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明細書 :電気車の制御装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3792524号 (P3792524)
公開番号 特開2002-281605 (P2002-281605A)
登録日 平成18年4月14日(2006.4.14)
発行日 平成18年7月5日(2006.7.5)
公開日 平成14年9月27日(2002.9.27)
発明の名称または考案の名称 電気車の制御装置
国際特許分類 B60L   9/18        (2006.01)
B60L   7/14        (2006.01)
H02P  21/00        (2006.01)
H02P  27/04        (2006.01)
H02P  27/06        (2006.01)
FI B60L 9/18 A
B60L 7/14
H02P 5/408 A
H02P 5/41 302J
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2001-078680 (P2001-078680)
出願日 平成13年3月19日(2001.3.19)
審査請求日 平成16年7月14日(2004.7.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
発明者または考案者 【氏名】近藤 圭一郎
【氏名】松岡 孝一
【氏名】結城 和明
【氏名】恩田 昇治
個別代理人の代理人 【識別番号】100090033、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 博司
【識別番号】100093045、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 良男
審査官 【審査官】安池 一貴
参考文献・文献 特開平10-285702(JP,A)
特開昭63-077397(JP,A)
特開昭57-129179(JP,A)
特開2000-253506(JP,A)
特開2000-209704(JP,A)
調査した分野 B60L 9/18
B60L 7/14
H02P 21/00
H02P 27/04
H02P 27/06
特許請求の範囲 【請求項1】
電動機を駆動するインバータを再起動する際、再起動時の電動機ロータの推定周波数に応じた制御モードを判断する再起動制御を行い、該判断した制御モードに従った通常制御に移行する、電気車の制御装置であって、
前記インバータのインバータ周波数を分割した複数の周波数領域それぞれに対応する制御モードが予め定められており、
インバータ周波数の暫定初期値を前記周波数領域毎に設定する設定手段と、
インバータ周波数を前記推定周波数に近づける調整制御を前記設定された暫定初期値に基づき開始し、該調整制御開始から所定時間経過時点でインバータ周波数が前記推定周波数に近いか否かを判定する制御を、前記周波数領域毎に順次連続的に行うサーチ処理手段と、
を備え、前記サーチ処理手段によりインバータ周波数が前記推定周波数に近いと判定された周波数領域に対応する制御モードを、前記推定周波数に応じた制御モードと判断することを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記サーチ処理手段は、前記調整制御の対象とする周波数領域が前記電気車の前進時の領域である場合に、前記インバータへの出力電圧指示に対する磁束指令補正を行って前記調整制御を行うことを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記サーチ処理手段は、前記磁束指令補正として、インバータ周波数が高いほど補正倍率を小さく、低いほど補正倍率を大きくして補正することを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項4】
再起動の際、電動機の回転速度または回転位置を含む推定初期値を決定して、再起動制御から通常制御に移行する、電気車の制御装置であって、
