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明細書 :誘導電動機の速度センサレス再起動方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4493784号 (P4493784)
公開番号 特開2001-231292 (P2001-231292A)
登録日 平成22年4月16日(2010.4.16)
発行日 平成22年6月30日(2010.6.30)
公開日 平成13年8月24日(2001.8.24)
発明の名称または考案の名称 誘導電動機の速度センサレス再起動方法
国際特許分類 H02P  27/06        (2006.01)
H02P   1/30        (2006.01)
FI H02P 7/63 302H
H02P 1/30
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2000-035056 (P2000-035056)
出願日 平成12年2月14日(2000.2.14)
審査請求日 平成18年3月2日(2006.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】渡邉 朝紀
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】山村 和人
参考文献・文献 特開平11-346500(JP,A)
調査した分野 H02P 6/00 - 6/24
21/00 - 27/18
特許請求の範囲 【請求項1】
誘導電動機の速度センサレス再起動方法において、
(a)誘導電動機に最初に印加する電圧v(t)=V0 j φのオンによって生じる電流の有効分の値1rを求め、
(b)前記電流の有効分の値1rに基づいて前記誘導電動機の回転周波数ω2n≒-(L1 σ)/V0 〔i1r(t)/(t2 /2)〕(ただし、L1 は1次自己インダクタンス、L2 は2次自己インダクタンス、σは漏れ係数〔1-M2 /(L1 2 ):Mは相互インダクタンス)を検出し、
(c)前記回転周波数を用いて前記誘導電動機の再起動を行うことを特徴とする誘導電動機の速度センサレス再起動方法。
【請求項2】
誘導電動機の速度センサレス再起動方法において、
(a)誘導電動機へのステップ電圧v(t)=V0 j φ印加後の時刻t1 とt2 にて、一次電流を求め、
(b)該一次電流の有効分i1r(t1 ),i1r(t2 )と、無効分i1i(t1 ),i1i(t2 )とに基づいて前記誘導電動機の回転周波数ω2n=-6L1 σi1i(t2 )/{V0 [3-〔R1 /(L1 σ)+R2 /(L2 σ)(1+σ)〕t2 ]t2 2 }(ただし、L1 は1次自己インダクタンス、L2 は2次自己インダクタンス、σは漏れ係数〔1-M2 /(L1 2 ):Mは相互インダクタンス〕、R1 は1次抵抗、R2 は2次抵抗)を検出し、
(c)前記回転周波数を用いて前記誘導電動機の再起動を行うことを特徴とする誘導電動機の速度センサレス再起動方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導電動機の速度センサレス再起動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、回転中の誘導電動機を再起動するには、その誘導電動機の回転周波数を知る必要があるが、速度センサレス制御では直接その誘導電動機の回転周波数を検出することができない。そのため、様々な周波数の電圧を加えてインピーダンスの変化から回転周波数を求めるなどの工夫が発表されている。
【0003】
そのような先行技術としては、例えば、電学論D,119巻2号,1999,第211頁~216頁に開示されるものがあった。
図8は速度センサレスの誘導電動機の制御システムの構成図である。
この図において、1は誘導電動機(IM)、2はPWM(パルス幅変調)インバータ、3は速度制御器、4は磁束制御器、5は電流制御器、6,7,8はベクトル回転器、9は滑り角速度(周波数)演算器、10は出力電圧推定器、11は誘起電圧演算器、12は一次角周波数指令演算器、13は磁束演算器である。
【0004】
