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明細書 :摩擦力測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3848857号 (P3848857)
公開番号 特開2003-057135 (P2003-057135A)
登録日 平成18年9月1日(2006.9.1)
発行日 平成18年11月22日(2006.11.22)
公開日 平成15年2月26日(2003.2.26)
発明の名称または考案の名称 摩擦力測定装置
国際特許分類 G01L   5/00        (2006.01)
B61K   9/08        (2006.01)
FI G01L 5/00 G
B61K 9/08
請求項の数または発明の数 8
全頁数 21
出願番号 特願2001-247798 (P2001-247798)
出願日 平成13年8月17日(2001.8.17)
審査請求日 平成16年7月20日(2004.7.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】前橋 栄一
【氏名】西山 幸夫
【氏名】伴 巧
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】松浦 久夫
参考文献・文献 特開平05-172664(JP,A)
調査した分野 G01L 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
被測定物の表面に接して滑りながら回転するスリップローラーと、
該ローラーの回転駆動機構と、
該ローラーを前記被測定物の表面に押し付ける押し付け機構と、
該押し付け機構から前記スリップローラーにかかる押し付け力が前記被測定物の表面にほぼ垂直にかかるように、該押し付け機構及びスリップローラーの姿勢を調整可能な保持機構と、
前記被測定物の表面に対する前記スリップローラーの法線方向の押圧力を設定する押圧力設定機構と、
前記被測定物の表面と前記スリップローラーとの間に働く摩擦力を測る摩擦力計と、
を具備し、
前記回転駆動機構が、
前記スリップローラーの回転軸に巻かれた紐と、
前記スリップローラーの回転軸の横に配置された、該軸に巻かれた紐が横に延び出て巻回されたプーリーと、
前記紐の端部(反スリップローラー側端部)に連結された、該紐の張力を検知するテンションセンサと、
該テンションセンサを移動させて、前記紐を前記スリップローラーの回転軸から巻き出す紐引き機構と、
を有することを特徴とする摩擦力測定装置。
【請求項2】
前記紐引き機構が、前記テンションセンサを移動するための駆動力を発するモーターを有することを特徴とする請求項記載の摩擦力測定装置。
【請求項3】
被測定物の表面に接して滑りながら回転するスリップローラーと、
該ローラーの回転駆動機構と、
該ローラーを前記被測定物の表面に押し付ける押し付け機構と、
該押し付け機構から前記スリップローラーにかかる押し付け力が前記被測定物の表面にほぼ垂直にかかるように、該押し付け機構及びスリップローラーの姿勢を調整可能な保持機構と、
前記被測定物の表面に対する前記スリップローラーの法線方向の押圧力を設定する押圧力設定機構と、
前記被測定物の表面と前記スリップローラーとの間に働く摩擦力を測る摩擦力計と、
前記スリップローラー及び押し付け機構の自重が前記被測定物の表面にかからないようにする自重キャンセル機構と、
を具備し、
前記押し付け機構及び自重キャンセル機構として、
前記スリップローラーが軸支されたスライドブロックと、
該スライドブロックを上下にスライド可能に支持する支持ブロックと、
これらスライドブロックと支持ブロックとの間に配置された、該支持ブロックに対して該スライドブロックを支える弾性部材と、
を具備することを特徴とする摩擦力測定装置。
【請求項4】
前記スライドブロックと支持ブロックとの間に、該支持ブロックに対する前記スリップローラーの回転方向を変える回転方向可変手段が設けられていることを特徴とする請求項記載の摩擦力測定装置。
【請求項5】
被測定物の表面に接して滑りながら回転するスリップローラーと、
該ローラーの回転駆動機構と、
該ローラーを前記被測定物の表面に押し付ける押し付け機構と、
該押し付け機構から前記スリップローラーにかかる押し付け力が前記被測定物の表面にほぼ垂直にかかるように、該押し付け機構及びスリップローラーの姿勢を調整可能な保持機構と、
前記被測定物の表面に対する前記スリップローラーの法線方向の押圧力を設定する押圧力設定機構と、
前記被測定物の表面と前記スリップローラーとの間に働く摩擦力を測る摩擦力計と、
を具備し、
前記保持機構が、
前記押し付け機構及びスリップローラーが取り付けられた基体と、
該基体を前記被測定物に取り付ける取付部材と、
該取付部材と前記基体との間に配置された、該基体を前記被測定物の表面に対して任意の角度傾けた状態で支持する角度可変機構と、
該基体を前記被測定物の表面の所定位置に移動させる位置可変機構と、
を具備することを特徴とする摩擦力測定装置。
【請求項6】
前記取付部材が、
鉄道車輪のフランジ側側面に吸着する磁石を有する吸着部材と、
該吸着部材に接続された、鉄道車輪の踏面を跨いで逆フランジ側側面に係合する係合部材と、を備え、
前記角度可変機構が、
前記取付部材に対して前記基体を位置決めする位置決め部材と、
前記基体の回転角度を規定する角度規定部材と、を備え、
前記位置可変機構が、
前記取付部材に支持されて鉄道車輪の厚さ方向に沿って配置されるとともに、前記角度可変機構の位置決め部材が摺動可能に係合したガイド部材と、
該ガイド部材に対して前記角度可変機構の位置決め部材を固定する固定部材と、
を備えることを特徴とする請求項記載の摩擦力測定装置。
【請求項7】
前記取付部材が、
鉄道レールの頭頂部に係合する係合部材と、
該係合部材を鉄道レールの頭頂部に固定する固定部材と、を備え、
前記角度可変機構が、
前記取付部材に対して前記基体を位置決めする位置決め部材と、
前記基体の回転角度を規定する角度規定部材と、を備え、
前記位置可変機構が、
前記取付部材に支持されて鉄道レールの断面方向に沿って配置されるとともに、前記角度可変機構の位置決め部材が摺動可能に係合したガイド部材と、
を備えることを特徴とする請求項記載の摩擦力測定装置。
【請求項8】
前記押し付け機構の実際の押し付け力をモニタするモニタ機構をさらに具備することを特徴とする請求項1~いずれか1項記載の摩擦力測定装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車輪やレールの摩擦力測定に適した摩擦力測定装置に関する。特には、現場において、車輪の踏面やレールの表面の摩擦力測定を行うことができる摩擦力測定装置に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、鉄道のレール頭頂面の摩擦係数を測定する機器として、トリボメータが知られている。このトリボメータは、レール頭頂面の静摩擦係数及び動摩擦係数を、現場において簡単に測定することができる機器であって、現在広く使用されている。
【0003】
図11は、トリボメータを組み込んだレール摩擦力測定装置の一例を示す図である。
