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明細書 :トンネル緩衝工

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4243746号 (P4243746)
公開番号 特開2001-248390 (P2001-248390A)
登録日 平成21年1月16日(2009.1.16)
発行日 平成21年3月25日(2009.3.25)
公開日 平成13年9月14日(2001.9.14)
発明の名称または考案の名称 トンネル緩衝工
国際特許分類 E21D   9/14        (2006.01)
FI E21D 9/14
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2000-055520 (P2000-055520)
出願日 平成12年3月1日(2000.3.1)
審査請求日 平成19年2月27日(2007.2.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】中西 正利
【氏名】高橋 亮一
【氏名】菊地 勝浩
【氏名】田中 靖幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100082016、【弁理士】、【氏名又は名称】内田 敏彦
審査官 【審査官】田畑 覚士
参考文献・文献 特開昭51-116033(JP,A)
特公昭55-031274(JP,B1)
山内、飯田、中西、小野,トンネル入口緩衝工の開口部形状に関する模型実験,第7回交通・物流部門大会講演論文集,日本,社団法人日本機械学会,1998年12月 2日,No.98-37,P413-414
調査した分野 E21D 9/14
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
トンネル状の覆体と該覆体に設けられた矩形状の開口部とからなるトンネル緩衝工において、前記開口部の一辺を緩衝工の開放側端面に面して設けたことを特徴とするトンネル緩衝工。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道のトンネルの坑口に設置されるトンネル緩衝工に関するものであり、更に詳しくは、列車がトンネル緩衝工へ突入する時又は緩衝工から退出する時に発生する空気圧によって周辺家屋の建具が振動するのを緩和し、沿線環境の維持や列車の高速化に寄与するものである。
【0002】
【従来の技術】
列車がトンネルへ突入すると、トンネル内の空気が圧縮され、その圧力が圧縮波としてトンネル入口から出口側へと伝播し、トンネル出口から微気圧波と呼ばれる空気圧が放出される。トンネル微気圧波の大きさは、列車がトンネルに突入する速度が高いほど大きく、トンネル出口におけるトンネル内の圧縮波の圧力勾配による。トンネル微気圧波が大きいとトンネル出口で衝撃音が発生したり、トンネル出口近くの家屋の建具が振動するなどの環境問題が生じうる。
【0003】
そこで、トンネル微気圧波を低減するために、特公昭55-31274号公報に開示された技術のように、トンネル入口にトンネル緩衝工が設置される。トンネル緩衝工は、列車が突入する時にトンネル内に発生する圧縮波の圧力勾配を緩和してトンネル微気圧波を低減するものである。図3は、従来のトンネル緩衝工1の一例を示すものである。このトンネル緩衝工1は、トンネル本坑よりも大きい断面積を有するトンネル状の覆体2を有し、覆体2の下り側の側面に開口部3が設けられている。トンネル緩衝工1は、覆体2の長さが長いほどトンネル微気圧波の低減効果が高くなることが明らかになっている。
【0004】
尚、開口部3の面積、数、位置によってもトンネル緩衝工の効果が異なり、従来はトンネル微気圧波のピークの圧力値が最小になるように開口部3を設けていた。開口部3の位置は、覆体2の側面の前後方向のほぼ中央に設けるのが通常であった。また最近では、列車の高速化に伴ってトンネル緩衝工1を長くすることが行われ、開口部3の数も多くなる傾向があった。例えば、山陽新幹線の一つのトンネル(全長11747m)の場合、トンネルの西口(博多駅)側に設けた緩衝工1の長さを35.76mから48.16mに延長し、開口部3の数を四つにして列車の高速化に対応するようにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この延長工事により、上り列車がトンネル西口へ突入するときに、トンネル出口(新大阪駅側の東口)側で発生するトンネル微気圧波は低減された。ところが、下り列車が新大阪駅側からトンネル内へ進入し、トンネル西口のトンネル緩衝工1を通過するときに、当該西口側の近くの家屋の建具が振動するという、従来知られていなかった現象が発生するようになった。そこで、当該トンネル緩衝工1の近くで空気の圧力を測定したところ、列車がトンネル緩衝工1に突入するときと、トンネル緩衝工1を退出するときに、トンネル緩衝工自体から圧力波が発生していることが観測され(この圧力波を、以下は、「トンネル突入波」・「トンネル退出波」という)、その圧力波が家屋の建具を振動させていることがわかった。
