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明細書 :低熱膨張トロリ線

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4281891号 (P4281891)
公開番号 特開2003-281942 (P2003-281942A)
登録日 平成21年3月27日(2009.3.27)
発行日 平成21年6月17日(2009.6.17)
公開日 平成15年10月3日(2003.10.3)
発明の名称または考案の名称 低熱膨張トロリ線
国際特許分類 H01B   7/04        (2006.01)
B60M   1/13        (2006.01)
H01B   7/00        (2006.01)
FI H01B 7/04
B60M 1/13 BFCA
H01B 7/00 301
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2002-083665 (P2002-083665)
出願日 平成14年3月25日(2002.3.25)
審判番号 不服 2007-000148(P2007-000148/J1)
審査請求日 平成16年7月26日(2004.7.26)
審判請求日 平成19年1月5日(2007.1.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】上條 弘貴
【氏名】長坂 整
【氏名】根津 一嘉
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
参考文献・文献 特開昭60-37606(JP,A)
特開平2-189811(JP,A)
特開昭61-7506(JP,A)
特開平8-195311(JP,A)
特開平8-127094(JP,A)
特開平10-321050(JP,A)
調査した分野 H01B 7/04-7/16
特許請求の範囲 【請求項1】
外周に正の線膨張特性を持つ金属材料からなる管状の導電体が形成され、該管状の導電体の内部空間に負の線膨張特性を持つ繊維状有機材料が埋め込まれ、前記管状の導電体と前記繊維状有機材料とを複合化したことを特徴とする低熱膨張トロリ線。
【請求項2】
請求項1記載の低熱膨張トロリ線において、前記負の線膨張特性を持つ繊維状有機材料が超高分子量ポリエチレン繊維である低熱膨張トロリ線。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低熱膨張線状体に係り、特に、低熱膨張トロリ線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トロリ線などの線状体は、温度変化により収縮膨張する。このため熱膨張の影響を防止するための設備(張力調整装置)が不可欠であり、敷設時の作業が増加するとともに、設備のメンテナンスなどが必要になる。
【0003】
そこで、かかる熱膨張による影響をなくすためには、線膨張係数の小さい線状体の開発が必要である。
【0004】
図9は従来のトロリ線を架設した状態を示す図である。
【0005】
この図において、101,102は支持体、103は支持体101と102間に架設されたトロリ線、104は張力調整装置である。
【0006】
この図に示すように、トロリ線103は、車両の高速化に伴い弦としての横波の伝搬速度を向上させるため高張力で架設する必要がある。しかし、温度変化によりトロリ線103は伸縮するため、端部には張力調整装置104を設置して張力を一定に保持するようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来のトロリ線では、温度変化により伸縮するため、端部には張力調整装置104を設置して張力を一定に保持する必要があり、そのため、張力調整装置の設置コストが嵩み、また点検保守が必要である。
【0008】
もともと、トロリ線は、耐摩耗性と機械的強度を上げることを目的としており、複合構造のトロリ線として、導体にアルミ、芯材に軟鋼を用いた鋼心アルミニウムトロリ線(TAトロリ線)と、導体に銅、芯材に炭素鋼を用いた銅被覆鋼線(CSトロリ線)の開発実績がある。
【0009】
しかしながら、上記した複合構造のトロリ線では複合される材料は全て正の熱膨張係数を有する材料であり、その熱膨張を極力抑えるには難があった。
【0010】
本発明は、上記状況に鑑みて、正の線膨張特性を持つ導電性材料と負の線膨張特性を持つ材料との複合構造化を図り、熱膨張を極力抑えることができる低熱膨張トロリ線を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕低熱膨張トロリ線であって、外周に正の線膨張特性を持つ金属材料からなる管状の導電体が形成され、この管状の導電体の内部空間に負の線膨張特性を持つ繊維状有機材料が埋め込まれ、前記管状の導電体と前記繊維状有機材料とを複合化したことを特徴とする
