TOP > 国内特許検索 > 鋼矢板併用式直接基礎、及び鋼矢板併用式直接基礎の施工方法 > 明細書

明細書 :鋼矢板併用式直接基礎、及び鋼矢板併用式直接基礎の施工方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3832845号 (P3832845)
公開番号 特開2003-138577 (P2003-138577A)
登録日 平成18年7月28日(2006.7.28)
発行日 平成18年10月11日(2006.10.11)
公開日 平成15年5月14日(2003.5.14)
発明の名称または考案の名称 鋼矢板併用式直接基礎、及び鋼矢板併用式直接基礎の施工方法
国際特許分類 E02D  27/30        (2006.01)
E02D   5/08        (2006.01)
FI E02D 27/30
E02D 5/08
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2001-340214 (P2001-340214)
出願日 平成13年11月6日(2001.11.6)
審査請求日 平成16年5月25日(2004.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】村田 修
【氏名】神田 政幸
【氏名】棚村 史郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100105108、【弁理士】、【氏名又は名称】大川 洋一
審査官 【審査官】高橋 三成
参考文献・文献 特開平10-121463(JP,A)
特開平06-158644(JP,A)
特開2000-352049(JP,A)
特開平07-042169(JP,A)
実開平03-125833(JP,U)
実開昭60-162143(JP,U)
特開平07-279162(JP,A)
調査した分野 E02D 27/30
E02D 5/08
特許請求の範囲 【請求項1】
複数個の略板状の鋼矢板(16)と、平板部(18a)と平板部中央の内面に垂直に接合された嵌合端(18b)と嵌合端(18b)の端に設けられた補強用嵌合部(18c)を有する特殊鋼矢板(18)が互いに嵌合しつつ地盤中に挿入されて形成され断面が略「ロ」字状となる鋼矢板構造体(43)と、
複数個の略板状の鋼矢板(16)と、平板部(19a)と平板部中央の表面と裏面に垂直に接合された2つの嵌合端(19b)と各嵌合端(19b)の端に設けられた2つの補強用嵌合部(19c)を有する特殊鋼矢板(19)が互いに嵌合し全体として断面が略「+」字形となり前記鋼矢板構造体(43)の内部の地盤中に配設され、前記鋼矢板構造体(43)を4つの区画に区分する補強構造体(44)と、
前記鋼矢板構造体(43)によって囲まれた空間の少なくとも上部に形成されるとともに前記鋼矢板構造体(43)及び補強構造体(44)と結合する場所打ちコンクリート製の直接基礎(12)を備え、
上方構造物から加えられる荷重の一部を前記直接基礎(12)により直接に地盤に伝達させるとともに、前記上方構造物から加えられる荷重の残りを前記鋼矢板構造体(43)及び補強構造体(44)からなる構造体により直接に又は摩擦力を介して地盤に伝達させること
を特徴とする鋼矢板併用式直接基礎。
【請求項2】
複数個の略板状の鋼矢板(16)と、平板部(18a)と平板部中央の内面に垂直に接合された嵌合端(18b)と嵌合端(18b)の端に設けられた補強用嵌合部(18c)を有する特殊鋼矢板(18)を互いに嵌合させつつ地盤中に挿入して断面が略「ロ」字状となる鋼矢板構造体(43)を前記地盤中に形成し、
複数個の略板状の鋼矢板(16)と、平板部(19a)と平板部中央の表面と裏面に垂直に接合された2つの嵌合端(19b)と各嵌合端(19b)の端に設けられた2つの補強用嵌合部(19c)を有する特殊鋼矢板(19)を互いに嵌合させ全体として断面が略「+」字形となり、前記鋼矢板構造体(43)を4つの区画に区分する補強構造体(44)を前記鋼矢板構造体(43)の内部の地盤中に配設し、
