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明細書 :車両用トラクション制御装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4112955号 (P4112955)
公開番号 特開2004-176574 (P2004-176574A)
登録日 平成20年4月18日(2008.4.18)
発行日 平成20年7月2日(2008.7.2)
公開日 平成16年6月24日(2004.6.24)
発明の名称または考案の名称 車両用トラクション制御装置
国際特許分類 F02D  29/02        (2006.01)
F02D  41/10        (2006.01)
FI F02D 29/02 311A
F02D 41/10 380Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2002-341248 (P2002-341248)
出願日 平成14年11月25日(2002.11.25)
審査請求日 平成17年4月27日(2005.4.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】村上 浩一
【氏名】中村 英男
個別代理人の代理人 【識別番号】100090033、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 博司
【識別番号】100093045、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 良男
審査官 【審査官】後藤 信朗
参考文献・文献 特開昭61-072851(JP,A)
特開昭62-261564(JP,A)
特開平06-141403(JP,A)
調査した分野 F02D 29/02
F02D 41/10
特許請求の範囲 【請求項1】
ドライバが操作するノッチ指令またはノッチ指令に対応したノッチ信号および車両速度に基いてアクセル開度を算出して駆動力を制御する車両用トラクション制御装置において、
ノッチ指令またはノッチ信号と車両速度に応じて発揮しようとする駆動力を粘着係数に換算して設定した粘着係数マップに基いて、操作したノッチ指令またはノッチ信号に対する目標の粘着係数を求める粘着係数算出手段と、
着係数に換算した引張力を得るに必要なアクセル開度を粘着係数と車両速度に応じて設定したアクセルマップに基いて、前記求められた目標の粘着係数に対するアクセル開度を求めるアクセル算出手段とを備えたことを特徴とする車両用トラクション制御装置。
【請求項2】
スリップ再粘着制御において、駆動輪速度と非駆動輪速度の速度差、並びに駆動輪速度の加減速度の少なくとも一方に基いてスリップ収束と判断した以降、スリップ中に予測した粘着係数からノッチ指令またはノッチ信号に相当する粘着係数まで目標の粘着係数を増加する目標値増加手段により駆動力を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用トラクション制御装置。
【請求項3】
前記目標値増加手段は、ドライバが操作するノッチ指令またはノッチ信号と車両速度に応じて設定した粘着係数の増加量および増加時間に基いて目標の粘着係数を増加することを特徴とする請求項2に記載の車両用トラクション制御装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両等の車両トラクション制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼル車両における駆動系の一般的なシステム構成として、次のようなものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この駆動系のシステムは、変速機内のクラッチの接続や開放を行う変速機制御装置、機関の燃料供給量を調節して機関出力の制御を行う燃料制御装置、駆動輪及び非駆動輪の速度検出を行うための速度発電機などから構成される。
ドライバが主幹制御器で操作(入力)したノッチ指令情報は、変速機制御装置に入力され、同制御装置はノッチ指令情報に対応したノッチ信号を燃料制御装置に出力する。燃料制御装置はノッチ信号に対応した燃料供給量を確保するためのアクチュエータ駆動信号を、噴射ポンプに付属するアクチュエータに出力し、機関出力の調節を行う。機関出力は、変速機内のトルクコンバータやギヤトレインによりトルク変換(動力変換)された後、推進軸、減速機を経て駆動軸に伝達される。
