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明細書 :台車操舵式鉄道車両

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4160741号 (P4160741)
公開番号 特開2003-054404 (P2003-054404A)
登録日 平成20年7月25日(2008.7.25)
発行日 平成20年10月8日(2008.10.8)
公開日 平成15年2月26日(2003.2.26)
発明の名称または考案の名称 台車操舵式鉄道車両
国際特許分類 B61F   5/44        (2006.01)
FI B61F 5/44 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願2001-247799 (P2001-247799)
出願日 平成13年8月17日(2001.8.17)
審査請求日 平成16年7月20日(2004.7.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】前橋 栄一
【氏名】石田 弘明
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】一ノ瀬 覚
参考文献・文献 特開2002-087262(JP,A)
特公昭47-034203(JP,B1)
特開平08-040269(JP,A)
特開平04-300773(JP,A)
調査した分野 B61F 5/22
B61F 5/44
特許請求の範囲 【請求項1】
前後2台のボギー台車と、
該台車上に中心ピンを介して回動可能に支持されている車体と、
を備える鉄道車両であって、
前記台車を前記車体に対して前記中心ピンの周りに回転駆動する空気圧駆動アクチュエータを含む台車操舵機構と、
前記台車と車体間の回動角又は角速度を検知するセンサと、
故障時に前記アクチュエータの空気圧が大気開放されるフェールセーフ機構とをさらに備え、
前記アクチュエータが、前記回動角等に対応した回転駆動力を発するとともに、
前記アクチュエータを制御するコントローラが、前記アクチュエータへの指令作動方向と実際の回転角とが異なる場合に誤作動と判断して、前記フェールセーフ機構を作動させることを特徴とする台車操舵式鉄道車両。
【請求項2】
前記アクチュエータが、曲線軌道において前記台車と車体間にかかる回動抵抗を打ち消すことを特徴とする請求項1記載の台車操舵式鉄道車両。
【請求項3】
前記鉄道車両の速度に対応して、低速走行時には前記アクチュエータの駆動力を上げることを特徴とする請求項1又は2記載の台車操舵式鉄道車両。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボギー台車を車体に対して回動させる台車操舵式鉄道車両に関する。特には、簡単な構造で故障時のフェールセーフ機能を実現できる等の利点を有する台車操舵式鉄道車両に関する。
【0002】
【背景技術及び発明が解決しようとする課題】
一般に、鉄道車両における操舵台車は、1台の台車の前後の輪軸を台車に対して操舵する(角度を変える)ものである。車両の曲線軌道通過時に輪軸が曲線軌道の中心方向に向くように操舵して、車輪の軌道に対するアタック角を小さくすることができる。アタック角を小さくすると、曲線軌道通過時に車両に働く横圧を低減でき、車両の脱線係数Q/P(横圧(Q)÷輪重(P))を下げるとともに、車輪がレールに擦れて発生する騒音(スキール音)も小さくできる。
【0003】
現状の鉄道車両の台車は、一部の貨物車等を除くほとんどが、いわゆるボギー形式となっている。このようなボギー形式の台車に適用される操舵台車の代表的なものの1つは、リンク式操舵台車である。
このリンク式操舵台車は、台車枠に対して輪軸が回動可能となっており、これら台車枠と輪軸間にリンク機構が設けられた構成を有する。このリンク式操舵台車は、車両の曲線軌道通過時に、リンク機構を介して輪軸を強制的に回動し、輪軸を曲線軌道に沿わせる。なお、このようなリンク式操舵台車の一例は、特開平8-142862号公報に開示されている。
【0004】
前述のリンク式操舵台車の他に、油圧封じ切り方式の誘導操舵台車も知られている。
