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明細書 :損傷検出装置及び損傷検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4904489号 (P4904489)
公開番号 特開2007-205801 (P2007-205801A)
登録日 平成24年1月20日(2012.1.20)
発行日 平成24年3月28日(2012.3.28)
公開日 平成19年8月16日(2007.8.16)
発明の名称または考案の名称 損傷検出装置及び損傷検出方法
国際特許分類 G01N  27/20        (2006.01)
FI G01N 27/20 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 16
出願番号 特願2006-023447 (P2006-023447)
出願日 平成18年1月31日(2006.1.31)
審査請求日 平成20年11月28日(2008.11.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】多田 直哉
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 特開平07-116142(JP,A)
特開平01-110248(JP,A)
特開昭61-292546(JP,A)
多田直哉,多端子型直流電位差法による半楕円表面き裂の同定に関する実験的検討,日本機械学会2003年度年次大会講演論文集(I),2003年,pp.223-224
多田直哉,電位差法による欠陥および材質の非破壊評価,非破壊検査,2002年,Vol.51 No.5,pp.258-264
調査した分野 G01N 27/00-27/24
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
検査対象である被検体に生じた損傷を検出する損傷検出装置であって、
前記被検体における検査領域を所定の通電状態とするために通電する通電手段と、
前記検査領域における所定間隔での電位差を測定する電圧測定手段と、
この電圧測定手段で得られた複数の電位差データを記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された電位差データに基づいて前記損傷の有無及びその形状を解析する解析手段と
を備え、
前記解析手段では、
前記損傷は前記被検体の背面側に形成された半楕円状き裂として、この半楕円状き裂の中心位置のy座標、中心位置のz座標、き裂長さ、き裂深さ、表面角度および奥行き角度を表す6つのパラメータを設定し、
前記被検体を表面同士で互いに当接させて二重体とすると共にこの二重体を構成するそれぞれの前記被検体の背面に更に前記被検体の背面を当接させて四重体とし、前記二重体を構成するそれぞれの前記被検体の背面に形成された前記半楕円状き裂と、前記四重体とする際に更に当接させたそれぞれの前記被検体の背面に形成された前記半楕円状き裂とを連続させることにより、前記四重体に楕円き裂が形成されているものと想定し、前記パラメータに基づいて前記電位差を測定する各端子位置における電位を計算し、
前記通電する方向に隣り合う端子対を構成する2つの端子位置における電位をφE1,φE2、前記き裂長さcで無次元化した前記2つの端子位置のz座標をZ、Z、遠方における電界の強さをE、前記損傷が存在することによる電位差増分をΔV、前記損傷が存在しない場合の電位差をVとして、
【数1】
JP0004904489B2_000013t.gif
により前記端子対間の無次元化電位差増分ΔV/Vを計算し、前記パラメータを変更しながら評価式
【数2】
JP0004904489B2_000014t.gif
((ΔV/VC+は計算値、(ΔV/VM+は測定値、jは端子対番号を表す。)を演算することにより、前記パラメータの最尤推定値を特定することを特徴とする損傷検出装置。
【請求項2】
前記損傷として前記被検体の薄肉化による減肉が更に存在する場合、前記パラメータに前記被検体の厚みを表すパラメータを加えて前記評価式を演算することにより前記パラメータの最尤推定値を特定し、前記被検体の減肉量を算出することを特徴とする請求項1記載の損傷検出装置。
【請求項3】
検査対象である被検体に生じた損傷を検出する損傷検出方法であって、
前記被検体における検査領域に所定の通電を行いながら前記検査領域における所定間隔での電位差を複数測定するステップと、
前記損傷は前記被検体の背面側に形成された半楕円状き裂として、この半楕円状き裂の中心位置のy座標、中心位置のz座標、き裂長さ、き裂深さ、表面角度および奥行き角度を表す6つのパラメータを設定するステップと、