【0003】
このような、駆動系のシステムにおける駆動力の制御では、図10に示すように、主幹制御器からのノッチ指令は変速機制御装置に入力され、同装置はノッチ指令に対応したノッチ信号(例えば、ノッチ指令5Nでノッチ信号のIN1~IN3をHi、IN4をLoの組合せ)を燃料制御装置に出力する。燃料制御装置は、ノッチ信号に対応するアクセル、例えばノッチ指令4Nでアクセル80%に読み替え、このアクセルに対応するアクチュエータ駆動信号を噴射ポンプに出力することによって、ほぼフラットな特性の機関出力が得られる。機関出力は変速機内にあるトルクコンバータに伝達され、トルク変換される。右肩下がりであるトルクコンバータ出力特性が、そのまま引張力特性として表れる。このように、燃料制御装置は、ノッチ指令に対応する固定された5段階のアクセルで機関出力を制御する。このため引張力特性、すなわち駆動力は、機関出力特性とトルクコンバータ出力特性によって決まる。
【0004】
【特許文献1】
特開平9-324667号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように従来のトラクション制御システムでは、ノッチ指令に対応する固定された5段階のアクセルで機関出力を制御しているので、例えば、一定の駆動力(引張力)を得るためには、ドライバが車両速度に応じてノッチ指令を変えて調整しなければならないばかりか、このノッチ指令を変えてもアクセルは5段階であるので、車両速度に対して一定の駆動力(引張力)を得るのは困難であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車両速度に対して一定の駆動力(引張力)を容易かつ確実に得ることができる車両用トラクション制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、例えば図2および図3に示すように、ドライバが操作するノッチ指令またはノッチ指令に対応したノッチ信号および車両速度に基いてアクセル開度を算出して駆動力を制御する車両用トラクション制御装置において、
ノッチ指令またはノッチ信号と車両速度に応じて発揮しようとする駆動力を粘着係数に換算して設定した粘着係数マップ20aに基いて、操作したノッチ指令またはノッチ信号に対する目標の粘着係数を求める粘着係数算出手段20と、
着係数に換算した引張力を得るのに必要なアクセル開度を粘着係数と車両速度に応じて設定したアクセルマップ21aに基いて、前記求められた目標の粘着係数に対するアクセル開度を求めるアクセル算出手段21とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ドライバがノッチ指令またはノッチ信号を操作すると粘着係数算出手段が粘着係数マップに基いて、操作されたノッチ指令またはノッチ信号に対する目標の粘着係数を求め、この求められた目標の粘着係数に対するアクセル開度をアクセル算出手段がアクセルマップに基いて粘着係数と車両速度に応じて算出する。つまり、操作されたノッチ指令またはノッチ信号を粘着係数(粘着力)として捉え、固定された5段階のアクセルではなく、車両の走行性能性を加味し速度に応じて0~100%の多段階で変化するアクセル開度で機関出力を制御する。この結果、粘着係数マップで設定したノッチ指令またはノッチ信号に対応する粘着係数どおりの引張力を得ることが可能となる。
したがって、ドライバがノッチ指令またはノッチ信号を操作することで、車両速度に対して一定の駆動力(引張力)を容易かつ確実に得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用トラクション制御装置でのスリップ再粘着制御において、駆動輪速度と非駆動輪速度の速度差、並びに駆動輪速度の加減速度の少なくとも一方に基いてスリップ収束と判断した以降、スリップ中に予測した粘着係数からノッチ指令またはノッチ信号に相当する粘着係数まで目標の粘着係数を増加する目標値増加手段により駆動力を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、スリップ収束と判断した以降