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明細書 :鉄道車両

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4700862号 (P4700862)
公開番号 特開2003-072544 (P2003-072544A)
登録日 平成23年3月11日(2011.3.11)
発行日 平成23年6月15日(2011.6.15)
公開日 平成15年3月12日(2003.3.12)
発明の名称または考案の名称 鉄道車両
国際特許分類 B61F   5/24        (2006.01)
B61F   5/10        (2006.01)
B61F   5/12        (2006.01)
FI B61F 5/24 C
B61F 5/24 A
B61F 5/24 Z
B61F 5/10 C
B61F 5/12
請求項の数または発明の数 2
全頁数 13
出願番号 特願2001-271337 (P2001-271337)
出願日 平成13年9月7日(2001.9.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2001年(平成13年)3月9日 社団法人日本機械学会関東支部発行の「No.010-1 日本機械学会関東支部 第7期総会講演会講演論文集」に発表
審査請求日 平成19年11月9日(2007.11.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】菅原 能生
【氏名】瀧上 唯夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】北村 亮
参考文献・文献 特開昭60-060061(JP,A)
特開2000-185651(JP,A)
特開平08-253143(JP,A)
特開平10-297483(JP,A)
特開2000-280901(JP,A)
実開平03-063458(JP,U)
特開平05-213194(JP,A)
特開平09-286331(JP,A)
調査した分野 B61F 5/10- 5/12, 5/24
F16F 15/00-15/027
B60G 17/00-17/08,99/00
特許請求の範囲 【請求項1】
車体と、
該車体を前後で支える二台の台車と、
各台車と前記車体間に介装された車体支持装置及び上下方向の可変減衰ダンパと、
前記車体の前、中及び後に配置された、該車体の上下方向の振動を検出するセンサと、
該センサの検出した入力信号を受け、前記可変減衰ダンパの減衰力を制御して、前記車体の振動を低減する制振制御手段と、
を具備し、
前記制振制御手段が、前記センサの検出した信号を、前記車体の上下並進モード、ピッチングモード、ローリングモード及び一次曲げモードの各振動モードにモード展開により分解し、これら各モードに対応して前記可変減衰ダンパの設定値を算出して、該ダンパへ指令を発し、
車体の剛体振動及び一次曲げ振動の双方を低減することを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記制振制御手段が、
前記センサの検出した信号を、前記各振動モードにモード展開により分解するモード変換部と、
該モード変換部でモード展開された各振動モードの加速度を積分して車体速度を算出する、各振動モードごとの積分器と、
該積分器で算出された車体速度にスカイフックゲインをかけて、各振動モードに必要な制振力を算出する、各振動モードごとのスカイフックゲイン器と、 を有することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セミアクティブ方式のサスペンションシステムを備える鉄道車両に関する。特には、車体の剛体運動及び一次曲げ振動(弾性振動)の双方を低減することができる鉄道車両に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
鉄道車両の車体の上下振動の形態(振動モード)は、剛体運動と曲げ振動(弾性振動)とに大きく分けることができる。
図7(A)~(D)は、鉄道車両の車体の上下振動の形態を説明するための模式図である。
剛体運動には、車体の上下方向の変位を表す上下並進(バウンシング)運動(図7(A)参照)と、車体の中央部を節として車体の前後が上下に揺れるピッチング運動(図7(B)参照)と、車体の回転変位であるローリング運動(図7(C)参照)が含まれる。曲げ振動(弾性振動)は、車体の前後方向の一次曲げ振動(図7(D)参照)が最も代表的である。
【0003】
鉄道車両の乗り心地を確保するためには、上記のような1Hz程度の剛体モードの運動と、7~12Hz程度の車体一次曲げ振動の両者を低減することが非常に重要となる。近年の車両の高速化、軽量化に伴い、これらの振動が顕著になってきており、対策が望まれている。パッシブ系では、これらの振動を同時に低減させることは非常に困難であるため、制御技術を導入する動きがある。