図11に示すように、摩擦力測定装置のトリボメータ1は、鋼製ブロックからなる本体3を備えている。この本体3の下面には、鋼球5が固定されている。この鋼球5は、直径10mmであって、レールRの長手方向に沿って2個(あるいは3個)固定されている。これらの鋼球5の下端は、トリボメータ1をレールR上に設置した際に、レールR頭頂面に接する。トリボメータ1を設置した際の、鋼球5のレールR頭頂面への接触圧は、実際の鉄道車両の車輪とレール間の接触圧とほぼ等しく設計されている。
【0004】
トリボメータ1の外側には、枠11が取り付けられている。この枠11には、走行輪13と案内輪15が回転可能に取り付けられている。走行輪13は、トリボメータ1を挟んで前後に2輪設けられている。これら走行輪13は、移動用の車輪である。案内輪15は、トリボメータ1の側部両側に2輪ずつ、計4輪設けられている(図11には片側の2輪のみ示されている)。各案内輪15は、枠11から垂下した軸16の下端に取り付けられている。各案内輪15は、外周面がレールRの頭頂部の側面に接するよう、横向きに配置されている。設置状態において、各案内輪15はレールR頭頂部の側面を挟んだ状態で配置され、外周面がレールRの頭頂部の側面に接触しつつ転動する。
【0005】
枠11の前部(図11の左側)には、ロードセル21及びてこ23が取り付けられている。ロードセル21には、ケーブルを介して動歪み測定器25及び記録計(ペンレコーダ)27が接続されている。トリボメータ1がレールRの頭頂面上を移動する際に発生する摩擦力は、てこ23を介してロードセル21を圧縮する力に変換され、この力が動歪み測定器25で測定されて記録計27に記録される。さらに、枠11の前端部には、紐31が接続されている。この紐31の基端側は、巻取器33に巻き取られる。枠11と巻取器33は、紐31を介して接続されている。巻取器33で紐31を巻き取ると、紐31に引かれた枠11及びトリボメータ1が、レールRの長手方向に沿って移動する。
【0006】
このような摩擦力測定装置において、力の伝達系(巻取器33、紐31、枠11)の途中に適当なばね定数のばねを挿入すると、トリボメータ1がレールR頭頂面上でいわゆるスティック・スリップ運動を起こす。このようにした場合は、レールRの静摩擦係数を得ることができる。あるいは、ばねを挿入せず、力の伝達系をほぼ剛体にした場合は、レールRの動摩擦係数を得ることができる。
【0007】
次に、上記の摩擦力測定装置の使用方法について説明する。
まず、図11に示すように、トリボメータ1及び巻取器33をレールR頭頂部に設置する。設置状態においては、トリボメータ1は鋼球5を介してレールR頭頂面に接する。また、案内輪15の外周面は、レールR頭頂部の側面に接する。一方、巻取器33は、紐31をある程度引き出した状態で、トリボメータ1の前方(図11の左側)に設置される。
【0008】
設置終了後、摩擦力を測定する際には、巻取器33を巻いて紐31を巻き取り、枠11を引っ張ってトリボメータ1を移動させる。この移動時には、案内輪15がレールR頭頂部の側面を転動して、トリボメータ1がレールRから外れないようガイドする。トリボメータ1の移動速度を調整するには、巻取器33の紐巻き上げ速度を適宜調整する。
そして、レールRの静摩擦係数を測定する場合は、巻取器33の作動後にトリボメータ1が動き出す直前の最大摩擦係数を読み取り、それらの平均値を記録計27に表示する。あるいは、レールRの動摩擦係数を測定する場合は、トリボメータ1の移動に伴い変動する摩擦係数の平均値を求め、それをチャート上に表示する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、車輪のレールへの乗り上がり現象が問題視されている。このような乗り上がり現象の評価には、脱線係数(車輪横圧(Q)÷輪重(P))が一般に用いられているが、乗り上がり開始時の脱線係数の値には、車輪のフランジ部とレール頭頂部のアール面間の摩擦力等の複合的な要因がからんでくる。そこで、レール頭頂面の長手方向の摩擦力だけではなく、レール横方向(車両の左右方向)や車輪の円周方向及び横方向の摩擦力も簡単に測定することのできる装置が求められている。しかしながら、このような装置は、現在のところ提供されていない。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、車輪やレールの摩擦力測定を簡単に行うことができる摩擦力測定装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の第一の摩擦力測定装置は、被測定物の表面に接して滑りながら回転するスリップローラーと、該ローラーの回転駆動機構と、該ローラーを前記被測定物の表面に押し付ける押し付け機構と、該押し付け機構から前記スリップローラーにかかる押し付け力が前記被測定物の表面にほぼ垂直にかかるように、該押し付け機構及びスリップローラーの姿勢を調整可能な保持機構と、前記被測定物の表面に対する前記スリップローラーの法線方向の押圧力を設定する押圧力設定機構と、前記被測定物の表面と前記スリップローラーとの間に働く摩擦力を測る摩擦力計と、を具備し、前記回転駆動機構が、前記スリップローラーの回転軸に巻かれた紐と、前記スリップローラーの回転軸の横に配置された、該軸に巻かれた紐が横に延び出て巻回されたプーリーと、前記紐の端部(反スリップローラー側端部)に連結された、該紐の張力を検知するテンションセンサと、該テンションセンサを移動させて、前記紐を前記スリップローラーの回転軸から巻き出す紐引き機構と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の摩擦力測定装置は、次のように用いる。まず、保持機構を操作して押し付け機構及びスリップローラーの被測定部に対する姿勢を決めて装置を取り付け、次いで押し付け機構を操作してローラーを被測定物表面の測定箇所に押し付けるとともに、押圧力設定機構(押し付け機構と兼ねても良い)を操作してローラーの押圧力を設定する。そして、回転駆動機構でローラーを回転させながら、被測定物の表面とローラーとの間に働く摩擦力を摩擦力計で測定する。なお、通常、ローラーの中心位置は変わらず、ローラー外周面の周速は全量スリップ量となる。
【0013】
保持機構を適宜調整することにより、鉄道レールや車輪等の被測定物の様々な位置に、ローラーを様々な姿勢で取り付けることができる。そして、ローラーの位置が変わっても、押し付け機構を操作して、押し付け機構からローラーにかかる押し付け力が被測定物の表面にほぼ垂直にかかるように調整できる。このようにすれば、例えば鉄道車輪のフランジ部やレール頭頂部のアール面等のような、被測定物の曲面についても摩擦力測定を行うことができる。
なお、本発明の摩擦力測定装置は、被測定物に取り付けた状態で用いることができるため、現場において実際に使用中のレールや車輪の摩擦力測定を行うことが可能となる。
【0014】
本発明の摩擦力測定装置は、前記スリップローラー及び押し付け機構の自重が前記被測定物の表面にかからないようにする自重キャンセル機構をさらに具備するものとできる。
