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明細書 :鉄道車両用車体の曲げ振動抑制方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4188008号 (P4188008)
公開番号 特開2004-017842 (P2004-017842A)
登録日 平成20年9月19日(2008.9.19)
発行日 平成20年11月26日(2008.11.26)
公開日 平成16年1月22日(2004.1.22)
発明の名称または考案の名称 鉄道車両用車体の曲げ振動抑制方法
国際特許分類 B61D  17/04        (2006.01)
B61D  37/00        (2006.01)
FI B61D 17/04
B61D 37/00 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2002-176626 (P2002-176626)
出願日 平成14年6月18日(2002.6.18)
審査請求日 平成16年7月30日(2004.7.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】富岡 隆弘
【氏名】前橋 栄一
【氏名】瀧上 唯夫
【氏名】青木 淳
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】西中村 健一
参考文献・文献 特開昭55-004219(JP,A)
実開平04-046936(JP,U)
実開昭57-013367(JP,U)
実開昭59-076429(JP,U)
実公昭37-019601(JP,Y1)
実公昭47-032328(JP,Y1)
特開平11-208533(JP,A)
調査した分野 B61D 17/04、10、12
B61D 37/00
B62D 31/02
F16F 7/00-14
F16F 15/00-36
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄道車両用車体10の剛性低下に伴う車体上下曲げ振動を、該車体の屋根構造体11と床構造体13とを結ぶポール25を取り付けることにより抑制する方法であって、
前記屋根構造体11と前記床構造体13間とを車体側板17を経由して結ぶ、前記側板17に沿うポール25を設け
前記車体の側板17の変形を抑制することを特徴とする鉄道車両用車体の曲げ振動抑制方法。
【請求項2】
前記屋根構造体がクーラー枠であることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用車体の曲げ振動抑制方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両用車体の上下曲げ振動を抑制する方法に関する。特には、車体への比較的簡単な部材追加で上下曲げ振動を抑制することのできる方法に関する。
【0002】
【背景技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、鉄道車両の軽量化が進んでおり、これに伴って鉄道車両用車体の剛性が低下する傾向がある。車体の剛性が低下すると、車体の弾性振動(上下曲げ振動)の発生が顕著となる。このような弾性振動は、乗客数の増減によって発生具合が変化するが、人間が最も敏感な周波数帯域において発生する場合も多く、乗り心地悪化の原因にもなっている。これに対し、現状では、車体に粘弾性層と拘束層からなる制振材を貼付したり、アクティブあるいはセミアクティブ制御を行なう等をして、車体の弾性振動を低減することが提案されており、現在も研究が進められている。なお、車体に制振材を付加して弾性振動の低減を図る事例は、既に新幹線で実用化されている(鈴木康文らによる『鉄道車両の車体曲げ振動の制振法』、No.97-1、日本機械学会第74期通常総会講演会講演論文集(I)、pp.691~692参照)。
【0003】
以下、図面を参照しつつ、鉄道車両用車体の上下曲げ振動についてより詳しく説明する。
図4は、鉄道車両用車体の弾性振動の発生状態を説明するための模式図である。
鉄道車両用車体は、前述のように軽量化で剛性が低下すると、図4に示すように屋根105と床106が互いに逆向きに曲がる振動が起こり易くなる。さらに、屋根105と床106が別々に振動する等、複雑な振動が生じる場合もある。屋根105と床106が相対変位振動(異なる変形形状や位相差をもつ振動)したり、車体各部が局所的に振動したりすると、著しい乗り心地低下が引き起こされるため、その対策が望まれている。
【0004】
