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明細書 :耐摩耗性を有する炭素系焼結すり板材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4198419号 (P4198419)
公開番号 特開2004-076098 (P2004-076098A)
登録日 平成20年10月10日(2008.10.10)
発行日 平成20年12月17日(2008.12.17)
公開日 平成16年3月11日(2004.3.11)
発明の名称または考案の名称 耐摩耗性を有する炭素系焼結すり板材料
国際特許分類 C22C   1/05        (2006.01)
B60L   5/08        (2006.01)
C22C   9/00        (2006.01)
FI C22C 1/05 U
B60L 5/08 A
C22C 9/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2002-237895 (P2002-237895)
出願日 平成14年8月19日(2002.8.19)
審査請求日 平成17年4月8日(2005.4.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000222842
【氏名又は名称】東洋炭素株式会社
発明者または考案者 【氏名】久保 俊一
【氏名】土屋 広志
【氏名】池内 実治
【氏名】半田 和行
【氏名】野崎 秀彦
【氏名】寺岡 利雄
【氏名】大西 吉久
個別代理人の代理人 【識別番号】100089196、【弁理士】、【氏名又は名称】梶 良之
【識別番号】100104226、【弁理士】、【氏名又は名称】須原 誠
審査官 【審査官】本多 仁
参考文献・文献 特開平06-172029(JP,A)
特開昭62-112744(JP,A)
特開昭60-238402(JP,A)
調査した分野 C22C 1/05
B60L 5/08
C22C 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素粉末35~50重量部と、銅粉末65~50重量部とを混合、成形後、前記成形したものを1000℃で焼成することにより得られた炭素-銅複合材料によって形成され、
前記炭素-銅複合材料は、X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.35~0.345nmのものであり、
嵩密度が2.7~3.5g/cmで、曲げ強さが100MPa以上で、電気比抵抗が1.5μΩ・m以下である耐摩耗性を有する炭素系焼結すり板材料。
【請求項2】
前記銅粉末が平均粒径1~25μmである請求項1に記載の耐摩耗性を有する炭素系焼結すり板材料。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気車のパンタグラフに取り付けられる耐摩耗性を有する集電用炭素系焼結すり板材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気車のパンタグラフに用いられるすり板は金属系材料が使用されていたが、架線の摩耗が著しいことなどにより、より摺動性に優れた炭素系材料に移行しつつある。
【0003】
これらの炭素系材料は、主に銅などの金属と複合化させることにより、架線の摩耗を低減することの他、すり板自身も摩耗量の少ないものが望まれている。
【0004】
焼結タイプのすり板は、銅を溶融、黒鉛内に含浸させるいわゆる含浸タイプのすり板に比べ、摩耗量が多くなるといわれており、焼結タイプでのすり板の使用は一部の電車路線に限定されるものであった。
【0005】
これらを改善するために、例えば、特開平5-287318号公報には、金属粉末、窒化ホウ素粉末、炭素粉末らを混合、成形、焼成してなる炭素系集電摺動材で、窒化ホウ素を0.2~8%混合することにより耐摩耗性が向上するものが開示されている。しかしながら、窒化ホウ素は絶縁材料であり、添加率増加とともに、電気比抵抗値が増加する傾向が見られ、集電性能の低下につながるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低摩耗で低抵抗の耐摩耗性を有する炭素系焼結すり板材料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究の結果、炭素比が増加すると、摩耗量が低下すること、この炭素粉末の黒鉛化度が摩耗量に影響を及ぼすことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の耐摩耗性を有する炭素系焼結すり板材料は、炭素粉末35~50重量部と、銅粉末65~50重量部とを混合、成形後、前記成形したものを1000℃で焼成することにより得られた炭素-銅複合材料によって形成され、前記炭素-銅複合材料は、X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.35~0.345nmのものであり、嵩密度が2.7~3.5g/cmで、曲げ強さが100MPa以上で、電気比抵抗が1.5μΩ・m以下である。また、前記銅粉末が平均粒径1~25μmであるものである。
