信装置33とATS制御装置34との伝文送受に加えて、送受信装置33と閉そく駅装置23との伝文送受も、仲介するようになっている。
【0022】
切換回路42は(図1(c)参照)、従来のATS車上装置36からその送受信回路37やATS回路38を引き継いだ新たなATS車上装置66に組み込まれる。切換回路42は、送受信回路37とATS回路38との伝文伝達経路に介挿されて各々の伝文受渡用I/Oポートと1つずつ伝文受渡用I/Oポートが接続されるとともに、もう1つの伝文受渡用I/Oポートが閉そく車載器56の伝文受渡用I/Oポートに接続されて、送受信回路37とATS回路38との伝文送受に加えて、送受信回路37と閉そく車載器56との伝文送受も、仲介するようになっている。閉そく車載器56は(図1(b)参照)、閉そく車載器26(従来例の図5(b)参照)からアンテナ25や図示しない車上無線機部分を省く一方、伝文受渡用I/Oポートに外部接続可能なコネクタ等を追加したものであり、切換回路42とのケーブル接続によって直近の伝文送受先がATS車上装置66となる(図1(b),(c)参照)。
【0023】
切換装置41は、プログラム処理等によって、ATS制御装置34から伝文(電文)を渡されると、それをバッファーメモリに一時格納してタイミング調整等を行いながら、その途中で又はその後に、自動列車停止制御装置からの伝文であることを示す番号等の伝文種別を付加する。また、閉そく駅装置23から伝文(電文)を渡されると、それもバッファーメモリに一時格納してタイミング調整等を行いながら、その途中で又はその後に、電子閉そく駅装置からの伝文であることを示す別の番号等の伝文種別を付加する。さらに、それらの伝文がメモリから順に読み出されCRC等の冗長符号も付け足されてから送受信装置33に引き渡されるようになっている。また、切換装置41は、送受信装置33から伝文(電文)を渡されると、伝文種別等の付加情報を剥ぎ取るとともに、伝文種別に基づいて転送先が閉そく駅装置23なのかATS制御装置34なのかを判別し、適切な方に伝文を転送するようになっている。
【0024】
切換回路42は、やはりプログラム処理等によって、ATS回路38から伝文(電文)を渡されると、それをバッファーメモリに一時格納してタイミング調整等を行いながら、その途中で又はその後に、自動列車停止作動装置からの伝文であることを示す伝文種別を付加する。また、閉そく車載器56から伝文(電文)を渡されると、それもバッファーメモリに一時格納してタイミング調整等を行いながら、その途中で又はその後に、電子閉そく車載器56からの伝文であることを示す伝文種別を付加する。さらに、それらの伝文がメモリから順に読み出されCRC等の冗長符号も付け足されてから送受信回路37に引き渡されるようになっている。また、切換回路42は、送受信回路37から伝文(電文)を渡されると、伝文種別等の付加情報を剥ぎ取るとともに、伝文種別に基づいて転送先が閉そく車載器56なのかATS回路38なのかを判別し、適切な方に伝文を転送するようになっている。
【0025】
この第1実施例の鉄道保安システムについて、その使用態様及び動作を説明する。図2は、交信される伝文のデータ構造図である。
列車の運行状態およびそれに伴う操作や制御処理等は変更が無く従来通りなので、以下、電子閉そく装置50及び自動列車停止装置60における伝文の流れについて説明する。
【0026】
閉そく駅装置23にて作成された伝文(図2(a)の閉そく伝文を参照)は、先ず切換装置41に引き渡され、そこで伝文種別とCRCとが付加され(図2(c)参照)、それから、順に送受信装置33と接続箱32と地上子31と車上子35とを経て、送受信回路37に届く。そして、そこで、伝文種別とCRCとが剥ぎ取られて元の閉そく伝文に戻り(図2(a)参照)、それから、閉そく車載器56に引き渡される。
【0027】
