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明細書 :土木用遮水シート

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4511758号 (P4511758)
公開番号 特開2002-294015 (P2002-294015A)
登録日 平成22年5月14日(2010.5.14)
発行日 平成22年7月28日(2010.7.28)
公開日 平成14年10月9日(2002.10.9)
発明の名称または考案の名称 土木用遮水シート
国際特許分類 C08L  31/04        (2006.01)
C08L  29/04        (2006.01)
B32B  27/28        (2006.01)
C08J   5/18        (2006.01)
E02B   3/12        (2006.01)
E21D  11/38        (2006.01)
FI C08L 31/04 S
C08L 29/04
B32B 27/28 101
C08J 5/18 CER
E02B 3/12
E21D 11/38 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2001-103267 (P2001-103267)
出願日 平成13年4月2日(2001.4.2)
審査請求日 平成18年9月5日(2006.9.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】矢口 直幸
【氏名】舘山 勝
【氏名】伊勢 智一
【氏名】花森 一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100093377、【弁理士】、【氏名又は名称】辻 良子
審査官 【審査官】川上 智昭
参考文献・文献 特開2000-080894(JP,A)
特開2002-167563(JP,A)
調査した分野 C08L29/00-31/00,E21D11/00,
B32B27/00,C08J5/18
特許請求の範囲 【請求項1】
酢酸ビニル含有量が80~99質量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)および酢酸ビニル含有量が50~70質量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を、(A)/(B)=0.2~5の質量比で含有し、且つエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量に対して0.1~10質量%のポリビニルアルコール系重合体をグラフト重合および/または混合してなるエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面を有することを特徴とする土木用遮水シート。
【請求項2】
表面を構成する前記エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物が、該組成物中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の合計質量に対して1~50質量%の無機充填剤を含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物である請求項に記載の土木用遮水シート。
【請求項3】
基材シート上に、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる塗膜、フィルムまたはシートが表面層として積層されている請求項1または2に記載の土木用遮水シート。
【請求項4】
基材シートが、繊維で補強されているかまたは補強されていないエチレン-酢酸ビニル共重合体シートである請求項1~のいずれか1項に記載の土木用遮水シート。
【請求項5】
土留め壁を構築した後にまたは構築しないで、地盤および/または岩盤よりなる掘削面および頂部に、請求項1~のいずれか1項に記載の土木用遮水シートをそのエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面を最表面に向けて敷設し、該土木用遮水シートの最表面に水硬性材料を施すことを特徴とする遮水工法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土木用遮水シートおよびそれを用いる遮水工法に関する。より詳細には、本発明は、コンクリート、セメント、モルタルなどの水硬性材料との接着性に優れる土木用遮水シートおよびそれを用いる遮水工法に関する。
本発明の土木用遮水シートは、水硬性材料に対する優れた接着性により、各種土木工事における遮水シートとして有効に用いることができ、特に地下鉄などを建設する際の地下構造物および道路・鉄道用トンネルの地盤や岩盤などからの湧出水が水硬物のひび割れ部などから地下構造物およびトンネル構内に漏れ出るのを防ぐための遮水シートとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、トンネル建設などの土木工事の際の遮水シートとしては、ベントナイトシート、ゴムアスファルトシート、酢酸ビニル含有率の低いエチレン-酢酸ビニル共重合体シートなどが使用されている。例えば、特開平6-32950号公報には、酢酸ビニル含有率が10~25重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体、または該エチレン-酢酸ビニル共重合体70重量%以上と低密度ポリエチレン30重量%以下の樹脂組成物を用いた止水シートが記載されている。
【0003】
しかしながら、上記した従来の遮水シートは、コンクリートと接着しないか又は接着性に劣っており、コンクリートの硬化後に遮水シートとコンクリートとの間に隙間ができ易い。そして、コンクリートと遮水シートとの間に隙間ができた場合は、地盤や岩盤から湧出水があると、図1に示すように、湧出水が遮水シートのひび割れ部分、接合部、取り付け用穴などから滲み出してコンクリートとの間にできた隙間を伝ってコンクリートのひび割れ部などに到達し、漏水する。
【0004】
かかる点から、本発明者らは、酢酸ビニル含有率が30~90重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体シートが、コンクリートなどの水硬性材料との密着性が高く、トンネル構築などの土木工事などに用いる遮水シートとして適していることを見出して先に出願した(特開平12-80895号公報)。
この遮水シートでは、遮水シートを構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有率が高くなるほど、一般に高温領域では水硬性材料との接着性が向上する。しかし、本発明者らが更に検討した結果、低温領域では水硬性材料との接着性が未だ十分ではなく、改良の余地があることが判明した。トンネルなどに用いられる遮水シートは、低温から高温まで広い温度領域に曝されることが多く、そのため該広い温度領域でコンクリートなどの水硬性材料と高い接着性を有する土木用遮水シートが求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した従来の遮水シートと比べて、水硬物との接着性に優れ、かつ高い接着性を長期にわたって維持することが可能な土木用遮水シートを提供することである。