次いで前記鋼矢板構造体(43)によって囲まれた空間の少なくとも上部を掘削してコンクリート打設用空間を形成し、
次いで前記コンクリート打設用空間の内部にコンクリートを打設した後に硬化させて直接基礎(12)を形成するとともに前記鋼矢板構造体(43)及び補強構造体(44)と前記直接基礎(12)を結合させること
を特徴とする鋼矢板併用式直接基礎の施工方法
【請求項3】
請求項2記載の鋼矢板併用式直接基礎の施工方法において、
前記鋼矢板の前記地盤中への挿入にあたっては、前記地盤中へ既に挿入された鋼矢板に反力を負担させるようにして新たな鋼矢板を圧入すること
を特徴とする鋼矢板併用式直接基礎の施工方法。
【請求項4】
請求項3記載の鋼矢板併用式直接基礎の施工方法において、
前記コンクリート打設用空間の形成のための地盤掘削にあたっては、前記鋼矢板構造体を仮土留め手段として利用すること
を特徴とする鋼矢板併用式直接基礎の施工方法。
【請求項5】
請求項3記載の鋼矢板併用式直接基礎の施工方法において、
前記コンクリート打設用空間の内部へのコンクリート打設にあたっては、前記鋼矢板構造体を側方型枠として利用すること
を特徴とする鋼矢板併用式直接基礎の施工方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物を支持する基礎に関するものであり、直接基礎に鋼矢板を併用した鋼矢板併用式直接基礎、及び鋼矢板併用式直接基礎の施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物や、橋梁等の土木建造物(以下、「構造物」という。)の荷重を地盤に伝達するとともに支持する基礎として、「直接基礎」が用いられている。直接基礎とは、上部の構造物からの荷重を、板状の基礎板から地盤に直接伝達させる形式の基礎をいう。直接基礎には、「フーチング基礎」と「べた基礎」が含まれる。フーチング基礎とは、上部構造の荷重を伝える柱や壁のうちのいくつかを1つの基礎板で支える形式のものである。フーチングは、柱や壁との関係によって、さらにいくつかの種類にわけられる。単一の柱を支持するフーチングは「独立フーチング」と呼ばれる。また、2本の柱、又は3本以上の柱を支えるフーチングは「複合フーチング」と呼ばれる。また、線状に並ぶ多数の柱や、線状に延びる壁を支える帯状のフーチングは「連続フーチング」又は「布基礎」と呼ばれる。一方、べた基礎とは、上部構造の全荷重を単一の基礎板で支える形式のものであり、「マット基礎」とも呼ばれる。
【0003】
上記した直接基礎の基礎板の底面の位置を地表面から計測した深度(根入れ深さ)は、基礎板の最小幅よりも小さく、この根入れ深さは、杭やケーソン等のいわゆる「深い基礎」の場合よりも小さい。したがって、基礎を建設する場合、杭基礎やケーソン基礎等の場合と異なり、設置箇所の土砂を深く掘削したり、地中の深い位置でコンクリート打設等を行って基礎構造体を構築したりする必要はなく、地盤表層の土砂を浅く除去し、現場打ちコンクリート等によりフーチング等の基礎板を形成すればよく、施工が容易であるとともに、建設費用も低コストである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
直接基礎は、地盤のうち、比較的浅い箇所に設置されるものであり、基礎板底面付近の地盤が荷重に対して十分な強度を有していることが必要である。従来の直接基礎は、例えば、地盤の「N値」が30以上の場合に採用されることが多かった。ここに、N値とは、標準貫入試験(JIS A 1219)の方法にのっとり、所定重量のサンプラーチューブを所定高さから自由落下させて地盤に打ち込み、サンプラーチューブの貫入した深さが所定値(例えば30cm)に達するために要する打撃数(回数)の値である。このN値は、その値が大きいほどその箇所の地盤が強固であることを示し、その値が小さいほどその箇所の地盤が軟弱であることを示す。
【0005】