本発明は、前述の課題を解決するためになされたものであって、車体への比較的簡単な部材追加で上下曲げ振動を抑制することのできる鉄道車両用車体の曲げ振動抑制方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明に関連する鉄道車両用車体の曲げ振動抑制方法は、鉄道車両用車体の剛性低下に伴う車体上下曲げ振動を、該車体の屋根構造体と床構造体とを結ぶ連結部材を取り付けることにより抑制する方法であって、 前記屋根構造体と前記床構造体との間を結ぶスタンションポールを設けることを特徴とする。
【0006】
スタンションポールを車体の屋根-床間に設置すると、このスタンションポールによって車体の剛性が向上し、上下曲げ振動(複雑な局所変形)が抑制される。したがって、車両の乗り心地の悪化を低減できる。設置後のスタンションポールは、本来の目的通りに乗客の掴まる柱として使用できる。このような方法は、スタンションポールの既存車両への設置が容易で安価であるという利点もある。
【0007】
本発明に関連する他の鉄道車両用車体の曲げ振動抑制方法は、鉄道車両用車体の剛性低下に伴う車体上下曲げ振動を、該車体の屋根構造体と床構造体とを結ぶ連結部材を取り付けることにより抑制する方法であって、 前記連結部材に振動減衰作用を持つ要素(以下、ダンパ)を設けることを特徴とする。
ダンパにより、振動エネルギを吸収することができる。また、ダンパ特性に応じて、エネルギ減衰率を変化させたり固定させたりすることもできる。ダンパとしては、粘性流体や粘弾性体を用いたもののほか、摩擦式や電磁粉体クラッチ式等のものを用いることができる。このような方法も、既存車両への設置が容易で安価である。
【0008】
本発明の鉄道車両用車体の曲げ振動抑制方法は、 鉄道車両用車体10の剛性低下に伴う車体上下曲げ振動を、該車体の屋根構造体11と床構造体13とを結ぶポール25を取り付けることにより抑制する方法であって、 前記屋根構造体11と前記床構造体13間とを車体側板17を経由して結ぶ、前記側板17に沿うポール25を設け 前記車体の側板17の変形を抑制することを特徴とする。
この方法においても、前述と同様に車体の上下曲げ振動を抑制でき、車両の乗り心地の悪化を低減できる。
【0009】
本発明の鉄道車両用車体の曲げ振動抑制方法においては、前記車体の側構造体の変形を抑制することができる。
この場合、車体の上下曲げ振動を抑制できるとともに、車体の側構造体の変形も抑制できる。
【0010】
本発明の鉄道車両用車体の曲げ振動抑制方法においては、前記屋根構造体がクーラー枠であるものとすることができる。
クーラー枠は屋根構造体の強度部材であるため、スタンションポールや車体側壁のポールを、車体の屋根-床間で突っ張った状態でしっかりと支持できる。
【0011】
本発明の鉄道車両用車体の曲げ振動抑制方法においては、前記振動減衰作用を持つ要素として粘弾性ダンパを用いることができる。あるいは、前記振動減衰作用を持つ要素として粉体ダンパを用いることができる。
粘弾性ダンパを用いる場合は、通常のオイルダンパを用いるものに比べ、メンテナンスフリー、低コストとなる利点が得られる。なお、このような要素(ダンパ)としては、粘性流体を用いたもの、摩擦式や電磁粉体クラッチ式等、減衰効果を有する他の様々なものも用いることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る鉄道車両用車体の斜視図である。
図2は、同車体の正面断面図である。
図3は、同車体の連結部材の粘弾性ダンパを示す拡大図である。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、レールの長手方向(車両の進行方向)を前後方向、軌道面におけるレール長手方向と直角の方向を左右方向、軌道面に垂直な方向を上下方向と呼ぶ。
【0013】
図1に示す鉄道車両の車体10は、屋根(屋根構造体)11、床(床構造体)13、及び、前後左右の側板15~18を備えている。なお、図1及び図2には図示されていないが、床13の前後下面にはそれぞれ台車が設けられる。さらに、車体10が中間車両の場合は、前後の側板15、16に通路が設けられる。この車体10自体の構造は、従来より使用されているものと同様である。
【0014】
図1に示すように、屋根11のほぼ中央部には、車内冷房用クーラーC(図2参照)を取り付けるためのクーラー枠12が設けられている。
左右の側板17、18には、窓Wが取り付けられている。図2に示すように、窓Wの下側には座席シートSが設けられている。座席シートSの両側には、着座区分の羽目板19が取り付けられている。なお、この羽目板19の強度部材としての役割については後述する。
【0015】
本実施の形態の車体10においては、屋根11と床13間に、以下に述べる各連結部材21、23、25、27が設置されている。
