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明細書 :高温超電導バルク材製超電導磁石及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3858221号 (P3858221)
公開番号 特開2004-022576 (P2004-022576A)
登録日 平成18年9月29日(2006.9.29)
発行日 平成18年12月13日(2006.12.13)
公開日 平成16年1月22日(2004.1.22)
発明の名称または考案の名称 高温超電導バルク材製超電導磁石及びその製造方法
国際特許分類 H01F   6/00        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
FI H01F 7/22 Z
H01B 13/00 565D
H01B 13/00 ZAA
請求項の数または発明の数 4
全頁数 15
出願番号 特願2002-171336 (P2002-171336)
出願日 平成14年6月12日(2002.6.12)
審査請求日 平成16年7月27日(2004.7.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391004481
【氏名又は名称】財団法人国際超電導産業技術研究センター
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】富田 優
【氏名】村上 雅人
個別代理人の代理人 【識別番号】100088270、【弁理士】、【氏名又は名称】今井 毅
審査官 【審査官】菊地 聖子
参考文献・文献 特開2001-064016(JP,A)
特開平07-170721(JP,A)
特開2001-114576(JP,A)
特開平10-012429(JP,A)
特開2001-307916(JP,A)
特開平01-120715(JP,A)
Masaru Tomita, Masato Murakami,High-temperature superconductor bulk magnets that can trap magnetic fields of over 17 tesla at 29K ,Nature,英国,Nature Publishing Group ,2003年 1月30日,vol.421,P517-520
調査した分野 C01G 1/00-23/08
C04B 41/80-41/91
H01B 12/00-13/00
H01F 6/00- 6/06
特許請求の範囲 【請求項1】
磁場を捕捉して使用する高温超電導バルク材製の超電導磁石であって、高温超電導バルク材が人工孔を有すると共に、少なくとも当該人工孔には前記高温超電導バルク材が結合酸素の逸散を生じる温度よりも低い融点を有した低融点金属が真空雰囲気あるいは加圧雰囲気中で含浸充填され、かつその低融点金属の含浸充填部に熱伝導用金属材が接合されてなることを特徴とする、高温超電導バルク材製超電導磁石。
【請求項2】
熱伝導用金属材がAl,Cu,Ag又はAuからなるものである、請求項1記載の高温超電導バルク材製超電導磁石。
【請求項3】
高温超電導バルク材に人工孔を設けた後、少なくとも当該人工孔に含浸充填される低融点金属との接合がなされる部位に熱伝導用金属材を配置してから、少なくとも当該人工孔に前記高温超電導バルク材が結合酸素の逸散を生じる温度よりも低い融点を有した低融点金属を真空雰囲気あるいは加圧雰囲気中で含浸充填させる処理を行い、その後、固化した低融点金属によって熱伝導用金属材が接合された前記高温超電導バルク材の着磁処理を実施することを特徴とする、高温超電導バルク材製超電導磁石の製造方法。
【請求項4】
周辺磁場を10T以上として着磁処理を実施する、請求項3記載の高温超電導バルク材製超電導磁石の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、比較的短い時間で高い捕捉磁場を確保することができる高温超電導バルク材製超電導磁石並びにその製造方法に関し、例えば磁気浮上列車,フライホイ-ル電力貯蔵用超電導軸受,磁気分離装置等の如きバルク高温超電導体を高電磁力下で利用することが望まれる分野での技術向上に多大な貢献が期待されるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、 LiTi23, Ba(Bi,Pb)O3 ,(Ba,K) BiO3 等といった臨界温度(Tc)の比較的高い酸化物超電導材料の発見に続いて、これらよりも更に高い臨界温度を有した(La,Sr)2CuO4 ,REBa2Cu37 (REは希土類元素),Bi2Sr2Ca2Cu310,Ti2Ba2Ca2Cu310,HgBa2Ca2 Cu38 等の銅酸化物超電導材料が次々と生み出されるに至っている。
【0003】
ところで、上述のように超電導材料は常電導材料に比べて臨界電流密度が高いために大電流を損失なく流すことが可能であるが、このように大電流を流した場合には、超電導体に大きな電磁力が働くので材料強度によっては材料が破壊してしまうおそれのあることが知られている。
また、最近、高温超電導バルク材(特に銅酸化物超電導材)の特性向上と大型化に伴ってバルク材に捕捉できる磁場の大きさが飛躍的に向上しているが、このように捕捉磁場が増加するとそれに伴って材料にかかる電磁力も増大するため、最近では材料強度によって捕捉磁場が制限されざるを得ないという問題が持ち上がっている。そのため、捕捉磁場を利用したバルク超電導磁石の性能向上のためには、捕捉磁場の更なる向上よりもむしろ材料の機械的特性向上が重要となってなっている。