しかしながら、直接基礎を設置可能なN値の下限値30は、かなり大きな値であり、そのような強固な地盤の箇所は、比較的少ない。我が国の沖積土層等を考えると、N値が30未満の地盤においても直接基礎が採用可能であれば、基礎工事の施工が容易となり、建設費用の低減をはかることができる、と考えられる。
【0006】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の解決しようとする課題は、N値30未満の地盤においても採用可能な直接基礎、及びその施工方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る鋼矢板併用式直接基礎は、
複数個の略板状の鋼矢板(16)と、平板部(18a)と平板部中央の内面に垂直に接合された嵌合端(18b)と嵌合端(18b)の端に設けられた補強用嵌合部(18c)を有する特殊鋼矢板(18)が互いに嵌合しつつ地盤中に挿入されて形成され断面が略「ロ」字状となる鋼矢板構造体(43)と、
複数個の略板状の鋼矢板(16)と、平板部(19a)と平板部中央の表面と裏面に垂直に接合された2つの嵌合端(19b)と各嵌合端(19b)の端に設けられた2つの補強用嵌合部(19c)を有する特殊鋼矢板(19)が互いに嵌合し全体として断面が略「+」字形となり前記鋼矢板構造体(43)の内部の地盤中に配設され、前記鋼矢板構造体(43)を4つの区画に区分する補強構造体(44)と、
前記鋼矢板構造体(43)によって囲まれた空間の少なくとも上部に形成されるとともに前記鋼矢板構造体(43)及び補強構造体(44)と結合する場所打ちコンクリート製の直接基礎(12)を備え、
上方構造物から加えられる荷重の一部を前記直接基礎(12)により直接に地盤に伝達させるとともに、前記上方構造物から加えられる荷重の残りを前記鋼矢板構造体(43)及び補強構造体(44)からなる構造体により直接に又は摩擦力を介して地盤に伝達させること
を特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る鋼矢板併用式直接基礎の施工方法は、
複数個の略板状の鋼矢板(16)と、平板部(18a)と平板部中央の内面に垂直に接合された嵌合端(18b)と嵌合端(18b)の端に設けられた補強用嵌合部(18c)を有する特殊鋼矢板(18)を互いに嵌合させつつ地盤中に挿入して断面が略「ロ」字状となる鋼矢板構造体(43)を前記地盤中に形成し、
複数個の略板状の鋼矢板(16)と、平板部(19a)と平板部中央の表面と裏面に垂直に接合された2つの嵌合端(19b)と各嵌合端(19b)の端に設けられた2つの補強用嵌合部(19c)を有する特殊鋼矢板(19)を互いに嵌合させ全体として断面が略「+」字形となり、前記鋼矢板構造体(43)を4つの区画に区分する補強構造体(44)を前記鋼矢板構造体(43)の内部の地盤中に配設し、
次いで前記鋼矢板構造体(43)によって囲まれた空間の少なくとも上部を掘削してコンクリート打設用空間を形成し、
次いで前記コンクリート打設用空間の内部にコンクリートを打設した後に硬化させて直接基礎(12)を形成するとともに前記鋼矢板構造体(43)及び補強構造体(44)と前記直接基礎(12)を結合させること
を特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る鋼矢板併用式直接基礎の施工方法は、
請求項2記載の鋼矢板併用式直接基礎の施工方法において、
前記鋼矢板の前記地盤中への挿入にあたっては、前記地盤中へ既に挿入された鋼矢板に反力を負担させるようにして新たな鋼矢板を圧入すること
を特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る鋼矢板併用式直接基礎の施工方法は、
請求項3記載の鋼矢板併用式直接基礎の施工方法において、
前記コンクリート打設用空間の形成のための地盤掘削にあたっては、前記鋼矢板構造体を仮土留め手段として利用すること
を特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に係る鋼矢板併用式直接基礎の施工方法は、
請求項3記載の鋼矢板併用式直接基礎の施工方法において、