自重キャンセル機構は、例えば、ローラーや押し付け機構を保持するバネの変位を調整可能とする等で実現可能である。この場合、簡単なメカニズムでスリップローラー及び押し付け機構の自重をキャンセルできる。自重をキャンセルすると、摩擦力測定装置の姿勢を変えた場合においても、ローラー押圧力が変わるのを防ぐことができるので、摩擦力の測定を正確に行うことができる。
【0015】
本発明の第一の摩擦力測定装置においては、前記回転駆動機構が、前記スリップローラーの回転軸に巻かれた紐と、前記スリップローラーの回転軸の横に配置された、該軸に巻かれた紐が横に延び出て巻回されたプーリーと、前記紐の端部(反スリップローラー側端部)に連結された、該紐の張力を検知するテンションセンサと、該テンションセンサを移動させて、前記紐を前記スリップローラーの回転軸から巻き出す紐引き機構と、を具備するものとしている
この場合、紐は横方向に引き出されるので、ローラーの周囲にローラー回転機構(モーターや駆動電動軸等)を配置しなくて済む。そのため、狭いスペースであっても、ローラーを様々な姿勢で被測定物の表面に当てることができる。
【0016】
さらに、本発明の摩擦力測定装置においては、前記紐引き機構が、前記テンションセンサを移動するための駆動力を発するモーターを有するものとすることができる。
この場合、人手やシリンダー等で紐を引く場合よりも、作動が安定する利点がある。
【0017】
本発明の他の摩擦力測定装置は、被測定物の表面に接して滑りながら回転するスリップローラーと、該ローラーの回転駆動機構と、該ローラーを前記被測定物の表面に押し付ける押し付け機構と、該押し付け機構から前記スリップローラーにかかる押し付け力が前記被測定物の表面にほぼ垂直にかかるように、該押し付け機構及びスリップローラーの姿勢を調整可能な保持機構と、前記被測定物の表面に対する前記スリップローラーの法線方向の押圧力を設定する押圧力設定機構と、前記被測定物の表面と前記スリップローラーとの間に働く摩擦力を測る摩擦力計と、前記スリップローラー及び押し付け機構の自重が前記被測定物の表面にかからないようにする自重キャンセル機構と、を具備し、 前記押し付け機構及び自重キャンセル機構として、前記スリップローラーが軸支されたスライドブロックと、該スライドブロックを上下にスライド可能に支持する支持ブロックと、これらスライドブロックと支持ブロックとの間に配置された、該支持ブロックに対して該スライドブロックを支える弾性部材と、を具備することを特徴とする
弾性部材としては、例えばコイルバネを用いることができる。この場合、簡単な構造で自重キャンセル機構を実現することができる。
【0018】
さらに、本発明の摩擦力測定装置においては、前記スライドブロックと支持ブロックとの間に、該支持ブロックに対する前記スリップローラーの回転方向を変える回転方向可変手段が設けられているものとすることができる。
この場合、装置本体を被測定物に固定したままで、回転方向可変手段を用いてローラーの回転方向を変えることができる利点がある。
【0019】
また、本発明の摩擦力測定装置においては、前記保持機構が、 前記押し付け機構及びスリップローラーが取り付けられた基体と、 該基体を前記被測定物に取り付ける取付部材と、 該取付部材と前記基体との間に配置された、該基体を前記被測定物の表面に対して任意の角度傾けた状態で支持する角度可変機構と、該基体を前記被測定物の表面の所定位置に移動させる位置可変機構と、 を具備するものとできる。
この場合、角度可変機構を操作すると、鉄道車輪のフランジ部やレール頭頂部のアール面等に対応して、ローラーを傾けた状態で支持することができる。あるいは、位置可変機構を用いると、鉄道車輪の厚さ方向やレールの幅方向の所望の位置に装置本体を移動させることができる。又は、鉄道車輪の回転方向やレールの長手方向の摩擦力測定は、取付部材で装置本体の取り付け位置を変えて、従来通り行うことができる。
【0020】
本発明の摩擦力測定装置のより具体的な態様においては、前記取付部材が、 鉄道車輪のフランジ側側面に吸着する磁石を有する吸着部材と、 該吸着部材に接続された、鉄道車輪の踏面を跨いで逆フランジ側側面に係合する係合部材と、を備え、 前記角度可変機構が、 前記取付部材に対して前記基体を位置決めする位置決め部材と、 前記基体の回転角度を規定する角度規定部材と、を備え、前記位置可変機構が、 前記取付部材に支持されて鉄道車輪の厚さ方向に沿って配置されるとともに、前記角度可変機構の位置決め部材が摺動可能に係合したガイド部材と、 該ガイド部材に対して前記角度可変機構の位置決め部材を固定する固定部材と、を備えるものとすることができる。
【0021】
なお、スリップローラーが磁石に吸引される材質の場合は、鉄道車輪のフランジ側面に吸着する磁石を使用すると磁石近辺の鉄道車輪が磁化され、スリップローラーに吸引力が働くことが予想される。そこで、後述する実施例の装置では、磁石を外した場合でも鉄道車輪の踏面を跨いで逆フランジ側側面に係合する係合部材により、装置全体を支持できるようにしている。このような係合部材が取り付けられないような場所に装置を付けるときには、磁石式の取り付け機構を用いることができる。
【0022】
本発明の摩擦力測定装置のより具体的な態様においては、前記取付部材が、 鉄道レールの頭頂部に係合する係合部材と、 該係合部材を鉄道レールの頭頂部に固定する固定部材と、を備え、 前記角度可変機構が、 前記取付部材に対して前記基体を位置決めする位置決め部材と、 前記基体の回転角度を規定する角度規定部材と、を備え、 前記位置可変機構が、 前記取付部材に支持されて鉄道レールの断面方向に沿って配置されるとともに、前記角度可変機構の位置決め部材が摺動可能に係合したガイド部材と、を備えるものとすることができる。
また、本発明の摩擦力測定装置においては、前記押し付け機構の実際の押し付け力をモニタするモニタ機構をさらに具備することもできる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の1実施例に係る摩擦力測定装置を示す側面図である。
図2は、同摩擦力測定装置の正面図(図1を左側から見た図)である。
図3は、同摩擦力測定装置の背面図(図1を右側から見た図)である。
図4は、同摩擦力測定装置の平面図(図1を上側から見た図)である。
図5は、図1のX-X線断面図である。
これらの図は、車輪踏面の円周方向の摩擦力測定を行う状態を示す。
なお、以下の説明において、上下・左右・前後とは、特に断らない限り各図における上下・左右・前後方向を指すものとする。また、図2、図3、図5においては、主要部分のみを図示し、他は省略してある。
【0024】
本実施例の摩擦力測定装置は、図1の上部において左右方向に延びる基体101を備えている。この基体101は、図4の上下方向中央部に示すように、幅方向の中心に沿う溝101aを有する。この基体101の、図1の左端部の下面には、前ブラケット103が垂下している。同基体101の、図1の右端部の下面には、後ブラケット105が垂下している。基体101の右端部の上面には、図1及び図4等に示すように、上ブラケット107が取り付けられている。この上ブラケット107は、基体101の右端部から上方に立ち上がっており、且つ、基体101の横側(図4の右端部下側)に延び出ている。
【0025】
この基体101及び各ブラケット103、105、107には、大きく分けて、以下の各部が組み付けられている。