【0009】
炭素粉末の黒鉛化度を調整し、X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.35~0.345nmの炭素骨格とすることによって、従来の炭素系焼結すり板材料の摩耗量に比べ、同等以下とできる。また、平均粒径が1~25μmの銅粉末を使用することにより、曲げ強さ100MPa以上、電気比抵抗を1.5μΩ・m以下とできる。すなわち、炭素粉末の黒鉛化度の最適化と銅粉末の粒径を細かくすることで、低摩耗、低抵抗の炭素系焼結すり板材料とすることができる。
【0010】
本発明に使用される炭素原料としては、コークス、ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ等が用いられ、特にコークスが好ましい。
【0011】
また、銅粉末には、電解銅粉末、アトマイズド銅粉末のいずれをも使用することができるが、電解銅粉末はすり板の強度を向上させることができるので好ましい。アトマイズド銅粉末が球状であるのに対し、電解銅粉は樹枝状であるため、同一配合比の場合、炭素粉末とのからみが良く、かつ銅粉末同士の平均距離も近いので、機械的強さの向上、電気比抵抗の低減に効果的であるからである。
【0012】
また、炭素粉末と銅粉末の比率は、焼成後の嵩密度が2.7~3.5g/cm3の範囲になるように混合される。また、銅粉末以外にも、チタン、鉄、ニッケル、スズ、モリブデン、コバルト、クロム、タングステン、銀等2%未満の金属元素の他、TiC、TiN、SnO等の化合物、カーボンナノチューブ、天然黒鉛、人造黒鉛等を添加することもできる。
【0013】
また、炭素のX線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.35nmより大きい場合は、自己潤滑性に乏しく、摩耗量が増加する。また、X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.345nmよりも小さい場合は、黒鉛化構造が発達し始めて柔らかくなり、摩耗量が増加する。
【0014】
ここで、炭素のX線回折法による炭素のd(002)面間隔を0.35~0.345nmに調整するためには、炭素粉末を600~1400℃で焼成することにより達成できる。
【0015】
また、曲げ強さが100MPa未満の場合は摩耗量が増加する。これは、耐摩耗性に寄与する炭素部分の脱落が起こりやすいためであると考えられる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0017】
(実施例1)
X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.348nmの炭素粉末とバインダの計50重量部と平均粒径3μmの電解銅粉末50重量部をハイスピードミキサーで混合し、金型にて3500kg/cm2の圧力で140×200×30mmに成形後、非酸化性雰囲気下、1000℃にて焼成した。得られた試料のかさ密度は2.8g/cm3、電気比抵抗1.5μΩ・m、曲げ強さ115MPaであった。なお、電気比抵抗はJIS R 7202により測定した。また、曲げ強さは3点曲げ試験により測定した。この試料を室温にて20A直流条件下、400~800rpmの回転速度で回転するφ310mmの銅円板に接触させて30分間摺動試験を行い、重量変化から摩耗量を測定した。この際、回転体と試料との間で電流の流れない非接触時間を離線率とし、離線率5%及び10%の時の摩耗量を測定した。各摩耗量は、それぞれ2.9cm3/kgf/万km、9.5cm3/kgf/万kmであった。
【0018】
(実施例2)
X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.348nmの炭素粉末とバインダの計40重量部と平均粒径3μmの電解銅粉末60重量部をハイスピードミキサーで混合し、金型にて3500kg/cm2の圧力で140×200×30mmに成形後、非酸化性雰囲気下、1000℃にて焼成した。得られた試料のかさ密度は3.3g/cm3、電気比抵抗0.8μΩ・m、曲げ強さ111MPaであった。この試料を実施例1と同様に、室温にて20A直流条件下、400~800rpmの回転速度で回転するφ310mmの銅円板に接触させて30分間摺動試験を行い、重量変化から摩耗量を測定した。この際、回転体と試料との間で電流の流れない非接触時間を離線率とし、離線率5%及び10%の時の摩耗量を測定した。各摩耗量は、それぞれ5.1cm3/kgf/万km、12.0cm3/kgf/万kmであった。
【0019】
(実施例3)
X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.347nmの炭素粉末とバインダの計42重量部と平均粒径15μmの電解銅粉末58重量部をハイスピードミキサーで混合し、金型にて3500kg/cm2の圧力で140×200×30mmに成形後、非酸化性雰囲気下、1000℃にて焼成した。得られた試料のかさ密度は3.0g/cm3、電気比抵抗1.3μΩ・m、曲げ強さ105MPaであった。この試料を実施例1と同様に、室温にて20A直流条件下、400~800rpmの回転速度で回転するφ310mmの銅円板に接触させて30分間摺動試験を行い、重量変化から摩耗量を測定した。この際、回転体と試料との間で電流の流れない非接触時間を離線率とし、離線率5%及び10%の時の摩耗量を測定した。各摩耗量は、それぞれ5.0cm3/kgf/万km、9.1cm3/kgf/万kmであった。