【0004】
そこで、本発明者等は、著しく高い機械的強度を有する高温超電導バルク材として、先に、
a) エポキシ樹脂等の樹脂含浸層(減圧雰囲気下等での処理により、 疑似単結晶状態の酸化物超電導バルク材を製造する過程で不可避的に内在される微小なクラックや気孔を通じて樹脂を含浸させた樹脂含浸層)を有した、溶融法による酸化物超電導バルク体からなる“酸化物超電導体”(特許第3144675号公報参照),
b) 樹脂含浸層を有した溶融法による酸化物超電導バルク体からなり、かつ当該酸化物超電導バルク体が40重量%以下のAgを含んでなる“酸化物超電導体”(特許第3144675号公報参照),
c) 樹脂含浸層を有し、かつ外表面が石英,炭酸カルシウム,アルミナ,水和アルミナ,ガラス,タルク,焼石膏等といった線膨張係数の小さいフィラ-材を分散して含有する樹脂層で覆われた溶融法による酸化物超電導バルク体からなる“酸化物超電導体”(特許第3100370号公報参照),
d) 外表面に“樹脂含浸された布の密着被覆層”を有すると共に、バルク体の表層部に樹脂の含浸層を有した溶融法による酸化物超電導バルク体からなる“酸化物超電導体”(特許第3100375号公報参照),
等を提案した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような樹脂含浸層の形成処理等を施した酸化物超電導材(高温超電導バルク材)は、その機械的強度が極めて高いために従来にない高い捕捉磁場(10Tを超える程度の高い捕捉磁場)の確保が可能であるほか、冷却及び昇温の温度履歴や電磁力印加を繰り返し行う電磁的履歴を経ても捕捉磁場の劣化が小さいという優れた特性を有するものであったが、本発明者等の更なる検討により、これらの高強度高温超電導バルク材であっても次のような問題を有していることが明らかとなった。
【0006】
即ち、高温超電導バルク材製の超電導磁石では、通常、高温超電導バルク材をまず目的とする捕捉磁場よりも高い周辺磁場中において液体ヘリウムから発生するガスで冷却しながら着磁処理し、この状態から徐々に周辺磁場を低下させながら磁場を十分に捕捉させる着磁方法が採られている。この場合、樹脂含浸等で強化を図った高温超電導バルク材では、従来の樹脂含浸等の強化を施さない高温超電導バルク材のように10Tを超える周辺磁場をかけた際のロ-レンツ力に抗しきれずに破壊してしまうという事態は生じないものの、これまでに経験が乏しいこのような10Tを超える周辺磁場中で着磁処理を行った場合には、磁束ジャンプ(flux jump) と呼ばれる磁束線のなだれ状移動による発熱により超電導状態が破れる現象(クェンチ現象)が起きがちであることが分かった。
なお、高温超電導バルク材の着磁処理時に見られるこの現象は高磁場になるほど起きやすく、10Tを越える捕捉磁場では、強化処理を施した高温超電導バルク材であっても前記現象のために着磁が極めて困難であった。
【0007】
つまり、本発明者等は、樹脂含浸強化を施した高温超電導バルク材による実験を通じて、高温超電導バルク材により高い捕捉磁場を実現するためには、機械的強度の向上に加えて磁束ジャンプに起因した発熱の弊害をも回避しなければならないことを知ることができた。
【0008】
このようなことから、本発明が目的としたのは、容易にかつ安定して高い磁場を捕捉することができる高温超電導バルク材製超電導磁石を提供し、超電導磁石応用機器類の更なる性能向上に資することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、次の知見を得ることができた。
【0010】
前述したように、高温超電導バルク材の着磁処理時に生じるクェンチ現象はバルク材中を通過する磁束線の周辺への急激な移動(磁束ジャンプ)によって生じる起電圧による“発熱”に起因したものであり、高温超電導バルク材は熱伝導率が低いために局部的に発生した熱がバルク材の外部にまで逃げきれず、この熱蓄積のためにバルク材の温度が局部的に臨界温度(Tc ) 以上にまで上昇してクェンチに至ってしまう。
ところが、酸化物超電導バルク材の適宜箇所に孔(貫通孔でも盲穴でも良い)を穿設しておき、これを真空雰囲気あるいは加圧雰囲気中において溶融した低融点金属(融点が200℃程度以下乃至は300℃程度以下の低融点金属)と接触させると、酸化物超電導バルク材の表面や内部に存在する微小クラックや気孔を通じて低融点金属が当該バルク材に含浸されると共に(溶融金属の含浸がなされないと考えられがちであるが実際にはその製造過程において微小なクラックや気孔が内在されるのを防止することが困難であり、 そのためこれらを通じて真空引き処理等によりバルク材内への溶融金属の含浸がなされる)、前記人工孔にも低融点金属の含浸層とつながった状態で低融点金属が充填されることとなる。そして、この低融点金属が含浸充填された酸化物超電導バルク材では、その着磁処理時に磁束ジャンプによる局部的な発熱が起きたとしても、この熱は金属であるが故に熱伝導性の良い低融点金属含浸層を伝って速やかに人工孔内の低融点金属含浸充填部に移動するので極端な温度上昇部を生じさせることはなく、クェンチ現象の発生が抑えられる。
しかも、低融点金属の含浸処理を行った酸化物超電導バルク材はその機械的強度も向上し、割れの発生傾向が大幅に抑えられる。
