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明細書 :高性能活性炭およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4035622号 (P4035622)
公開番号 特開2007-290878 (P2007-290878A)
登録日 平成19年11月9日(2007.11.9)
発行日 平成20年1月23日(2008.1.23)
公開日 平成19年11月8日(2007.11.8)
発明の名称または考案の名称 高性能活性炭およびその製造方法
国際特許分類 C01B  31/12        (2006.01)
FI C01B 31/12
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2006-117411 (P2006-117411)
出願日 平成18年4月21日(2006.4.21)
審査請求日 平成18年4月28日(2006.4.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
発明者または考案者 【氏名】小島 昭
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
審査官 【審査官】安齋 美佐子
参考文献・文献 特開2007-224434(JP,A)
特開2004-107814(JP,A)
特開平05-258996(JP,A)
特開2002-235965(JP,A)
特開2002-255531(JP,A)
特開平06-183715(JP,A)
特開2005-273077(JP,A)
国際公開第2005/007947(WO,A1)
特開2003-092234(JP,A)
特開平02-185008(JP,A)
小川晃旦 他,繭を原料とした脱臭剤の開発,日本化学会講演予稿集,2005年,vol.85,no.1,p.397, 2 H1-34
清水浩二 他,炭化繭の高度利用に関する研究,群馬県繊維工業試験場平成16年度業務報告,2005年,p.20-23
調査した分野 C01B 31/02,31/08-31/14
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
繭糸を相互に絡み合わせて所定形状に形成された繭を、炭化処理により形状凍結したバインダ非含有炭化材料からなり、比表面積が5000/g以上であることを特徴とする高性能活性炭。
【請求項2】
炭化材料は、活性炭の使用形態に合わせた、板状、筒状および棒状のいずれかのバルク形状を有する請求項記載の高性能活性炭。
【請求項3】
繭を300~400℃の低温域内の所定温度に加熱して炭化する低温炭化工程と、該低温炭化工程で炭化した繭の少なくとも表面に、塩基性水溶液を染み込ませた後、750~850℃の高温域にある所定温度に120.8~160℃/hの昇温速度で加熱して炭化する賦活・高温炭化工程と、該高温炭化工程後に行う酸洗浄工程とを具え、比表面積が3250/g超えである高性能活性炭を製造することを特徴とする高性能活性炭の製造方法。
【請求項4】
前記繭は、吐糸する複数匹の蚕を平板上に置き、これらの蚕が平板上で任意の方向に吐糸しながら移動することで、これらの繭糸が相互に絡み合いながら形成される平面状繭である請求項記載の高性能活性炭の製造方法。
【請求項5】
前記繭は、吐糸する複数匹の蚕を平板上に置き、これらの蚕が平板上で任意の方向に吐糸しながら移動することで、これらの糸が相互に絡み合いながら形成される平面状繭の複数枚を積層した後、180~250℃の温度で加熱プレスすることにより形成される平板状繭である請求項記載の高性能活性炭の製造方法。
【請求項6】
平面状繭または平板状繭は、活性炭の使用形態に合わせた形状に加工された後、その加工された形状のまま、低温炭化工程で炭化されて凍結形状を得る請求項または記載の高性能活性炭の製造方法。
【請求項7】
前記塩基性水溶液は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液である請求項のいずれか1項記載の高性能活性炭の製造方法。
【請求項8】
前記高温炭化工程は、所定温度での保持時間が0.5~2時間である請求項のいずれか1項記載の高性能活性炭の製造方法。
【請求項9】