【0020】
(実施例4)
X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.348nmの炭素粉末とバインダの計35重量部と平均粒径15μmの電解銅粉末65重量部をハイスピードミキサーで混合し、金型にて3500kg/cm2の圧力で140×200×30mmに成形後、非酸化性雰囲気下、1000℃にて焼成した。得られた試料のかさ密度は3.5g/cm3、電気比抵抗0.6μΩ・m、曲げ強さ100MPaで、であった。この試料を実施例1と同様に、室温にて20A直流条件下、400~800rpmの回転速度で回転するφ310mmの銅円板に接触させて30分間摺動試験を行い、重量変化から摩耗量を測定した。この際、回転体と試料との間で電流の流れない非接触時間を離線率とし、離線率5%及び10%の時の摩耗量を測定した。各摩耗量は、それぞれ6.1cm3/kgf/万km、12.0cm3/kgf/万kmであった。
【0021】
(比較例1)
X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.339nmの炭素粉末とバインダの計50重量部と平均粒径30μmの電解銅粉末50重量部をハイスピードミキサーで混合し、金型にて3500kg/cm2の圧力で140×200×30mmに成形後、非酸化性雰囲気下、1000℃にて焼成した。得られた試料のかさ密度は2.7g/cm3、電気比抵抗3.7μΩ・m、曲げ強さ83MPaであった。この試料を実施例1と同様に、室温にて20A直流条件下、400~800rpmの回転速度で回転するφ310mmの銅円板に接触させて30分間摺動試験を行い、重量変化から摩耗量を測定した。この際、回転体と試料との間で電流の流れない非接触時間を離線率とし、離線率5%及び10%の時の摩耗量を測定した。各摩耗量は、それぞれ12.0cm3/kgf/万km、20.1cm3/kgf/万kmであった。
【0022】
(比較例2)
X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.347nmの炭素粉末とバインダの計28重量部と平均粒径3μmの電解銅粉末72重量部をハイスピードミキサーで混合し、金型にて3500kg/cm2の圧力で140×200×30mmに成形後、非酸化性雰囲気下、1000℃にて焼成した。得られた試料のかさ密度は3.8g/cm3、電気比抵抗0.4μΩ・m、曲げ強さ95MPaで、であった。この試料を実施例1と同様に、室温にて20A直流条件下、400~800rpmの回転速度で回転するφ310mmの銅円板に接触させて30分間摺動試験を行い、重量変化から摩耗量を測定した。この際、回転体と試料との間で電流の流れない非接触時間を離線率とし、離線率5%及び10%の時の摩耗量を測定した。各摩耗量は、それぞれ10.4cm3/kgf/万km、22.0cm3/kgf/万kmであった。
【0023】
(比較例3)
X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.353nmの炭素粉末とバインダの計40重量部と平均粒径3μmの電解銅粉末60重量部をハイスピードミキサーで混合し、金型にて3500kg/cm2の圧力で140×200×30mmに成形後、非酸化性雰囲気下、1000℃にて焼成した。得られた試料のかさ密度は3.4g/cm3、電気比抵抗0.8μΩ・m、曲げ強さ90MPaであった。この試料を実施例1と同様に、室温にて20A直流条件下、400~800rpmの回転速度で回転するφ310mmの銅円板に接触させて30分間摺動試験を行い、重量変化から摩耗量を測定した。この際、回転体と試料との間で電流の流れない非接触時間を離線率とし、離線率5%及び10%の時の摩耗量を測定した。各摩耗量は、それぞれ10.7cm3/kgf/万km、25.0cm3/kgf/万kmであった。
【0024】
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0025】
【表1】
JP0004198419B2_000002t.gif【0026】
表1よりわかるように、X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.35~0.345nmの範囲にある実施例1~4の試料は、比較例1~3の試料よりも離線率が5%及び10%のいずれの場合も摩耗量が低減していることがわかる。
【0027】
【発明の効果】
本発明の耐摩耗性を有する炭素系焼結すり板材料は、以上のように構成されており、X線回折法による炭素のd(002)面間隔が0.35~0.345nmの範囲となるように調整することによって、集電容量を低下させることなく、低摩耗、高強度、低抵抗の耐摩耗性を有する炭素系焼結すり板とすることができる。