(A)基体101の前ブラケット103に設けられた、被測定物(図1~図5に二点鎖線で示す車輪C)の表面にスリップローラー112を当てるローラー支持部110。このローラー支持部110は、押し付け機構、押圧力設定機構及び自重キャンセル機構を含む。
(B)基体101の上部に設けられた、スリップローラー112を駆動するローラー駆動部200(ロードセル201を含む)。
(C)基体101の下部に設けられた、ローラー支持部110の姿勢を調整可能な保持機構300。
【0026】
まず、ローラー支持部110の詳細について説明する。
図6(A)は、図1~図4の摩擦力測定装置のローラー支持部を示す一部断面拡大図であり、図6(B)は、図6(A)のY-Y線に沿った断面図である。
図7(C)は、図6(A)を左側から見た正面図であり、図7(D)は、スリップローラーの取り付け角度を90°変える方向変更金具を用いて、スライドブロックを支持ブロックに組み付けた状態を示す断面図である。
【0027】
図6及び図7に分かり易く示すように、摩擦力測定装置のローラー支持部110は、支持ブロック120を備えている。この支持ブロック120は、基体101の前ブラケット103(図1参照)に、ボルト127で固定されている。支持ブロック120の上端部には、上板123がボルト128で取り付けられている。同ブロック120の下端部には、下板124がネジ129で取り付けられている。支持ブロック120の下端面には、ブラケット126を介して第1プーリー211が回転可能に取り付けられている。支持ブロック120の図6(A)及び(B)における左側には、スライドブロック130が保持されている。支持ブロック120とスライドブロック130間には、スライドベアリング121が介装されている。スライドブロック130は、スライドベアリング121を介して、支持ブロック120に対して上下方向にスライド可能である。
【0028】
スライドブロック130の下部には、図7(C)に分かり易く示すように、二股状の一対のブラケット131が取り付けられている。これらブラケット131間には、ローラー112及び回転軸115が回転可能に取り付けられている。これらローラー112及び回転軸115は、軸116にベアリングを介して取り付けられており、ローラー112の下端は、ブラケット131の下端よりも下に突出している。回転軸115には、後述するローラー駆動部200の紐210が巻き付けられている。スライドブロック130の下端には、図6(A)において左側に突出した突片138が取り付けられている。この突片138は、紐210を巻き込むときに、スライドブロック130を上に持ち上げるための取っ手(つまみ)である。この突片138を持ってスライドブロック130を持ち上げ、ローラー112を浮かせて紐210を巻き込む。
なお、ローラー112の材質や硬さは、被測定物の材質に応じて、自由に選択できるものとする。
【0029】
スライドブロック130には、押し付け機構(押圧力設定機構を兼ねる)140と、自重キャンセル機構150が装備されている。
まず、押し付け機構140について説明する。
押し付け機構140は、ローラー112を車輪Cの表面に押し付ける機構である。図6(A)に分かり易く示すように、スライドブロック130の図における左側には、上端側に開放された穴141が形成されている。この穴141内には、押し付けバネ143が配置されている。この押し付けバネ143は、次に述べる押し付けネジ145の下端のピストン146に係合している。
【0030】
押し付けネジ145は、上端にハンドル147を有するとともに、下端にピストン146を有する。押し付けネジ145の中途の部分は、支持ブロック120の上板123のネジ孔123aに噛み合っている。押し付けネジ145のピストン146には、図6(A)における左側に突出した突起148が設けられている。この突起148は、スライドブロック130の溝135(図7(C)における正面参照)内に入り込んでいる。
【0031】
押し付けネジ145には、該ネジ145の位置決め(ストッパ)のための押え具149が外嵌している。この押し付けネジ145は、支持ブロック120の上板123のネジ孔123aに噛み合った状態で、上下方向に進退可能である。押し付けネジ145が進退する際には、ピストン146の突起148がスライドブロック130の溝135内にガイドされて上下する。図7(C)に示すように、溝135の脇には目盛り135aが付してあって、押し付けネジ145の捩じ込み量(ピストン146の移動量)がわかるようになっている。
なお、この押し付け機構140の操作方法は、自重キャンセル機構150の操作方法と合わせて、図8を参照しつつ後に詳述する。
【0032】
次に、自重キャンセル機構150について説明する。
自重キャンセル機構150は、ローラー112、押し付け機構140及びローラー支持部110の自重が車輪Cの表面にかからないようにする機構である。図6(A)に分かり易く示すように、スライドブロック130の図における右側には、孔151が形成されている。この孔151内には、自重キャンセルバネ153が配置されている。この自重キャンセルバネ153の上端は、押圧ネジ155の下端のピストン156に係合している。自重キャンセルバネ153の下端は、支持ブロック120の下板124の上面に当接している。
【0033】
図6(A)に分かり易く示すように、押圧ネジ155の中途の部分は、孔151の上のネジ孔158に噛み合っている。押圧ネジ155の上端は、ネジ孔158よりも上側に突き抜けている。同ネジ155は、支持ブロック上板123の孔123bと同心状に位置している。押圧ネジ155の上端には、レンチ(図示されず)が係合可能な係合部(マイナス溝)が形成されている。押圧ネジ155には、押えナット159が外嵌している。この押圧ネジ155は、ネジ孔158に噛み合った状態で、上下方向に進退可能である。
【0034】
ここで、図8を参照して、押し付け機構140と自重キャンセル機構150の操作方法について説明する。
図8(A)~(C)は、本発明に係る摩擦力測定装置の押し付け機構及び自重キャンセル機構の操作方法を説明するための図である。
まず、摩擦力測定装置本体を車輪Cに組み付けた直後においては、図8(A)に示すように、ローラー112が車輪Cの踏面C´(測定面)よりも上方に位置している。このとき、自重キャンセル機構150の自重キャンセルバネ153は、孔151内において、押圧ネジ155下端のピストン156と支持ブロック120の下板124間で、長さLに縮んだ状態となっている。この状態で、自重キャンセルバネ153の上方への弾性力は、スライドブロック130やローラー112の自重と釣り合っている。
【0035】
この状態から、支持ブロック120の上板123の孔123b内に、図示せぬレンチを挿入して押圧ネジ155の上端の係合部(マイナス溝)に係合して、押圧ネジ155がスライドブロック130から上に抜ける方向にレンチを回す。このとき、ロックナット159は緩めておく。すると、スライドブロック130は自重で下がり、図8(B)に示すように、ローラー112の下端が車輪Cの踏面C´に付く。なお、押し付けバネ143は、図8(A)及び(B)の状態で自由長の長さにある。
【0036】