【0011】
この場合、人工孔内に充填され固化された低融点金属部に例えばアルミニウム線等の熱伝導の良い金属材を接合しておけば、酸化物超電導バルク材内で発生する熱を一層速やかに外部へ放出することができるので、処理時間の比較的短い着磁処理によっても酸化物超電導バルク材に高い磁場を捕捉させることが可能になる。
【0012】
本発明は、上記知見事項等に基づいてなされたものであって、次の 1乃至 2項に示す高温超電導バルク材製超電導磁石並びにその製造方法を提供するものである。
1磁場を捕捉して使用する高温超電導バルク材製の超電導磁石であって、高温超電導バルク材が人工孔を有すると共に、少なくとも当該人工孔には前記高温超電導バルク材が結合酸素の逸散を生じる温度よりも低い融点を有した低融点金属が真空雰囲気あるいは加圧雰囲気中で含浸充填され、かつその低融点金属の含浸充填部に熱伝導用金属材が接合されてなることを特徴とする、高温超電導バルク材製超電導磁石。
2熱伝導用金属材がAl,Cu,Ag又はAuからなるものである、前記 1項記載の高温超電導バルク材製超電導磁石。
3高温超電導バルク材に人工孔を設けた後、少なくとも当該人工孔に含浸充填される低融点金属との接合がなされる部位に熱伝導用金属材を配置してから、少なくとも当該人工孔に前記高温超電導バルク材が結合酸素の逸散を生じる温度よりも低い融点を有した低融点金属を真空雰囲気あるいは加圧雰囲気中で含浸充填させる処理を行い、その後、固化した低融点金属によって熱伝導用金属材が接合された前記高温超電導バルク材の着磁処理を実施することを特徴とする、高温超電導バルク材製超電導磁石の製造方法。
4周辺磁場を10T以上として着磁処理を実施する、前記 3項記載の高温超電導バルク材製超電導磁石の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
ここで、本発明に適用される酸化物超電導バルク材としては、これまで知られていた何れの種類のものでも良いが、捕捉磁場の高い高温超電導材として知られるRE-Ba-Cu-O(REは希土類元素であってY,La,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上を意味する)系の銅酸化物超電導バルク材が好適であると言える。
中でも、酸化物超電導バルク材が、捕捉磁場のより高い材料として知られているREBa2Cu3y (REはY,Dy,Ho,Er,Tm又はYbのうちの1種以上)を母相とすると共に該母相中に50体積%以下のRE2 BaCuO5(REはY,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上)相を分散相として含む酸化物超電導体や、RE1+x Ba2-x Cu3y ( REはLa,Nd,Sm,Eu及びGdのうちの1種以上であって、 好ましくは-0.1 <x<0.2, 6.5<y<7.2 の範囲のもの)を母相とすると共に該母相中に50体積%以下のRE4-2x Ba2+2x Cu2-x 10-2x (REはLa及びNdのうちの1種以上であって、 好ましくは-0.2 <x<0.3 の範囲のもの)相又はRE2 BaCuO5 ( REはSm,Eu及びGdの1種以上)相を分散相として含む酸化物超電導材がより好適である。
【0014】
そして、上記酸化物超電導バルク材は、特許第3144675号公報に示されている“樹脂含浸層を有するもの”や、特許第3100370号公報に示されている“樹脂含浸層を有しかつ外表面が線膨張係数の小さいフィラ-材を分散して含有する樹脂層で覆われてなるもの”、あるいは特許第3100375号公報に示されている“外表面に樹脂含浸された布の密着被覆層を有するもの”又は“バルク体の表層部に樹脂含浸層を有すると共にその表面が樹脂含浸された布の密着被覆層で覆われてなるもの”等が好ましいと言える。
【0015】
高温超電導バルク材に設ける人工孔の位置や数は適宜決定すれば良いが、通常は中央部に1個の孔を形成すれば十分である。
人工孔は貫通孔でも盲穴でも良く、更に孔の形成手段も特に指定されるものではないが、ドリルによる穿孔が最も簡易で好適な手段であると考えられる。
【0016】
上記人工孔に含浸充填される低融点金属としては、酸化物超電導バルク材は空気中である温度以上に加熱されると結合酸素が逸散してしまって超電導特性を示さなくなることから、前記“酸素逸散を生じる温度”よりも低い融点を有した金属あるいは合金を用いる必要がある。
なお、この“酸素逸散を生じる温度”はY-Ba-Cu-O超電導バルク材では約300℃程度、Gd-Ba-Cu-O超電導バルク材で約250℃程度、Sm-Ba-Cu-O超電導バルク材やNd-Ba-Cu-O超電導バルク材で約200℃程度である。従って、融点が200℃以下の低融点金属であれば何れの種類の酸化物超電導バルク材にも適用することができる。
【0017】
因みに、本発明に適用できる低融点金属の具体例とその溶融開始温度を以下に示す。
JP0003858221B2_000002t.gif
【0018】
人工孔に含浸充填された低融点金属部から外部へ熱を逃がすための熱伝導用金属材としては熱伝導率の高いAl,Cu,Ag,Au等の線材が好適であると言えるが、特にこれらに限定されるものではなく、熱伝導性の良好な金属材であれば何れであっても構わない。例えば、溶融した低融点金属を前記人工孔に含浸充填する際にその低融点金属で高温超電導バルク材の表面を覆う被覆層をも形成させ、この低融点金属の被覆層に熱伝導用金属材としての役割を担わさせても良い。