【0004】
鉄道車両に対して、剛体モードの振動と弾性振動の両者の低減を試みたものとしてフルアクティブ方式が主に検討されている(例えば、永井正夫・沢田康宏による『柔構造弾性車体のアクティブ支持制御』、日本機械学会論文集(C編)、53巻、492号(昭62-8))。
図8は、上記論文に開示されたフルアクティブ式車両振動抑制技術の概念を表す図である。図8(A)は、柔軟構造弾性車体の機構モデルの図であり、図8(B)は集中制御(モード別最適制御)方式の説明図である。
【0005】
図8(A)に示すように、この車体モデルは、両端自由の一様な弾性はり1と、この弾性はり1を支える2つの支持系2、3とを有する。このモデルでは、弾性はり1が車体であり、支持系2、3がそれぞれ車体前方・後方の支持装置(サスペンション)である。各支持系2、3には、車両用の空気ばね及び空気圧シリンダ等からなる制御用アクチュエータA1、A2が組み込まれている。各支持系2、3から弾性はり1に向けて働く力f1、f2は、空気ばねの力と空気圧シリンダの力との和となる。
【0006】
図8(B)に示す集中制御(モード別最適制御)方式では、車体(弾性はり1)の前後支持部(支持系2、3)にそれぞれセンサS1、S2を取り付けるとともに、車体中央にもセンサS3を取り付け、これら各センサS1~S3からの信号を車体前後のアクチュエータA1、A2に送信して制御する。
この方式によれば、車体の剛体運動と曲げ振動の双方を制御することが可能である。この他にも、現車試験による結果を示したもの(上林・臼井・大塚・西・松嶋・段畑による『上下系アクティブ制振制御装置の開発(300X新幹線試験車両での走行試験結果)』、日本鉄道サイバネティクス協議会、鉄道におけるサイバネティクス利用国内シンポジウム論文集、(1998-11)等)があるが、そのいずれもがフルアクティブサスペンションによるものであった。
【0007】
ところが、フルアクティブ方式の場合は、下記の短所がある。
(1)制御装置に異常が発生した場合、むしろ車体を加振してしまう危険性がある。
(2)油圧ポンプ等の駆動源や、駆動源からアクチュエータまでの配管等を必要とするため、装置が複雑でコストも高くなり、メンテナンス性にも劣る。
(3)外部の駆動源からエネルギを供給する必要があり、省エネルギとはいえない。
【0008】
鉄道車両においては、左右系の振動制御装置にセミアクティブ方式を採用している例が知られている。一方、鉄道車両において、曲げ振動も含めた上下系の振動制御を行う際に、セミアクティブ方式を採用するには、下記の理由により不利であると考えられていた。
(1)ダンパを実装する場所は、必然的に車体支持点近傍となる。しかし、この場所は車体の一次曲げ振動の節の近傍にあるため、制御力を与えても曲げ振動に対する振動抑制効果は得られにくい。
(2)ダンパを実装する位置における一次曲げ振動による振幅は、高々0.5mm程度である。このため、一次曲げ振動に対し、セミアクティブ制御で必要とされる減衰力をダンパで発生させることが難しい。
【0009】
なお、車体の一次曲げ振動のみの振動抑制の例として、車体中央にダイナミックダンパを取り付ける方式が試みられている。
図9は、ダイナミックダンパ方式の振動抑制装置を有する鉄道車両の機構モデルを表す図である。
この図に示す車体モデルは、両端自由の一様な弾性はり5と、この弾性はり5を支える2つの支持系6、7とを有する。このモデルでは、弾性はり5が車体であり、支持系6、7がそれぞれ車体前方・後方の支持装置(サスペンション)である。各支持系6、7のばね定数はk、減衰定数はcである。さらに、弾性はり5の中央部には、ダイナミックダンパDが取り付けられている。
【0010】
図9の車体モデルは、ダイナミックダンパDを取り付けることで、車体の一次曲げ振動を低減することができる。しかし、ダイナミックダンパDは一般に重量が重く(一例として、車体が25tに対してダイナミックダンパが1t程度)、新たに質量を取り付ける場合には車体の軽量化に反することとなる。また、既存車両に対してダイナミックダンパを取り付けることは、機器配置のレイアウト等の問題から一般的には困難である。
【0011】
さらに別の例として、ゴムやFRP・鋼板等からなる制振材料を車体に貼り付けて、振動を抑制する方法も知られている。しかしながら、制振材料を既存車両に貼り付けるのは、大掛かりな工事となる。
【0012】
本発明は、セミアクティブ方式のサスペンションシステムを有する鉄道車両において、車体の剛体運動及び一次曲げ振動(弾性振動)の双方を低減する制振装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の鉄道車両は、 車体と、 該車体を前後で支える二台の台車と、 各台車と前記車体間に介装された車体支持装置及び上下方向の可変減衰ダンパと、 前記車体の前、中及び後に配置された、該車体の上下方向の振動を検出するセンサと、 該センサの検出した入力信号を受け、前記可変減衰ダンパの減衰力を制御して、前記車体の振動を低減する制振制御手段と、 を具備し、 前記制振制御手段が、前記センサの検出した信号を、前記車体の上下並進モード、ピッチングモード、ローリングモード及び一次曲げモードの各振動モードにモード展開により分解し、これら各モードに対応して前記可変減衰ダンパの設定値を算出して、該ダンパへ指令を発し、 車体の剛体振動及び一次曲げ振動の双方を低減することを特徴とする。