特に、低温から高温までの広い温度領域で水硬物と高い接着性を有し、その優れた接着性によって、トンネル工事等などで地盤および/または岩盤と水硬性材料の間に敷設した際には、遮水シートの接合部、固定部または欠陥部より浸入する地盤や岩盤からの湧出水等が、遮水シートと水硬物との境界面を伝わることを阻止し、水硬物のひび割れ等から地下構築物およびトンネル等の内部へ漏水するのを良好に防止する遮水シートを提供することである。
そして、本発明の目的は、そのような土木用遮水シートを用いて、地下構築物およびトンネルの遮水を良好に行える工法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは検討を重ねてきた。その結果、土木用遮水シートにおいて、水硬物と接着させる表面に、酢酸ビニル含有率の高い特定の2種類のエチレン-酢酸ビニル共重合体を特定の割合で配合してなるエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面を存在させると、低温から高温までに広い温度領域で水硬物との接着性が大幅に向上して、遮水シートが水硬物から剥離するのが防止され、その遮水性能が向上することを見出した。
また、本発明者らは、土木用遮水シートの表面に存在させる前記した特定のエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物として、該組成物を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体に特定量のポリビニルアルコール系重合体をグラフト重合および/または混合したものを用いると、低温から高温までの広い温度領域で、水硬物との接着性が一層向上することを見出した。
【0007】
さらに、本発明者らは、土木用遮水シートの表面に存在させる前記した特定のエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物、或いはポリビニルアルコール系重合体をグラフト重合および/または混合した該エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物中に無機充填剤を特定の量で含有させると、やはり低温から高温までの広い温度領域で、水硬物に対する接着性が一層向上することを見出した。
また、本発明者らは、上記した土木用遮水シートとしては、繊維で補強されたエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなるシート又は補強されないシートを基材シートとし、その上に前記エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる塗膜、フィルムまたはシートを表面層として積層したものが、基材シートとエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物表面層との間の接着性にも優れていて、水硬物との接着性が極めて良好であり、しかも強度、取り扱い性などにおいても優れていること見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) 酢酸ビニル含有量が80~99質量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)および酢酸ビニル含有量が50~70質量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を、(A)/(B)=0.2~5の質量比で含有し、且つエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量に対して0.1~10質量%のポリビニルアルコール系重合体をグラフト重合および/または混合してなるエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面を有することを特徴とする土木用遮水シートである。
そして、本発明は、
) 表面を構成する前記エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物が、該組成物中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の合計質量に対して1~50質量%の無機充填剤を含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物である前記()の土木用遮水シートである。
【0009】
さらに、本発明は、
) 基材シート上に、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる塗膜、フィルムまたはシートが表面層として積層されている前記(1)または(2)の土木用遮水シート;および、
) 基材シートが、繊維で補強されているかまたは補強されていないエチレン-酢酸ビニル共重合体シートである前記(1)~()のいずれかの土木用遮水シート;
である。
【0010】
そして、本発明は、
) 土留め壁を構築した後にまたは構築しないで、地盤および/または岩盤よりなる掘削面および頂部に、前記(1)~()のいずれかの土木用遮水シートをそのエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面を最表面に向けて敷設し、該土木用遮水シート最表面に水硬性材料を施すことを特徴とする遮水工法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の土木用遮水シートは、土木用遮水シートの少なくとも一方の表面部分が、酢酸ビニル含有量の高い特定の2種類のエチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、且つ特定量のポリビニルアルコール系重合体をグラフト重合および/または混合してなるエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物から形成されている。すなわち、本発明の土木用遮水シートは、酢酸ビニル含有量が80~99質量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)と、酢酸ビニル含有量が50~70質量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を含有し、且つ特定量のポリビニルアルコール系重合体をグラフト重合および/または混合してなるエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物から形成されていることが必要である。
なお、本明細書において、「エチレン-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量」とは、エチレン-酢酸ビニル共重合体の質量に対する該共重合体中の酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量(質量%)をいう。
また、本明細書において、「水硬物」とは、土木用遮水シートの表面に、水硬性材料を打設して水硬性材料が硬化したものをいう。
【0012】
