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明細書 :燃料電池用セパレータの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4275899号 (P4275899)
公開番号 特開2003-331858 (P2003-331858A)
登録日 平成21年3月13日(2009.3.13)
発行日 平成21年6月10日(2009.6.10)
公開日 平成15年11月21日(2003.11.21)
発明の名称または考案の名称 燃料電池用セパレータの製造方法
国際特許分類 H01M   8/02        (2006.01)
C22C  23/02        (2006.01)
C22C  23/04        (2006.01)
C22F   1/06        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
C22F   1/00        (2006.01)
FI H01M 8/02 B
C22C 23/02
C22C 23/04
C22F 1/06
H01M 8/10
C22F 1/00 612
C22F 1/00 613
C22F 1/00 630K
C22F 1/00 661Z
C22F 1/00 683
C22F 1/00 684C
C22F 1/00 685Z
C22F 1/00 686B
C22F 1/00 691B
C22F 1/00 691C
C22F 1/00 694A
C22F 1/00 694B
請求項の数または発明の数 14
全頁数 14
出願番号 特願2002-133610 (P2002-133610)
出願日 平成14年5月9日(2002.5.9)
審査請求日 平成16年7月28日(2004.7.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
【識別番号】591212523
【氏名又は名称】東 健司
発明者または考案者 【氏名】森 久史
【氏名】辻村 太郎
【氏名】宮本 岳史
【氏名】喜多川 眞好
【氏名】道浦 吉貞
【氏名】前川 恵一
【氏名】北田 信雄
【氏名】東 健司
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】井上 能宏
参考文献・文献 特開平08-260179(JP,A)
特開平08-269589(JP,A)
特開2000-058080(JP,A)
特開2000-106196(JP,A)
特開2000-164225(JP,A)
特開2003-311360(JP,A)
特開2001-294966(JP,A)
特開2000-283134(JP,A)
特開平09-059736(JP,A)
特開平08-199272(JP,A)
日本金属学会編,金属便覧,日本,丸善株式会社,2000年 5月30日,改訂6版,p617~p623
調査した分野 H01M 8/00- 8/24
C22C 5/00-25/00
C22C 27/00-28/00
C22C 35/00-45/10
C22F 1/00- 1/08
特許請求の範囲 【請求項1】
アルミニウム2.5~3.5質量%、亜鉛0.5~1.5質量%、マンガン0.05~0.4質量%以上、鉄0.01質量%以下、ケイ素0.10質量%以下、銅0.10質量%以下、ニッケル0.005質量%以下、カルシウム0.04質量%以下、希土類金属0.1~0.3質量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、
前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程と、
を含む燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記熱処理工程は、前記マグネシウム合金を温度573~773Kで1時間焼鈍処理し、
前記超塑性鍛造工程は、前記焼鈍処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工すること、
を特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項3】
アルミニウム2.5~3.5質量%、亜鉛0.5~1.5質量%、マンガン0.05~0.4質量%以上、鉄0.01質量%以下、ケイ素0.10質量%以下、銅0.10質量%以下、ニッケル0.005質量%以下、カルシウム0.04質量%以下、希土類金属0.1~0.3質量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、
前記マグネシウム合金を熱間加工する熱間加工工程と、
前記熱間加工後の前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程と、
を含む燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記熱間加工工程は、前記マグネシウム合金を温度553~623K、押し出し比率14対1で熱間押し出し加工し、
前記熱処理工程は、前記熱間押し出し加工後にこのマグネシウム合金を温度573~773Kで10時間焼鈍処理し、
前記超塑性鍛造工程は、前記焼鈍処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工すること、
を特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項5】