この誘導操舵台車には、台車枠と軸箱間に油圧シリンダが設けられている。この誘導操舵台車は、車両の曲線軌道通過時に、油圧シリンダを駆動して輪軸を台車に対して強制的に回動し、車輪を曲線軌道に沿わせる。
【0005】
前述のリンク式操舵台車及び油圧封じ切り方式の誘導操舵台車の操舵機構は、かなり複雑で重量が嵩む。
本発明は、簡単な構造で故障時のフェールセーフ機能を実現できる等の利点を有する台車操舵式鉄道車両を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の台車操舵式鉄道車両は、前後2台のボギー台車と、 該台車上に中心ピンを介して回動可能に支持されている車体と、 を備える鉄道車両であって、 前記台車を前記車体に対して前記中心ピンの周りに回転駆動する空気圧駆動アクチュエータを含む台車操舵機構と、前記台車と車体間の回動角又は角速度を検知するセンサと、故障時に前記アクチュエータの空気圧が大気開放されるフェールセーフ機構とをさらに備え、前記アクチュエータが、前記回動角等に対応した回転駆動力を発するとともに、前記アクチュエータを制御するコントローラが、前記アクチュエータへの指令作動方向と実際の回転角とが異なる場合に誤作動と判断して、前記フェールセーフ機構を作動させることを特徴とする。
この場合、例えばボルスタレス台車でダイヤフラム型空気ばねを用いた台車においては、空気ばねの復元力(台車旋回抵抗)をアクチュエータの駆動力で相殺し、急曲線軌道通過時の車体の横圧を低減することができる。なお、急曲線が介在する線区においては、センサが急曲線を検知する毎に、その曲率に応じた操舵を行うこともできる。
【0007】
本発明は、従来の操舵台車のように台車枠に対して輪軸を強制的に回動する方式とは異なり、台車操舵機構の空気圧駆動アクチュエータの作動によって、台車を車体に対して中心ピンの周りに回転駆動する。この際、アクチュエータの空気圧は、ボギー台車が本来有する回動性能をサポートする役割を果たす。
空気圧駆動アクチュエータは、例えば既存の車両の台車ヨーダンパに併設する等、従来の特別な装備を持たない台車に対して、比較的容易に追加改造して設置することができる利点がある。
【0008】
なお、操舵台車とは別に、ラジアル台車等と呼ばれる台車操舵も知られているが、本発明はこの種の操舵形式とは異なる。あるいは、操舵台車には、本来の輪軸の転向性を活かすために、軸箱の前後支持を比較的柔軟な支持状態にしたもの等が存在するが、ボギー台車内にこの方式を加えることで、一層の転向性能の向上を図ることができる。
【0009】
本発明の台車操舵式鉄道車両においては、前記アクチュエータが、曲線軌道において前記台車と車体間にかかる回動抵抗を打ち消すものとすることができる。この場合、台車と車体間にかかる回動抵抗を打ち消すことで、車両の急曲線部通過時の台車転向横圧を低減し、安定した走行性能を実現することができる。
【0010】
また、本発明の台車操舵式鉄道車両においては、故障時に前記アクチュエータの空気圧が大気開放されるフェールセーフ機構をさらに備えることを特徴とする。この場合、故障時にアクチュエータの空気圧を大気開放すると、台車操舵機構が無装着であるのと同じ状態となり、フェールセーフ機能が実現できる。
【0012】
また、本発明の台車操舵式鉄道車両においては、前記鉄道車両の速度に対応して、低速走行時には前記アクチュエータの駆動力を上げるものとすることができる。
鉄道車両が低速でカント(バンク)付き曲線軌道を走行する場合は、遠心力があまり作用しないので、鉄道車両の重心が内側軌道に移動し、外側軌道の脱線係数が大きくなる状況が生じる。このような場合、車両の低速度に対応してアクチュエータの駆動力を上げると、外軌側車輪の横圧を低減して低速走行時の安全性を向上することができる。
【0013】
このように、回動角や角速度、あるいは、車両の走行速度に応じてアクチュエータの駆動力をコントロールすることで、車両の横圧を低減して安全性を向上するとともに、車両の曲線軌道の通過速度を速くすることができる。さらに、車両の曲線軌道走行性能が安定化することで、車輪のフランジとレールの摩耗低減効果や、スキール音低減効果も期待できる。
【0014】
