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明細書 :地下構造物先防水用シート間の接合方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3854098号 (P3854098)
公開番号 特開2002-364296 (P2002-364296A)
登録日 平成18年9月15日(2006.9.15)
発行日 平成18年12月6日(2006.12.6)
公開日 平成14年12月18日(2002.12.18)
発明の名称または考案の名称 地下構造物先防水用シート間の接合方法
国際特許分類 E21D  11/38        (2006.01)
C08L  31/04        (2006.01)
FI E21D 11/38 A
C08L 31/04 S
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2001-175423 (P2001-175423)
出願日 平成13年6月11日(2001.6.11)
審査請求日 平成16年7月15日(2004.7.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【識別番号】501232528
【氏名又は名称】株式会社複合技術研究所
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
発明者または考案者 【氏名】矢口 直幸
【氏名】舘山 勝
【氏名】小山 幸則
【氏名】清水 満
【氏名】藤本 英己
【氏名】西澤 政晃
【氏名】花森 一郎
【氏名】出水 俊介
【氏名】田村 幸彦
【氏名】池田 幸雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】高橋 三成
参考文献・文献 特開2000-80894(JP,A)
特開2000-160774(JP,A)
特開平8-143717(JP,A)
特開2000-336216(JP,A)
特開平8-253631(JP,A)
調査した分野 E21D 11/38
E02D 29/00
E02D 3/00
E02D 17/20
C08L 31/04
特許請求の範囲 【請求項1】
防水シート間に防水材料を塗工、充填して接合し、かつ、前記防水シートの重ね合わせ幅が5乃至40cmの範囲であり、前記防水材料を塗工、充填した防水シート重ね合わせ部強度が防水シート本体強度の5乃至70%であり、前記防水材料の流動開始温度が30℃以下の条件を満足してなることを特徴とする地下構造物先防水用シート間の接合方法。
【請求項2】
請求項1記載の地下構造物先防水用シート間の接合方法において、前記防水シートの少なくとも片面の表層樹脂が、酢酸ビニル含有率50質量%以上、70質量%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂と酢酸ビニル含有率が80質量%以上のエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を、1/5乃至5/1の比率で混合、形成してなることを特徴とする地下構造物先防水用シート間の接合方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地下構造物先防水用シート間の接合方法に係り、特に、敷設された防水シートに大きな外部応力が加わっても、遮水性の低下を伴うことなく、その応力を吸収する開削トンネルなどの地下構造物先防水用シート間の接合方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
開削トンネルなどの先防水用シート等の施工時における問題点の1つは、シートを敷設する地山、壁が必ずしも凹凸のない均一な鏡面ではなく、凹凸すなわち不陸大の部位に施工するのがごく一般的であるということである。
【0003】
図5及び図6はかかる従来の開削トンネルなどの先付防水シートの施工状態を示す図であり、図5はコンクリート打設前の施工状態を示し、図6はそのコンクリート打設後の施工状態を示している。
【0004】
これらの図において、101は地盤、102は空隙、103は端部が重ね合わされた不織布、104はその不織布103の表面に設けられる塗膜防水層であり、このシート上にコンクリート105が打設されると、図6に示すように、不織布103の端部がずれて、塗膜防水層104がなくなる部位が生じて、そこから地盤101からの水108が通水することになる。107はコンクリート打設後に生じたクラックを示すが、不織布103の端部がずれた箇所106とクラック107の箇所が一致した場合には、そのクラック107が水108の通水路となる。
【0005】