、スリップ中に予測した粘着係数からノッチ指令またはノッチ信号に相当する粘着係数まで目標値増加手段によって目標の粘着係数を増加するように駆動力を制御するので、粘着力を有効利用でき、駆動力の回復を図ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用トラクション制御装置において、前記目標値増加手段22は、ドライバが操作するノッチ指令またはノッチ信号と車両速度に応じて設定した粘着係数の増加量および増加時間に基いて目標の粘着係数を増加することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ドライバが操作するノッチ指令またはノッチ信号と車両速度に応じて設定した粘着係数の増加量および増加時間に基いて目標値増加手段が目標の粘着係数を増加するので、ドライバの操作量を反映して駆動力の緩やかな増加が行え、予測した粘着力から徐々に駆動力を増加して、加速性を改善することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に係る車両用トラクション制御装置を備えた鉄道用ディーゼル車両の機器構成の一例を示すものである。この図に示すように、本トラクション制御装置は、変速機内のクラッチの接続や開放を行う変速機制御装置、機関の燃料供給量を調節して機関出力の制御を行う燃料制御装置、駆動輪及び非駆動輪の速度検出を行うための速度発電機などから構成される。
ドライバが主幹制御器で操作したノッチ指令情報は、変速機制御装置に入力され、同制御装置はノッチ指令情報に対応したノッチ信号を燃料制御装置に出力する。燃料制御装置はノッチ信号に対応した燃料供給量を確保するためのアクチュエータ駆動信号を、噴射ポンプに付属するアクチュエータに出力し、機関出力の調節を行う。機関出力は、変速機内のトルクコンバータやギヤトレインによりトルク変換(動力変換)された後、推進軸、減速機を経て駆動軸に伝達される。
【0015】
本トラクション制御装置は、図2に示すように、粘着係数算出手段20とアクセル算出手段21とを前記燃料制御装置に備えている。
粘着係数算出手段20は、ノッチ指令またはノッチ信号と車両速度に応じて発揮しようとする駆動力を粘着係数に換算して設定した粘着係数マップ20a(図3参照)に基いて、操作したノッチ指令またはノッチ信号に対する目標の粘着係数を求めるものである。
また、アクセル算出手段21は車両の走行性能を加味して粘着係数に換算した引張力を得るに必要なアクセル開度を粘着係数と車両速度に応じて設定したアクセルマップ21a(図3参照)に基いて、前記求められた目標の粘着係数に対するアクセル開度を求めるものである。
前記車両の走行性能とは、例えば、図3に示すように機関出力特性25、変速機(トルクコンバータ)の出力特性26、図示しない入力特性、減速機27の減速比、車輪径、車両重量等から得られるものである。そしてこれらによって、アクセル一定での粘着力特性(車両の走行性能)28を得ることができ、この車両の走行性能28によりアクセルマップ21aを得ることができる。
【0016】
さらに、本トラクション制御装置は、目標値増加手段22を備えている。この目標値増加手段22は、スリップ再粘着制御において、駆動輪速度と非駆動輪速度の速度差、並びに駆動輪速度の加減速度の少なくとも一方に基いてスリップ収束と判断した以降、スリップ中に予測した粘着係数からノッチ指令またはノッチ信号に相当する粘着係数まで目標の粘着係数を緩やかに増加するように駆動力を制御するものである。
さらに、目標値増加手段22は、ドライバが操作するノッチ指令と車両速度に応じて設定した粘着係数の増加量および増加時間に基いて目標の粘着係数を増加するようになっている。
【0017】
また、本トラクション制御装置は、駆動輪速度と非駆動輪速度の速度差、もしくは駆動輪加減速度を基にスリップ状態を判断する。
【0018】
スリップが未発生の通常のトラクション制御の場合、図3に示すように、ドライバがノッチ指令(ノッチ信号)を操作して、変速機制御装置からノッチ信号が燃料制御装置に入力され、速度発電機から非駆動輪速度情報が燃料制御装置に入力されると、粘着係数算出手段20が粘着係数マップ20aに基いて、前記ノッチ信号に対する目標の粘着係数を求める。なお、粘着係数マップ20aは、ノッチ指令またはノッチ信号と車両速度に応じて発揮しようとする駆動力を粘着係数に換算して設定したマップである。