再起動の際、前記電気車が有する速度段リレーのうち、ON/OFF状態が変化した直後は、ON/OFF状態が変化した後のONとなっているリレーの内の最高速度閾値を前記推定初期値として決定し、その後は、変化した直後からの時間経過に応じて、OFFとなっているリレーの内の最低速度閾値に近づけるように前記推定初期値を変更して決定する決定手段、を備えることを特徴とする電気車の制御装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気車の制御装置に係り、特に、電動機の回転数や回転位置を検出するための検出器を具備しない電気車の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、誘導電動機や同期電動機の回転数(回転速度)や回転位置を検出するための検出器、即ち速度センサを具備しない電気車の制御装置の開発が進められている。この制御方式は、速度センサレス制御という名称で知られている。速度センサレス制御には、速度センサがない分、電動機を大型化して電動機の高出力化を図ることや、速度センサに係るメンテナンスやコストの省略化が図れる、といった種々のメリットがあり、早期の実用化が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実用化のためには次のような問題があった。即ち、速度センサがないために、インバータを起動する際の初期速度(より正確には、速度が不明であるため、初期速度の推定値となる。本明細書を通じて、このインバータを起動するための初期値のことを推定初期値という。)をどうやって知ることができるのか、である。具体的には、インバータを起動する際(本明細書において、包括的に「再起動」という。)、現在の電気車の状態が停止状態なのか、あるいはだ行から再力行や回生動作を開始しようという状態なのか、はたまた坂道で後退しながら起動せねばならぬ状態なのか、といった種々の状態が起こり得、これらの状態をどうやって判断し、どうやって推定初期値として決定するのか、という問題である。本発明は、上記のような課題に鑑みて為されたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、第1の発明は、
再起動の際、インバータ周波数に基づいて、電動機の回転速度または回転位置を含む推定初期値を決定して、再起動制御から通常制御に移行する、電気車(例えば、電車や電気自動車など)の制御装置であって、
再起動開始から所定時間経過後のインバータ周波数に基づいて、推定初期値を決定する決定手段、を具備する電気車の制御装置である
【0005】
この第1の発明によれば、インバータ周波数の時間変化によって推定初期値を決定できるため、速度センサレス制御における再起動制御を実現することができる。尚、インバータ周波数の時間変化をどのように判断するかは種々の方法が考えられ、例えば、第2第4の発明が考えられる。
【0006】
即ち、第2の発明は、
再起動の際、インバータ周波数に基づいて、電動機の回転速度または回転位置を含む推定初期値を決定して、再起動制御から通常制御に移行する、電気車の制御装置であって、
インバータ周波数の暫定初期値を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された所定時間経過後のインバータ周波数に基づいて、推定初期値を決定する決定手段と、
を具備するものである。
【0007】
また、インバータ周波数の判断をより具体的に行う方法として、第3の発明として第2の発明の電気車の制御装置において、
前記決定手段が、所定時間経過後のインバータ周波数が所定の条件を満足するか否かに基づいて推定初期値を決定し、
前記所定時間経過後のインバータ周波数が前記所定の条件を満足しないと前記決定手段が決定した場合に、前記設定手段が新たな暫定初期値を設定する、ように構成してもよい。
【0008】
更に、第4の発明として2又は発明の電気車の制御装置において、
前記設定手段による暫定初期値の設定と、前記決定手段による推定初期値の決定とを、インバータ周波数の所与の周波数領域ごとに、順次行うよう構成してもよい。
【0009】
また、第5の発明は、
2~4のいずれかの発明の電気車の制御装置において、
再起動の際、励磁電流を変化させる手段、を備えるものである
【0010】
この第5の発明によれば、励磁電流を変化させることによって、インバータ周波数収束性を高め、安定に動作させるとともに、早期に推定初期値を決定・判断することが可能となる。
【0011】
第6の発明は、
再起動の際、電動機の回転速度または回転位置を含む推定初期値を決定して、再起動制御から通常制御に移行する、電気車の制御装置であって、
再起動の際、前記電気車が有する所定リレーの信号に基づいて、推定初期値を決定する決定手段、を備えるものである
【0012】