本発明の土木用遮水シートの表面を構成する前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)は、いずれも酢酸ビニル含有量が高く、それによって、水硬物に対する接着性が大幅に向上する。これは、エチレン-酢酸ビニル共重合体中での酢酸ビニル含有量が高くなると、エチレン-酢酸ビニル共重合体の親水性が向上すると共に水硬性材料中のアルカリ成分により該共重合体中の酢酸ビニルに由来する構造単位が加水分解され、それによって生じたビニルアルコール単位の水酸基が水硬性材料中のカルシウムや珪酸などの極性成分と何らかの結合を生じるためであると推察される。
【0013】
水硬物に対する接着性を高めるためには、水硬物と接着される土木用遮水シートの表面を酢酸ビニル含有量の高い1種類のエチレン-酢酸ビニル共重合体、例えば酢酸ビニル含有量が80質量%以上の1種類のエチレン-酢酸ビニル共重合体から形成すればよいとも考えられる。しかしながら、実際は、酢酸ビニル含有量を単に高めただけでは、水硬物との接着性に優れる土木用遮水シートは得られない。本発明者らの研究結果によれば、酢酸ビニル含有量の高い1種類のエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなる表面を有する土木用遮水シートは、上記したように、高温領域では水硬物との接着性に優れているが、低温領域では表面を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体に硬化やひび割れなどが生じて水硬物との接着性が低下することが判明した。
【0014】
それに対して、本発明では、土木用遮水シートの表面を、特定の酢酸ビニル含有量を有する上記した2種類のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を含有し、且つ特定量のポリビニルアルコール系重合体をグラフト重合および/または混合してなるエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物から形成していることにより、低温から高温までの広い温度領域において、水硬物と高い接着性を有し、良好な遮水性能を発揮することができる。
【0015】
本発明の土木用遮水シートの表面を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物に用いるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)では、その酢酸ビニル含有量は80~99質量%であることが必要である。
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)における酢酸ビニル含有量が80質量%未満であると、水硬性材料との接着性が低下する。一方、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)における酢酸ビニル含有量が99質量%よりも多くなると、エチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を配合しても、低温領域で水硬物との接着性が不良になる。エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)における酢酸ビニル含有量は85~95質量%であることが、低温から高温までの広い温度領域で水硬物との接着性がより良好になることから好ましい。
【0016】
また、水硬物との接着性および機械的特性が優れたものとなることから、エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物に用いるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)は、そのガラス転移温度が10℃以上であることが好ましく、12~18℃であることがより好ましい。さらに、同様の理由で、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)としては、フィルムにしたときにその抗張力が400N/cm2以上、特に500N/cm2以上となるものが好ましく用いられる。
【0017】
本発明の土木用遮水シートの表面を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物に用いるエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)では、その酢酸ビニル含有量は50~75質量%であることが必要である。
エチレン-酢酸ビニル共重合体(B)における酢酸ビニル含有量が50質量%未満であると、親水性が低下して、水硬物との接着性、特に高温領域での接着性が低下し、しかもエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を配合してもエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物が常温~高温領域でベタついたものとなり、土木用遮水シートの取り扱い性が不良になる。一方、エチレン-酢酸ビニル共重合体(B)における酢酸ビニル含有量が75質量%よりも多くなると、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を配合しても、低温領域で水硬物との接着性が不良になる。エチレン-酢酸ビニル共重合体(B)における酢酸ビニル含有量は60~70質量%であることが、低温から高温までの広い温度領域で水硬物との接着性がより良好になることから好ましい。
【0018】
また、低温での水硬物との接着性、耐寒性および柔軟性が優れたものとなることから、エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物に用いるエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)は、そのガラス転移温度が-10℃以下であることが好ましく、-15~-30℃であることがより好ましい。さらに、同様の理由で、エチレン-酢酸ビニル共重合体(B)としては、フィルムにしたときにその抗張力が400N/cm2以下、特に300N/cm2以下となるものが好ましく用いられる。
【0019】
本発明の土木用遮水シートの表面を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物に用いるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の一方または両方が、ポリビニルアルコール系重合体をグラフト重合したものであってもよい。エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)および/またはエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)がポリビニルアルコール系重合体をグラフト重合したエチレン-酢酸ビニル共重合体であると、共重合体内部でポリビニルアルコール系重合体が網目構造をとり、そこに水硬性材料を打設すると、ポリビニルアルコール系重合体部分が水に溶解して微細な隙間をつくり、その隙間に水硬性材料粒子が入り込むため、土木用遮水シートと水硬物との接着がより強固になる。エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)および/またはエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)として、ポリビニルアルコール系重合体をグラフト重合したものを用いる場合は、ポリビニルアルコール系重合体のグラフト重合率は、グラフト重合する前のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量に対して、0.1~10質量%であり、0.5~5質量%であることが好ましい
