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明細書 :GPS測位による列車走行情報検出装置及びその列車走行情報検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4090852号 (P4090852)
公開番号 特開2004-168216 (P2004-168216A)
登録日 平成20年3月7日(2008.3.7)
発行日 平成20年5月28日(2008.5.28)
公開日 平成16年6月17日(2004.6.17)
発明の名称または考案の名称 GPS測位による列車走行情報検出装置及びその列車走行情報検出方法
国際特許分類 B61L  25/02        (2006.01)
FI B61L 25/02 G
請求項の数または発明の数 8
全頁数 13
出願番号 特願2002-337629 (P2002-337629)
出願日 平成14年11月21日(2002.11.21)
審査請求日 平成17年4月28日(2005.4.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】501284767
【氏名又は名称】株式会社ジェイアール総研電気システム
発明者または考案者 【氏名】山本 春生
【氏名】池田 昌俊
【氏名】増成 友宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】小川 恭司
参考文献・文献 特開平08-053067(JP,A)
特開2002-229497(JP,A)
特開2001-108457(JP,A)
特開2000-351371(JP,A)
調査した分野 B61L 1/00-29/32
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)複数の鉄道車両からなる一編成の列車に分散配置された複数のGPSアンテナと、
(b)該GPSアンテナに接続されるGPS受信機と、
(c)該GPS受信機に接続される列車位置検知装置と、
(d)該列車位置検知装置に配置されるレール頭頂面の高さで3次元の線形を忠実に表現する軌道中心線と空間座標の中心(地球の中心)から前記軌道中心線上の位置に延ばした直線に対する偏角であるカント角を含む3次元線路マップと、レール頭頂面からのGPSアンテナ高さを含むGPSアンテナ設置位置情報とを格納する記憶装置と、
(e)前記GPS受信機、列車位置検知装置を含む列車位置検知システム間を接続する車内LANとを備え、
(f)前記列車上の複数のGPS受信機がそれぞれ少なくとも2機の衛星からのGPS信号を受信して、前記GPSアンテナ設置位置情報に基づき、前記列車位置検知装置が空間曲線である前記軌道中心線を前記レール頭頂面からのGPSアンテナ高さと前記カント角により補正しながら測位計算を行うことにより、前記列車全体の在線位置と向きを把握することを特徴とするGPS測位による列車走行情報検出装置。
【請求項2】
請求項1記載のGPS測位による列車走行情報検出装置において、前記列車上の異なるGPS受信機間の距離、高低角を不変、及び時計誤差を予測可能とすることにより、前記列車上の複数のGPS受信機が少なくとも1機の衛星からのGPS信号を受信してから全体として少なくとも異なる2機の衛星からのGPS信号を受信して、前記列車位置検知装置が測位計算を行うことを特徴とするGPS測位による列車走行情報検出装置。
【請求項3】
請求項1記載のGPS測位による列車走行情報検出装置において、前記列車位置検知システムは慣性センサを有することを特徴とするGPS測位による列車走行情報検出装置。
【請求項4】
請求項記載のGPS測位による列車走行情報検出装置において、前記慣性センサは、角速度センサであることを特徴とするGPS測位による列車走行情報検出装置。
【請求項5】
請求項記載のGPS測位による列車走行情報検出装置において、前記慣性センサは、角速度センサおよび加速度センサであることを特徴とするGPS測位による列車走行情報検出装置。
【請求項6】