ここで、所定リレーとは、例えば、発明の実施の形態において説明する速度段リレーの他、電気車の速度相当信号や走行状態に応じてON/OFFするリレーも含む。
【0013】
この第6の発明によれば、所定リレーの信号によって推定初期値を決定できるため、速度センサレス制御における再起動制御を実現することができる。尚、所定リレーの信号から、推定初期値を決定する方法は種々あり、発明の実施の形態でその詳細を説明する。
【0014】
また、第7の発明として2~5のいずれかの発明の電気車の制御装置において、
前記設定手段が、前記電気車が有する所定リレーの信号に基づいて、暫定初期値を設定するように構成してもよい。
【0015】
ここで、所定リレーの定義は、上述した定義と同様である。
この第7の発明によれば、所定リレーの信号によって、請求項2~5記載の暫定初期値が設定されるため、2~第5の発明と組み合わせた、より好適な再起動制御および、通常制御への移行を行うことが可能となる。
【0016】
第8の発明は、
再起動の際、電動機の回転速度または回転位置を含む推定初期値を決定して、再起動制御から通常制御に移行する、電気車の制御装置であって、
再起動の際、回生動作を行うか否かを判別する回生判別手段と、
前記回生判別手段による判別結果に基づいて、再起動の際の推定初期値を決定する決定手段と、
を備えるものである
【0017】
この第8の発明によれば、再起動の際に回生動作を行うか否かを判別する結果に基づいて推定初期値を決定できるため、速度センサレス制御における再起動制御を実現することができる。
尚、回生判別手段は、次のように構成してもよい。即ち、発明の実施の形態でその詳細を述べるように、インバータ周波数を随時更新記憶し、再起動前のインバータ周波数に基づいて、回生動作を行うか否かを判別するように構成してもよい。
【0018】
また、第9の発明として第6の発明の電気車の制御装置において、
再起動の際、回生動作を行うか否かを判別する回生判別手段、を備え、
前記決定手段が、更に、前記回生判別手段による判別結果に基づいて、推定初期値を設定するように構成してもよい。
【0019】
また、第10の発明として2~5及び7のいずれかの発明の電気車の制御装置において、
再起動の際、回生動作を行うか否かを判別する回生判別手段、を備え、
前記設定手段が、更に、前記回生判別手段による判別結果に基づいて、暫定初期値を設定するように構成してもよい。
【0020】
この9または第10の発明によれば、6、或いは、2~5及び発明と組み合わせた、より好適な再起動制御および、通常制御への移行を行うことが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
尚、本実施の形態において、電気車を電車として図示・説明するが、本発明に係る電気車とは、電動機によって駆動されるものであればよく、電車以外にも適用が可能である。また、電動機を誘導電動機として図示・説明し、本発明に係るインバータ周波数を1次周波数として説明するが、同期電動機に本発明を適用してもよいことは勿論である。また、速度センサレスという語における速度センサとは、電動機の回転速度の検出器のみならず、電動機の回転数や回転位置といった、速度相当情報を検出する検出器をも含む意味である。
【0022】
まず、第1~第3の実施の形態を説明する上において、共通事項について簡単に説明する。
【0023】
図1は、第1~第3の実施の形態における速度センサレス制御を用いた電気車の制御装置の概略構成例を示すブロック図である。図1において、架線1は、パンタグラフ2、直流フィルタリアクトル3を介し、直流フィルタコンデンサ4の正側電位点に接続される。直流フィルタコンデンサ4の負側電位点は、車輪7を介してレール8に接地される。直流フィルタコンデンサ4には、インバータ5が接続されており、インバータ5は、誘導電動機6を駆動する。このインバータ5は、制御ユニット100により制御される。インバータ5と誘導電動機6との間には、誘導電動機6に流れる電流を検出する電流検出器9が設けられている。
【0024】
なお、同図においては、車輪7と誘導電動機6とが独立した構成となっているが、これは便宜的な図であり、実際には、ギアを介して車輪7と誘導電動機6のロータとは機械的に結合されている。
【0025】
制御ユニット100は、d-q座標系上にて、誘導電動機6の電流、電圧、磁束を制御するベクトル制御を行うが、このベクトル制御については、公知の技術であるので、その説明を省略する。また、電流検出器9によって検出される電流は2相分であるが、この2相分の電流から、d-q軸座標系上の電流ベクトルに変換する方法も公知の技術であるため、その説明を省略する。
