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明細書 :グリース充填構造及び軸受蓋

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4173342号 (P4173342)
公開番号 特開2004-124991 (P2004-124991A)
登録日 平成20年8月22日(2008.8.22)
発行日 平成20年10月29日(2008.10.29)
公開日 平成16年4月22日(2004.4.22)
発明の名称または考案の名称 グリース充填構造及び軸受蓋
国際特許分類 F16C  33/66        (2006.01)
F16N  31/00        (2006.01)
H02K   5/173       (2006.01)
H02K   7/08        (2006.01)
FI F16C 33/66 Z
F16N 31/00 B
H02K 5/173 A
H02K 7/08 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2002-286276 (P2002-286276)
出願日 平成14年9月30日(2002.9.30)
審査請求日 平成16年12月2日(2004.12.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】日比野 澄子
【氏名】鈴木 政治
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】谿花 正由輝
参考文献・文献 実開平01-096758(JP,U)
特開平09-224347(JP,A)
特開昭64-008839(JP,A)
特開昭57-033297(JP,A)
特開平03-033511(JP,A)
特開昭60-208631(JP,A)
特開平08-200379(JP,A)
特開平05-332366(JP,A)
調査した分野 F16C 33/66
F16N 31/00
H02K 5/16
H02K 5/173
H02K 7/08
特許請求の範囲 【請求項1】
軸受の外輪と内輪との間の間隙部に沿って形成された環状充填室と、
前記環状充填室の外側に拡大して形成された外側充填室と、
前記外輪の端面を抑える抑え部とを有し、
前記軸受を潤滑するためのグリースを充填する充填室を備えるグリース充填構造において、
前記環状充填室及び前記外側充填室は、前記軸受の端面側に開口部を有し、
前記外側充填室は、前記環状充填室に沿って形成されており、この環状充填室の略全周でこの環状充填室と結合し、かつ、この環状充填室の略全周で外側に拡大して形成されており、
前記外側充填室の外径は、前記外輪の外径よりも大きく形成されており
前記抑え部は、前記外側充填室を複数の領域に区画するように、この外側充填室の周方向に間隔をあけて複数形成されていること、
を特徴とするグリース充填構造。
【請求項2】
請求項1に記載のグリース充填構造において、
前記充填室は、前記環状充填室と前記外側充填室とが結合する結合部分が略同一の幅と深さで形成されていること、
を特徴とするグリース充填構造。
【請求項3】
軸受の端面に着脱自在に装着される軸受蓋であって、
請求項1又は請求項に記載のグリース充填構造を備えること、
を特徴とする軸受蓋。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、軸受を潤滑するためのグリースを充填する充填室を備えるグリース充填構造及び軸受の端面に着脱自在に装着される軸受蓋に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7は、従来の軸受蓋の外観図であり、図7(A)は平面図であり、図7(B)は図7(A)のVII-VIIB線で切断した状態を示す断面図である。
従来の軸受蓋112は、軸受の端面に着脱自在に装着される部材である。この従来の軸受蓋112は、図7に示すように、グリースを充填する充填室112aと、回転軸に固定されたカラーと嵌合する貫通孔112bと、この軸受蓋112を軸受に固定するためのボルトを挿入する貫通孔112cなどを備えている(例えば、特許文献1参照)。充填室112aは、軸受の外輪と内輪との間の間隙部に沿って形成された環状充填室112dと、この環状充填室112dに沿って形成されておりこの環状充填室112dの一部と結合する外側充填室112eと、軸受の外輪の端面を抑える抑え部112fとを備えている、このような従来の軸受蓋112では、充填室112a内に封入するグリースの量が多いほど潤滑に有効であると考えられるため、環状充填室112dの水平方向の外側に外側充填室112eを2つ形成してグリースの充填量を増加させている。