【0014】
本発明は、セミアクティブ方式(可変減衰ダンパの減衰力を用いた振動制御方式)を採用しているため、以下の利点を有する。
(1)油圧ポンプ等の駆動源や配管等が不要であるため、機器構成が簡単で安価である。
(2)故障時や制御不良時に、かえって車体を加振してしまうようなことがなく、安全性が高い。
(3)外部からのエネルギ供給が不要であり、省エネルギである。
【0015】
本発明の鉄道車両においては、前記制振制御手段が、 前記センサの検出した信号を、前記各振動モードにモード展開により分解するモード変換部と、 該モード変換部でモード展開された各振動モードの加速度を積分して車体速度を算出する、各振動モードごとの積分器と、 該積分器で算出された車体速度にスカイフックゲインをかけて、各振動モードに必要な制振力を算出する、各振動モードごとのスカイフックゲイン器と、 を有するものとすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図4は、鉄道車両(客車)の一例を示す側面図である。
図5は、図4の車両における台車の構成を示す分解斜視図である。
なお、以下の説明においては、上下・左右・前後は各図における矢印方向を指すものとする。
【0017】
この鉄道車両は、図4に示すように、車体100と、前後2台のボルスタレス台車(以下、台車と略称する)101を中心に構成されている。台車101の左右の側はり110上には、図5に示すように、空気ばね等からなる車体支持装置102が設置されている。この車体支持装置102の上に、車体100が載置される。車体支持装置102は、台車101の振動が車体にダイレクトに伝わらないように緩衝して、車両の乗り心地を改善する役割を果たす。
【0018】
台車101の下部には、車輪105と車軸106からなる輪軸107が組み込まれている。車輪105は、車軸106の両端部に圧入されて固定されている。両車輪105の外側において、車軸106の両端部には軸受箱108が外嵌されている。台車101の側はり110と軸受箱108間は、2個の軸ばね109で連結されている。この軸ばね109等により、輪軸107が側はり110に対して上下前後左右に対して適度に弾性支持される。
【0019】
次に、図6を参照しつつ、本実施の形態で用いる可変減衰ダンパについて説明する。
図6は、特願平10-343624として本発明者の内の一人により出願された可変減衰ダンパ内蔵型空気ばねの構成を示す断面図である。
車体支持装置102は、可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね130を中心に構成されている。可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね130は、円盤状の上面板111と、リング状の下面板112と、ダイヤフラム状の可撓膜113等から構成されている。上面板111は、車体の下面に固定される。上面板111の下面中央部には、蓋状の部材114が固定されており、同部材114の下面には、円盤状の摺動板115が取り付けられている。一方、下面板112は台車側に固定されている。可撓膜113は、上面板111と下面板112間を気密にするようリング状に貼られている。
【0020】
可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね130の傍には、高さ調整機構116(図5参照)が設けられている。この高さ調整機構116は、可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね130の高さを自動的に調整して、車体100を標準の高さに保つ。可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね130の下面板112の直下には、図6に示すように、環状の弾性ゴム117と環状の剛性リング118が交互に同心状に積層されている。最下層の弾性ゴム117の下部には、台車側に固定されたエンドプレート119が取り付けられている。これらの部材111~115、117~119に囲まれて、空気の封入される気密室120が形成されている。
【0021】