前記被検体を表面同士で互いに当接させて二重体とすると共にこの二重体を構成するそれぞれの前記被検体の背面に更に前記被検体の背面を当接させて四重体とし、前記二重体を構成するそれぞれの前記被検体の背面に形成された前記半楕円状き裂と、前記四重体とする際に更に当接させたそれぞれの前記被検体の背面に形成された前記半楕円状き裂とを連続させることにより、前記四重体に楕円き裂が形成されているものと想定し、前記パラメータに基づいて前記電位差を測定する各端子位置における電位を計算するステップと、
前記通電する方向に隣り合う端子対を構成する2つの端子位置における電位をφE1,φE2、前記き裂長さcで無次元化した前記2つの端子位置のz座標をZ、Z、遠方における電界の強さをE、前記損傷が存在することによる電位差増分をΔV、前記損傷が存在しない場合の電位差をVとして、
【数3】
JP0004904489B2_000015t.gif
により前記端子対間の無次元化電位差増分ΔV/Vを計算し、前記パラメータを変更しながら評価式
【数4】
JP0004904489B2_000016t.gif
((ΔV/VC+は計算値、(ΔV/VM+は測定値、jは端子対番号を表す。)を演算することにより、前記パラメータの最尤推定値を特定するステップと
を含むことを特徴とする損傷検出方法。
【請求項4】
前記損傷として前記被検体の薄肉化による減肉が更に存在する場合、前記パラメータに前記被検体の厚みを表すパラメータを加えて前記評価式を演算することにより前記パラメータの最尤推定値を特定し、前記被検体の減肉量を算出するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の損傷検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷検出装置及び損傷検出方法に関するものであり、特に、検査対象である被検体に直流電流を通電しながら所要の領域の電位差を測定することによって被検体に生じたき裂や減肉などの損傷を検出する損傷検出装置及び損傷検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非破壊検査技術の一つとして、検査対象の構造物である被検体に直流電流を通電しながら被検体表面における電位差分布を計測して、その電位差分布から被検体内のき裂の有無や、き裂の状態などの損傷を間接的に検出する直流電位差法による検査技術が知られている。
【0003】
昨今では、この直流電位差法を用いて、被検体内に埋没したき裂、あるいは表面に露出したき裂などの損傷を、任意のアスペクト比と傾きをもつ三次元で定量化可能とした非破壊検査方法も提案されている。
【0004】
すなわち、はじめに被検体に所定の電流を通電して所定位置の電位差の値を取得し、次いで、有限要素法などの解析手段を用いて検出対象となる仮想き裂などの損傷の形状を設定し、取得した電位差の値に基づいて計算を行うことにより、損傷の形状を特定するものである(例えば、特許文献1参照。)。

【特許文献1】特開平06-109684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような有限要素法などの従来の計算方法では計算に多大な時間を要するために、損傷の初期値としての形状を様々に異ならせて計算することが現実的には不可能であった。
【0006】
計算速度を向上させる方法としては、計算機自体の能力の向上を図る方法もあるが、計算機自体の能力を向上させた場合には、計算機のコストが高騰することとなり現実的ではなかった。
【0007】
本発明者はこのような現状に鑑み、より簡便に計算する計算方法を開発すべく研究を行い、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の損傷検出装置では、検査対象である被検体に生じた損傷を検出する損傷検出装置であって、被検体における検査領域を所定の通電状態とするために通電する通電手段と、検査領域における所定間隔での電位差を測定する電圧測定手段と、この電圧測定手段で得られた複数の電位差データを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された電位差データに基づいて損傷の有無及びその形状を解析する解析手段とを備え、解析手段では、損傷は被検体の背面側に形成された半楕円状き裂として、この半楕円状き裂の中心位置のy座標、中心位置のz座標、き裂長さ、き裂深さ、表面角度および奥行き角度を表す6つのパラメータを設定し、被検体を表面同士で互いに当接させて二重体とすると共にこの二重体を構成するそれぞれの被検体の背面に更に被検体の背面を当接させて四重体とし、二重体を構成するそれぞれの被検体の背面に形成された半楕円状き裂と、四重体とする際に更に当接させたそれぞれの被検体の背面に形成された半楕円状き裂とを連続させることにより、四重体に楕円き裂が形成されているものと想定し、パラメータに基づいて電位差を測定する各端子位置における電位を計算し、通電する方向に隣り合う端子対を構成する2つの端子位置における電位をφE1,φE2、き裂長さcで無次元化した2つの端子位置のz座標をZ、Z、遠方における電界の強さをE、損傷が存在することによる電位差増分をΔV、損傷が存在しない場合の電位差をVとして、