アルミニウム5.5~7.2質量%、亜鉛0.5~1.5質量%、マンガン0.15~0.4質量%、鉄0.01質量%以下、ケイ素0.10質量%以下、銅0.10質量%以下、ニッケル0.005質量%以下、希土類金属0.1~0.3質量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、
冷間圧延後の前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程と、
を含む燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記熱処理工程は、圧下率10~15%で冷間圧延後の前記マグネシウム合金を温度473~500Kで10時間時効処理し、
前記超塑性鍛造工程は、前記時効処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工すること、
を特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項7】
アルミニウム5.5~7.2質量%、亜鉛0.5~1.5質量%、マンガン0.15~0.4質量%、鉄0.01質量%以下、ケイ素0.10質量%以下、銅0.10質量%以下、ニッケル0.005質量%以下、希土類金属0.1~0.3質量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、
前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理後の前記マグネシウム合金を熱間加工する熱間加工工程と、
前記熱間加工後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程と、
を含む燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記熱処理工程は、前記マグネシウム合金を温度673Kで10時間焼鈍処理し、
前記熱間加工工程は、前記焼鈍処理後に前記マグネシウム合金を温度543~773K、押し出し比率64対1で熱間押し出し加工し、
前記超塑性鍛造工程は、前記熱間押し出し加工後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工すること、
を特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項9】
アルミニウム8.5~9.5重量%、亜鉛0.45~0.9重量%、マンガン0.17~0.4重量%、鉄0.01重量%以下、ケイ素0.05重量%以下、銅0.03重量%以下、ニッケル0.001重量%以下、希土類金属0.1~0.3重量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、
前記マグネシウム合金を熱間加工する熱間加工工程と、
前記熱間加工後の前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程と、
を含む燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記熱間加工工程は、前記マグネシウム合金を温度543~773K、押し出し比率64対1で熱間押し出し加工し、
前記熱処理工程は、前記押し出し加工後に前記マグネシウム合金を温度473~573Kで10時間時効処理し、
前記超塑性鍛造工程は、前記時効処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工すること、
を特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項11】
亜鉛4.8~6.2質量%、ジルコニウム0.45~0.8質量%、銅0.03質量%以下、ニッケル0.005質量%以下、希土類金属0.1質量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、
前記マグネシウム合金を熱間加工する熱間加工工程と、
前記熱間加工後の前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程と、
を含む燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記熱間加工工程は、前記マグネシウム合金を温度583~773K、押し出し比率100対1で熱間押し出し加工し、
前記熱処理工程は、前記熱間押し出し加工後にこのマグネシウム合金を温度621Kで10時間焼鈍処理し、
前記超塑性鍛造工程は、前記焼鈍処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工すること、
を特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記熱間加工工程は、前記マグネシウム合金を温度583K、押し出し比率100対1で熱間圧延加工し、
前記熱処理工程は、前記熱間圧延加工後に前記マグネシウム合金を温度583Kで30分間焼鈍処理し、
前記超塑性鍛造工程は、前記焼鈍処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工すること、
を特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記超塑性鍛造加工後の前記マグネシウム合金の表面にセラミックス層又は金属めっき層を形成する保護層形成工程を含むこと、
