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明細書 :打撃音によるコンクリートの評価手法およびコンクリート評価装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3822802号 (P3822802)
公開番号 特開2002-296251 (P2002-296251A)
登録日 平成18年6月30日(2006.6.30)
発行日 平成18年9月20日(2006.9.20)
公開日 平成14年10月9日(2002.10.9)
発明の名称または考案の名称 打撃音によるコンクリートの評価手法およびコンクリート評価装置
国際特許分類 G01N  29/12        (2006.01)
FI G01N 29/12
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2001-100027 (P2001-100027)
出願日 平成13年3月30日(2001.3.30)
審査請求日 平成16年7月23日(2004.7.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】591088537
【氏名又は名称】日本物理探鑛株式会社
発明者または考案者 【氏名】榎本 秀明
【氏名】稲川 敏春
【氏名】鈴木 文大
【氏名】松林 弘智
【氏名】千鳥 雅由
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 特開平05-288727(JP,A)
特開平05-322861(JP,A)
特開平05-099906(JP,A)
特開2000-214139(JP,A)
高山和敏 他,ウェーブレット変換に及ぼすマザーウェーブレット関数の特徴,岡山大学紀要A 自然科学,1996年,pp.173-186
調査した分野 G01N 29/00-29/52
特許請求の範囲 【請求項1】
コンクリートの表面を打撃した際に発する打撃音を採取し、該採取した音をウェーブレット変換してスカログラムを作成することにより、前記コンクリートの厚さおよび空洞の有無をも評価可能な、打撃音によるコンクリートの評価手法であって、
塩化ビニール管と、該塩化ビニール管の内部に装入された、中間にゴム管が挟まれた硬質スポンジ管と、該硬質スポンジ管の内部に装入されたコルク管よりなる円筒状フードを備えた円筒状フード付きマイクロフォンを用い、
前記打撃音の採取に際し、前記円筒状フードの前端部を、前記コンクリートの打撃位置の近傍に押し付けることを特徴とする、打撃音によるコンクリートの評価手法。
【請求項2】
前記ウェーブレット変換において、xを測定時間、f(x)を採取された音の時系列データ、aをスケーリングファクター、bを経過時間、Ψ((x-b)/a)をマザー関数として、ウェーブレット変換式
【数1】
JP0003822802B2_000007t.gif
におけるマザー関数が、σを窓の幅として、
【数2】
JP0003822802B2_000008t.gif
であることを特徴とする、請求項1に記載の、打撃音によるコンクリートの評価手法。
【請求項3】
前記コンクリートの表面に鋼球を衝突させることにより、前記コンクリート内部に発生した弾性波を採取することを特徴とする請求項1または2に記載の、打撃音によるコンクリートの評価手法。
【請求項4】
前記スカログラムにおける概ね0.2kHzから1.0kHzに発現するピークに着目することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の、打撃音によるコンクリートの評価手法。
【請求項5】
前記スカログラムにおける概ね2.0kHzから20.0kHzに発現するピークに着目することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の、打撃音によるコンクリートの評価手法。
【請求項6】
コンクリートの表面を打撃した際に発する打撃音を採取するコンクリート評価装置であって、
前記打撃音を採取するマイクロフォンと、前記打撃音を採取するに際して、前端部が前記コンクリートの打撃位置の近傍に押しつけられる円筒状フードとからなる円筒状フード付きマイクロフォンを有し、
前記円筒状フードは、塩化ビニール管と、該塩化ビニール管の内部に装入された、中間にゴム管を挟んだ外側の硬質スポンジ管および内側の硬質スポンジ管と、該内側の硬質スポンジ管の内部に装入されたコルク管と、からなることを特徴とするコンクリート評価装置。
【請求項7】
コンクリートの表面を打撃した際に発する打撃音を採取し、該採取した音をウェーブレット変換してスカログラムを作成することにより、前記コンクリートの厚さおよび空洞の有無をも評価可能な、打撃音によるコンクリートの評価装置であって、
前記打撃音を採取するマイクロフォンと、前記打撃音を採取するに際して、前端部が前記コンクリートの打撃位置の近傍に押しつけられる円筒状フードとからなる円筒状フード付きマイクロフォンを有し、