【数1】
JP0004904489B2_000002t.gif
により端子対間の無次元化電位差増分ΔV/Vを計算し、パラメータを変更しながら評価式
【数2】
JP0004904489B2_000003t.gif
((ΔV/VC+は計算値、(ΔV/VM+は測定値、jは端子対番号を表す。)を演算することにより、パラメータの最尤推定値を特定することとした。
【0009】
さらに、本発明の損傷検出装置では、損傷として被検体の薄肉化による減肉が更に存在する場合、パラメータに被検体の厚みを表すパラメータを加えて評価式を演算することによりパラメータの最尤推定値を特定し、被検体の減肉量を算出することとした。
【0010】
また、本発明の損傷検出方法では、検査対象である被検体に生じた損傷を検出する損傷検出方法であって、被検体における検査領域に所定の通電を行いながら検査領域における所定間隔での電位差を複数測定するステップと損傷は被検体の背面側に形成された半楕円状き裂として、この半楕円状き裂の中心位置のy座標、中心位置のz座標、き裂長さ、き裂深さ、表面角度および奥行き角度を表す6つのパラメータを設定するステップと、被検体を表面同士で互いに当接させて二重体とすると共にこの二重体を構成するそれぞれの被検体の背面に更に被検体の背面を当接させて四重体とし、二重体を構成するそれぞれの被検体の背面に形成された半楕円状き裂と、四重体とする際に更に当接させたそれぞれの被検体の背面に形成された半楕円状き裂とを連続させることにより、四重体に楕円き裂が形成されているものと想定し、パラメータに基づいて電位差を測定する各端子位置における電位を計算するステップと、通電する方向に隣り合う端子対を構成する2つの端子位置における電位をφE1,φE2、き裂長さcで無次元化した2つの端子位置のz座標をZ、Z、遠方における電界の強さをE、損傷が存在することによる電位差増分をΔV、損傷が存在しない場合の電位差をVとして、
【数3】
JP0004904489B2_000004t.gif
により端子対間の無次元化電位差増分ΔV/Vを計算し、パラメータを変更しながら評価式
【数4】
JP0004904489B2_000005t.gif
((ΔV/VC+は計算値、(ΔV/VM+は測定値、jは端子対番号を表す。)を演算することにより、パラメータの最尤推定値を特定するステップとを含むこととした。さらに、本発明の損傷検出方法では、損傷として被検体の薄肉化による減肉が更に存在する場合、パラメータに被検体の厚みを表すパラメータを加えて評価式を演算することによりパラメータの最尤推定値を特定し、被検体の減肉量を算出するステップを含むこととした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の損傷検出装置では、検査対象である被検体に生じた損傷を検出する損傷検出装置であって、被検体における検査領域を所定の通電状態とするために通電する通電手段と、検査領域における所定間隔での電位差を測定する電圧測定手段と、この電圧測定手段で得られた複数の電位差データを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された電位差データに基づいて損傷の有無及びその形状を解析する解析手段とを備え、解析手段では、損傷は被検体の背面側に形成された半楕円状き裂として、この半楕円状き裂の中心位置のy座標、中心位置のz座標、き裂長さ、き裂深さ、表面角度および奥行き角度を表す6つのパラメータを設定し、被検体を表面同士で互いに当接させて二重体とすると共にこの二重体を構成するそれぞれの被検体の背面に更に被検体の背面を当接させて四重体とし、二重体を構成するそれぞれの被検体の背面に形成された半楕円状き裂と、四重体とする際に更に当接させたそれぞれの被検体の背面に形成された半楕円状き裂とを連続させることにより、四重体に楕円き裂が形成されているものと想定し、パラメータに基づいて電位差を測定する各端子位置における電位を計算し、通電する方向に隣り合う端子対を構成する2つの端子位置における電位をφE1,φE2、き裂長さcで無次元化した2つの端子位置のz座標をZ、Z、遠方における電界の強さをE、損傷が存在することによる電位差増分をΔV、損傷が存在しない場合の電位差をVとして、
【数5】
JP0004904489B2_000006t.gif
により端子対間の無次元化電位差増分ΔV/Vを計算し、パラメータを変更しながら評価式
【数6】
JP0004904489B2_000007t.gif