を特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料電池用セパレータの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池用セパレータは、電気的及び腐食環境におかれる一つの構造物として取り扱われており、燃料電池用セパレータの材料には軽量、機械的強度、電気伝導性及び耐食性が求められ、大量使用されるためコストの低減が強く望まれている。従来、グラファイト、天然若しくは人口黒鉛、アモルファスカーボン、膨張黒鉛などのカーボン系材料や、ステンレス鋼、アルミニウム合金又はチタン合金などを使用した燃料電池用セパレータが知られている。カーボン系材料は、軽くて強度を有するが脆くて加工が困難であり、カーボン自体のコストが非常に高く、燃料電池用セパレータとして大量に使用する際にはコストに問題があった。このため、ステンレス鋼、アルミニウム合金又はチタン合金を使用した燃料電池用セパレータが製造されている。
【0003】
特開平10-228914号公報には、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼などに金めっきを施した燃料電池用セパレータが開示されており、特開平8-180883号公報にはステンレス鋼又はチタン合金をプレス加工によって形成した燃料電池用セパレータが開示されており、特開2000-309854号公報にはオーステナイト系ステンレス鋼からなる燃料電池用セパレータが開示されている。ステンレス鋼は、強度を有し加工に問題はないが、カーボンに比べて6倍程度の重量があるため電池自体の重量が増加して、鉄道車両や自動車などに搭載することが困難である。また、アルミニウム合金及びチタン合金は、強度がありステンレス鋼に比べて軽量であるがめっきなどの処理が必要になる。
【0004】
一方、マグネシウム合金は、アルミニウム合金よりも軽くて強度があり電気導電性を有する材料であるため、アルミニウム合金製の燃料電池用セパレータよりも軽量なセパレータを提示できる可能性がある。このため、マグネシウム合金製の燃料電池用セパレータを製造する際のマグネシウム合金の加工方法、材料の選定及び表面処理技術が検討されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開2000-58080号公報には、流体通路を有するマグネシウム合金製の基板の表面に保護層が形成された燃料電池用セパレータが開示されている。このマグネシウム合金の加工方法は、ダイカスト、機械加工、エッチング又はチクソモールディング法である。マグネシウム合金としては、板として使用する場合には、JIS H 4201に規定されている1種,4種,5種又は7種が開示され、ダイカストとして使用する場合にはJIS H 5303に規定されている記号MD1A,MD1B又はMD1Dが開示されている。防食方法としては、保護層がカーボン又は炭化ケイ素の場合には、スパッタリング法、CVD法又は蒸着法が開示されており、保護層がニッケル、クロム又はスズの場合には無電解めっき法又は電気めっき法が開示されている。
【0006】
特開2000-164225号公報には、ダイカスト法により鋳造されたマグネシウム合金製の燃料電池用セパレータが開示されている。このマグネシウム合金としては、アルミニウム、亜鉛、マンガン、希土類金属などを合金塑性とする12種類が開示され、防食方法としては物理蒸着法、めっき又は塗装によってニッケルなどの金属、炭化物又は窒化物を被覆する方法が開示されている。
【0007】
特開2000-106196号公報には、2~10重量%のアルミニウム合金を含有する半溶融状態のマグネシウム合金を射出成形した燃料電池用セパレータが開示されている。防食方法としては、金めっき、銀めっき又はクロムめっきによって表面を被覆し保護する方法が記載されている。
【0008】
しかし、このような従来のマグネシウム合金製の燃料電池用セパレータでは、薄板状に形成して表面に流通路を形成することが困難であり、金型と材料の双方を加熱して加工するため、製品に反りや割れが発生するおそれがあった。
【0009】
この発明の課題は、加工が容易で割れや反りがなく、機械的強度、電気伝導性、耐食性に優れ軽量でありコストを低減することができる燃料電池用セパレータの製造方法を提供することである。
【0010】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、アルミニウム2.5~3.5質量%、亜鉛0.5~1.5質量%、マンガン0.05~0.4質量%以上、鉄0.01質量%以下、ケイ素0.10質量%以下、銅0.10質量%以下、ニッケル0.005質量%以下、カルシウム0.04質量%以下、希土類金属0.1~0.3質量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程(#120)と、前記熱処理後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程(#200)とを含む燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0011】
請求項の発明は、請求項1に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記熱処理工程は、前記マグネシウム合金を温度573~773Kで1時間焼鈍処理し、前記超塑性鍛造工程は、前記焼鈍処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0012】