前記円筒状フードは、塩化ビニール管と、該塩化ビニール管の内部に装入された、中間にゴム管を挟んだ外側の硬質スポンジ管および内側の硬質スポンジ管と、該内側の硬質スポンジ管の内部に装入されたコルク管と、からなることを特徴とするコンクリート評価装置。
【請求項8】
前記マイクロフォンが、緩衝材を介して支持されることを特徴とする請求項6または7に記載のコンクリート評価装置
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートの表面を打撃した際に発する打撃音を解析することにより、前記コンクリートの評価、特に、前記コンクリートの厚さ、前記コンクリートに内在する空洞等の有無およびその位置を評価する手法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンクリート構造物における内部亀裂や空隙等の内部欠陥の状況を、非破壊で評価する技術として、コンクリート表面を打撃し、その際の打撃音を採取して解析する手法が提案されている。すなわち、
1.採取した打撃音をフーリエ変換し、フーリエ振幅スペクトラムにより視覚を通じて客観的に判断する手法(例えば、特許第1729466号公報)、
2.採取した打撃音をウェーブレット変換し、スカログラム(コンター図)におけるパターンの相違から、視覚により客観的に判断する手法(例えば、特許第2610378号公報)がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記▲1▼は、定常波解析には有効であるが、打撃音のような非定常波の波形の特徴を表現することは困難で、必ずしも満足な解析結果が得られず、さらに、従来の聴覚による判定とフーリエ振幅スペクトラムとは一般に一致しないという欠点がある。
【0004】
これに対し、前記▲2▼は、非定常な信号に対してその信号の特徴を明瞭にズームアップすることが可能なウェーブレット変換を用い、視覚による客観的な判定を可能とし、かつ、従来の聴覚による判定を反映するようなデータ処理方法によって、信頼性を高めている。
前記▲2▼では、マザー関数(前記公報におけるアナライジング・ウェーブレットに同じ)が、メキシカンハットと呼ばれる
【数3】
JP0003822802B2_000002t.gifである。得られたスカログラム(前記公報における、コンターで表示したスケーログラムに同じ)による判定は、
(イ)コンクリートに内在する空洞部では、打撃にともなう振動の内、長周期成分(低周波数、スケーリングファクターaの数字が大きいに同じ)の継続時間が長いほど、また、
(ロ)長周期成分の継続時間が長く、長周期成分と短周期成分の継続時間が異なるほど、
空洞の可能性が高いとするに止まり、
1.コンクリートの厚さ(覆工厚さ、巻厚)
を評価することが困難なため、これの評価手法が要請されていた。
斯かる要請に鑑みて、長年の研究から、マザー関数を特殊な関数に変えれば上記要請を満足することを見いだした。
本発明は、コンクリートの厚さを評価可能な、打撃音によるコンクリートの評価手法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
請求項1記載の発明の要旨は、コンクリートの表面を打撃した際に発する打撃音を採取し、該採取した音をウェーブレット変換してスカログラムを作成することにより、前記コンクリートの厚さおよび空洞の有無をも評価可能な、打撃音によるコンクリートの評価手法であって、塩化ビニール管と、該塩化ビニール管の内部に装入された、中間にゴム管が挟まれた硬質スポンジ管と、該硬質スポンジ管の内部に装入されたコルク管よりなる円筒状フードを備えた円筒状フード付きマイクロフォンを用い、前記打撃音の採取に際し、前記円筒状フードの前端部を、前記コンクリートの打撃位置の近傍に押し付けることを特徴とする、打撃音によるコンクリートの評価手法に存する。
請求項2記載の発明の要旨は、前記ウェーブレット変換において、xを測定時間、f(x)を採取された音の時系列データ、aをスケーリングファクター、bを経過時間、Ψ((x-b)/a)をマザー関数として、ウェーブレット変換式
【数4】
JP0003822802B2_000003t.gifにおけるマザー関数が、σを窓の幅として、
【数5】
JP0003822802B2_000004t.gifであることを特徴とする、請求項1に記載の、打撃音によるコンクリートの評価手法に存する。
請求項3記載の発明の要旨は、前記コンクリートの表面に鋼球を衝突させることにより、前記コンクリート内部に発生した弾性波を採取することを特徴とする請求項1または2に記載の、打撃音によるコンクリートの評価手法に存する。
請求項4記載の発明の要旨は、前記スカログラムにおける概ね0.2kHzから1.0kHzに発現するピークに着目することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の、打撃音によるコンクリートの評価手法に存する。