【0003】
【特許文献1】
特公昭52-27292号公報(第3頁第5欄第8行目~第25行目、図4及び図8)
【0004】
従来の軸受蓋は、環状の充填室と、この充填室の軸受側側面に形成され軸受の端面を抑える環状の隔壁と、この充填室の内径部と隔壁の内径部との間に形成された開口部とを備えている(例えば、特許文献2参照)。また、従来の軸受蓋は、これらの構成に加えて、充填室を円周方向に複数の部屋に仕切る仕切板とを備えている(例えば、特許文献3参照)。これらの従来の軸受蓋では、充填室から軸受内にグリース基油が円滑に流入するように、充填室の一部又は全部で軸受の外輪の内径に対して充填室の外径を同一又は小さく形成している。
【0005】
【特許文献2】
特開平8-210362号公報(第3頁左欄第22行目~第26行目、図2及び図4)
【特許文献3】
特開平8-338426号公報(第4頁右欄第16行目~第25行目、図4)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の軸受蓋では、グリースの封入量を増やすために、実際の設計では充填室の深さ方向を大きくしたり、環状充填室に外側充填室を部分的に結合させたりしている。しかし、充填室の深さ方向を大きくすると充填室底から軸受までの距離が長くなり、グリース基油が円滑に軸受に到達しがたくなるという問題があった。さらに、軸受蓋の大きさには実際の設計上の制約があるため、充填室の深さ方向を大きくして充填室を大きくするのには限界があった。一方、従来の軸受蓋では、充填室の一部又は全部で軸受の外輪内径に対して充填室の外径を同一又は小さく形成しなければならないという設計思想であり、この設計思想によれば充填室を大きくするのには限界があった。その結果、充填室に封入されたグリースからグリース基油を軸受に長時間供給することができず、グリースによる潤滑寿命を延ばすことができなかった。
【0007】
この発明の課題は、充填室内のグリースを有効に利用して潤滑寿命を延ばすことができるグリース充填構造及び軸受蓋を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、軸受(10,11)の外輪(10c,11c)と内輪(10d,11d)との間の間隙部に沿って形成された環状充填室(12d,13d)と、前記環状充填室の外側に拡大して形成された外側充填室(12e,13e)と、前記外輪の端面を抑える抑え部(12f,13f)とを有し、前記軸受を潤滑するためのグリースを充填する充填室(12a,13a)を備えるグリース充填構造において、前記環状充填室及び前記外側充填室は、前記軸受の端面側に開口部(12g,13g)を有し、前記外側充填室は、前記環状充填室に沿って形成されており、この環状充填室の略全周でこの環状充填室と結合し、かつ、この環状充填室の略全周で外側に拡大して形成されており、前記外側充填室の外径(R1 )は、前記外輪の外径(R2 )よりも大きく形成されており前記抑え部は、前記外側充填室を複数の領域(A1 ~A6 )に区画するように、この外側充填室の周方向に間隔をあけて複数形成されていることを特徴とするグリース充填構造である。
【0012】
請求項の発明は、請求項1に記載のグリース充填構造において、前記充填室は、前記環状充填室と前記外側充填室とが結合する結合部分(P1 ~P6 )が略同一の幅(W)と深さ(D)で形成されていることを特徴とするグリース充填構造である。
【0013】
請求項の発明は、軸受(10,11)の端面に着脱自在に装着される軸受蓋であって、請求項1又は請求項に記載のグリース充填構造を備えることを特徴とする軸受蓋(12,13)である。
【0014】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る軸受蓋を備える電動機枠体の断面図である。
電動機枠体1は、電動機を収容する部材であり、鉄道車両の駆動用電動機(主電動機)を収容する外枠などである。電動機枠体1は、図1に示すように、フレーム2と、ブラケット3,4と、回転軸5と、カラー6~9と、軸受10,11と、軸受蓋12~15などから構成されている。