その誘導電動機1の速度センサレス再起動方法によれば、誘導電動機1のインピーダンス特性を利用し、誘導電動機1を自励発振させることにより、増幅した十分な振幅を持つα,β直交2軸の電流情報によりその回転速度を検出するようにしている。磁束を回転角周波数ω2 で積極的に発振させるため、2次時定数が短い場合や低速度の場合においても安定して速度を推定することができ、速度情報は発振した磁束または電流から簡単に求めるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の誘導電動機の速度センサレス再起動方法によれば、誘導電動機1とインバータ2によって発振器を構成し、α軸およびβ軸の電流を回転角周波数ω2 の発振周波数にて発振させる必要があるため、時間がかかる、計算が複雑であるなどの問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を除去し、速度センサレスで誘導電動機を短時間に円滑に再起動させることができる誘導電動機の速度センサレス再起動方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕誘導電動機の速度センサレス再起動方法において、誘導電動機に最初に印加する電圧v(t)=V0 j φのオンによって生じる電流の有効分の値1rを求め、前記電流の有効分の値1rに基づいて前記誘導電動機の回転周波数ω2n≒-(L1 σ)/V0 〔i1r(t)/(t2 /2)〕(ただし、L1 は1次自己インダクタンス、L2 は2次自己インダクタンス、σは漏れ係数〔1-M2 /(L1 2 ):Mは相互インダクタンス)を検出し、前記回転周波数を用いて前記誘導電動機の再起動を行うことを特徴とする。
【0008】
〔2〕誘導電動機の速度センサレス再起動方法において、誘導電動機へのステップ電圧v(t)=V0 j φ印加後の時刻t1 とt2 にて、一次電流を求め、この一次電流の有効分i1r(t1 ),i1r(t2 )と、無効分i1i(t1 ),i1i(t2 )とに基づいて前記誘導電動機の回転周波数ω2n=-6L1 σi1i(t2 )/{V0 [3-〔R1 /(L1 σ)+R2 /(L2 σ)(1+σ)〕t2 ]t2 2 }(ただし、L1 は1次自己インダクタンス、L2 は2次自己インダクタンス、σは漏れ係数〔1-M2 /(L1 2 ):Mは相互インダクタンス〕、R1 は1次抵抗、R2 は2次抵抗)を検出し、前記回転周波数を用いて前記誘導電動機の再起動を行うことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1~図5は本発明に係る誘導電動機への電圧オン時の電流の変化を示す図であり、図1はそのステップ電圧印加時の誘導電動機の一次電流(f2n=0Hz)の起動特性図、図2はそのステップ電圧印加時の誘導電動機の一次電流(f2n=50Hz)の起動特性図、図3はそのステップ電圧印加時の誘導電動機の一次電流(f2n=100Hz)の起動特性図、図4はそのステップ電圧印加時の誘導電動機の一次電流(f2n=150Hz)の起動特性図、図5はそのステップ電圧印加時の誘導電動機の一次電流(f2n=200Hz)の起動特性図である。
【0010】
なお、本発明に係る誘導電動機の制御システムとしては図8に示したものを用いることができる。
【0011】
【数1】
JP0004493784B2_000002t.gif ここで、α4 は次式で表される定数であり、
α4 =-R2 /L2 +jω2n
σは次式で表される漏れ係数であり、
σ=1-M2 /(L1 2
1 ,s2 は誘導機の伝達関数の極、すなわち次の二次方程式の根である。
【0012】
2 +〔R1 /(L1 σ)+R2 /(L2 σ)-jω2n〕s
+R1 /(L1 σ)〔(R2 /L2 )-jω2n〕=0
ω2nは回転周波数、L1 は1次自己インダクタンス、L2 は2次自己インダクタンス、R2 は2次抵抗、i1rは電流の有効分、i1iは電流の無効分である。
ステップ電圧印加時の一次電流|i|,有効分i1r,無効分i1iの時間変化を図1~図5に示す。
【0013】
これらの図からわかるように、時間tが十分短ければ、電流の近似式は、t2 の項のみを用いてもよい。
この時
1r(t)≒V0 /(L1 σ)(R2 /L2 )(t2 /2)
1r(t)≒V0 /(L1 σ)(-ω2n)(t2 /2)
と表される。
【0014】
従って、i1rの式から次のように、回転角周波数ω2nを求めることができる。
