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明細書 :鉄道車両用車体の弾性振動低減方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4198455号 (P4198455)
公開番号 特開2004-203171 (P2004-203171A)
登録日 平成20年10月10日(2008.10.10)
発行日 平成20年12月17日(2008.12.17)
公開日 平成16年7月22日(2004.7.22)
発明の名称または考案の名称 鉄道車両用車体の弾性振動低減方法
国際特許分類 B61F   5/24        (2006.01)
B61D  17/00        (2006.01)
B61D  49/00        (2006.01)
B61F   5/30        (2006.01)
FI B61F 5/24 B
B61F 5/24 C
B61D 17/00 Z
B61D 49/00 ZABA
B61F 5/30 C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2002-373667 (P2002-373667)
出願日 平成14年12月25日(2002.12.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2002年9月17日金沢大学角間キャンパスにおいて開催された社団法人日本機械学会機械力学・計測制御部門講演会で発表
審査請求日 平成17年6月27日(2005.6.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】富岡 隆弘
【氏名】瀧上 唯夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】出口 昌哉
参考文献・文献 特開2001-158349(JP,A)
特開2001-199334(JP,A)
特許第2855735(JP,B2)
特開平07-149235(JP,A)
特開2001-071900(JP,A)
特開2002-029420(JP,A)
富岡,鉄道車両の乗り心地改善のための車体,台車特性および車体・台車間結合要素特性の最適化,日本機械学会論文集(C編),日本,社団法人日本機械学会,2002年 7月,第68巻,第671号,p.180-187
富岡 外2名,鉄道車両の車体,台車および車体・台車特性が振動乗り心地に与える影響,日本機械学会論文集(C編),日本,社団法人日本機械学会,2000年 5月,第66巻,第645号,p.220-228
富岡 外1名,乗心地改善のための車体・台車間結合要素特性の適切化,鉄道総研報告,日本,財団法人鉄道総合技術研究所,2000年 5月23日,第14巻,第5号,p.33-38
谷藤,ボギー車の左右振動解析のための一計算法(車輪・レール間の接触力を考慮した線形モデルの検証),日本機械学会論文集(C編),日本,社団法人日本機械学会,1986年 7月,第52巻,第479号,p.1930-1936
谷藤,乗り心地管理のための振動解析システムの開発(第1報,振動解析システムの概要),日本機械学会論文集(C編),日本,社団法人日本機械学会,1986年 9月,第52巻,第481号,p.2405~2408
谷藤 外2名,高速で走行するボギー車の車体上下曲げ振動(台車間隔による軌道不整量平均化の影響),日本機械学会論文集(C編),日本,社団法人日本機械学会,1990年 9月,第56巻,第529号,p.9-16
谷藤,ボギー車の前後振動解析(軌道不整で加振される定振動数の持続振動),日本機械学会論文集(C編),日本,社団法人日本機械学会,1990年12月,第56巻,第532号,p.14-19
瀧上 外1名,腰掛の質量を利用したダイナミックダンパによる鉄道車両の弾性振動低減手法,日本機械学会CD-ROM論文集,日本,社団法人日本機械学会,2002年 9月,No.02-9,413
調査した分野 B61F 5/24
B61D 17/00
B61D 49/00
B61F 5/30
F16F 9/00
F16F 13/00
F16F 15/00