【0026】
本発明は、主に制御ユニット100に係るものである。以下、第1~第3の実施の形態について説明するが、第1~第3の実施の形態において説明する制御ユニット100の各機能は、マイクロコンピュータによるソフトウェアの実行により実現することが可能である。
【0027】
〔第1の実施の形態〕
速度センサレス制御においては、再起動の際、推定初期値が不明なため、速やかに通常モード(通常の運転制御)に移行するのが困難である。このため、本件発明者は、インバータ起動時に、1次周波数(インバータ周波数)F1=ロータの推定周波数(以下、単に推定周波数という。)FRとなるように、1次周波数F1を調整する方法を立案した。1次周波数F1の調整則は、q軸電流Iq、d軸誘起電圧E2d、q軸磁束φq等を評価指標とし、同評価指標が“0”に収束するように、PI制御を施すものである。
【0028】
この方法によれば、制御ユニット100は、再起動の際、先ず再起動に係る制御(以下適宜、再起動モードという。)を行い、概略速度を検知した後、検知した概略速度に応じた通常モードに移行する。
【0029】
しかし、以下の様な問題点が分かった。即ち、この方法では、再起動モードにおいて、例えば起動時の1次周波数F1の初期値を仮に100Hzと置き(以下、この仮におく初期値のことを暫定初期値という。)、徐々に、例えば、q軸電流Iqが“0”になるように1次周波数F1を調整していっても、推定周波数FRが0Hzに近かったり、あるいは後退等により負の値を持つ場合には、1次周波数F1=推定周波数FRとなるのに非常に時間がかかる。また更には、実質的に1次周波数F1=推定周波数FRとすることが不可能な場合も生じ得る。といった問題である。
【0030】
そこで推定周波数FRが取り得る範囲を複数の領域に分割し、各領域毎に、順次、推定周波数FRをサーチして、推定周波数FR、即ち、推定初期値を決定する方法が、第1の実施の形態である。
【0031】
また、サーチする領域が複数あるため、各領域のサーチ時間を最小としたい。このため、完全に1次周波数F1=推定周波数FRとなるのを待つことなく、各領域でのサーチ、即ち1次周波数F1が、例えばq軸電流Iq=0となるような調整アルゴリズムを開始後、ある一定時間後に打ち切る。そして、そのときの1次周波数F1の値から、1次周波数F1は、ほぼ推定周波数FRに近い値にあると判断して通常モードに移行するか、或いは、推定周波数FRは別のサーチ領域にあると判断して他の領域でのサーチを開始することとしたのが、本第1の実施の形態である。
【0032】
また、各サーチ領域の収束性(1次周波数F1の推定周波数FRへの近づき易さ)を高めつつ、安定に動作させるため、励磁電流Idやトルク電流Iqの補償ゲインを、1次周波数F1に応じて可変とする改良を加えている。
【0033】
次に、第1の実施の形態の実施例について詳細に説明する。本実施例において、サーチ領域は、後退領域と前進領域であることとして説明する。
【0034】
図2は、第1の実施の形態を実現する上において必要な、制御ユニット100内の機能ブロックを示す図である。制御ユニット100には、設定部112と、判断部114とが含まれる。図3は、再起動モードにおける制御ユニット100の処理フローを模式的に示す図である。図3の処理フローに従って、制御ユニット100の動作について説明する。
【0035】
図3において、ステップS1は後退領域のサーチに係る処理である。本ステップにおいては、先ず設定部112が、1次周波数F1の暫定初期値として“-a”を設定する。そして、誘導電動機6に流入する電流(d-q軸成分)を検出し、例えばIqにPI補償をすることによって1次周波数F1の時間経過を調整する。ここで、制御ユニット100は、インバータ5に対して、出力電圧に関する制御のみを行い、電流に関する制御は施さない。
【0036】
そして、t1時間経過時に、判断部114が1次周波数F1および磁束電流Idに基づいて、現在の状態を判断する。即ち、図3に示す通り、▲1▼1次周波数F1が閾値FC1未満であった場合、又は、▲2▼1次周波数F1が閾値FC2とFC3間であって且つ、磁束電流Idが閾値Idc1未満であった場合、判断部114は、現在の車両の状態を「後退」と判断する。そして、T1時間経過後に通常モードへ移行する旨、決定する。
【0037】
