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明細書 :車上データを自動修正する列車制御装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4589564号 (P4589564)
公開番号 特開2002-337688 (P2002-337688A)
登録日 平成22年9月17日(2010.9.17)
発行日 平成22年12月1日(2010.12.1)
公開日 平成14年11月27日(2002.11.27)
発明の名称または考案の名称 車上データを自動修正する列車制御装置
国際特許分類 B61L  23/14        (2006.01)
FI B61L 23/14 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願2001-149125 (P2001-149125)
出願日 平成13年5月18日(2001.5.18)
審査請求日 平成19年7月3日(2007.7.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】池田 昌俊
【氏名】新井 英樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100079212、【弁理士】、【氏名又は名称】松下 義治
審査官 【審査官】神山 貴行
参考文献・文献 特開平10-203369(JP,A)
特開平10-024845(JP,A)
特開平11-178122(JP,A)
調査した分野 B61L 1/00~29/32
B60L 3/08
B60L 15/40
特許請求の範囲 【請求項1】
地上子位置や軌道回路境界位置等の地上設備の位置を表す車上データを保持し、この車上データを参照して制御を行う列車制御装置において、車上で計測された概ね連続N個の計測データのうちのM個の計測データその車上データとの誤差が許容範囲内にあるときであって、且つ、地上子や軌道回路境界等の地上設備が追加、撤去又は位置変更されたことが車上に伝達されないとき、計測データと車上データとの誤差が許容範囲外にある地上設備又は車上データに該当するものがない地上設備のN-M個の個々の計測データについて、複数回の走行で複数個の計測データを取得し且つこれらデータの処理を行って算出した統計的処理が施された計測データを該当する車上データに置き換え、車上データに該当するものがない統計的処理が施された計測データは車上データに追加し、更に車上データに該当する地上設備の計測データがない場合は当該車上データを削除して車上データを自動修正する列車制御装置。
【請求項2】
地上子位置や軌道回路境界位置等の地上設備の位置を表す車上データを保持し、この車上データを参照して制御を行う列車制御装置において、車上で計測された概ね連続N個の計測データのうちのM個の計測データとその車上データとの誤差が許容範囲内にあるときであって、且つ、地上子や軌道回路境界等の地上設備が追加、撤去又は位置変更されたことが地上から車上への通知手段により車上に伝達されたとき、前記通知手段で伝達された地上設備について複数回の走行で複数個の計測データを取得し且つこれらデータの処理を行って算出した統計的処理が施された計測データを該当する車上データに置き換え、車上データに該当するものがない統計的処理が施された計測データは車上データに追加し、更に車上データに該当する地上設備の計測データがない場合は当該車上データを削除して車上データを自動修正する列車制御装置。
【請求項3】
地上子位置や軌道回路境界位置等の地上設備の位置を表す車上データを保持し、この車上データを参照して制御を行う列車制御装置において、車上で計測された概ね連続N個の計測データのうちのM個の計測データその車上データとの誤差が許容範囲内にあるときであって、地上子や軌道回路境界等の地上設備が追加、撤去又は位置変更されたことが地上から車上への通知手段により車上に伝達されたとき、前記通知手段で伝達された地上設備の計測データがドプラーレーダー等の信頼性の高い非接触型計測機器から得られたものである場合には前記計測データを該当する車上データに置き換え、車上データに該当するものがない計測データは車上データに追加し、更に車上データに該当する地上設備の計測データがない場合は当該車上データを削除して車上データを自動修正する列車制御装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地上子位置や軌道回路境界位置等の地上設備の位置を表す車上データを保持し、この車上データを参照して制御を行う列車制御装置に関し、主として自動列車停止装置(以下ATSと記載する)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