このように、凹凸のある地山、壁等にシートを敷設した後、コンクリート打設すると、その流体圧でシートに応力が伝播する。一方、敷設シートは、製品幅、長さに制約があるため複数枚のシート同士を重ね合わせ接合(以下、単に接合部と記載)する必要がある。このため、シートへの応力負荷により接合部に目開き、あるいはシート自体の損傷が生じ、目的とする遮水性確保に不都合をきたす。この対応手段としては、防水シート自体の伸びにより受ける応力を回避する方法が考えられ、ごくまれに採用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来法はシート自体が大幅に伸長されるために、結果としてシート自体が弱くなり、施工作業時にシートが損傷しやすく、また、シートが伸長した際に地山等の突起部に当たると簡単にシートに穴が開く等の大きな問題点を抱えている。このため、シートを取り付ける壁等の不陸を極力少なくし、さらには、シート施工時に細心の注意を払う必要があった。また、破損したシート部位を補修する等の余分な労力を要し、結果的に防水工事費が高くなっているのが実状であった。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みて、シート伸びの比較的小さい、耐突起物損傷性に優れた防水シートであっても、不陸大の地山、壁に適用し得る地下構造物先防水用シート間の接合方法を提供することを目的とする。
【0008】
なお、ここで地下構造物とは、開削トンネル、地下駅、線路下横断構造物、U型擁壁など、地盤中に構築される構造物をいう。これらの構造物では、施工後に地下水による漏れが問題となるため、一般的に防水工を施工する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕地下構造物先防水用シート間の接合方法において、防水シート間に防水材料を塗工、充填して接合し、かつ、前記防水シートの重ね合わせ幅が5乃至40cmの範囲であり、前記防水材料を塗工、充填した防水シート重ね合わせ部強度が防水シート本体強度の5乃至70%であり、前記防水材料の流動開始温度が30℃以下の条件を満足してなることを特徴とする。
【0010】
〔2〕上記〔1〕記載の地下構造物先防水用シート間の接合方法において、前記防水シートの少なくとも片面の表層樹脂が、酢酸ビニル含有率50質量%以上、70質量%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂と酢酸ビニル含有率が80質量%以上のエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を、1/5乃至5/1の比率で混合、形成してなることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
本発明における防水シートは、なんら限定の必要性はなく、従来の開削トンネルの先付用防水シートを適用、利用可能である。また、防水シートは、その片面あるいは厚さ方向のほぼ中心・中央部を合成繊維等からなる織編基布を用いて補強し、JIS L1096カットストリップ法に準じて測定される伸度が50%以下および引張り強さが10~50kN/mの範囲である高い損傷抵抗性を有することが好ましい。
【0013】
伸度が50%を越えるとシートの損傷抵抗性の観点で好ましくなく、また同様に10kN/m未満の引張り強さでは、シートの損傷抵抗性が弱すぎて好ましくなく、逆に50kN/mを越えると損傷抵抗性の向上効果があまり期待されず、いたずらにシートコストが嵩むためである。
【0014】
また、かかる合成繊維等でシートを補強するにあたり、その繊維の打ち込み密度は、10本/インチ以上、より好ましくは、15~30本/インチが高度な施工段階における損傷抵抗性を確保し得る点で好ましい。
【0015】
一方、地下構造物に対して高度な防水性を確保し得る点から、コンクリート躯体と密着性が高く、シート/コンクリート躯体間の通水を遮断する優れた機能を有する防水シート、すなわち防水シートの少なくとも片面表層樹脂に、酢酸ビニル含有率50質量%以上、70質量%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂と酢酸ビニル含有率が80質量%以上のエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を1/5~5/1の比率で混合し、それを50~300g/m2 塗工した防水シートがより好ましく、この際、この樹脂層を打設コンクリート側(構造物躯体側)に配置・敷設する。
【0016】
本発明の特徴である防水シートの重ね合わせ幅は、5~40cm、さらに、好ましくは10~30cmである必要がある。これは、5cm未満では余裕代が少なさすぎるために、大きな不陸への追随性を確保しきれず、逆に40cmを越えると不陸追随性、遮水性では好ましいが、これほど大きな余裕代の必要性がなく、いたずらに防水シートの使用量を大きくして施工費が嵩むためである。このため、防水シートの重ね合わせ幅は、5~40cmが好ましい。
