TOP > 国内特許検索 > 乗り心地シミュレータ入力波生成方法及びその装置 > 明細書

明細書 :乗り心地シミュレータ入力波生成方法及びその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3980379号 (P3980379)
公開番号 特開2003-255821 (P2003-255821A)
登録日 平成19年7月6日(2007.7.6)
発行日 平成19年9月26日(2007.9.26)
公開日 平成15年9月10日(2003.9.10)
発明の名称または考案の名称 乗り心地シミュレータ入力波生成方法及びその装置
国際特許分類 G01M  17/007       (2006.01)
B61L  27/00        (2006.01)
FI G01M 17/00 Z
B61L 27/00 G
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2002-055280 (P2002-055280)
出願日 平成14年3月1日(2002.3.1)
審査請求日 平成16年7月26日(2004.7.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】矢澤 英治
【氏名】鈴木 浩明
【氏名】中川 千鶴
【氏名】白戸 宏明
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】福田 裕司
参考文献・文献 特開2002-014012(JP,A)
特開2001-165617(JP,A)
特開平11-281330(JP,A)
特開平08-136254(JP,A)
調査した分野 G01M 17/00 ~ 17/06
B61L 27/00
特許請求の範囲 【請求項1】
乗り心地シミュレータ入力波生成方法において、
(a)距離刻みの模擬軌道狂いを生成させ、
(b)該距離刻みの模擬軌道狂いを時間刻みの模擬軌道狂いに変換し、
(c)該時間刻みの模擬軌道狂いに車両特性のフィルタ処理を施し、
(d)模擬車両動揺を取得することを特徴とする乗り心地シミュレータ入力波生成方法。
【請求項2】
乗り心地シミュレータ入力波生成装置において、
(a)距離刻みの模擬軌道狂いを生成させる模擬軌道狂い生成手段と、
(b)前記距離刻みの模擬軌道狂いを時間刻みの模擬軌道狂いに変換する距離軸から時間軸への変換手段と、
(c)前記時間刻みの模擬軌道狂いに車両特性のフィルタ処理を行う車両動揺演算手段とを備え、
(d)模擬車両動揺を取得することを特徴とする乗り心地シミュレータ入力波生成装置。
【請求項3】
請求項2記載の乗り心地シミュレータ入力波生成装置において、前記模擬軌道狂い生成手段は、乱数発生部と、ランダム波形生成部と、軌道状態モデルフィルタ記憶部と、軌道状態フィルタ処理部とを備え、前記距離軸から時間軸への変換手段は、ランカーブデータ記憶部と、ある時刻の走行地点の演算部と、ある時刻の軌道狂い演算部とを備え、前記車両動揺演算手段は、車両特性モデルフィルタ記憶部と車両特性フィルタ処理部とを具備することを特徴とする乗り心地シミュレータ入力波生成装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軌道状態、車両の振動特性モデルを元に、任意の速度条件での、実際の鉄道車両に起こり得る乗り心地シミュレータ入力波生成方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の振動台試験で用いる動揺波形としては、実際の車両には起こり得ないある周波数のみの正弦波や、ある車両や軌道の条件に限定された実測データが用いられた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の振動台試験の手法では、満足な乗り心地シミュレーションを行うことには難があり、更に進んで、従来の乗り心地の改善を図り、任意の軌道車両条件における乗り心地を推定し得るシミュレーションを行うことは不可能であった。
【0004】
本発明は、上記状況に鑑みて、車両特性と軌道状態のモデルを元に、実測データのように特定の条件に限定されることなく、しかし正弦波とは異なる実際に起こり得るような模擬車両動揺を発生させることができ、振動台試験に用いることができる乗り心地シミュレータ入力波生成方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕乗り心地シミュレータ入力波生成方法において、距離刻みの模擬軌道狂いを生成させ、この距離刻みの模擬軌道狂いを時間刻みの模擬軌道狂いに変換し、この時間刻みの模擬軌道狂いに車両特性のフィルタ処理を施し、模擬車両動揺を取得することを特徴とする。