首都圏の主要線区には、P形地上子から停止信号機までの距離を直接ディジタル情報により伝達して制御を行うATS-P形が使用されている。しかしながら、ATS-P形は地上設備が高価となり、地方線区や都市間の線区には未だにATS-S形を基本としたATS-SN、ATS-SW、ATS-STなどが使用されている。これらATSは、停止信号機の所定距離の外方で警報を発生するものである。
【0003】
このATS-S形においては、車上子が信号機の手前の所定距離の地点に配置された「停止」又は「停止でない」の2値情報しか持たない地上子(以下ATS-S形地上子と記載する)を通過するときに、ATS-S形地上子から車上子を介して「停止」情報が車上の制御装置に伝えられると、その時点で警報ベルを発して運転士に注意を促し、所定の操作をしないと5秒後にブレーキが作動するものである。警報音を発生したとき運転士が確認ボタンを押さない限り自動的にブレーキが作動するが、逆に反射的な無意識の確認操作により自動的なブレーキが作動せず、このためATS-S形では事故を完全に防ぐことのできないのが実状となっている。
【0004】
これに対し、ATS-SP形は例えば特開平6-227397号公報に開示されている如く、車上に停止信号機までの距離データを保持し、ATS-S形地上子からの停止情報を受信したとき、車上の距離データにより停止パターン、即ち位置-速度パターンを発生して列車を停止信号機までに安全に停止させる高度なATS機能を実現するものである。
【0005】
しかしながら、地上子や信号機等の地上設備は、構内改良などの工事により頻繁に変更されるので、ATS-SP形はその都度車上データにこれを反映しなければならない。また、ATS-SP形は複雑な運用を行うあらゆる列車に対して、地上子の設置位置変更に伴う車上データのメンテナンスを行うとしていたため、メンテナンスシステムが複雑となる。更に、曲線通過速度を向上させるため、振り子制御とも呼ばれる車体傾斜制御が行われているが、この位置検知のための地上子位置データは、位置変更時は新しいデータをメモリに書き込み、これを差し替えることでメンテナンスを行っており、少数の優等列車のみではあるものの、相当数の人手を有し非常に煩わしい作業となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする第1の課題は、地上子位置や軌道回路境界位置等の地上設備の位置を表す車上データを保持し、この車上データを参照して制御を行う列車制御装置において、列車が走行中に自動的に車上データを修正するようにして、煩わしく且つハイコストにつながる車上データのメンテナンス作業を廃止し、又は極めて単純化するものである。本発明が解決しようとする第2の課題は、車上にデータを保持することで可能となる様々なハイレベルの機能を有する列車制御装置の実現を容易にする車上データの自動修正システムを提供することでである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1の発明を、地上子位置や軌道回路境界位置等の地上設備の位置を表す車上データを保持し、この車上データを参照して制御を行う列車制御装置において、車上で計測された概ね連続N個の計測データのうちのM個の計測データその車上データとの誤差が許容範囲内にあるときであって、且つ、地上子や軌道回路境界等の地上設備が追加、撤去又は位置変更されたことが車上に伝達されないとき、計測データと車上データとの誤差が許容範囲外にある地上設備又は車上データに該当するものがない地上設備のN-M個の個々の計測データについて、複数回の走行で複数個の計測データを取得し且つこれらデータの処理を行って算出した統計的処理が施された計測データを該当する車上データに置き換え、車上データに該当するものがない統計的処理が施された計測データは車上データに追加し、更に車上データに該当する地上設備の計測データがない場合は当該車上データを削除して車上データを自動修正するように構成した。
【0008】
上記課題を解決する請求項2の発明を、地上子位置や軌道回路境界位置等の地上設備の位置を表す車上データを保持し、この車上データを参照して制御を行う列車制御装置において、車上で計測された概ね連続N個の計測データのうちのM個の計測データとその車上データとの誤差が許容範囲内にあるときであって、且つ、地上子や軌道回路境界等の地上設備が追加、撤去又は位置変更されたことが地上から車上への通知手段により車上に伝達されたとき、前記通知手段で伝達された地上設備について複数回の走行で複数個の計測データを取得し且つこれらデータの処理を行って算出した統計的処理が施された計測データを該当する車上データに置き換え、車上データに該当するものがない統計的処理が施された計測データは車上データに追加し、更に車上データに該当する地上設備の計測データがない場合は当該車上データを削除して車上データを自動修正するように構成した。