前記コンクリート打設用空間の内部へのコンクリート打設にあたっては、前記鋼矢板構造体を側方型枠として利用すること
を特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態である鋼矢板併用式直接基礎の構成を示す図であり、図1(A)は側断面図を、図1(B)は上面図を、それぞれ示している。また、図2は、図1に示す鋼矢板併用式直接基礎の鋼矢板構造体のさらに詳細な構成を示す図である。
【0019】
図1に示すように、この鋼矢板併用式直接基礎10Aは、フーチング12と鋼矢板構造体13を有して構成されている。
【0020】
フーチング12は、地盤Gを掘り下げた凹部の底部に砂15を敷設し、砂15の上に栗石14を敷設した上に設置されたコンクリート製の基礎板である。フーチング12の上部には、橋脚11が接続している。橋脚11は、橋梁等(図示せず)の構造物を支持している。なお、栗石14の上面に、貧配合のならしコンクリートを打設し、その上にフーチング12を設置するようにしてもよい。また、栗石14の層を設けず、砂15のみを敷設するようにしてもよい。
【0021】
鋼矢板構造体13は、図1に示すように、複数の鋼矢板から構成された角筒状(四角形断面の筒状)の構造体である。フーチング12は、鋼矢板構造体13に取り囲まれるとともに、鋼矢板構造体13の上部と接合している。また、鋼矢板構造体13の下端は、地盤Gの下部にある支持層Sに貫入している。
【0022】
図2は、鋼矢板構造体13の構成を示したものであり、図2(A)は、図1(B)に示す鋼矢板構造体13のさらに詳細な構成を示す上面図である。図2(A)に示すように、鋼矢板構造体13は、複数個の鋼矢板16、16´、16″などが、互いに嵌合することにより、四角形断面の筒のような構造体を形成したものである。
【0023】
鋼矢板、例えば16は、鋼等からなり、図2(B)に示す断面形状を有する略板状の部材であり、「シートパイル」とも呼ばれる。図2(B)に示すように、鋼矢板16は、平板部16aと、平板部16aの両端縁にそれぞれ形成された嵌合端16bを有している。嵌合端16bは、略「C」字状の断面を有しており、内部に嵌合空間16cが形成されている。鋼矢板16は、嵌合端16bが、隣接する他の鋼矢板の嵌合端の嵌合空間16cと嵌合することにより、図2(A)に示すように互いに接合し、所望の断面、例えば図1(B)に示す「ロ」字状の断面などを有する鋼矢板構造体13を作成することができる。
【0024】
次に、上記した鋼矢板併用式直接基礎10Aを施工する方法について説明する。
【0025】
まず、図1(A)に示す地盤Gの中に、図2(B)に示すような鋼矢板16を地表から挿入し、その先端が支持層Sの所定深さに入るまで挿入する。この場合には、ディーゼルハンマー等の打ち込み機械を用いて鋼矢板を地盤中に打ち込んでもよい。また、油圧機構等を有する圧入機械を用いて鋼矢板を地盤中に押し込んでもよい。特に、油圧等により鋼矢板を圧入する方法の場合には、すでに地盤中に圧入した鋼矢板に、圧入時の反力を負担させることが可能であり、それにより、鋼矢板圧入用の建設機械の圧入部の高さを小さくすることが可能となる。
【0026】
上記のようにして、ある鋼矢板16を地盤G内に挿入した後、その鋼矢板の嵌合端16bに、他の新たな鋼矢板の嵌合端を嵌合させるようにして、隣接する箇所の地盤中に他の鋼矢板を挿入し、同様にしてその先端を支持層Sの内部に到達させる。この作業を繰り返し、最後の鋼矢板の嵌合端を、最初の鋼矢板の他方の嵌合端と嵌合させることにより、図1(B)に示す「ロ」字状に閉合した断面などを有する鋼矢板構造体13を作成することができる。
【0027】
次に、鋼矢板構造体13で取り囲まれた部分の地盤Gを地表から掘削し、所定の深さまで掘り下げる。掘削により鋼矢板構造体13の内部に形成された空間は、特許請求の範囲におけるコンクリート打設用空間に相当する。この際、閉合した鋼矢板構造体13は、土留め構造の機能を発揮するため、特に他の土留め手段を用いる必要はない。
【0028】
