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明細書 :地層種類の推定方法および推定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4017848号 (P4017848)
公開番号 特開2003-082646 (P2003-082646A)
登録日 平成19年9月28日(2007.9.28)
発行日 平成19年12月5日(2007.12.5)
公開日 平成15年3月19日(2003.3.19)
発明の名称または考案の名称 地層種類の推定方法および推定装置
国際特許分類 E02D   1/00        (2006.01)
G01V   9/00        (2006.01)
FI E02D 1/00
G01V 9/00 J
請求項の数または発明の数 10
全頁数 11
出願番号 特願2001-274756 (P2001-274756)
出願日 平成13年9月11日(2001.9.11)
審査請求日 平成16年7月28日(2004.7.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】坂井 宏行
個別代理人の代理人 【識別番号】100085394、【弁理士】、【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
審査官 【審査官】石村 恵美子
参考文献・文献 特開平06-254573(JP,A)
特開平11-138158(JP,A)
調査した分野 E02D 1/00
G01V 9/00
C02F 1/68
C02F 1/42
特許請求の範囲 【請求項1】
地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最低でも48%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を泥岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法。
【請求項2】
地下水中のイオン濃度を分析する分析手段と、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定する地層推定手段とを設けるにあたり、分析手段は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンのイオン濃度を分析するものであり、地層推定手段は、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最低でも48%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を泥岩であると推定するものであることを特徴とする地層種類の推定装置。
【請求項3】
地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最高でも45%以下と低く、かつ、カリウムイオンのモル濃度比が最高でも1%と低い場合に、該地下水が流れてきた地層を花コウ岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法。
【請求項4】
地下水中のイオン濃度を分析する分析手段と、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定する地層推定手段とを設けるにあたり、分析手段は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンのイオン濃度を分析するものであり、地層推定手段は、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最高でも45%以下と低く、かつ、カリウムイオンのモル濃度比が最高でも1%と低い場合に、該地下水が流れてきた地層を花コウ岩であると推定する地層推定手段を備えて構成される地層種類の推定装置。
【請求項5】
地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最高でも40%以下と低く、かつ、カリウムイオンのモル濃度比が最低でも3%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を流紋岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法。
【請求項6】
地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたナトリウムイオンのモル濃度比が最低でも80%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を凝灰岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法。
【請求項7】
地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたナトリウムイオンのモル濃度比が28%、塩化物イオンのモル濃度比が34%と共に高く、かつ、カルシウムイオンのモル濃度比が20%以下で、さらにナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が41%の数値を示した場合に、該地下水が流れてきた地層をシラスであると推定することを特徴とする地層種類の推定方法。
【請求項8】
地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたマグネシウムイオンのモル濃度比が30%を超えて高く、かつ、該マグネシウムイオンのモル濃度比がナトリウムイオンのモル濃度比よりも高い場合に、該地下水が流れてきた地層を斑レイ岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法。
【請求項9】
地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析された硫酸イオンのモル濃度比が50%を超えて高い場合に、該地下水が流れてきた地層を安山岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法。
【請求項10】
地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、
分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最低でも48%と高い場合には、該地下水が流れてきた地層を泥岩であると推定し、