ローラー112を降ろした図8(B)の状態で、押し付けバネ143の上のピストン146は、スライドブロック130や押し付けバネ143とともに下に下がる。このとき、押圧ネジ145の下端の細径突部145bが、ピストン146の孔146bからかなりの長さ抜けているが、細径突部145bの先端は孔146bの上端部内に残っている。次に、押し付け機構140のハンドル147を回して、押し付けネジ145を下側に螺進させる。すると、図8(C)に示すように、押し付けネジ145の下端のピストン146が、押し付けバネ143を縮ませながら下側に移動する。なお、このとき、ピストン146の突起148がスライドブロック130の溝135内にガイドされる。
【0037】
図8(C)の状態でも、ローラー112及び押し付け機構140の自重は、自重キャンセル機構150の自重キャンセルバネ153でキャンセルされている。また、押し付けバネ143の縮み量に対応する押圧力が、ローラー112と車輪Cの踏面C´との間にかかる。このときの押し付けバネ143の縮み量は、スライドブロック130表面の目盛り135a(図2参照)でピストン146の移動量として読み取ることができる。
【0038】
次に、図6(B)及び図7(D)を参照して、前記の支持ブロック120とスライドブロック130の組み替え位置の変更方法について説明する。
支持ブロック120とスライドブロック130は、図6(B)に示す正位置と、その位置から90°回った、図7(D)に示す直交位置とに組み替え可能である。正位置は、図1に示す、車輪踏面C´を円周方向に摩擦測定するような場合の姿勢である。一方、直交位置は、車輪踏面C´を横方向(車輪軸の軸方向)に摩擦測定するような場合の姿勢である。
【0039】
図6(B)(及び図6(A)、図7(C))に示す正位置では、基体101の前ブラケット103と支持ブロック120が対向した状態で、これらがボルト127で結合されている。この状態から図7(D)に示す直交位置に組み替えるには、L字金具160を用いる。すなわち、図6(B)で前ブラケット103と支持ブロック120を結合しているボルト127を一旦外し、支持ブロック120及びこれに組み付けられているスライドブロック130の向きを変える。そして、図7(D)に示すようにL字金具160を当て、再びボルト127を締め付け、さらにL字金具160と支持ブロック120をボルト161で締め付ける。なお、支持ブロック120には、図7(D)の位置でボルト127が螺入可能なネジ孔が切られている。
【0040】
このようなL字金具160を用いると、装置本体を車輪Cに固定したままで、ローラー112の回転方向を変えて、踏面C´の円周方向及び横方向の摩擦力測定を行うことができる。なお、図7(D)とは逆方向にも変更可能である。
【0041】
次いで、図1~図5に戻って、摩擦力測定装置のローラー駆動部200の構成について説明する。
ローラー駆動部200は、図1の上部及び図4に分かり易く示すように、紐210、第1及び第2プーリー211及び213、ロードセル(摩擦センサー)201、紐引き機構230からなる。
【0042】
紐210の基端は、前述の通りローラー112の回転軸115に巻かれている。この紐210が巻き出されるに伴い、ローラー112が回転する。第1プーリー211は、前述の通り、ローラー112の横において、支持ブロック120の下端面にブラケット126を介して取り付けられている。第2プーリー213は、図1及び図4に示すように、ブラケット212を介して基体101の上部(図1における左端部上面)に取り付けられている。
【0043】
ローラー112の回転軸115から延び出た紐210は、図1に分かり易く示すように、横に延び出て第1プーリー211に巻回された後、上に延び出て第2プーリー213に巻回されている。このように、紐210は、ローラー112から第1プーリー211側に横方向に引き出される機構であるので、ローラー112の周囲にモーターや駆動電動軸等を配置しなくて済む。そのため、ローラー112を、狭いスペースであっても様々な姿勢で車輪Cの踏面C´に当てることができるようになっている。また、紐210を引く力がローラー112に真横からかかるので、紐210を引く力がローラー112の押圧力に影響を与えることがない。
なお、紐210としては、引っ張り強さが大きくて柔らかいケブラーコード(商品名)を用いるのが好ましい。
【0044】
紐210の端部は、図1及び図4に示すように、ロードセル201に取り付けられている。このロードセル201は、紐210の張力を検知して、車輪Cの表面とローラー112との間に働く摩擦力を測るためのものである。ロードセル201は、L型の移動ブロック205に収容されている。この移動ブロック205は、図4に示すように、基体101の溝101aに案内ボールを介して摺動可能に嵌っている。移動ブロック205は、紐引き機構230の作動により、基体101の溝101aに沿って移動可能である。
【0045】
紐引き機構230は、図4の左下に示すステッピングモーター231を備えている。ステッピングモーター231のモーター軸232は、連結部材233を介してボールネジ237の端部(ボールネジナット)236に連結されている。ボールネジ237には、移動ブロック205の張出部(図4における下側側部)が係合している。移動ブロック205は、ボールネジ237の正逆回転に伴って、図4の左右方向に移動する。
【0046】
ボールネジ237の右端は、基体101の上ブラケット107にベアリング238を介して回転可能に支持されている。ボールネジ237の右端には、ハンドル239が取り付けられている。このハンドル239は手動式であって、紐210の弛みをとるためのものである。
【0047】
ステッピングモーター231が駆動すると、モーター軸232に連結されたボールネジ237が回転し、このボールネジ237に係合している移動ブロック205が移動する。移動ブロック205が、図1及び図4における右端側に移動すると、ロードセル201を介して紐210がローラー112の回転軸115から引き出される。この紐210の引き出しに伴って、ローラー112が回転する。この際の紐210の張力をロードセル201で計測し、この計測値に基づいて図示せぬ制御装置が摩擦力(ローラー112と車輪Cの踏面C´との間に働く摩擦力)を算出する。本実施例では、ステッピングモーター231を用いているため、人手やシリンダー等で紐210を引く場合よりも、作動が安定する。
【0048】
次に、保持機構300について説明する。
保持機構300は、図1に示すように、基体101の下部に配置された角度可変機構310を備えている。この角度可変機構310は、基体101の前ブラケット103に添う角度規定プレート311を有する。この角度規定プレート311は、図2に示すように扇状のプレートであって、2本の円弧状の溝313が形成されたものである。この溝313内には、基体101の前ブラケット103に埋設されたボルト315(図1、図6及び図7参照)の軸部が挿通されている。これらのボルト315にナットが締結されて、基体101の前ブラケット103と角度規定プレート311が組み付けられている。
【0049】
さらに角度可変機構310は、図1に示すように、基体101の後ブラケット105に添うように組み付けられた支点部材321を有する。この支点部材321と後ブラケット105は、ボルト323で繋がれている。このボルト323は、角度可変機構310の回転支点となる。この支点部材321と前述の角度規定プレート311とは、図1及び図4に分かり易く示すように、基体101の下で左右に延びるベース部材331で連結されている。このベース部材331は、図1における右端部にネジブラケット333を備えている。