一方、t1時間経過時に、上記▲1▼と▲2▼の条件に合致しないと判断部114が判断した場合、判断部114は、現在の車両の状態を「前進」と判断して、処理をステップS2へ移行する旨、決定する。
【0038】
ステップS2は、消磁に係る処理である。ステップS1における処理の影響を消すためのステップであり、t2時間、1次周波数F1と、インバータ5の出力電圧Vd、Vqとが“0”に保たれる。t2時間の経過後、ステップS3へ処理が移行される。
【0039】
ステップS3は、前進領域のサーチに係る処理である。本ステップにおいては、先ず設定部112が、1次周波数F1の暫定初期値として“b”を設定する。そして、ステップS1と同様、誘導電動機6に流入する電流を検出し、これにPI補償をすることによって1次周波数F1の時間経過を調整する。また制御ユニット100は、インバータ5に対して、出力電圧に関する制御のみを行い、電流に関する制御は施さない。
【0040】
但し、ステップS3においては、PI補償のゲイン補正と、インバータ5への出力電圧指示に対する磁束指令補正を行う。このゲイン補正および磁束指令補正は、前進領域における1次周波数F1の収束性を高め、安定に動作させるためのものである。例えば、図4のような補正を行う。図4(a)および(b)は、ゲイン補正および磁束指令補正の倍率決定式の一例を模式化した図である。同図において、横軸は1次周波数F1であり、縦軸は補正倍率である。図4(a)や(b)といった補正を施すことにより、1次周波数F1の値に応じた、好適なゲイン補正および磁束指令補正を行うことができる。
【0041】
設定部112により暫定初期値が設定された後、t3時間経過時に、判断部114が1次周波数F1に基づいて、現在の状態を判断する。即ち、図3に示す通り、1次周波数F1が閾値FC4を超える値であった場合には、判断部114は、現在の電気車の状態を「高速前進」と判断する。そして、高速前進用の通常モードへ移行する旨、決定する。
【0042】
一方、1次周波数F1が閾値FC4を超えなかった場合には、判断部114は、現在の電気車の状態を「微速前進」と判断する。そして、微速前進用の通常モードへ移行する旨、決定する。
【0043】
以上が第1の実施の形態である。
尚、上記実施例は、本発明に係る一実施例であり、本発明の趣旨の範囲内において適宜変更実施することが可能である。例えば、サーチ領域(後退領域と前進領域)の順序を逆としたり、サーチ領域を3以上に分けて行うこととしたり、判断時期の時間を変更したり、判断条件(1次周波数F1に対する閾値など)を変更したり、ゲイン補正や磁束指令補正を他のサーチ領域で実施することとしたり、といった変更を施しても良い。
【0044】
〔第2の実施の形態〕
車両には一般に、車両の各種制御に用いるために、例えば速度が15km/h以上になったらONするといったリレーが用いられている。このリレーは「速度段リレ-」と呼ばれるものであり、扉閉保安やブレーキ増圧開始速度検出用等に利用されている。
【0045】
また、この速度段リレーは閾値の速度毎に複数装備されているのが一般的である。例えば、5km/h、15km/h、70km/h、160km/hといった閾値に対応したリレーが装備されている。
【0046】
本第2の実施の形態は、第1の実施の形態における推定初期値を、この速度段リレーのON/OFFにより、直接的に決定する。具体的には、例えば、今、5km/hと15km/hのリレーがONになっており、70km/hと160km/hのリレーがOFFになっているとする。この場合、ONとなっているリレーの内の最高速度の閾値と、OFFとなっているリレーの内の最低速度の閾値との平均値を推定初期値とする。即ち、15km/hと70km/hの平均である42.5km/hを、推定初期値として決定する。
【0047】
また更に、各リレーのON/OFF状態が変化してからの時間経過に基づいて、推定初期値を決定する。具体的には、以下の式に基づいて決定する。
推定初期値={RUP×(1-k)+RLOW×k}/2
ここで、「RUP」とは、リレーのON/OFF状態が変化した後の、ONとなっているリレーの内、最高速度の閾値である。同じく、「RLOW」とは、リレーのON/OFF状態が変化した後の、OFFとなっているリレーの内、最低速度の閾値である。また「k」は、“0”以上“1”以下の係数である。
【0048】
例えば、70km/hのリレーがOFFからONに切り替わったとする。すると、その切り替わりからの時間経過に基づいて「k」を“0”から“1”に徐々に変化させる。このことにより、車両がだ行運転等をした際にも、より適切な推定初期値を決定することができる。