さらに、本発明の台車操舵式鉄道車両においては、前記アクチュエータを制御するコントローラが、前記アクチュエータへの指令作動方向と実際の回転角とが異なる場合に誤作動と判断して、前記フェールセーフ機構を作動させることを特徴とする。この場合、アクチュエータの誤作動確認機能をもたせることができ、フェールセーフ機構を適切に動作させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
[第1実施例]
図1は、本発明の第1実施例に係る台車操舵式鉄道車両の台車部分を示す側面図である。
図2は、同台車操舵式鉄道車両の台車操舵機構の空気圧駆動アクチュエータ(左右個別状態)を示す斜視図である。(A)はシリンダ本体を右側、ロッドを左側に配置した図であり、(B)はシリンダ本体を左側、ロッドを右側に配置した図である。
図3は、同台車操舵式鉄道車両の台車操舵機構の空気圧駆動アクチュエータ(左右連結状態)を示す斜視図である。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、レールの長手方向(車両の進行方向)を前後方向、軌道面におけるレール長手方向と直角の方向を左右方向、軌道面に垂直な方向を上下方向と呼ぶ。
【0016】
図1に示す鉄道車両は、車体10を備えている。この車体10の下面には、ブラケット12を介して中心ピン14が固定されている。中心ピン14は、車体10の下面から垂下している。この中心ピン14は、ボギー台車11(以下、単に台車と呼ぶ)の中心部に回動可能に嵌合している。車体10の左右側部には、車体下面から下方に延びるアンカー28が設けられている。左右の各アンカー28の下端には、後述するアクチュエータ20の端部のユニバーサルジョイントが取り付けられる。
【0017】
台車11は、台車枠13を備えている。台車枠13の下部の前後には、車輪15と車軸16からなる輪軸17が一組ずつ組み込まれている。車輪15は、車軸16の両側に圧入されて固定されている。両車輪15の外側において、車軸16の両端部には軸箱18が外嵌されている。台車枠13と各軸箱18上面間には、軸ばね19が取り付けられている。
【0018】
台車枠13の幅方向左右側面には、空気圧駆動アクチュエータ20(以下、単にアクチュエータと呼ぶ)がそれぞれ配置されている。左右のアクチュエータ20は、中心ピン14を中心として、左右点対称に配置されている(図1には左側面のアクチュエータ20のみが示されている)。本実施例のアクチュエータ20は、図2及び図3に分かり易く示すように、シリンダ室21とピストンロッド23を備えている。シリンダ室21の内部は、ピストンロッド23の先端の円盤24で2つの空気室21A、21Bに仕切られている。シリンダ室21の外面には、各空気室21A、21Bに対応して、2つの送排気口21a、21bが形成されている。
【0019】
シリンダ室21のロッド側端部には、センサ29が設けられている。このセンサ29は、シリンダ室21に対するピストンロッド23の位置(すなわちピストンロッド23の進退量)を検出し、この検出値信号を後述するコントローラ33に送出する。シリンダ室21の端面とピストンロッド23の端部には、それぞれジョイント(ユニバーサルジョイント)25、26が取り付けられている。
【0020】
アクチュエータ20は、台車枠13の右側面においては、本体側のジョイント25が台車枠13の側面に取り付けられ、ピストンロッド側のジョイント26がアンカー28に取り付けられている(図2(A)及び図3参照)。一方、図1に示す台車枠13の左側面においては、本体側のジョイント25が台車枠13の側面に取り付けられ、ピストンロッド側のジョイント26がアンカー28に取り付けられている(図2(B)及び図3参照)。そのため、図3において、左右のアクチュエータ20L、20Rが縮んだ場合は、台車11が車体10に対して反時計回り(上から見て)に回動し、逆に左右のアクチュエータ20L、20Rが伸びた場合は、台車11が車体10に対して時計回り(上から見て)に回動する。
【0021】
図3に示すように、左右のアクチュエータ20L、20Rは、各空気室21Aの送気口間が連結パイプ35Aで繋がれており、各空気室21Bの送気口間が連結パイプ35Bで繋がれている。右のアクチュエータ20Rの各空気室21A、21Bには、供給パイプ36A、36Bが接続されている。これら供給パイプ36A、36Bは、図1に示すように、エアバルブ38を介して元空気溜め31に接続されている。左右のアクチュエータ20L、20Rは、各空気室21A、21Bに個別に送排気可能な複室式空気アクチュエータである。