【0019】
酸化物超電導バルク材の人工孔に低融点金属を含浸充填させる手法としては、真空等の減圧雰囲気下に保持した酸化物超電導バルク材の少なくとも人工孔の部位と溶融させた液状の低融点金属とを接触させる方法が好適であるが、“加圧含浸法”等といったその他の方法によっても差し支えはない。
なお、この時、低融点金属の含浸は人工孔の部位だけでなく、酸化物超電導バルク材の全表面から低融点金属を含浸させるのが好ましいと言える。
【0020】
酸化物超電導バルク材を減圧雰囲気下あるいは加圧雰囲気下において溶融状態の低融点金属と接触させると、バルク材の表面(人工孔の内表面も含む)に開口した微小クラックや気孔を通じて低融点金属はバルク材内部に浸透し、バルク材内(特に表層部内)の微小クラックや気孔を埋めつくして人工孔の内部に充填された低融点金属部と一体となってバルク材に強固に密着する。従って、バルク材の着磁時に発生する局部熱は、これら金属含浸部を通して人工孔内に充填された金属部へ速やかに抜熱される。
なお、減圧雰囲気下含浸や加圧含浸の手法ではなく、単に酸化物超電導バルク材と溶融させた液状の低融点金属とを接触させるだけの手法では低融点金属の含浸は起きず、低融点金属の凝固部と酸化物超電導バルク材とは十分に密着しないので所望する抜熱効果は発揮されない。
【0021】
人工孔に含浸充填された低融点金属部と熱伝導用金属材との接合は、熱伝導が円滑になされるのであればその手段は限定されないが、高温超電導バルク材に設けた人工孔に低融点金属を含浸充填する際、その人工孔の部位にアルミニウム線等の熱伝導用金属材を挿入配置しておいてから低融点金属の含浸処理を行い、熱伝導用金属材が一体となるように人工孔部の低融点金属を固化する方法が好適である。
【0022】
図1は、本発明に係る高温超電導バルク材製超電導磁石の一例に関する断面の説明図である。
この高温超電導バルク材製超電導磁石は、円盤状に育成した高温超電導バルク材に人工貫通孔を穿設し、この人工孔に両端を蛸足状に割り開いた熱伝導用金属線(アルミニウム線)を挿入した後、人工孔部を含むバルク材の全体に低融点金属の含浸処理を施して得たものである。
図1に示すように、育成した高温超電導バルク材には多数の微小クラックや気孔(ボイド)が存在しているので、減圧雰囲気下等で低融点金属の含浸処理を施すと低融点金属はこれらの微小クラックや気孔に含浸すると共に、前記人工孔やバルク材の表面を埋め尽くし、熱伝導用金属線を密着一体化して固化する。
【0023】
従って、バルク材の着磁時に発生する局部熱はこれら低融点金属の含浸部を通して人工孔内に充填された金属部へ速やかに移動し、熱伝導用金属線を通してバルク材の表面を覆う低融点金属の被覆層に伝達され、外部に排除される。そのため、バルク体の局部温度が上昇してクェンチに至る現象が効果的に阻止される。
【0024】
なお、図1には熱伝導用金属線の端部をバルク材の表面を覆う低融点金属の被覆層に接合した高温超電導バルク材製超電導磁石の例を示したが、熱伝導用金属線の端部を別の抜熱部材に接合しても良いことは言うまでもない。
【0025】
上述の如き高温超電導バルク材製超電導磁石の着磁処理には、公知の手段、例えば液体ヘリウムから発生するガス中において高い周辺磁場をかけて磁場を捕捉させる方法を採用すれば良いが、周辺磁場を10T以上として着磁処理することにより本発明の効果は一層際立つと言える。
ここで、着磁方法として“静磁場法”あるいは“パルス法”の何れを採用しても良いことは言うまでもない。
【0026】
次いで、本発明を実施例によって説明する。
【実施例】
〔実施例1〕
YBa2Cu3y 超電導体内にY2 BaCuO5 相をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料を、溶融法により作製した。
溶融条件は、YBa2Cu3y 素材を1100℃に20分加熱した後、1050℃まで30分で冷却し、その後SmBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの冷却速度で冷却する条件を採用した。
そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で400℃において250時間の酸素アニ-ルを行った。
【0027】
次に、これら超電導バルク材を真空容器に入れ、次の樹脂含浸法により樹脂を浸透させた。
即ち、まず前処理段階として、前記の超電導バルク材をシラン系カップリング剤{R′Si(OR)3 :R′は有機官能基,ORは無機官能基}に浸し、真空槽中で 6.7×10-2 Pa の減圧状態にした後、大気圧とした。そして、乾燥炉に入れて乾燥させた。
次いで、ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と芳香族ポリアミンとシラン系カップリング剤をそれぞれ30℃まで予熱した状態で、配合組成(重量比)100:32:1で混合させ、真空下で脱気を行った。次に、超電導バルク材を70℃まで予熱し、真空槽の中で 6.7×10-2 Pa まで減圧した。そして、バルク材を覆うように樹脂を注ぎ込み、 0.4MPaまで加圧し、80℃下において6時間、120℃下において2時間、加熱することにより硬化させた。
【0028】
上記エポキシ樹脂で含浸処理した超電導バルク材にドリルで人工貫通孔(直径が1mm)を穿設した。なお、孔はバルク材のc軸方向の中心部分に設けた。
