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明細書 :アスベスト無害化処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3769569号 (P3769569)
公開番号 特開2005-168632 (P2005-168632A)
登録日 平成18年2月10日(2006.2.10)
発行日 平成18年4月26日(2006.4.26)
公開日 平成17年6月30日(2005.6.30)
発明の名称または考案の名称 アスベスト無害化処理方法
国際特許分類 A62D   3/00        (2006.01)
FI A62D 3/00 300
A62D 3/00 661
A62D 3/00 ZAB
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2003-410145 (P2003-410145)
出願日 平成15年12月9日(2003.12.9)
審査請求日 平成17年8月23日(2005.8.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
【識別番号】599100604
【氏名又は名称】カースチール株式会社
発明者または考案者 【氏名】小島 昭
【氏名】中嶋 朗
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100091498、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邉 勇
【識別番号】100092406、【弁理士】、【氏名又は名称】堀田 信太郎
【識別番号】100093942、【弁理士】、【氏名又は名称】小杉 良二
【識別番号】100109896、【弁理士】、【氏名又は名称】森 友宏
【識別番号】100118500、【弁理士】、【氏名又は名称】廣澤 哲也
審査官 【審査官】山田 充
参考文献・文献 特開平06-170352(JP,A)
特開2001-031460(JP,A)
特開2001-253764(JP,A)
調査した分野 A62D 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
アスベスト又はアスベスト含有物質フロン分解無害化処理によって生成された塩化カルシウムとフッ化カルシウムと炭酸カルシウムとからなるフロン分解物とを混合し、次いで当該混合物を加熱処理して成るアスベスト無害化処理方法。
【請求項2】
前記フロン分解物がスラリー状又は半ナマ状である請求項1記載のアスベスト無害化処理方法。
【請求項3】
前記加熱処理により、アスベストは分解され、結晶構造が崩壊し、繊維形態が消滅し、無害化される請求項1記載のアスベスト無害化処理方法。
【請求項4】
前記アスベスト含有物質は、アスベストを含んだスレート板、屋根瓦、水道管、自動車のブレーキ、アセチレンボンベのマトリックス、耐火被覆材を含む請求項記載のアスベスト無害化処理方法。
【請求項5】
前記アスベスト含有物質が多孔質であり、スラリー状の前記フロン分解物を含浸し、次いで加熱処理して成る請求項1記載のアスベスト無害化処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フロン分解無害化処理によって生成されたフロン分解物を利用したアスベスト無害化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベスト(石綿)は、天然の鉱物繊維で、種類としては蛇紋岩系のクリソタイル(白石綿、Mg6Si4O10(OH)8)や角閃石系のアモサイト(茶石綿、(Fe,Mg)7Si8O22(OH)2)などがある。アスベストは、耐熱性、耐薬品性、絶縁性などの諸特性に優れているため、建設資材、電気製品、自動車および家庭用品などの分野で幅広く利用されている。我が国で1930年から2002年の間に消費されたアスベストは1000万トンにも及び、その9割以上は建築資材(スレート板,屋根瓦,耐火被覆材等)として使用されたと言われている。
【0003】
上記したように、アスベストは優れた特性を有するものの、疾病との因果関係が指摘されている。すなわち、アスベストは、太さが人間の髪の毛の1/5000という非常に微細なガラス状繊維であり、アスベストの粉塵を人が吸い込むと、いわゆる「ミクロの針」が肺細胞に刺さる。このような事態が続くことにより、石綿肺、肺癌、悪性中皮腫などの重大な疾病が引き起こされる。
【0004】