可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね130の気密室120には、流体圧シリンダ121が設置されている。この流体圧シリンダ121は、シリンダ本体122とピストン123等から構成されている。シリンダ本体122は、エンドプレート119の上面中央部に固定されている。このシリンダ本体122には、ピストン123が伸縮自在に取り付けられている。ピストン123の上端には低摩擦特性の樹脂シート123aが貼られており、ピストン123(台車側)と摺動板115(車体側)の間で生じた横ズレ(前後左右方向の相対変位)を逃すようになっている。
【0022】
エンドプレート119の内部には、アキュムレータ124が設置されている。このアキュムレータ124は、流体圧シリンダ121のピストン123を伸び方向に付勢して、摺動板115に所定圧力で当接させる。エンドプレート119の上面には、制御ボックス125が設置されている。この制御ボックス125は、作動流体に与える流動抵抗を調整する減衰手段を備えている。車体の振動に併せてこの減衰手段の減衰量を最適に調整することにより、車体の振動を抑制する。
【0023】
次に、図1~図3を参照して、本発明の鉄道車両のシステム構成について説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る鉄道車両の車体、台車及び振動抑制システムを示す模式図である。
図2は、本発明の一実施例に係る鉄道車両の機構モデル図である。
図3は、本発明の一実施例に係る鉄道車両の制振制御装置の構成を示すブロック図である。
【0024】
図1において符号10は車体を示し、符号11は前後二台の台車を示す。これら車体10及び台車11は、図4に示す車体100及び台車101が模式的に描かれたものである。車体10と台車11間には、前後左右に計4つの可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね12(130)が介装されている。この空気ばねは内蔵された可変減衰ダンパの減衰力を制御することにより、振動低減を図ることができる。可変減衰ダンパの最大減衰力は、車体荷重の約1割程度で、ある程度の効果が得られた。本実施例の場合は400kgfに設定した。
【0025】
図6に示す可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね130は、ボルスタレス台車を装備した車両に好適であって、この場合は空気ばね交換を行うことで、上下方向の可変減衰ダンパを実装することができる。
【0026】
ここで、図2を参照して鉄道車両の機構モデルについて説明する。
図2に示すように、この車体モデルでは、両端自由の一様な弾性はり10-1が車体10であり、この弾性はり10-1を支える2つの支持系11-1、11-2がそれぞれ車体前方・後方の台車11、可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね12である。
なお、この図2のモデルにおける各記号は、後にコントローラのモード変換部におけるモード展開原理の説明で述べる。
【0027】
図1に戻って、車体10の前、中及び後の左右には、計6個の加速度センサ15が配置されている。これらの加速度センサ15は、車体10の上下方向の振動を検出し、後述するコントローラ20に検出信号を出力する。なお、ここでは計6個の加速度センサ15を配置しているが、おおむね必要とされる個数は制御したい振動モードによって異なる。例えば、上下並進、ピッチング、一次曲げ振動を制御するだけなら最低3個の加速度センサでよい。又は、ピッチングやローリングについては、加速度センサを使用せずにレートジャイロを用いてもよい。又は、一次曲げ振動以上の高次の振動も監視・制御したい場合は、その振動モードに見合った数だけセンサを増やせばよい。
ここで用いる加速度センサ15は、サーボ型を用いることが性能上望ましい。あるいは、歪ゲージ式の加速度センサを用いることも可能である。
【0028】
次に、図3を参照して、制振制御装置(コントローラ)の構成について説明する。
図3に示すように、コントローラ20は、モード変換部21を備えている。このモード変換部21には、6個の加速度センサ15(1位~6位)から出力された加速度検出信号が入力される。このモード変換部21では、各加速度センサ15で検出された加速度に基づき、上下並進モード(図7(A)参照)、ピッチングモード(図7(B)参照)、ローリングモード(図7(C)参照)及び一次曲げモード(図7(D)参照)にそれぞれモード展開する。このモード変換部21の展開は、以下の原理に沿って行われる。
【0029】
図2に示すような弾性はり(車体)10-1の慣性、内部粘性及び曲げ剛性を考慮して、弾性はり10-1の上下変位z(x,t)を微小とすると、次の偏微分方程式
【数1】
JP0004700862B2_000002t.gifが成立する。但し、この「数1」式において、
ρ:=単位長さ当たりの車体質量
EI:=車体の曲げ剛性
μI:=内部粘性減衰係数
li:=各支持点の位置
を表す。なお、δ(x)はデルタ関数である。
【0030】