【0050】
このネジブラケット333には、図1及び図3に示すように、上下に延びるネジシャフト341が挿通している。ネジブラケット333のネジシャフト挿通用孔は、ネジ孔ではなくストレート孔である。このネジシャフト341には、ハンドル343とロックネジ344が取り付けられている。このハンドル343を回すと、ネジブラケット333がネジシャフト341に対して上下方向に動く。ネジシャフト341の下端は、図1に示すように、取付部材350の右後シャフト305に係合したブラケット381に取り付けられている。ネジシャフト341は、基体101の上下位置(図3に示す状態)調整用のネジであり、その操作方法については後で説明する。
【0051】
保持機構300中における角度可変機構310は、前述のベース部材331の左端部の左前シャフト303を介して、取付部材350に連結されている。取付部材350は、摩擦装置本体を車輪Cに取り付けるための部材である。この取付部材350は、図5に最も良く示すように、永久磁石(又は電磁石)353を備えている。この永久磁石353には、レバー352が取り付けられており、このレバー352の切り換えに応じて磁力が生じるようになっている。図1や図2に示すように、永久磁石353の取付プレート354には、横方向に突出した2本の接触ピン363が植設されている。これらのピン363は、図1のほぼ中央部に示すように、装置本体の取り付け状態において車輪Cのフランジ外周に接触し、取付部材350を位置決めするための部材である。
【0052】
永久磁石353の取付プレート354には、図5の上部に最も分かり易く示すように、係合部材355が取り付けられている。この係合部材355は、車輪Cの踏面を跨いで逆フランジ側側面に係合する。係合部材355は、永久磁石353の取付プレート354にボルト361で結合された接続部材362を有する。この接続部材362には、横方向(図5の右方向)に延び出た張出部材364がボルト365で結合されている。この張出部材364の端部には、下方向に延び出た挟持部材366がボルト367で結合されている。挟持部材366の下端366aは、内側に向けて爪状に折れ曲がっている。
【0053】
張出部材364と挟持部材366の下端366aには、それぞれ押さえボルト368、369が設けられている。これらの押さえボルト369は、取付部材350の車輪Cへの取り付け状態において、斜めに突き出て車輪Cの外面に当たる(図5参照)。係合部材355の接続部材362の外側には、ボルト371でプレート372が取り付けられている。
【0054】
図1のほぼ中央部及び図4の上部に示すように、永久磁石353の取付プレート354と係合部材355のプレート372間には、左前シャフト303及び右後シャフト305が架設されている。これらのシャフト303、305は、図4に分かり易く示すように、接続部材362を挟んで互いに平行に配置されている。左前シャフト303は、図1の上下方向中央に示すように、永久磁石353の取付プレート354と係合部材355のプレート372間において、角度可変機構310のベース部材331の左端部を貫通している。各シャフト303、305の図4における上端部は、ナット303a、305aで抜け止めされている。
【0055】
ベース部材331の図1における左寄りに設けられた固定ハンドル332は、左前シャフト303にベース部材331を固定するためのものである。右後シャフト305は、図1の右側に示すように、前述のベース部材331のブラケット381を介して、ネジシャフト341の下端に取り付けられている。ブラケット381には、ハンドル383(図1の右端下側参照)が取り付けられている。
【0056】
ここで、ネジシャフト341の操作方法について説明する。
ネジシャフト341の下端は、ブラケット381に捩じ込み締結されている。そのため、ネジシャフト341自体は回転しない。このネジシャフト341を動かすには、まずハンドル343(図1及び図4参照)を手動で回し、締め付けを解除する。すると、ネジブラケット333のネジシャフト挿通用孔はストレート孔であるので、ベース部材331の後端が、ネジシャフト341に対して上下方向にフリーになる。次いで、取付部材350とベース部材331の間の角度を適宜調整した後、ロックネジ344を回転させてネジブラケット333に接触させる。最後に、再びハンドル343を手動で回して締め付ける。以上の操作によって、ベース部材331の後端(ネジブラケット333)は、ハンドル343とロックネジ344に挟まれた状態で固定される。
【0057】
なお、図1の右端側のハンドル383は、ブラケット381を右後シャフト305に固定するために用いるハンドルである。取付部材350に対するベース部材331の回動は、ハンドル383の操作とは無関係であり、前述の通りハンドル343とロックネジ344で挟むことによりロックされる。
【0058】
次に、前記の構成からなる摩擦力測定装置を用いて、図1、図2等に示すレール踏面の摩擦力測定を行う方法について説明する。
まず、取付部材350を用いて、装置本体を車輪Cに取り付ける。これは、図1及び図5に分かり易く示すように、車輪Cのフランジ側の側面に永久磁石353を配置し、車輪Cのフランジに接触ピン363を当て、車輪Cの踏面C´を跨ぐように係合部材355を配置する。そして、レバー352を切り換えて永久磁石353をONとし、押さえボルト368、369(図5参照)を締め付け、取付部材350が車輪Cの外周円に沿うよう位置決めする。
【0059】
そして、前述の通りハンドル343を手動で回してベース部材331の後端のネジブラケット333をネジシャフト341に対してフリーにした後、車輪Cに固定された取付部材350に対して、角度可変機構310のベース部材331を位置決めする。図1では、取付部材350に対してベース部材331が角度をなした状態で位置決めされている。この位置決め完了後は、ロックネジ344を回転させてネジブラケット333に接触させ、再びハンドル343を手動で回し、ベース部材331の後端(ネジブラケット333)をハンドル343とロックネジ344で挟んで固定する。
【0060】
このように、装置本体を車輪Cへ取り付けた後は、ローラー支持部110の押し付け機構140と自重キャンセル機構150を、図8を用いて前述した通りの要領で操作し、ローラー112を車輪Cの踏面C´に向けて降ろして、所定の押圧力となるように押しつける。このとき、押し付け機構140の押圧力は、スライドブロック130表面の目盛り135aでピストン146の移動量を見ながら調整する。
【0061】
次いで、図1及び図4に分かり易く示すモーター駆動部200のステッピングモーター231を駆動させると、モーター軸232に連結されたボールネジ237が回転し、このボールネジ237に係合している移動ブロック205が、図1及び図4における右側に移動する。すると、ロードセル201、第1及び第2プーリー211、213を介して、紐210がローラー112の回転軸115から引き出される。この紐210の引き出しに伴って、ローラー112が回転する。このとき、ロードセル201では紐210の張力が計測され、この計測値が図示せぬ制御装置に送られて、ローラー112と車輪Cの踏面C´との間に働く摩擦力が測定される。