【0012】
〔2〕上記〔1〕記載の低熱膨張トロリ線であって、前記負の線膨張特性を持つ繊維状有機材料が超高分子量ポリエチレン繊維であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施例を示すトロリ線を架設した状態を示す図である。
【0015】
この図において、1,2は支持体、3は支持体1と2間に架設されたトロリ線、4は簡易張力調整装置である。
【0016】
なお、従来用いられている張力調整装置は、滑車と重りを組み合わせた構造が主流であり、その機構が複雑であり定期的に検査が必要であった。本発明のように線膨張係数が小さくなると、トロリ線の伸縮量が小さくなるので、油圧、ガス圧、バネ式などの簡易な張力調整装置が使用できる。また、線膨張係数を0にできれば、伸縮がなくなり、張力をかけて架設すれば、張力調整装置は不要となる。
【0017】
まず、低熱膨張トロリ線について説明する。
【0018】
図2は本発明にかかる低熱膨張トロリ線の模式図である。
【0019】
本発明の低熱膨張トロリ線11は、銅、アルミニウム導体12の中に、フィラ状、線状、ケーブル状、棒状の負の線膨張係数を持つ有機材料13を埋め込む。この負の線膨張係数を持つ有機材料13として、超高分子量ポリエチレン繊維「ダイニーマ」(東洋紡製)やポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)を液晶紡糸した繊維「ザイロン」(東洋紡製)を用いる。
【0020】
有機材料系の新材料である超高分子量ポリエチレン繊維(ダイニーマ)、PBO繊維(ザイロン)は、負の線膨張係数を持つ材料であり、ザイロンは、室温付近で-8×10-6/K程度での負膨張を示し、ダイニーマはザイロンより大きな負膨張の特性がある。なお、ダイニーマ、ザイロンなどの新材料には、高強力、高弾性率で耐衝撃特性が高い、比重が小さいなどの特性もある。
【0021】
また、ダイニーマ、ザイロンの他にも、-2~8×10-6/K程度の負の線膨張特性を示す負膨張ガラスセラミックスが開発されており、こうした材料を使用することもできる。
【0022】
ダイニーマ、ザイロンを芯材に使用する場合には、従来のCSトロリ線の製造方法が使用できる可能性がある。この場合、熱的な問題があるため、ディップフォーミング法よりコンフォーム法のような方法が適していると考えられる。
【0023】
表1に、ダイニーマ、ザイロンとの比較のためにスチールファイバーの諸特性を示した。
【0024】
【表1】
JP0004281891B2_000002t.gif ダイニーマ、ザイロンともに繊維方向に負の線膨張係数を持つ他、比重が金属の数分の1と軽量で、特にザイロンは金属やアラミドなどの従来の高機能繊維などに比べて高強度、高弾性率で、耐衝撃特性の良い材料である。
【0025】
ダイニーマ、ザイロンの比重は、0.98g/cm3 及び1.56g/cm3 で、鋼線の比重7.8g/cm3 と比べて1/9および1/5である。
【0026】
ダイニーマ、ザイロンを芯材に用いたトロリ線では、低熱収縮の効果の他に、ダイニーマ、ザイロンの機械特性などから、以下のような効果も期待できる。
【0027】
(1)鋼線に比べるとダイニーマ、ザイロンは比重が1/9および1/5と小さく、トロリ線の軽量化ができる。
【0028】
(2)耐衝撃特性が高く、エネルギー吸収部材として使用できるので、トロリ線の振動特性を向上させることができる。
【0029】
(3)トロリ線交換後の処理において、芯材が有機材料であることから銅と分離が容易になり、リサイクルが容易になる。
【0030】
負の線膨張係数を持つ材料との複合化による低熱膨張線状体開発の可能性を確認するため、以下の実験を行った。
【0031】
実験は、銅板、負の線膨張係数を持つダイニーマのプリプレグシート、および両者をエポキシ系接着剤により張り合わせた材料について、温度変化による線膨張を歪みゲージにより測定した。
【0032】
図3は各種の熱膨張体の熱膨張をみるためのサンプルを示す図である。
【0033】
(1)サンプル
(a)図3(a)に示すように、銅板(0.3mm厚)のサンプル21
(b)図3(b)に示すように、ダイニーマのUD(一方向)プリプレグ(繊維と樹脂からなる)のサンプル31
(c)図3(c)に示すように、銅板41にダイニーマ42を貼り付けた複合部材のサンプル40
(d)図3(d)に示すように、ダイニーマ51-銅板52-ダイニーマ53の複合部材のサンプル50