ここで、図2に示すように、f1(t)、f2(t)は車体前後の支持系11-1、11-2の支持力を表し、fa1(t)、fa2(t)は各支持系11-1、11-2における可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね12に内蔵された可変減衰ダンパの発生力を表し、k及びcはそれぞれ可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね12の空気ばね定数及び減衰係数を表す。さらに、弾性はり10-1の中央での上下変位をzbc、支持系11-1、11-2の直上での上下変位をそれぞれzb1、zb2とする。
【0031】
「数1」式の偏微分方程式を、車体の剛体運動モード、曲げ振動モードに級数展開すると、次式のようになる
【数2】
JP0004700862B2_000003t.gifこの「数2」式の意味は、
右辺第1項:車体の上下並進方向変位Zに関する項
右辺第2項:車体のピッチ角θに関する項
右辺第3項以降:弾性はりの曲げ振動qmに関する項(車体一次曲げの場合はm=3に相当)
である。
以上がモード変換部21の展開原理である。
【0032】
モード変換部21は、積分器22に接続されている。積分器22は、各モードに対応した4つの積分回路を備えている。この積分器22では、モード変換部21でモード展開された各モードの加速度を積分して、車体速度を算出する。なお、モード変換部21では、必要であれば、モード展開された加速度から、その加速度の移動平均を引くことで、直流に近い成分を取り除くこともできる。この操作を行うと、積分器のドリフト対策となる。この積分器は、ドリフトを防ぐため極低周波域ではゲインが低いものが望ましい。また、ダンパの応答遅れを考慮して積分器を設計することが望ましい。例えば、本実施例の場合、一次曲げモードに対する積分器は、純粋な積分器に対し12.4Hzで約30度程度位相を進ませてある。
【0033】
積分器22は、スカイフックゲイン器23に接続されている。スカイフックゲイン器23では、積分器22で算出された車体速度にスカイフックゲインをかけて、各モードごとに必要な制振力を算出する。このように、各モードごとに積分器22とスカイフックゲイン器23をもつことにより、各振動モードに対して独立に制御特性をもたせることができる。このスカイフックゲイン器23は、モード変換・リミッタ部24に接続されている。このモード変換・リミッタ部24では、スカイフックゲイン器23で算出された各モード別の制振力を、車体の各部位(図1の1位~4位)での可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね12に内蔵された可変減衰ダンパでの減衰力に変換する。さらにこの際、モード変換・リミッタ部24では各モードごとにリミッタを設けて、各モードでの最大減衰力を指定する。
【0034】
モード変換・リミッタ部24は、バルブドライバ25に接続されている。このバルブドライバ25は、モード変換・リミッタ部24で合成された車体の各部位での力指令を、減衰力指令電流に変換する機能を備えている。バルブドライバ25から出力された車体各部位での減衰力指令電流は、1位~4位の各可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね12に内蔵された、可変減衰ダンパのバルブを駆動して、減衰力を制御する。
【0035】
次に、上記の構成からなる鉄道車両で制振制御実験を行った具体的な数値結果について述べる。
この試験に用いた車両は、在来線車両(軌間1067mm、車体長19.5m、重量26t)である。この車両の空気ばね共振周波数は1.3Hz、一次曲げ振動の共振周波数は12.4Hzである。
【0036】
軌条輪から一次曲げの固有振動数である12.4Hz0.02mm正弦波で加振した際の、車体中央における上下加速度PSD(単位(m/s22/Hz)の値は、以下の通りである。
なお、カッコ内の数値(%)は、(a)コントローラ20による制御がない場合を1として、PSDがどの程度であるかを示す数値である。
【0037】
(A)12.4Hz0.02mm正弦波加振の結果
(a)コントローラ20による制振制御がない場合
12.2HzにおけるPSDの値 0.008124(100%)
(b)コントローラ20で一次曲げモードのみ制御を行った場合
12.2HzにおけるPSDの値 0.009311(114%)
【0038】
次に、12.4Hz0.02mmに上下並進の固有振動数である1.3Hz3mm正弦波を重ね合わせて加振した場合の結果を示す。
(B)12.4Hz0.02mm+1.3Hz3mm正弦波加振の結果
(a)コントローラ20による制振制御がない場合
1.3HzにおけるPSDの値 0.1299(100%)
12.2HzにおけるPSDの値 0.01329(100%)
(b)コントローラ20で一次曲げモードのみ制御を行った場合
1.3HzにおけるPSDの値 0.1065(82.0%)
12.2HzにおけるPSDの値 0.00641(48.2%)
【0039】
(c)コントローラ20で上下並進モードのみ制御を行った場合