前記酸洗浄工程で用いる酸は、塩酸、硫酸または酢酸の水溶液である請求項3~8のいずれか1項記載の高性能活性炭の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、繭を用い、板状、筒状、棒状のほか、活性炭の使用形態に合わせて任意の形状に加工することができる、高比表面積をもつ高性能活性炭およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は、高い表面積をもつ炭素材料である。木材、ヤシ殻、石炭などを原料として作られ、様々な分野で使用されている。液相用活性炭は、浄水、排水処理、脱色・精製、醸造などに、気相用活性炭は、空気浄化、脱臭用、空気中の窒素分離、ガス分離、溶剤回収、排ガス処理などに使用されている。その他にも、活性炭は、触媒、使い捨てカイロなどにも用いられている。
【0003】
最近、活性炭の新用途として、VOC規制への対応品、ダイオキシン類、環境ホルモンおよび地下汚染物質の除去、エネルギー分野では電気二重層キャパシタなどにも使われている。
【0004】
活性炭は、環境からハイテク分野まで幅広く使用されることから、要求は、年々厳しくなっており、新しい機能を持った活性炭の登場が期待されている。
【0005】
活性炭は、様々な炭素を含む物質を原料にして製造されている。高性能の活性炭をつくるには、比表面積を高めることと、精密な細孔分布を持つことである。市販活性炭の比表面積は、一般的には500~1000m/gである。特に、3000m/gの高比表面積をもつ活性炭は、スーパー活性炭と呼ばれている。
【0006】
また、活性炭の細孔は、主に3種類に大別される。すなわち、2nm以下の微細孔であるミクロ孔、2~50nmの細孔であるメソ孔、50nm以上の孔であるマクロ孔である。これら孔の制御を明確にし、高表面積をもつ、より精度の高い、活性炭の開発が強く望まれている。
【0007】
原料の有機物の化学構造をナノサイズで制御することができれば、活性炭の微細孔も、ナノスケールで制御できるものと思われる。
【0008】
そこで、本発明者は、原料物質として炭素、水素および窒素を構成原子とする繭に注目した。繭は、2種類のタンパク質(セリシンとフィブロイン)から構成され、窒素原子や水素原子を含む。この窒素原子や水素原子は、外部からのエネルギーを受けることによって化学結合が切断され、低分子化合物となり、炭素を主体とした、いわゆる炭化繭とすることができる。繭を構成する絹タンパク中の窒素を完全に除去することや、一部残留させることは、炭化条件の調節で可能である。繭の炭化条件は、炭化処理温度、処理時間、昇温速度、雰囲気ガスなどである。
【0009】
繭は、セリシンを溶解していない生糸であることから、水酸基を含むセリン、カルボキシル基を含むグルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ基を含むリジン、ヒスチジン、アルギニン等の高活性アミノ酸が30%存在する。これらのアミノ酸を含むことで、高い表面積をもつ活性炭となることが予測できる。同時に、原子サイズの大きさをもつ、微細孔の構築も可能となる。
【0010】
繭を炭にする文献は少なく、本発明者は、特許文献1において、廃棄繭を電気炉あるいは電子レンジで加熱することで、炭化繭をつくり、シックハウス症候群の原因物質と言われるアンモニア、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、メルカプタン、酢酸およびイソ吉草酸などの生活臭や、不快感を引き起こすガスを吸着する性能を備えた炭化繭の製造方法を提案した。しかしながら、特許文献1には、活性炭を高比表面積にするための技術については開示していない。
【0011】
また、繭ではなく、セリシンを除いた生糸を炭にする技術としては、例えば、特許文献2に、精練絹糸を無酸素状態で炭化し電磁波シールド材を提供する方法が記載されている。特許文献3には、絹織物で作られた布材を真空中で加熱し炭化させた絹繊維の炭化物からなる電磁波シールド材が記載されている。特許文献4には、屑繭や絹屑を炭化処理し、1000~2300℃で焼成して電磁波シールド用の炭化物の製造方法が記載されている。特許文献5には、廃棄された絹製品や屑絹を230~350℃で加熱炭化して微細な炭化処理粉末があるが、比表面積に関しては記載されていない。特許文献6には、絹素材を炭素化し、超微粒子化し、人体外皮用塗布材料として利用することが記載されている。特許文献7には、蚕クリームを製造するために、繭からの精製生糸を薫蒸炭化する方法がある。
【0012】
さらに、絹を素材として作った織物を炭化し、電磁波遮蔽性をもつシルクカーボン布や、シルクカーボンにカーボンナノチューブを結合させたハイブリット複合材も知られている。特許文献8には、絹素材を不活性雰囲気中で600℃~2000℃にて炭素化し、粒子径3~90μmに超微粒子化し、人体外皮用塗布材料や濾過剤として利用する方法が記載されている。特許文献9には、絹の表面に均一に金属粒子を担持させた炭素材の製造が記載されているが、活性炭としての機能は追求していない。特許文献10には、絹粉末を炭化した活性炭の製造方法が記載されている。