【0015】
フレーム2は、図示しない電動機の固定子を固定し支持する部材であり、両端部にフランジ部2a,2bが形成されている。ブラケット3は、フレーム2と軸受蓋14とを連結する部材であり、フランジ部2aと接合するフランジ部3aが形成されている。ブラケット4は、フレーム2と軸受蓋15とを連結する部材であり、フランジ部2bと接合するフランジ部4aが形成されている。回転軸5は、図示しない電動機の回転子を固定し支持する部材であり、カラー6~9は回転軸5の両端部に嵌め込まれた円環状の部材である。軸受10,11は、回転軸5を回転自在に支持する部材であり、軸受10は深溝玉軸受であり、軸受11は円筒ころ軸受である。軸受10,11は、転動体10a,11aと、この転動体10a,11aを等間隔に保持する保持器10b,11bと、この保持器10b,11bの外側で回転する外輪10c,11cと、この保持器10b,11bの内側で回転する内輪10d,11dとから構成されている。
【0016】
図2は、この発明の第1実施形態に係る軸受蓋の平面図であり、図2(A)は図1のIIA方向から見た平面図であり、図2(B)は図1のIIB方向から見た平面図であり、図2(C)は図1のIIC方向から見た平面図であり、図2(D)は図1のIID方向から見た平面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係る軸受蓋の外観図であり、図3(A)は平面図であり、図3(B)は図3(A)のIII-IIIB線で切断した状態を示す断面図である。
【0017】
軸受蓋12~15は、軸受10,11の端面に着脱自在に装着される部材であり、アルミニウム又は鉄などからなる鋳造品や機械加工品である。軸受蓋12,13は、電動機枠体1の外側に装着される端蓋であり、軸受蓋14,15は電動機枠体1の内側に装着される油きりである。軸受蓋12は、軸受蓋14との間で軸受10を挟み込むようにボルトによって軸受蓋14に固定されており、軸受蓋13は軸受11を挟み込むようにボルトによって軸受蓋15に固定されている。軸受蓋12,13は、図2(A)(D)に示すように、いずれも略同一のグリース充填構造を備え、軸受蓋14,15は図2(B)(C)に示すように、いずれも略同一のグリース充填構造を備える。以下では、軸受蓋12,14側について説明し、軸受蓋13,15側の部分については軸受蓋12,14側の部分と対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0018】
軸受蓋12は、図3に示すように、充填室12aと貫通孔12b,12cとを備えている。充填室12aは、軸受10を潤滑するためのグリースを充填する部分であり、環状充填室(第1グリース室)12dと、外側充填室(第2グリース室)12eと、抑え部12fとを有する。充填室12aは、図3(B)に示すように、断面形状が四角形に形成されている。充填室12aは、環状充填室12dと外側充填室12eとが結合する結合部分P1 ~P6 が略同一の幅Wと深さDになるように形成されている。充填室12aは、例えば、図1に示す環状充填室12dの内周面の軸受10と接触する接触部分Sから直径方向及び深さ方向の距離が略同一となるように形成されている。
【0019】
環状充填室12dは、外輪10cと内輪10dとの間の間隙部(軸受開口部)に沿って形成された部分であり、図3に示すように貫通孔12bを囲むように円環状に形成された凹状の溝である。外側充填室12eは、環状充填室12dの外側に拡大して形成された部分であり環状充填室12dと一体に形成されている。外側充填室12eは、環状充填室12dに沿って形成されており、抑え部12fが形成された部分を除きこの環状充填室12dと略全周で結合する凹状の溝である。図1及び図3(A)に示すように、外側充填室12eの外径R1 は、外輪10cの外径R2 よりも大きく形成されている。環状充填室12d及び外側充填室12eは、図3(B)に示すように、軸受10の端面側に開口部12gを有する。抑え部12fは、外輪10cの端面を抑える部分である。抑え部12fは、図3(A)に示すように、外側充填室12eを6つの領域A1 ~A6 に区画するように、この外側充填室12eの周方向に間隔をあけて6つ形成されている。貫通孔12bは、図1に示すカラー6の外周部と嵌合する嵌合孔であり、貫通孔12cは軸受蓋12を軸受蓋14に固定するためのボルトを挿入する挿入孔である。