【0019】
そして、この求められた目標の粘着係数に対するアクセル開度をアクセル算出手段21がアクセルマップ21aに基いて粘着係数と車両速度に応じて算出する。つまり、操作されたノッチ指令またはノッチ信号を粘着係数(粘着力)として捉え、固定された5段階のアクセルではなく、車両の走行性能を加味し速度に応じて0~100%の多段階で変化するアクセルで機関出力を制御する。なお、アクセルマップ21aは車両の走行性能を加味して粘着係数に換算した引張力を得るに必要なアクセル開度を粘着係数と車両速度に応じて設定したマップである。
この結果、図3の引張力特性のグラフ20bに示すように、粘着係数マップ20aで設定したノッチ指令またはノッチ信号に対応する粘着係数どおりの引張力を得ることが可能となる。
したがって、ドライバがノッチ指令またはノッチ信号を操作することで、速度に対して一定の駆動力(引張力)を容易かつ確実に得ることができる。
【0020】
図4は本トラクション制御装置におけるトラクション制御の制御状況を示すタイムチャートである。図4に示すように本トラクション制御では、ドライバがノッチ指令(notch)を、切ノッチから1ノッチ、2ノッチ、3ノッチと操作していくと、粘着係数算出手段20が粘着係数マップ20aに基いて、操作されたノッチ指令(notch)またはノッチ信号に対する目標の粘着係数(μ_notch)を求め、この目標の粘着係数(μ_notch)が0.1、0.15、0.20と段階的に増加していく。そして、アクセル開度(Acc(μ、V))は、アクセルマップ21aに示すように、粘着係数ごとに速度に応じて上昇していくので、各粘着係数域では、アクセル開度(Acc(μ、V))が次第に上昇するように制御される。
【0021】
図5は本トラクション制御装置におけるトラクション制御の制御実測例を示すグラフである。図5に示すように、本トラクション制御では、ドライバがノッチ指令(notch)を、1ノッチ、2ノッチ、3ノッチと操作していくと、粘着係数算出手段20が粘着係数マップ20aに基いて、操作されたノッチ指令(notch)またはノッチ信号に対する目標の粘着係数(μ_notch)を求め、この目標の粘着係数(μ_notch)が0.1、0.15、0.20と段階的に増加していく。そして、アクセル開度(Acc(μ、V))は、アクセルマップ21aに示すように、粘着係数ごとに速度に応じて上昇していくので、各粘着係数域では、アクセル開度(Acc(μ、V))が次第に上昇するように制御され、推進軸トルクはほぼ一定となる。つまり、車両速度に対して一定の駆動力(引張力)を得ることができる。
【0022】
本トラクション制御装置によれば、操作されたノッチ指令またはノッチ信号を粘着係数(粘着力)として捉え、固定された5段階のアクセルではなく、車両の走行性能を加味し速度に応じて0~100%の多段階で変化するアクセル開度で機関出力を制御する。この結果、粘着係数マップで設定したノッチ指令またはノッチ信号に対応する粘着係数どおりの引張力を得ることが可能となる。
したがって、ドライバがノッチ指令またはノッチ信号を操作することで、車両速度に対して一定の駆動力(引張力)を容易かつ確実に得ることができる。
【0023】
また、速度に応じたきめ細かな引張力の設定が可能であるめ、ディーゼル車両の引張力特性を電車の引張力特性に合せることができ、よって、DCS(ディーゼルコントロールシステム)が無くても、ディーゼル車両と電車との動力協調運転を容易に行える。
なお、DCS(ディーゼルコントロールシステム)とは、例えば電車からのノッチ指令(信号)を受けて、ディーゼル車両側の変速機制御装置に対するノッチ指令(信号)を速度に応じて読み替えて出力するものである。
【0024】
次に、本トラクション制御装置によるスリップ再粘着制御について説明する。図6はスリップ再粘着制御の処理内容を示すフローチャートである。なお、この処理は図示しないスリップ制御装置の電源がオンとなったときステップ100より開始される。
【0025】
まず、ステップ100にて、各種フラグや各種カウンタの初期設定を行う。続くステップ110では、速度発電機の駆動輪速度情報(駆動輪の回転パルス信号)および非駆動輪速度情報(非駆動輪の回転パルス信号)を基に駆動輪速度Vd、非駆動輪速度Vtを演算する。
【0026】