【0017】
また、本発明に供するシート/シート間に塗工・充填する防水材料は、その材料自体の流動開始温度が30℃以下であるものを用い、かつ、シート/シートの引張せん断強度がシート本体強度の5~70%、さらに好ましくは20~50%である必要がある。
【0018】
シート/シート間に塗工・充填する防水材料の流動開始温度が、防水施工場所の環境温度を越えると、本発明の最大の特徴である、シートに応力が加わった際にシート/シート間が剥離、破断することなく、防水、遮水性を保有しながらシート/シート間がスライドして、構造的な伸びを提供する性質に支障が生じるために、温度は、30℃以下、さらに好ましくは20℃以下、さらに、より好ましくは、10℃以下である。
【0019】
同様な理由で、シート/シート間の接合強度は、シート自体の強度の5~70%である必要がある。シート/シート間の接合強度がシート自体の強度の5%未満では、水密性に問題が、70%を越えるとスムースなシート・スライドに問題を生じる点から5~70%、さらに好ましくは20~50%である必要がある。
【0020】
また、シート/シート間に塗工・充填する防水材料の材質は、特に限定の必要はなく、前記の機能を保有するものであれば良い。具体的な例としてはエチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂、アスファルト系、ゴムとアスファルトの混合物系、シリコーン系、エポキシ系、ポリサファイド系、ブチル系、重合油・鉱物質充填系、ウレタン系、ロジン系等が挙げられ、また、これらを混合して使用に供してもよい。
【0021】
さらに、これら防水材料の流動開始温度を制御するために、該材との相溶性と低温特性に優れる流動パラフィン、ポリブデン等を混合併用してもよい。
【0022】
一方、シート/シート間に塗工・充填する目付は、10~1000g/m2 、好ましくは50~500g/m2 である。
【0023】
なお、塗工・充填する防水材料は、シート/シート間の重ね合わせ部の全幅に実施しても、あるいはその一部幅に実施してもよい。
【0024】
以下、実施例により本発明について説明するが、これらにより本発明は何ら制限されるものではない。
(防水シートの接合幅)
防水材料で塗工・充填したシート/シート部を1mm精度の物差しでn=5で測定、その平均値を接合幅とする。
(シート本体強度、接合部強度)
JIS L1096A法の引張強さに準じて測定、評価する。なお、防水シート強度(A)に対する接合部強度(B)の比率は、下式で算出する。
【0025】
防水シート強度に対応する接合部強度(B)の比率(%)
=(B)/(A)×100
(防水材料の流動開始温度)
JIS K2207の軟化温度測定法に準じて、測定評価する。
(実施例)
エチレン-酢酸ビニル共重合体(大日本インキ株式会社製「エバスレン420P」;酢酸ビニル含有率60質量%;MFI=15g/10分;190℃、10kg荷重)100質量部に、炭酸カルシウム10質量部およびアマイド系滑剤(堺化学工業株式会社「LBT-100」)1質量部を加え、カレンダーロールにて130℃で混練して、厚さ0.5mmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シートを製造した。
【0026】
このシート2枚の間にポリエステルフィラメント糸製の平織物(550dtexポリエステルフィラメント、打込密度タテ19本/インチ、ヨコ20本/インチ)を挿入、130℃でラミネート加工により基材シートを生産した。
【0027】
さらに、酢酸ビニル含有量が90質量%(エチレン含有量10質量%)であるエチレン-酢酸ビニル共重合体を主体とする水性エマルジョンA(株式会社クラレ製「パンフレックスOM-6000」;濃度50質量%)と、酢酸ビニル含有量が65質量%(エチレン含有量35質量%)であるエチレン-酢酸ビニル共重合体を主体とする水性エマルジョンB(株式会社クラレ製「パンフレックスOM-2000」;濃度50質量%)を1:1の質量比で混合した水性樹脂混合物(エマルジョン)を前記の基材シート片側全面に、200g/m2 を塗工した後、120℃で乾燥、180℃で熱処理して、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)からなる、エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物の塗布量が100g/m2 (乾燥時)である土木用遮水シートを作製した。
【0028】
このシートのタテ引張り強さ、750N/3cm(25kN/m)、タテ伸度15%およびヨコ引張り強さ600N/3cm(20kN/m)、伸度20%、厚さ1.2mm、目付1200g/m2 であった。