【0020】
軸受蓋14は、図2(B)に示すように、環状充填室14aと抑え部14bと貫通孔14cなどを備えている。環状充填室14aは、軸受10を潤滑するためのグリースを充填する部分である。環状充填室14aは、外輪10cと内輪10dとの間の間隙部に沿って形成されており、貫通孔14cを囲むように円環状に形成された凹部である。図1に示すように、環状充填室14aの外径R3 は、軸受10の外輪10cの内径R4 よりも大きく形成されている。図2(B)に示す抑え部14bは、軸受10の外輪10cの端面を抑える部分であり、貫通孔14cは図1に示すカラー7の外周部と嵌合する嵌合孔である。
【0021】
この発明の第1実施形態に係る軸受蓋には、以下に記載する効果がある。
(1) この第1実施形態では、環状充填室12dの外側に拡大して外側充填室12eが形成されており、外側充填室12eは環状充填室12dに沿って形成されており、環状充填室12dの略全周でこの環状充填室12dと結合する。このため、図7に示す従来の軸受蓋112に比べて充填室12a内に充填するグリース量を増加させることができる。また、外側充填室12eと環状充填室12dとが接する面積が増大するため、グリース基油の移動が活発になって充填室12a内のグリースの総量を有効に使うことができる。その結果、軸受10の潤滑寿命を延ばすことができるとともに、グリースの交換時期が延長するためメンテナンス作業などを減らすことができる。
【0022】
(2) この第1実施形態では、環状充填室12d及び外側充填室12eは軸受10の端面側に開口部12gを有する。このため、従来の軸受蓋のように充填室の軸受側側面に軸受の端面を抑える環状の隔壁を形成する場合に比べて、構造が簡単になり軸受蓋12~15を簡単に製造することができる。
【0023】
(3) この第1実施形態では、外側充填室12eの外径R1 は、外輪10cの外径R2 よりも大きく形成されており、この外輪10cの端面を抑える抑え部12fを充填室12aが有する。このため、充填室12a内に充填するグリース量を増加させるとともに、抑え部12fによって充填室12a内に軸受10が落ち込むのを防止することができる。
【0024】
(4) この第1実施形態では、外側充填室12eを複数の領域A1 ~A6 に区画するように、この外側充填室12eの周方向に間隔をあけて抑え部12fが複数形成されている。このため、外側充填室12e内に充填されたグリースが位置決めされてこのグリースの位置ずれを防止することができる。
【0025】
(5) この第1実施形態では、環状充填室12dと外側充填室12eとが結合する結合部分P1 ~P6 が略同一の幅Wと深さDで形成されている。その結果、充填室12aが直径方向及び深さ方向のいずれか一方に片寄ることなく略同等に拡大するため、充填室12aからのグリース基油の移動が活発になり、軸受10の寿命を延ばすことができる。
【0026】
【実施例】
次に、この発明の実施例について説明する。
図4は、この発明の実施例に係る軸受蓋の外観図であり、図4(A)は基本型の外観図であり、図4(B)は実施例1,2の外観図であり、図4(C)は実施例3,4の外観図であり、図4(D)は実施例5,6の外観図であり、図4(E)は実施例7,8の外観図である。なお、図4(A)に示す基本型の充填室は、図7に示す従来の軸受蓋112の充填室と同一構造である。
一般に、外側充填室12eの構造が異なる場合には、封入されたグリースの挙動も異なることが知られている。そこで、外側充填室12eの形状とこの外側充填室12eに充填されたグリースの基油の移動しやすさとの関係を調査するために、小型の試験軸受(玉軸受6206)に合わせてアルミニウム製の小型の軸受蓋モデル(実施例1~実施例8)を設計し製作した。但し、これらの実施例1~実施例8には、図7に示す抑え部112fに対応する抑え部が設けられていない。
【0027】
(実施例1,2)
実施例1,2は、環状充填室12dに対する外側充填室12eの結合角度を変化させた実施例である。実施例1は、環状充填室12dの外周部接線上に外側充填室12eを結合させた実施例であり、実施例2は環状充填室12dの外周部に外側充填室12eを水平に結合させた実施例である。
【0028】
(実施例3,4)
実施例3,4は、外側充填室12eから環状充填室12dに通じる油道の数を変化させた実施例であり、実施例3は油道の数が両側に各2本(合計4本)の実施例であり、実施例4は油道の数が片側1本の実施例である。