請求項5記載の発明の要旨は、前記スカログラムにおける概ね2.0kHzから20.0kHzに発現するピークに着目することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の、打撃音によるコンクリートの評価手法に存する。
請求項6記載の発明の要旨は、コンクリートの表面を打撃した際に発する打撃音を採取するコンクリート評価装置であって、
前記打撃音を採取するマイクロフォンと、前記打撃音を採取するに際して、前端部が前記コンクリートの打撃位置の近傍に押しつけられる円筒状フードとからなる円筒状フード付きマイクロフォンを有し、前記円筒状フードは、塩化ビニール管と、該塩化ビニール管の内部に装入された、中間にゴム管を挟んだ外側の硬質スポンジ管および内側の硬質スポンジ管と、該内側の硬質スポンジ管の内部に装入されたコルク管と、からなることを特徴とするコンクリート評価装置に存する。
請求項7記載の発明の要旨は、コンクリートの表面を打撃した際に発する打撃音を採取し、該採取した音をウェーブレット変換してスカログラムを作成することにより、前記コンクリートの厚さおよび空洞の有無をも評価可能な、打撃音によるコンクリートの評価装置であって、
前記打撃音を採取するマイクロフォンと、前記打撃音を採取するに際して、前端部が前記コンクリートの打撃位置の近傍に押しつけられる円筒状フードとからなる円筒状フード付きマイクロフォンを有し、前記円筒状フードは、塩化ビニール管と、該塩化ビニール管の内部に装入された、中間にゴム管を挟んだ外側の硬質スポンジ管および内側の硬質スポンジ管と、該内側の硬質スポンジ管の内部に装入されたコルク管と、からなることを特徴とするコンクリート評価装置に存する。
請求項8記載の発明の要旨は、前記マイクロフォンが、緩衝材を介して支持されることを特徴とする請求項6または7に記載のコンクリート評価装置に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係わる打撃音によるコンクリートの評価手法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0007】
まず、実験装置について説明する。
(実験装置)
本実験装置として、一定の力で打撃すべく図3に示す打撃装置1を用いた。打撃装置1は、支持板10に支柱11が立設され、支柱11により円環状の前面板12が支持板10と平行に設置されている。前面板12の貫通穴13の周囲に、ゴム支持部14が円周上で等間隔(45゜ピッチで円周上8箇所)に設置され、後記ゴム体30の一端が設置されている。
また、打撃ヘッド20は、鋼球21(直径25mm)と、鋼球21に固定された強磁性材料により形成された円盤状の吸着板22により形成され、吸着板22の外周に沿ってゴム取付部23が等間隔(45゜ピッチで円周上8箇所)に設置され、後記ゴム体30の一端が設置されている。
【0008】
ゴム体30の両端は、ゴム支持部14とゴム取付部23に設置され、それぞれのゴム体30は、緊張状態(伸びた状態)で放射状に配置され、打撃ヘッド20の中心が貫通穴13の中心と略一致するように、打撃ヘッド20を弾性的に支持している。そして、打撃ヘッド20の鋼球21の先端は、貫通穴13を貫通して、前面板12の支持板10の反対面に突出自在である。
さらに、支持板10には、電磁石40を前後進自在に支持する電磁石移動手段41が設置され、電磁石移動手段41に、その中心が貫通穴13の中心と略一致するように、電磁石40が支持されている。
【0009】
したがって、電磁石40を前進して、打撃ヘッド20を吸引した後、所定の距離だけ後退し(図3に示す状態)、打撃装置1をコンクリートの表面の所定の被打撃位置に配置し、かつ、後記フード51の端部をコンクリートの表面に軽く押し当てた後、電磁石40の励磁を停止することにより、電磁石の吸引力から開放された打撃ヘッド20が、引張り力によって、コンクリートの表面を打撃するものである。
【0010】
さらに、支柱11のひとつに一対の固定腕52が設置され、固定腕52に打撃音を採取するためのマイクロフォン50(可聴域20kHzまで)が、緩衝材58を介して設置されている。また、該マイクロフォン50には、円筒状のフード51が設置されている。フード51は、外径70mmmの塩化ビニール管53と、塩化ビニール管53の内部に装入された、中間に厚さ2mmのゴム管54を挟さんだ外側の硬質スポンジ管55および内側の硬質スポンジ管56と、内側の硬質スポンジ管56(内径32mm)の内部に装入されたコルク管57(内径21mm、肉厚13mm)より形成されている。
【0011】
したがって、打撃装置1本体の振動は、緩衝材58により遮断ないし減衰されるから、マイクロフォン50に伝わることがなく、コンクリートの内部を伝播した音は、フード51により効率的に集音され、マイクロフォン50に採取される。
よって、略一定の強さで打撃を繰り返すことができ、また、打撃にともなう雑音の発生が少なく、さらに、前記ウェーブレット変換の精度を阻害する雑音を遮蔽した、効率的な音の採取が可能になる。
【0012】