【0029】
一方、このシート間に塗工・充填する防水材料は、エルバックス#40(デュポン製、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル含有率40質量%、軟化点93℃)にポリブデンH-15(出光石油化学株式会社製)を30質量部添加、130℃で完全に混合攪拌して作成した。この防水材料は、冷却後に流動開始温度を測定したら12℃であった。
【0030】
上記の土木用遮水シート長手方向を重ね合わせ幅20cmでセットし、その2枚の間隙に前記の防水材料を200g/m2 塗工し、軽く手でシート間を圧着して評価用の供試験体を作成した。この供試験体に、接合部強度が12kN/mで、水圧300kPaを1時間加圧したが漏水はなかった。
【0031】
さらに同上の供試験体を高さ2m、幅1mの不陸大にした土留壁に固定、型枠を組んだ後に生コンを打設し、2週間後に脱型してシート重ね合わせ部を目視観察したところ、シート重ね合わせ幅が11cmに減少していたが、同部に剥離はないことを確認した。また、コンクリートから剥がした供試験体について、300kPaの水圧を負荷したが漏水はなかった。
【0032】
図1はコンクリート流体圧が加わる前の本発明の接合部断面をモデル的に示したもので、1は防水シート、2は防水シート重ね合わせ部に塗工・充填した防水材料を示す。
【0033】
図2は同様の断面図であるが、図1にコンクリート流体圧が加わった後を例示的に示すものである。このため、防水シートの重ね合わせ部の間隔が図1より短くなっている。
【0034】
より具体的な施工を図を参照しながら説明する。
【0035】
図3及び図4は、本発明を開削トンネルで用いた場合の実施例を示す先付防水シート等の施工状態を示す図であり、図3はコンクリート打設前の施工状態を示し、図4はそのコンクリート打設後の施工状態を示している。
【0036】
これらの図において、11は地盤、12は空隙、13は地盤11の表面側に配置される端部が重ね合わされた防水シート(エバブリットKJS1000)、14は防水材料、15は打設されたコンクリート、16は防水シート13の端部がずれた箇所、17はコンクリート固化後に生じたクラック、18は地盤11の水である。
【0037】
このように、本発明の工法によれば、コンクリート15が打設され、外部応力が作用した際に防水シート13の端部がずれた場合にも、シート接合部が遮水性を損なうことなしにスライド移動して、応力を吸収することにより、完全に地盤11の水18は止水され、コンクリート15の固化後にクラック17が生じても、そこに通水することはない。
【0038】
従って、凹凸(不陸)大のソイルセメント壁(例えば、SMW)、地盤、地山等に防水シートを敷設、コンクリート等が打設される開削トンネル先防水、山岳トンネル・シート防水等に利用可能である。
【0039】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0040】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0041】
(A)シート伸びの比較的小さい、耐突起物損傷性に優れた防水シート間を、確実に接合させて止水することができるため、不陸大の地山、壁に適用することができる。
【0042】
(B)防水シート接合部のシート/シート間に特定の防水材料を塗工、充填させることで、外部応力が作用した際にもシート接合部が遮水性を損なうことなしにスライド移動して応力を吸収するため、止水効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンクリート流体圧が加わる前の本発明の接合部断面をモデル的に示した断面図である。
【図2】コンクリート流体圧が加わった後の本発明の接合部断面をモデル的に示した断面図である。
【図3】本発明を開削トンネルで用いた場合の実施例を示すコンクリート打設前の先付防水シート等の施工状態を示す図である。
【図4】本発明を開削トンネルで用いた場合の実施例を示すコンクリート打設後の先付防水シート等の施工状態を示す図である。
【図5】従来のコンクリート打設前の開削トンネルなどの先付防水シートの施工状態を示す図である。
【図6】従来のコンクリート打設後の開削トンネルなどの先付防水シートの施工状態を示す図である。
【符号の説明】
1 防水シート
2,14 防水シート重ね合わせ部に塗工・充填した防水材料
11 地盤
12 空隙
13 地盤の表面側に配置される端部が重ね合わされた防水シート(エバブリットKJS1000)
15 打設されたコンクリート
16 防水シートの端部がずれた箇所
17 コンクリート固化後に生じたクラック
18 地盤の水
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5