【0022】
図1に示すように、車体10の下面には、元空気溜め31、コンプレッサ32及びコントローラ33が取り付けられている。元空気溜め31には、前述したように、供給パイプ36A、36Bがエアバルブ38を介して接続されている。エアバルブ38及びコンプレッサ32は、コントローラ33の制御に基づき作動するようになっている。
【0023】
このコントローラ33は、左右のアクチュエータ20L、20R(図2及び図3参照)のセンサ29が検出したピストンロッド位置を照らし合わせて、台車11の回動角を算出する。そして、算出した回動角から曲線軌道の曲率半径を割り出し、この曲率半径に応じてエアバルブ38及びコンプレッサ32を作動して、元空気溜め31から左右のアクチュエータ20L、20Rへの送排気をコントロールする。
【0024】
コントローラ33の制御に伴うエアーの供給系統は、以下の通りである。
(1)台車11を上から見て時計回りに回動する場合
この場合は、左右のアクチュエータ20L、20Rが伸びる。そのため、空気室21Aを送気、空気室21Bを排気とするようエアバルブ38を切り換える。このとき、元空気溜め31内のエアーは、供給パイプ36A→右アクチュエータ20Rの空気室21A→連結パイプ35A→左アクチュエータ20Lの空気室21Aに供給され、空気室21B内のエアーは、連結パイプ35B及び供給パイプ36Bを介して排気される。
【0025】
(2)台車11を上から見て反時計回りに回動する場合
この場合は、(1)とは逆に、左右のアクチュエータ20L、20Rが縮む。そのため、空気室21Bを送気、空気室21Aを排気とするようエアバルブ38を切り換える。このとき、元空気溜め31内のエアーは、供給パイプ36B→右アクチュエータ20Rの空気室21B→連結パイプ35B→左アクチュエータ20Lの空気室21Bに供給され、空気室21A内のエアーは、連結パイプ35A及び供給パイプ36Aを介して排気される。
【0026】
(3)故障時にフェールセーフ機構を作動させる場合
この場合は、(1)あるいは(2)の制御後に、アクチュエータのセンサ29が検出したピストンロッド位置がおかしいとき、すなわち、アクチュエータの指令作動方向と実際の台車11の回転角とが異なるとき、誤作動と判断する。そして、左右のアクチュエータ20L、20Rの両空気室21A、21Bの空気圧が大気開放されるようエアバルブ38を切り換える。このとき、台車11は、実質的にアクチュエータ無装着状態と等しくなる。
【0027】
ここで、車体側から曲線軌道を判断してコントロールする方法は、コントローラ33においてセンサ29の検出値から曲率半径を割り出す方法の他に、以下の方法を用いることもできる。
(a)コントローラ33に予め地点情報を入力し、この地点情報に基づいてアクチュエータの作動指令を行う。これは、例えば車両がいわゆる振り子台車を備える場合には、振り子シリンダをアクチュエータとして流用することもでき、振り子のための曲線検知機構をそのまま活用できる。
【0028】
(b)車両の先頭の台車にセンサを配置し、このセンサで曲線軌道への先頭車両の進入を検知する。そして、適切な時間後に、順次後続車両の台車のアクチュエータを制御する。なお、この場合は、前述のアクチュエータの誤作動判断は、先頭車両において行うのが好ましい。
【0029】
(c)ジャイロを用いて車両の遠心力を検知し、この遠心力を照らし合わせて左右のアクチュエータを制御する。この場合は、曲線軌道のカント(バンク)や台車の前後4点を支持する空気ばねの高さを別のセンサで検知し、これに基づいて曲率を割り出すことができる。なお、空気ばねの高さを検知するセンサとしては、例えばKYOWA社製、『DTJ-A-200』変位変換器を用いることができる。この変位変換器は、測定変位量が200mm、出力が5mV/V(10000×10-6ひずみ)、非直線性±0.3%の緒元を有し、変位量を直視するスケールを備える、温度特性が優れる等の特徴をもつ。
【0030】
次に、上記の構成からなる台車操舵式鉄道車両の作用について説明する。
図4は、車両の曲線軌道通過時の操舵力制御を説明するための図である。(A)は軌道を区間A~Eに分割した状態を模式的に示す図であり、(B)は外側軌道の横圧の変化を示すグラフである。