次に、掘り下げた地盤の底部上面に、砂15を層状に敷設して締め固め、さらに砂15の上に栗石14を層状に敷設して締め固める。また、この場合、栗石14の上面に、貧配合のならしコンクリートを打設してもよい。また、栗石14の層を設けず、砂15のみを敷設するようにしてもよい。
【0029】
次に、フーチング用の鉄筋を配置し、所定の構成となるように組み立てる。また、フーチング用の鉄筋には、その後に施工される橋脚のための鉄筋に応力を伝達するための鉄筋も配置される。
【0030】
次に、コンクリート打設用空間の内部に場所打ちコンクリートを打設する。この際、コンクリート打設用空間の周囲を取り囲む鋼矢板構造体13は、場所打ちコンクリートの側方のコンクリート型枠の機能を果たす。その後、場所打ちコンクリートが硬化すると、フーチング12が形成される。
【0031】
次に、フーチング12の上に、橋脚用の鉄筋を配置し、所定の構成となるように組み立てる。また、これらの鉄筋を取り囲むようにして、橋脚用のコンクリート型枠が配設される。次に、橋脚用コンクリート型枠の内部に場所打ちコンクリートを打設する。その後、場所打ちコンクリートが硬化すると、橋脚11が形成される。そして、橋脚用コンクリート型枠をてっ去する。
【0032】
上記のような構造及び施工方法により、第1実施形態の鋼矢板併用式直接基礎10Aは、以下のような作用、効果を有している。
【0033】
a)コンクリート製の直接基礎であるフーチング12と、複数の鋼矢板による鋼矢板構造体13との複合構造によって構成された基礎であるため、上方の橋脚等の構造物から加えられる荷重のうち、一部はフーチング12から栗石14及び砂15を経て直接に地盤G´に伝達される。また、同時に、上方構造物から加えられる荷重の残りは、フーチング12の側部から鋼矢板構造体13に伝達され、鋼矢板の先端から支持層Sに伝達される。また、鋼矢板の表面と地盤との摩擦力を介して、上方構造物からの荷重を周辺地盤に間接的に伝達する効果も期待できる。このため、従来の直接基礎よりも大きな上方荷重を支持させることが可能であり、N値が30未満の地盤においても採用することができる、という利点がある。
【0034】
b)基礎としての地盤掘削量は、フーチング12を建設するためのコンクリート打設用空間の分だけでよい。したがって、これは、フーチングのみの直接基礎の場合と同様であり、杭やケーソンなどの深い基礎に比べて地盤掘削量が非常に少ないため、基礎工事の費用を大幅に低減することが可能となる。また、工事期間についても、直接基礎のみの場合に比べ、鋼矢板構造体13の施工期間の分だけ延びることになるが、その期間はそれほど長くなく、杭等の深い基礎に比べれば、かなり短い工期で済む、という利点がある。
【0035】
c)鋼矢板併用式直接基礎を施工するためには、鋼矢板構造体を施工し、フーチング等の直接基礎を施工する必要がある。このうち、鋼矢板の地盤への挿入については、油圧等による圧入方式を採用し、隣接する既設鋼矢板に反力を負担させるようにすれば、鋼矢板上端に取り付ける圧入装置部分の高さを低く抑えることができる。また、直接基礎のための地盤掘削は小規模であり、小型の掘削機械や人力等による地盤掘削が可能である。これらのことから、鋼矢板併用式直接基礎は、基礎の建設場所が狭隘な場合にも容易に行うことが可能である。したがって、既設の高架橋等の基礎の取り替え工事の場合などにも、応用可能である。
【0036】
d)鋼矢板構造体13の上部は、コンクリート打設用空間を形成するために地盤を掘削する場合の仮土留め部材としての機能を果たすことができる。また、鋼矢板構造体13の上部は、フーチング12のための場所打ちコンクリートを打設する場合の側方のコンクリート型枠としての機能を果たすことができる。したがって、その分だけ仮設工事費を低減することができ、工事費全体のコストダウンに寄与することができる。
【0037】
