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明細書 :地下水に海水を含有する漏水中の地下水分の最大流量の予測方法および予測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4065163号 (P4065163)
公開番号 特開2004-077366 (P2004-077366A)
登録日 平成20年1月11日(2008.1.11)
発行日 平成20年3月19日(2008.3.19)
公開日 平成16年3月11日(2004.3.11)
発明の名称または考案の名称 地下水に海水を含有する漏水中の地下水分の最大流量の予測方法および予測装置
国際特許分類 G01F   1/00        (2006.01)
E21F  16/00        (2006.01)
FI G01F 1/00 H
E21F 16/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2002-240375 (P2002-240375)
出願日 平成14年8月21日(2002.8.21)
審査請求日 平成16年12月8日(2004.12.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】坂井 宏行
個別代理人の代理人 【識別番号】100085394、【弁理士】、【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
審査官 【審査官】横林 秀治郎
参考文献・文献 特開2001-141545(JP,A)
特開昭51-027960(JP,A)
調査した分野 G01F1/00-1/30;1/34-1/54;3/00-9/02
特許請求の範囲 【請求項1】
地下水に海水を含有する漏水中の地下水分の最大流量を予測する方法であって、海水の希釈割合と漏水流量とから、
[希釈割合]=α×[漏水流量]+β (1)
[希釈割合]×[漏水流量]=k (2)
α、β、kは何れも定数
の各関係式(1)および(2)を求め、関係式(1)の希釈割合にゼロの値を算入したときに算出される漏水流量の値から、関係式(2)の希釈割合に海水が非希釈状態である場合の値を算入したときに算出される漏水流量の値を差し引いた値を、漏水中の地下水分の最大流量の予測値であるとすることを特徴とする地下水に海水を含有する漏水中の地下水分の最大流量の予測方法。
【請求項2】
地下水に海水を含有する漏水中の地下水分の最大流量を予測する装置であって、海水の希釈割合と漏水流量とから、
[希釈割合]=α×[漏水流量]+β (1)
[希釈割合]×[漏水流量]=k (2)
α、β、kは何れも定数
の各関係式(1)および(2)を求める手段と、関係式(1)の希釈割合にゼロの値を算入したときに算出される漏水流量の値から、関係式(2)の希釈割合に海水が非希釈状態である場合の値を算入したときに算出される漏水流量の値を差し引いた値を、漏水中の地下水分の最大流量の予測値であるとする手段とを備えて構成されるものであることを特徴とする地下水に海水を含有する漏水中の地下水分の最大流量の予測装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海底トンネル等の地下構造物のように海底や海岸近傍にあって、地下水に海水を含有する漏水がある場合に、該下水に海水を含有する漏水中地下水分の最大流の予測方法および予測装置の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来技術】
こんにち、地下水面や海面より低い位置にトンネルやボックスカルバート等の地下構造物を築造することが頻繁に行われ、このような地下構造物では、漏出した水の自然排水ができない場合が多く、このときには地下構造物の水没を避けるため漏出した水を動力ポンプを使って地上に汲み上げて排出することが要求される。この様な地下構造物における漏水の要因には地下水と海水との存在があげられるが、漏水中の海水分流量は、海水が海底下から地下構造物までしみ込む速度が一定であることから変化がほとんどないのに対し、地下水分流量は、梅雨や台風による集中的な大雨や逆に渇水等の自然環境(特に雨量)に左右されることもあって、緩慢ではあるが変化する。
ところでこのような地下構造物に漏出する地下水に海水を含有する漏水(以下「海水含有漏水」という)を動力ポンプを用いて排出する場合、地下構造物での最大および最小漏水流量が判れば、これに合わせた排水能力を有する動力ポンプを採用することができるが、従来、最大および最小漏水流量を予測する簡便な手段はなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そして、このような最大および最小の漏水流量の予測は、非常に面倒で緻密な水位観測を行った後、該観測結果に基づいて複雑な水理学的計算を行って求めているのが実情で、特に漏水箇所が何箇所もあるような場合、いちいちこれら漏水箇所ごとに最大および最小の漏水流量の予測をすることは事実上困難であった。そこで従来は、過去に測定した漏水流量の測定値に基づき、経験的に求めた安全係数(安全率)を乗じたものを最大の漏水流量であると予測するという手法を採用することもあるが、このような予測には確証がないことから不安が残り、このため、どうしても予測値を超えた能力のある動力ポンプを設置してしまうというのが現実であって、能力過剰ぎみで、設備投資の無駄となる一方で、万一、能力が過小であった場合には地下構造物が漏水によって埋没してしまうという問題が生じ、ここに本発明が解決せんとする課題がある。