【0009】
上記課題を解決する請求項3の発明を、地上子位置や軌道回路境界位置等の地上設備の位置を表す車上データを保持し、この車上データを参照して制御を行う列車制御装置において、車上で計測された概ね連続N個の計測データのうちのM個の計測データその車上データとの誤差が許容範囲内にあるときであって、地上子や軌道回路境界等の地上設備が追加、撤去又は位置変更されたことが地上から車上への通知手段により車上に伝達されたとき、前記通知手段で伝達された地上設備の計測データがドップラーレーダー等の信頼性の高い非接触型計測機器から得られたものである場合には前記計測データを該当する車上データに置き換え、車上データに該当するものがない計測データは車上データに追加し、更に車上データに該当する地上設備の計測データがない場合は当該車上データを削除して車上データを自動修正するように構成した。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、ATS-SP形の列車制御装置の基本構成を示した図である。即ち、図1のATS-SP形の列車制御装置は、制御装置2、地上設備位置データ及び制御用固定データを制御装置2に入力するデータ入力部3、軌道回路11の軌道回路電流信号をレール14から受信して制御装置2に入力する受電器4、地上子13から信号機12の現示情報を受信して制御装置2に入力する車上子5、車上子5が地上子13から停止情報を受信したときに警報音を発する警報器6、警報音を聞いた運転士が確認の意思表示を行うための確認ボタン7、列車1の速度を検出して制御装置2に入力する速度発電機8、及び制御装置2から与えられた停止パターン15に基づいてブレーキ10を制御するブレーキ操作部9とから構成されている。
【0011】
列車1の制御装置2は速度発電機8の回転により発生するパルスを計数し、列車1の現在位置を常時検出している。列車はこのようにして、車上で通常的に自列車の位置を計測して位置検知を行っている。但し、これは厳密な意味での位置検知でなくともよく、データ検索上十分に安全であれば大まかな位置検知でもかまわない。また、地上設備相互間の相対的な距離により、検出する地上設備位置とデータ上の設備位置の対応が追跡できれば問題はない。この場合、設備相互間の距離は、実測に基づいた距離でなくても、例えば車輪径を1とした相対距離でもかまわないが、当然ながら停止距離など制御に関する距離は絶対的な長さを正しく表すものでなければならない。
【0012】
制御装置2は、フェールセーフ構成のCPUと地上設備位置データ及び制御用固定データが記憶されたメモリを具備して構成されている。
【0013】
本発明は、図1に示した如き制御装置2、即ち地上子位置や軌道回路境界位置等の地上設備の位置を表す車上データを保持し、この車上データを参照して制御を行う列車制御装置に適用されるものである。
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る車上データの自動修正について詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
先ず、地上設備の設置場所が結果的にわずかに変更された場合であって、地上設備の設置場所が変更されたことが地上から車上に伝えられない第1実施形態における車上データの自動修正について、図2と図4を参照して説明する。
【0016】
通常の保守において、例えば地上子の性能が劣化し、短い列車間合いでこれを取り替えることとなったとき、第1の列車間合いで制御に影響のない近接した場所に新たな地上子を取り付け、第2の列車間合いに新、旧地上子の接続ケーブルの端子を付け替え、第3の列車間合いで旧地上子を撤去するというような、段階的な切り替え作業が行われることがある。このような作業が行われると、地上子の設備位置はわずかに距離がずれることとなり、車上に保持する地上設備位置のデータ即ち車上データの精度が悪くなる。従って、車上データの修正が必要である。
【0017】
図2は第1実施形態における車上データの自動修正について説明するための地上設備の配置図で、4つの連続した閉塞区間T、T、T、Tを含む軌道における地上設備の配置図である。図2における計測対象の地上設備は、閉塞区間Tと閉塞区間Tの間の軌道回路境界21、閉塞区間Tと閉塞区間Tの間の軌道回路境界22、閉塞区間Tと閉塞区間Tの間の軌道回路境界23、信号機31の現示情報を車上に伝えるための地上子24、信号機32の現示情報を車上に伝えるための地上子25及び信号機33の現示情報を車上に伝えるための地上子26である。
