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明細書 :震央距離及びマグニチュード推定方法とそのための装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3695579号 (P3695579)
公開番号 特開2002-277557 (P2002-277557A)
登録日 平成17年7月8日(2005.7.8)
発行日 平成17年9月14日(2005.9.14)
公開日 平成14年9月25日(2002.9.25)
発明の名称または考案の名称 震央距離及びマグニチュード推定方法とそのための装置
国際特許分類 G01V  1/28      
FI G01V 1/28
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2001-079739 (P2001-079739)
出願日 平成13年3月21日(2001.3.21)
審査請求日 平成15年4月4日(2003.4.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】592175704
【氏名又は名称】気象庁長官
発明者または考案者 【氏名】芦谷 公稔
【氏名】小高 俊一
【氏名】束田 進也
【氏名】佐藤 新二
【氏名】大竹 和生
【氏名】野坂 大輔
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】本郷 徹
参考文献・文献 特開平04-047498(JP,A)
特開平11-064533(JP,A)
中村 豊,中村 豊,第二回土木学会リアルタイム地震防災システムシンポジウムで講演,日本,2000年 5月
調査した分野 G01V 1/28
特許請求の範囲 【請求項1】
地震計から得られる地震波初動部分の波形形状の特徴に注目し、該波形形状を関数でフィッティングすることで定量化し、得られたパラメータから、震央距離及びマグニチュードを推定する震央距離及びマグニチュード推定方法であって、前記地震計から得られる地震波初動部分のディジタル波形データ(時系列データ)をメモリに記憶し、該時系列データのオフセットを除去し、該時系列データの絶対値をV(t)となし〔ここで、tは時間(秒)〕、地震を検知した時刻を時間原点(t=0)として、該時間原点から、数秒間のデータに関y=Bt・e-At を当てはめ、V(t)=Bt exp(-At)とし(ここで、Bは地震波形の初動振幅の時間変化に関するパラメータ、Aは初動部分の最大振幅に関係するパラメータ)、上記式の両辺の常用対数をとって、log〔V(t)/t〕=logB-A・loge・tを得て、これにより、前記パラメータA,Bを線形化し、パラメータA,Bを通常の最小二乗法を用いてパラメータ演算手段において算出し、震央距離とマグニチュードの推定手段により、前記パラメータBから震央距離を求め、該求められた震央距離と基準時間内の最大振幅値、あるいは前記パラメータAからマグニチュードを求めることを特徴とする震央距離及びマグニチュード推定方法。
【請求項2】
(a)地震計と、
(b)該地震計から得られる地震波の初動部分のディジタル波形データ(時系列データ)を記憶するメモリと、
(c)前記時系列データのオフセットを除去し、該時系列データの絶対値をV(t)となし〔ここで、tは時間(秒)〕、地震を検知した時刻を時間原点(t=0)として、該時間原点から数秒間のデータに関数y=Bt・e-At を当てはめV(t)=Bt exp(-At)とし(ここで、Bは地震波形の初動振幅の時間変化に関するパラメータ、Aは初動部分の最大振幅に関係するパラメータ)、上記式の両辺の常用対数をとって、log〔V(t)/t〕=logB-A・loge・tを得て、これにより前記パラメータA,Bを線形化し、該パラメータA,Bを通常の最小二乗法を用いて算出するパラメータ演算手段と、
(d)前記パラメータBから震央距離を求め、該求められた震央距離基準時間内の最大振幅値、あるいは前記パラメータAからマグニチュードを求める震央距離及びマグニチュードの推定手段とを具備することを特徴とする震央距離及びマグニチュード推定装置。
【請求項3】
請求項記載の震央距離及びマグニチュード推定装置において、あらかじめ決められた震央距離内で決められたマグニチュード以上の地震が発生したか否かを判定する条件判定手段を具備することを特徴とする震央距離及びマグニチュード推定装置。
【請求項4】
請求項記載の震央距離及びマグニチュード推定装置において、早期検知情報の送信を行う情報文送出手段とを具備することを特徴とする震央距離及びマグニチュード推定装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1観測点の地震波の初動部分のデータから、観測点から震央までの距離(震央距離)と地震の大きさ(マグニチュード)を、地震検知から数秒で推定する方法及びそのための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、震央距離やマグニチュードを推定するためには、
(a)多点の観測データから震源位置を求め、各観測点までの震央距離を算出する、
(b)震央距離と振幅値や周期、又は振動継続時間等からマグニチュードを推定する、
(c)1観測点の初動部分の周期からマグニチュードを推定し、このマグニチュードと初動部の振幅などから、震源距離、深さ、震央距離を推定する、
等の方法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した(a)や(b)の方法は、従来から行われている一般的な手法で精度は高いが、推定には地震検知から数分程度もかかってしまう。
【0004】