ω2n≒-(L1 σ)/V0 〔i1r(t)/(t2 /2)〕
なお、特に、図1及び図2を見ると、無効分i1rの代わりに、一次電流の振幅|i1 |を用いることができる。
このように、この実施例によれば、誘導電動機の動特性を利用して、誘導電動機への最初の電圧印加時の電流の値とから、誘導電動機2次抵抗値と回転周波数をごく短時間で決定することができる。
【0015】
次に、本発明の他の実施例の誘導電動機の回転周波数の検出方法について説明する。
図6は本発明の他の実施例を示すものであり、誘導電動機のステップ電圧印加後の経過時間(t1 )が0.5ms時点の一次電流を示す図、図7は本発明の実施例を示すものであり、誘導電動機のステップ電圧印加後の経過時間(t2 )が1ms時点の一次電流を示す図である。
【0016】
まず、ステップ電圧印加後の時刻t1 とt2 にて、一次電流を求め、これらの有効分をi1r(t1 ),i1r(t2 )、無効分をi1i(t1 ),i1i(t2 )とすると、次の式が成り立つ。
ω2n[3t1 2 -〔R1 /(L1 σ)+R2 /(L2 σ)(1+σ)〕t1 3
=(-6L1 σ/V0 )〔i1i(t1 )〕
ω2n[3t2 2 -〔R1 /(L1 σ)+R2 /(L2 σ)(1+σ)〕t2 3
=(-6L1 σ/V0 )〔i1i(t2 )〕
これらより、
1 /(L1 σ)+R2 /(L2 σ)(1+σ)=3〔t1 2 1i(t2
-t2 2 1i(t1 )/〔t1 3 1i(t2 )-t2 3 1i(t1 )〕
ω2n=-6L1 σi1i(t2 )/{V0 [3-〔R1 /(L1 σ)
+R2 /(L2 σ)(1+σ)〕t2 ]t2 2
このように、この実施例の方法では、二度一次電流を求める必要があるが、電流にt3 の項の影響が加わっても回転角周波数を求めることができる。
【0017】
このように、この実施例によれば、ステップ電圧印加後の時刻t1 とt2 にて、一次電流を求め、これらの有効分i1r(t1 ),i1r(t2 )と無効分i1i(t1 ),i1i(t2 )に基づいた、誘導電動機の動特性を利用して、誘導電動機2次抵抗値と回転周波数をごく短時間で決定することができる。
そして、誘導電動機とインバータの制御に何ら新しい要素を付加することなく、しかも1m秒程度のごく短時間で誘導電動機の回転周波数を検出することができ、速度センサレスで誘導電動機の再起動を円滑に行うことができる。
【0018】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0019】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、速度センサレスで誘導電動機を短時間に円滑に再起動することができる。しかも制御上付加するものが不要であり、速度センサレス制御の実用化への寄与は著大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る誘導電動機のステップ電圧印加時の誘導電動機の一次電流(f2n=0Hz)の起動特性図である。
【図2】 本発明に係る誘導電動機のステップ電圧印加時の誘導電動機の一次電流(f2n=50Hz)の起動特性図である。
【図3】 本発明に係る誘導電動機のステップ電圧印加時の誘導電動機の一次電流(f2n=100Hz)の起動特性図である。
【図4】 本発明に係る誘導電動機のステップ電圧印加時の誘導電動機の一次電流(f2n=150Hz)の起動特性図である。
【図5】 本発明に係る誘導電動機のステップ電圧印加時の誘導電動機の一次電流(f2n=200Hz)の起動特性図である。
【図6】 本発明の他の実施例を示す誘導電動機のステップ電圧印加後(t1 )が0.5ms時点の一次電流を示す図である。
【図7】 本発明の他の実施例を示す誘導電動機のステップ電圧印加後(t2 )が1ms時点の一次電流を示す図である。
【図8】 速度センサレスの誘導電動機の制御システムの構成図である。
【符号の説明】
1 誘導電動機(IM)
2 PWM(パルス幅変調)インバータ
3 速度制御器
4 磁束制御器
5 電流制御器
6,7,8 ベクトル回転器
9 滑り角速度(周波数)演算器
10 出力電圧推定器
11 誘起電圧演算器
12 一次角周波数指令演算器
13 磁束演算器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7