特許請求の範囲 【請求項1】
車体上下曲げ振動低減のため、軸箱前後支持剛性および車体と台車間の前後系結合剛性を下記の式に基づいて最適化することを特徴とする鉄道車両用車体の弾性振動低減方法。
【数1】
JP0004198455B2_000013t.gif
ここで、f0 車体上下曲げ振動の固有振動数、kw は軸箱前後支持剛性、Kx は車体と台車間の前後系合成結合剛性、Me は台車の全等価質量、mweは回転慣性を考慮した輪軸等価質量である。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道車両用車体の弾性振動低減方法において、前記軸箱前後支持剛性を調整することを特徴とする鉄道車両用車体の弾性振動低減方法。
【請求項3】
請求項1記載の鉄道車両用車体の弾性振動低減方法において、前記車体と台車間の前後系合成結合剛性を調整することを特徴とする鉄道車両用車体の弾性振動低減方法。
【請求項4】
請求項1記載の鉄道車両用車体の弾性振動低減方法において、前記軸箱前後支持剛性及び前記車体と台車間の前後系合成結合剛性を調整することを特徴とする鉄道車両用車体の弾性振動低減方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の乗り心地に影響を及ぼす鉄道車両用車体の弾性振動低減方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両の乗り心地に対する車体上下弾性振動の影響は大きい。特に、車体上下曲げ振動(以下、車体曲げ振動)の固有振動数は6~10Hzに存在することが多く、これは上下振動加速度に対して、人間の感覚が鋭敏な領域とされていることから、車体曲げ振動の低減は乗り心地改善のために重要である。
【0003】
車体曲げ振動の低減のためには車体、特に、台枠側梁や側構体の剛性向上を図ることがまず考えられる。しかし、そのためには車体構造の設計変更が必要となり、完成車に対して実施しづらいことや、重量増加を伴うことなどから、車体構造に変更を加えない対策として、ダイナミックダンパを用いる方法や粘弾性層と拘束層とからなる制振材を用いる方法などがこれまでに提案されている。
【0004】
このうち制振材を用いた方法については、質量約80kgの制振材を新幹線(登録商標)車両の屋根に貼付して走行試験を実施し、乗り心地レベル(以下LT )で2dB以上の乗り心地改善効果が得られている。
【0005】
これら車体そのものに関する対策に対し、本願発明者らは車体と台車の前後系を含む結合要素の特性を適切化することにより、車体曲げ振動を低減することを検討してきた(下記非特許文献[1],[2])。そして、車体・台車系の複数の特性値の組合せを適切化することが重要なことを示し、そのための効率的な計算法を提案するとともに、新幹線(登録商標)による実車走行試験を行って、LT で2dB以上の車体曲げ振動低減効果を確認している。
【0006】
【非特許文献1】
富岡隆弘・鈴木康文・上野友寛,「鉄道車両の車体・台車および車体・台車間結合要素特性が振動乗り心地に与える影響」日本機械学会論文集,66-645,C(2000),1636-1644
【0007】
【非特許文献2】
富岡隆弘・鈴木康文,「乗心地改善のための車体・台車間結合要素特性の適切化」鉄道総研報告,Vol.14,No.5,2000,33-38
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、車体と台車間の駆動力や制動力を伝える牽引リンク(一本リンクまたはボルスタアンカ)とヨーダンパの緩衝ゴムの変更といった比較的簡便で重量増加を伴わない方法により車体曲げ振動低減効果が得られることを示してきたが、その一方で、そのような振動低減効果が得られる詳しいメカニズムについての検討はこれまで十分とはいえず、上述したような特性値の組合わせの適値は対象車両ごとに異なるが、それらを適値に設定するための一般的な条件は明らかになっていなかった。
【0009】