次に、上記打撃装置1を用いた実験方法について説明する。
(実験方法)
1.打撃装置1を評価対象であるコンクリートの表面の所定の被打撃位置に配置し、かつ、フード51の端部をコンクリートの表面に軽く押し当てる。(鋼球21はコンクリートの表面から5cm離れている)
2.打撃装置1のリモートスイッチを押す。
3.打撃装置1の電磁石40が前進し、鋼球21を吸引した後、所定の距離だけ後退し、電磁石40の励磁が停止する。このとき、電磁石40の吸引力から開放された鋼球21が、ゴム体30の引張り力によって、コンクリートの表面を打撃する。
4.そして、鋼球21の衝突で発生する音(コンクリート、鋼球、打撃装置の各部材、等)のうち、コンクリート内部に発生した弾性波を、マイクロフォン50で音として補足する。
【0013】
5.該補足した音(音圧波形)を時系列データとして前記ウェーブレット変換(マザー関数としてガボール関数を用いる)する(後述)。
6.変換結果は、周波数0.125oct.毎、20μs毎の振幅値を出力する。
7.変換後の振幅値を用いて、スカログラム(コンター図)を描画する。このとき、該スカログラムは、それぞれの音の変換された振幅値の最大値を100とした相対表示で、打撃方法はほぼ均一であるが、コンクリートの状態により音の大きさ(音圧)は異なる。
8.該描画されたスカログラムについて、特定の帯域に分割し、その帯域ごとの振幅(相対値)の絶対量や、複数の帯域間で振幅の絶対量の比率をもとに、厚さを評価する。
9.さらに、特定の帯域における振幅の減衰が小さい(振動が継続する)との現象を捉えて、空洞の有無を評価することもできる。
10.そして、この評価結果をパソコンのディスプレイに表示する。
【0014】
次に、上述のウェーブレット変換について説明する。
(ウェーブレット変換)
本発明の一実施の形態に係る打撃音によるコンクリートの評価手法における、ウェーブレット変換式を数1に示す。
【数6】
JP0003822802B2_000005t.gif式中、
aはスケーリングファクター、
bは経過時間、
Ψ((x-b)/a)はマザー関数、
f(x)は時系列データ、
xは測定時間を示す。
【0015】
(マザー関数)
本発明の一実施の形態に係る打撃音によるコンクリートの評価手法における、ウェーブレット変換に用いたマザー関数はガボール関数であり数2に示す。
【数7】
JP0003822802B2_000006t.gif式中、
σは窓の幅を示す。
【0016】
(スカログラム)
図1は、本発明の一実施の形態に係る打撃音によるコンクリートの評価手法における、コンクリートの厚さをそれぞれ変更して打撃した際の打撃音を時系列データとして採取し、これを前記ウェーブレット変換した後のスカログラム(振動の振幅値のレベルごとにコンター表示したもの)である。
【0017】
図1において、縦軸はスケーリングファクター(目盛は音階(オクターブ)および振動周波数(キロヘルツ)である)、横軸は測定時間(目盛はミリ秒である)であって、変換結果は、周波数0.125oct.毎、時間20μs毎の振幅値を出力したものである。また、図1の(イ)乃至(ヘ)は、それぞれ10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、60cmのコンクリート厚さ(巻厚)におけるものである。
【0018】
図1の(イ)はコンクリートの厚さが10cmにおけるスカログラムである。振幅の山が低周波数領域(0.2~1.0kHz)に発現し、そのピークは、略0.4kHzにある。一方、高周波数領域(2.0~20.0kHz)の振動は無い。これは、コンクリートの厚さが10cm程度の薄いコンクリート板においては、板振動が卓越し、板内の縦波が捉えられないからである。
【0019】
図1の(ロ)はコンクリートの厚さが20cmにおけるスカログラムであって、低周波数領域(0.2~1.0kHz)に振幅の第一の山が発現し、そのピークは、略0.5kHzにある。一方、高周波数領域(2.0~20.0kHz)に振幅の第二の山(第一の山より小さい振幅)が発現し、そのピークは略10kHzにある。すなわち、コンクリート板内を往復する縦波が、該高周波数領域における振幅の第二の山として発現している。
【0020】
図1の(ハ)はコンクリートの厚さが30cmにおけるスカログラムであって、低周波数領域(0.2~1.0kHz)に振幅の第一の山が発現し、そのピークは、略0.5kHzにある。一方、高周波数領域(2.0~20.0kHz)に振幅の第二の山が発現し、そのピークは略6.0kHzにある。すなわち、前記(ロ)に比較してコンクリートの板厚が増した分、コンクリートを往復する縦波の周波数が低周波数側に移行している。
【0021】
図1の(ニ)はコンクリートの厚さが40cmにおけるスカログラムであって、低周波数領域(0.2~1.0kHz)の振幅が全体に小さくなって、第ニの山が発現し、そのピークは、略0.6kHzにある。一方、高周波数領域(2.0~20.0kHz)に振幅の第一の山が発現し、そのピークは略5.0kHzにある。すなわち、コンクリート板の剛性が高まったため、板振動に基づく低周波数領域の振動の振幅が小さくなり、一方、コンクリート板内を往復する縦波に基づく高周波数領域の振幅が顕著になっている。