請求項3の発明は、アルミニウム2.5~3.5質量%、亜鉛0.5~1.5質量%、マンガン0.05~0.4質量%以上、鉄0.01質量%以下、ケイ素0.10質量%以下、銅0.10質量%以下、ニッケル0.005質量%以下、カルシウム0.04質量%以下、希土類金属0.1~0.3質量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記マグネシウム合金を熱間加工する熱間加工工程(#110)と、前記熱間加工後の前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程(#120)と、前記熱処理後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程(#200)とを含む燃料電池用セパレータの製造方法。
【0013】
請求項の発明は、請求項3に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記熱間加工工程は、前記マグネシウム合金を温度553~623K、押し出し比率14対1で熱間押し出し加工し、前記熱処理工程は、前記熱間押し出し加工後にこのマグネシウム合金を温度573~773Kで10時間焼鈍処理し、前記超塑性鍛造工程は、前記焼鈍処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0014】
請求項の発明は、アルミニウム5.5~7.2質量%、亜鉛0.5~1.5質量%、マンガン0.15~0.4質量%、鉄0.01質量%以下、ケイ素0.10質量%以下、銅0.10質量%以下、ニッケル0.005質量%以下、希土類金属0.1~0.3質量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、冷間圧延後の前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程(#120)と、前記熱処理後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程(#200)とを含む燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0015】
請求項の発明は、請求項5に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記熱処理工程は、圧下率10~15%で冷間圧延後の前記マグネシウム合金を温度473~500Kで10時間時効処理し、前記マグネシウム合金を圧下率10~15%で冷間圧延し、前記超塑性鍛造工程は、前記時効処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0016】
請求項の発明は、アルミニウム5.5~7.2質量%、亜鉛0.5~1.5質量%、マンガン0.15~0.4質量%、鉄0.01質量%以下、ケイ素0.10質量%以下、銅0.10質量%以下、ニッケル0.005質量%以下、希土類金属0.1~0.3質量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程(#120)と、前記熱処理後の前記マグネシウム合金を熱間加工する熱間加工工程(#110)と、前記熱間加工後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程(#200)とを含む燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0017】
請求項の発明は、請求項7に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記熱処理工程は、前記マグネシウム合金を温度673Kで10時間焼鈍処理し、前記熱間加工工程は、前記焼鈍処理後に前記マグネシウム合金を温度543~773K、押し出し比率64対1で熱間押し出し加工し、前記超塑性鍛造工程は、前記熱間押し出し加工後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0018】
請求項の発明は、アルミニウム8.5~9.5重量%、亜鉛0.45~0.9重量%、マンガン0.17~0.4重量%、鉄0.01重量%以下、ケイ素0.05重量%以下、銅0.03重量%以下、ニッケル0.001重量%以下、希土類金属0.1~0.3重量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記マグネシウム合金を熱間加工する熱間加工工程(#110)と、前記熱間加工後の前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程(#120)と、前記熱処理後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程(#200)とを含む燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0019】
請求項10の発明は、請求項9に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記熱間加工工程は、前記マグネシウム合金を温度543~773K、押し出し比率64対1で熱間押し出し加工し、前記熱処理工程は、前記押し出し加工後に前記マグネシウム合金を温度473~573Kで10時間時効処理し、前記超塑性鍛造工程は、前記時効処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工すること、
を特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0020】
