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明細書 :架空電車線の支持構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3932187号 (P3932187)
公開番号 特開2004-131031 (P2004-131031A)
登録日 平成19年3月23日(2007.3.23)
発行日 平成19年6月20日(2007.6.20)
公開日 平成16年4月30日(2004.4.30)
発明の名称または考案の名称 架空電車線の支持構造
国際特許分類 B60M   1/22        (2006.01)
B60M   1/20        (2006.01)
FI B60M 1/22 S
B60M 1/20 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2002-300189 (P2002-300189)
出願日 平成14年10月15日(2002.10.15)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成14年電気学会産業応用部門大会講演論文集[I]JIASC2002(発行日:平成14年8月21日)、(社)電気学会産業応用部門大会委員会、第487~488頁に発表
審査請求日 平成16年12月7日(2004.12.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
発明者または考案者 【氏名】鈴木 顕博
【氏名】島田 健夫三
【氏名】早坂 高雅
【氏名】岩間 祐一
【氏名】吉澤 武司
【氏名】飯国 元久
個別代理人の代理人 【識別番号】100078950、【弁理士】、【氏名又は名称】大塚 忠
審査官 【審査官】本庄 亮太郎
参考文献・文献 特開2001-270348(JP,A)
調査した分野 B60M 1/22
B60M 1/20
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
架空電車線が、上下方向に固定される固定点から当該架空電車線の波動の反進行方向に距離L(m)付近の位置で、ダンパを介して支持構造物へ吊支され、前記距離L(m)が下式のように設定されることを特徴とする架空電車線の支持構造(但し、f:架空電車線の波動の周波数(Hz)、ρ:架空電車線の密度(kg/m)、Τ:架空電車線の張力(N)とする。)。
【数1】
JP0003932187B2_000009t.gif

【請求項2】
前記架空電車線が吊架線であり、前記固定点が吊架線の支持構造物への支持点であることを特徴とする請求項1に記載の架空電車線の支持構造。
【請求項3】
架空電車線であるトロリ線が、上下方向の変位を制限される硬点から当該トロリ線の波動の反進行方向に距離L(m)付近の位置で、ダンパを介して支持構造物へ吊支され、前記距離L(m)が下式のように設定されることを特徴とする架空電車線の支持構造(但し、f:架空電車線の波動の周波数(Hz)、ρ:架空電車線の密度(kg/m)、Τ:架空電車線の張力(N)とする。)。
【数1】
JP0003932187B2_000010t.gif

【請求項4】
架空電車線であるトロリ線が、支持構造物へ引き留められた位置から当該トロリ線の波動の反進行方向に距離L(m)付近の位置で、ダンパを介して支持構造物へ吊支され、前記距離L(m)が下式のように設定されることを特徴とする架空電車線の支持構造(但し、f:架空電車線の波動の周波数(Hz)、ρ:架空電車線の密度(kg/m)、Τ:架空電車線の張力(N)とする。)。
【数1】
JP0003932187B2_000011t.gif
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、トロリ線やこれを吊る吊架線を、波動を抑制しつつ支持する架空電車線の支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は、電車線におけるシンプルカテナリ吊架方式の構造を概略的に示す図である。シンプルカテナリ吊架方式の架線は、図6に示すように、電車のパンタグラフPが矢印方向に移動しつつ接触するトロリ線11と、複数の支持点12a,12bで支持構造物に吊り下げられて上下方向に固定された吊架線12と、トロリ線11を吊架線12に吊り下げるハンガ13とによって構成されている。このような吊架方式では、パンタグラフPに通過に伴うトロリ線11の上下動がハンガ13を介して吊架線12に伝えられ、吊架線12が上下動する。吊架線12が上下方向に固定される支持点12a,12b付近では、ハンガ13が介在してトロリ線11の上下動が抑制される結果、トロリ線11に局部的に柔軟性が低下した硬点ができる。パンタグラフPが矢印方向に移動すると、このパンタグラフPの進行方向にトロリ線11を伝播する進行波W1が発生する。進行波W1は、トロリ線11の硬点で反射し、反射波W2が発生してパンタグラフPに向かって戻ってくる。その結果、進行波W1と反射波W2と重なり合ってトロリ線11が上下に振動し、高速走行時にパンタグラフPがトロリ線11から離れて集電性能が低下する。