分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最高でも45%以下と低く、かつ、カリウムイオンのモル濃度比が最高でも1%と低い場合に、該地下水が流れてきた地層を花コウ岩であると推定し、
分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最高でも40%以下と低く、かつ、カリウムイオンのモル濃度比が最低でも3%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を流紋岩であると推定し、
分析されたナトリウムイオンのモル濃度比が最低でも80%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を凝灰岩であると推定し、
分析されたナトリウムイオンのモル濃度比が28%、塩化物イオンのモル濃度比が34%と共に高く、かつ、カルシウムイオンのモル濃度が20%以下で、さらにナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が41%の数値を示した場合に、該地下水が流れてきた地層をシラスであると推定し、
分析されたマグネシウムイオンのモル濃度比が30%を超えて高く、かつ、該マグネシウムイオンのモル濃度比がナトリウムイオンのモル濃度比よりも高い場合に、該地下水が流れてきた地層を斑レイ岩であると推定し、
分析された硫酸イオンのモル濃度比が50%を超えて高い場合に、該地下水が流れてきた地層を安山岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地下水が流れる地層がどのような種類でできているかを推定する地層種類の推定方法および推定装置の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来技術】
一般に、自然災害の一つとして不安定な土塊や地盤において発生する土砂災害があり、このような土砂災害として、傾斜地に発生する地すべり、表層崩壊、がけ崩れ、土石流などがある。そして、このような不安定な土塊や地盤がどのような地層でできているかを知ることは重要で、そのため従来は、ボーリング・コアを採取してその地層を分析するボーリング調査を行うのが一般である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが前記従来のボーリング調査を行うためには、その前作業として、大掛かりなやぐら(三脚)一式を、重量物であるボーリングマシンおよびその付属機器、発電機、さらには送水ポンプ等の各種機材とともに現場に搬入し、そうして該現場でやぐらを仮設すると共に、前記搬入した各種機材をやぐらに組付ける等して設置する必要がある。しかもこの場合に、やぐらの仮設作業をときとして急斜面に足場を確保しながら行うことが強いられることがあり、しかも前記各種機材の搬入、設置には平坦なところでも最低で1日を必要とするのが実情で、これを急斜面のような足場の悪いところで行うとなると数日は必要となる。そしてこのように各種機材の設置作業が完了してから漸く運転ということになるが、運転するためには掘削用として大量の水が必要になる。しかるに、この水が確保できないところもあり、このようなところでは大量の水を予め準備しておく必要がさらにある。そのうえこれら機材を運転するための作業員として最低でも3名ほどが必要になって人件費が嵩むという問題もある。この結果、土砂災害の発生直後の場合等のように早急な調査が要求されたとしても、それなりの準備期間が必要になるうえ、このような災害現場は地盤が相当乱れているため、極めて劣悪な条件下での作業準備、掘削作業が強いられ、さらには、調査後にこれら機材の撤去までしなければならないという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最低でも48%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を泥岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法である。
請求項2の発明は、地下水中のイオン濃度を分析する分析手段と、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定する地層推定手段とを設けるにあたり、分析手段は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンのイオン濃度を分析するものであり、地層推定手段は、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最低でも48%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を泥岩であると推定するものであることを特徴とする地層種類の推定装置である。
請求項3の発明は、地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最高でも45%以下と低く、かつ、カリウムイオンのモル濃度比が最高でも1%と低い場合に、該地下水が流れてきた地層を花コウ岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法である。
請求項4の発明は、地下水中のイオン濃度を分析する分析手段と、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定する地層推定手段とを設けるにあたり、分析手段は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンのイオン濃度を分析するものであり、地層推定手段は、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最高でも45%以下と低く、かつ、カリウムイオンのモル濃度比が最高でも1%と低い場合に、該地下水が流れてきた地層を花コウ岩であると推定する地層推定手段を備えて構成される地層種類の推定装置である。
請求項5の発明は、地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最高でも40%以下と低く、かつ、カリウムイオンのモル濃度比が最低でも3%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を流紋岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法である。