【0029】
(実施例5,6)
実施例5,6は、外側充填室12eの直径方向の幅を変化させた実施例であり、実施例5は、外側充填室12eの幅を1/2にした実施例であり、実施例6は外側充填室12eの幅を2倍にした実施例である。
【0030】
(実施例7,8)
実施例7,8は、外側充填室12eの方向を変化させた実施例であり、実施例7は外側充填室12eを上向きにした実施例であり、実施例8は外側充填室12eを下向きにした実施例である。
【0031】
実施例1~8では、環状充填室12dについては容積と形状とが同一であるが、外側充填室12eについては容積を同一にして形状のみを変化させた。図4(B)~図4(E)では、グリース基油の動き易さの観点から、図4(A)に示す基本型の軸受蓋に比べて優れていると考えられる実施例を上段に示し、劣っていると考えられるものを下段に示している。
【0032】
次に、トレーサ入りのグリースを用いてグリース基油の挙動試験を実施し、外側充填室12eの形状による影響について検討した。先ず、実施例1~8の環状充填室12dには現行グリース(ちょう度2)を封入し、外側充填室12eにはトレーサを混入した現行グリースを充填して、開口部12gが地面に対して垂直になるように立て、温度100°Cで100時間の静置試験を行った。その後、外側充填室12e内のトレーサ入りのグリース基油が環状充填室12d内にどれだけ移動したか評価するために、図4に示すように環状充填室12d上の8箇所の測定箇所でトレーサ濃度を分析した。なお、実施例7,8については、トレーサ濃度測定時に方向を揃えて測定した。
【0033】
図5は、この発明の実施例に係る軸受蓋のトレーサ濃度の測定結果を示すグラフであり、図5(A)は実施例1,2の測定結果であり、図5(B)は実施例3,4の測定結果であり、図5(C)は実施例5,6の測定結果であり、図5(D)は実施例4,7,8の測定結果である。
実施例1,2については、図5(A)に示すように、環状充填室12d全体においてトレーサ濃度分布に大きな変化は見られなかった。実施例1については、基本型に比べてグリース基油の移動がやや優れているように見えるが、基本型との差は小さかった。実施例3,4については、図5(B)に示すように、基本型に比べて外側充填室12eに近い部分では部分的にトレーサ濃度分布に変化が見られるが、環状充填室12d全体においてトレーサ濃度分布に大きな変化は見られなかった。実施例5,6については、図5(C)に示すように、グリース濃度分布に大きな変化が見られた。実施例5については、環状充填室12dに外側充填室12eが接する部分が大きいため、環状充填室12d全体として平均的にトレーサ濃度分布に変化が起きている。一方、実施例6については、環状充填室12dに最も近い2点(0°,180°)以外の部分ではトレーサ濃度分布の変化が少なかった。実施例7,8については、図5(D)に示すように、実施例7(上向き)、実施例4(横向き)、実施例8(下向き)の順にグリース基油の移動が活発であったが、環状充填室12d全体としてはグリース濃度分布に大きな差が見られなかった。
【0034】
以上の結果、グリース基油は、封入当初から外側充填室12eと環状充填室12dとの間で活発に移動しており、外側充填室12eと環状充填室12dとが接する面積が大きいほどグリース基油が移動する程度も大きくなることが確認された。このため、外側充填室12eと環状充填室12dとは部分的に結合させるよりも、図3に示す軸受蓋12のように外側充填室12eと環状充填室12dとをできるだけ広い面積で結合させることが望ましいと考えられる。この場合には、外側充填室12eと環状充填室12dとの結合部分の中心角の合計が全周に近いほどグリース基油の移動が活発になると考えられる。また、従来の軸受蓋では、充填室の一部又は全部で軸受の外輪の内径よりも充填室の外径を同一又は小さくしているが、外輪10cの内径R4 よりも外側充填室12eの外径R1 が大きくてもグリース基油が十分に移動することが実施例5の測定結果から確認された。さらに、従来、重力の方向にグリース基油が移動しやすいと考えられていたが、実施例7,8の測定結果からグリース基油の移動に重力の影響が少ないことが確認された。
【0035】
(第2実施形態)