【0020】
また、ポリビニルアルコール系重合体をグラフト重合したエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)および/またはエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を用いる代わりに、土木用遮水シートの表面を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物中に、ポリビニルアルコール系重合体を添加してもよい。その場合にも、エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物中でポリビニルアルコール系重合体が網目構造をとり、そこに水硬性材料を打設すると、ポリビニルアルコール系重合体部分が水に溶解して微細な隙間をつくり、その隙間に水硬性材料粒子が入り込むことにより、土木用遮水シートと水硬物との接着がより強固になる。その際のポリビニルアルコール系重合体の添加量は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量に対して、0.1~10質量%であり、3~7質量%であることが好ましい
【0021】
本発明の土木用遮水シートの表面を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物に用いるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)は、必要に応じて、エチレンおよび酢酸ビニル以外の他の単量体に由来する構造単位やケン化された構造単位を少量であれば、好ましくはエチレン-酢酸ビニル共重合体の40質量%以下、より好ましく20質量%以下、さらに好ましく10質量%以下の割合で有していてもよい。他の構造単位の例としては、プロピレン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、イソノナン酸ビニルなどのビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類に由来する構造単位を挙げることができ、これらの1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
【0022】
本発明の土木用遮水シートでは、その表面を構成しているエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物が、上記したエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を、(A)/(B)=0.2~5の質量比で含有することが必要である。
エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物におけるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の配合比が前記範囲であることにより、表面を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物が低温でもひび割れせず、且つ常温~高温でベトつかず、低温から高温までの広い温度領域で水硬物に対して良好な接着性を有する。エチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の配合量が多すぎて、(A)/(B)の値が0.2未満であると、高温領域でベトつきを生じ、それにより水硬物との接着性が低下する。一方、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の配合量が多すぎて、(A)/(B)の値が5を超えると、低温領域での接着性が低下する。エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の配合比(A)/(B)は0.3~4であることが好ましく、0.5~2であることがより好ましい。
【0023】
本発明の土木用遮水シートの表面を構成しているエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)エチレン-酢酸ビニル共重合体(B)およびポリビニルアルコール系重合体と共に、さらにシリカ、フライアッシュ、炭酸カルシウムなどの無機充填剤の1種または2種以上を含有していてもよい。エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物が無機充填剤を含有すると、水硬性材料が硬化する際に、無機充填剤が水硬性材料中の無機成分と相互作用を及ぼし、土木用遮水シートと水硬物との接着性が向上する。無機質材料の粒子径は特に限定されないが、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)との混合性、分散性などの点から、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。無機充填剤を添加する場合は、添加量が少なすぎると無機充填剤を添加した効果がでず、一方多すぎるとエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物中で凝集や沈降を生じて表面を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物の強度などが低下する恐れがある。そのため、エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物における無機充填剤の添加量は、無機充填剤を添加する前のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量に対して、1~50質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。
【0024】
本発明の土木用遮水シートの表面を構成しているエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物は、必要に応じて、他の重合体、例えば、ゴム成分、オレフィン系樹脂、アクリル系重合体、共重合ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)以外のエチレン-酢酸ビニル共重合体などの1種または2種以上を含有していてもよい。
また、本発明の土木用遮水シートの表面を構成しているエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物は、シリコーン系滑剤、炭酸カルシウムなどの添加剤を含有していてもよい。
【0025】