次にステップ120でノッチ指令の認識処理を行った後、ステップ130で目標の粘着係数を求める。すなわち、粘着係数算出手段20が粘着係数マップ20aに基いて、操作されたノッチ指令またはノッチ信号に対する目標の粘着係数を求める。
次にステップ140でアクセル開度を算出する。すなわち、ステップ130で求められた目標の粘着係数に対するアクセル開度をアクセル算出手段21がアクセルマップ21aに基いて粘着係数と車両速度に応じて算出する。これによって、上述したような車両の走行性能を加味し速度に応じて0~100%の多段階で変化するアクセルで機関出力を制御する。
【0027】
次にステップ200でノッチ信号が1ノッチ以上であること、速度段が中立位置以外にあること、逆転機が中立位置以外にあることをスリップ制御実施の可能条件とし、駆動輪速度Vdと非駆動輪速度Vtの速度差ΔVを演算する。速度差ΔVがスリップ発生検知用しきい値を超えた場合にスリップ発生と判断する。
スリップが発生していないと判断したら、スリップ再粘着制御を終了する。
一方、スリップ発生と判断したら、ステップ210において、スリップ中に粘着係数を予測する。
次に、ステップ220で、スリップ発生と判断した地点でアクセルを絞りスリップの抑制を図る(減処理)。
次に、ステップ230でスリップ収束と判断したら、推定(予測)した粘着係数まで一気に目標の粘着係数を増加させ、一定の駆動力を確保する。この場合、ステップ240で、目標の粘着係数に対するアクセル開度をアクセル算出手段21がアクセルマップ21aに基いて粘着係数と車両速度に応じて算出し、アクセルで機関出力を制御して、一定の駆動力を確保する。
【0028】
次に、ステップ250で、目標値増加手段22によって駆動力を制御する。すなわち、前記推定した粘着係数からノッチ指令に相当する粘着係数まで目標の粘着係数を緩やかに増加するように駆動力を制御する。この場合、ドライバが操作するノッチ指令またはノッチ信号と車両速度に応じて設定した粘着係数の増加量および増加時間に基いて目標の粘着係数を増加する。
【0029】
目標値増加手段22は、ドライバが操作するノッチ指令またはノッチ信号と車両速度に応じて設定した粘着係数の増加量および増加時間に基いて目標の粘着係数を増加するようになっており、例えば図7に示すデータテーブルに基き、粘着係数を増加するようになっている。ここでは、ノッチ指令またはノッチ信号が大きいほど粘着係数の増加量が大きくなるように設定し、また、ノッチ指令またはノッチ信号が大きいほど、粘着係数の増加時間が短くなるように設定している。
【0030】
そして、ステップ260で、増加する粘着係数に対するアクセル開度をアクセル算出手段21がアクセルマップ21aに基いて粘着係数と車両速度に応じて算出し、アクセルで機関出力を制御して、一定の駆動力を確保する。このようにしてスリップ再粘着制御を行う。
【0031】
スリップ再粘着制御の後、ステップ270で、上記ステップ200と同様にしてスリップ発生を判断し、再びスリップが発生したらステップ220に移行しその後は上記と同様の工程を経る。
一方、ステップ270でスリップが発生していないと判断されると、ステップ280で目標の粘着係数がノッチ指令に相当する粘着係数に到達しているかどうかが判断される。
【0032】
目標の粘着係数が到達していなければ、ステップ250に移行し、その後は上記と同様の工程を経る。
一方、目標の粘着係数が到達していれば、スリップ再粘着制御を終了する。
【0033】
図8は本トラクション制御装置におけるスリップ再粘着制御の制御状況を示すタイムチャートである。図8に示すようにスリップ再粘着制御では、スリップ発生と判断したA点でアクセルを絞りスリップの抑制を図る(減処理)。
次に、スリップ収束と判断したB点で、スリップ中に予測した粘着係数(μ_slip)のμB点まで一気に目標の粘着係数を増加させる。以降は、時間経過に応じて目標の粘着係数をμC点、μD点と徐々に増加させ、さらなる駆動力の回復を図る(目標値増加手段による増加処理)。この場合、アクセル開度も次第に増加してく。このアクセル開度の増加に伴って、駆動力が確保され非駆動輪速度すなわち車両速度は次第に増加していく。
【0034】