因みに、WHO(世界保健機関)では、アスベストを発ガン物質と断定し、例えばアメリカではEPA(環境保護局)が建築資材のアスベストの全面禁止を打ち出し、ドイツでは1994年からアスベストの輸入・生産・使用を全面禁止するにいたっている。我が国でも大気汚染防止法でアスベスト粉塵を特定粉塵と定め発生施設に規制を課しているが、その輸入量はアメリカの約8倍で世界一アスベストを使用する国といわれている。
【0005】
日本における輸入アスベストの約9割は建築資材に使用されているが、含アスベスト建材が用いられている建造物の解体は今後ピークを迎えることから、アスベスト暴露とアスベスト処理の問題が深刻化することは避けられないものと思われる。
【0006】
現在、アスベストおよびアスベスト含有物質は産業廃棄物として最終処分場に埋め立てられているが、これにも限度がある。そのため、従来より種々のアスベストの分解無害化処理技術が提案されている。その代表的なものとしては、密閉型電気炉溶解法とスラグ浴融解法とが挙げられる(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【0007】
ここで、特許文献1には、密閉型電気炉によりシュートを介して袋中に収容されたアスベストを高温(1500℃)で溶解する無害化処理方法が開示されている。また、特許文献2には、SiOよりもCaOの含有量が多い水処理汚泥を塩基度調整剤兼バインダーとしてアスベストに混合して成形した混合物を、炭素系可燃物質を燃料とする高温炉床に供給して高温加熱溶融する無害化処理方法が開示されている。この特許文献2中には、アスベストを1080~1140℃で溶融してスラグを生成することが記載されている。

【特許文献1】特許第3085959号公報
【特許文献2】特開平7-171536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記したアスベストの無害化処理方法は、いずれも1000℃以上の処理温度を要し、膨大なエネルギー消費問題を抱えていることから実用化には至っていないのが現状である。
【0009】
本発明の目的は、低エネルギでアスベストを確実に無害化できるアスベスト無害化処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、環境汚染の原因となる有害物質の無害化に鋭意努力している。本発明者は、平成10年7月に群馬県自動車販売店協会から委託を受け、廃棄自動車のカーエアコンに入っているフロンを回収し、分解無害化処理を行っている。このフロン無害化処理技術は一定の成果を上げており、今回はアスベストの無害化処理に取り組むこととした。
【0011】
ここに、本発明者は、アスベストを低エネルギで無害化するには、できる限り低温でアスベストを融解させる融解剤を見つけ出すことが必要であるとの考えのもとに研究を進めてきたが、上記したフロン無害化処理によって生成される物質(フロン分解物)がフッ化カルシウムを含むことに着目し、このフロン分解物を融解剤として各種実験を行った結果、本発明を創成したものである。
【0012】
すなわち、本発明は、アスベストとフロン分解無害化処理によって生成されたフロン分解物とを混合し、次いで当該混合物を600℃以下(例えば、575℃)の低温で所定時間(例えば、2時間)加熱処理して成る。ここで、アスベストとしては、現在日本で使用が認められているクリソタイルはもとより、クロシドライト、アモサイト、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライト等を無害化できる。また、フロン分解物は、粉末状、半ナマ状、スラリー状のいずれの形態のものも使用できる。また、本発明は、アスベストを含んだ物質(アスベストを含んだスレート板、屋根瓦、水道管、自動車のブレーキ、アセチレンボンベの充填材、耐火被覆材等)の無害化にも適用できる。また、アスベスト含有物質が多孔質の場合には、スラリー状のフロン分解物を含浸させた後に低温加熱処理しても無害化でき、アスベスト含有物質を破壊又は粉砕する手間が省ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低エネルギ(加熱温度600℃以下)でアスベストを確実に分解することができる。すなわち、アスベストの繊維形態の消滅、結晶構造の崩壊などを引き起こして無害化できる。これにより、フロン分解物の有効利用を図りつつアスベストを無害化処理することができ、環境汚染防止に多いに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面等を用いて説明する。
【0015】
本発明に係るアスベストの無害化処理方法は、アスベスト(又はアスベスト含有物質)とフロン分解無害化処理によって生成されたフロン分解物とを混合(混練)し、次いで当該混合物を600℃以下の低温で所定時間(例えば2時間)加熱処理して成る。