但し、本発明の土木用遮水シートの表面を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物では、水硬物との接着性、土木用遮水シートの力学的特性、取り扱い性などの点で良好な効果を得るために、エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物の全質量に対するエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量が60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明の土木用遮水シートは、シートの一方または両方の表面が上記したエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物から構成されている限りは、その形態は制限されず、例えば、土木用遮水シート全体が上記したエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなるシートから形成されていても、または土木用遮水シートの一方または両方の表面部分のみが上記したエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物から形成されていてもよい。
そのうちでも、本発明の土木用遮水シートは、基材シートの一方または両方の表面、特に一方の表面に、上記したエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる塗膜、フィルムまたはシートが表面層として接着積層されている形態を有していることが好ましく、その場合には、水硬物と良好な接着性を保持しながら、土木用遮水シートの力学的特性や取り扱い性を良好なものにすることができる。特に、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)エチレン-酢酸ビニル共重合体(B)およびポリビニルアルコール系重合体を含むエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物を、水系エマルジヨンの形態で基材シート上に施し、それを乾燥した土木用遮水シートが、製造の容易性、水硬物との接着性、樹脂配分調整の容易性など点から好ましい。
基材シート上に設けるエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面層の厚さは特に制限されないが、一般には50~500μmであることが加工性、製造コストなどの点から好ましく、80~300μmであることがより好ましい。
【0027】
本発明の土木用遮水シートが、基材シートの表面に上記したエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面層を有するものである場合に、基材シートの種類や形態は特に制限されず、可撓性を有し且つエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面層が接着し得るものであればいずれでもよい。
基材シートとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、SBR、NBRなどの合成ゴムなどのような可撓性を有する重合体からなるシート;天然繊維および/または合成繊維を用いてなる編布、織布、不織布、網状体、メッシュシートなどの布帛;それらの2種以上を組み合わせた複合シートなどを挙げることができる。
【0028】
そのうちでも、基材シートとしては、エチレン-酢酸ビニル共重合体をベースとするシートが好ましく用いられる。エチレン-酢酸ビニル共重合体をベースとする基材シートは、表面層を構成する上記したエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物との親和性に優れ、しかもエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面層を基材シートの表面に形成し易い。その際に、基材シートを構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体は、表面層を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物に含まれるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)との親和性の点から、その酢酸ビニル含有量が40質量%以上、特に50質量%以上であることが好ましい。
エチレン-酢酸ビニル共重合体をベースとする基材シートは、エチレン-酢酸ビニル共重合体のみからなっていてもよいが、繊維で補強されていることが、土木用遮水シートの力学的強度などの点から好ましい。その際の補強繊維としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アラミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維などの合成繊維、ビスコース繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維などの半合成繊維(人造繊維)、綿、麻、羊毛などの天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維の1種または2種以上を用いて作製した編布、織布、不織布、網状体、メッシュシートなどの布帛を用いることができ、特にポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維などの1種以上を用いて作製した布帛が、好ましく用いられる。
【0029】
また、本発明の土木用遮水シートは、必要に応じて、排水作用を円滑に行うためのドレーン層を裏面に有していてもよい。ドレーン層としては、織布、編布、不織布などの繊維布帛が排水効果が大きい点から好ましく採用される。
【0030】
土木用遮水シートの厚さは、力学的特性、取り扱い性、遮水効果の耐久性、施工性、経済性などの点から、一般に0.5~5mmであることが好ましく、1~3mmであることがより好ましい。
また、土木用遮水シートの目付は、取り扱い性、遮水工事の際の作業性などの点から、3000g/m2以下であることが好ましく、500~2000g/m2であることがより好ましい。
【0031】
本発明の土木用遮水シートは、遮水が必要なあらゆる土木工事において有効に使用することができ、例えば、道路や鉄道のトンネル壁面の遮水、地下鉄地盤の遮水、山の斜面や断崖に防護壁を形成する際の遮水、護岸工事を行う際の遮水などの工事に用いることができる。
【0032】
本発明の土木用遮水シートを用いてトンネルやその他における遮水工事を行うに当たっては、岩盤層、地盤層、構造物などのような漏水や滲水が生じていたり生ずる恐れのある面に敷設する。このとき、岩盤層などの面と土木用遮水シートの間に他の1以上の層を設けてもよく、例えば土留め層、モルタル層、ドレーン層などの1以上の層が好適に形成される。なかでも、土砂などからなる地盤層のように崩壊し易い層の遮水を行う場合には、地盤崩れなどを抑制し壁面を安定化するために土留め層を形成させるのが好ましく、さらに土木用遮水シートを安定に敷設する点から土留め層表面を大略平滑化することが好ましい。
なお、土留め層とは、土砂崩れなどを抑制するために壁面を安定化するための層であり、一般には、H鋼で補強された水硬性材料と土を混合処理した、所謂、SMW(ソイルモルタル地中壁)が使用される。
【0033】