請求項1記載のGPS測位による列車走行情報検出装置において、走行距離計を搭載させることを特徴とするGPS測位による列車走行情報検出装置。
【請求項7】
複数の鉄道車両からなる一編成の列車に分散配置されたGPSアンテナとGPS受信機と、列車位置検知装置、レール頭頂面の高さで3次元の線形を忠実に表現する軌道中心線と空間座標の中心(地球の中心)から前記軌道中心線上の位置に延ばした直線に対する偏角であるカント角を含む3次元線路マップとを備え前記列車上の複数のGPS受信機がそれぞれ少なくとも2機の衛星からのGPS信号を受信して、レール頭頂面からのGPSアンテナ高さを含むGPSアンテナ設置位置情報に基づき、前記列車位置検知装置が空間曲線である前記軌道中心線を前記レール頭頂面からのGPSアンテナ高さと前記カント角により補正しながら測位計算を行うことにより、前記列車全体の在線位置と向きを把握することを特徴とするGPS測位による列車走行情報検出方法。
【請求項8】
請求項記載のGPS測位による列車走行情報検出方法において、前記列車上の異なるGPS受信機間の距離、高低角を不変、及び時計誤差を予測可能とすることにより、前記列車上の複数のGPS受信機が少なくとも1機の衛星からのGPS信号を受信してから全体として少なくとも異なる2機の衛星からのGPS信号を受信して、前記列車位置検知装置が測位計算を行うことを特徴とするGPS測位による列車走行情報検出方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、GPS測位による列車走行情報検出装置およびその列車走行情報検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、衛星測位システムに関する話題として、GPS(Global Positioning System)(米国)の近代化、GLONASS(ロシア)の再生、Galileo(欧州)の構築などの計画が相次いで発表されている。我が国においても、2008年頃の運用開始に向けて、準天頂衛星システムの構築が検討されている。
【0003】
この準天頂衛星システムでは、最低1機の衛星をその名の如く天頂付近に配置するため、常時仰角70°以上で捕捉できるようになり、建物等による影響を受けにくいという特長がある。また、国土地理院の電子基準点を活用することなどによって、静止体で1cm、移動体で25cm程度の測位精度の確保を目標とした開発が進められている。
【0004】
このような情勢から、衛星測位の利用アプリケーション側の開発も進展することが予想される。航空分野では既に航法装置としてGPS測位を主体的に用いるため、飛行フェーズ毎に定められた測位精度、信頼性、連続性(コンテュイニティ)、完全性(インテグリティ)の要求仕様を満たすGPS補強システムが構築されつつある。
【0005】
鉄道においても、同様の手法によれば、列車制御などの安全性が重要なアプリケーションの位置検知手段にまで適用範囲を拡げることができると考えられる。しかし、建物等による遮蔽などGPS信号の受信環境が航空機に比べ著しく不利な鉄道では、この問題を改善する何らかの対策が求められる。
【0006】
ところで、情報技術を適用するいわゆる列車の知能化には、位置検知機能と共に路線情報が欠かせない。例えば車体傾斜制御システムでは、線形データベースを記憶した車両上コンピュータが、位置検知をしながら曲線で予見的に目標角度を生成し制御を行う。
【0007】
また、山手線・京浜東北線に導入予定のデジタルATCや移動閉塞を実現する列車制御システムCARAT(Computer And Radio Aided Train control system)〔非特許文献1〕も、路線情報を拠り所として位置検知しながら保安速度制御を行う。鉄道においてこのようなシステムが成立する理由は、線路上の移動が本質的に1次元であり、道路などよりも路線情報を作り易いためである。
【0008】
このような特性を備えた鉄道の列車位置検知にGPS測位を利用する場合には、カーナビゲーションシステムで行われているようなマップマッチングよりも精密な3次元線路マップを用意して、1本の線路上のどこかに列車が在線していることを前提とすれば、衛星2機からのGPS信号のみで測位計算ができると考えられる。測位に必要な衛星数が、従来の衛星4機からのGPS信号による測位方式に比べて半減できるということは、航空機と比較してGPS信号の受信環境が劣る鉄道において、信頼性等の性能の向上を図ることができる。