【0013】
しかしながら、上記特許文献はいずれも、繭を原料にして、比表面積が3000m/gであるスーパー活性炭はもとより、比表面積が3000m/gを超える新たな活性炭を作る試みはない。

【特許文献1】特開2005-273077号公報
【特許文献2】特開2002-76686号公報
【特許文献3】特開2002-220745号公報
【特許文献4】特開2002-363572号公報
【特許文献5】特開平10-266010号公報
【特許文献6】特開平8-59219号公報
【特許文献7】特開平7-330621号公報
【特許文献8】特許第2950729号公報
【特許文献9】特開2005-139586号公報
【特許文献10】特開平11-217210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この発明の目的は、繭を用い、板状、筒状、棒状のほか、活性炭の使用形態に合わせて任意の形状に加工することができる、高比表面積をもつ高性能活性炭およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(I)繭糸を相互に絡み合わせて所定形状に形成された繭を、炭化処理により形状凍結したバインダ非含有炭化材料からなり、比表面積が5000/g以上であることを特徴とする高性能活性炭。
【0017】
(II)炭化材料は、活性炭の使用形態に合わせた、板状、筒状および棒状のいずれかのバルク形状を有する上記(I)記載の高性能活性炭。
【0018】
III)繭を300~400℃の低温域内の所定温度に加熱して炭化する低温炭化工程と、該低温炭化工程で炭化した繭の少なくとも表面に、塩基性水溶液を染み込ませた後、750~850℃の高温域にある所定温度に120.8~160℃/hの昇温速度で加熱して炭化する賦活・高温炭化工程と、該高温炭化工程後に行う酸洗浄工程とを具え、比表面積が3250/g超えである高性能活性炭を製造することを特徴とする高性能活性炭の製造方法。
【0019】
IV)前記繭は、吐糸する複数匹の蚕を平板上に置き、これらの蚕が平板上で任意の方向に吐糸しながら移動することで、これらの糸が相互に絡み合いながら形成される平面状繭である上記(III)記載の高性能活性炭の製造方法。
【0020】
V)前記繭は、吐糸する複数匹の蚕を平板上に置き、これらの蚕が平板上で任意の方向に吐糸しながら移動することで、これらの糸が相互に絡み合いながら形成される平面状繭の複数枚を積層した後、180~250℃の温度で加熱プレスすることにより形成される平板状繭である上記(III)記載の高性能活性炭の製造方法。
【0021】
VI)平面状繭または平板状繭は、活性炭の使用形態に合わせた形状に加工された後、その加工された形状のまま、低温炭化工程で炭化されて凍結形状を得る上記(IV)または(V)記載の高性能活性炭の製造方法。
【0022】
VII)前記塩基性水溶液は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液である上記(III)~(VI)のいずれか1項記載の高性能活性炭の製造方法。
【0023】
VIII)前記高温炭化工程は、所定温度での保持時間が0.5~2時間である上記(III)~(VII)のいずれか1項記載の高性能活性炭の製造方法。
【0025】
IX)前記酸洗浄工程で用いる酸は、塩酸、硫酸または酢酸の水溶液である上記(III)~(VIII)のいずれか1項記載の高性能活性炭の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、繭を用い、板状、筒状、棒状のほか、活性炭の使用形態に合わせて任意の形状に加工することができ、しかも、比表面積が3250/g以上、特に5000m/g以上とスーパー活性炭と同等以上の高性能活性炭およびその製造方法の提供が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、この発明に従う実施形態について以下に説明する。
この発明は、繭を炭化処理した炭化材料からなり比表面積が5000m/g以上である高性能活性炭である。
【0028】
