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明細書 :耐震架構構造及びその設計方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4445587号 (P4445587)
公開番号 特開2001-220709 (P2001-220709A)
登録日 平成22年1月22日(2010.1.22)
発行日 平成22年4月7日(2010.4.7)
公開日 平成13年8月17日(2001.8.17)
発明の名称または考案の名称 耐震架構構造及びその設計方法
国際特許分類 E01D   1/00        (2006.01)
FI E01D 1/00 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2000-031700 (P2000-031700)
出願日 平成12年2月9日(2000.2.9)
審査請求日 平成18年11月10日(2006.11.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
発明者または考案者 【氏名】松本 信之
【氏名】涌井 一
【氏名】大屋戸 理明
【氏名】大内 一
【氏名】岡野 素之
個別代理人の代理人 【識別番号】100099704、【弁理士】、【氏名又は名称】久寶 聡博
審査官 【審査官】西田 秀彦
参考文献・文献 特開平11-323826(JP,A)
特開平11-193639(JP,A)
米国特許第05271197(US,A)
調査した分野 E01D 1/00、22/00
特許請求の範囲 【請求項1】
互いに対向する位置にて立設された一対の柱と該柱の頂部に架け渡された梁とからなるRCラーメン架構と、該RCラーメン架構の構面内に配置され両端が前記柱の中間位置近傍にそれぞれピン接合された逆V字状又はV字状の偏心ブレース材と、該逆V字状の偏心ブレース材の上端と前記梁との間又は前記V字状の偏心ブレース材の下端と前記柱の脚部を連結する基礎梁との間に介在されたダンパーとからなるとともに、大地震時において前記一対の柱の上下端に塑性ヒンジが生じるように構成したことを特徴とする耐震架構構造。
【請求項2】
互いに対向する位置にて立設された一対の柱と該柱の頂部に架け渡された梁とからなるRCラーメン架構と、該RCラーメン架構の構面内に配置され両端が前記柱の中間位置近傍にそれぞれピン接合された逆V字状の偏心ブレース材と、該逆V字状の偏心ブレース材の上端と前記梁との間に介在されたダンパーとからなる耐震架構構造の設計方法であって、該耐震架構構造を、前記RCラーメン架構の剛接点を回転バネに置換したRC解析モデルと、前記柱及び前記梁をそれぞれ仮想剛体柱、仮想剛体梁に置換して互いにピン接合し前記ダンパーを前記仮想剛体梁と前記偏心ブレース材の上端との間に介在されてなるダンパーブレース解析モデルとに分解した状態で個別にモデル化し、
前記耐震架構構造に作用させる設計外力Pのうち、前記ダンパーブレース解析モデルの負担分Pdbを、hを前記仮想剛体柱の脚部から前記仮想剛体梁までの高さ、h´を前記仮想剛体柱のブレース接合位置から前記仮想剛体梁までの高さ、Hbをダンパーの荷重変位特性として
Pdb=(h´/h)Hb
とするとともに、前記RC解析モデルの負担分Prcを、
Prc=P—Pdb
とし、前記ダンパーブレース解析モデルにPdbを、前記RC解析モデルにPrcをそれぞれ作用させて弾塑性解析を個別に行い、前記耐震架構構造の断面設計を行うことを特徴とする耐震架構構造の設計方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐震性が要求される耐震架構構造及びその設計方法、特に道路、鉄道等に供される高架橋の下部構造に適用される耐震架構構造及びその設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
道路、鉄道等の橋梁には、河川、海峡等を横断する狭義の橋梁のほかに市街地において連続的に建設される、いわゆる高架橋がある。かかる高架橋は、効率的な土地利用の観点から、道路上、鉄道上あるいは河川上の空間に連続して建設されるものであり、道路と道路あるいは道路と鉄道とが平面で交差する場合にそれらのいずれかを高架橋とすることにより、交通渋滞を解消することも可能となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