さらにこのような漏水管理をする場合、漏水中の海水分流量、漏水中の地下水分の最大および最小流量の予測値が判れば、これらに基づいたきめ細かい漏水管理をすることができる。つまり漏水中の海水分流量を知ることができるということは、地下構造物に使用されている材料が、海水に含有される塩化物イオン等の劣化促進物によって受ける劣化度合の指標とすることも可能で、これを知ることは地下構造物の補修管理等に役立つことになる。一方、漏水中の地下水分の最小および最大流量を知ることができれば、地盤の状態や地下水流路の概要把握、地下水位の間接的な観測等ができ、これによって土砂災害の予知等に寄与できることになる。しかしながら従来、これらの値を知ることは難しく、そこでこれらについても簡便に算出できることが要求され、ここにも本発明が解決せんとする課題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、地下水に海水を含有する漏水中の地下水分の最大流量を予測する方法であって、海水の希釈割合と漏水流量とから、
[希釈割合]=α×[漏水流量]+β (1)
[希釈割合]×[漏水流量]=k (2)
α、β、kは何れも定数
の各関係式(1)および(2)を求め、関係式(1)の希釈割合にゼロの値を算入したときに算出される漏水流量の値から、関係式(2)の希釈割合に海水が非希釈状態である場合の値を算入したときに算出される漏水流量の値を差し引いた値を、漏水中の地下水分の最大流量の予測値であるとすることを特徴とする地下水に海水を含有する漏水中の地下水分の最大流量の予測方法である。
請求項2の発明は、地下水に海水を含有する漏水中の地下水分の最大流量を予測する装置であって、海水の希釈割合と漏水流量とから、
[希釈割合]=α×[漏水流量]+β (1)
[希釈割合]×[漏水流量]=k (2)
α、β、kは何れも定数
の各関係式(1)および(2)を求める手段と、関係式(1)の希釈割合にゼロの値を算入したときに算出される漏水流量の値から、関係式(2)の希釈割合に海水が非希釈状態である場合の値を算入したときに算出される漏水流量の値を差し引いた値を、漏水中の地下水分の最大流量の予測値であるとする手段とを備えて構成されるものであることを特徴とする地下水に海水を含有する漏水中の地下水分の最大流量の予測装置である。
そして請求項1、2の発明のようにすることで、地下水に海水を含有する漏水中の地下水分の最大流量の予測が簡単にできることになる。
【0005】
【発明の実施の形態】
ところで本発明を実施するにあたり、地下構造物において漏出する海水含有漏水の流量は、地下水分の流量と海水分の流量との和、つまり
[漏水流量]=[地下水分流量]+[海水分流量] (3)
としてあらわされるが、このうちの地下水分流量は前述したように自然環境等により変化するのに対し、海水分量は海底からほぼ一定量が漏出するものと考えられることから、海水含有漏水は、海水と地下水との単純な希釈律に支配されていると予測される。このことは、海水が漏水によって希釈される割合、つまり海水の希釈割合(希釈度、希釈率)は、前記式(3)で算出される漏水流量に反比例することを意味する。一方、この希釈割合は、例えば漏水中の海水由来成分の濃度であらわすことができ、これを、海水由来成分のひとつであるナトリウムイオンの濃度と漏水流量との関係として式にあらわすと、
[ナトリウムイオン濃度]=k/[漏水流量] (4)
kは定数
としてあらわされることになり、この反比例式(4)の曲線を図2に示す。
【0006】
一方、海水含有漏水の流量と該漏水中の海水由来成分のひとつであるナトリウムイオン濃度との関係を実際に測定して調べたところ、本発明の発明者は、これらが一次の関係式に近似できることを見出し、このことについては既に特開2001-141545号公報により公知となっている。つまり、
[ナトリウムイオン濃度]=α×[漏水流量]+β (5)
α、βは何れも定数
としてあらわされ、この直線を図2に示す。
【0007】
ここで関係式(4)において、ナトリウムイオン濃度がゼロになる、つまり海水に含まれたナトリウムイオンが無限に希釈されるときは、横軸である漏水流量の漸近線に無限に近づくことになって無限大になる。これに対し、関係式(5)は、ナトリウムイオン濃度と漏水流量との測定値から、これらの関係が一次の関係式にあるとして数式化されたものであり、しかも漏水流量は、関係式(3)から海水分流量と地下水分流量との和であることから、関係式(5)においてナトリウムイオン濃度をゼロとして求められる漏水流量の値、つまり「-β/α(=A)」は、その測定場所における漏水流量の最大値であると考えることができ、そこでこの値を漏水の最大流量の予測値Aとして取り扱ってもよいといえる。
【0008】
一方、前述したナトリウムイオン濃度と漏水流量との測定値を関係式(4)に算入し、最小二乗法等の適宜の近似処理を行って定数kを算出して関係式(4)を具体化する。この具体化した関係式(4)に、ナトリウムイオンの海水での濃度(ナトリウムイオンの海水での濃度は11000μg mL-1(マイクログラム ミリリットルのマイナス1乗))を算入して漏水流量Bを算出する。ここで算出した漏水流量Bは、ナトリウムイオン濃度が海水と同じ濃度、つまり地下水分流量がゼロである非希釈時のものであると仮定して算出したものであるから、純粋に地下水が混じらない海水のみの漏水流量、つまり漏水中の海水分流量の予測値Bであるとすることができる。
【0009】