一般に、繭は、特有の楕円形構造を呈しており、平面材料として加工することが困難である。そこで本発明では、楕円形繭ではなく、通常とは異なる製法で作製された平面状の繭または平板状の繭を使用することが好ましい。なお、平面状や平板状の繭は、板状、筒状、棒状のようなバルク形状に加工する場合に適しているが、粉状、粒状、顆粒状の高性能活性炭を用いる場合には、平面状や平板状の繭を使用する必要はなく、この場合には、繭を直接、低温炭化し、その後賦活・高温炭化処理で高性能活性炭を製造すればよい。
【0029】
平面状繭は、蚕が繭を作る際に用いられる仕切り板を外し、強制的に平面状に糸を吐かせることによって作製され、より具体的には、吐糸する複数匹(例えば50~100匹)の蚕を平板上に置き、これらの蚕が平板上で任意の方向に吐糸しながら移動することで、これらの糸が相互に絡み合いながら形成される方法が挙げられる。なお、平面状繭を使用するに際しては、蚕を載せた平板を傾ける等の操作によって蛹を除去する。
【0030】
また、平板状繭は、吐糸する複数匹の蚕を平板上に置き、これらの蚕が平板上で任意の方向に吐糸しながら移動することで、これらの糸が相互に絡み合いながら形成される平面状繭の複数枚を積層した後、180~250℃の温度で加熱プレスすることにより形成される方法が挙げられる。加熱プレスの温度は、180℃未満だと、繭の融解が不足し接着性に問題があり、250℃超えだと、繭の分解が生じるなどの問題があるからである。なお、加熱プレス時の圧力は、20~50kgf/cm2の範囲にすることが好ましい。
【0031】
平面状繭は、繭特有の楕円形状ではないので、板状、筒状、棒状のほか、任意の形状に加工することができ、その後に行なう工程によって、活性炭の使用形態に合わせた所望の形状(形状凍結性)をもつ高性能活性炭を得ることができる。また、平面状繭を原料とすることで、粉末状や粒状だけでなく、様々な形状の活性炭としての活用ができる。
【0032】
平面状繭を用いた活性炭は、脱臭剤としての利用だけではなく、各種形状をもつ高性能活性炭として多方面、多用途にわたって広く応用できる。
【0033】
本発明者は、平面状繭を原料として平板状の繭を作製し、それを炭化することで板状の炭素材料を作り、さらに賦活処理によって高性能な活性炭の調製方法を発明した。すなわち、本発明の方法は、主に低温炭化工程と、賦活・高温炭化工程とを具えることにある。
【0034】
低温炭化工程は、繭を300~400℃の低温域内の所定温度に加熱して炭化するために行う。前記所定温度が300℃未満だと、繭の炭化が開始しないからであり、400℃超えだと、炭化が進行しすぎて、比表面積を高めるのに必要な窒素原子の脱離が促進されて、その後の行なう賦活・高温炭化工程で効果的に比表面積を高めることができなくなるからである。この低温炭化工程により、炭化材料の形状が凍結され(形状凍結性)、比表面積を除き、最終製品となる高性能活性炭の形状と実質的に等しくなる。なお、前記所定温度での保持時間は、0.5~2時間であることが好ましい。前記保持時間が、0.5時間よりも短いと、炭化処理が不十分であり、2時間を超えると、分解が進行し孔が消滅するからである。また、低温炭化工程で炭化を行なう際のガス雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス等を用いればよい。
【0035】
賦活・高温炭化工程は、低温炭化工程で炭化した繭の少なくとも表面に、好ましくは炭化した繭全体に、塩基性水溶液を染み込ませた後、750~850℃の高温域にある所定温度に加熱して炭化するために行なう。このように塩基性水溶液を染み込ませる処理は、その後に行なわれる高温炭化処理で比表面積を増加させるために必須の工程である。なお、繭に染み込ませる際の塩基性水溶液の温度は、室温(25℃)でもよいが、30~50℃の温度に加温することが繭に効率よく染み込ませる点で好ましい。
【0036】
活性炭の性質は、賦活処理の方法(賦活剤、賦活温度、賦活時間等)によって大きく左右される。
【0037】
一般的に用いられている賦活剤は、気相賦活では水蒸気、二酸化炭素である。薬剤賦活では、酸性試薬ではリン酸、塩化亜鉛等である。塩基性試薬では、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなどである。
【0038】
本発明者は、賦活剤について検討を行ったところ、塩基性水溶液を用いるのが、その後に行われる高温炭化工程にて、比表面積を飛躍的に向上させる効果があることを見出し、高表面積をもつ(換言すれば、ヨウ素吸着力が大きく、比表面積が高い)活性炭を作ることに成功した。さらに、細孔径分布を制御することも可能となった。
【0039】