【0031】
図4(A)に示す軌道は、直線軌道A→直線から緩曲線になる軌道(直→緩軌道)B→急曲線軌道C→緩曲線から直線になる軌道(緩→直軌道)D→直線軌道E、の各区間を有する。この例では、車両は左に曲がって曲線軌道を通過する。
なお、以下の説明においては、コントローラ33には前記(a)で述べたように予め軌道の地点情報が入力されているものとする。
【0032】
・ボルスタレス台車の場合
台車11は、車体10に対する一定の旋回抵抗が与えられている。例えば、車体10と台車11間に摺動摩擦部の少ないボルスタレス台車においては、揺れ枕はりを取り去ってダイヤフラム型空気ばねが設けられており、この空気ばねの復元力(空気ばねが捩じられる抵抗力)が台車旋回抵抗となる。この空気ばねの復元力は、直線軌道(図4(A)の区間A、E)において台車11の蛇行動を抑える役割を果たす。
【0033】
一方、ボルスタレス台車は、曲線軌道の曲率変化点(図4(A)の区間B、D)や急曲線軌道(図4(A)の区間C)を通過する際等に、空気ばねの復元力が台車11の旋回抵抗となって外軌横圧として作用し、脱線係数Q/P(横圧(Q)÷輪重(P))が大きくなる傾向がある。そのため、図4(B)に示すように、曲線軌道B~Dを通過する際には外軌横圧が円曲線となり、脱線係数Q/Pが大きくなって車両が脱線しやすい状況が生じる。
【0034】
そこで、曲線軌道B~D間を走行する際には、コントローラ33でアクチュエータ20を制御し、空気ばねの復元力を相殺するような台車回転力を加える。すなわち、図4(A)のような左カーブの曲線軌道B~Dを走行する際に、前記(2)のように、左右のアクチュエータ20L、20Rの空気室21Bを送気、空気室21Aを排気とするようエアバルブ38を切り換える。すると、左アクチュエータ20Lは、図3においてピストンロッド23が左側に移動するとともに、右アクチュエータ20Rは、図3においてピストンロッド23が右側に移動し、双方が縮んだ状態となる。このような両アクチュエータ20L、20Rの動作は、車体10のアンカー28を支点として、台車11の反時計方向(上から見て)への回動をサポートする力となって作用する。
【0035】
この際、コントローラ33は、予め入力されている地点情報に基づき、直→緩軌道Bでは徐々に送気量を増やし、急曲線軌道Cではより送気量を多くし、緩→直軌道Dでは徐々に送気量を減らすようコンプレッサ32を作動し、曲線軌道の進入・通過・進出を連続的にコントロールする。このとき、各車両のそれぞれの台車について横圧変化に応じた旋回力を加え、理想的に全地点での横圧をゼロに近づける制御を車両ごとに個別に行う。この制御は、あるいは車両の速度から逆算した時間差に基づいて行ってもよい。このような制御によって、曲線通過性能や通過速度を向上させることができ、車両の横圧を低減して安全性を向上することができる。
【0036】
なお、コントローラ33がアクチュエータ20の誤作動を検知した場合は、前記(3)のように、左右のアクチュエータ20L、20Rの両空気室21A、21Bの空気圧を大気開放してフェールセーフとする。この場合、アクチュエータ20からは台車旋回力が付与されないので、脱線を引き起こす危険性を低減できる。
【0037】
・非ボルスタレス台車の場合
摺動摩擦のある非ボルスタレス台車においては、前述のボルスタレス台車とは挙動が異なる。この場合は、曲線軌道の曲率半径が変化する際に、摺動摩擦力が台車旋回抵抗となって横圧に付与されるため、これにより発生する横圧成分は、急曲線軌道Cにおいても曲率によらずほぼ同じである。しかしながら、直→緩軌道Bの曲線進入部においては、曲率変化による摺動摩擦力に伴い、大きい値の横圧が発生する場合がある。
【0038】
そこで、曲線進入部においては、車体10と台車11間にかかる回動抵抗(摺動摩擦力)を打ち消すように、コントローラ33でアクチュエータ20の作動を制御する。このとき、コントローラ33内の地点情報に基づき、曲線軌道の前方からコントロールを開始すると、曲線進入部における曲率変化点の通過走行が安定になる。一方、曲線進出部においては、台車11を復元するようにアクチュエータ20の作動をコントロールすることで、脱線の可能性を低減できる。
【0039】
・振り子台車の場合