図9は、スリップ再粘着制御での制御実測例を示すグラフである。図9に示すように、ドライバがノッチ指令(notch)を、1ノッチ、2ノッチ、3ノッチと操作していくと、粘着係数算出手段20が粘着係数マップ20aに基いて、操作されたノッチ指令またはノッチ信号に対する目標の粘着係数(μ_notch)を求め、目標の粘着係数(μ_notch)が0.1、0.15、0.20と段階的に増加していく。そして、アクセル開度(Acc(μ、V))は、アクセルマップ21aに示すように、粘着係数ごとに速度に応じて上昇していくので、各粘着係数域では、アクセル開度(Acc(μ、V))が次第に上昇するように制御され、推進軸トルクはほぼ一定となる。つまり、車両速度に対して一定の駆動力(引張力)を得ることができる。
【0035】
そして、A点でスリップ発生と判断されると、A点でアクセルを絞り空転の抑制を図り、スリップ収束と判断したB点で、スリップ中に予測した粘着係数(μ_slip)のμB点まで一気に目標の粘着係数を増加させ、一定な駆動力を確保する。以降は、時間経過に応じて目標の粘着係数を徐々に増加させ、さらなる駆動力の回復を図る。この場合、アクセル開度(Acc(μ、V))も次第に増加していき、このアクセル開度の増加に伴って、駆動力が確保され非駆動輪速度すなわち車両速度は次第に増加していく。
【0036】
このように、本スリップ再粘着制御によれば、スリップ収束と判断した以降、スリップ中に予測した粘着係数からノッチ指令またはノッチ信号に相当する粘着係数まで目標値増加手段22によって目標の粘着係数を緩やかに増加するように駆動力を制御するので、粘着力を有効利用でき、駆動力の回復を図ることができる。
また、目標値増加手段22によりドライバが操作するノッチ指令またはノッチ信号と車両速度に応じて設定した粘着係数の増加量および増加時間に基いて目標の粘着係数を増加するので、ドライバの操作量を反映して駆動力の緩やかな増加が行え、予測した粘着力から徐々に駆動力を増加して、加速性を改善することができる。
【0037】
また、スリップ再粘着制御が無くても、ノッチ指令が一定の粘着係数に対応しており、ドライバの粘着状況判断がそのまま生かせるため、スリップ発生の防止及びスリップ収束後の駆動力確保に有効である。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ノッチ指令またはノッチ信号を粘着係数(粘着力)として捉え、車両の走行性能を加味し速度に応じて0~100%の多段階で変化するアクセル開度で機関出力を制御している。この結果、粘着係数マップで設定したノッチ指令またはノッチ信号に対応する粘着係数どおりの引張力を得ることが可能となり、ドライバがノッチ指令またはノッチ信号を操作することで、車両速度に対して一定の駆動力(引張力)を容易かつ確実に得ることができる。
また、スリップ収束と判断した以降、スリップ中に予測した粘着係数からノッチ指令またはノッチ信号に相当する粘着係数まで目標値増加手段によって目標の粘着係数を緩やかに増加するように駆動力を制御するので、粘着力を有効利用でき、駆動力の回復を図ることができ、さらに、ノッチ指令またはノッチ信号と車両速度に応じて設定した粘着係数の増加量および増加時間に基いて目標の粘着係数を増加するので、ドライバの操作量を反映して駆動力の緩やかな増加が行え、予測した粘着力から徐々に駆動力を増加して、加速性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両用トラクション制御装置の一例を示すもので、該トラクション制御装置を備えた鉄道用ディーゼル車両の機器構成を示す図である。
【図2】同、トラクション制御装置のブロック図である。
【図3】同、トラクション制御の処理内容を示すブロック図である。
【図4】同、トラクション制御の制御状況を示すタイムチャートである。
【図5】同、トラクション制御での制御実測例を示すグラフである。
【図6】同、スリップ再粘着制御の処理内容を示すフローチャートである。
【図7】同、目標値増加手段での粘着係数の増加量及び増加時間を示すデータテーブルである。
【図8】スリップ再粘着制御の制御状況を示すタイムチャートである。
【図9】スリップ再粘着制御での制御実測例を示すグラフである。
【図10】従来のトラクション制御の処理内容を示すブロック図である。
【符号の説明】
20 粘着係数算出手段
20a 粘着係数マップ
21 アクセル算出手段
21a アクセルマップ
22 目標値増加手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9