((ΔV/VC+は計算値、(ΔV/VM+は測定値、jは端子対番号を表す。)を演算することにより、パラメータの最尤推定値を特定することとしたことによって、解析手段での処理時間を大きく削減することができ、極めて短時間で損傷の有無及びその形状を解析可能な損傷検出装置を提供できる。
【0012】
さらに、本発明の損傷検出装置では、損傷として被検体の薄肉化による減肉が更に存在する場合、パラメータに被検体の厚みを表すパラメータを加えて評価式を演算することによりパラメータの最尤推定値を特定し、被検体の減肉量を算出することによって、解析手段での処理時間を大きく削減することができる。
【0013】
また、本発明の損傷検出方法では、検査対象である被検体に生じた損傷を検出する損傷検出方法であって、被検体における検査領域に所定の通電を行いながら検査領域における所定間隔での電位差を複数測定するステップと、損傷は被検体の背面側に形成された半楕円状き裂として、この半楕円状き裂の中心位置のy座標、中心位置のz座標、き裂長さ、き裂深さ、表面角度および奥行き角度を表す6つのパラメータを設定するステップと、被検体を表面同士で互いに当接させて二重体とすると共にこの二重体を構成するそれぞれの被検体の背面に更に被検体の背面を当接させて四重体とし、二重体を構成するそれぞれの被検体の背面に形成された半楕円状き裂と、四重体とする際に更に当接させたそれぞれの被検体の背面に形成された半楕円状き裂とを連続させることにより、四重体に楕円き裂が形成されているものと想定し、パラメータに基づいて電位差を測定する各端子位置における電位を計算するステップと、通電する方向に隣り合う端子対を構成する2つの端子位置における電位をφE1,φE2、き裂長さcで無次元化した2つの端子位置のz座標をZ、Z、遠方における電界の強さをE、損傷が存在することによる電位差増分をΔV、損傷が存在しない場合の電位差をVとして、
【数7】
JP0004904489B2_000008t.gif
により端子対間の無次元化電位差増分ΔV/Vを計算し、パラメータを変更しながら評価式
【数8】
JP0004904489B2_000009t.gif
((ΔV/VC+は計算値、(ΔV/VM+は測定値、jは端子対番号を表す。)を演算することにより、パラメータの最尤推定値を特定するステップとを含むこととしたことによって、極めて短時間で損傷の有無及びその形状を解析可能な損傷検出方法を提供できる。
【0014】
さらに、本発明の損傷検出方法では、損傷として被検体の薄肉化による減肉が更に存在する場合、パラメータに被検体の厚みを表すパラメータを加えて評価式を演算することによりパラメータの最尤推定値を特定し、被検体の減肉量を算出するステップを含むこととしたことによって、処理時間を大きく削減可能な損傷検出方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の損傷検出装置及び損傷検出方法では、検査対象である被検体に生じた損傷を解析によって特定する場合に最尤推定法による演算を行って特定しているものである。したがって、解析における演算の負荷を低減させることができ、高速な演算処理を可能としているものである。
【0016】
しかも、解析においては、被検体を表面同士で互いに当接させた二重体に、さらに被検体の裏面同士を互いに当接させた四重体を想定して解析を行うことにより、解析に用いる評価式の簡略化を図り、高速な計算処理を可能としているものである。
【0017】
特に、損傷がき裂の場合には、解析手段では、仮想損傷を備えた四重体を想定する際に楕円き裂を仮想損傷として仮定することにより、解析手段での処理時間を大きく削減することができ、即時的に損傷の有無及びその形状を判定できる。
【0018】
また、損傷が被検体の薄肉化による減肉の場合には、仮想損傷を指定するパラメータを被検体の厚みとして、最尤推定法による演算で算出した被検体の厚みから減肉量を算出することにより、解析手段での処理時間を大きく削減することができ、即時的に減肉量を判定できる。
【0019】
以下において、図面に基づいて本発明の実施形態を詳説する。図1は、本実施形態の損傷検出装置Aの概略模式図である。
【0020】
本実施形態の損傷検出装置Aは、被検体Bにおける検査領域Rを所定の通電状態とするための通電を行う通電手段からなる通電部10と、検査領域Rにおける所定間隔での電位差を測定する電圧測定手段からなる電圧測定部20と、この電圧測定部20で得られた複数の電位差データを記憶する記憶手段からなる記憶部30と、この記憶部30に記憶された電位差データに基づいて損傷の有無及びその形状を解析する解析手段からなる解析部40とを備えている。
【0021】
ここで、本実施形態の被検体Bは、ステンレスなどの導電性を有した金属配管としている。
【0022】
通電部10は、所要の直流電流を出力可能とした直流電源11と、この直流電源11に一端をそれぞれ接続した電流入力線12と電流出力線13とで構成している。
【0023】