【0006】
〔2〕乗り心地シミュレータ入力波生成装置において、距離刻みの模擬軌道狂いを生成させる模擬軌道狂い生成手段と、前記距離刻みの模擬軌道狂いを時間刻みの模擬軌道狂いに変換する距離軸から時間軸への変換手段と、前記時間刻みの模擬軌道狂いに車両特性のフィルタ処理を行う車両動揺演算手段とを備え、模擬車両動揺を取得することを特徴とする。
【0007】
〔3〕上記〔2〕記載の乗り心地シミュレータ入力波生成装置において、前記模擬軌道狂い生成手段は、乱数発生部と、ランダム波形生成部と、軌道状態モデルフィルタ記憶部と、軌道状態フィルタ処理部とを備え、前記距離軸から時間軸への変換手段は、ランカーブデータ記憶部と、ある時刻の走行地点の演算部と、ある時刻の軌道狂い演算部とを備え、前記車両動揺演算手段は、車両特性モデルフィルタ記憶部と車両特性フィルタ処理部とを具備することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明の実施例を示す乗り心地シミュレータ入力波生成の模式図である。
【0010】
この図において、1は模擬軌道狂い生成部であり、この模擬軌道狂い生成部1は、乱数発生部2、ランダム波形生成部3、軌道状態モデルフィルタ記憶部4、軌道状態フィルタ処理部5からなり、この軌道状態フィルタ処理部5から模擬軌道狂い(距離刻み)6を発生させることができる。
【0011】
また、10は距離軸/時間軸変換部であり、この距離軸/時間軸変換部10はランカーブデータ記憶部11と、ある時刻の走行地点の演算部12と、ある時刻の軌道狂い演算部13とからなり、そのある時刻の軌道狂い演算部13から模擬軌道狂い(時間刻み)14を発生させることができる。
【0012】
更に、20は車両動揺計算部であり、この車両動揺計算部20は車両特性モデルフィルタ記憶部21と車両特性フィルタ処理部22からなり、この車両特性フィルタ処理部22から模擬車両動揺23を出力することができる。
【0013】
まず、模擬軌道狂い生成部1は乱数発生部2から乱数を発生させて、ランダム波形生成部3で得られたランダム波3Aに軌道状態フィルタ処理部5で軌道状態モデルフィルタ記憶部4から得られる軌道状態モデルを元に、軌道状態フィルタ処理部5によって軌道の特徴を表現したフィルタ処理を行い、距離刻みの模擬軌道狂いに変換して、距離刻みの模擬軌道狂い6を出力する。
【0014】
距離軸/時間軸変換部10はランカーブデータ記憶部11から読み出される任意の車両走行速度パターン(ランカーブ)のデータを元に、ある時刻の走行地点の演算部12である時刻の走行地点を計算し、ある時刻の軌道狂い演算部13によって距離刻みの模擬軌道狂いからその時刻にどんな軌道狂い上に列車があるかを計算する。そして、ランカーブに応じた時間刻みの模擬軌道狂い14を出力する。
【0015】
車両動揺計算部20は、車両特性モデルフィルタ記憶部21に記憶された車両特性モデルを元に、車両特性フィルタ処理部22によって、車両の特性を表現したフィルタ処理が行われ、時間刻みの模擬軌道狂い14を、時間刻みの模擬車両動揺23に変換し出力する。この波形が振動台を駆動するデータとなる。
【0016】
この各部は、基本的にコンピュータのソフトウェア処理で実現するが、高速動作が求められる場合には専用の装置として製作することもできる。
【0017】
図2は実際の線路の軌道狂いの波長特性を計算した例であり、横軸に空間周波数(波長の逆数)(1/m)、縦軸にパワースペクトル密度(mm-2/m-1)を示している。
【0018】
縦軸のパワースペクトル密度はある空間周波数(波長の逆数)の軌道狂いの大きさを表す指標であり、空間周波数の低い(波長の長い)軌道狂いほど大きい。
【0019】
ここで、軌道狂いのパワースペクトル密度(PSD)は、レールの長さによるピークを除くと、ほぼS=wΩ-3になると言われている。
【0020】
ここで、wは軌道状態を表す係数(なお、大きいほど状態は悪い)、Ωは空間周波数、Sは軌道狂いのPSDである。
【0021】
下級線区になるほどwは大きくなる。つまり、新幹線a、在来線高速路線b、在来線通勤路線c、ローカル線dの順にパワースペクトル密度が小から大となる。
【0022】