【0016】
アスベストは、クリソタイル、クロシドライト、アモサイト、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライト等と種々あるが、上記無害化処理方法はいずれの種類でも適用可能である。また、フロン分解物とは、フロンの分解無害化処理によって生成された物質(フッ化カルシウムと炭酸カルシウムの混合物)であり、粉末状、半ナマ状、スラリー状のいずれの形態のものも使用できる。なお、粉末状のフロン分解物は、保管や運搬が一段と便利である。また、スラリー状および半ナマ状のフロン分解物は、アスベストとの混合(混練)を一段と容易に行えるとともに、乾燥する必要がないのでエネルギ消費量が一段と少なくなる。
【0017】
アスベストに対するフロン分解物の混合割合が増えるほどアスベストの分解は容易になるが、下記の実施例1ではフロン分解物:アスベストを7:3(質量比)とした。
【実施例1】
【0018】
本無害化処理方法の効果を確認するため、フロン分解物を用いない分解実験(以下、実験Aと称する)とフロン分解物を用いた分解実験(以下、実験Bと称する)とを行った。
【0019】
アスベストとしては、関東化学株式会社製造のクリソタイルを使用した。また、フロン分解物としては、アークプラズマ方式(特開平10-249161号等)のフロン分解無害化装置を用いて生成されたものを使用した。
【0020】
なお、上記フロン分解無害化装置は、放電によって空気をプラズマ化して超高温(約10,000℃)のアークを発生させ、そこにフロン〔例えば、フロン12(CCl)〕と水蒸気(HO)とを送り込んで瞬時に分解処理する。
【0021】
CCl+2HO → 2HCl + 2HF + CO
【0022】
分解ガスは、消石灰〔Ca(OH)〕で急冷されながら中和して、下記反応式で示すように、塩化カルシウムCaClとフッ化カルシウム(CaF)と炭酸カルシウム(CaCO)とからなる無害化物質(フロン分解物)となる。塩化カルシウムは、場合によっては水洗処理を数回行って取り除くことがある。なお、この実施例では、水洗処理にかかるエネルギと時間と労力とを省くために、塩化カルシウムは除去しなかった。
【0023】
2HCl + Ca(OH)2 → CaCl2+2H
2HF + Ca(OH)2 → CaF2+2H
CO2 + Ca(OH)2 → CaCO3+H
【0024】
なお、プラズマアーク方式以外のフロン分解無害化装置(高周波プラズマ方式、化学的熱分解方式、触媒方式、液中分解方式等)でも、上記したのと同様なフロン分解物が生成される。
【0025】
〔実験A〕 上記アスベスト約5.0gをルツボに入れ、所定温度(300,400,500,600,700,800,900,1000℃)に保持された電気炉内で2時間加熱した後、目視と光学顕微鏡、SEMおよびX線回折による試料の評価を行った。
【0026】
〔実験B〕 上記フロン分解物(脱水ケーキ,CaCO3・CaF2混合物)約11.7gとアスベスト約5.0gとを混合し、7:3(質量比)の試料を調製した。この試料をルツボに入れ、所定温度(300,400,500,600,700,800,900,1000℃)に保持された電気炉内で2時間加熱した後、目視と光学顕微鏡、SEMおよびX線回折による試料の評価を行った。
【0027】
〔実験A,Bの結果〕
【0028】
(1)分解物の観察
加熱前のアスベストは明るい灰色であった。実験Aで得られた試料は、加熱温度500℃から淡褐色に変化し、加熱温度が上昇するにつれてその色味が増していた。また、加熱温度の上昇と共にアスベストの繊維組織が脆弱になった。実験Bで得られた試料にも実験Aの試料と同じ傾向が見られた。なお、アスベストのみを1000℃に加熱すると、繊維としての形態は肉眼的にも顕微鏡の視野でも見られない。パサパサの小さな粒の集合体にしか見えなかった。一方、アスベストをフロン分解物と混合した場合には、物質の一割が溶けガラス状になる。塊となっているから捨てるのも簡単である。
【0029】
(2)光学顕微鏡による試料の観察
実験A,Bで得られた試料を光学顕微鏡(×100)で観察したところ、加熱温度500℃以上の試料で繊維質物質の減少が見られた。しかし、実験Aでは加熱温度1000℃の試料においても繊維質は分解されずに残っていたのに対し、実験Bでは加熱温度700℃の試料で繊維質は全く確認されなかった。これらの結果より、フロン分解物にはアスベストの分解を促進させる作用があることが判明した。
【0030】
(3)走査型電子顕微鏡による試料の観察