本発明では、車体・台車間結合要素特性の適切化による車体曲げ振動低減のメカニズムに関して、走行試験データと振動解析モデルを用いた理論解析および数値計算により検討した結果に基づき、乗り心地のよい鉄道車両を実現するための鉄道車両用車体の弾性振動低減方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道車両用車体の弾性振動低減方法において、車体上下曲げ振動低減のため、軸箱前後支持剛性および車体と台車間の前後系結合剛性を下記の式に基づいて最適化することを特徴とする。
【0011】
【数2】
JP0004198455B2_000002t.gif ここで、f0 車体上下曲げ振動の固有振動数、kw は軸箱前後支持剛性、Kx は車体と台車間の前後系合成結合剛性、Me は台車の全等価質量、mweは回転慣性を考慮した輪軸等価質量である。
【0012】
〔2〕上記〔1〕記載の鉄道車両用車体の弾性振動低減方法において、前記軸箱前後支持剛性kw を調整することを特徴とする。
【0013】
〔3〕上記〔1〕記載の鉄道車両用車体の弾性振動低減方法において、前記車体と台車間の前後系合成結合剛性Kx を調整することを特徴とする。
【0014】
〔4〕上記〔1〕記載の鉄道車両用車体の弾性振動低減方法において、前記軸箱前後支持剛性kw 及び車体と台車間の前後系合成結合剛性Kx を調整することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
まず、従来の技術との関係で本発明を説明する。
【0017】
(1)車体・台車間の前後系結合要素特性適切化による車体曲げ振動低減効果 図1に、ある新幹線(登録商標)車両(Model Iと呼ぶ)の走行試験により得られた車体床中央における振動加速度パワースペクトル密度(PSD)を示す。
【0018】
図1において細線は現状諸元の場合、太線は一本リンクとヨーダンパの緩衝ゴムの剛性と損失係数を変更し、上下振動に関して乗り心地からみた適値になるよう設定した場合を示している(一本リンク、ヨーダンパ緩衝ゴム剛性をそれぞれ現状の2倍、3倍としたもの。以下、変更諸元と呼ぶ)。現状諸元の場合の8.5Hz付近にみられる卓越したピークが車体曲げ振動によるものであるが、変更諸元の場合はこのピークが大幅に低下しており、車体曲げ振動が低減されていることが分かる。
【0019】
図2は本発明にかかる数値シミュレーションのための鉄道車両モデルを示す図である。
【0020】
この図において、1は車体、2は台車枠、3は輪軸、4は空気ばね、5はヨーダンパとその緩衝ゴム、6は牽引リンクの緩衝ゴム、7は軸ばね、8は軸ばねダンパ、9は軸箱前後支持剛性である。
【0021】
図1に示される変更諸元は、図2に示す解析モデルを用いた車体1の応答計算により定めたものである。
【0022】
これまでの検討から、効果的な車体曲げ振動低減のためには各特性値を独立に適切化するのではなく組合せとして適切化することが必要なことが分かっているため、図1の変更諸元の決定には遺伝的アルゴリズム(GA)による同時最適化の手法を用いている。GAのような数値的な最適値探査手法を用いたのは、車体・台車間結合要素特性と車体曲げ振動との関係が必ずしも明確ではなく、対象車両ごとに異なる特性値の組合せを適値に設定するための一般的な条件が明らかでなかった、という事情による。
【0023】
本発明では、車体曲げ振動と特に関連が深いと考えられる車体1と台車枠2間の前後系結合要素特性(牽引リンク6とヨーダンパとその緩衝ゴム5の剛性)について、それらの適切化による車体曲げ振動低減のメカニズムを明らかにするとともに、その組合せ適切化のための条件式を提示する。
【0024】
図1の実測データではスペクトルの細かい変動があり見通しが悪いため、図2の解析モデルを用いた数値計算結果を図3に示す。これは同一軌道高低狂いが走行速度と各軸間距離に応じた時間差を持って4輪軸に入力される位相差加振に対する車体の応答を求めたもので、計算に用いた車両諸元は以下に示す表1のModel Iに示す通りである。
【0025】
【表1】
JP0004198455B2_000003t.gif 図3において、細線は現状諸元、太線は一本リンクとヨーダンパ緩衝ゴム剛性を変更諸元とした場合を表す。なお、この図3を含め、以下応答加速度PSDの数値計算には図4に示すような近似軌道狂いを入力として用いる。図3からも、現状諸元において8.5Hz付近にある車体曲げ振動のピークが、変更諸元では大きく低下していることが分かるが、位相差加振を行うことに起因するスペクトルの周期的な落込みが見られ、車体曲げ振動の低減がどのようなメカニズムによるのかをこの図から判断することは難しい。