1.3HzにおけるPSDの値 0.0300(23.1%)
12.2HzにおけるPSDの値 0.01639(123.3%)
(d)コントローラ20で一次曲げモード及び上下並進制御を行った場合
1.3HzにおけるPSDの値 0.0370(29.1%)
12.2HzにおけるPSDの値 0.00980(73.7%)
【0040】
(A)の加振結果では、(b)の制御を行っても制振効果が得られていない。これは、可変減衰ダンパのストロークが小さいため、必要とされる減衰力を発生させることが難しいからである。しかしながら、実際の走行時には、一次曲げ振動の共振周波数のみで加振されることはほとんどなく、例えば(B)の加振条件のように、他の周波数でストロークの大きい振動が生じている場合が大部分である。
【0041】
このような場合は、振幅が大きく適当な速度を持つ振動を利用して減衰力を発生させることができるため、(B)の加振時に(b)の制御を行った場合には、12.2HzにおけるPSDの値が(a)の行わなかった場合と比較して半減しており、一次曲げ振動の低減効果を確認できる。又は、(c)の制御時においては、剛体振動は低減するが一次曲げ振動がかえって増加しているのに対し、(d)の制御を行うことによって、上下並進(剛体)振動及び一次曲げ(弾性)振動の双方が低減されることがわかる。
【0042】
図10は、本発明の他の実施例に係る鉄道車両の構造を模式的に示す図である。この例では、可変減衰ダンパは、空気ばねに内蔵されておらず別に設けられている。
図10(A)に示すように、台車11の側はり210の左右両端に、側方に突出する台213を設け、その台213と車体10との間に上下方向の可変減衰ダンパ215を介装している。可変減衰ダンパ215の上下両端は、図10(B)に拡大して示すように、ピン付きゴムブッシュ217を介して車体10、台車11に接続されている。
この例では、台車11-車体10間の2次ばね212と並列に可変減衰ダンパ215が配置されている。ただし、この際、ピン付きゴムブッシュの剛性や球面軸受けのガタに注意する必要がある。また、本発明は、ボルスタ台車に対しても、2次ばねと並列に可変減衰ダンパを取り付けることにより適用可能である。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の鉄道車両によれば、車体の剛体運動及び一次曲げ振動(弾性振動)の双方を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る鉄道車両の車体、台車及び振動抑制システムを示す模式図である。
【図2】本発明の一実施例に係る鉄道車両の機構モデル図である。
【図3】本発明の一実施例に係る鉄道車両の制振制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】鉄道車両(客車)の一例を示す側面図である。
【図5】図4の車両における台車の構成を示す分解斜視図である。
【図6】特願平10-343624として本発明者の内の一人により出願された可変減衰ダンパ内蔵型空気ばねの構成を示す断面図である。
【図7】鉄道車両の車体の上下振動の形態を説明するための模式図である。
【図8】従来のフルアクティブ式車両振動抑制技術の概念を表す図である。図8(A)は、柔軟構造弾性車体の機構モデルの図であり、図8(B)は集中制御(モード別最適制御)方式の説明図である。
【図9】従来のダイナミックダンパ方式の振動抑制装置を有する鉄道車両の機構モデルを表す図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る鉄道車両の構造を模式的に示す図である。
【符号の説明】
10 車体 10-1 弾性はり
11 台車 11-1、11-2 支持系
12 可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね 15 加速度センサ
20 コントローラ
21 モード変換部 22 積分器
23 スカイフックゲイン器 24 モード変換・リミッタ部
25 バルブドライバ
100 車体
101 ボルスタレス台車 102 車体支持装置
105 車輪 106 車軸
107 輪軸 108 軸受箱
109 軸ばね 110 側はり
111 上面板 112 下面板
113 可撓膜 114 部材
115 摺動板 116 高さ調整機構
117 弾性ゴム 118 剛性リング
119 エンドプレート 120 気密室
121 流体圧シリンダ 122 シリンダ本体
123 ピストン 124 アキュムレータ
125 制御ボックス
130 可変減衰ダンパ内蔵型空気ばね
210 側はり 212 2次ばね
213 台 215 ダンパ
217 ピン付きゴムブッシュ
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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