電流入力線12及び電流出力線13の他端にはそれぞれ高導電性の接続パッド12a、13aを設け、この接続パッド12a、13a間に被検体Bの検査領域Rを位置させることにより、検査領域Rをできるだけ均一に通電するようにしている。特に、接続パッド12a、13aはできるだけ互いに離隔させて配置して、検査領域Rにおいてほぼ均一な電流が通電されるようにしている。
【0024】
電圧測定部20は、複数のプローブ21を突設したプローブ支持体22と、このプローブ支持体22におけるいずれか2本のプローブ21,21の間の電位差を検出する電圧計23とで構成している。
【0025】
本実施形態では、プローブ支持体22には縦横に所定間隔で複数のプローブ21を配置しており、電圧計23と接続されるプローブ21を切替える切替回路(図示せず)を介して各プローブ21と電圧計23とを接続するようにしている。図1中、24はプローブ支持体22と電圧計23とを接続する第1配線であり、25はプローブ支持体22と電圧計23とを接続する第2配線である。図示していないが、プローブ支持体22には、切替回路を制御するための制御信号を入力するための制御信号線を接続している。
【0026】
なお、切替回路によって電圧計23と接続されるプローブ21を切替えながら測定を行うのではなく、それぞれ電圧計23に接続された2本のプローブ21,21を適宜移動させながら、所定位置におけるプローブ21,21の間の電位差を測定するようにしてもよい。
【0027】
記憶部30及び解析部40は、本実施形態ではパーソナルコンピュータ50で構成している。すなわち、記憶部30は、パーソナルコンピュータ50におけるハードディスクまたはメモリなどの記憶装置で構成しており、解析部40は、ハードディスクに記憶された解析プログラムをロードしてCPUによって所定の処理を実行することにより後述する解析が実行されるようにしている。
【0028】
本実施形態の解析プログラムでは、図2に示すフローチャートに基づいて解析を実行している。
【0029】
まず、解析部40では、解析プログラムに基づいて、ハードディスクまたはメモリなどの記憶装置からなる記憶部30にあらかじめ記憶されている検査領域Rにおける基準データHを読み出している(ステップS1)。
【0030】
基準データHは、製造初期段階で損傷検出装置Aにより測定した検査領域Rの電位差の測定結果であって、製造初期段階で損傷が存在しないと考えられる状態での電位差を測定して、記憶部30に記憶していたものであり、後述するように「減肉」の有無を判定するために用いるものである。
【0031】
ここで、本実施形態では、検査領域Rの被検体Bは一様な厚みを有しているものとする。さらに、検査領域Rには通電部10によって所定の方向に一様な電流を通電しており、電圧測定部20による電位差の検出は、通電方向に沿って所定の間隔だけ離隔したプローブ21によって行うとともに、通電方向と直交する方向に沿って所定の間隔だけ離隔したプローブ21によって行っている。
【0032】
検査領域Rの被検体Bは一様な厚みとしていることによって、検査領域Rは通電方向と直交する方向に沿ってほぼ等電位となっているので、検査領域Rは通電方向と直交する方向に沿って測定した電位差はほぼ「0」となっている。
【0033】
そこで、縦横に並んだ各プローブ21間の間隔を等間隔としている場合には、基準データHを、検査領域R内の通電方向に沿った各プローブ21間における電位差の測定結果の平均値とすることもできる。本実施形態では、各プローブ21間の間隔を等間隔としているので、検査領域R内の通電方向に沿った各プローブ21間における電位差の測定結果の平均値を基準データHとしている。あるいは、基準データHとしては、計算によって得られる理論値を用いることもできる。
【0034】
次いで、解析部40では、解析プログラムに基づいて通電部10により検査領域Rを所定の通電状態として、電圧測定部20により検査領域R内の所定のプローブ21間の電位差データViを測定し、得られた測定結果である各電位差データViを記憶部30に記憶している(ステップS2)。電位差データViは、電圧測定部20による検査領域R内に設定した測定地点の数だけ存在することとなる。
【0035】
ここで、検査領域Rには通電部10によって所定の方向に一様な電流を通電し、電圧測定部20による電位差の検出は、通電方向に沿って所定の間隔だけ離隔したプローブ21によって行うとともに、通電方向と直交する方向に沿って所定の間隔だけ離隔したプローブ21によって行っている。測定における各プローブ21間の間隔は一定としている。
【0036】
検査領域Rにおいて「き裂」が存在する場合には、「き裂」近傍において電位差データViが大きい値を示し、検査領域Rにおいて「減肉」が生じている場合には、検査領域R内の通電方向に沿った電位差データViに基準データHからの一様な増大がみられ、検査領域Rにおいて「き裂」と「減肉」とが存在する場合には、検査領域R内の通電方向に沿った電位差データViに基準データHからの一様な増大がみられるとともに、「き裂」近傍の電位差データViが極めて大きい値を示すこととなる。