【0022】
図1の(ホ)はコンクリートの厚さが50cmにおけるスカログラムであって、低周波数領域(0.2~1.0kHz)の振幅の山が消え、一方、高周波数領域(2.0~20.0kHz)に振幅の第一の山が発現し、そのピークは略4.0kHzにある。すなわち、コンクリート板の剛性が高まったため、板振動に基づく低周波数領域の振動は最早発現せず、一方、コンクリート板内を往復する縦波に基づく高周波数領域の振幅のみが現れている。
【0023】
図1の(ヘ)はコンクリートの厚さが60cmにおけるスカログラムであって、低周波数領域(0.2~1.0kHz)の振幅の山が消え、一方、高周波数領域(2.0~20.0kHz)に振幅の第一の山が発現し、前記(ホ)と同様のパターンを示している。そして、そのピークは略3.0kHzにあって、コンクリートの厚さが厚くなった分、低周波数側に移行している。
【0024】
以上のごとく、コンクリートが薄いものから厚いものになるにしたがい、低周波数領域におけるピークが小さくなり、高周波数領域におけるピークが発現しピークが強くなると同時に発現する周波数が漸減する。
【0025】
以上の、説明から明らかなように、板振動に基づく低周波数領域(概ね0.2~1.0kHz)の振幅のパターンないしそのピーク、あるいは、コンクリート内を伝播する縦波に基づく高周波数領域(概ね2.0~20.0kHz)の振幅のパターンないしそのピークを把握することにより、コンクリートの厚さを評価することができる。
さらに、特定の帯域において振幅の減衰が小さい(振動が継続する)との現象を捉えることにより、空洞の有無、ないしその位置を推定できる。
【0026】
(メキシカンハット変換)
図2には、本発明との比較をするため、従来技術におけるスカログラムを示す。すなわち、前記と同様にコンクリートの厚さ(巻厚)をそれぞれ変更して打撃した際の打撃音を時系列データとして採取し、これをメキシカンハット変換した後のスカログラムであって、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)および(ヘ)は、それぞれ、コンクリートの厚さが、10cm、20cm、30cm、40cm、50cmおよび60cmの場合である。
図2より明らかなように、低周波数領域(0.2~1.0kHz)および高周波数領域(2.0~20.0kHz)の、着目した何れの帯域においても、明瞭な振幅の山が発現していない。すなわち、板振動に基づく低周波数領域の振動、あるいは、コンクリート板内を往復する縦波に基づく高周波数領域の振動など、本発明のようなコンクリートの厚さと関連づけられる情報を得ることができない。
【0027】
【発明の効果】
以上のごとく、本発明によれば、コンクリート内部を伝播した音をウェーブレット変換するに際し、そのマザー関数にガボール関数を用いるため、コンクリートの厚さを評価することが可能になるとの顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る打撃音によるコンクリートの評価手法における、コンクリートの厚さをそれぞれ変更して打撃した際の打撃音を時系列データとして採取し、これをウェーブレット変換した後のスカログラムであって、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)および(ヘ)は、それぞれ、コンクリートの厚さが、10cm、20cm、30cm、40cm、50cmおよび60cmの場合である。
【図2】従来の打撃音によるコンクリートの評価手法における、コンクリートの厚さをそれぞれ変更して打撃した際の打撃音を時系列データとして採取し、これをメキシカンハット変換した後のスカログラムであって、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)および(ヘ)は、それぞれ、コンクリートの厚さが、10cm、20cm、30cm、40cm、50cmおよび60cmの場合である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る打撃音によるコンクリートの評価手法における、コンクリート表面を打撃する打撃装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 打撃装置
10 支持板
11 支柱
12 前面板
13 貫通穴
14 ゴム支持部
20 打撃ヘッド
21 鋼球
22 吸着板
23 ゴム取付部
30 ゴム体
40 電磁石
41 電磁石移動手段
50 マイクロフォン
51 フード
52 固定腕
53 塩化ビニール管
54 ゴム管
55 外側の硬質スポンジ管
56 内側の硬質スポンジ管
57 コルク管
58 緩衝材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2