【0009】
本願発明者らは、既に、鉄道車両にGPS受信機を搭載して、鉄道車両のGPS測位を行うことを〔特許文献1〕として提案した。なお、ここでは鉄道車両に1台のGPS受信機を搭載してGPS測位を行うようにしている。
【0010】
【特許文献1】
特開2001-56234 第3-5頁 図1
【0011】
【非特許文献1】
山本春生、西堀典幸:CARAT、RRR、Vol.56、No.9、pp.8~9、1999.9
【0012】
【非特許文献2】
松本雅行、細川明良、河田智太郎:デジタルATC車上装置のデータベース構成、鉄道におけるサイバネティクス利用国内シンポジウム論文集、pp.226~229、2000.11
【0013】
【非特許文献3】
奥谷正:国土マネジメントのための情報基盤、国総研アニュアルレポート、No.1、pp.24~28、2002.3
【0014】
【非特許文献4】
安田明生:GPSとその応用、GPSシンポジウム2001、pp.193~216、2001.11
【0015】
【非特許文献5】
池田昌俊:列車位置検知手法の動向、鉄道総研報告、Vol.13、No.8、pp.1~6、1999.8
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
列車の在線位置は、線区名(上下線の識別含む)、キロ程、番線により特定できる。このような簡便な位置識別方法は、前述したように、列車の移動が本質的に1次元であることから可能である。しかし、この方法には、駅構内で列車が本線以外を経由した場合に、本線経由よりも走行距離が長くなりキロ程とのずれが生ずることや、工事に伴って線路を迂回、短絡した場合にキロ程に断重複の発生が避けられないという欠点がある。
【0017】
路線情報を拠り所として位置検知を行う車体傾斜制御システム、デジタルATC、CARATなどの制御システムは、正確な距離を必要とするため、キロ程を直接には用いない。例えば、車体傾斜制御システムでは、制御対象の曲線の位置を、基準とするATS地上子からの距離で特定している。デジタルATCでは、すべてのATC進路に固有の進路IDを割り付け、進路内残距離との組み合わせで絶対位置を認識する〔非特許文献2〕。
【0018】
また、CARATもこれに類似し、線路を節点で分割した枝を単位とする論理的なブロックのデータリンクで表現し、ブロック番号とブロック内距離により絶対位置を認識する。
【0019】
以上のように、各システムではそれぞれ利用しやすい方法により、システムの要求レベルを満たす程度の在線位置識別を行い、制御に用いている。なお、これらのシステムでは、路線情報を拠り所としているため、工事等により変更の可能性のある地上設備と車両上の対応するデータとの整合性を維持しなければならない。
【0020】
ITS(高度道路交通システム)の中心に位置付けられている走行支援システム(AHS)や歩行者ITSなどの様々なアプリケーションは、自動車や歩行者が道路上の位置を数10cm程度の精度で把握することを前提とする。そのため、国土交通省国土技術政策総合研究所(以後、国総研と略す)高度情報化研究センターでは、国土マネジメントのための情報基盤の整備に向けた研究開発の一環として、道路線形や片勾配、歩道の段差などの道路構造物に関する1/500程度の精度の高い道路地図データ(道路基盤データ)の構築方法について検討を進めている〔非特許文献3〕。
【0021】