【0018】
車上で計測された地上設備の位置データ、即ち計測データは、図2の上段に示す如く、軌道回路境界21の位置A、軌道回路境界22の位置A、軌道回路境界23の位置A、地上子24の位置B、地上子25の位置B、地上子26の位置Bの6個のデータである。
【0019】
一方、車上に保持されている地上設備の位置データ、即ち車上データは、図2の下段に示す如く、軌道回路境界21の位置a、軌道回路境界22の位置a、軌道回路境界23の位置a、地上子24の位置b、地上子25の位置b、地上子26の位置bの6個のデータである。
【0020】
第1実施形態の図2は、地上子25が以前の位置、即ち車上データbが計測されたときの設置位置から距離dだけ離れた位置に変更され、且つ他の5つの地上設備の位置は変更されていない事例である。そして、この第1実施形態は、地上設備の変更は地上側から車上側に伝達されない事例である。
【0021】
第1実施形態における車上データの自動修正は、図4のフローチャートに従って行われる。
【0022】
図4において、車上の制御装置2は概ね連続したN個の地上設備の計測データを取得し(101)、これらの計測データをメモリに記憶する。図2の如く地上設備が配置されている車上データの自動修正の対象区間では、制御装置2が計測する地上設備は連続6個、つまりNは6である。そして、列車が図2の左から右に進行して制御装置2が取得した計測データは、B、A、B、A、B及びAの6個のである。
【0023】
続いて制御装置2は6個の地上設備、即ち地上子26、軌道回路境界23、地上子25、軌道回路境界22、地上子24及び軌道回路境界21について、その計測データとこれに該当する車上データをメモリから読み出し、夫々の誤差を算出し(102)、メモリに記憶する。算出された誤差は、地上子26、軌道回路境界23、地上子25、軌道回路境界22、地上子24及び軌道回路境界21について夫々εb3、εa、ε2、εa、εb1及びεa1である。
【0024】
ステップ102に続いて、制御装置2はN個の地上設備について、メモリを検索し計測データと車上データとの誤差が許容誤差範囲以内にある地上設備の数をカウントし、その数がM個以上か否かを判定する(103)。但し、MはN以下の整数である。このステップ103によって、本発明に係る車上データを自動修正する列車制御装置においては、その地上設備の計測系が正常に作動しているか否かを判断する。
【0025】
ここでは、ステップ102で算出された誤差、即ちεb3、εa、ε2、εa、εb1及びεa1の6個の誤差について許容誤差範囲か否かを調べた結果、地上子25の計測データと車上データとの誤差ε2のみが許容誤差範囲を超えているものとする。すると、許容誤差範囲内にある地上設備の個数は5個となる。従ってステップ103における判断はYESとなり、制御装置2は次のステップ104に進む。
【0026】
ステップ104で、制御装置2は計測データと車上データとの誤差が許容誤差範囲を超える地上設備について複数回の走行を行って、複数個の計測データを取得する。ここでは地上子25について、h回の走行を行ってh個の計測データB21~B2hを取得する。
【0027】
ステップ104に続いて、制御装置2は地上子25について取得したh個の計測データB21~B2hを統計的に処理し、統計的処理を施された計測データB20を算出し(105)、これをメモリに記憶する。この統計的処理は、例えば複数個の計測データの単純平均演算である。しかしながら、実際の運用に当たっては、列車制御の分野において確立された信頼性の高い統計的処理方法が選ばれる。
【0028】
ステップ105に続いて、制御装置2はメモリを検索し、ステップ105で算出したデータ、即ち統計的処理を施した計測データと該当する車上データが存在するかを否かを調べる(106)。ここでは、車上データbが存在する。従って、ステップ106の判断結果はYESとなり、制御装置2は地上子25の車上データbを統計的処理を施した計測データB20で置換し(107)、車上データの自動修正プログラムを終了させる。このように、移動させられた地上設備の現在位置は正確に計測され、その計測データは該当する車上データと自動的に置換され、車上データの自動修正が確実に行われる。
【0029】
ステップ106の判定結果がNOの場合は、制御装置2は統計的処理を施した計測データが存在し且つこれに該当する車上データが存在しない場合か否かを調べる(108)。ステップ108の判定結果がYESならば、制御装置2は統計的処理を施した計測データを車上データとして追加し(109)、車上データの自動修正プログラムを終了させる。制御装置2の動作がステップ109に進むのは、地上設備が新た追加された場合である。但し、図2に示した第1実施形態では、ステップ109に該当するデータは存在しない。