かかる高架橋を構築するにあたり、従来は、RCラーメン架構からなる橋脚で下部構造を構築するのが一般的であったが、最近では、該RCラーメン架構にダンパーブレースを組み合わせた下部構造が研究開発されている。
【0004】
この下部構造は、RCラーメン架構の構面内にダンパーブレースを配置してなるものであり、耐震性を向上させることができるという点で今後多いに期待されているものである。
【0005】
しかしながら、RCラーメン架構内に鉄骨偏心ブレースを配置するとともに該鉄骨偏心ブレースとRCラーメン架構との間にダンパーを介在させる場合、該ダンパーが許容変形量の小さなダンパー、例えば履歴減衰型せん断ダンパーである場合には、大地震の際にダンパーが先に破断し、RCラーメン架構の靭性能を十分に活かすことができないという問題を生じていた。
【0006】
また、ダンパーが比較的小さな変形で破断してしまう場合には、ダンパーやRCラーメン架構の耐力を増加せざるを得ないが、その場合には、当然ながら基礎や杭にも耐力増加が要求されることとなり、結局、全体として大断面の構造となり、コスト面で問題を生じていた。
【0007】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、ダンパーやRCラーメン架構を大断面とせずとも耐震性を向上させることが可能な耐震架構構造及びその設計方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る耐震架構構造は請求項1に記載したように、互いに対向する位置にて立設された一対の柱と該柱の頂部に架け渡された梁とからなるRCラーメン架構と、該RCラーメン架構の構面内に配置され両端が前記柱の中間位置近傍にそれぞれピン接合された逆V字状又はV字状の偏心ブレース材と、該逆V字状の偏心ブレース材の上端と前記梁との間又は前記V字状の偏心ブレース材の下端と前記柱の脚部を連結する基礎梁との間に介在されたダンパーとからなるとともに、大地震時において前記一対の柱の上下端に塑性ヒンジが生じるように構成したものである。
【0009】
また、本発明に係る耐震架構構造の設計方法は請求項2に記載したように、互いに対向する位置にて立設された一対の柱と該柱の頂部に架け渡された梁とからなるRCラーメン架構と、該RCラーメン架構の構面内に配置され両端が前記柱の中間位置近傍にそれぞれピン接合された逆V字状の偏心ブレース材と、該逆V字状の偏心ブレース材の上端と前記梁との間に介在されたダンパーとからなる耐震架構構造の設計方法であって、該耐震架構構造を、前記RCラーメン架構の剛接点を回転バネに置換したRC解析モデルと、前記柱及び前記梁をそれぞれ仮想剛体柱、仮想剛体梁に置換して互いにピン接合し前記ダンパーを前記仮想剛体梁と前記偏心ブレース材の上端との間に介在されてなるダンパーブレース解析モデルとに分解した状態で個別にモデル化し、
【0010】
前記耐震架構構造に作用させる設計外力Pのうち、前記ダンパーブレース解析モデルの負担分Pdbを、hを前記仮想剛体柱の脚部から前記仮想剛体梁までの高さ、h´を前記仮想剛体柱のブレース接合位置から前記仮想剛体梁までの高さ、Hbをダンパーの荷重変位特性として
【0011】
Pdb=(h´/h)Hb
【0012】
とするとともに、前記RC解析モデルの負担分Prcを、
【0013】
Prc=P—Pdb
【0014】
とし、前記ダンパーブレース解析モデルにPdbを、前記RC解析モデルにPrcをそれぞれ作用させて弾塑性解析を個別に行い、前記耐震架構構造の断面設計を行うものである。
【0015】
本発明に係る耐震架構構造においては、大地震時において柱の上下端に塑性ヒンジを生じるようにしておけば、各柱は、その上下端でのみ曲率が生じ、中間位置近傍ではほぼ直線状に傾斜する変形状態となる。
【0016】
そして、ダンパーは、かかる直線傾斜状態の柱から強制変形を受けることになるため、ダンパーに生じる相対水平変形量は、偏心ブレース材端部の取付け高さの比率に応じてRCラーメン架構に生じる水平変形量よりも低減される。例えば、柱のちょうど二等分点に接合した場合であれば、ダンパーに生じる相対水平変形量は、RCラーメン架構に生じる水平変形量のほぼ二分の一となる。
【0017】
したがって、この場合について言えば、RCラーメン架構が従来よりも二倍の変形量まで変形することが可能となり、RCラーメン架構の靭性は十分に活用される。
【0018】
なお、偏心ブレース材と柱とをピン接合してあるため、偏心ブレース材の端部に曲げモーメントが生じるおそれはなく、したがって、該端部がピン接合箇所にて曲げ破壊するおそれはない。