土木用遮水シートの具体的な敷設方法としては、土木用遮水シートを上記した岩盤層、地盤層、構造物などの所望の面に当接させるとともに、ロックボルト、接着剤(水硬性材料)、ピンなどの適当な固着手段で固定する方法が挙げられる。次いで、土木用遮水シートの表面(前記エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面)に、水硬性材料を打設して水硬性材料を硬化させる方法が好ましく採用される。
かかる工法による場合は、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる土木用遮水シートの表面と水硬性材料との親和性および水硬物との接着性が高いので、土木用遮水シートと水硬物との間に空隙を生ずることなく、水硬性材料が土木用遮水シートに強固に接着固定された状態で硬化される。その結果、硬化した水硬物層にひび割れが発生するようなことがあっても、ひび割れはその部分のみに止まり、水硬物は全体として土木用遮水シートから剥離したり剥落することなく強固に保持される。
【0034】
特に、本発明の土木用遮水シートは、道路、鉄道、地下鉄などのトンネル壁面の遮水に好適に使用できる。
トンネル壁は、一般に岩盤や地盤などに遮水シートを敷設した後に、その表面に水硬性材料を直接打設して硬化させる方法や、コンクリート構造体をトンネル外で予め作製しそのコンクリート構造体をトンネル内で複数継ぎ合わせる方法などにより形成される。また、トンネル内に設けたコンクリート壁が崩壊するのを防止するために、トンネル内部からロックボルトを打ち込んでトンネル壁を岩盤に固定することも広く行われている。そのため、トンネル壁の亀裂部分や、コンクリート構造体の継ぎ目、ロックボルトの固定部などから水が滲みだしたり、浸入し易い。
【0035】
しかしながら、岩盤層(面)とトンネル壁との間に、本発明の土木用遮水シートをエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面が外側(トンネル中央部)になるように向けて敷設し、次いでその上に水硬性材料を施すと、本発明の土木用遮水シートと水硬物とが良好に接着していて、両者の間に間隙が生じない。その結果、水硬物がコンクリートである場合を例に挙げて図示すると、図2に例示するように、たとえ遮水シートに亀裂が生じていても、また遮水シート同士の接合部や遮水シートの岩盤層などへの取り付け部に隙間や穴などがあっても、それらの亀裂、接合部の隙間、遮水シート取り付け穴などを通って岩盤層などからの湧出水が遮水シートとコンクリート(水硬物)との間に滲み出した場合に、その水が遮水シートとコンクリート(水硬物)との間の隙間を伝って流れるということがなくなり、トンネル壁(コンクリート壁)の亀裂、接合部、ロックボルトの固定部などから岩盤層などからの湧出水がトンネル内に漏れ出るのを防止することができる。
【0036】
本発明の土木用遮水シートを用いて遮水工事を行うに当たっては、工事内容などに応じて、1枚の土木用遮水シートを用いて工事を行っても、または複数枚の土木用遮水シートを用いて工事を行ってもよい。複数枚の土木用遮水シートを用いる場合は、本発明の土木用遮水シート同士の端部を接合しても、または本発明の土木用遮水シートと他のシートを接合しても構わない。土木用遮水シート端部の接合は、高周波誘電加熱や高周波誘導加熱などの加熱手段を利用する熱融着法、接着剤を用いる方法などにより行うことができる。本発明の土木用遮水シートの表面を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体シートは、高周波誘電加熱により加熱融着が可能であり、高周波ウエルダーを利用して端部の接合を行うことができる。
【0037】
何ら限定されるものではないが、本発明の土木用遮水シートを例えば地下鉄の開削トンネルなどのような地下構造物に用いた場合の例として図3を挙げることができる。
また、本発明の土木用遮水シートを例えば山岳トンネルに用いた場合の例として図4を挙げることができる。
図3および図4において、1は地盤および/または岩盤、2は土留壁、3は本発明の土木用遮水シート、4はコンクリートなどの水硬物、5はセパレーター、6はロックボルト、7は電車を示す。
【0038】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。
以下の例において、コンクリートに対する土木用遮水シートの接着性(剥離強力)は次の方法により測定した。
【0039】
[土木用遮水シートとコンクリートとの接着性(剥離強力)]
以下の例で得られた土木用遮水シートを、幅×長さ=10cm×40cmに切断し、それを幅×長さ×深さ=10cm×40cm×10cmの鉄製型枠の底に、土木用遮水シートの表面(エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物またはエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなる表面層)を上に向けて敷き、そこにポルトランドセメント(普通品)を用いたコンクリートスラリー[砂/セメント=2.0(質量比)、水/セメント=0.5(質量比)、高性能AE減水剤(エヌエムビー社製「ポゾリスNo.70」)の添加量0.6質量%、スランプ値8.0cm、空気量3%]を流し込み、20℃、65%RHの環境下に28日間養生して、幅×長さ×厚さ=10cm×40cm×10cmの試験片を作製した。この試験片の長さ方向のシート端部から約5cmのところまでのコンクリートを剥がし、そこに測定用の帆布(幅×長さ=10cm×40cm)の長さ方向の一端をホチキスで接続し、それをインストロン4301型試験機に帆布を接続した試験片の端部が下になるようにして固定し、次いで上側のチャックで帆布部分を掴んで、温度20℃、引張速度50mm/分の条件で、コンクリートからの土木用遮水シートの180°剥離強力を測定し、コンクリートに対する土木用遮水シートの接着性の評価を行った。
【0040】
参考例1
(1)基材シートの作製:
エチレン-酢酸ビニル共重合体[大日本インキ株式会社製「エバスレン420P」;酢酸ビニル含有量60質量% ;MFR=15g/10分(190℃、10kg荷重)]100質量部に、炭酸カルシウム10質量部およびシリコン系滑剤(堺化学社製「LBT-100」)1質量部を加え、カレンダーロールにて130℃で混練して、厚さ1mmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シートを製造した。このエチレン-酢酸ビニル共重合体シート2枚の間にポリエステルフィラメント糸製の平織物(ポリエステルフィラメント糸の太さ550dtex、打込密度タテ19本/2.54cm、ヨコ20本/2.54cm)を挿入し、温度130℃、圧力1MPaの条件で30秒間熱プレスして、厚さ1.8mmの繊維補強エチレン-酢酸ビニル共重合体シート(基材シート)を作製した。
【0041】
(2)土木用遮水シートの作製:
(i) 酢酸ビニル含有量が90質量%(エチレン含有量20質量%)であるエチレン-酢酸ビニル共重合体[エチレン-酢酸ビニル共重合体(A);ガラス転移温度15℃]を主体とする水性エマルジヨン(株式会社クラレ製「パンフレックスOM-6000」;共重合体濃度50質量%)と、酢酸ビニル含有量が65質量%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体[エチレン-酢酸ビニル共重合体(B);ガラス転移温度-25℃]を主体とする水性エマルジヨン(株式会社クラレ製「パンフレックスOM-2000」;共重合体濃度50質量%)を、1:1の質量比で混合して、水性樹脂混合物(エマルジヨン)を調製した。