【0030】
また、ステップ108の判定結果がNOならば、即ち車上データが存在し且つ該当する計測データが存在しない場合は、制御装置2は車上データを削除し(110)、車上データの自動修正プログラムを終了させる。制御装置2の動作がステップ110に進むのは、地上設備が撤去された場合である。但し、図2に示した第1実施形態では、ステップ110に該当するデータは存在しない。
【0031】
更に、ステップ103で、計測データと車上データとの誤差が許容誤差範囲以内にある地上設備の数がM個に満たない場合や、N個を超える数である場合には、制御装置2は地上設備の計測系が異常であると判断し、車上データの自動修正プログラムを終了させる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、地上設備の設置場所が許容誤差範囲を超える程に変更された場合であって、地上設備の設置場所が変更されたことが地上から車上に伝えられる第2実施形態における車上データの自動修正の第1実施例について、図3と図5を参照して説明する。
【0033】
図3は第2実施形態における車上データの自動修正について説明するための地上設備の配置図で、4つの連続した閉塞区間T、T、T、Tを含む軌道における地上設備の配置図である。図3における計測対象の地上設備は、閉塞区間Tと閉塞区間Tの間の軌道回路境界21、閉塞区間Tと閉塞区間Tの間の軌道回路境界22、閉塞区間Tと閉塞区間Tの間の軌道回路境界23、信号機31の現示情報を車上に伝えるための地上子24、信号機32の現示情報を車上に伝えるための地上子25、信号機33の現示情報を車上に伝えるための地上子26、及び工事区間である旨を車上に伝えるための地上子27と28である。
【0034】
車上で計測された地上設備の位置データ、即ち計測データは、図3の上段に示す如く、軌道回路境界21の位置A、軌道回路境界22の位置A、軌道回路境界23の位置A、地上子24の位置B、地上子25の位置B、地上子26の位置B、地上子27の位置C、8個のデータである。
【0035】
図3において、信号機31の現示は進行信号Gである。閉塞区間Tに列車16が在線しているので、信号機32の現示は停止信号R、且つ信号機33の現示は注意信号Yである。閉塞区間Tには、後続列車17が在線している。
【0036】
一方、車上に保持されている地上設備の位置データ、即ち車上データは、図3の下段に示す如く、軌道回路境界21の位置a、軌道回路境界22の位置a、軌道回路境界23の位置a、地上子24の位置b、地上子25の位置b、地上子26の位置bの6個のデータである。
【0037】
第2実施形態の図3は、地上側で地上子25が以前の位置、即ち車上データbが計測されたときの設置位置から距離dだけ離れた位置に変更され、一対の地上子27と地上子28が追加され、更に他の5つの地上設備の位置は変更されていない事例である。そして、この第2実施形態は、地上設備の変更を地上側から車上側に伝達することができる事例である。地上子25の変更を車上に伝達する手段は、地上子25の外方の位置Cに設置された工事区間進入を車上に伝える地上子27と、地上子25の内方の位置Cに設置された工事区間進出を車上に伝える地上子28である。
【0038】
地上子27と地上子28は周波数の異なる地上子を複数組合わせて用いるが、同一周波数の地上子の設置間隔の特徴によるものや、P形地上子等でデータを送信するようにしてもよい。地上子27と地上子28は、低コストのものが用いられる。勿論、トランスポンダ等のディジタル情報を伝送可能な手段を用いても車上データを修正できる。この場合は地上から地上設備種別のコード即ちIDと変更データを送信し、車上で統計処理を加えず修正することができる。また工事毎に特有のIDを送信し、車上ではデータ修正をIDにより管理することができる。
なお、工事区間とは当然ながら工事が完全に完了した区間のことである。
【0039】
列車17が地上子26上を通過すると、その車上装置のATS機能はATS-SPから停止距離を用いないATS-S形、又は縮退したATS機能に遷移する。この場合でも列車17は地上子位置と軌道回路境界位置の計測を継続して行う。
【0040】
列車17の進行に従って、その制御装置2は地上子26から軌道回路境界21までの連続8個の地上設備、即ち地上子26、地上子27、軌道回路境界23、地上子25、地上子28、軌道回路境界22、地上子24及び軌道回路境界21の位置を計測し、計測データB、C、A、B、C、A、B及びAの8個の計測データを取得し、そのメモリに記憶する。