また、閉そく車載器56にて作成された伝文(図2(a)の閉そく伝文を参照)は、先ず切換回路42に引き渡され、そこで伝文種別とCRCとが付加され(図2(c)参照)、それから、順に送受信回路37と車上子35と地上子31と接続箱32とを経て、送受信装置33に届く。そして、そこで、伝文種別とCRCとが剥ぎ取られて元の閉そく伝文に戻り(図2(a)参照)、それから、閉そく駅装置23に引き渡される。こうして、閉そく駅装置23と閉そく車載器56とは、間の伝文伝送経路が変更されていてもそれに影響されることなく、従来と同じ伝文をやり取りして、従来同様に制御および作動を行うことができる。
【0028】
さらに、ATS制御装置34にて作成されてATS回路38に送られる伝文についても(図2(b)のATS伝文を参照)、やはり切換装置41で伝文種別およびCRCの情報が付加され(図2(c)参照)、切換回路42でその付加情報が取り除かれる。また、逆向きにATS回路38にて作成されてATS制御装置34に送られる伝文についても、同様に、切換回路42で伝文種別およびCRCの情報が付加され、切換装置41でその付加情報が取り除かれる。こうして、ATS制御装置34とATS回路38も、間の伝文伝送経路に伝文経路切替手段40が介挿されていてもそれに影響されることなく、従来と同じ伝文をやり取りして、従来同様に制御および作動を行うことができる。
【0029】
このように伝文の合流と分流とを行う伝文経路切替手段40を導入したことにより、この鉄道保安システムにあっては、自動列車停止装置の伝文に加え電子閉そく装置の伝文も自動列車停止装置の伝文伝達経路を通過するようになる。しかも、地上子31,接続箱32,送受信装置33,車上子35,及び送受信回路37が、改造しなくても、共用されることとなる。閉そく駅装置23や,ATS制御装置34も,改造が不要である。さらに、アンテナ21,地上無線機22,及びアンテナ25は、設置そのものが不要になる。
【0030】
【第2実施例】
図3にブロック図を示した本発明の鉄道保安システムが上述した第1実施例のものと相違するのは、閉そく車載器56とATS車上装置66とを接続する信号ケーブルが伝文伝送経路用以外に追加された点と、ATS回路38が機能拡張されてATS回路68になった点である。
【0031】
閉そく車載器56は、閉そく駅装置23との交信にて得られた閉そく条件、特に搭載先車両に出発許可が与えられているか否かの許可情報を、追加信号ケーブル経由でATS車上装置66へ送出するようになっている。
ATS回路68は、その許可情報を参照して、出発許可が与えられるまでは、搭載先車両のブレーキを解除しないようになっている。
【0032】
この場合、ATS制御装置34から送出され車上子35,送受信回路37,切換回路42を経て届いたATS伝文に従ってATS車上装置66による発報等が行われるのに加えて、搭載先車両の閉そく条件に基づくブレーキロックも自動で行われるので、列車運行の安全性が向上する。しかも僅かな改造で実現する。
【0033】
【第3実施例】
上述したような装置改造に伴う作業負担を軽減すべく、改造作業を駅毎に又は列車毎に行っても不都合が生じないようにすることも重要である。図4にブロック図を示した本発明の鉄道保安システムは、装置改造を分散して行えるようにしたものであり、これが上述した第1,第2実施例のものと相違するのは、切換装置41が接続箱32とATS制御装置34と閉そく駅装置23とに加えて地上無線機22にも接続できるようになっている点である(図4(a)参照)。
【0034】
この切換装置41には、選択設定可能な動作モードが3種類ある。第1の分離モード下では(図4(b)参照)、地上無線機22と閉そく駅装置23との閉そく伝文送受と、送受信装置33とATS制御装置34とのATS伝文送受とが、別個独立に行われる。また、第2の併存モード下では(図4(c)参照)、上述した分離モード下での処理に加えて、閉そく駅装置23の閉そく伝文に関しては送受信装置33を介する伝文伝達も重複して行うようになっている。さらに、第3の共用モード下では(図4(d)参照)、閉そく駅装置23の閉そく伝文をATS制御装置34のATS伝文との共用経路に振り向ける処理を行い地上無線機22への転送は行わないようになっている。
【0035】