塩基性水溶液としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムもしくは水酸化ナトリウム、またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。
【0040】
炭化した繭に染み込ませる手段としては、例えば、塩基性溶液に減圧下で浸漬する方法が挙げられるが、かかる方法だけには限定されない。
【0041】
前記賦活・高温炭化工程における上記賦活処理の後は、高温炭化処理を行うが、この高温炭化処理は、賦活処理で賦活した繭を、750~850℃の高温域にある所定温度に100~160℃/hの昇温速度で加熱し、該所定温度で保持して炭化するために行なう。
【0042】
高温炭化処理での所定温度は、750℃未満だと、孔の形成が不十分であり、850℃を超えると炭化が進行して、孔が崩壊されて比表面積が低下するからである。なお、前記所定温度での保持時間は、0.5~2時間であることが好ましい。前記保持時間が、0.5時間よりも短いと、炭化処理が不十分であり、2時間を超えると、分解が進行し孔が消滅するからである。また、室温(25℃)から前記所定温度(例えば800℃)に加熱する際の昇温速度は、120.8~160℃/hの範囲とする。120.8℃/h未満だと、処理時間が長くなることや、細孔の分解が生じるからであり、160℃/hを超えると、孔の発達が不十分となるからである。なお、高温炭化処理で炭化を行なう際のガス雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス等を用いればよい。
【0043】
また、高温炭化工程後には、酸洗浄を行なうことが、高比表面積を得る上で必要であり、酸洗浄工程で用いる酸としては、塩酸または硫酸または酢酸の水溶液が好適である。
【0044】
本発明の高性能活性炭の代表的な製造法の具体例を示すと、下記のようになる。
原料繭→低温炭化工程(350℃、管状炉、窒素ガス、保持時間:1時間)→繭の炭化→表面賦活工程(室温(25℃)、賦活剤の飽和炭酸カリウム水溶液に24時間浸漬)→繭の賦活化→高温炭化工程(800℃、昇温速度:133℃/h、保持時間:1時間)→酸洗浄工程(室温(25℃)、塩酸水溶液)→水洗→乾燥→高性能活性炭を得る。
【0045】
上述したところは、この発明の実施形態の例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の高性能活性炭を作製し、性能等を評価したので以下で説明する。
(1)平面状繭の製造ならびに平板状繭の製造および性能評価
本研究で用いる平面状繭は、木製の板の上に吐糸寸前の蚕80匹を置く。蚕はそれぞれ任意方向に吐糸しながら移動する。80匹の蚕の吐く糸によって、相互にからみあいながら平面上繭が形作られ、約2日後には、平面状(マット状)の繭が形成される。それは、縦60cm、横60cm、厚さ約2cmの板状で、嵩密度が約0.05g/cm3である。この平面状繭から、縦5cm、横5cmに複数枚のカット片を切り出し、これらのカット片を、二枚のステンレス板(縦15cm、横15cm)の間に所定枚数積載し、加熱プレス(ホットプレス)を使用し加熱加圧処理を行なった。加熱温度は220℃、加圧力は30kgf/cm2であった。この状態で約40分間加熱プレスし、平板状繭の試料(縦5cm、横5cm)を作製した。作製した試料について、嵩密度(g/cm3)を測定し、空隙率(%)を算出した。また、上記と同様、前記平面状繭から、縦6cm、横1.5cmに複数枚のカット片を切り出し、これらのカット片を、二枚のステンレス板(縦15cm、横15cm)の間に所定枚数を積載し、加熱プレスして、長さ6cm、幅1.5cm、厚さ0.3cmの平板状繭の試験片を作製し、この試験片を用いて三点曲げ試験によって最大曲げ強度(MPa)を測定した。エッジスパン幅48mm(s/d=16)、荷重速度1mm/minで設定し、測定試料数は5であった。平板状繭の試料の嵩密度および空隙率、ならびに平板状繭の試験片の強度の評価結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
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【0048】
表1の結果から、平板状繭の嵩密度は、積層する平面状繭の枚数に比例して、0.15g/cm3から1.26g/cm3の範囲で、所望の値に設定することが可能であり、それと連動して空隙率も、88.8%から5.3%の範囲で、所望の値に設定できることがわかる。また、平板状繭の最大曲げ強度は、嵩密度1.26g/cm3のものが最も高く、55.9MPaであった。さらに、弾性率についても、嵩密度が上がるにつれて値が高くなることも、その後の実験により確かめられた。