請求項11の発明は、亜鉛4.8~6.2質量%、ジルコニウム0.45~0.8質量%、銅0.03質量%以下、ニッケル0.005質量%以下、希土類金属0.1質量%、残りがマグネシウムであるマグネシウム合金によって形成された燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記マグネシウム合金を熱間加工する熱間加工工程(#110)と、前記熱間加工後の前記マグネシウム合金を熱処理する熱処理工程(#120)と、前記熱処理後の前記マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する超塑性鍛造工程(#200)とを含む燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0021】
請求項12の発明は、請求項11に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記熱間加工工程は、前記マグネシウム合金を温度583~773K、押し出し比率100対1で熱間押し出し加工し、前記熱処理工程は、前記熱間押し出し加工後にこのマグネシウム合金を温度621Kで10時間焼鈍処理し、前記超塑性鍛造工程は、前記焼鈍処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0022】
請求項13の発明は、請求項11に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記熱間加工工程は、前記マグネシウム合金を温度583K、押し出し比率100対1で熱間圧延加工し、前記熱処理工程は、前記熱間圧延加工後に前記マグネシウム合金を温度583Kで30分間焼鈍処理し、前記超塑性鍛造工程は、前記焼鈍処理後に前記マグネシウム合金を金型温度473~723K、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/sで超塑性鍛造加工することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0023】
請求項14の発明は、請求項から請求項13までのいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記超塑性鍛造加工後の前記マグネシウム合金の表面にセラミックス層又は金属めっき層を形成する保護層形成工程(#300)を含むことを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る燃料電池の構成図である。
燃料電池1は、酸化及び還元反応のエネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置である。燃料電池1は、鉄道車両、自動車などの移動体や、設置用小型分散電源などに使用される固体高分子型燃料電池やリン酸型燃料電池である。燃料電池1は、図1に示すように、複数の単位電池2と、両端部の単位電池2を固定する一対の端部固定板3と、単位電池2を並べた状態で一対の端部固定板3に固定する取付棒4と、一対の端部固定板3を支持する支持板5などから構成されている。
【0036】
図2は、この発明の実施形態に係る燃料電池の単位電池の構成図である。
単位電池2は、燃料電池1を構成する単位燃料電池セルである。単位電池2は、図2に示すように、例えば水素イオン交換基を有するフッ素系イオン交換樹脂膜などからなる固体高分子膜6と、この固体高分子膜6の一方の表面に積層され、粒子状の白金触媒と黒鉛粉などからなる燃料電極膜(アノード(水素極))7と、この固体高分子膜6の他方の表面に積層され、粒子状の白金触媒と黒鉛粉などからなる酸化剤電極膜(カソード(酸素極))8と、燃料電極膜7の表面に積層されたセパレータ9と、酸化剤電極膜8の表面に積層されたセパレータ10と、セパレータ9,10の表面に形成された保護層11,12などから構成されている。
【0037】
図3は、この発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータの外観図であり、図3(A)は図2に示すIII-IIIA側から見た図であり、図3(B)は図2に示すIII-IIIB側から見た図である。
セパレータ9,10は、隣接する単位電池2の間に設置されて燃料ガスや酸化性ガスを遮断する部材である。セパレータ9,10は、固体高分子膜6、燃料電極膜7及び酸化剤電極膜8を積み重ねた状態で両側から挟み込み単位電池2の隔壁として機能するとともに、電導性、耐食性、熱伝導性などの機能も有する。セパレータ9,10は、マグネシウム合金又はアルミニウム合金などの超塑性合金によって形成されている。ここで、超塑性とは、材料に対してある温度とひずみ速度を与えた場合に、材料の伸びが100%以上にもなる現象である。セパレータ9には、図3(A)に示すように、水素ガス又は水素含有ガス(燃料ガス)が流れる流路溝9aと、取付棒4が貫通する取付孔9bが形成されている。セパレータ10には、図3(B)に示すように、空気のような酸化性ガスが流れる流路溝10aと、取付棒4が貫通する取付孔10bが形成されている。セパレータ9,10は、図3に示すように、例えば外観形状が正方形であり厚さが2~5mmであり、流路溝9a,10aは深さが0.5~1mm、幅が1~3mmである。
【0038】
保護層11,12は、セパレータ9,10の表面を保護する部分である。保護層11,12は、セパレータ9,10の全面に形成されたセラミックス層、導電性水ガラス層又は金属めっき層などである。
【0039】