【0049】
以上が第2の実施の形態である。
尚、第2の実施の形態において、決定した値を推定初期値とするのではなく、第1の実施の形態における暫定周波数として利用し、第1の実施の形態と組み合わせた制御を行うこととしてもよい。
【0050】
〔第3の実施の形態〕
図5は、車両のブレーキについて説明するための、各種ブレーキに係る時間経過を模式的に表した図である。
【0051】
車両のブレーキには、電気的なブレーキである回生を用いたブレーキと、機械的なブレーキとの2種類がある。図5に示すように、ブレーキをかける際、最初の時点では、回生によるブレーキの開始処理がなされるのと同時に、回生によるブレーキが働かない場合を考慮して、機械的なブレーキの即時開始のための準備としてブレーキシリンダ圧(以下、BC圧という。)を上げる処理が、並行して行われる。
【0052】
そして、回生ブレーキが動作したことを確認してから、BC圧を、初込め圧と呼ばれる圧に保持する。この初込め圧とは、車両の停車直前で回生が失効した際に、スムースに空気ブレーキが立ちあがるのに必要な最小限の圧であって、空気ブレーキが動作しない圧である。
【0053】
なんらかの事情(例えば、閑散線区における軽負荷による場合等)により、回生が立ちあがらない場合には、回生ブレーキが動作するための所定の条件が満たされないため、BC圧はそのまま加圧され、BC圧が所要制動力分相当の値に達する。したがって、回生不動作の場合はBC圧上昇までの空走時間が生じることになる。
【0054】
車両が停止直前の状態であって、微妙なブレーキ力調整の操作が必要な低速域においては、このような空走時間はブレーキの操作性の悪化を招くこととなるため、低速域では回生ブレーキを動作させないのが一般的である。したがって、一般に、回生ブレーキには動作する最低速度(回生動作最低速度)が存在する。
【0055】
一方、速度センサレス制御においては、原理的に、インバータが起動しなければ、ロータ周波数が推定できない。このため、再起動の場合においては、特に、回生初速の判断ができない。また、回生初速を判断するためにインバータを起動することとなると、上記の回生動作最低速度を設ける主旨に合致しないこととなる。
【0056】
そこで、何らかの方法で、回生動作前に、回生動作最低速度か否かの判別を行う必要がある。この点を改善するため、本第3の実施の形態は、インバータ起動中に、推定周波数を更新記憶することとしたものである。即ち、インバータの起動がOFFとなった直前の状態を保持するよう、その値を常時更新して記憶する。例えば、現在、だ行走行をしている状況である場合、だ行走行の直前の時点における、推定周波数を記憶する。回生動作においては、この推定周波数に基づいて回生動作最低速度か否かの判別を行う。
【0057】
このように、第3の実施の形態によれば、車両のブレーキ時における回生動作最低速度の判別においても、速度センサレス制御を有効に行わしめることができる。
【0058】
尚、インバータの起動がOFFとなった直前の状態を保持してからの時間経過に応じて、所定の係数を乗算する等して、時間経過に応じた値に基づいて、回生動作最低速度か否かの判別を行うこととしてもよい。
【0059】
また、本第3の実施の形態の副産物として、次のような制御が可能である。即ち、回生動作最低速度か否かの判別に基づいて、第1の実施の形態および第2の実施の形態における推定初期値を決定することができる。より具体的には、第2の実施の形態において説明した速度段リレーの1つとして、この回生動作最低速度の判別結果を利用することができる。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、速度センサレス制御における、再起動制御、および、再起動制御から通常制御への移行を、適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電気車の制御装置の概略構成例を示すブロック図。
【図2】第1の実施の形態における、制御ユニットの機能ブロック図。
【図3】第1の実施の形態における、制御ユニットの処理フローを説明するための図。
【図4】第1の実施の形態における、ゲイン補正および磁束指令補正の一例を示す図。
【図5】第3の実施の形態における、各種ブレーキに係る時間経過を模式的に表す図。
【符号の説明】
5 インバータ
6 誘導電動機
100 制御ユニット
112 設定部
114 判断部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4