(ii) 上記(i)で調製した水性樹脂混合物(エマルジヨン)を、上記(1)で作製した基材シートの片面全面に、200g/m2の割合で塗布した後、120℃で乾燥して、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を含むエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物の塗布量が100g/m2(乾燥時)である土木用遮水シートを作製した。
(iii) 上記(ii)で得られた土木用遮水シートでは、基材シートと表面層(塗布層)との間に層間剥離はなかった。そして、この土木用遮水シートのコンクリートに対する接着性(剥離強力)を上記した方法で調べたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0042】
《実施例
(1) 参考例1の(2)の(i)において、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の水性エマルジヨンとエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の水性エマルジヨンを混合して水性樹脂混合物(エマルジヨン)を調製する際に、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製「PVA-217)の10質量%水溶液を、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量に対するポリビニルアルコールの添加量が4質量%となる量で添加した以外は、参考例1と全く同様にして土木用遮水シートを作製した。
(2) 上記(1)で得られた土木用遮水シートでは、基材シートと表面層(塗布層)との間に層間剥離はなかった。そして、この土木用遮水シートのコンクリートに対する接着性(剥離強力)を上記した方法で調べたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0043】
参考例2
(1) 参考例1の(2)の(i)において、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の水性エマルジヨンとエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の水性エマルジヨンを混合して水性樹脂混合物(エマルジヨン)を調製する際に、シリカ(日本シリカ工業株式会社製「ニップシールE200A」;平均粒径2.0μm)の20質量%分散液を、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量に対するシリカの添加量が20質量%となる量で添加した以外は、参考例1と全く同様にして土木用遮水シートを作製した。
(2) 上記(1)で得られた土木用遮水シートでは、基材シートと表面層(塗布層)との間に層間剥離はなかった。そして、この土木用遮水シートのコンクリートに対する接着性(剥離強力)を上記した方法で調べたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0044】
《実施例
(1) 参考例2の(1)において、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の水性エマルジヨン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の水性エマルジヨンおよびシリカの20質量%分散液を混合して水性樹脂混合物(エマルジヨン)を調製する際に、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製「PVA-217)の10質量%水溶液を、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量に対するポリビニルアルコールの添加量が4質量%となる量で添加した以外は、参考例2の(1)と全く同様にして土木用遮水シートを作製した。
(2) 上記(1)で得られた土木用遮水シートでは、基材シートと表面層(塗布層)との間に層間剥離はなかった。そして、この土木用遮水シートのコンクリートに対する接着性(剥離強力)を上記した方法で調べたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0045】
《比較例1および2》
(1) 参考例1の(2)の(i)において、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の水性エマルジヨンとエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の水性エマルジヨンを混合して水性樹脂混合物(エマルジヨン)を調製する際に、両水性エマルジヨンの混合比率を変えて、(A)/(B)の質量比を下記の表1に示すように、90/10(比較例1)および10/90(比較例2)にした以外は、参考例1と全く同様にして土木用遮水シートを作製した。
(2) 上記(1)で得られた土木用遮水シートでは基材シートと表面層(塗布層)との間に層間剥離はなかった。そして、この土木用遮水シートのコンクリートに対する接着性(剥離強力)を上記した方法で調べたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0046】
《比較例3》
(1) 参考例1の(2)の(ii)において、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の水性エマルジヨンとエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の水性エマルジヨンとの水性樹脂混合物(エマルジヨン)を用いる代わりに、酢酸ビニル含有量が80質量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体の水性エマルジヨン(株式会社クラレ製「パンフレックスOM-4000」)を単独で用いた以外は、参考例1と全く同様にして、基材シートへのエチレン-酢酸ビニル共重合体(「パンフレックスOM-4000」)の塗布量(乾燥時)が100g/m2である土木用遮水シートを作製した。
(2) 上記(1)で得られた土木用遮水シートでは基材シートと表面層(塗布層)との間に層間剥離はなかった。そして、この土木用遮水シートのコンクリートに対する接着性(剥離強力)を上記した方法で調べたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0047】
【表1】
JP0004511758B2_000002t.gif
【0048】
上記の表1の結果から明らかなように、参考例1の土木用遮水シートは、酢酸ビニル含有量が80~99質量%の範囲にあるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)と、酢酸ビニル含有量が50~70質量%の範囲にあるエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を、(A)/(B)=0.2~5の範囲内の質量比で含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面を有していることにより、コンクリートに対する接着強力が高く、コンクリートとの接着性に優れている。