【0026】
そこで、図3と同じ条件の車両に対し、4つの輪軸間で時間差を0とした仮想的な加振入力(4軸同相加振)を与えたときの車体床中央の応答を図5に示す。ここでは単位変位入力に対する応答変位の大きさ(周波数応答関数、以下FRFという)をプロットしてある。この図において、変更諸元のFRFに、現状諸元の場合に見られる8.8Hz付近のピークに近い周波数に谷が生じる原因としては、良く知られた「ダイナミックダンパ効果」が考えられる。
【0027】
(2)台車単体モデルの固有値解析
図5に示したように、車体と台車間の前後ばね系を適切化すると、変更諸元の車体のFRFには現状諸元における車体曲げ振動のピーク周波数に谷が生じる。これが何らかのダイナミックダンパ効果によるものとすれば、ダイナミックダンパとして作用する系の単体の固有振動数がこの谷の周波数に一致するはずである。
【0028】
そこで、ここでは図6に示すような減衰要素を無視した台車4自由度モデルを用いた固有値解析を行う。この台車系の自由度としては台車枠前後ut ,ピッチングθt , 2つの輪軸前後uw1,uw2の4つを考える。台車枠2の上下自由度を考慮していないのは、このモデルにおいては前後・ピッチングと台車枠上下自由度は非連成となるためである。台車枠および輪軸質量をmt ,mw 、台車ピッチング慣性半径をit 、牽引リンク、ヨーダンパの緩衝ゴム剛性をkb ,ky 、一台車あたりの牽引リンク、ヨーダンパの本数をnb ,ny 、軸ばねの剛性をkt 、軸箱前後支持剛性をkw とすると、この台車系の運動方程式は次式のようになる。
【0029】
【数3】
JP0004198455B2_000004t.gif ここでq,M,Kの要素は以下の通りである。
【0030】
【数4】
JP0004198455B2_000005t.gif ただし、mwe=mw [1+(iw /Rw 2 ]は回転慣性を考慮した輪軸等価質量,iw は左右軸まわりの輪軸の回転慣性半径,Rw は車輪半径であり、Jt =mt t 2 は台車枠のピッチング慣性モーメントである。
JP0004198455B2_000006t.gif【0031】
Kq=λMq …(2)
この一般固有値問題を解くことにより、この4自由度台車系の各固有振動数ωと固有モードを求めることができる。
【0032】
式(2)を用い、表1のModel Iの諸元を与えて、固有値解析を行った結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
JP0004198455B2_000007t.gif ここでのモードの分類は図7に示すとおりである。この表2から分かるように、変更諸元では台車枠と両輪軸とが一体となって前後に振動するTWIモードの固有振動数(8.877Hz)が、図5の車体曲げ振動のピーク周波数(8.8Hz)に近い値となっている。
【0034】
以上により、牽引リンクとヨーダンパの緩衝ゴム剛性の変更による車体曲げ振動低減の基本的なメカニズムは、台車枠と輪軸が一体となって前後振動するモードによるダイナミックダンパ効果である可能性が高いことがわかった。
【0035】
(3)車体曲げ振動低減のための車体・台車前後系剛性要素特性の最適条件
次に、牽引リンクやヨーダンパ緩衝ゴム剛性などの台車前後系ばね要素の剛性を車体曲げ振動低減のための適値に設定する条件について考える。上記した台車4自由度モデルの固有値を解析的に求めると非常に煩雑となり実用的でない。そこで、台車枠ピッチングの自由度を省略した3自由度モデルを考え、その固有値を解析的に求める。この場合、式(2)のマトリクスの要素は以下のようになる。
【0036】
【数5】
JP0004198455B2_000008t.gif この3自由系の固有値は次のようになる。
【0037】
【数6】