【0062】
ここで、車輪Cの周方向の他の箇所の摩擦力を測定するには、一旦モーター駆動部200を停止し、ローラー支持部110を上げて、取付部材350を所望の位置にセットし直す。そして、紐210を巻き戻してから再び前述と同様の手順でローラー支持部110を設定し、モーター駆動部200を駆動させる。
【0063】
さらに、本発明の摩擦力測定装置は、取付部材350を車輪Cに固定した状態のままで、車輪Cの横方向(車輪Cの厚さ方向;車輪踏面の周方向と直交する方向)の所定位置における摩擦力測定や、車輪Cのフランジの曲面部の摩擦力測定を行うことができる。以下、これらの場合の操作方法について説明する。
【0064】
まず、ローラー支持部110を車輪Cの横方向に沿って移動させる操作について説明する。
まず、装置本体が取付部材350で車輪Cに固定されている状態で、取付部材350の上端の左前シャフト303を固定しているハンドル332(図1中ほぼ中央部参照)と右後シャフト305を固定しているハンドル383を回して若干緩める。すると、車輪Cに固定されている取付部材350に対して、装置上部(角度可変機構310、基体101及びその上のローラー支持部110やモーター駆動部200)が、左前シャフト303及び右後シャフト305に沿って車輪Cの横方向(図2、図3の左右方向)にスライド移動可能になる。角度可変機構310及び基体101をスライド移動させる際には、人手で押し引きする。角度可変機構310及び基体101を車輪踏面C´上の所望の位置にスライド移動させた後は、再びハンドル332とハンドル383を回して締め付ける。
【0065】
次いで、車輪踏面C´のフランジの曲面部の摩擦力測定を行う操作について説明する。
この場合は、図2に示すようにローラー支持部110全体を傾ける。すなわち、図1の左端寄り中央部において基体101の前フランジ103と角度可変機構310の角度規定プレート311を結合しているボルト・ナット315と、図1の右端寄り下部において基体101の後ブラケット105と角度可変機構310の支点部材321を結合しているボルト・ナット323とを若干緩める。そして、図2に2点鎖線で示すように、角度可変機構310に対して、基体101及びローラー支持部110・モーター駆動部200を、車輪Cの反フランジ側に倒れるように回動させる。この回動の際には、基体101のボルト323を支点として、前述のボルト315軸部が角度規定プレート311の溝313に沿って移動する。なお、本実施例では、0~70°の範囲で回動させることができる。
【0066】
このようにローラー支持部110を倒した状態(例えば図2に2点鎖線で示す位置)で、ボルト・ナット315及び323を再び締め付ける。そして、前述の手順で押し付け機構140と自重キャンセル機構150を操作すると、押し付け機構140からローラー112にかかる押し付け力が、車輪Cのフランジ部内側の曲面にほぼ垂直にかかるようにできる。そのため、従来の重力式測定法では不能であった、車輪踏面C´の横方向(厚さ方向)に沿った所定位置の摩擦測定や、車輪踏面C´のフランジの曲面部等の摩擦測定を行うことができる。
【0067】
次に、図9及び図10を参照し、本発明の摩擦力測定装置を用いて、レール頭頂面の摩擦力測定に用いる方法について説明する。
図9は、本発明の摩擦力測定装置をレールに組み付けた状態を示す正面図である。図10は、その側面図である。
【0068】
これらの図に示すように、レール頭頂面の長手及び横方向(幅方向)の摩擦力測定を行う際には、レール測定用の保持機構を用いる。以下、その構成について説明する。なお、このような測定を行う場合も、基体101から上のローラー支持部110やモーター駆動部200の構成は、前述の車輪測定の場合と同一である。なお、図10において符号400で示すものはカバーである。
【0069】
レール用保持機構の角度可変機構は、図10における左右に一対の角度規定プレート411、421を有する。左側の角度規定プレート411は、基体101の前ブラケット103にボルト・ナット315で組み付けられている。右側の角度規定プレート421は、基体101の後ブラケット106にボルト・ナット323で組み付けられている。これらの角度規定プレート411、421は、前述の扇状をした角度規定プレート311よりも大きく形成されている。
【0070】
角度規定プレート411には、図9に示すように、2本の円弧状の溝413が形成されている。これらの溝413内には、基体101の前ブラケット103に埋設されたボルト315の軸部が挿通されている。図10において右側の角度規定プレート421にも、1本の円弧状の溝が形成されており、この溝413内に、ボルト323の軸部が挿通されている。
【0071】
左右の角度規定プレート411、421は、ベース部材431で連結されている。このベース部材431には、レール幅方向(図9の左右方向)に延びる2本のシャフト303が挿通されている。ベース部材431は、これらのシャフト303に沿ってレール幅方向にスライド移動可能である。
【0072】
レール保持機構の取付部材401は、図10において左右に離れたコ字状の把持部420を2つ備えている。各把持部420は、図9に分かり易く示すように、2枚のコ字状プレート415と、これらのコ字状プレート415間にボルト403aで結合された当接部材403とを有する。コ字状プレート415の内側は、レールRの頭頂部に係合可能な幅に形成されている。把持部420の図9における左側の当接部材403には、押えボルト405が取り付けられている。この押さえボルト405は、取付部材401のレールRへの取り付け状態において、レールRの頭頂部R´側面に当たる。
【0073】
レールRを挟む2つの把持部420(図10の左右に離れた2つの把持部)は、把持部連結板423で繋がれている。把持部連結板423は、レール幅方向(図9の左右方向)に離れた両側において、2つの把持部420を繋いでいる。図10に分かり易く示すように、これら把持部連結板423の両端には、下側に突出した2つの突片424が形成されている。各突片424は、ボルト423aで把持部420に固定されている。
【0074】
レールRを挟んで両側の把持部連結板423間には、ベース部材431が存在する。2つの把持部連結板423は、ベース部材431の下側において、連結部材425で繋がれている。2つの把持部連結板423の両端には、シャフト303が貫通している。
【0075】
このようなレール用保持機構を用いて装置本体をレールRに取り付けるには、図9及び図10に示すように、把持部420をレールR頭頂部の上から当て込み、押えボルト405(図9参照)を締め付ける。取り付けが終了した後は、図8を参照しつつ前述したのと同様の手順で、ローラー支持部110の押し付け機構140と自重キャンセル機構150を操作し、ローラー駆動部200を作動させる。
【0076】
ローラー支持部110を含む装置上部をレールRの横方向(幅方向)に沿って移動させるには、レールR上を横断しているシャフト303に沿って、角度可変機構(及び基体101、その上のローラー支持部110やモーター駆動部)をスライド移動させる。この際のスライド移動は、人手で押し引きして行う。
【0077】