【0019】
上述した本発明に係る耐震架構構造を設計するには、まず、耐震架構構造をRC解析モデルとダンパーブレース解析モデルの2つに分解した状態でモデル化する。これは、RCラーメン架構とダンパーブレースとが混在した全体系で考えた場合にそのモデル化が煩雑かつ困難になったり、解析時間が長くなったりして実用化に適さないことに鑑みたものである。
【0020】
ここで、RC解析モデルは、RCラーメン架構をその柱の上下端で塑性化させることを前提とし、RCラーメン架構の剛接点(柱頭及び柱脚)を回転バネに置換したものと考えてモデル化する。
【0021】
一方、ダンパーブレース解析モデルは、上述の柱及び梁をそれぞれ仮想剛体柱、仮想剛体梁に置換して互いにピン接合し、上述のダンパーを仮想剛体梁と偏心ブレース材の上端との間に介在されてなるものと考えてモデル化する。
【0022】
これは、RCラーメン架構をその柱の上下端で塑性化させることを前提とした場合、柱は、その上下端でのみ曲率を持ち、中間位置では、直線状に傾いた状態となるとともに、ダンパーにはかかる変形状態のRCラーメン架構から強制変形が作用することとなるため、結局、RCラーメン架構の全体変形のうち、偏心ブレース材がピン接合された柱位置に応じた比率分がダンパーに強制変形として入り、その結果として、ダンパーが相対変形を生ずる。
【0023】
したがって、柱及び梁をそれぞれ仮想剛体柱、仮想剛体梁に置換して互いにピン接合し、上述のダンパーを仮想剛体梁と偏心ブレース材の上端との間に介在されてなるものと考えてモデル化を行うことは、工学的に十分な妥当性を持つ。
【0024】
このようにRC解析モデルとダンパーブレース解析モデルのモデル化が終了したならば、耐震架構構造に作用させるべき設計外力Pを、RC解析モデルとダンパーブレース解析モデルのそれぞれに分配する、すなわち、ダンパーブレース解析モデルにはPdbを、RC解析モデルにはPrcをそれぞれ作用させて弾塑性解析を個別に行い、しかる後にそれぞれの解析結果にしたがって耐震架構構造の断面設計を行う。
【0025】
ここで、ダンパーブレース解析モデルの負担分Pdbは、hを仮想剛体柱の脚部から仮想剛体梁までの高さ、h´を仮想剛体柱のブレース接合位置から仮想剛体梁までの高さ、Hbをダンパーの荷重変位特性としたならば、
【0026】
Pdb=(h´/h)Hb
【0027】
と表すことができるとともに、RC解析モデルの負担分Prcについては、
【0028】
Prc=P—Pdb
【0029】
と表すことができる。
【0030】
この式からわかるように、ダンパーブレース解析モデルの負担分Pdbは、(h´/h)が決まれば、後はダンパーの荷重変位特性Hbによって一義的に決定されることとなり、本来であれば、RCラーメン架構とダンパーブレースとが混在した複雑な構造モデルとして解析しなければならないものが、偏心ブレースを基部定着していた従来と同様、RCラーメン架構とダンパーブレースとを独立させて個別に解析できるようになり、設計実務上、きわまえて有効な簡略設計方法となる。
【0031】
本発明で言うところの耐震架構構造がどの部位に適用されるかは任意であり、例えば建築物の耐震壁に適用してもよいし、高架橋の下部構造である橋脚に適用してもよい。なお、高架橋は、鉄道用高架橋、道路用高架橋などを含む概念であり、その用途が任意であることは言うまでもない。
【0032】
偏心ブレース材は、主として鉄骨ブレース材を採用することが可能である。
【0033】
ダンパーは、典型的には、極軟鋼やスリット入り薄鋼板等で構成した履歴減衰型せん断ダンパーが対象となるが、相対水平変形によって減衰力を発揮し、なおかつ変形量を大きくとれないものであればいかなる原理、構造のダンパーでもよく、履歴減衰型曲げダンパーなども採用可能である。
【0034】
偏心ブレース材の両端を柱のどの箇所にピン接合するかに関し、本発明でいう「中間位置近傍」とは、柱の脚部や頭部を除いたそれらの間の適宜位置という意味であって、柱の二等分点に限定されるという意味ではなく、(h´/h)をどのように設定するかは設計上の事項である。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る耐震架構構造及びその設計方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