連結部材(スタンションポール)21は、上端がクーラー枠12内側の屋根11に固定されており、下端が床13に固定されている。このスタンションポール21は、屋根11-床13間で突っ張った状態でしっかりと支持されている。スタンションポール21は、乗客が掴まり易いよう、円形のパイプ材で形成するのが好ましい。このスタンションポール21によって、車体10の剛性が向上し、車体10の弾性振動が効果的に抑制される。
【0016】
なお、スタンションポール21の上端は、クーラー枠12内のクーラーCに直接固定し、クーラーCの自重を支えるようにしてもよい。さらに、オプショナル荷重を支えるだけの場合は、ターンバックル状にして伸縮可能とすれば、不要時には取り外して座席S下側等に収納することもできる。
【0017】
連結部材23は、上端が屋根11に固定されており、下端が床13に固定されている。この例では、各連結部材23は上下に2分割された異径パイプであり、その連結部分に粘弾性ダンパ31が設けられている。この粘弾性ダンパ31は、図3に示すように、大径(メス側)の上パイプ23aと、小径(オス側)の下パイプ23bとの間に介装された粘弾性層である。粘弾性体を用いることにより、通常のオイルダンパを用いるものに比べ、メンテナンスフリー、低コストとなる利点が得られる。但し、ダンパ31としては、粘弾性ダンパのほかに、粘性流体を用いたもの、摩擦式や電磁粉体クラッチ式等、減衰効果を有する他の様々なものを用いることができる。
【0018】
この連結部材23は、粘弾性ダンパ31の作用によって振動エネルギを吸収することができる。また、ダンパ特性に応じてエネルギ減衰率を変化させたり固定させたりすることもできる。
【0019】
なお、図1に示す例では、連結部材(スタンションポール)21は車体10中央部に、連結部材23は車体10前後端寄りに設置されているように描かれているが、これら連結部材21、23は、実際には車体10の屋根11-床13間の相対変位が大きくなる位置に取り付けるものとする。各連結部材21、23は、相対変位が大きくなる位置に応じて、一つの車体10につき1個でも複数個でも設置できる。これら連結部材21、23によって、車体10の弾性振動を効果的に抑制することができる。あるいは、スタンションポール21や連結部材23は、車体10の床下にモータやエンジンのある箇所に関連付けて設置することもできる。
【0020】
連結部材(ポール)25は、屋根11のクーラー枠12と床13間とを側板17、18を経由して結ぶように取り付けられている。このポール25は、窓Wの中央部の補強部材としての役割も兼ねる。ポール25の下端は、車体10の側構造体のすそ部にまで延びている。このポール25によって、側板17、18の変形が抑制され、車体10の剛性が向上して車体10の上下曲げ振動が抑制される。
なお、ポール25の下端は、車体10に備わっている側構造体の変形抑制用のパイプ材や骨材に結合してもよい。
【0021】
前述の羽目板19の背側端縁は、ポール25に接合されている。羽目板19の下端部は、ポール25の下端部(あるいは側構造体の変形抑制用のパイプ材や骨材)に結合されている。このような羽目板19によっても、車体10の剛性が向上するとともに、側板17、18の変形が抑制される。なお、座席がロングシートではなくボックスシートの場合は、座席背もたれ板に羽目板19と同様の役割をさせることができる。
【0022】
連結部材27は、羽目板19外周の着座区分用パイプの上端が延長され、屋根11のクーラー枠12に固定されたものである。連結部材27の下端は、前述のポール25に接合されている。この連結部材27によっても車体10の剛性が向上し、車体10の上下曲げ振動が抑制される。なお、設置後の連結部材27は、スタンションポール21と同様に、乗客の掴まる柱として使用することができる。
【0023】
これらの連結部材21、23、25、27は、車体10を大幅に改造することなく、既存の車体に比較的容易に追設できる。そして、これらの連結部材21、23、25、27で車体10の上下曲げ振動が抑制されるので、乗り心地の悪化を低減することができる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、車体の剛性を向上して上下曲げ振動を抑制し、乗り心地の悪化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る鉄道車両用車体の斜視図である。
【図2】同車体の正面断面図である。
【図3】同車体の連結部材の粘弾性ダンパを示す拡大図である。
【図4】鉄道車両用車体の弾性振動の発生状態を説明するための模式図である。
【符号の説明】
10 車体
11 屋根(屋根構造体) 12 クーラー枠
13 床(床構造体) 15~18 側板
19 羽目板 21、23、25、27 連結部材
23a 上パイプ 23b 下パイプ
31 粘弾性ダンパ C クーラー
W 窓 S 座席
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3