実験Bで得られた加熱温度500℃の試料のSEM写真を図2に、加熱温度600℃の試料を図3に示した。図3から繊維質の存在が確認されたものの、その絶対量は減少し繊維が短く、太くなっていることが図2との比較により分かった。繊維長と生体影響の関連性は多くの論文で述べられており、長くて細い繊維ほど生体に対して毒性があると言われている。
【0031】
(4)X線回折測定
実験Aで得られた加熱温度600℃の試料のX線回折測定結果では、アスベストのピークが観測された。実験Bで得られた加熱温度500℃の試料のX線回折測定結果を図4に示す。
【0032】
2θが約5°の位置に見られるピークはアスベストの特徴的なピークである。そのピークの強度[cps]は、加熱温度の上昇と共に低下し、575℃ではピークが略消滅し、600℃以上ではピークが完全に消滅した(なお、図5は575℃の場合、図6は600℃の場合を示す)。これらの事実は、加熱温度600℃でアスベストが完全に分解されていることを示唆している。その後の解析で、フロン分解物との共存下では加熱温度575℃でアスベストのピークが完全に消滅することが判明した。
【0033】
(5)結論
これまでに行った種々の試料評価を表1にまとめた。表の各セルの左側がX線回折測定結果による評価であり、右側が光学顕微鏡での観察による評価である。この表からフロン分解物の存在は非存在下に比べ150℃程低温(575℃)でのアスベスト無害化を可能にすることが見て取れる。
【表1】
JP0003769569B2_000002t.gif

【0034】
本発明は、アスベストを含有する物質の無害化にも適用可能である。すなわち、破壊又は粉砕されたアスベスト含有物質とフロン分解無害化処理によって生成されたフロン分解物とを混合し、次いで当該混合物を600℃以下の低温で所定時間(例えば、2時間)加熱処理することによりアスベストを分解して無害化できる。
【0035】
ここで、アスベスト含有物質としては、アスベストを含んだスレート板、屋根瓦、水道管、自動車のブレーキ、アセチレンボンベのマトリックス、耐火被覆材等が挙げられる。例えば、屋根瓦を破壊又は粉砕した後、フロン分解物と混合(又は混練)し、次いで600℃以下(例えば575℃程度)の低温で所定時間(例えば2時間)加熱処理すれば、アスベストは分解される。すなわち、繊維形態の消滅、結晶構造の崩壊などを引き起こし、アスベスト含有物質を無害化できる。
【0036】
特に、アスベスト含有物質が多孔質の場合には、スラリー状のフロン分解物を含浸させた後に600℃以下(例えば575℃程度)の低温で所定時間(例えば2時間)加熱処理すれば、アスベストは分解されて無害化される。この方法によれば、アスベスト含有物質を破壊又は粉砕する手間が省ける。また、破壊・粉砕し難い多孔質アスベスト含有物質の無害化も容易に行える。
【0037】
例えば、アセチレンガスボンベの中身はケイ酸カルシウムの多孔質体(内部に多数の空隙のある物質)であるが、この多孔体には強度を保持するためにアスベストが含有されている。かかる多孔質体にアセトンがしみ込ませてあり、そのアセトンにアセチレンを溶解させる構造となっている。現在、使用済みアセチレンボンベは、アスベストの無害化処理法が確立されていないために産業廃棄物となっている。しかし、本発明を適用してアセチレンガスボンベのマトリックス多孔質体にスラリー状フロン分解物を充填し上記低温加熱処理することで、アスベストの無害化が可能となり、マトリックスのケイ酸カルシウムも資源として再利用が可能となる。同様に、スレートにスラリー状のフロン分解物をしみ込ませ、上記低温加熱処理することで、堅いスレートを破壊する手間が省け一段と簡単に無害化処理できる。
【0038】
なお、上記実施例1では、クリソタイル型のアスベストを使用したが、他の種類のアスベストでも本発明は適用可能である。また、フロン12以外のフロンを使用することも可能である
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態を説明するための図である。
【図2】実験Aにおける走査型電子顕微鏡による試料のSEM写真を示す図である。
【図3】実験Bにおける走査型電子顕微鏡による試料のSEM写真を示す図である。
【図4】実験AにおけるX線回折測定結果(加熱温度が600℃の場合)を示す図である。
【図5】実験BにおけるX線回折測定結果(加熱温度が575℃の場合)を示す図である。
【図6】実験BにおけるX線回折測定結果(加熱温度が600℃の場合)を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
ST1,ST2,ST3 実験の各ステップ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5