続いて、上記と同様のシラン系カップリング剤の処理を施し、穿設した人工貫通孔の内部にアルミニウム棒(軟らかい針金状のもので直径が 0.9mm)を挿入して、バルク材の底部(種結晶でない側)に突出したアルミニウム棒端を2つに割り裂いてバルク材の底部表面に密着させた。
【0029】
この超電導バルク材を150℃まで余熱し、同じく150℃の53.9%Bi-25.9%Sn-20.2%Cdの組成を持つ液状金属を、バルク材の底部に液体が溜まるように流し込み、真空槽中で 6.7×10-2 Pa まで減圧した後、 0.4MPaまで加圧した。そして、常温(20℃)まで温度を低下させ、液状金属を固化した。
次いで、バルク材の側面円周に炭素繊維を巻いた状態で、上記の同様の方法で樹脂含浸を行った。
【0030】
次に、これらの超電導バルク材を100Kまで冷却し、13Tの磁場を印加した後、更に50Kまで冷却し、その後、磁場を低下させながら、超電導バルク材の温度、ホ-ル素子を用いての超電導材表面上の磁場を測定した。
その結果、超電導バルク材の捕捉磁場は、Y211相の含有量が0%,10%,20%,30%及び40%の試料においてそれぞれ5T,7T, 6.5T,6T,6Tと高い値が得られた。
【0031】
一方、人工孔を施して低融点金属による真空処理を行わなかった試料についても上記調査を行ったが、この試料では、磁場を低下させる過程においてバルク材の温度が55Kまで上昇した後、突如として70Kまでの温度上昇があった。そして、捕捉磁場がOTに近い値を示すことが確認された。
【0032】
以上のように、人工孔を施した後に低融点金属の含浸処理を施した試料は、この処理を施していないものと比べ、全てにおいて比較的大きな捕捉磁場が得られた。
試験後の顕微鏡観察によって、孔の内部は低融点金属が充満し、かつ孔近傍の内部微小クラックにも低融点金属が充満していることか分かった。
【0033】
〔実施例2〕
Sm0.9Ba2.1Cu3y 酸化物超電導体内に Sm2BaCuO5(Sm211相)をそれぞれ30及び40体積%分散して含有するバルク材料を、溶融法により作製した。
溶融条件は、 Sm0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1050℃に20分加熱した後、1200℃まで20分で冷却し、その後NdBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、900℃まで 0.5℃/hの冷却速度で冷却する条件を採用した。
成長させた段階で、Sm211相が0及び10%の試料では大きなクラックが観察された。また、肉眼では観察されなかったものの、Sm211相が20%の試料でも微小クラックが認められた。
【0034】
次に、割れが認められなかったSm211相をそれぞれ30%及び40%含有する超電導バルク材を、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを施した。
【0035】
次いで、これら超電導バルク材を真空容器に入れ、次の樹脂含浸法により樹脂を浸透させた。
即ち、まず前処理段階として、前記の超電導バルク材をシラン系カップリング剤{R′Si(OR)3 :R′は有機官能基,ORは無機官能基}に浸し、真空槽中で 6.7×10-2 Pa の減圧状態にした後、大気圧とした。そして、乾燥炉に入れて乾燥させた。
次いで、ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と芳香族ポリアミンとシラン系カップリング剤をそれぞれ30℃まで予熱した状態で、配合組成(重量比)100:32:1で混合させた。次に、超電導バルク材を70℃まで予熱し、バルク材を覆うように樹脂を注ぎ込み、真空相の中で 6.7×10-2 Pa まで減圧して脱気を行った。十分に脱泡した後 0.3MPaまで加圧し、80℃下において6時間、120℃下において2時間、加熱することにより硬化させた。
【0036】
上記エポキシ樹脂で含浸処理した超電導バルク材にドリルで人工貫通孔(直径が1mm)を穿設した。なお、孔はバルク材のc軸方向の中心部分に設けた。
続いて、上記と同様のシラン系カップリング剤の処理を施し、穿設した人工貫通孔の内部にアルミニウム棒(軟らかい針金状のもので直径が 0.9mm)を挿入して、バルク材の底部(種結晶でない側)に突出したアルミニウム棒端を2つに割り裂いてバルク材の底部表面に密着させた。
【0037】
この超電導バルク材を150℃まで余熱し、120℃の53.9%Bi-25.9%Sn-20.2%Cdの組成を持つ液状金属をバルク材の底部に液体が溜まるように流し込んでから真空槽中で 6.7×10-2 Pa まで減圧した後、 0.4MPaまで加圧した。そして、常温(20℃)まで温度を低下させ、液状金属を固化した。
次いで、バルク材の側面円周に炭素繊維を巻いた状態で、上記の同様の方法で樹脂含浸を行った。
【0038】
次に、これらの超電導バルク材を100Kまで冷却し、13Tの磁場を印加した後、更に50Kまで冷却し、その後、磁場を低下させながら、超電導バルク材の温度、ホ-ル素子を用いての超電導材表面上の磁場を測定した。
その結果、超電導バルク材の捕捉磁場は、Sm211相の含有量が30%及び40%の試料においてそれぞれ10T及び8Tと高い値が得られた。
【0039】