【0037】
そこで、解析部40では、まず、記憶部30に記憶した測定結果の電位差データViの一次解析を行って電位差データViのバラツキの有無を判定し、検査領域R内における「き裂」の有無判定を行っている(ステップS3)。すなわち、検査領域R内に「き裂」が存在しない場合には、通電方向に沿った各電位差データViはバラツキの無い一様な電位差データViとなり、各電位差データViにバラツキがある場合には「き裂」が有るものとを判定することができる。
【0038】
電位差データViにバラツキが無かった場合には、解析部40では、通電方向に沿った電位差データViと基準データHとの差が所定値以上であるかを判定し、「減肉」の有無の判定を行っている(ステップS4)。
【0039】
すなわち、ステップS4において、解析部40では通電方向に沿った各電位差データViと基準データHとの差を計算し、差の値が所定の閾値を越える電位差データViの数をカウントして、カウント数が所定数以内の場合には、解析部40では、検査領域Rには「き裂」も、「減肉」も無いと判定し(ステップS5)、「異常無し」の結果を出力するようにしている(ステップS6)。
【0040】
一方、ステップS4において、差の値が所定の閾値を越える電位差データViの数が所定数を越えた場合には、解析部40では、検査領域Rには「減肉」が存在するものと判定して、「減肉」評価ルーチンを実行し(ステップS7)、減肉量を特定するようにしている。
【0041】
本実施形態では、ステップS4において、通電方向に沿った各電位差データViと基準データHとの差の値が所定の閾値を越える電位差データViの数をカウントしているが、通電方向に沿った電位差データViの平均値hを算出して、この平均値hと基準データHとの差が所定の閾値を越えるかどうかで「減肉」の有無を判定してもよい。
【0042】
すなわち、ステップS4の場合には、電位差データViに「き裂」の影響が無いために、電位差データViには「減肉」の影響による電位差の増大しか生じ得ないので、通電方向に沿った電位差データViの平均値hによる基準データHとの比較が可能であり、通電方向に沿った電位差データViの平均値hを用いることによりステップS4における比較判定を速やかに実行することができる。
【0043】
ステップS7で実行される「減肉」評価ルーチンでは、検査領域Rには一様な減肉が生じているものと仮定し、被検体Bの厚みを表す仮想損傷のパラメータtを用いて、減肉量の評価を行っている。
【0044】
ここで、電位差データViを測定しているプローブ21間の間隔寸法、被検体Bの抵抗率、通電部10によって検査領域Rに通電している電流の電流値はいずれも既知の定数であるので、電位差データViに相当する部分のプローブ21間における電圧値は、通電方向と平行な方向の場合にはパラメータtの逆数と所要の定数Gとの積として評価することができる。なお、通電方向と直交する方向の場合には、電位差データViに相当する部分のプローブ21間における電圧値は「0」となる。また、プローブ21間の間隔寸法が一定でない場合には、所定の電位差データViとなる場合のプローブ21間の間隔寸法diで無次元化してもよい。
【0045】
定数Gの値は、プローブ21間の間隔寸法の値、被検体Bの抵抗率の値、通電部10によって検査領域Rに通電している電流の電流値から決定されるものであり、通電方向に沿った電位差データViの理論値「G/t」と通電方向に沿った電位差データViの平均値hとが一致するパラメータtの値を求めることにより、解析部40では、パラメータtの値を特定している。
【0046】
そして、解析部40では、得られた被検体Bのパラメータtの値と、被検体Bの当初の厚み寸法との差から減肉量を特定している(ステップS8)。その後、解析部40では、ステップS6において、ステップS8で特定された減肉量を出力している。
【0047】
ステップS3において、電位差データViにバラツキが有った場合には、解析部40では、基準データHと電位差データViとの差が所定の閾値以上である電位差データViの数をカウントし、このカウント数が所定数より大きいかを判定し、「減肉」の有無の判定を行っている(ステップS9)。
【0048】
すなわち、ステップS3において、電位差データViにバラツキが有った場合には、電位差データViは、「減肉」と「き裂」の2種類の損傷による影響を受けている可能性があるものの、「き裂」が存在する場合には電位差データViは局所的に増大しているのに対し、「減肉」が存在する場合には通電方向に沿った電位差データViが基準データHから一様に増大しているので、基準データHと電位差データViとの差が所定の閾値以上である電位差データViの数をカウントして、カウント数が所定数以上である場合には「減肉」が存在すると判定することができる。