本発明は、上記状況に鑑み、連続性、完全性および信頼性の向上を図ることができるGPS測位による列車走行情報検出装置およびその列車走行情報検出方法を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕GPS測位による列車走行情報検出装置において、複数の鉄道車両からなる一編成の列車に分散配置された複数のGPSアンテナと、このGPSアンテナに接続されるGPS受信機と、このGPS受信機に接続される列車位置検知装置と、この列車位置検知装置に配置されるレール頭頂面の高さで3次元の線形を忠実に表現する軌道中心線と空間座標の中心(地球の中心)から前記軌道中心線上の位置に延ばした直線に対する偏角であるカント角を含む3次元線路マップと、レール頭頂面からのGPSアンテナ高さを含むGPSアンテナ設置位置情報とを格納する記憶装置と、前記GPS受信機、列車位置検知装置を含む列車位置検知システム間を接続する車内LANとを備え、前記列車上の複数のGPS受信機がそれぞれ少なくとも2機の衛星からのGPS信号を受信して、前記GPSアンテナ設置位置情報に基づき、前記列車位置検知装置が空間曲線である前記軌道中心線を前記レール頭頂面からのGPSアンテナ高さと前記カント角により補正しながら測位計算を行うことにより、前記列車全体の在線位置と向きを把握することを特徴とする。
【0023】
〕上記〔1〕記載のGPS測位による列車走行情報検出装置において、前記列車上の異なるGPS受信機間の距離、高低角を不変、及び時計誤差を予測可能とすることにより、前記列車上の複数のGPS受信機が少なくとも1機の衛星からのGPS信号を受信してから全体として少なくとも異なる2機の衛星からのGPS信号を受信して、前記列車位置検知装置が測位計算を行うことを特徴とする。
【0024】
〕上記〔1〕記載のGPS測位による列車走行情報検出装置において、前記列車位置検知システムは慣性センサを有することを特徴とする。
【0025】
〕上記〔〕記載のGPS測位による列車走行情報検出装置において、前記慣性センサは、角速度センサであることを特徴とする。
【0026】
〕上記〔〕記載のGPS測位による列車走行情報検出装置において、前記慣性センサは、角速度センサおよび加速度センサであることを特徴とする。
【0027】
〕上記〔1〕記載のGPS測位による列車走行情報検出装置において、走行距離計を搭載させることを特徴とする。
【0028】
〕GPS測位による列車走行情報検出方法において、複数の鉄道車両からなる一編成の列車に分散配置されたGPSアンテナとGPS受信機と、列車位置検知装置、レール頭頂面の高さで3次元の線形を忠実に表現する軌道中心線と空間座標の中心(地球の中心)から前記軌道中心線上の位置に延ばした直線に対する偏角であるカント角を含む3次元線路マップとを備え前記列車上の複数のGPS受信機がそれぞれ少なくとも2機の衛星からのGPS信号を受信して、レール頭頂面からのGPSアンテナ高さを含むGPSアンテナ設置位置情報に基づき、前記列車位置検知装置が空間曲線である前記軌道中心線を前記レール頭頂面からのGPSアンテナ高さと前記カント角により補正しながら測位計算を行うことにより、前記列車全体の在線位置と向きを把握することを特徴とする。
【0029】
〕上記〔〕記載のGPS測位による列車走行情報検出方法において、前記列車上の異なるGPS受信機間の距離、高低角を不変、及び時計誤差を予測可能とすることにより、前記列車上の複数のGPS受信機が少なくとも1機の衛星からのGPS信号を受信してから全体として少なくとも異なる2機の衛星からのGPS信号を受信して、前記列車位置検知装置が測位計算を行うことを特徴とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は本発明にかかる3次元線路マップの構造の模式図である。
【0032】
この図において、x,y,z軸を有する3次元空間内に線路1があり、この線路1は軌道中心線(点線)2で描くことができ、勾配3を有し、縦曲線4、直線5、緩和曲線6、円曲線7などを有する。また、空間座標の中心(地球の中心)から軌道中心線上の位置に延ばした直線に対する偏角であるカント角θを用いる。
【0033】
〔1〕3次元線路マップを用いる列車のGPS測位の原理
まず、ここでは、3次元線路マップの利用を前提としてGPS測位を主体的に用いる列車位置検知方法について説明する。
【0034】
通常のGPS測位では、観測点位置を3つの未知数x,y,zとし、i番目の衛星の位置をxsi,ysi,zsi、その衛星と観測点間の擬似距離をri 、およびGPS受信機の時計誤差による距離への影響をsとすると、次式(1)が成立する〔非特許文献3〕。