【0049】
(2)平板状繭の炭化温度と炭化収率の関係
作製した平板状繭の炭化は次の方法で行った。平板状繭は、7枚の平面状繭を積層し、加熱プレスにより作製したものであり、嵩密度が約0.35g/cm3であり、長さ60mm、幅15mmに切り出した板状試料を使用した。
【0050】
この板状試料は、管状炉の中心部に設置し、窒素雰囲気下、昇温速度100℃/hで所定の炭化温度まで昇温し、この温度で1時間保持した。炭化温度は、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、500℃、600℃および800℃であった。炭化後の板状試料は、いずれも平板状であった。炭化した平板状繭の炭化収率(%)を表2に示す。
【0051】
【表2】
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【0052】
炭化収率は、炭化温度が高くなるとともに、低下した。400℃では47%、800℃では32%であった。 炭化処理した各試料は、走査型電子顕微鏡で表面観察を行った。いずれの試料でも、平滑表面であり、空隙などは見られなかった。
【0053】
(3)炭化繭のヨウ素吸着性能試験
200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、500℃、600℃および800℃の各温度で炭化処理した繭試料のヨウ素吸着性能の測定を行った。実験方法はJIS K 1474(1991)を参考にして行った。ここで、ヨウ素吸着能力と比表面積は比例関係にあって、ヨウ素吸着能力が高いほど、比表面積が高いことを意味する。炭化処理した繭試料を0.15gだけ量り取り、乳鉢で均一になるまで粉砕した。粉砕した試料は、ガラス容器に入れ、そこに0.05mol/lのヨウ素溶液を25ml入れ密封した後、振盪機で200回/分で約4時間振り、試料にヨウ素を吸着させた。吸着後、試料溶液をろ過した。ろ液を10ml量り取り、これを0.1mol/lのチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。その滴定量から試料1g当りのヨウ素吸着量(mg/g)を算出した。窒素雰囲気下で炭化した試料のヨウ素吸着量の測定結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
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【0055】
表3の結果から、ヨウ素吸着量は350℃でピークを示し、表面積が最も大となった。これは高温で炭化した後の冷却過程で、孔の寸法減少が著しいことから、生じた孔が縮小してしたと考えられる。
【0056】
(4)炭化した繭の賦活処理と炭化収率との関係
350℃で炭化した繭試料は、ガスによる賦活処理および薬剤による賦活処理を行なった。ガスによる賦活処理は、水蒸気と二酸化炭素を用いて行った。水蒸気による賦活処理は、窒素ガスを水の入った洗気ビン中に通し、それを電気炉内の炉心管に送り込んで賦活を行なった。二酸化炭素による賦活処理は、窒素ガスの代わりに、二酸化炭素ガスを電気炉内に流すことで処理した。そのときの窒素ガスと二酸化炭素ガスの流量は、ともに150ml/分であった。薬剤賦活は、塩化亜鉛、炭酸カリウム、水酸化ナトリウムおよびリン酸二水素カリウムを用いた。350℃で炭化した繭試料は、各賦活剤の飽和水溶液中に入れ、減圧下に24時間放置し、賦活剤を含浸させた。その後、110℃の乾燥器中で12時間乾燥させた。乾燥後の試料は、電気炉中に入れ、窒素雰囲気下、800℃まで所定昇温速度(100℃/h)で昇温し、800℃で1時間処理した。炭化および賦活処理した繭試料の炭化収率を表4に示す。
【0057】
【表4】
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【0058】
表4の結果から、繭試料の炭化収率は350℃では50%であったが、賦活処理によって収率は15~38%に低下した。
【0059】
(5)炭化した繭の賦活処理とヨウ素吸着性能との関係
種々の賦活剤で処理した繭試料(炭化繭)のヨウ素吸着性能の測定結果を表5に示す。
【0060】
【表5】
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【0061】