一方、人工孔を施して低融点金属による真空処理を行わなかった試料についても上記調査を行ったが、この試料では、磁場を低下させる過程においてバルク材の温度が55Kまで上昇した後、突如として90Kまでの温度上昇があった。そして、捕捉磁場がOTに近い値を示すことが確認された。
【0040】
以上のように、人工孔を施した後に低融点金属を含浸処理した試料は、この処理を施していないものと比べ、全てにおいて比較大きな捕捉磁場が得られた。
試験後の顕微鏡観察によって、孔の内部は低融点金属が充満し、かつ孔近傍の内部微小クラックにも低融点金属が充満していることか分かった。
【0041】
〔実施例3〕
Nd0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Nd3.6Ba2.4Cu1.8z ( Nd422相)を0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料を、溶融法により作製した。
溶融条件は、“酸素分圧を 0.1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1040℃に20分加熱した後、1010℃まで20分で冷却し、その後MgO単結晶を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの冷却速度で冷却する条件を採用した。
成長させた段階で、Nd422相が0及び10%の試料では大きなクラックが観察された。
【0042】
次に、割れが認められなかったNd422相をそれぞれ20%,30%及び40%含有する超電導バルク材を、1気圧の酸素気流中で300℃において300時間の酸素アニ-ルを施した。
【0043】
次いで、これら超電導バルク材を真空容器に入れ、次の樹脂含浸法により樹脂を浸透させた。
即ち、まず前処理段階として、前記の超電導バルク材をシラン系カップリング剤{R′Si(OR)3 :R′は有機官能基,ORは無機官能基}に浸し、真空槽中で 6.7×10-2 Pa の減圧状態にした後、大気圧とした。そして、乾燥炉に入れて乾燥させた。
次いで、ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と芳香族ポリアミンとシラン系カップリング剤をそれぞれ30℃まで予熱した状態で、配合組成(重量比)100:32:1で混合させ、真空下で脱気を行った。次に、超電導バルク材を70℃まで予熱し、真空相の中で 6.7×10-2 Pa まで減圧してから、バルク材を覆うように樹脂を注ぎ込み、 0.2MPaまで加圧した後、80℃下において6時間、120℃下において2時間、加熱することにより硬化させた。
【0044】
上記エポキシ樹脂で含浸処理した超電導バルク材にドリルで人工貫通孔(直径が1mm)を穿設した。なお、孔はバルク材のc軸方向の中心部分に設けた。
続いて、上記と同様のシラン系カップリング剤の処理を施し、穿設した人工貫通孔の内部にアルミニウム棒(軟らかい針金状のもので直径が 0.9mm)を挿入して、バルク材の底部(種結晶でない側)に突出したアルミニウム棒端を2つに割り裂いてバルク材の底部表面に密着させた。
【0045】
この超電導バルク材を150℃まで余熱し、120℃の53.9%Bi-25.9%Sn-20.2%Cdの組成を持つ液状金属をバルク材の底部に液体が溜まるように流し込んでから真空槽中で 6.7×10-2 Pa まで減圧した後、 0.3MPaまで加圧した。そして、常温(20℃)まで温度を低下させ、液状金属を固化した。
次いで、バルク材の側面円周に炭素繊維を巻いた状態で、上記の同様の方法で樹脂含浸を行った。
【0046】
次に、これらの超電導バルク材を100Kまで冷却し、13Tの磁場を印加した後、更に50Kまで冷却し、その後、磁場を低下させながら、超電導バルク材の温度、ホ-ル素子を用いての超電導材表面上の磁場を測定した。
その結果、超電導バルク材の捕捉磁場は、Nd422相の含有量が20%,30%及び40%の試料においてそれぞれ8T,11T及び8Tと高い値が得られた。
【0047】
一方、人工孔を施して低融点金属による真空処理を行わなかった試料についても上記調査を行ったが、この試料では、磁場を低下させる過程においてバルク材の温度が55Kまで上昇した後、突如として70Kまでの温度上昇があった。そして、捕捉磁場がOTに近い値を示すことが確認された。
【0048】
以上のように、人工孔を施した後に低融点金属を含浸処理した試料は、この処理を施していないものと比べ、全てにおいて大きな捕捉磁場が得られた。
試験後の顕微鏡観察によって、孔の内部は低融点金属が充満し、かつ孔近傍の内部微小クラックにも低融点金属が充満していることか分かった。
【0049】
〔実施例4〕
YBa2Cu3y 超電導体内にY2 BaCuO5 相をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料のそれぞれに対し、更にAgを10重量%含有させた試料を、溶融法により作製した。
溶融条件は、YBa2Cu3y 素材を1050℃に20分加熱した後、1000℃まで30分で冷却し、その後YBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの冷却速度で冷却する条件を採用した。
そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で400℃において250時間の酸素アニ-ルを行った。
【0050】