請求項6の発明は、地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたナトリウムイオンのモル濃度比が最低でも80%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を凝灰岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法である。
請求項7の発明は、地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたナトリウムイオンのモル濃度比が28%、塩化物イオンのモル濃度比が34%と共に高く、かつ、カルシウムイオンのモル濃度比が20%以下で、さらにナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が41%の数値を示した場合に、該地下水が流れてきた地層をシラスであると推定することを特徴とする地層種類の推定方法である。
請求項8の発明は、地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたマグネシウムイオンのモル濃度比が30%を超えて高く、かつ、該マグネシウムイオンのモル濃度比がナトリウムイオンのモル濃度比よりも高い場合に、該地下水が流れてきた地層を斑レイ岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法である。
請求項9の発明は、地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析された硫酸イオンのモル濃度比が50%を超えて高い場合に、該地下水が流れてきた地層を安山岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法である。
請求項10の発明は、地下水中のイオン濃度を分析し、該分析されたイオンのモル濃度比から地下水が流れてきた地層の種類を推定するにあたり、分析するイオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、そして硫酸イオンであり、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最低でも48%と高い場合には、該地下水が流れてきた地層を泥岩であると推定し、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最高でも45%以下と低く、かつ、カリウムイオンのモル濃度比が最高でも1%と低い場合に、該地下水が流れてきた地層を花コウ岩であると推定し、分析されたナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が最高でも40%以下と低く、かつ、カリウムイオンのモル濃度比が最低でも3%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を流紋岩であると推定し、分析されたナトリウムイオンのモル濃度比が最低でも80%と高い場合に、該地下水が流れてきた地層を凝灰岩であると推定し、分析されたナトリウムイオンのモル濃度比が28%、塩化物イオンのモル濃度比が34%と共に高く、かつ、カルシウムイオンのモル濃度が20%以下で、さらにナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比の和が41%の数値を示した場合に、該地下水が流れてきた地層をシラスであると推定し、分析されたマグネシウムイオンのモル濃度比が30%を超えて高く、かつ、該マグネシウムイオンのモル濃度比がナトリウムイオンのモル濃度比よりも高い場合に、該地下水が流れてきた地層を斑レイ岩であると推定し、分析された硫酸イオンのモル濃度比が50%を超えて高い場合に、該地下水が流れてきた地層を安山岩であると推定することを特徴とする地層種類の推定方法である。
そしてこれらのようにすることで、ボーリング調査のような大掛かりな調査をしないで簡単に地層の推定をすることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態について説明する。まず、地盤から湧出する地下水は、地盤中で土粒子と十分にイオン交換しているため、地下水組成は、地層の種類に依存していると推定される。そこでこのことに着目し、日本各地の不安定地盤において、ボーリング調査により確定した地盤の地層種類と地下水組成との関係を比較検討したところ、特定のイオン濃度が高いところは、その地下水の経由地盤の地層の種類と対応していることを見出した。そして、地下水中に含まれるイオンの濃度の相対値であるモル濃度比から地層の種類を推定できることを発見し、本発明を完成した。
因みに、地下水量は、降雨量によって変化するものの、地下水が通る地盤中の水脈は基本的には変化することがなく同じところを通るものと推定される。このため、例えば降雨があるなどして地下水量が多くなる方向の変化があった場合に、該地下水中に含まれるイオン濃度は低くなるものの、該イオンのモル濃度比は相対的なものであるため変化することがなく殆ど一定であると考えられ、ここにおいても本発明に信頼性があるといえる。尤も、表面水を除けば、地下水組成は降水量に依存していないことは判っている。
【0006】
本発明において実際に測定した地層種類は、泥岩、花コウ岩、流紋岩、凝灰岩、シラス、斑レイ岩、安山岩であるが、これに限定されることがないことは勿論である。
本発明を実施するにあたり、地下水としては、地表面から数メートル~数十メートルまでの所謂浅層水が好ましく、百メートルを超えるような深層水は、種々の地層を通っている可能性があって地層の特定に難しいものがある。
地下水中に含まれる分析目的のイオンとしては、自然界の岩石に含まれる無機イオンで、これには陰イオン、陽イオンの何れも含み、陰イオンとして代表的なものは塩化物イオン(Cl)、硫酸イオン(SO2-)が挙げられる。また陽イオンとしては、自然界の岩石を構成する無機イオンであって、代表的なものとしてナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)が挙げられる。
これらのイオン濃度の測定は、現場で採取したものを分析機器の備わった実験室等に持参して分析することもできるが、イオン選択性電極やキャピラリー・イオンクロマトグラフィー等を用いての現地測定も可能である。
【0007】
本発明は、採取した地下水中のイオンのモル濃度比から地層の種類を推定するものであるため、予め地層に由来する特定のイオンのモル濃度比の特徴(傾向)がどのようになっているかの検討が必要である。そして予め地層に由来する特定のイオンのモル濃度比の特徴をデータとしてコンピューターに登録(記憶)させておき、実測した地下水中のイオン濃度を入力してどの地層に属するイオンのモル濃度比であるかを判定し、これによって自動的な地層種類の推定ができることになり、このようにすることにより、より迅速な地層種類の推定が可能となる。