次に、この発明の実施形態に係る燃料電池の動作を説明する。
水素ガス又は水素含有ガスが流路溝9aに流れると燃料電極膜7に水素が供給され、酸化性ガスが流路溝10aに流れると酸化剤電極膜8に酸素が供給される。燃料電極膜7の触媒によって水素が水素イオンになって、固体高分子膜6内を移動すると、酸化剤電極膜8の触媒によって酸素と反応して水となる。この過程で燃料電極膜7から酸化剤電極膜8に電子が移動して直流電流が発生し、この電流が外部に出力される。反応後の空気、酸素などのキャリアガスとともに、酸化剤電極膜8側で生成された反応水が流路溝10aから排出される。
【0040】
次に、この発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータの製造方法を説明する。図4は、この発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータの製造方法を説明するための工程図である。
加熱工程#100は、超塑性合金を加熱する工程である。この加熱工程#100は、熱間押し出し又は熱間圧延などの塑性加工によって超塑性合金を熱間加工する熱間加工工程#110と、焼鈍又は時効処理などによって超塑性合金を熱処理する熱処理工程#120とを含む。熱間押し出しは、温度543~773K、押し出し比率(加工率)1~7%で実施することが好ましく、熱間圧延は温度583K、1~2パス、圧下率1~20%で実施することが好ましい。塑性加工後に必要がある場合には、焼鈍又は時効処理による熱処理を実施する。焼鈍は、温度573~773Kで1~10時間程度行うことが好ましく、時効処理は温度473~573Kで10時間程度行うことが好ましい。加熱工程#100では、熱間加工工程#110の前に熱処理工程#120を実施してもよく、熱間加工工程#110又は熱処理工程#120のいずれか一方の工程を省略してもよい。また、加熱工程#100では、熱間加工工程#110を省略して、超塑性合金を冷間圧延などの塑性加工によって冷間加工した後に熱処理工程#120を行ってもよい。冷間圧延は、室温で圧下率10~20%で実施することが好ましい。
【0041】
超塑性鍛造工程#200は、加熱工程#100後の超塑性合金を超塑性鍛造加工する工程である。この超塑性鍛造工程#200では、塑性加工後又は熱処理後の超塑性合金が薄板状のセパレータ9,10に成形されるとともに、このセパレータ9,10の表面に流路溝9a,10aが同時に成形される。超塑性鍛造加工を実施する場合には、鉄鋼材料製で流路溝が形成された金型を温度473~723Kに加熱して大気中で超塑性合金に押し付け、ひずみ速度2×10-5~1×10-1/Sで板材を均一に延ばすことが好ましい。
【0042】
保護層形成工程#300は、超塑性鍛造工程#200後の超塑性合金の表面にセラミックス層、導電性水ガラス層又は金属めっき層を形成する工程である。保護層形成工程#300では、TiCなどのセラミックス層が化学蒸着されたり、膜厚0.1~0.5mmで導電性水ガラスが塗布されたり、金、銀又はクロムなどの金属めっき層が形成される。
【0043】
この発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータには、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、セパレータ9,10を超塑性合金によって形成したので、セパレータ9,10を容易に成形加工することができ、接触電気抵抗が小さく機械的強度や電気伝導性に優れたセパレータ9,10を製造することができる。
【0044】
(2) この実施形態では、超塑性挙動を示すマグネシウム合金によってセパレータ9,10を形成するので、燃料電池1の軽量化を図ることができるとともに、セパレータ9,10を安価に製造することができる。特に、自動車に比べて重量がある鉄道車両の軽量化を図ることができる。また、マグネシウム合金はリサイクル性に優れているため、鉄道車両に近年要求されるているリサイクル化を容易に実現することができる。
【0045】
(3) この実施形態では、超塑性合金の表面にセラミックス層、導電性水ガラス層又は金属めっき層を形成したので、セパレータ9,10を加熱してこれらの保護層11,12を簡単に剥離して、剥離後のセパレータ9,10のリサイクル化を図ることができる。
【0046】
(4) この実施形態では、超塑性合金を超塑性鍛造によって加工するので、鍛造加工後のセパレータ9,10の割れや反りの発生を抑えることができる。従来の燃料電池用セパレータの製造方法では金型と材料を加熱していたが、この実施形態では金型のみを加熱するため、セパレータ9,10の割れや反りの発生をおさえることができる。また、従来の燃料電池用セパレータでは薄板加工と溝加工とが別工程で行っていたが、この実施形態では超塑性合金を簡単に薄板状に成形することができるとともに、複雑な流路溝9a,10aを薄板成形と同時に容易に成形することができる。
【0047】
【実施例】
次に、この発明の実施例について説明する。
(合金の選択)
表1は、燃料電池用セパレータとして選択したマグネシウム合金である。
【0048】
【表1】
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【0049】