図1は、本実施形態に係る耐震架構構造としての高架橋の下部構造を橋軸方向から見た正面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る高架橋の下部構造1は、互いに対向する位置にて立設された橋脚状の一対の柱2、2と該柱の頂部に架け渡された梁3とからなるRCラーメン架構4と、該RCラーメン架構の構面内に配置され両端が柱2、2の中間位置近傍にそれぞれピン接合された逆V字状の偏心ブレース材5と、該逆V字状の偏心ブレース材の上端と梁3との間に介在されたダンパーである履歴減衰型せん断ダンパー6とからなる。ここで、柱2は、杭7を打ち込んだ上でその上に設けられたフーチング8に立設してある。また、偏心ブレース材5は例えば鉄骨材で形成することができる。
【0037】
履歴減衰型せん断ダンパー6は、地震時の振動エネルギーを履歴減衰によって吸収し、橋軸に直交する方向の高架橋の揺れを速やかに収斂させるようになっている。
【0038】
かかる履歴減衰型せん断ダンパー6は、通常の薄鋼板にスリットを多数入れて構成したり、極軟鋼で形成されたもので構成することが可能であり、必要に応じて補剛リブを設け、局部座屈を防止するのが望ましい。かかる履歴減衰型せん断ダンパー6は、メンテナンス時に交換できるよう、偏心ブレース材5と梁3との間に着脱自在に取り付けておくのがよい。
【0039】
逆V字状の偏心ブレース材5の両端を柱2、2のどの箇所にピン接合するかについては、例えば、柱2の二等分点近傍に設定することが考えられる。
【0040】
本実施形態に係る耐震架構構造としての高架橋の下部構造1においては、まず、大地震時において柱の上下端に塑性ヒンジを生じるようにしておくことを前提とする。このようにすれば、各柱2は、その上下端でのみ曲率が生じ、中間位置近傍ではほぼ直線状に傾斜する変形状態となる。
【0041】
そして、履歴減衰型せん断ダンパー6は、かかる直線傾斜状態の柱2から強制変形を受けることになるため、該履歴減衰型せん断ダンパーに生じる相対水平変形量δdは、図2に示すように、偏心ブレース材5端部の取付け高さの比率、すなわち(h´/h)(h;柱2の脚部から梁3までの高さ、h´;柱2上のブレース接合位置から梁3までの高さ)に応じて、RCラーメン架構4に生じる全体水平変形量δよりも低減され、(h´/h)・δとなる。
【0042】
つまり、本実施形態のように、偏心ブレース材5の端部を柱2のちょうど二等分点にピン接合した場合であれば、履歴減衰型せん断ダンパー6に生じる相対水平変形量δdは、RCラーメン架構4に生じる水平変形量δのほぼ二分の一となる。
【0043】
したがって、この場合について言えば、履歴減衰型せん断ダンパー6が先行破断することなく、RCラーメン架構4が従来よりも二倍の変形量まで変形することが可能となり、RCラーメン架構4の靭性は十分に活用される。
【0044】
なお、偏心ブレース材5と柱2とをピン接合してあるため、偏心ブレース材5の端部に曲げモーメントが生じるおそれはなく、したがって、該端部がピン接合箇所にて曲げ破壊するおそれはない。
【0045】
次に、本発明に係る耐震架構構造としての高架橋の下部構造1を設計するには、まず、耐震架構構造である高架橋の下部構造1を、図3に示すようにRC解析モデル11と、ダンパーブレース解析モデル12の2つに分解した状態でモデル化する。これは、RCラーメン架構4とダンパーブレース(偏心ブレース材5及び履歴減衰型せん断ダンパー6)とが混在した全体系で考えた場合にそのモデル化が煩雑かつ困難になったり、解析時間が長くなったりして実用化に適さないことに鑑みたものである。
【0046】
ここで、RC解析モデル11は、RCラーメン架構4をその柱2の上下端で塑性化させることを前提とし、RCラーメン架構の剛接点(柱頭及び柱脚)を同図に示すように回転バネ21に置換したものと考えてモデル化する。
【0047】
なお、回転バネ21は、変位(回転量)に関して非線形のバネであって、回転量が小さい領域、つまり弾性領域では、剛接に相当する大きな剛性を持つが、変形が進むにつれて塑性化し、大変形領域では、剛性が小さな塑性ヒンジとなるような特性として付与されるものである。
【0048】
一方、ダンパーブレース解析モデル12は、上述の柱2及び梁3をそれぞれ仮想剛体柱22、仮想剛体梁23に置換して互いにピン接合し、仮想剛体梁23と偏心ブレース材5の上端との間に履歴減衰型せん断ダンパー6が介在されてなるものと考えてモデル化する。
【0049】