図2(C)は、第1実施形態の鋼矢板併用式直接基礎の変化例に用いる他の構成の鋼矢板の例を示した上面図である。図2(C)に示すように、この鋼矢板17は、本体部17aと、本体部17aの両端縁にそれぞれ形成された嵌合端17bを有している。本体部17aは、平板部と、その両端縁にそれぞれ接続する傾斜した平板部を有しており、全体として略台形状の断面となっている。嵌合端17bは、略「C」字状の断面を有しており、内部に嵌合空間が形成されている。鋼矢板17は、嵌合端17bが、隣接する他の鋼矢板17´の嵌合端の嵌合空間と嵌合することにより、図2(C)に示すように互いに接合し、所望の断面、例えば「ロ」字状の断面などを有する鋼矢板構造体を作成することができる。この場合、鋼矢板構造体の辺は、図2(A)の場合のような直線状ではなく波状となる。
【0038】
なお、図2(B)に示す鋼矢板16、又は図2(C)に示す鋼矢板17、17´等は、本設構造物として利用される。このため、錆等による断面の減少を防止する必要がある。このような対策として、鋼矢板表面に何らかの防錆処理、例えば溶融亜鉛メッキ処理などを施すことが挙げられる。また、長期間経過し、錆が発生しても、所定の耐力を発揮させることができるように、鋼矢板の厚みを、あらかじめ大きな値としておく、等の対策も有効である。
【0039】
また、鋼矢板構造体の強度を高めるため、鋼矢板の嵌合端どうしが嵌合している場合の嵌合空間の内部に、流動体状で自硬性を有する固化材、例えば無収縮モルタル、グラウトなどを注入してもよい。
【0040】
(2)第2実施形態
本発明は、他の構成によっても実現可能である。次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、本発明の第2実施形態である鋼矢板併用式直接基礎の構成を示す図である。
【0041】
図3に示すように、この鋼矢板併用式直接基礎10Bは、フーチング12と鋼矢板構造体23を有して構成されている。第2実施形態の鋼矢板併用式直接基礎10Bが第1実施形態の鋼矢板併用式直接基礎10Aと異なる点は、鋼矢板構造体23の内側面に伝力部材24が設けられている点であり、他の部分の構成及び作用については、第1実施形態の場合と同様である。また鋼矢板構造体23を構成する鋼矢板は、第1実施形態で用いられているものと同様である。
【0042】
伝力部材24は、鋼材等からなり、鋼矢板構造体23の内側面に、溶接等によって接合される。
【0043】
このように構成することにより、第2実施形態の鋼矢板併用式直接基礎10Bは、第1実施形態の利点に加え、下記の利点を有している。
【0044】
e)伝力部材24は、場所打ちコンクリートの内部に埋設される状態となり、フーチングから鋼矢板へ荷重を円滑に伝達させる効果を有する。
【0045】
なお、上記した伝力部材24のかわりに、フーチング用の鉄筋を配置する際に、フーチング用の主鉄筋又は配力鉄筋の一部又は全部を、鋼矢板構造体13又は23の内面に、溶接等により接合するようにしてもよい。
【0046】
(3)第3実施形態
本発明は、さらに他の構成によっても実現可能である。次に、本発明の第3実施形態について説明する。図4は、本発明の第3実施形態である鋼矢板併用式直接基礎の構成を示す図である。
【0047】
図4に示すように、この鋼矢板併用式直接基礎10Cは、フーチング12と鋼矢板構造体33を有して構成されている。この第3実施形態の鋼矢板併用式直接基礎10Cが第1実施形態の鋼矢板併用式直接基礎10Aと異なる点は、鋼矢板構造体33の上端部が33aフーチング12の底部に挿入されている点であり、他の部分の構成及び作用については、第1実施形態の場合と同様である。また鋼矢板構造体33を構成する鋼矢板は、第1実施形態で用いられているものと同様である。
【0048】
このように構成の第3実施形態の鋼矢板併用式直接基礎10Cも、第1実施形態の場合とほぼ同様の利点を有している。したがって、鋼矢板併用式直接基礎に用いられる直接基礎は、第1実施形態のように、鋼矢板構造体によって囲まれた空間の上部の内部に形成される必要はなく、鋼矢板構造体によって囲まれた空間の少なくとも上部に形成され鋼矢板構造体と結合するような構成であればよい。
【0049】
(4)第4実施形態