JP0004198455B2_000009t.gif ただし、Kx =nb b +ny y は車体・台車間の前後系の合成結合剛性であり、Me =mt +2mweは台車の全等価質量を表す。また、式(3)の3つの固有値のうち最初のものがWAモード,残りの2つのうち根号の符号が正のものがTWAモード、負のものがTWIモードに対応する。ここで関心があるのはTWIモードの固有値であるが、式(3)のままでは扱いが面倒なため、式の簡略化を考える。通常の台車の場合、根号の中の第一項に比べ第二項は小さいと考えられるため、(1-x)1/2 ≒1-x/2の関係(|x|≪1)を用いて根号をはずすとλTWI は次式のように変形できる。
【0038】
【数7】
JP0004198455B2_000010t.gif この固有値に対応する固有振動数が、車体曲げ振動の固有振動数f0 に一致するとき、車体曲げ振動が最も低減される。したがって、車体曲げ振動低減のための車体・台車前後系剛性要素の最適条件は次式の関係を満たす場合となる。
【0039】
【数8】
JP0004198455B2_000011t.gif すなわち、この条件式を用いることにより、台車前後系を車体曲げ振動に対するダイナミックダンパとして活用することが可能となる。この式を用いて、Model Iの固有振動数を計算すると、現状諸元の場合5.904Hz、変更諸元の場合8.656Hzとなる。これらの値は表2に示されているTWIモードの値と良く一致しており、近似式(5)の精度は実用上十分であると言える。ちなみに、このような3自由度系としてではなく、Kx 、Me からなる1自由度系の固有振動数f=〔√(Kx /Me )〕/2πを計算すると、Model Iの現状諸元で6.271Hz、変更諸元で9.957Hzとなり表2の結果との差が大きくなることから、台車枠と輪軸が一体で前後振動するモードの固有振動数であっても輪軸の自由度を考慮した解析が必要であることが分かる。また、今注目しているTWIモードの固有振動数に対しては台車枠のピッチング自由度を省略した影響は小さく、ここで行った3自由度モデルによる解析は妥当であると考えられる。
【0040】
(4)最適条件式を用いた車体・台車前後系剛性最適化
次に、これまでとは異なる新幹線(登録商標)車両を対象に、最適条件式(5)を用いて車体曲げ振動低減のための牽引リンクとヨーダンパの緩衝ゴム剛性の最適化を行う。ここで用いる車両諸元は表2にModel IIとして示したものである。
【0041】
まず、この車両諸元をもとに、車体曲げ振動に相当するFRF(あるいはPSD)のピーク周波数を求めると約9.1Hzとなる。
【0042】
そこで、f0 =9.1Hz、台車枠、輪軸の質量や軸箱前後支持剛性は現状のままとして、車体と台車間の前後系合成結合剛性Kx の最適値を式(5)により求めると、Kx ≒6.0×107 N/mを得る。この値を実現するため牽引リンクとヨーダンパの緩衝ゴム剛性の値を次の2通りの組合せとして数値計算を実施した(nb =1,ny =2)。
(i)変更諸元a:kb =ky =2.0×107 N/m
(ii)変更諸元b:kb =1.5×107 N/m,ky =2.25×107 N/m
図8にModel IIの現状諸元と変更諸元の車体床中央のFRFを示す。加振条件は4軸同相加振としてある。この図から分かるように、変更諸元では、a,bいずれの場合も、現状諸元のFRFに見られる9.1Hz付近の車体曲げ振動のピーク周波数近傍に谷が生じており、TWIモードによるダイナミックダンパ効果が確認できる。また、変更諸元a、変更諸元b(破線)のいずれもほぼ同様の応答曲線となっており、Kx を式(5)から定めた後のkb とky の設定には任意性があり、車両条件に応じた組合せの選択が可能であることも分かった。
【0043】
次に、Model IIの現状諸元と変更諸元について速度300km/h走行を想定して計算した振動加速度PSDを図9に示す。図9(a)は床中央の上下振動加速度PSD、図9(b)は台車枠前後の振動加速度PSDである。
【0044】
図9(a)より、9.1Hz付近の車体曲げ振動のピークが大幅に低減されていることから、式(5)を用いた前後ばね系の最適値設定法の有効性が確認できた。また、図9(b)より、台車・輪軸の前後系をダイナミックダンパとして作用させた場合でも、台車枠前後の振動が増大するという副作用が見られないことが分かる。
【0045】
この場合の車体床中央と台車直上における乗り心地レベルLT の値を表3に示す。