この、軌道の良し悪しの状態を表現するPSDの大きさをまず決定する。これをどのように決めるかにより、試験用に単純化した軌道の状態を仮定することも、実際の軌道のように、レールの長さでスペクトルにピークが見られる現象を考慮することも可能である。ただし、映像とのリンクなどのため、振動台側に継目部の振動の発生機構が取り付けられる場合は、単純化したスペクトルを用意する。
【0023】
また、軌道状態フィルタ作製は、ホワイトノイズを通したときに上述したように、決めたPSDが得られるように、軌道状態別のデジタルフィルタを作製する。このとき、必要があれば、振動台の特性に合わせて、再現できないごく低い周波数や高い周波数はあらかじめ除かれるように帯域を制限しておく。
【0024】
そして、試験区間長に合わせた長さのホワイトノイズを発生させ、上記で作製したフィルタで処理すると、試験用の模擬軌道狂いが得られる。なお、デモンストレーションなどの目的のためには、模擬データの代わりに、実際に検測された軌道狂いの波形を利用することも可能である。
【0025】
〔模擬軌道狂い生成〕
図3は本発明の実施例を示す模擬軌道狂い生成方法を示す模式図である。
【0026】
デジタルフィルタはある程度任意の周波数特性のフィルタを作ることができる。そこで、いくつかの階級の線区の軌道狂いの特徴をモデル化(例えば、新幹線の特性4A、高速線区の特性4B、ローカル線の特性4C)し、表現したフィルタを作製して軌道状態フィルタデータ(データベース)4Dに蓄積しておく。そして必要な階級の線区のフィルタを利用して、乱数から作った一様な特性のランダム波3Aを処理することで、想定した階級の線区にあり得る空間周波数特性の模擬軌道狂い6を作ることができる。
【0027】
また、階級の異なる線区のデータを連結することにより、ある地点から急に軌道の状態が変わるというような、実測データでは実現し難い試験条件を自由に設定できるのも本発明のシステムの特徴である。
【0028】
〔距離軸/時間軸変換〕
図4は本発明の実施例を示す距離軸/時間軸変換の模式図である。
【0029】
車両の動揺を模擬した波形を得るためには、システム上で仮想的に「車両を走行させる」ことが必要となる。このために車両の速度の情報を与えるのが距離軸/時間軸変換部である。
【0030】
車両の速度走行パターンは、一般にランカーブと言う名で呼ばれている。試験目的に応じてランカーブ11Aを決定すれば、走行開始からの時間経過に対応する走行地点が計算できる。計算された走行地点に基づいて、距離刻みで求められている模擬軌道狂い6の形状を、ある時点で車両が走行している地点の軌道狂い、つまり時間刻みの模擬軌道狂い14に変換することにより、データに車両の走行速度を反映させる。なお、本来の目的は画像・音声データとの連携であるため、模擬軌道狂いを作製し入力とするのであるが、必要に応じてこの処理の入力を実在の軌道狂いのデータとすることもできる。
【0031】
以下、模擬ランカーブ作製例について説明する。
【0032】
ある地点での模擬走行速度(要するにランカーブ11A)を仮定し、データ化しておく。
【0033】
次に、軌道不整データの距離サンプリングに基づく時間サンプリング変換について説明する。
【0034】
上記したランカーブ11Aに基づいて、上記で生成した不整データを距離サンプリングデータから、時間サンプリングデータに変換する。この時間刻みは、動画データとのリンクのため、デフォルトでは1/60秒刻みとする。ただし、他のデータとのリンクに備えて、入力ファイルのデータ刻みに応じて変更可能とする。
【0035】
次に、その変換例について説明する。
【0036】
(1)速度データ(先の、1/60秒刻み時間サンプリング)を積分して、スタート地点からの距離データに変換する。
【0037】
(2)これを元に、距離刻みで作製してある軌道狂いを、補間しながら再サンプリングを行う。
【0038】
在来線の速度であれば、軌道狂いを0.25m程度の間隔で作っておけば、直線補間、ないしは3点を通る2次曲線による補間程度で、所要の精度が得られる。
【0039】
〔車両動揺〕
図5は本発明の実施例を示すある周波数の軌道狂いに対する車両の応答特性の計算例を示す図であり、横軸に周波数(Hz)、縦軸に応答倍率(m/s2 /mm)を示している。
【0040】