【0049】
ステップS9において、検査領域Rに「減肉」が存在するものと判定した場合には、解析部40は「減肉」評価ルーチンを実行し(ステップS10)、減肉量を特定するようにしている。
【0050】
ここで、電位差データViは「き裂」による損傷の影響を受けている可能性があるので、ステップS7の「減肉」評価ルーチンをそのまま実行した場合には、「減肉」を正確に評価できないおそれがある。
【0051】
そこで、本実施形態では、測定した全電位差データViのうちで通電方向に沿った電位差データViを抽出し、この通電方向に沿った電位差データViを値の小さい順に並べて、最小の値から所定数までの電位差データViの平均値となる平均電位差を算出することにより、「き裂」による損傷の影響を受けた電位差データViを排除して、減肉量を特定可能としている。所定数としては、検査領域Rに一般的に生じるき裂の大きさに基づいて適宜とすることができ、検査領域Rの大きさと比べてき裂の寸法が小さい場合には、通電方向に沿った電位差データViの数の半分程度であればよい。
【0052】
そして、ステップS10の「減肉」評価ルーチンでは、解析部40は、被検体Bの抵抗率、電位差データViを測定しているプローブの間隔寸法、及び通電部10によって検査領域Rに通電している電流量から、被検体Bの厚みをパラメータtとした場合に想定される電位差データの理論値を算出し、この理論値と平均電位差を用いて、ステップS7と同様に被検体Bの厚みを表す仮想損傷のパラメータtを特定している。
【0053】
そして、解析部40では、得られた被検体Bの厚みパラメータtと、被検体Bの当初の厚み寸法との差から減肉量を特定している(ステップS11)。
【0054】
一方、ステップS9において、基準データHと電位差データViとの差が所定の閾値以上である電位差データViの数が、所定数以下であった場合、及びステップS11で減肉量が特定された場合には、解析部40は「き裂」評価ルーチンを実行し(ステップS12)、き裂形状を特定するようにしている。
【0055】
「き裂」評価ルーチンでは、解析部40は、図3に示すフローチャートに基づいて処理を実行し、「き裂」の特定を行っている。
【0056】
まず、解析部40は、「き裂」の形状を仮定するパラメータを設定する(ステップT1)。ここで、き裂は、被検体の背面側に半楕円状に形成されているものとし、図4に示すように、き裂の中心位置のy座標をyc、z座標をzc、き裂のうちで表面から最も離れた位置であるき裂の先端位置のy座標をyt、z座標をzt、表面角度をθsur、奥行き角度をθin、き裂長さをc、き裂深さをaとして、仮想損傷を(yc,zc,c,a,θin,θsur)の6つのパラメータによって想定する。
【0057】
ここで、
yt=yc+a・sinθin・sinθsur
zt=zc-a・sinθin・cosθsur
である。
【0058】
次いで、ステップT1で設定したパラメータに対して、解析部40では評価式での演算を行う(ステップT2)。
【0059】
ここで、評価式は、以下のように設定している。すなわち、まず、実際に測定してステップS2で記憶した各端子間電位差Vとなる電位差データViを用いて、次式の式(1)により無次元化電位差増分を算出する。端子間電位差Vは、電流の通電方向に隣り合うすべての端子対に対して行っており、無次元化電位差増分も、それらについて全て行っている。
【0060】
【数9】
JP0004904489B2_000010t.gif

【0061】
ここで、ΔVは、き裂または減肉などの損傷が存在することによる電位差増分であり、V0は損傷が存在しない場合の電位差である。
【0062】
次に、初期値として、上記したき裂の中心位置、き裂長さ、き裂深さ、き裂面角度の組み合わせ(y,z,c,a,θin,θsur)を設定し、欠陥電流修正法を用いて各端子位置における電位の計算を行って、計算した電位から各端子対間の無次元化電位差増分ΔV/Vを次式の式(2)により求める。
【数10】
JP0004904489B2_000011t.gif

【0063】
ここで、φE1,φE2は、その端子対を構成する2つの端子位置における電位であり、Z1、Z2は、き裂の長さcで無次元化した端子位置のz座標であり、Eは、遠方における電の強さである。この計算も電流の通電方向に隣り合うすべての端子対に対して行う。
【0064】
そして、実際の端子間電位差の測定値と、仮定した(yc,zc,c,a,θin,θsur)に対する端子間電位差の計算値を比較するために、次式の式(3)により求められる誤差ERを求める。
【0065】
【数11】
JP0004904489B2_000012t.gif

【0066】
ここで、式(3)の大括弧中の式は、それぞれ、各端子間電位差(端子対番号j)の計算値とそれに対応する測定値であり、双方とも値が負の場合には、それを「0」と置き換える変換を施すこととしている。
【0067】