また、上記した(c)の方法は、地震の主要動(被害をもたらす大きな振動)が観測点に到達する前に、1観測点の初動部分のデータから推定する方法であり、地震検知から数秒で地震諸元を大まかに推定できるが、その推定精度はあまり高くなく、特に、遠方の地震や深い地震などに対して推定精度が悪いという課題があった。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑み、震央距離やマグニチュードの違いによって特徴的に変化する初動部分の波形形状の特徴に注目し、パラメータが数個の簡易な関数でフィッティングして波形形状を定量化し、得られたパラメータから震央距離とマグニチュードを推定することができる震央距離及びマグニチュード推定方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕地震計から得られる地震波初動部分の波形形状の特徴に注目し、該波形形状を関数でフィッティングすることで定量化し、得られたパラメータから、震央距離及びマグニチュードを推定する震央距離及びマグニチュード推定方法であって、前記地震計から得られる地震波初動部分のディジタル波形データ(時系列データ)をメモリに記憶し、この時系列データのオフセットを除去し、この時系列データの絶対値をV(t)となし〔ここで、tは時間(秒)〕、地震を検知した時刻を時間原点(t=0)として、この時間原点から、数秒間のデータに関y=Bt・e-At を当てはめ、V(t)=Bt exp(-At)とし(ここで、Bは地震波形の初動振幅の時間変化に関するパラメータ、Aは初動部分の最大振幅に関係するパラメータ)、上記式の両辺の常用対数をとって、log〔V(t)/t〕=logB-A・loge・tを得て、これにより、前記パラメータA,Bを線形化し、このパラメータA,Bを通常の最小二乗法を用いてパラメータ演算手段において算出し、震央距離とマグニチュードの推定手段により、前記パラメータBから震央距離を求め、この求められた震央距離と基準時間内の最大振幅値、あるいは前記パラメータAからマグニチュードを求めることを特徴とする。
【0007】
〔2〕震央距離及びマグニチュード推定装置において、地震計と、この地震計から得られる地震波の初動部分のディジタル波形データ(時系列データ)を記憶するメモリと、前記時系列データのオフセットを除去し、該時系列データの絶対値をV(t)となし〔ここで、tは時間(秒)〕、地震を検知した時刻を時間原点(t=0)として、該時間原点から数秒間のデータに関数y=Bt・e-At を当てはめV(t)=Bt exp(-At)とし(ここで、Bは地震波形の初動振幅の時間変化に関するパラメータ、Aは初動部分の最大振幅に関係するパラメータ)、上記式の両辺の常用対数をとって、log〔V(t)/t〕=logB-A・loge・tを得て、これにより前記パラメータA,Bを線形化し、該パラメータA,Bを通常の最小二乗法を用いて算出するパラメータ演算手段と、前記パラメータBから震央距離を求め、この求められた震央距離基準時間内の最大振幅値、あるいは前記パラメータAからマグニチュードを求める震央距離及びマグニチュードの推定手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
〕上記〔〕記載の震央距離及びマグニチュード推定装置において、あらかじめ決められた震央距離内で決められたマグニチュード以上の地震が発生したか否かを判定する条件判定手段を具備することを特徴とする。
【0009】
〕上記〔〕記載の震央距離及びマグニチュード推定装置において、早期検知情報の送信を行う情報文送出手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
地震波形の時系列データをv(t)とする。更に、この時系列データv(t)の絶対値をV(t)とする。ここで、tは時間(秒)を表す。
【0012】
まず、地震を検知した時刻を時間原点(t=0)として、そこから、数秒間のデータに簡易な関数を当てはめる。関数形として、ここでは、次式(1)を用いる。なお、V(t)の時間的な変動が大きい場合は、適当な方法でV(t)を平滑化した後に関数の当てはめを行う。
【0013】
V(t)=Bt exp(-At) …(1)
ここで、Bは地震波形の初動振幅の時間変化に関するパラメータ、Aは初動部分の最大振幅に関するパラメータであり、以下、これらを形状パラメータと仮称する。上記(1)式の両辺の常用対数をとると、次式(2)のように未知パラメータが線形化されるので、その形状パラメータは通常の最小二乗法を用いて算出できる。
【0014】
log〔V(t)/t〕=logB-A・loge・t …(2)
上記の方法を用いて多くの地震波形データについて初動部の形状パラメータA,Bを求めた結果、パラメータBは震央距離と良好な相関があることが分かった。
【0015】
さらに、パラメータBと震央距離の関係はマグニチュードにはよらないことも分かった。よって、このパラメータBと震央距離との相関を定式化しておけば、地震波初動部の形状パラメータBから震央距離Δを求めることが出来る。
【0016】
震央距離が求まれば、マグニチュードは、一般に使われている震央距離と最大振幅を用いた式にならって、その推定式を定式化することが出来る。また、最大振幅の代わりに、形状パラメータAを用いた式を定式化することも可能である。
【0017】
上記の方法によって推定したマグニチュードは、前述の初動部の周期を用いて推定する方法に比べて、推定精度がかなり向上することが確認されている。
【0018】
以上から、本発明によれば、地震検知から数秒程度で震央距離とマグニチュードを精度よく算出することができ、よって、地震の主要動が観測点に到達する前にその地震の加害性を判断することが出来るため、地震防災の分野において有効に活用されると考えられる。
〔実施例〕
図1は本発明に係る震央距離及びマグニチュード推定装置のブロック図、図2はその震央距離及びマグニチュード推定の処理フローチャートである。