これは、RCラーメン架構4をその柱2の上下端で塑性化させることを前提とした場合、柱2は、その上下端でのみ曲率を持ち、中間位置では、直線状に傾いた状態となるとともに、履歴減衰型せん断ダンパー6にはかかる変形状態のRCラーメン架構4から強制変形が作用することとなるため、結局、RCラーメン架構4の全体変形δのうち、偏心ブレース材5がピン接合された柱2の位置に応じた比率分、上述の例で言えば、(h´/h)が履歴減衰型せん断ダンパー6に強制変形として入り、その結果として、履歴減衰型せん断ダンパー6が(h´/h)・δの相対変形を生ずる。
【0050】
したがって、柱2及び梁3をそれぞれ仮想剛体柱22、仮想剛体梁23に置換して互いにピン接合し、履歴減衰型せん断ダンパー6を仮想剛体梁23と偏心ブレース材5の上端との間に介在されてなるものと考えてモデル化を行うことは、工学的に十分な妥当性を持つ。
【0051】
このようにRC解析モデル11とダンパーブレース解析モデル12のモデル化が終了したならば、耐震架構構造である高架橋の下部構造1に作用させるべき設計外力Pを、RC解析モデル11とダンパーブレース解析モデル12のそれぞれに分配する、すなわち、ダンパーブレース解析モデル12にはPdbを、RC解析モデル11にはPrc(Prc=P—Pdb)をそれぞれ作用させて弾塑性解析を個別に行い、しかる後にそれぞれの解析結果にしたがって耐震架構構造の断面設計を行うとともに、高架橋の下部構造1の全体性能については、それぞれの解析結果を重ね合わせたものとして評価する。
【0052】
ここで、履歴減衰型せん断ダンパー6の荷重変位特性(相対変形量δに対する荷重曲線)をHbと定義したならば、該ダンパーに強制的な相対変形(h´/h)・δが入るのであるから、ダンパーブレース解析モデル12の負担分Pdbは、その強制変形から自ずと定まり、(h´/h)Hbと表すことができる。
【0053】
この式からわかるように、ダンパーブレース解析モデル12の負担分Pdbは、(h´/h)が決まれば、後はダンパーの荷重変位特性Hbによって一義的に決定されることとなる。
【0054】
図4は、上述したいわば簡略法によって設計することの妥当性を検証した結果を示したグラフである。同図は、縦軸にRCラーメン架構への作用荷重を、横軸にそのときに生じる変位をとった荷重変位曲線であり、実線は、(h´/h)を約0.6としたとき、上述の簡略法にしたがって、RCラーメン架構の負担分Prcを、(P—0.6Hb)として解析した結果をプロットしたものであり、点線は、RCラーメン架構だけを取り出してその荷重変位関係をプロットしたものである。
【0055】
かかる図でわかるように、RCラーメン架構のいわば真の荷重変位関係(点線)は、上述した簡略法によって求められた荷重変位関係ときわめて良好に一致しており、かかる簡略法の妥当性は、十分に検証されたと言える。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る耐震架構構造によれば、偏心ブレース材5の両端を柱2の中間位置近傍に接合したので、履歴減衰型せん断ダンパー6に生じる相対水平変形量が、偏心ブレース材5端部の取付け高さの比率(h´/h)に応じてRCラーメン架構4に生じる水平変形量よりも低減される、例えば、柱のちょうど二等分点に接合した場合であれば、RCラーメン架構4に生じる水平変形量のほぼ二分の一に低減されることとなる。
【0057】
したがって、RCラーメン架構4を従来よりも二倍の変形量まで変形させてその靭性を十分に活用することが可能となり、履歴減衰型せん断ダンパー6の履歴減衰による振動エネルギー吸収作用と相まって、大断面設計とせずとも、より合理的な断面設計で大地震に十分な耐震性を確保することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態に係る耐震架構構造によれば、偏心ブレース材5と柱2とをピン接合してあるため、偏心ブレース材5の端部に曲げモーメントが生じるおそれはなく、したがって、該偏心ブレース材の端部がピン接合箇所にて曲げ破壊するのを未然に防止することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る耐震架構構造によれば、逆V字状をなす偏心ブレース材5の両端を一対の柱2、2の中間高さ位置近傍にそれぞれ接合したので、偏心ブレース材5の下方に大きな空間を確保することが可能となる。
【0060】
したがって、かかる偏心ブレース材5の下方空間を営業路線用の軌道敷設空間とするなど、さまざまな有効利用が可能となる。
【0061】