【0041】
図5は第2実施形態における車上データの自動修正を行う場合の第1実施例のフローチャートである。
【0042】
図5において、車上の制御装置2は概ね連続したN個の地上設備の計測データを取得し(201)、これらの計測データをメモリに記憶する。図3の如く地上設備が配置されている車上データの自動修正の対象区間では、制御装置2が計測する地上設備は連続8個、つまりNは8である。そして、列車が図2の左から右に進行して制御装置2が取得した計測データは、B、C、A、B、C、A、B及びAの8個である。
【0043】
続いて制御装置2は8個の地上設備、即ち地上子26、地上子27、軌道回路境界23、地上子25、地上子28、軌道回路境界22、地上子24及び軌道回路境界21について、その計測データとこれに該当する車上データをメモリから読み出し、夫々の誤差を算出し(202)、メモリに記憶する。算出された誤差は、地上子26、軌道回路境界23、地上子25、軌道回路境界22、地上子24及び軌道回路境界21について夫々εb3、εa、ε2、εa、εb1及びεa1である。
【0044】
ステップ202に続いて、制御装置2はN個の地上設備について、メモリを検索し計測データと車上データとの誤差が許容誤差範囲以内にある地上設備の数をカウントし、その数がM個以上か否かを判定する(203)。但し、MはN以下の整数である。このステップ203によって、本発明に係る車上データを自動修正する列車制御装置においては、その地上設備の計測系が正常に作動しているか否かを判断する。
【0045】
ここでは、ステップ202で算出された誤差、即ちεb3、εa、ε2、εa、εb1及びεa1の6個の誤差について許容誤差範囲か否かを調べた結果、地上子25の計測データと車上データとの誤差ε2のみが許容誤差範囲を超えているものとする。すると、許容誤差範囲内にある地上設備の個数は5個となる。図3の区間で車上に記憶されている車上データの地上設備の数は6個である。この6個に対して5個の地上設備の計測データと車上データの誤差が許容誤差範囲であるから、ステップ203における判断はYESとなり、制御装置2は次のステップ204に進む。
【0046】
ステップ203に続いて、制御装置2は工事区間進入信号を受信し(204)、且つ工事区間進出信号を受信した(205)場合に、次のステップに進む。ここでは、図3に示す如く、地上子27から工事区間進入信号Cを受信し、且つ地上子28から工事区間進入信号Cを受信しているので、次のステップに進む。
【0047】
即ちステップ205に続いて、制御装置2は、工事区間進入信号Cと工事区間進入信号Cで特定された工事区間にある地上設備の計測データがあるか否かを調べる(206)。ここでは、図3に示す如く、地上子25の計測データBが存在するので、ステップ206の判定結果はYESである。
【0048】
ステップ206の判定結果がYESであるから、制御装置2は工事区間にある地上設備について複数回の走行を行って、複数個の計測データを取得する。ここでは地上子25について、h回の走行を行ってh個の計測データB21~B2hを取得し(208)、メモリに記憶する。
【0049】
ステップ208に続いて、制御装置2は地上子25について取得したh個の計測データB21~B2hを統計的に処理し、統計的処理を施された計測データB20を算出し(209)、これをメモリに記憶する。この統計的処理は、例えば複数個の計測データの単純平均演算である。しかしながら、実際の運用に当たっては、列車制御の分野において確立された信頼性の高い統計的処理方法が選ばれる。
【0050】
ステップ208に続いて、制御装置2はメモリを検索し、ステップ209で算出したデータ、即ち統計的処理を施した計測データと該当する車上データが存在するかを否かを調べる(210)。ここでは、車上データbが存在する。従って、ステップ210の判断結果はYESとなり、制御装置2は地上子25の車上データbを統計的処理を施した計測データB20で置換し(212)、車上データの自動修正プログラムを終了させる。このように、移動させられた地上設備の現在位置は正確に計測され、その計測データは該当する車上データと自動的に置換され、車上データの自動修正が確実に行われる。
【0051】
ステップ210の判定結果がNOの場合は、制御装置2は統計的処理を施した計測データを車上データとして追加し(211)、車上データの自動修正プログラムを終了させる。制御装置2の動作がステップ211に進むのは、地上設備が新た追加された場合である。但し、図3に示した第2実施形態では、ステップ211に該当するデータは存在しない。
【0052】