この図から明らかなように、鉄道車両の場合、1~2Hzに応答倍率の高いピークがあり、次のピークが2.5Hz~4Hz付近にある。多くの鉄道車両は、このような二つのピークを持った振動特性となっているが、ピークとなる周波数やピークの倍率は車両によって異なっている。同じ区間を同じ速度で走っても、車両により揺れ方が異なるのは、この応答特性の違いによるものである。図5の例の場合は、新幹線電車Aが近年の設計の在来線電車B、15年前設計の在来線電車Cに比べて、最も揺れ難い車両ということになる。
【0041】
図6は本発明の実施例を示す車両動揺計算の模式図である。
【0042】
模擬軌道狂い生成の場合と同様に、デジタルフィルタにより車両の特徴をモデル化して表現したフィルタを作製しデータベース化しておく。すなわち、いくつかの階級の線区の車両特性をモデル化(例えば、新幹線の特性21A、特急電車の特性21B、通勤電車の特性21C)して、表現したフィルタを作製して軌道状態フィルタデータ(データベース)21Dに蓄積しておく。そして必要な車両特性のフィルタを利用して、このフィルタで時間刻みの模擬軌道狂い14を処理すると、選択したフィルタに対応する車両が、指定したランカーブにしたがって軌道を走行した場合の模擬車両動揺23を計算することができる。
【0043】
この走行を反映した模擬車両動揺データ23は、そのランカーブが明らかであるから、速度に応じた車窓の風景や走行音などを組み合わせ、実際の客室に近い条件を模擬することができる。また、極端な高速走行等、実測値では実現しがたい試験条件を提供することができる。
【0044】
以下、具体例について説明する。
【0045】
(1)車両特性フィルタ作製
模擬車両の軌道不整に対する周波数応答特性を決め、あらかじめデジタルフィルタに変換しておく。実際の計算手続きとしては、周波数応答特性の逆フーリエ変換となる。なお、デモンストレーションを目的として、実際の車両の測定により求めた周波数応答特性を利用することも可能である。
【0046】
(2)軌道からの入力加速データの模擬車両動揺への変換
車両特性のデータを、車両特性フィルタで処理すると、模擬車両動揺が得られる。デモンストレーションを目的とするためには、ここに直接車両動揺の測定値を入力することも可能である。
【0047】
(3)振動台特性補正
振動台は車両動揺のデータを忠実に再現して動作してくれることが望ましいが、振動台作製後、位相遅れや特定の周波数の過大応答や過小応答が見られるようであれば、あらかじめ入力波形をそれに合わせて補正しておくことになる。
【0048】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0049】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、車両特性と軌道状態、そして速度を自由に設定できることにより、実際の走行試験では実現し得ない条件での振動を模擬することが可能となる。また、生成した波形の速度条件が明白となることから、画像や音声データと連動させ、列車の客室を模擬した振動台の構成が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す乗り心地シミュレータ入力波生成の模式図である。
【図2】実際の線路の軌道狂いの波長特性の計算例を示す図である。
【図3】本発明の実施例を示す模擬軌道狂い生成方法を示す模式図である。
【図4】本発明の実施例を示す距離軸/時間軸変換の模式図である。
【図5】本発明の実施例を示すある周波数の軌道狂いに対する車両の応答特性の計算例を示す図である。
【図6】本発明の実施例を示す車両動揺計算の模式図である。
【符号の説明】
1 模擬軌道狂い生成部
2 乱数発生部
3 ランダム波形生成部
3A ランダム波
4 軌道状態モデルフィルタ記憶部
4A 新幹線の特性(軌道狂い)
4B 高速線区の特性(軌道狂い)
4C ローカル線の特性(軌道狂い)
4D 軌道状態フィルタデータ(データベース)(軌道狂い)
5 軌道状態フィルタ処理部
6 模擬軌道狂い(距離刻み)
10 距離軸/時間軸変換部
11 ランカーブデータ記憶部
11A ランカーブ
12 ある時刻の走行地点の演算部
13 ある時刻の軌道狂い演算部
14 模擬軌道狂い(時間刻み)
20 車両動揺計算部
21 車両特性モデルフィルタ記憶部
21A 新幹線の特性(車両特性)
21B 特急電車の特性(車両特性)
21C 通勤電車の特性(車両特性)
21D 軌道状態フィルタデータ(データベース)(車両特性)
22 車両特性フィルタ処理部
23 模擬車両動揺
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5