次に、これら超電導バルク材を真空容器に入れ、次の樹脂含浸法により樹脂を浸透させた。
即ち、まず前処理段階として、前記の超電導バルク材をシラン系カップリング剤{R′Si(OR)3 :R′は有機官能基,ORは無機官能基}に浸し、真空槽中で 6.7×10-2 Pa の減圧状態にした後、大気圧とした。そして、乾燥炉に入れて乾燥させた。
次いで、ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と芳香族ポリアミンとシラン系カップリング剤をそれぞれ30℃まで予熱した状態で、配合組成(重量比)100:32:1で混合させ、真空下で脱気を行った。次に、超電導バルク材を70℃まで予熱し、バルク材を覆うように樹脂を注ぎ込み、真空相の中で 6.7×10-2 Pa まで減圧してから脱気を行った。十分に脱泡した後、 0.2MPaまで加圧し、80℃下において6時間、120℃下において2時間、加熱することにより硬化させた。
【0051】
上記エポキシ樹脂で含浸処理した超電導バルク材にドリルで人工貫通孔(直径が1mm)を穿設した。なお、孔はバルク材のc軸方向の中心部分に設けた。
続いて、上記と同様のシラン系カップリング剤の処理を施し、穿設した人工貫通孔の内部にアルミニウム棒(軟らかい針金状のもので直径が 0.9mm)を挿入して、バルク材の底部(種結晶でない側)に突出したアルミニウム棒端を2つに割り裂いてバルク材の底部表面に密着させた。
【0052】
この超電導バルク材を150℃まで余熱し、100℃の57%Bi-17%Sn-26%Inの組成を持つ液状金属をバルク材の底部に液体が溜まるように流し込んでから真空槽中で 6.7×10-2 Pa まで減圧した後、 0.3MPaまで加圧した。そして、常温(20℃)まで温度を低下させ、液状金属を固化した。
次いで、バルク材の側面円周に炭素繊維を巻いた状態で、上記の同様の方法で樹脂含浸を行った。
【0053】
次に、これらの超電導バルク材を100Kまで冷却し、16Tの磁場を印加した後、更に30Kまで冷却し、その後、磁場を低下させながら、超電導バルク材の温度、ホ-ル素子を用いての超電導材表面上の磁場を測定した。
その結果、超電導バルク材の捕捉磁場は、Y211相の含有量が0%,10%,20%,30%及び40%の試料においてそれぞれ11T,12T,12T,15T及び13Tと高い値が得られた。
【0054】
一方、人工孔を施して低融点金属による真空処理を行わなかった試料についても上記調査を行ったが、この試料では、磁場を低下させる過程においてバルク材の温度が55Kまで上昇した後、突如として70Kまでの温度上昇があった。そして、捕捉磁場がOTに近い値を示すことが確認された。
【0055】
以上のように、人工孔を施した後に低融点金属の含浸処理を施した試料は、この処理を施していないものと比べ、全てにおいて比較的大きな捕捉磁場が得られた。
試験後の顕微鏡観察によって、孔の内部はアルミニウム棒とバルク材の間に低融点金属が充満し、かつ孔近傍の内部微小クラックにも低融点金属が充満していることか分かった。
【0056】
〔実施例5〕
Sm0.9Ba2.1Cu3y 酸化物超電導体内に Sm2BaCuO5(Sm211相)をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料のそれぞれに対し、更にAgを15重量%含有させた試料を、溶融法により作製した。
溶融条件は、 Sm0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1010℃に20分加熱した後、990℃まで20分で冷却し、その後SmBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、850℃まで 0.5℃/hの冷却速度で冷却する条件を採用した。
成長させた段階で、肉眼では観察されなかったものの、Sm211相を含まない試料ではクラックの存在が確認された。
次に、クラックの認められなかったSm211相をそれぞれ10%,20%,30%及び40%含有する上記各バルク超電導体に対し、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを施した。
【0057】
次に、これら超電導バルク材を真空容器に入れ、次の樹脂含浸法により樹脂を浸透させた。
即ち、まず前処理段階として、前記の超電導バルク材をシラン系カップリング剤{R′Si(OR)3 :R′は有機官能基,ORは無機官能基}に浸し、真空槽中で 6.7×10-2 Pa の減圧状態にした後、大気圧とした。そして、乾燥炉に入れて乾燥させた。
次いで、ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と芳香族ポリアミンとシラン系カップリング剤をそれぞれ30℃まで予熱した状態で、配合組成(重量比)100:32:1で混合させ、真空下で脱気を行った。次に、超電導バルク材を70℃まで予熱し、バルク材を覆うように樹脂を注ぎ込み、真空相の中で 6.7×10-2 Pa まで減圧してから脱気を行った。十分に脱泡した後、80℃下において6時間、120℃下において2時間、加熱することにより硬化させた。
【0058】
上記エポキシ樹脂で含浸処理した超電導バルク材にドリルで人工貫通孔(直径が 0.8mm)を穿設した。なお、孔はバルク材のc軸方向の中心部分と外周との間に3箇所設けた。