本発明は、さらに他の構成によっても実現可能である。次に、本発明の第4実施形態について説明する。図5は、本発明の第4実施形態である鋼矢板併用式直接基礎の構成を示す図である。
【0050】
第4実施形態の鋼矢板併用式直接基礎は、上記と同様のフーチング(図示せず)と、鋼矢板構造体43を有して構成されている。第4実施形態の鋼矢板併用式直接基礎が第1実施形態の鋼矢板併用式直接基礎10Aと異なる点は、異なる構造の鋼矢板構造体43を有する点であり、他の部分の構成及び作用については、第1実施形態の場合と同様である。
【0051】
第4実施形態の鋼矢板構造体43は、断面が略「ロ」字状の構造体であり、その内部の地盤中に補強構造体44が配設されている。補強構造体44は、図5(A)に示すように、断面形状が略「+」字形の構造体である。このような構成により、図5(A)に示すように、鋼矢板構造体43は、補強構造体44により、4個の区画に区分されている。
【0052】
鋼矢板構造体43は、複数個の鋼矢板(例えば16)が、互いに嵌合することにより、四角形断面の筒のような構造体を形成したものである。鋼矢板構造体43の各辺の中央付近には、図5(B)の補強構造体取付部45に示すように、特殊鋼矢板18が配設される。この特殊鋼矢板18は、図5(B)に示すような平板部18aと嵌合端18bを有する鋼矢板の平板部18aの中央付近の内面に補強用嵌合部18cが平板部18aに対して垂直に接合されたものである。
【0053】
また、補強構造体44は、複数個の鋼矢板(例えば16)が、互いに嵌合することにより、「+」字状断面の構造体を形成したものである。補強構造体44の補強構造体中央部46には、図5(C)に示すように、特殊鋼矢板19が配設される。この特殊鋼矢板19は、図5(C)に示すような平板部19aと嵌合端19bを有する鋼矢板の平板部19aの中央の表面及び裏面に、2つの補強用嵌合部19cが平板部19aに対して垂直となるようにそれぞれ接合されたものである。
【0054】
このように構成することにより、第4実施形態の鋼矢板併用式直接基礎は、第1実施形態の利点に加え、下記の利点を有している。
【0055】
f)鋼矢板構造体43の各辺の中央箇所が、補強構造体44により連結され、補強される。これにより、鋼矢板構造体そのものの強度が増加する。また、フーチングの内部に補強構造体が埋設されて鉄骨コンクリート構造となるため、フーチング自体も強化される。
【0056】
上記した各実施形態において、フーチング12は、特許請求の範囲における直接基礎に相当している。
【0057】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0058】
例えば、上記各実施形態においては、鋼矢板併用式直接基礎のうちの直接基礎として1本の柱を支える独立フーチングを例に挙げて説明したが、本発明はこの例には限定されず、他の構成の直接基礎、例えば、複合フーチングあるいは連続フーチング等の他の種類のフーチング基礎、べた基礎、布基礎などであってもよい。
【0059】
また、上記各実施形態においては、鋼矢板併用式直接基礎は、橋りょう等の橋脚11の基礎として用いられる例について説明したが、他の構造物、例えば、ラーメン高架橋の基礎についても適用可能である。図示はしていないが、ラーメン高架橋では、柱のうち、進路方向に対して直角な方向に2本、場合によっては3本以上並べて配置される柱が、地下において梁状部材(以下、「地中梁」という。)で連結される。この地中梁は、複数本の柱を支えるフーチングの機能を果たしており、上述した複合フーチングに相当する。本発明は、このような場合にも適用可能であり、鋼矢板を地盤中に挿入して形成した鋼矢板構造体の内部を掘削した後に場所打ちコンクリートを施工して地中梁を形成することにより、鋼矢板と地中梁の複合構造を構成することができる。
【0060】
また、第1実施形態のように、鋼矢板の先端を支持層S中に挿入させる方式のほか、鋼矢板を支持層Sには挿入させないが鋼矢板の表面と周囲の地盤との摩擦力を介して荷重を伝達するように構成してもよい。
【0061】