【0035】
i =√〔(x-xsi2 +(y-ysi2 +(z-zsi2 〕+s…(1)
この場合、観測点の3次元の座標と受信機時計誤差の4つの未知数を求めるには4つの式が必要となり、そのため少なくとも4機の衛星を観測する必要がある。
【0036】
一方、鉄道では、列車の移動が本質的に1次元であることからして、列車位置は(初期位置からの)移動距離dT により一意に定まり、その軌跡である線路は、空間曲線として次式(2)のように移動距離dT により助変数表示することができる。
【0037】
γ(dT )=〔x(dT ),y(dT ),z(dT )〕 …(2)
線路に分岐箇所がないか、あったとしても分岐器の開通方向が分かっていれば、列車の移動は脱線しない限り式(2)をトレースするので、式(1)は列車上のGPS測位においては次式(3)のようになる。
【0038】
i =√{〔x(dT )-Xsi2 +〔y(dT )-Ysi2 +〔z(dT )-Zsi2 }+s …(3)
ここで、x(dT )、y(dT )、z(dT )は、3次元の線路マップを用いれば、移動距離によって一意に定まる。従って、列車が3次元線路マップのうちの1本の線路上のどこかに在線していることが明らかである場合には、未知数はdT とsの2つのみとなる。つまり、未知数を求めるのに必要な式は2つであり、最低でも2機の衛星さえ観測できれば測位計算が可能となる。
【0039】
図2は本発明にかかる3次元線路マップを用いる列車のGPS測位の原理の説明図である。
【0040】
この図において、11は列車、12は線路、13は軌道中心線(点線)、14は第1の衛星、15は第2の衛星である。
【0041】
列車11上のGPSアンテナの移動軌跡を定めるには、線路12側の情報として軌道中心線13とカント角が最低限必要である。ここでは、軌道中心線13はレール頭頂面の高さで、直線5、円曲線7、緩和曲線6、勾配3、縦曲線4といった3次元の線形(図1参照)を忠実に表現したものとする。カント角は、空間座標の中心(=地球の中心)から軌道中心線上の位置に延ばした直線に対する偏角として与える。
【0042】
図3は本発明にかかる列車位置検知装置の最小構成図である。
【0043】
この図において、21は列車に分散配置されたGPSアンテナ、22はGPS受信機、23は列車位置検知装置、24はその列車位置検知装置23内の測位計算部、25は線路の特定・トレース部、26はレール面からのアンテナ高さ記憶装置、27は3次元線路マップ記憶装置、28は分岐方向の判断のための角速度センサである。
【0044】
本列車位置検知装置23の実装においては、図3に示すように、GPS受信機22は通常のものを用いるが、擬似距離を出力するように設定する。列車位置検知装置23本体は、3次元線路マップ記憶装置27に3次元線路マップを格納しており、空間曲線である軌道中心線をレール面からのアンテナ高さとカント角により補正しながら測位計算を行う。なお、分岐器の開通方向に関する情報が与えられないとすれば、分岐方向の判断のために角速度センサ28が必要となる。
【0045】
以上の構成により、GPS測位に必要となる衛星が2個となり、従来のように4個の衛星を必要としていたのに比べると半減するため、信頼性が向上する。また、GPS信号の異常などにより線路上に解が求められないような状況を認識できるため、完全性(インテグリティ)の向上にも寄与する。
【0046】
建物等によるGPS信号の遮蔽が避けられない鉄道において、位置検知の連続性を維持するには、速度発電機や加速度センサなどのセンサを併用する方法が一般的である。なかでも、3次元線路マップとの相性がよいセンサは、加速度センサである。
【0047】
図4は本発明にかかる列車位置検知装置の構成図である。
【0048】