続いて、穿設したそれぞれの人工貫通孔の内部にアルミニウム棒(軟らかい針金状のもので直径が 0.7mm)を挿入し、その端を外部にさらした状態とした。
【0059】
この超電導バルク材を100℃まで余熱し、同じく100℃の40%Bi-40%Pb-11.5%Sn-8.5 %Cdの組成を持つ液状金属をバルク材の底部に液体が溜まるように流し込んでから真空槽中で 6.7×10-2 Pa まで減圧した後、 0.3MPaまで加圧した。そして、常温(20℃)まで温度を低下させ、液状金属を固化した。
次いで、バルク材の側面円周に炭素繊維を巻いた状態で、上記の同様の方法で樹脂含浸を行った。
【0060】
次に、これらの超電導バルク材を100Kまで冷却し、16Tの磁場を印加した後、更に30Kまで冷却し、その後、磁場を低下させながら、超電導バルク材の温度、ホ-ル素子を用いての超電導材表面上の磁場を測定した。
その結果、超電導バルク材の捕捉磁場は、Sm211相の含有量が10%,20%,30%及び40%の試料においてそれぞれ10T,13T,13T及び10Tと高い値が得られた。
【0061】
一方、人工孔を施して低融点金属による真空処理を行わなかった試料についても上記調査を行ったが、これらの試料の捕捉磁場は、Sm211相含有量が10%,20%,30%及び40%の試料においてそれぞれ1T,1T, 0.5T及び 0.5Tであった。
【0062】
以上のように、人工孔を施して内部にアルミニウム棒を設置した後に低融点金属を含浸処理した試料は、この処理を施していないものと比べ、全てにおいて比較的大きな捕捉磁場が得られた。
試験後の顕微鏡観察によって、孔の内部はアルミニウム棒とバルク材の間に低融点金属が充満し、かつ孔近傍の内部微小クラックにも低融点金属が充満していることか分かった。
【0063】
〔実施例6〕
YBa2Cu3y 超電導体内にY2 BaCuO5 相をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料のそれぞれに対し、更にAgを10重量%含有させた試料を、溶融法により作製した。
溶融条件は、YBa2Cu3y 素材を1050℃に20分加熱した後、1000℃まで30分で冷却し、その後YBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの冷却速度で冷却する条件を採用した。
そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で400℃において250時間の酸素アニ-ルを行った。
【0064】
次いで、上記各超電導バルク材にドリルで人工貫通孔(直径が 0.8mm)を穿設した。なお、孔はバルク材のc軸方向の中心部分と外周との間に3箇所設けた。
続いて、穿設したそれぞれの人工貫通孔の内部にアルミニウム棒(軟らかい針金状のもので直径が 0.7mm)を挿入し、その端を外部にさらした状態とした。
【0065】
この超電導バルク材をシラン系カップリング剤{R′Si(OR)3 :R′は有機官能基,ORは無機官能基}に浸し、真空槽中で 6.7×10-2 Pa の減圧状態にした後、大気圧とした。そして、乾燥炉に入れて乾燥させた。
【0066】
上記超電導バルク材を100℃まで余熱し、同じく100℃の57%Bi-17%Sn-26%Inの組成を持つ液状金属をバルク材の底部に液体が溜まるように流し込んでから真空槽中で 6.7×10-2 Pa まで減圧した後、 0.3MPaまで加圧した。そして、常温(20℃)まで温度を低下させ、液状金属を固化した。
【0067】
次に、これらの超電導バルク材を100Kまで冷却し、13Tの磁場を印加した後、更に50Kまで冷却し、その後、磁場を低下させながら、超電導バルク材の温度、ホ-ル素子を用いての超電導材表面上の磁場を測定した。
その結果、超電導バルク材の捕捉磁場は、Y211相の含有量が0%,10%,20%,30%及び40%の試料においてそれぞれ5T,8T,7T及び5Tと高い値が得られた。
【0068】
一方、人工孔を施して低融点金属による真空処理を行わなかった試料についても上記調査を行ったが、これらの試料の捕捉磁場は、Y211相含有量が20%,30%及び40%の試料においてそれぞれ1T,2T,及び 1.5Tであった。
【0069】
以上のように、人工孔を施して内部にアルミニウム棒を設置した後に低融点金属を含浸処理した試料は、この処理を施していないものと比べ、全てにおいて比較的大きな捕捉磁場が得られた。
試験後の顕微鏡観察によって、孔の内部はアルミニウム棒とバルク材の間に低融点金属が充満し、かつ孔近傍の内部微小クラックにも低融点金属が充満していることか分かった。
また、機械的強度も、低融点金属による真空処理によって同時に向上することも確認された。
【0070】
【発明の効果】
以上に説明した如く、本発明によれば、比較的短い処理時間でもって能率良く高い捕捉磁場を確保することができる高温超電導バルク材製超電導磁石を安定提供することができ、例えば磁気浮上列車,フライホイ-ル電力貯蔵用超電導軸受,磁気分離装置等の如きバルク高温超電導体を応用する機器類の性能向上に大きく寄与することが期待できるなど、産業上極めて有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高温超電導バルク材製超電導磁石の一例に関する断面の説明図である。
図面
【図1】
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