レールRの頭頂面R´のアール面の摩擦力測定を行う場合は、角度可変機構を用いてローラー支持部110を傾ける。すなわち、基体101の前フランジ103と角度規定プレート411を結合しているボルト315と、基体101の後ブラケット106と角度規定プレート421を結合しているボルト323とを若干緩め、基体101及びローラー支持部110・モーター駆動部200を回動させる。この回動の際には、両角度規定プレート411、421の溝に沿ってボルト315、323の軸部が移動する。
【0078】
このようにローラー支持部110を傾けた状態で、ボルト315、323を締め直す。そして、押し付け機構140と自重キャンセル機構150を操作すると、前述の車輪Cの場合と同様に、押し付け機構140からローラー112にかかる押し付け力が、レールRの頭頂面R´のアール面にほぼ垂直にかかるようにできる。そのため、従来の重力式測定法では不能であったレールRの頭頂面R´のアール面の摩擦測定を行うことができる。
【0079】
なお、レールR頭頂面の長手方向に沿う位置の摩擦力を測定するには、一旦モーター駆動部200を停止し、ローラー支持部110を上げて、レール保持機構を所望の位置にセットし直す。そして、再び前述と同様の手順でローラー支持部110を設定し、モーター駆動部200を駆動させる。このように、レール保持機構をセットし直すと、従来のトリボメータと同様にレールR頭頂面の長手方向の摩擦力測定を行うことができる。
【0080】
本発明によれば、車輪の周方向及び幅方向(周方向と直交する方向)の摩擦力測定と、レールの長手及び幅方向の摩擦力測定とを、一台の装置で行うことができる。そして、従来は測定不能であった車輪のフランジの曲面部の摩擦力や、レール頭頂部のアール面の摩擦力を正確に測定することができる。そのため、車輪の押し付け力と摩擦力との関係や、車輪の接触速度と摩擦力との関係を解明することができ、車輪のレールへの乗り上がり現象等の要因解明が進む。さらに、本発明の摩擦力測定装置を用いると、方向を問わず現場において測定可能であり、車輪削正直後や走行前後のレールの摩擦係数等を即座に測定することができる。
【0081】
なお、本発明に係る摩擦力測定装置においては、図12に示すように、押し付け機構140の実際の押し付け力をモニタするモニタ機構を設けることもできる。
図12(A)は本発明に係る摩擦力測定装置の押し付け機構のモニタ機構を説明するための側面図であり、(B)、(C)はモニタ機構のセンサの例を示す斜視図である。
【0082】
図12(A)に示すように、押し付け機構140に付設されたモニタ機構のセンサ500は、例えば、スライドブロック130の孔141の底部において、押し付けバネ143の下端に配置することができる。このセンサ500は、ケーブル等を介して、モニタ510に接続されている。このモニタ510では、押し付け機構140を操作してローラー112を被測定物(レールR)に押し付ける際の、実際の押し付け力が表示される。このようなモニタ510によって、ローラー112の実際の押し付け力を正確に読み取ることができる。
【0083】
なお、センサ500としては、例えば図12(B)に示すように、ローラー112を支持するブロック130´のシリースに配置した歪みゲージ式センサ501や、図12(C)に示すように、ブロック130´を抉って薄く形成した箇所に直接歪みゲージ503を貼り付けたもの等を用いることができる。図12(C)の場合は、ブロック130´を抉って薄く形成したことで、変形量を拡大することができる。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の摩擦力測定装置によれば、車輪の周方向及び横方向の摩擦力測定を行うことができるとともに、レールの長手及び横方向の摩擦力測定をも行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例に係る摩擦力測定装置を示す側面図である。
【図2】同摩擦力測定装置の正面図(図1を左側から見た図)である。
【図3】同摩擦力測定装置の背面図(図1を右側から見た図)である。
【図4】同摩擦力測定装置の平面図(図1を上側から見た図)である。
【図5】図1のX-X線断面図である。
【図6】図6(A)は、図1~図4の摩擦力測定装置のローラー支持部を示す一部断面拡大図であり、図6(B)は、図6(A)のY-Y線に沿った断面図である。
【図7】図7(C)は、図6(A)を左側から見た正面図であり、図7(D)は、スリップローラーの取り付け角度を90°変える方向変更金具を用いて、スライドブロックを支持ブロックに組み付けた状態を示す断面図である。
【図8】本発明に係る摩擦力測定装置の押し付け機構及び自重キャンセル機構の操作方法を説明するための図である。
【図9】本発明の摩擦力測定装置をレールに組み付けた状態を示す正面図である。
【図10】図9の側面図である。
【図11】トリボメータを組み込んだレール摩擦力測定装置の一例を示す図である。
【図12】図12(A)は本発明に係る摩擦力測定装置の押し付け機構のモニタ機構を説明するための側面図であり、(B)、(C)はモニタ機構のセンサの例を示す斜視図である。
【符号の説明】
101 基体 101a 溝
103 前ブラケット 105 後ブラケット
107 上ブラケット
110 ローラー支持部
112 スリップローラー 115 回転軸
120 支持ブロック 121 スライドベアリング
123 上板 124 下板
130 スライドブロック 135 溝
135a 目盛り 140 押し付け機構
141 穴 143 押し付けバネ
145 押し付けネジ 145b 細径突部
146 ピストン 147 ハンドル
148 突起 149 押え具
150 自重キャンセル機構 151 孔
153 自重キャンセルバネ 155 押圧ネジ
156 ピストン 158 ネジ孔
159 押えナット 160 L字金具
200 ローラー駆動部
201 ロードセル 205 移動ブロック
211 第1プーリー 213 第2プーリー
230 紐引き機構 231 ステッピングモーター
237 ボールネジ 239 ハンドル
300 保持機構
303 左前シャフト 305 右後シャフト
310 角度可変機構 311 角度規定プレート
313 溝 315 ボルト
321 支点部材 323 ボルト
331 ベース部材 332 ハンドル
333 ネジブラケット 341 ネジシャフト
343 ハンドル 344 ロックネジ
350 取付部材
353 永久磁石 352 レバー
354 取付プレート 355 係合部材
362 接続部材 363 接触ピン
364 張出部材 366 挟持部材
368、369 押さえボルト 372 プレート
400 カバー
403 当接部材 405 押さえボルト
411 角度規定プレート 413 溝
415 コ字状プレート 420 把持部
421 角度規定プレート 423 把持部連結板
425 連結部材 431 ベース部材
500、501、503 センサ 510 モニタ
C 車輪 C´ 踏面
R レール R´ 頭頂面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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