そして、実施例の土木用遮水シートは、酢酸ビニル含有量が80~99質量%の範囲にあるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)と、酢酸ビニル含有量が50~70質量%の範囲にあるエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を、(A)/(B)=0.2~5の範囲内の質量比で含有すると共に、更にポリビニルアルコールをエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量に対して0.1~10質量%の範囲で含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面を有していることにより、コンクリートに対する接着強力が一層大きく、コンクリートとの接着性に一層優れている。
【0049】
参考例2の土木用遮水シートは、酢酸ビニル含有量が80~99質量%の範囲にあるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)と、酢酸ビニル含有量が50~70質量%の範囲にあるエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を、(A)/(B)=0.2~5の範囲内の質量比で含有すると共に、更に無機充填剤(シリカ)をエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量に対して1~50質量%の範囲で含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面を有していることにより、コンクリートに対する接着強力がより一層大きく、コンクリートとの接着性に一層優れている。
実施例の土木用遮水シートは、酢酸ビニル含有量が80~99質量%の範囲にあるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)と、酢酸ビニル含有量が50~70質量%の範囲にあるエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を、(A)/(B)=0.2~5の範囲内の質量比で含有すると共に、更にエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の合計質量に対してポリビニルアルコールを0.1~10質量%の範囲で含有し且つ無機充填剤(シリカ)を1~50質量%の範囲で含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物よりなる表面を有していることにより、コンクリートとに対する接着強力が極めて高く、コンクリートとの接着性に極めて優れている。
【0050】
それに対して、比較例1および2の土木用遮水シートでは、土木用遮水シートの表面がエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を含む組成物から形成されてはいても、該組成物におけるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の配合比率が本発明の範囲から外れているために、実施例1~2および参考例1~2に比べて、コンクリートに対する接着強力が大幅に低く、コンクリートとの接着性が十分ではない。
また、比較例3の土木用遮水シートは、酢酸ビニル含有量が80質量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体のみからその表面が形成されていることにより、実施例1~2および参考例1~2に比べて、コンクリートに対する接着強力が大幅に低く、コンクリートとの接着性が十分ではない。
【0051】
【発明の効果】
前記したエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)を含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物が土木用遮水シートの表面に存在する土木用遮水シートは、当該エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物が、コンクリート、セメント、モルタルなどの水硬物に対して、低温から高温までの広い温度領域で優れた接着性を有するため、土木用遮水シートが水硬物から剥離するのが防止される。そのため、当該土木用遮水シートを用いる場合は、土木用遮水シートと水硬物との間に隙間が生じないので、たとえ遮水シートに亀裂が生じていても、また遮水シート同士の接合部や遮水シートの岩盤層などへの取り付け部に隙間や穴などがあっても、それらの亀裂、隙間、穴などを通って岩盤層などからの湧出水が遮水シートと水硬物との間に滲み出た水が、遮水シートと水硬物との間隙を伝って流れるということがなくなり、トンネル壁などの水硬物に生じた亀裂、接合部、ロックボルトの固定部などを通って、水が漏れ出るのを防止することができる。
特に、土木用遮水シートの表面に存在する前記エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物として、該組成物を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体に特定量のポリビニルアルコール系重合体を本発明で規定する量でグラフト重合するかおよび/または混合した組成物を用いてなる本発明の土木用遮水シートは、水硬物に対する接着性がより優れており、低温から高温までの広い温度領域で長期に亙って、一層高い遮水性能を発揮する。
また、土木用遮水シートの表面に存在する前記エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物として、該組成物中に無機充填剤を本発明で規定する量で含有する組成物を用いてなる本発明の土木用遮水シートは、水硬物に対する接着性が一層高く、低温から高温までの広い温度領域で長期に亙って極めて優れた遮水性能を発揮する。
本発明の遮水工法による場合は、トンネル壁面の遮水を良好な作業性で簡単に行うことができ、しかもその長期に亙って遮水を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンクリート(水硬物)と接着しないか又は接着性に劣る従来の土木用遮水シートを用いて遮水工事を行った場合の漏水について説明した図である。
【図2】コンクリート(水硬物)との接着性に優れる本発明の土木用遮水シートを用いて遮水工事を行った場合について説明した図である。
【図3】本発明の土木用遮水シートを地下鉄の開削トンネルなどの地下構造物に用いた場合の一例を示す図である。
【図4】本発明の土木用遮水シートを山岳トンネルに用いた場合の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 地盤および/または岩盤
2 土留壁
3 本発明の土木用遮水シート
4 コンクリートなどの水硬物
5 セパレーター
6 ロックボルト
7 電車
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3