表5の結果から、塩基性水溶液で賦活処理した繭試料のヨウ素吸着量が最も多くなった。また、ガス賦活より薬剤賦活の方が、細孔が発達した活性炭を得る賦活方法として適していることが分かる。中でも水酸化ナトリウムや炭酸カリウムの塩基性水溶液で賦活処理した場合のヨウ素吸着能は、市販活性炭よりも高く、1763~1877mg/gにまで増大した。また、炭酸ナトリウムや水酸化カリウムの塩基性水溶液で賦活処理した場合のヨウ素吸着能も、水酸化ナトリウムや炭酸カリウムの塩基性水溶液で賦活処理した場合と同等の結果が得られるのを確認した。
【0062】
また、 炭化および賦活処理した各活性炭試料について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて表面観察を行なった。図1は、350℃で炭化処理した繭試料(比較例1)、図2は、800℃で炭化処理した繭試料(比較例2)、図3は、350℃で低温炭化処理を行い、炭酸カリウム水溶液に浸漬し、800℃までの昇温時間を2時間(昇温速度400℃/h)で処理した繭試料(参考例1)、そして、図4は、350℃で低温炭化処理を行い、炭酸カリウム水溶液に浸漬し、800℃への昇温速度を100℃/hで処理した繭試料(参考例2)のSEM写真である。
【0063】
図1~図4から、窒素雰囲気下で炭化処理し、賦活処理を施さない比較例1および2の繭試料の表面はいずれも、炭化処理前の繭試料表面と比べて、ほとんど変化が見られなかった。一方、350℃で低温炭化処理を行い、塩基性薬剤(炭酸カリウム水溶液)に浸漬し、800℃までの到達時間をそれぞれ2時間及び8時間(昇温速度400℃/hおよび100℃/h)で処理した参考例1及び2の表面はいずれも、無数の細孔が生じているのがわかる。また、ガス賦活処理や酸性薬剤処理のような他の賦活処理で賦活することによっても、SEM観察(図示せず)により、表面に孔が生じることは確認されたが、薬剤賦活処理の方がガス賦活処理よりも賦活の効果が大であった。特に、薬剤賦活の中では、酸性賦活処理よりも塩基性賦活処理の方の表面に形成される細孔の数が多く、賦活の効果が大であった。活性炭の性能を向上させるためには、表面を適度にガス化させて、表面に無数の小さな孔(細孔および微細孔)を形成することにより、高い比表面積をもつようにする必要がある。SEM観察の結果から、炭酸カリウムや水酸化ナトリウムのような塩基性薬剤の賦活効果が最も高いことが分かる。このため、本発明では、表面賦活工程で用いる賦活剤として、塩基性水溶液に限定した。塩基性水溶液の中では、特に炭酸カリウムが好ましい。
【0064】
(6)高温炭化工程後の洗浄液の適正化の検討
塩基性水溶液で賦活処理後の試料の表面には、賦活薬剤が付着しているため、洗浄することが好ましい。しかしながら、一般的な蒸留水や熱水では、十分に洗浄することはできなかった。このため、塩酸や硫酸や酢酸のような酸性水溶液で洗浄することを検討した。その結果、洗浄後の賦活済み活性炭の表面は、走査型電子顕微鏡で観察すると、表面に付着していた炭酸カリウムや水酸化ナトリウムが、溶解して除去されていることが確認できた。
このため、本発明では、高温炭化工程後に、塩酸または硫酸の水溶液で酸洗浄工程を行うことが必要である。なお、酸洗浄工程の後は、水洗工程と乾燥工程を行なうことが好適である。
【0065】
また、塩酸洗浄前のヨウ素吸着量は、1763mg/gであったが、塩酸洗浄後には2024mg/gにまで増大した。
【0066】
(7)高温炭化工程の炭化温度(800℃)までの昇温速度とヨウ素吸着量との関係
次に、賦活剤を炭酸カリウム、高温炭化工程での炭化温度を800℃とし、この炭化温度での昇温速度を変化させて、賦活処理を行ない、ヨウ素吸着性能を求めた。その結果を表6に示す。なお、表6中のヨウ素吸着性能の値は、各昇温時間ごとにn=4で測定した時の平均値である。
【0067】
【表6】
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【0068】
表6の結果から、ヨウ素吸着量は、800℃までの昇温時間が長くなる(昇温速度が小さくなる)につれて増加し、4時間以上でほぼ一定であるのがわかる。
【0069】
(8)高温炭化工程の炭化温度に到達するまでの昇温速度と炭化収率との関係
低温炭化工程での炭化温度を350℃、表面賦活工程に用いる賦活剤を炭酸カリウム水溶液、高温炭化工程を、室温(25℃)から炭化温度800℃に到達するまでの昇温時間を2時間から8時間(昇温速度を100~400℃/h)まで変化させて行なった。例えば、昇温時間が2時間の場合の昇温速度は400℃/h、昇温時間が8時間の場合の昇温速度は100℃/hであった。800℃での保持時間は1時間とした。昇温速度(℃/h)と炭化収率(%)を表7に示す。
【0070】
【表7】