この実施例においては、第1実施例の装置に加速度センサ31と線路のトレース部32を追加したもので、線路のトレース部32は、この加速度センサ31からの情報と、角速度センサ28からの情報を取り込み、列車の走行距離を積算して実際の走行距離を求めるほか、列車走行に伴い線形によって車両に加わる加速度・角速度を検出し、3次元線路マップを活用して線路上の位置をトレースするとともに、線路の特定・トレース部25は、アンテナ高さ記憶装置26と3次元線路マップ記憶装置27からの情報に基づいて、線路の特定・トレースを行い、GPS測位による線路の特定・トレース部25と、慣性センサ(加速度センサ,角速度センサ)による線路のトレース部32との比較照合・相互補完を行うように構成することができる。
【0049】
すなわち、走行中、列車位置検知装置30本体では、3次元線路マップ記憶装置27からの3次元線路マップに基づくGPS測位とは独立して、加速度センサ31、角速度センサ28からなる慣性センサに基づく3次元線路マップのトレースを行う。これらの比較照合や相互補完により、第1実施例の構成にも増して完全性および信頼性を向上させることができる。
【0050】
なお、上記列車位置検知装置は1個示されているが、1台の車両の場合は、その組を車両の前後に配置して、それぞれ少なくとも2個の衛星からのGPS信号を受信して情報の授受を行うことにより、鉄道車両の在線位置と向きを把握することができる。
【0051】
図5は本発明の第1実施例を示す列車位置検知装置の構成図であり、図5(a)はその列車位置検知装置の全体構成図、図5(b)はその位置検知装置の構成図である。
【0052】
この実施例において、101は複数の車両101-1,101-2,…,101-nからなる列車、110は第1の列車位置検知システム、111はGPSアンテナ、112はGPS受信機、113は列車位置検知装置、114は角速度センサ、115は加速度センサ、121は複数の車両101-1,101-2,…,101-n内に配置される車内LAN、130は第nの列車位置検知システム、131はGPSアンテナ、132はGPS受信機、133は列車位置検知装置、134は角速度センサ、135は加速度センサである。
【0053】
上記した列車位置検知装置113,133は、図5(b)に示すように、受信機ID・疑似距離を入力して測位計算及びチェックを行う測位計算及びチェック部201、線路の特定・トレースを行う線路の特定・トレース部202、各センサの編成上の位置情報記憶装置203、3次元線路マップ記憶装置204、センサID・加速度とセンサID・角速度を取り込んで、線路のトレースを行う線路のトレース部205とを備えている。
【0054】
1編成上に分散配置されたGPS受信機および各種センサの全てを活用し、編成全体の在線位置と向きを把握する。そのため、各機器を車内LAN121に接続する。この構成では、各受信機、センサの編成上の設置位置が重要となることから、列車位置検知装置本体では、これらの位置把握と出力メッセージの識別を行う。従って、センサ、受信機側にも識別情報送出などの機能付加が必要となる。各運転台屋根上にGPSアンテナ111,131が設置されるとすれば、単純に冗長構成になるということで信頼性が向上するだけでなく、編成長が長いほど同一要因(ビルとか駅の庇など)による遮蔽等の影響を受け難くなるという利点がある。
【0055】
また、受信機時計が同期していれば、離れた運転台上の受信機が別々の衛星を1機ずつ捕捉できるような状況でも測位できる。
【0056】
このような場合について、詳細に説明する。
【0057】
列車の前後にGPS受信機を配置すると、ビルとか駅構内の庇などの軽微な遮蔽物があっても列車の前後では見晴らしが異なることにより、異なった衛星を捕捉可能である。ここでは、このように別のGPS受信機で受信した疑似距離を用いることで軽微な遮蔽によるGPS測位不能を避ける受信方式をとることができる。
【0058】
図6はかかる列車において、3次元線路マップを測位計算に用いずGPS測位率を高める方法の説明図である。
【0059】
この図に示すように、2台のGPS受信機による測位は8つの未知数を持つ。この未知数を既知のものとして追加することで必要な衛星数を減らしていくことができる。図6は4衛星まで減らしていけることを示している。
【0060】