【0046】
【表3】
JP0004198455B2_000012t.gif 変更諸元では、現状諸元の場合に比べ床中央で6dB程度、台車直上で1.6dB程度の乗り心地改善効果が得られた。また、変更諸元aとbの差は床中央で0.4dB弱であり、両者はほぼ同等の乗り心地改善効果を持つことが分かる。
【0047】
上述の例では、最適条件式(5)により求めた車体と台車間の前後系結合剛性Kx の値は現状諸元の値より大きくなった。最近の新幹線(登録商標)では、Me ≒7.5×103 kg程度、kw は車両により幅があるが107 N/mのオーダの値をとり、車体曲げ振動の固有振動数は9Hz付近にある場合が多いことを考慮して、車体と台車間の前後系結合剛性の最適値を概算すると現状諸元での値の数倍程度の値をとることが分かる。これは十分実現可能な値であるとともに、走行安定性の面からも現状に対して有利な方法となっており、ここで述べた方法が走行性能を考慮しても妥当な車体曲げ振動低減対策であると考えられる。
【0048】
上記したように、本発明によれば、鉄道車両の台車枠および輪軸の質量と車体と台車間の前後系結合要素(牽引リンクやヨーダンパなど)の剛性を利用してダイナミックダンパを構成し、車体の上下弾性振動を低減することができる。
【0049】
図10に式(5)に基づいて計算した、車体の上下曲げ振動の固有振動数f0 と車体と台車間の前後系合成結合剛性Kx の最適値Kxoptの関係を示す。固有振動数f0 とKxoptの関係は一般に車両形式ごとに異なるが、ここでは、現在営業に使われている新幹線(登録商標)車両に関して推定される台車特性値を用いて計算した結果のうち、任意のf0 に対してKxoptが最も大きい値となった場合を曲線A、最も小さい値となった場合を曲線Bとして示した。すなわち、新幹線(登録商標)車両の場合、対象車両の固有振動数f0 に対してこの2本の曲線にはさまれる範囲にKx の値を設定すれば、車体上下曲げ振動の低減に有効であると考えられる。
【0050】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0051】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、牽引リンク・ヨーダンパなど現有する装置の剛性を調整するだけで特別な装置の付加は不要であり、重量の増加やコスト増を伴わずに車体上下弾性振動を低減することができ、乗り心地の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ある新幹線(登録商標)車両の走行試験により得られた車体床中央における振動加速度パワースペクトル密度(PSD)を示す図である。
【図2】 本発明にかかる数値シミュレーションのための鉄道車両モデルを示す図である。
【図3】 図2の解析モデルを用いた数値計算結果を示す図〔新幹線(登録商標)車両の車体床中央における振動加速度パワースペクトル密度(PSD)特性図〕である。
【図4】 近似軌道狂いを入力として用いた応答加速度PSDの数値計算結果を示す図である。
【図5】 図3と同じ条件の車両に対し、4つの輪軸間で時間差を0とした仮想的な加振入力(4軸同相加振)を与えたときの車体床中央の応答結果を示す図である。
【図6】 台車の固有値解析のための減衰要素を無視した台車4自由度モデルの説明図である。
【図7】 台車4自由度系の固有モードを示す模式図である。
【図8】 4軸同相加振に対するModel IIの現状諸元と変更諸元の車体床中央のFRFを示す図である。
【図9】 Model IIの現状諸元と変更諸元について速度300km/h走行を想定して計算した振動加速度PSD特性図である。
【図10】 新幹線(登録商標)の車体上下曲げ振動の固有振動数f0 と車体と台車間の前後系合成結合剛性Kx の最適値Kxoptとの関係を表す図である。
【符号の説明】
1 車体
2 台車枠
3 輪軸
4 空気ばね
5 ヨーダンパとその緩衝ゴム
5′ ヨーダンパの緩衝ゴム
6 牽引リンクの緩衝ゴム
7 軸ばね
8 軸ばねダンパ
9 軸箱前後支持剛性
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9