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【0071】
表7の結果から、800℃までの昇温時間が長くなるほど、また、昇温速度が遅くなるほど、炭化収率は高くなる傾向があり、特に昇温速度155.0℃/h以下のとき、炭素収率はほぼ一定となっているのがわかる。
【0072】
(9)高温炭化工程での炭化温度と昇温速度とを変化させて調製した活性炭の比表面積の測定
低温炭化工程での炭化温度を350℃、表面賦活工程に用いる賦活剤を炭酸カリウム水溶液とし、高温炭化工程での炭化温度と昇温速度とを変化させて調製した活性炭の比表面積を測定した。測定装置は、BELSORP -18Plus(日本ベル株式会社製)を用いた。測定条件は、吸着質N2、吸着温度77Kであった。炭化温度(℃)、昇温速度(℃/h)および炭化収率(%)を表8に示す。
【0073】
【表8】
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【0074】
表8の結果から、炭化温度を700℃、750℃、800℃、850℃、900℃(炭化温度での昇温時間:6時間)で比較すると、炭化温度750~850℃である場合に、高比表面積3250/g以上が得られることがわかった。特に、炭化温度が800℃である場合、比表面積が5571m2/gと最も大きくなった。特に、炭化温度が800℃と900℃である場合の試料について、SEMで表面観察(図示せず)を行なったところ、炭化温度が800℃では、無数の細孔が生じていたのに対し、炭化温度が900℃では、表面のガス化が進みすぎて、より大きな孔が生じているのが確かめられた。このことから、比表面積は炭化温度が800℃である場合が最も適していると考えられる。これは900℃の方がより外界のエネルギーが高いために、賦活反応が進んだためと考えられる。このため、最初に生成されるミクロ孔が肥大化し比表面積が下がると考えられる。
【0075】
また、炭化温度を800℃(一定)とし、この温度までの昇温時間が2時間の試料(800℃-2h、図3)および昇温時間が8時間の試料(800℃-8h、図4)のSEM観察を行なった。800℃-2hの試料表面には激しい凹凸が見られた。これは、昇温時間が短かったため順調に変化していくのではなく、表面が急激に変化したためであると考えられる。このため昇温時間が極端に短いと発達した細孔は得られないことが分かる。一方、800℃-8hの試料は、800℃-2hの試料に比べ、全体的に発達した孔が生じていることが確認できる。一部分的ではなく広範囲的に賦活が進んでいることから、昇温時間は長く、昇温速度は遅い方がよいと考えられる。
【0076】
このように本発明の高性能活性炭は、3250/g以上、特に5000m/g以上の比表面積を有したものであって、市販されている活性炭の比表面積が1100(m2/g)程度であることと比較すると、極めて高い表面積をもつことがわかる。
【0077】
炭酸カリウムで賦活処理した活性炭試料表面に形成された細孔の大きさを測定したところ、1nm程度でいずれもミクロ孔であった。しかし、細孔の大きさは賦活時間や賦活温度によって異なると考えられる。
【0078】
賦活剤は、炭酸カリウムが最も効果的であった。炭酸カリウムを賦活剤とする場合は、350℃で炭化し、それを6時間で800℃にまで温度を高め、この温度に1時間保持することで、比表面積が大なる活性炭を得た。このときの比表面積は、表8に示すように、5571m2/gであった。さらに活性炭の調製条件を検討することによって、発達する細孔径別の調製方法を解明することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
この発明によれば、繭を用い、板状、筒状、棒状のほか、活性炭の使用形態に合わせて任意の形状に加工することができる、高比表面積をもつ高性能活性炭およびその製造方法の提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】350℃で炭化処理のみした繭試料(比較例1)の表面SEM写真である。
【図2】800℃で炭化処理のみした繭試料(比較例2)の表面SEM写真である。
【図3】350℃で低温炭化処理を行い、炭酸カリウム水溶液に浸漬し、800℃まで2時間で昇温させて高温炭化処理を施した繭試料(実施例1)の表面SEM写真である。
【図4】350℃で低温炭化処理を行い、炭酸カリウム水溶液に浸漬し、800℃まで8時間で昇温させて高温炭化処理を施した繭試料(実施例2)の表面SEM写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3