この式(3)の誤差ERを評価式とし、解析部40では評価式での演算を行っている(ステップT2)。
【0068】
特に、評価式の演算においては、本発明では、図5(a)に示すように想定した背面側に半楕円状にき裂Pが形成された被検体B'を、図6(a)に示すように表面同士で互いに当接させた二重体Dを想定している。ここで、図5(b)は、y=0でのx-z面でのき裂Pを示しており、図6(b)は、y=0での二重体Dのx-z面を示している。
【0069】
そして、さらに、図7(a)に示すように二重体Dにおける各被検体B'の裏面に、それぞれ被検体B'の裏面を当接させて四重体Qを想定している。ここで、図7(b)は、y=0での四重体Qのx-z面を示している。
【0070】
そして、図7(b)に示すように、この場合、き裂PはV字状となっているが、一方側のき裂を他方側のき裂と連続させても演算状の結果は同じであるので、図8(a)及び図8(b)に示すように、一方側のき裂を他方側のき裂と連続させて楕円き裂P'が形成されているものとして演算を行っている。
【0071】
このように四重体Qを用いることにより、被検体B'の表面部分における境界値問題を回避して演算の単純化を図ることができ、演算を高速で実施可能とすることができる。
【0072】
しかも、き裂を楕円き裂P'として取り扱うことにより、対称性を利用して演算の簡素化を図ることができ、さらに短時間で演算を実施することができる。
【0073】
この楕円き裂P'を有する四重体Qを用いて解析部40では式()の評価式の演算を行い、演算結果を記憶装置に記憶している(ステップT3)。
【0074】
その後、解析部40は、演算の終了判定を行う(ステップT4)。すなわち、仮想損傷を示す(yc,zc,c,a,θin,θsur)からなるパラメータのすべての値を演算したかを判定し、演算されていないパラメータの値がある場合には、仮想損傷のパラメータを変更して(ステップT5)、ステップT2に戻って変更したパラメータに基づいて評価式の演算を行うようにしている。
【0075】
ステップT4において、パラメータのすべての値を演算していた場合には、解析部40は、演算結果の中で評価式である誤差ERが最小の値を抽出し(ステップT6)、この誤差ERとなるパラメータの値を最尤推定値として特定して(ステップT7)、「き裂」評価ルーチンを終了している。
【0076】
解析部40では、「き裂」評価ルーチンで得られた「き裂」の形状を特定するパラメータから「き裂」の形状を特定し(ステップS13)、ステップS6において、ステップS8で特定されたき裂形状、及び減肉が生じている場合には減肉量を出力している。
【0077】
このように、「き裂」と「減肉」とを別々に評価することにより、解析部40での処理速度を向上させることができる。
【0078】
なお、「き裂」と「減肉」とを別々に評価するのではなく、「き裂」の仮想損傷のパラメータ(yc,zc,c,a,θin,θsur)に加えて、「き裂」の開口量を表すパラメータbと、被検体Bの厚みを表すパラメータtとを加えた8つのパラメータ(yc,zc,c,a,θin,θsur,b,t)を想定して最尤推定法による演算を行うことにより、「開口しているき裂」と「減肉」とを同時に評価することができる。
【0079】
さらに、被検体Bの厚みを表すパラメータtを、検査領域Rにわたって変数として演算を行うことにより、一様でない「減肉」を評価することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本実施形態の損傷検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の損傷検出装置における処理の流れを示したフローチャートである。
【図3】「き裂」評価ルーチンのフローチャートである。
【図4】仮想損傷のパラメータの説明図である。
【図5】(a)き裂を有する被検体のモデルの説明図(b)(a)のy=ycでのx-z面におけるき裂の説明図である。
【図6】(a)き裂を有する二重体のモデルの説明図(b)(a)のy=ycでのx-z面におけるき裂の説明図である。
【図7】(a)き裂を有する四重体のモデルの説明図(b)(a)のy=ycでのx-z面におけるき裂の説明図である。
【図8】(a)き裂を有する四重体のモデルの説明図(b)(a)のy=ycでのx-z面におけるき裂の説明図である。
【符号の説明】
【0081】
A 損傷検出装置
B 被検体
R 検査領域
10 通電部
11 直流電源
12 電流入力線
13 電流出力線
20 電圧測定部
21 プローブ
22 プローブ支持体
23 電圧計
24 第1配線
25 第2配線
40 解析部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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