車両がいわゆる振り子台車を備える場合には、車体の重心移動で外側への輪重移動が顕著となる。この場合は、台車を復元せず、むしろ積極的に内向するようにアクチュエータへの送気量を増やし、外側軌道の負荷を低減するようにコントロールすることも可能である。
【0040】
なお、鉄道車両が低速でカント(バンク)付き曲線軌道を走行するような場合は、遠心力があまり作用しないので、鉄道車両の重心が内側軌道に移動し、外側軌道の脱線係数が大きくなる状況が生じる。このような場合、車両の速度から低速状態を検知し、外側軌道に対応したアクチュエータへの送気量を増やす。こうすると、外側軌道の脱線の可能性を低減でき、低速走行時の安全性を向上することができる。
【0041】
[第2実施例]
以下、本発明の第2実施例について説明する。この第2実施例は、高速用の鉄道車両に適したアクチュエータの例である。
図5は、本発明の第2実施例に係る台車操舵式鉄道車両のアクチュエータのエアー供給系統を示す図である。
図6は、同アクチュエータの他の例(複列式)を示す斜視図である。(A)はシリンダ本体を右側、ロッドを左側に配置した図であり、(B)はシリンダ本体を左側、ロッドを右側に配置した図である。
図7は、同アクチュエータの他の例(異径式)を示す斜視図である。
図8は、本発明の第2実施例に係る台車操舵式鉄道車両の台車部分を示す側面図である。
【0042】
まず、図5のアクチュエータについて説明する。
図5に示すアクチュエータ50は、シリンダ室51とピストンロッド53を備えている。シリンダ室51の内部は、ピストンロッド53の先端の円盤54で2つの空気室51A、51Bに仕切られている。本体51のロッド側端部には、センサ59が設けられている。このセンサ59は、第1実施例のセンサ29と同様に、本体51に対するピストンロッド53の位置を検出する。
【0043】
本体51の端面には、オイルダンパ室51Cが連設されている。このオイルダンパ室51Cには、非動作バイパス回路(バイパス弁を含む)52と、油圧センサ66が設けられている。オイルダンパ室51Cの端面とピストンロッド53の端部には、それぞれジョイント(ユニバーサルジョイント)55、56が取り付けられている。
【0044】
本体51の外面には、各空気室51A、51Bに対応して、2つの供給パイプ51a、51bが接続されている。これら供給パイプ51a、51bには、それぞれ圧力検知器61が組み込まれている。両供給パイプ51a、51bの端部は、圧力調整装置63に接続されている。この圧力調整装置63は、接続パイプ62を介して制御弁65に接続されている。この制御弁65は、コントローラ33とエアー供給源MRに接続されている。圧力検知器61、圧力調整装置63及び制御弁65は、第1実施例におけるエアバルブと同様の役割を果たす。エアー供給源MRは、第1実施例における元空気溜め31及びコンプレッサ32と同様の役割を果たす。
【0045】
次に、図6のアクチュエータについて説明する。
図6に示すアクチュエータ40は、複列式のアクチュエータである。このアクチュエータ40の本体41の内部には、並列に配置されたダンパ室41Aとシリンダ室41Bが形成されている。この本体41には、ダンパ室41A、シリンダ室41Bのそれぞれに対応したロッド43A、43Bを有する二股状のピストンロッド43が組み込まれている。本体41のロッド側端部には、センサ49が設けられている。このセンサ49は、前述のセンサ29、59と同様に、本体41に対するピストンロッド43の位置を検出する。本体41の端面とピストンロッド43の基部部には、それぞれジョイント(ユニバーサルジョイント)45、46が取り付けられている。
【0046】
次に、図7のアクチュエータについて説明する。
図7に示すアクチュエータ70は、異径式のアクチュエータである。このアクチュエータ70は、大径で長尺のシリンダ室71を備えている。このシリンダ室71の端面には、小径で短尺のオイルダンパ室72が同心状に連設されている。これらシリンダ室71及びオイルダンパ室72には、ピストンロッド73が組み込まれている。このピストンロッド73は、先端に小円盤74aが設けられており、途中に大円盤73aが設けられている。小円盤74aがオイルダンパ室72内に配置され、大円盤73aはシリンダ室71内に配置されている。
【0047】