つまり、第1のGPS受信機と第2のGPS受信機との距離r、高低角φを不変、時計誤差dt1,dt2を予測可能と仮定すると、3次元線路マップを測位計算に用いず4衛星でGPS測位が可能であり、慣性センサからの情報なしで、測位が可能である。換言すれば、これに加えて3次元線路マップを測位計算に用いれば、列車上の複数のGPS受信機が少なくとも1機の衛星からのGPS信号を受信してから全体として少なくとも異なる2機の衛星からのGPS信号を受信することにより、慣性センサからの情報なしで、測位が可能である。
【0061】
そこで、以下に上記で不変及び予測可能とした未知数の予測方法について説明する。
【0062】
(1)GPS受信機の時計誤差の予測
真の時刻(この場合はGPS時刻)からGPS受信機の時刻はずれていく。しかし、単独測位を行うことで、そのGPS受信機の時計誤差を知ることができる。
【0063】
i =√〔(xi -x0 2 +(yi -y0 2 +(zi -z0 2 〕-s
…(4)
ここで、ri は疑似距離、(x0 ,y0 ,z0 )はGPS受信機の座標、
(xi ,yi ,zi )はi番目の衛星の座標を示す。
【0064】
4機の衛星を受信すると4個の方程式ができるので、(x0 ,y0 ,z0 )とGPS受信機の時計誤差sが求まる。
【0065】
いま仮にGPS受信機が受信不能となって時計誤差を予測しようとすると、計算できた(予測できた)期間のsの変化曲線から予測することになる。
【0066】
一般のGPS受信機の時計精度は、10-6程度であり、安定性もあまり良くない。
【0067】
図7及び図8は実際のGPS受信機の時計誤差の変化を示す図であり、それぞれ上段に時計誤差、下段に時計誤差の変化率を示しており、図7はその長時間の変化を、図8はその短時間の変化を示して示している。
【0068】
図8で15分間のデータで予測した変化率を30分のところまで延長すると、毎秒6mにも相当する予測はずれとなる。GPS受信機の時計の精度を10-8程度(十分実現可能な値)に高くすると、毎秒0.06m以内に予測は入ることになり、実用的な範囲での予測が可能である。
【0069】
(2)GPS受信機間の高低差の不変性
列車が高低差のある線路を登り降りすることでGPS受信機の高低差(高低角φ)が変化するが、これが期待する計測位置の誤差に比べ少なければこの条件は成り立つ。つまり、高低角φを受信できなくなった時の値に固定する。
【0070】
(3)GPS受信機間の距離の不変性
列車がカーブを曲がるとGPS受信機間の距離rが変化するが、これが期待する計測位置の誤差に比べて少なければ、この条件は成り立つ。つまり、距離rを受信できなくなった時の値に固定する。
【0071】
このように、これらの値を仮定することで測位計算を行う。
【0072】
図9は本発明の第2実施例の慣性センサなしでGPS測位率を高める列車位置検知方法を示す模式図である。
【0073】
前述の方法で、第1のGPS受信機301と第2のGPS受信機302の時計誤差及び2点間のベクトルが予測できたとして、第2のGPS受信機302で受信した疑似距離を予測時計誤差で時計誤差を補正後、第1のGPS受信機301の場所で受信した疑似距離に変換する。
【0074】
合計4個の衛星のデータがあれば、上記式(4)に値を代入して測位計算機303により演算を行い測位計算して測位することができる。換言すれば、これに加えて3次元線路マップを用いれば合計2個の衛星のデータがあれば、測位計算して測位することができる。この測位計算機303は高度な処理能力を必要としない。
【0075】
このように、本発明では、列車編成が長いという特徴を利用して、ある測位地点では受信不能な衛星情報を他のGPS受信機で補い、より信頼性の高いGPS測位を行うことができる。
【0076】
完全性の向上については、複数アンテナの位置関係に基づいて各受信機出力を相互にチェックすることが可能となる。また、複数のGPS受信機を異機種とすることで、バグ等による誤りを排除できる可能性がある。
【0077】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0078】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0079】