また、鋼矢板構造体の断面は、「ロ」字状だけでなく、多角形状、円や楕円等の閉曲線状であってもよい。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複数個の鋼矢板が互いに嵌合しつつ地盤中に挿入されて形成され断面が多角形状又は閉曲線状となる鋼矢板構造体と、鋼矢板構造体によって囲まれた空間の少なくとも上部に形成されるとともに鋼矢板構造体と結合する場所打ちコンクリート製の直接基礎を備えるようにしたので、上方構造物から加えられる荷重の一部を直接基礎により直接に地盤に伝達させるとともに、上方構造物から加えられる荷重の残りを鋼矢板構造体により直接に又は摩擦力を介して地盤に伝達させることができ、従来の直接基礎よりも大きな上方荷重を支持させることが可能であり、N値が30未満の地盤においても採用することができる、という利点がある。
【0063】
また、基礎としての地盤掘削量は、フーチング等の直接基礎を建設するためのコンクリート打設用空間の分だけでよい。したがって、これは、直接基礎のみの場合と同様であり、杭やケーソンなどの深い基礎に比べて地盤掘削量が非常に少ないため、基礎工事の費用を大幅に低減することが可能となる。また、工事期間についても、直接基礎のみの場合に比べ、鋼矢板構造体の施工期間の分だけ延びることになるが、その期間はそれほど長くなく、杭等の深い基礎に比べれば、かなり短い工期で済む、という利点がある。
【0064】
また、鋼矢板併用式直接基礎を施工するためには、鋼矢板構造体を施工し、フーチング等の直接基礎を施工する必要がある。このうち、鋼矢板の地盤への挿入については、油圧等による圧入方式を採用し、隣接する既設鋼矢板に反力を負担させるようにすれば、鋼矢板上端に取り付ける圧入装置部分の高さを低く抑えることができる。また、直接基礎のための地盤掘削は小規模であり、小型の掘削機械や人力等による地盤掘削が可能である。これらのことから、鋼矢板併用式直接基礎は、基礎の建設場所が狭隘な場合にも容易に行うことが可能である。したがって、既設の高架橋等の基礎の取り替え工事の場合などにも、応用可能である。
【0065】
さらに、鋼矢板構造体の上部は、コンクリート打設用空間を形成するために地盤を掘削する場合の仮土留め部材としての機能を果たすことができる。また、鋼矢板構造体の上部は、直接基礎のための場所打ちコンクリートを打設する場合の側方のコンクリート型枠としての機能を果たすことができる。したがって、その分だけ仮設工事費を低減することができ、工事費全体のコストダウンに寄与することができる、という利点も有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である鋼矢板併用式直接基礎の構成を示す図である。
【図2】図1に示す鋼矢板併用式直接基礎の鋼矢板構造体のさらに詳細な構成を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態である鋼矢板併用式直接基礎の構成を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態である鋼矢板併用式直接基礎の構成を示す図である。
【図5】本発明の第4実施形態である鋼矢板併用式直接基礎の構成を示す図である。
【符号の説明】
10A~10C 鋼矢板併用式直接基礎
11 橋脚
12 フーチング
13 鋼矢板構造体
14 栗石
15 砂
16、16´、16″ 鋼矢板
16a 平板部
16b 嵌合端
16c 嵌合空間
17、17´ 鋼矢板
17a 本体部
17b 嵌合端
18 特殊鋼矢板
18a 平板部
18b 嵌合端
18c 補強用嵌合部
19 特殊鋼矢板
19a 平板部
19b 嵌合端
19c 補強用嵌合部
23 鋼矢板構造体
24 伝力部材
33 鋼矢板構造体
33a 上端部
43 鋼矢板構造体
44 補強構造体
45 補強構造体取付部
46 補強構造体中央部
47 区画
G、G´ 地盤
S 支持層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4