シリンダ室71内は、大円盤73aで2つの空気室71A、71Bに仕切られている。シリンダ室71のピストンロッド73側端部には、センサ79が設けられている。このセンサ79は、前述のセンサ29、59、49と同様に、シリンダ室71に対するピストンロッド73の位置を検出する。オイルダンパ室72の端面とピストンロッド73の端部には、それぞれジョイント(ユニバーサルジョイント)75、76が取り付けられている。
【0048】
これらのアクチュエータは、基本的に第1実施例のアクチュエータと同様に用いることができる。第2実施例の各アクチュエータは、オイルダンパ機能を有することによって、車両の高速走行時の蛇行動や動揺を抑えることができるという効果がある。なお、台車操舵の際には、左右空気室の圧力差で操舵力が決まる。このとき、一方を大気圧にする場合と、両方を大気圧以上にする場合とが可能である。
【0049】
さらに、これらのアクチュエータは、第1実施例と同様に、台車の左右側面に装着することが好ましいが、片方の側面にのみ装着することも可能である。又は、これらのアクチュエータは、第1実施例と同様に、車体のアンカーと台車枠の側面間に取り付けるのが効果的だが、台車の内側において取り付けることもできる。あるいは、図8に示すように、車体10のアンカー28を挟んで両側に、2台のアクチュエータ(図8においては図7のアクチュエータ70を示す)を装着することも可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、故障時のフェールセーフ機能を実現できる等の利点を有する台車操舵式鉄道車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る台車操舵式鉄道車両の台車部分を示す側面図である。
【図2】同台車操舵式鉄道車両の台車操舵機構の空気圧駆動アクチュエータ(左右個別状態)を示す斜視図である。(A)はシリンダ本体を右側、ロッドを左側に配置した図であり、(B)はシリンダ本体を左側、ロッドを右側に配置した図である。
【図3】同台車操舵式鉄道車両の台車操舵機構の空気圧駆動アクチュエータ(左右連結状態)を示す斜視図である。
【図4】車両の曲線軌道通過時の操舵力制御を説明するための図である。(A)は軌道を区間A~Eに分割した状態を模式的に示す図であり、(B)は外側軌道の横圧の変化を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施例に係る台車操舵式鉄道車両のアクチュエータのエアー供給系統を示す図である。
【図6】同アクチュエータの他の例(複列式)を示す斜視図である。(A)はシリンダ本体を右側、ロッドを左側に配置した図であり、(B)はシリンダ本体を左側、ロッドを右側に配置した図である。
【図7】同アクチュエータの他の例(異径式)を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る台車操舵式鉄道車両の台車部分を示す側面図である。
【符号の説明】
10 車体 11 台車
12 ブラケット 13 台車枠
14 中心ピン 15 車輪
16 車軸 17 輪軸
18 軸箱 19 軸ばね
20(20L、20R) アクチュエータ
21 シリンダ室 21A、21B 空気室
21a、21b 送排気口 23 ピストンロッド
24 円盤 25、26 ジョイント
28 アンカー 29 センサ
31 元空気溜め 32 コンプレッサ
33 コントローラ 35A、35B 連結パイプ
36A、36B 供給パイプ 38 エアバルブ
40 アクチュエータ
41 本体 41A ダンパ室
41B シリンダ室 43 ピストンロッド
43A、43B ロッド 45、46 ジョイント
49 センサ
50 アクチュエータ
51 シリンダ室 51A、51B 空気室
51C オイルダンパ室 51a、51b 供給パイプ
52 非動作バイパス回路 53 ピストンロッド
54 円盤 55、56 ジョイント
59 センサ 61 圧力検知器
62 接続パイプ 63 圧力調整装置
65 制御弁 66 油圧センサ
MR エアー供給源
70 アクチュエータ
71 シリンダ室 71A、71B 空気室
72 オイルダンパ室 73 ピストンロッド
73a 大円盤 74a 小円盤
75、76 ジョイント 79 センサ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7