【0008】
次に、実際に予め確認されている地層を通った地下水中に含まれるイオン濃度を実測し、そのイオンのモル濃度比を円グラフとして図1~図7に示す。
図1は5種類の泥岩層を通った地下水中のイオンのモル濃度比が示されるが、図1の左上から下へ順に中部地方、関東地方、中部地方に、さらに右上から下へ順に中部地方(前記中部地方とは異なる箇所)、九州地方にそれぞれ分布する代表的な泥岩層についてのデータを示した。
図2は3種類の花コウ岩層を通ったことが明らかな地下水中に含まれるイオンのモル濃度比が示されるが、上から順に中部地方、近畿地方(異なる2箇所)にそれぞれ分布する代表的な花コウ岩層についてのデータを示した。
以下、同様にして、図3には中国地方(異なる2箇所)に分布する流紋岩層を通った地下水中のイオンのモル濃度比を、図4には中部地方、関東地方にそれぞれ分布する凝灰岩層を通った地下水中のイオンのモル濃度比を、図5には九州地方に分布するシラス層を通った地下水中のイオンのモル濃度比を、図6には四国地方に分布する斑レイ岩層を通った地下水中のイオンのモル濃度比を、図7には九州地方に分布する安山岩層を通った地下水中のイオンのモル濃度比をそれぞれ示す。
【0009】
これらデータを比較したときに、まず特徴的なのは凝灰岩層、斑レイ岩層、そして安山岩層を通った地下水中のイオンのモル濃度比であるが、凝灰岩層を通った地下水は、圧倒的にナトリウムイオンのモル濃度比が高く、80%を超えており、他のデータにこのようなものを見出すことはできない。このことから、ナトリウムイオンのモル濃度比が80%を超えるものが観測された場合に、これは凝灰岩層を通った地下水であると推定することができる。
また、斑レイ岩層を通った地下水は、マグネシウムイオンのモル濃度比がナトリウムイオンのモル濃度比よりも高く、しかも30%を超えた高いモル濃度比として観測され、他にこのようなモル濃度比を示すものがなく、このことから、マグネシウムイオンのモル濃度比が高く、しかもナトリウムイオンのモル濃度比を超えている場合に、これは斑レイ岩層を通った地下水であると推定することができる。
一方、安山岩層を通った地下水は、硫酸イオンのモル濃度比が高く、50%を超えていて、このように高いモル濃度比の硫酸イオンを含む地下水を見出すことができず、このことから、硫酸イオンのモル濃度比が50%を超える高いものが観測された場合に、これは安山岩層を通った地下水であると推定することができる。
【0010】
次に、シラス層を通った地下水は、図5に示すように、ナトリウムイオンのモル濃度比が28%、塩化物イオンのモル濃度比が34%と共に高いものとして観測された。これはシラスが海水成分を多く含んでいるものと推測される。このようなデータは、流紋岩層と泥岩層を通った地下水の一部にもそれぞれ観測されるが、流紋岩層を通った地下水はカルシウムイオンのモル濃度比が20%を超えて観測されているのに対し、シラス層を通った地下水では20%以下であり、これにより区別することができる。また、泥岩層を通った地下水は、ナトリウムイオンと硫酸イオンとのモル濃度比を合算(和)したものが少なくとも50%近い数値を有しているのに対し、シラス層を通った地下水は41%の数値を示しており、これによって区別することができる。
【0011】
一方、泥岩、花コウ岩、流紋岩の各層を通った地下水の判別であるが、泥岩層を通った地下水は、ナトリウムイオンのモル濃度比と硫酸イオンのモル濃度比とを合算した数値が最低でも48%と高い傾向があるのに対し、花コウ岩層を通った地下水は、ナトリウムイオンのモル濃度比と硫酸イオンのモル濃度比とを合算した数値が最高でも45%と低い傾向にあることで区別ができるが、この合算値が45~50%程度である場合には、判別が難しいものの、少なくとも何れか一方の地層を通った地下水であることまでは推定できる。また、流紋岩についてはナトリウムイオンのモル濃度比と硫酸イオンのモル濃度比とを合算した数値が最高でも40%と低く、これによって泥岩と流紋岩との区別をすることができる。最後に、花コウ岩と流紋岩を通った地下水の判別であるが、花コウ岩はカリウムイオンのモル濃度比が最高でも1%と殆ど含まないのに対し、流紋岩は最低でも3%と数%含んでおり、これによって花コウ岩層と流紋岩層とを通った地下水を区別することができる。
なお、地下水中のイオンのモル濃度比の測定は、上記のものだけでなく、さらに各地の代表的な地層を通った多数の地下水についても同様にして地下水中のイオンのモル濃度比を測定しているが、これら測定結果は、何れも上記と同様の傾向が出ていることが確認されている。
【0012】
このように、本発明を実施した場合に、地下水中のイオンのモル濃度比から該地下水が通った地層種類を推定することができ、これによってボーリング調査のような大掛かりな調査が不要になって、簡便な地層種類の判定ができる。
【0013】
そしてこのような判定にあたり、図8に示すように、地下水中のイオン濃度の測定装置1と、該測定装置1で測定したデータを入力する入力部2、該入力したデータに基づいてイオンのモル濃度比を演算する演算部3、地層に特有のイオンのモル濃度比のデータを記憶する記憶部4、該記憶されたデータと前記演算したデータとを比較して入力した測定データの地下水が予め記憶されているどの地層データと対応しているかの判定をする判定部5とを備えたマイクロコンピューター6で構成し、その判定結果を画面、音声または印刷により表示する表示部7を備えた地層種類の推定装置を構成でき、これによって地層種類の判定が自動的にできることになって都合が良い。
そしてこのような推定装置を、携帯用パーソナルコンピューターのようにハンディなものにした場合には、現場に行ってその場で地層種類の推定ができることになって利便性が高いものになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】泥岩層を通った地下水中のイオンのモル濃度比を示すグラフ図である。
【図2】花コウ岩層を通った地下水中のイオンのモル濃度比を示すグラフ図である。
【図3】流紋岩を通った地下水中のイオンのモル濃度比を示すグラフ図である。
【図4】凝灰岩層を通った地下水中のイオンのモル濃度比を示すグラフ図である。
【図5】シラス層を通った地下水中のイオンのモル濃度比を示すグラフ図である。
【図6】斑レイ岩層を通った地下水中のイオンのモル濃度比を示すグラフ図である。
【図7】安山岩層を通った地下水中のイオンのモル濃度比を示すグラフ図である。
【図8】地層種類の推定装置のブロック回路図である。
【符号の説明】
1 測定装置
2 入力部
3 演算部
7 表示部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7