図6は、この発明の第2実施形態に係る軸受蓋の外観図であり、図6(A)は平面図であり、図6(B)は図6(A)のVI-VIB線で切断した状態を示す断面図である。図6では、図3に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
この第2実施形態では、環状充填室12dと外側充填室12eとの境界Lに沿って、この外側充填室12eの周方向に間隔をあけて抑え部12fが6つ形成されている。この第2実施形態では、抑え部12fが外側充填室12eの外周部と分離して薄板状に形成されているため、第1実施形態に比べて外側充填室12e内にグリースをより一層多く充填することができる。また、外側充填室12e側から、環状充填室12dにグリースが落下するのを抑え部12fが防止する。
【0036】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、鉄道車両の主電動機の回転軸5を支持する軸受10,11を例に挙げて説明したがこれに限定するものではなく、この発明は軸受一般に適用することができる。また、この実施形態では、軸受蓋12,13側のグリース充填構造を例に挙げて説明したが、軸受蓋14,15側についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、環状充填室12dと外側充填室12eとの結合部分P1 ~P6 の幅W及び深さDを同一にした場合を例に挙げて説明したが、構造上の制約を受けない場合にはいずれか一方を大きくすることができる。
【0037】
(2) この実施形態では、充填室12aの断面形状が四角形である場合を例に挙げて説明したが、断面形状をU字状や半円状に形成してもよい。また、この実施形態では、環状充填室12dと外側充填室12eとを可能な限り全周で結合しているが、構造上の制約などによって両者が分断される場合にはこれらを接続する通路を形成しこの通路の断面積を可能な限り大きくすることが好ましい。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によると、充填室内のグリースを有効に利用して潤滑寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態に係る軸受蓋を備える電動機枠体の断面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る軸受蓋の平面図であり、(A)は図1のIIA方向から見た平面図であり、(B)は図1のIIB方向から見た平面図であり、(C)は図1のIIC方向から見た平面図であり、(D)は図1のIID方向から見た平面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る軸受蓋の外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のIII-IIIB線で切断した状態を示す断面図である。
【図4】この発明の実施例に係る軸受蓋の外観図であり、(A)は基本型の外観図であり、(B)は実施例1,2の外観図であり、(C)は実施例3,4の外観図であり、(D)は実施例5,6の外観図であり、(E)は実施例7,8の外観図である。
【図5】この発明の実施例に係る軸受蓋のトレーサ濃度の測定結果を示すグラフであり、(A)は実施例1,2の測定結果であり、(B)は実施例3,4の測定結果であり、(C)は実施例5,6の測定結果であり、(D)は実施例4,7,8の測定結果である。
【図6】この発明の第2実施形態に係る軸受蓋の外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のVI-VIB線で切断した状態を示す断面図である。
【図7】従来の軸受蓋の外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のVII-VIIB線で切断した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 電動機枠体
10,11 軸受
10c,11c 外輪
10d,11d 内輪
12~15 軸受蓋
12a 充填室
12d 環状充填室
12e 外側充填室
12f 抑え部
12g 開口部
1 外側充填室の外径
2 外輪の外径
3 環状充填室の外径
4 外輪の内径
1 ~A6 領域
1 ~P6 結合部分
W 幅
D 深さ
L 境界
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6