吊架線12にも同じく進行波W1が伝わり、支持点12a,12bにおいて反射波W2が生じる。これもトロリ線11の振動を助長する。
支持点12aと支持点12bとの間でトロリ線11がほぼ一様に撓むようにした架線の支持装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この架線の支持装置は、パンタグラフによってトロリ線が押し上げられると弾性支持手段内のばねとダンパが縮み、パンタグラフが通過した後ではそのばねとダンパが伸びて、支持点12aと支持点12bとの間でトロリ線がほぼ一様に撓むようにしたものである。そして、それによって、パンタグラフによるトロリ線の押し上げ量をほぼ均一にし、トロリ線の硬点をなくすようにしたものである。
【特許文献1】
特開2001-270348号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の課題は、トロリ線の硬点や吊架線の固定点における反射波の発生を抑制して集電性能を向上させることができる架空電車線の支持構造を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定するものではない。請求項1の発明は、架空電車線が、上下方向に固定される固定点から当該トロリ11の波動の反進行方向に距離L(m)付近の位置で、ダンパを介して支持構造物へ吊支され、前記距離L(m)が次式のように設定されることを特徴とする電車線の支持構造である。
【数1】
JP0003932187B2_000002t.gif 但し、f:電車線の波動の周波数(Hz)、ρ:電車線の密度(kg/m)、Τ:電車線の張力(N)とする。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電車線の支持構造において、当該電車線が吊架線であり、その固定点が、支持構造物への支持点であることを特徴とする電車線の支持構造である。
【0006】
請求項3の発明は、架空電車線であるトロリ線が、上下方向の変位を制限される硬点から当該トロリ線の波動の反進行方向に距離L(m)付近の位置で、ダンパを介して吊架線へ吊支され、前記距離L(m)が下式のように設定されることを特徴とする架空電車線の支持構造である。
【数1】
JP0003932187B2_000003t.gif 但し、f:架空電車線の波動の周波数(Hz)、ρ:架空電車線の密度(kg/m)、Τ:架空電車線の張力(N)とする。
請求項4の発明は、架空電車線であるトロリ線が、支持構造物へ引き留められた位置から当該トロリ線の波動の反進行方向に距離L(m)付近の位置で、ダンパを介して吊架線へ吊支され、前記距離L(m)が下式のように設定されることを特徴とする架空電車線の支持構造である。
【数1】
JP0003932187B2_000004t.gif 但し、f:架空電車線の波動の周波数(Hz)、ρ:架空電車線の密度(kg/m)、Τ:架空電車線の張力(N)とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、この発明の実施の形態を説明する。図1ないし図4はこの発明に係る電車線の支持構造を図式的に示す説明図、図5はこの発明の原理説明図、図6は従来の架線の支持構造の説明図である。
【0009】
架線1は、線路上空に設置される。架線1は、図1に示すように、トロリ線11と、吊架線12と、ハンガ13とから構成されたシンプルカテナリ式吊架方式の架線である。架線1は、吊架線12を支持する支持点12aと支持点12bとの間の距離(径間)が10m~60m程度になるように支持されている。
【0010】
トロリ線11は、電車のパンタグラフが摺動する電線であり、電車に負荷電流を供給する。トロリ線11は、通常、材質が硬銅又は銅合金などからなり、断面形状が溝付き円形である。吊架線12は、トロリ線11の自重による弛み(弛度)が小さくなるようにトロリ線を支持する線条である。吊架線12は、架線1のばね定数が高くなるように、図示しない自動張力調節装置によって所定の張力がかけられている。吊架線12は、亜鉛めっき鋼より線などで構成される。ハンガ13は、トロリ線11を吊架線12に吊り下げるための金具である。ハンガ13は、通常、トロリ線11を吊架線12に5m間隔で吊り下げている。