表1に示すように、燃料電池用セパレータを開発するにあたって、超塑性挙動を示す合金として、アルミニウム、亜鉛、マンガン、鉄及び希土類金属(RE)を中心に化学成分が調整された実施例1~5までの5種類のマグネシウム合金を選択した。なお、表1に示す数値範囲が上限値以下の合金成分については、この合金成分を少なくとも含む意味である。実施例1~5には、いずれも大阪富士工業株式会社製のマグネシウム合金の板材を使用し、実施例1は合金種別がAZ31の押出型材であり、実施例2は合金種別がAZ61の押出型材であり、実施例3は合金種別がAZ91の鋳造板材であり、実施例4は合金種別がZK60の押出型材であり、実施例5は合金種別がZK61の鋳造板材である。実施例1~5の合金は、AZ31、AZ61、AZ91、ZK60及びZK61のマグネシウム合金のそれぞれに、希土類元素を所定の割合で添加したものである。
【0050】
(加工方法)
表2は、燃料電池用セパレータとして選択したマグネシウム合金の加工方法と加工後の燃料電池用セパレータの評価である。
【0051】
【表2】
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【0052】
(実施例1)
先ず、表1に示す実施例1~8を熱間押し出し、熱間圧延又は冷間圧延により塑性加工して厚さ6mmの板材を作成した。実施例1については、加工方法A,Bを実施した。加工方法Aについては、温度573~773Kで1時間焼鈍処理した後に超塑性鍛造加工を実施した。加工方法Bについては、温度553~623K、押し出し比率14対1で熱間押し出し加工した後に、温度573~773Kで10時間焼鈍処理してから超塑性鍛造加工を実施した。
【0053】
(実施例2)
実施例2については、加工方法C,Dを実施した。加工方法Cについては、圧下率10~15%で冷間圧延した後に温度473~500Kで10時間時効処理してから超塑性鍛造加工を実施した。加工方法Dについては、温度673Kで10時間焼鈍処理した後に温度543~773K、押し出し比率64対1で熱間押し出し加工をしてから超塑性鍛造加工を実施した。
【0054】
(実施例3)
実施例3については、加工方法E,Fを実施した。加工方法についてEは、温度543~773K、押し出し比率64対1で熱間押し出し加工した後に超塑性鍛造加工を実施した。加工方法Fについては、温度543~773K、押し出し比率64対1で熱間押し出し加工した後に温度473~573Kで10時間時効処理してから超塑性鍛造加工を実施した。
【0055】
(実施例4)
実施例4については、加工方法G,H,Iを実施した。加工方法Gについては、温度583K、押し出し比率100対1で熱間押し出し加工した後に超塑性鍛造加工を実施した。加工方法Hについては、温度583~773K、押し出し比率100対1で熱間押し出し加工した後に温度621Kで10時間焼鈍処理してから超塑性鍛造加工を実施した。加工方法Iについては、温度583K、押し出し比率100対1で熱間圧延加工した後に温度583Kで0.5時間焼鈍処理してから超塑性鍛造加工を実施した。
【0056】
(実施例5)
実施例5については、加工方法Jを実施した。加工方法Jは、温度553K、押し出し比率64対1で熱間押し出し加工した後に超塑性鍛造加工を実施した。
【0057】
図5は、この発明の実施例に係る燃料電池用セパレータの外観図である。
図5に示す燃料電池用セパレータ90は、実施例1のマグネシウム合金を温度553K、押し出し比率7%で熱間押し出し加工した後に温度573Kで10時間時効処理して得られた板材に、超塑性鍛造加工によって流路溝90a及び取付孔90bを成形したものである。この燃料電池用セパレータ90は、製品寸法が150mm×150mm×2mmであり、燃料電池用セパレータ90の板表面には深さ0.5mm、幅2mmの寸法で流路溝90aが加工されている。表2に示すように、この実施例1については、超塑性鍛造加工後の製品に割れや反りがなく極めて良好であり、実施例2~5についても実施例1に次いで良好であった。
【0058】
マグネシウム合金を超塑性鍛造加工するためには、結晶粒や粒界析出物を制御する必要がある。この実施例では、マグネシウム合金を超塑性鍛造加工する前の前処理として熱処理を実施することによって、結晶粒を5ミクロン以下に微細化することができ、粒界及び粒内析出物の制御を行うことができた。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によると、燃料電池用セパレータを超塑性合金によって形成したので、加工が容易で割れや反りがなく、機械的強度、電気伝導性、耐食性に優れ軽量でありコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態に係る燃料電池の構成図である。
【図2】この発明の実施形態に係る燃料電池の単位電池の構成図である。
【図3】この発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータの外観図であり、(A)は図2に示すIII-IIIA側から見た図であり、(B)は図2に示すIII-IIIB側から見た図である。
【図4】この発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータの製造方法を説明するための工程図である。
【図5】この発明の実施例に係る燃料電池用セパレータの外観図である。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 単位電池
6 固体高分子膜
7 燃料電極膜
8 酸化剤電極膜
9,10 セパレータ
9a,10a 流路溝
11,12 保護層
90 燃料電池用セパレータ
#100 加熱工程
#110 熱間加工工程
#120 熱処理工程
#200 超塑性鍛造工程
#300 保護層形成工程
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4