【0019】
これらの図において、1は地震計、2は通信回線、10は制御処理装置、11はアンチエイリアシングフィルタ(ローパスフィルタ)、12はA/D変換器、13は波形収録部、14はメモリ、15はパラメータ演算部、16は震央距離及びマグニチュード推定部、17は条件判定部、18は情報文送出部、19はGPS時計、20は状態表示装置、21はモデムである。
【0020】
この震央距離及びマグニチュード推定方法を、図2に示すフローを参照しながら説明する。
【0021】
(1)地震計1からの情報を制御処理装置10に取込み、ディジタル波形データとしてメモリ14に取得する(ステップS1)。
【0022】
(2)そこで、パラメータ演算部15において、オフセットの除去を行い(ステップS2)、次に、データの絶対値を取る。このとき絶対値がある基準値以下の場合には、強制的に最小基準値とする(ステップS3)。次に、スムージング(例えば、波形のエンベローを取る)を行う(ステップS4)。次に、y=Bt・e-At とフィッティングを行いパラメータ(係数)A,Bを求める(ステップS5)。
【0023】
(3)次に、震央距離及びマグニチュード推定部16において、得られたパラメータBから震央距離を求める(ステップS6)。この震央距離をもとに、基準時間内の最大振幅値、あるいは得られたパラメータAからマグニチュードMを推定する(ステップS7)。
【0024】
(4)次いで、条件判定部17において、あらかじめ定められた震央距離内で決められたマグニチュード以上の地震が発生したか否かを判定する(ステップS8)。
【0025】
(5)ステップS8において、YESの場合は、情報文送出部18において、早期検知情報の送信を行う(ステップS9)。
【0026】
また、図3は、実際の地震波に簡易関数をフィッティングした例を示す図であり、図3(a)は実際の初動波(P波)、図3(b)はその簡易関数のフィッティング例を示す図である。
【0027】
多くの地震データに対して、同様のフィッティングを行い、初動部の形状パラメータを求め、パラメータBと震央距離Δの相関を示すものが図4である。この図において、横軸は震央距離(km)、縦軸はlogBを示している。
【0028】
また、この図において、印の大きさはマグニチュードMに比例しており、最大はM8.1、最小はM4.5に相当する。この図4から、パラメータBと震央距離Δには負の相関があり、かつ、この相関関係はマグニチュードによらないことが分かる。よって、この相関関係を定式化することにより、パラメータBのみで震央距離が推定できることになる。
【0029】
推定式の形式は一つに限定するべきものではないが、例としては以下のような形式が考えられる。
【0030】
logΔ=α1 logB+α2 …(3)
Δ=α1 /logB+α2 …(4)
マグニチュードMは、一般に使われている震央距離と最大振幅Vmax を用いた式、
M=β1 logVmax +β2 logΔ+β3 …(5)
にならって、パラメータAもしくは最大振幅Vmax とパラメータBにより定式化できるが、この形式も一つに限定されるものではなく、例としては次のような形式が考えられる。
【0031】
M=γ1 A+γ2 logB+γ3 …(6)
M=γ1 logVmax +γ2 logB+γ3 …(7)
M=γ1 A+γ2 log(logB)+γ3 …(8)
M=γ1 logVmax +γ2 log(logB)+γ3 …(9)
ここで、α1 ,α2 ,β1 ,β2 ,β3 ,γ1 ,γ2 ,γ3 ,は、多数の地震データから統計処理によって決定されるパラメータである。
【0032】
図5は、式(3)を用いて推定した震央距離と実際の震央距離を比較したものである。この図において、横軸は推定した震央距離(km)、縦軸は実際の震央距離(km)を示している。また、図6は、式(7)を用いて推定したマグニチュードと実際のマグニチュードを比較したものである。この図において、横軸は推定したマグニチュード、縦軸は実際のマグニチュードを示している。
【0033】
これらの図より明らかなように、本発明によって推定されたマグニチュードの実際のマグニチュードとの誤差は高々1程度であり、精度良く推定されていることがわかる。
【0034】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0035】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、震央距離やマグニチュードの違いによって特徴的に変化する初動部分の波形形状の特徴に注目して、この波形形状をパラメータ数個の簡易な関数でフィッティングして定量化し、得られたパラメータから震央距離とマグニチュードを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る震央距離及びマグニチュード推定装置のブロック図である。
【図2】 本発明に係る震央距離及びマグニチュード推定の処理フローチャートである。
【図3】 実際の地震波に簡易関数をフィッティングした例を示す図である。
【図4】 パラメータBと震央距離Δの相関を示す図である。
【図5】 推定した震央距離と実際の震央距離を比較した図である。
【図6】 推定したマグニチュードと実際のマグニチュードを比較した図である。
【符号の説明】
1 地震計
2 通信回線
10 制御処理装置
11 アンチエイリアシングフィルタ
12 A/D変換器
13 波形収録部
14 メモリ
15 パラメータ演算部
16 震央距離及びマグニチュード推定部
17 条件判定部
18 情報文送出部
19 GPS時計
20 状態表示装置
21 モデム
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5