【0011】
支持構造物2は、架線1を支持するための構造物であり、図示しない電柱、可動ブラケット、架線金具などから構成されている。
【0012】
ダンパ3は、支持構造物2とトロリ線11との間に配置され、固定端が支持構造物2に、可動端がトロリ線11に接続される。ダンパ3は、バネ等による荷重支持機能を持たず、制振の単機能のものであり、例えば、油圧ダンパが適用できる。油圧ダンパは、シリンダ、ピストンロッド、2つのシリンダ室間に介設される絞り弁とを有するものである。
【0013】
発明者らは、ダンパ3が、トロリ線11の硬点で反射する反射波を低減するために必要な条件を以下のように求めた。
【0014】
モデルとして、図5に示すように、径間がH(m)、張力T(N)のトロリ線11にダンパ定数μ(N・s/m)のダンパ3が、硬点からL(m)離れて取り付けられている場合を考える。このとき、ダンパ3より左側から速度c(m/s)の入射波fが右方向に進行するとして、反射波gが生じない条件を計算する。
ダンパ3が取り付けられている位置をx=0として、ダンパ3より左側から入射波f(t-x/c)が入る。次にダンパ3で跳ね返った波を反射波g(t+x/c)とし、またダンパ3を透過した波を透過波h(t-x/c)とする。さらに、透過波hが固定点L(x=L)で跳ね返った波を透過波の反射波-h(t+(x-2L)/c)とする。
ダンパ3より左側での合成波yは、
【数3】
JP0003932187B2_000005t.gifであり、ダンパ3より右側での合成波zは、
【数4】
JP0003932187B2_000006t.gifである。ただし、yとzは、ダンパ3の位置で連続的であるから、境界条件として、
【数5】
JP0003932187B2_000007t.gifが成り立たなければならない。したがって、反射波が生じないための条件を導くためには、式(1)、(2)を式(3)、(4)のもとで解けばよいことになる。
これら方程式を解くと、反射波が生じない条件は、fを振動数として、
【数6】
JP0003932187B2_000008t.gifと表される。
上記より、反射波が生じないためには、式(5)の両者を満足しなければならない。
【0015】
例えば、入射波をsinω(t-x/c)、トロリ線の密度1(kg/m)、その張力10000(N)と仮定すると、ダンパ定数が、100(N・s/m)で振動数が1(Hz)のとき、ダンパ3と固定点との距離が25(m)となり、その点で反射波が0となる。
これは、吊架線12の入射波、反射波についても全く同様である。
【0016】
図2,図3には、吊架線12を支持点12a、12bからL(m)離れた位置でダンパ3を介して支持構造物2に支持する例を示す。距離L(m)を上記同様に設定すれば、吊架線12における支持点12a、12bで発生する反射波をなくすることができる。
なお、図示しないが、同様の条件で、ダンパ3をトロリ線11及び吊架線12の双方に装着することができる。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によると、トロリ線11や吊架線12の上下方向変位を抑制し、あるいは固定する硬点あるいは固定点、即ち例えば、吊架線12においては支持点12a,12b、トロリ線11においては硬点である吊架線12の支持点12a,12bの下方位置から請求項1に記載のL(m)付近の位置で、トロリ線11あるいは吊架線12をダンパ3を介して支持構造物2へ吊支したので、硬点等における反射波を抑制して、架線の集電性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るトロリ線の支持構造を図式的に示す説明図である。
【図2】この発明に係るトロリ線の支持構造を図式的に示す説明図である。
【図3】この発明に係る吊架線の支持構造を図式的に示す説明図である。
【図4】この発明に係る吊架線の支持構造を図式的に示す説明図である。
【図5】この発明の原理説明図である。
【図6】従来の架線の支持構造の説明図である。
【符号の説明】
1 架線
2 支持構造物
3 ダンパ
11 トロリ線
12 吊架線
12a 支持点
12b 支持点
13 ハンガ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5