なお、本実施形態に係る耐震架構構造によれば、RCラーメン架構4の構面内に逆V字状の偏心ブレース材5を配置してあるため、基礎梁を設置せずとも、偏心ブレース材5によって橋軸に直交する水平方向の剛性を十分に確保することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態に係る耐震架構構造の設計方法によれば、本来であれば、RCラーメン架構4とダンパーブレース(偏心ブレース材5及び履歴減衰型せん断ダンパー6)とが混在した複雑な構造モデルとして解析しなければならないものが、偏心ブレース材5を柱2の基部に定着していた従来と同様、RCラーメン架構4とダンパーブレースとを独立させて個別に解析できるようになり、設計実務上、きわまえて有効な簡略設計方法となる。
【0063】
本実施形態では、偏心ブレース材5を逆V字状としたが、これに代えて図5に示すように、V字状の偏心ブレース材32を採用し、その下端を履歴減衰型せん断ダンパー6を介して柱2、2が立設されているフーチング8、8をつなぐ基礎梁31に連結するようにしてもよい。
【0064】
かかる構成においても、耐震架構構造としての作用効果は上述した実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0065】
また、その設計方法についても、上述したと同様の手順で設計することができる。すなわち、まず、耐震架構構造である高架橋の下部構造1を、図3に示したRC解析モデル11とダンパーブレース解析モデル12と同様に2つに分解した状態でモデル化する。
【0066】
ここで、RC解析モデルは、RCラーメン架構4をその柱2の上下端で塑性化させることを前提とし、RCラーメン架構の剛接点(柱頭及び柱脚)を回転バネ21に置換したRC解析モデル11と同様でよい。
【0067】
一方、ダンパーブレース解析モデルは、上述の柱2及び梁3をそれぞれ仮想剛体柱22、仮想剛体梁23に置換して互いにピン接合するとともに、基礎梁31についても、図6に示すように仮想剛体基礎梁41として仮想剛体柱22の脚部とピン接合し、該仮想剛体基礎梁41と偏心ブレース材32の上端との間に履歴減衰型せん断ダンパー6が介在されてなるものと考えてモデル化すればよい。
【0068】
以下、考え方や手順など上述の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0069】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る耐震架構構造によれば、偏心ブレース材の両端を柱の中間位置近傍に接合したので、ダンパーに生じる相対水平変形量が、偏心ブレース材端部の取付け高さの比率(h´/h)に応じてRCラーメン架構に生じる水平変形量よりも低減されることとなる。
【0070】
したがって、RCラーメン架構を従来よりも変形させてその靭性を十分に活用することが可能となり、ダンパーの減衰による振動エネルギー吸収作用と相まって、大断面設計とせずとも、より合理的な断面設計で大地震に十分な耐震性を確保することが可能となる。
【0071】
また、本発明に係る耐震架構構造の設計方法によれば、本来であれば、RCラーメン架構とダンパーブレースとが混在した複雑な構造モデルとして解析しなければならないものが、偏心ブレース材を柱の基部に定着していた従来と同様、RCラーメン架構とダンパーブレースとを独立させて個別に解析できるようになり、設計実務上、きわまえて有効な簡略設計方法となる。
【0072】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る耐震架構構造としての高架橋の下部構造を橋軸方向から見た正面図。
【図2】本実施形態に係る耐震架構構造としての高架橋の下部構造の作用を示した概念図。
【図3】本実施形態に係る耐震架構構造の設計方法の基本的な考え方を示した概念図。
【図4】本実施形態に係る耐震架構構造の設計方法の妥当性を検証した結果を示したグラフ。
【図5】変形例に係る耐震架構構造としての高架橋の下部構造を橋軸方向から見た正面図。
【図6】変形例に係る耐震架構構造の設計方法の基本的な考え方を示した概念図。
【符号の説明】
1 高架橋の下部構造(耐震架構構造)
2 柱
3 梁
4 RCラーメン架構
5 偏心ブレース材
6 履歴減衰型せん断ダンパー(ダンパー)
11 RC解析モデル
12 ダンパーブレース解析モデル
21 回転バネ
22 仮想剛体柱
23 仮想剛体梁
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5