一方、ここでのナトリウムイオン濃度と漏水流量との測定値の関係は、前述した関係式(5)で具体的に与えられるのであるから、上記求めた海水分流量の予測値Bを関係式(5)に算入したときに得られるナトリウムイオン濃度の値Cは、該測定位置においてこれ以上はナトリウムイオン濃度が上昇しない値、つまり海水分流量に最小の地下水分流量が混じったときの濃度値(最大濃度値)Cであることを意味する。そしてこの最大濃度値Cを、前記具体式(4)に算入して求めて算出した漏水流量の値Dは、海水分流量と最小の地下水分流量の和である、つまり漏水の最小流量の予測値Dであるとして取り扱うことができることを意味する。そしてこの場合に、前記海水分流量の予測値Bと、漏水の最小流量の予測値Dとの差(=D-B)が漏水中の地下水分の最小流量の予測値として、また前記算出された漏水の最大流量の予測値Aとの差(=A-B)が漏水中の地下水分の最大流量の予測値として取り扱うことができることになる。
そしてこのように推測して得た最大および最小の漏水流量の予測値A、Dの範囲内に、実際に測定した漏水流量の測定値の最大値、最小値の何れも入っていることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0010】
因みに、実際に濃度測定に用いる海水由来成分としては、ナトリウムイオンやカリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等の陽イオン、塩化物イオンや硫酸イオン等の陰イオンが例示される。
本発明は、さらに敷衍して漏水中の海水由来成分の濃度というものは、海水分量がそれなりに存在する場合、希釈による損失(例えば、希釈により微量になったときの吸着等による損失)を無視できるため海水成分は単純な希釈律に支配されるから、該海水由来成分の濃度は、漏水による海水の希釈割合として相対的に表すことができ、そこでこの漏水による海水の希釈割合を何らかのかたちで実際に測定できればよいことになる。ところで、海水由来成分が漏水として漏出するまでの過程で生物代謝されず、また化学変化もしなければ、海水含有漏水中の海水由来成分の濃度はそのまま漏水の電気伝導率に置き換えられると推論でき、そこでこれを立証するため、海水含有漏水中の海水由来成分の濃度と、該漏水の電気伝導率との関係を調べたところ、図8に示すように、これらは一次関数の関係になっていることを確認した。従って、漏水の電気伝導率を式(4)および(5)のナトリウムイオン濃度に置き換える(この場合、k、αおよびβの定数は当然に変わる)ことで、同様にして最大および最小の漏水流量の予測値等を算出することもできる。
【0011】
【実施例】
次に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。図1は既存の海底トンネルの概略縦断面図であって、該海底トンネルは、本坑1および作業坑2を有し、そのうちの本坑1は、トンネルの中間に向かうほど深くなるこう配変更点を有する略V字形の傾斜状態で築造されている。これに対して作業抗2は、前記本坑1の最深位置をこう配変更点として坑口に至るほど深くなるよう傾斜した略逆V字形に築造され、そして各坑口側の地上位置においてたて坑3、4が築造されている。
【0012】
そして前記本坑1の(a)~(e)位置について、漏水の流量(m-1(メートルの3乗 日のマイナス1乗))を三角ぜき法にて測定すると共に、その漏水中のナトリウムイオン濃度(μg mL-1)を測定した。図3~図7に前記各測定位置(a)~(e)におけるナトリウムイオン濃度と漏水流量との測定値をプロットしたものを示す。そしてこれら測定値から式(4)および(5)の各定数を求め、前述した算出手順に基づき最大および最小の漏水流量の予測値を算出した結果を図9に示す。また、該図9には、前記各測定位置で測定された最大および最小の漏水流量の測定値を併記するが、これらから、実際の漏水流量の測定値は、何れも最大および最小の漏水流量の予測値の範囲内にあることが確認され、本発明の信頼性が確認される。また、これらのデータから、漏水中の海水分流量の予測値、漏水中の地下水分の最大および最小流量の予測値も求めることができ、そしてこれら求めた各予測値に基づいて漏出した漏水のきめ細かい排出管理をすることができる。
【0013】
前述したようにして最大および最小の漏水流量等の各予測値を求める場合、その計算手順をソフト化してパーソナルコンピューター等の高速演算処理手段に登録しておき、そして各測定データを入力することで自動的に算出するよう構成することができ、このようにしておけば、より簡便にこれら予測値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】海底トンネルの概略縦断面図である。
【図2】予測値の算出手法を説明するためのグラフ図である。
【図3】位置(a)での測定結果を示すグラフ図である。
【図4】位置(b)での測定結果を示すグラフ図である。
【図5】位置(c)での測定結果を示すグラフ図である。
【図6】位置(d)での測定結果を示すグラフ図である。
【図7】位置(e)での測定結果を示すグラフ図である。
【図8】地下水に海水を含有する漏水のナトリウムイオン濃度と電気伝導率との関係を示すグラフ図である。
【図9】算出された最大および最小の漏水流量の予測値と実測された最大および最小の漏水流量とを示した表図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
7
【図9】
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