このような切換装置41を採用して設備更新を行う場合、先ず、各駅の電子閉そく装置20及び自動列車停止装置30に切換装置41を追加する。その際、切換装置41を第1の分離モードにしておく。そうすると、切換装置41が有っても無くてもシステムの動作状態は変わらないので、切換装置41の追加作業は、駅単位で任意の時期に行える。切換装置41の追加設置を終えたら、各切換装置41の動作モードを第2の併存モードに切り替え、それから車両12の閉そく車載器26とATS車上装置36とを閉そく車載器56とATS車上装置66とで置き換える。併存モード下では、新旧いずれのATS車上装置36,56とも閉そく駅装置23が交信できるので、車上側装置の更新作業も、車両単位で任意の時期に行える。
【0036】
そして、総ての機器更新が終了したら、切換装置41の動作モードを第3の共用モードにする。その後は、各駅で適当な時期に、アンテナ21や地上無線機22を片付ける。
こうして、この鉄道保安システムにあっては、少しずつ無理なく、設備更新を進めることができる。
【0037】
【その他】
なお、電子閉そく装置や自動列車停止装置で用いられる列車識別情報は、従来では閉そく車載器26に固定的に保持されていたが、ICカード等の記録担体に記録しておき、それを閉そく車載器等で読み取って用いるようにしても良い。
【0038】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の解決手段の鉄道保安システムにあっては、自動列車停止装置の伝文伝達経路を途中で纏めたり振り分けたりするようにしたことにより、閉そく駅装置やATS制御装置を改造しないでも、非接触伝送用地上子の共用化が達成されることととなり、その結果、自動列車停止装置の伝送系を利用して電子閉そく装置が地上側と車上側とで非接触伝送を行う実用的な鉄道保安システムを実現することができたという有利な効果が有る。
【0039】
また、本発明の第2の解決手段の鉄道保安システムにあっては、車上側の装置で閉そく条件に基づく安全確認まで行えるようにもしたことにより、自動列車停止装置の伝送系を利用して電子閉そく装置が地上側と車上側とで非接触伝送を行う実用的で高機能の鉄道保安システムを実現することができたという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の鉄道保安システムの第1実施例について、(a)が地上部のブロック構成図、(b)が車上部のブロック構成図、(c)がその詳細ブロック図である。
【図2】 交信伝文のデータ構造図である。
【図3】 本発明の鉄道保安システムの第2実施例について、車上部のブロック構成図である。
【図4】 本発明の鉄道保安システムの第3実施例について、(a)が地上部のブロック構成図、(b)~(d)が何れも車上部のブロック構成図である。
【図5】 従来の電子閉そく装置および自動列車停止装置に関し、(a)が地上部のブロック構成図、(b)が車上部のブロック構成図、(c)が外観斜視図である。
【符号の説明】
10 鉄道(路線)
11 軌道(レール)
12 車両(列車)
20 電子閉そく装置
21 アンテナ(RPC、検知電線、地上子)
22 地上無線機(地上側の送受信装置)
23 閉そく駅装置(自動閉そく制御装置、地上側情報処理設備)
24 閉そく回線(専用の伝送ケーブル、地上側の伝送回線)
25 アンテナ(車上子)
26 閉そく車載器(車上側の作動装置)
30 自動列車停止装置(ATS)
31 地上子(ループコイル、電磁結合手段、非接触伝送手段)
32 接続箱(地上側の検知装置)
33 送受信装置(地上側の通信インターフェイス)
34 ATS制御装置(自動列車停止制御装置、地上側情報処理設備)
35 車上子(ループコイル、電磁結合手段、非接触伝送手段)
36 ATS車上装置(車上側の作動装置)
37 送受信回路(送受信手段)
38 ATS回路(自動列車停止作動手段)
40 伝文経路切替手段
41 切換装置(地上側で伝文の経路を切り替える手段)
42 切換回路(車上側で伝文の経路を切り替える手段)
50 電子閉そく装置
56 閉そく車載器(車上側の作動装置)
60 自動列車停止装置(ATS)
66 ATS車上装置(車上側の作動装置)
68 ATS回路
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4