(e)図3(e)に示すように、銅板61-ダイニーマ(5枚)62-銅板63の複合部材のサンプル60
なお、各サンプルとも、50×20mmであり、また、22,32,43,54,64はそれぞれ測定用の歪みゲージである。
【0034】
(2)測定方法
歪みゲージ:歪みゲージ(適合線膨張係数:SUS鋼用)
3枚/サンプル
温度変化:室温(25℃程度)から80℃まで、3回の測定
(3)測定結果
各サンプルについて、3回目の温度変化時の線膨張を、歪みゲージの見かけ歪みによる影響を除去し、30℃を基準にして、図4から図8に示した。すなわち、図4はサンプル21〔図3(a)〕の熱膨張特性図、図5はサンプル31〔図3(b)〕の熱膨張特性図、図6はサンプル40〔図3(c)〕の熱膨張特性図、図7はサンプル50〔図3(d)〕の熱膨張特性図、図8はサンプル60〔図3(e)〕の熱膨張特性図である。なお、これらの図においては、+が膨張、-が収縮となり、図4から図8のシンボルは、3点測定したそれぞれの歪みゲージ毎の測定結果を示している。それぞれの値は、30℃を基準(0)としたときの各温度までの歪み=線膨張の値である。図6の銅-ダイニーマのサンプルでは、銅面とダイニーマ面にそれぞれに歪みゲージを張り付けて測定したので、銅面とダイニーマ面の結果がある。図8のダイニーマを銅板で挟んだサンプルでは、両面に歪みゲージを3枚ずつ貼り付けて測定したので、合計6点の測定結果が得られる。
【0035】
測定結果から、各サンプルの平均の線膨張係数をまとめると表2のようになる。
【0036】
【表2】
JP0004281891B2_000003t.gif 図5に示すサンプル31のダイニーマでは、線膨張係数が0から負を示している。銅板41とダイニーマ42を貼り付けた、図6に示すサンプル40では銅板の面とダイニーマの面で線膨張係数に大きな差があり、バイメタル的な特性を示し、銅部分の線膨張係数が単体の場合(図4参照)より大きくなっている。銅板61,63でダイニーマ5枚62を挟んだ、図8に示すサンプル60では、銅板の線膨張係数が13.1と、図4に示すサンプル21の銅板単体に比べて78%に減少しており、銅板とダイニーマとの複合化により低熱膨張材料を得ることができることが分かる。実験は一例であり、割合や複合方法により調整できる。
【0037】
上記したように、銅のトロリ線等の線状体では、温度変化に伴う熱伸縮があるため、敷設や保守管理において問題となる。そこで、極力線膨張係数の小さい材料の適用により低熱膨張の線状体の開発を行い、低熱膨張トロリ線を得ることができた。
【0038】
また、負の線膨張特性を持つ材料に代えて、熱膨張係数の小さいインバー合金などを用いるようにすることもできる。
【0039】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0040】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、トロリ線等の線状体では、温度変化に伴う熱伸縮があるため、敷設や保守管理において問題となるが、本発明によれば、導電性材料と負の熱膨張係数の材料との複合構造の線状体により、極力線膨張係数の小さい低熱膨張トロリ線を得ることができる。
【0041】
従って、トロリ線の熱伸縮に伴う架線支持部構造を簡素化することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示すトロリ線を架設した状態を示す図である。
【図2】 本発明にかかる低熱膨張トロリ線の模式図である。
【図3】 各種の熱膨張体の熱膨張をみるためのサンプルを示す図である。
【図4】 サンプル〔図3(a)〕の熱膨張特性図である。
【図5】 サンプル〔図3(b)〕の熱膨張特性図である。
【図6】 サンプル〔図3(c)〕の熱膨張特性図である。
【図7】 サンプル〔図3(d)〕の熱膨張特性図である。
【図8】 サンプル〔図3(e)〕の熱膨張特性図である。
【図9】 従来のトロリ線を架設した状態を示す図である。
【符号の説明】
1,2 支持体
3 支持体間に架設される低熱膨張トロリ線
4 簡易張力調整装置
11 低熱膨張トロリ線
12 銅、アルミニウム導体
13 負の線膨張係数を持つ有機材料
21 銅板(0.3mm厚)のサンプル
22,32,43,54,64 歪みゲージ
31 ダイニーマのUD(一方向)プリプレグのサンプル
40 銅板とダイニーマを貼り付けた複合部材のサンプル
41,52,61,63 銅板
42,51,53,62 ダイニーマ
50 ダイニーマ-銅板-ダイニーマの複合部材のサンプル
60 銅板-ダイニーマ(5枚)-銅板の複合部材のサンプル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8