(1)3次元線路マップを用いる列車のGPS測位においては、列車の前方、後方(方位)の中低仰角の2衛星を捕捉できる状況で最も測位精度が良くなる。鉄道では、トンネル前後を除くと通常は線路の前後方向の上空は開けているため、本発明を用いることにより、市街地や山間部などにおける測位精度、信頼性の飛躍的向上が期待できる。すなわち、本発明は、市街地が拡がり、山間部の多い日本の鉄道に適した方式であると言える。
【0080】
(2)3機以上の衛星が捕捉できる場合は、航法システムのRAIM(receiver autonomous integrity monitoring)と同様にチェックに使えるため、完全性の向上につながる。また、3次元線路マップ上に測位解が求められない場合は、GPS信号の異常とみなすことができるため、同様に完全性の向上につながる。
【0081】
(3)トンネル内などGPS衛星を捕捉できない場合でも、3次元線路マップとの相性が良い慣性センサ(加速度センサ、角速度センサ)を用い、3次元線路マップとのマッチング処理を行うことによって、位置検知精度を向上させることができる。
【0082】
(4)準天頂衛星が運用されれば、常時天頂付近に配置される衛星がVDOP(Vertical Dilution of Precision)改善に貢献するため、高度を含む3次元線路マップの有用性が高まる。
【0083】
以上のように、本発明の列車位置検知装置は、既に提案した列車位置検知装置を更に改良して線路マップの3次元化により、GPS測位の性能を向上させ、かつ慣性センサ(加速度センサ、角速度センサ)との親和性を高めることによって列車位置検知装置としての大幅な性能向上が込めるものである。
【0084】
また、精密な3次元線路マップは、準天頂衛星の運用により測位精度が向上し受信機が使いやすいものになれば、線路、周辺設備、構造物の絶対位置管理など多用途に利用できる可能性がある。但し、3次元線路マップを利用したアプリケーションが成立するには、国総研高度情報化研究センターにおいて取り組まれているようなデータ更新の枠組みの構築が極めて重要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる3次元線路マップの構造の模式図である。
【図2】 本発明にかかる3次元線路マップを用いる列車のGPS測位の原理の説明図である。
【図3】 本発明にかかる列車位置検知装置の最小構成図である。
【図4】 本発明にかかる列車位置検知装置の構成図である。
【図5】 本発明の第1実施例を示す列車位置検知装置の構成図である。
【図6】 本発明の第2実施例の慣性センサなしでGPS測位率を高める方法の説明図である。
【図7】 実際のGPS受信機の時計誤差の変化(長時間の変化)を示す図である。
【図8】 実際のGPS受信機の時計誤差の変化(短時間の変化)を示す図である。
【図9】 本発明の第2実施例の慣性センサなしでGPS測位率を高める列車位置検知方法を示す模式図である。
【符号の説明】
1,12 線路
2,13 軌道中心線(点線)
3 勾配
4 縦曲線
5 直線
6 緩和曲線
7 円曲線
11,101 列車
14 第1の衛星
15 第2の衛星
21,111,131 列車に分散配置されたGPSアンテナ
22,112,132 GPS受信機
23,30,113,133 列車位置検知装置
24 測位計算部
25,202 線路の特定・トレース部
26 レール面からのアンテナ高さ記憶装置
27,204 3次元線路マップ記憶装置
28,114,134 角速度センサ
31,115,135 加速度センサ
32,205 線路のトレース部
101-1,101-2,…,101-n 複数の車両
110 第1の列車位置検知システム
121 車内LAN
130 第nの列車位置検知システム
201 測位計算及びチェック部
203 各センサの編成上の位置情報記憶装置
301 第1のGPS受信機
302 第2のGPS受信機
303 測位計算機
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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