また、ステップ206の判定結果がNOの場合は、制御装置2は車上データを削除し(207)、車上データの自動修正プログラムを終了させる。制御装置2の動作がステップ207に進むのは、地上設備が撤去された場合である。但し、図3に示した第2実施形態では、ステップ207に該当するデータは存在しない。
【0053】
更に、ステップ203で、計測データと車上データとの誤差が許容誤差範囲以内にある地上設備の数がM個に満たない場合や、N個を超える数である場合には、制御装置2は地上設備の計測系が異常であると判断し、車上データの自動修正プログラムを終了させる。
【0054】
次に、地上設備の設置場所が許容誤差範囲を超える程に変更された場合であって、地上設備の設置場所が変更されたことが地上から車上に伝えられる第2実施形態における車上データの自動修正の第2実施例について、図3と図6を参照して説明する。
【0055】
図6は第2実施形態における車上データの自動修正を行う場合の第2実施例のフローチャートである。
【0056】
第2実施形態における第2実施例の図6のフローチャートのステップ301、ステップ302、ステップ303、ステップ304、ステップ305、ステップ306、及びステップ307は、第2実施形態における第1実施例の図5のフローチャートのステップ201、ステップ202、ステップ203、ステップ204、ステップ205、206、及びステップ207と夫々全く同じである。また、ステップ308はステップ210と、ステップ309はステップ211と、更にステップ310はステップ212と夫々全く同じである。
【0057】
要するに、第2実施形態における第2実施例は、第1実施例で行っている工事区間の計測データについて複数回の走行で複数個の計測データを取得するステップと、複数個の計測データを統計的処置を行って統計的処理を施した計測データを取得するステップが省かれたものである。
【0058】
従って、第2実施形態における第2実施例では、最初に計測された工事区間の地上設備の計測データがそのまま車上データの自動修正に用いられることになる。図3の場合、制御装置2は地上子25の車上データbを計測データBで置換し(310)、車上データの自動修正プログラムを終了させることになる。
【0059】
統計的処理を施した計測データでなく、1回の計測で取得したけ計測データを車上データの自動修正に用いる第2実施形態の第2実施例は、地上設備の位置計測に信頼性の高い計測機器が採用されている場合に適用されるものである。信頼性の高い計測機器とは、例えばドップラーレーダー等の非接触型計測機器である。このような非接触型計測機器では、車輪の滑走や空転の影響を排除できるからである。
【0060】
【発明の効果】
本発明により、車上データを参照して行う列車制御装置において、複雑な運用を行うあらゆる車種の列車に対して、走行中に計測した地上設備の計測データを処理することによって簡単且つ確実に車上データの自動修正を行えるようになった。従って、従来の複雑な車上データメンテナンスシステムが不用になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される列車制御装置の一例の基本的構成を示す図である。
【図2】地上設備の変更が地上から車上に伝えられない第1実施形態の地上設備の配置位置を示した図であって、上段は計測データに基づいた地上設備の配置図、下段は車上データ基づいた地上設備の配置図である。
【図3】地上設備の変更が地上から車上に伝えられる第2実施形態の地上設備の配置位置を示した図であって、上段は計測データに基づいた地上設備の配置図、下段は車上データ基づいた地上設備の配置図である。
【図4】第1実施形態における車上データの自動修正の一実施例の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態における車上データの自動修正の第1実施例の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態における車上データの自動修正の第2実施例の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1、16、17、18 列車
2 制御装置
3 データ入力部
4 受電器
5 車上子
6 警報器
7 確認ボタン
8 速度発電機
9 ブレーキ操作部
10 ブレーキ
11 軌道回路
12 信号機
13、24、25、26、27、28 地上子
14 レール
15 停止パターン
21、22、23 軌道回路境界
T1、T2、T3、T4 閉塞区間
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5