【0006】
図6の図(A)は、下り列車がトンネル西口を退出するときのトンネル退出波の測定結果を示すものであり、同図(B)は、上り列車がトンネル西口へ突入するときのトンネル東口で発生する微気圧波の測定結果を示すものである。図(B)から明らかなように、トンネル緩衝工1を延長したことにより、トンネル東口での微気圧波としては23~39Paの範囲であり、低い値を示している。ところが、図(A)に示すトンネル退出波の圧力変動は大きく、トンネル西口近くの家屋の建具に大きなガタツキ音を発生させており、新たな環境問題を生じていた。なお、図6の図(A)を分析して見ると、トンネル退出波は、列車の先頭部、二つのパンタグラフ部、後尾部がそれぞれトンネル緩衝工1を退出するときに発生しており、特に列車の先頭部が退出するときの圧力変動が大きいことが顕著である。
【0007】
このような新たな問題であるトンネル退出波を低減させるトンネル緩衝工1の構造として、本発明者らは鋭意研究を重ねた。その結果によれば、トンネル緩衝工1の開口部3の一つを閉塞すると、その部分ではトンネル退出波は発生せず、退出波の波の数が一つ減少したので、トンネル退出波は開口部3のそれぞれについて発生し、これらの開口部3を列車の先頭部、パンタグラフ部、後尾部が通過するときに、それぞれの開口部3において圧力変動が発生することに起因するものであることが明らかとなった。
【0008】
またこのような分析結果に基づいて、図7に示すように、緩衝工1に設ける開口部4の形状を、緩衝工1の開放側端面から開口面積が連続して減少するようにしたところ、図8の図(A)に示すように、トンネル退出波の発生はほとんど見られなくなった。ところが、この場合には、同図の図(B)に示すように、トンネル東口側での微気圧波が大きくなるという問題が生じた。トンネル退出波の発生がほとんど見られなくなったのは、開口部4の縦の辺(上下方向の辺)を省略したことにより、大きな圧力変動がなくなったものと判断される。
【0009】
つまり、列車の高速化に伴うトンネル微気圧波の発生を低減させるために、トンネル緩衝工1を延伸し、開口部3の数を増やすと、開口部3の数に応じてトンネル退出波の波数が増加し、その結果、近くの家屋の建具の振動が顕著になるという問題が生じた。このトンネル退出波は、開口部3を閉塞すると無くなるが、その場合にはトンネル微気圧波が発生するという問題がある。このように、従来においては、トンネル退出波とトンネル微気圧波の両方を低減できるという技術が確立されておらず、その開発が望まれていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は従来の前記課題に鑑みてこれを改良除去したものであって、トンネル緩衝工の開口部の形状を特定することで、トンネル突入波・トンネル退出波とトンネル微気圧波の両方の圧力変動を減少させることのできる技術を提供せんとするものである。
【0011】
而して、前記課題を解決するために本発明が採用した手段は、トンネル状の覆体と該覆体に設けられた矩形状の開口部とからなるトンネル緩衝工において、前記開口部の一辺を緩衝工の開放側端面に面して設けたことを特徴とするトンネル緩衝工である。
トンネル緩衝工の開口部の上下方向の辺で圧力変動が発生するので、開口部の一辺を緩衝工の開放側端面に面して設けることにより、開口部の上下方向の一辺が無くなり、そこでの圧力変動は発生しなくなる。上下方向の辺は、他方の側において一辺残ることになるが、圧力変動が生じる回数を減少させることができ、近くの家屋の建具を加振する回数を減少させることによって、建具の振動振幅を小さくし、建具のガタツキ音を緩和することが可能である。なお、この矩形状の開口部の場合は、トンネル微気圧波の減少をも実現することが可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の構成を図面に示す発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。なお、従来の場合と同一符号は同一部材である。図1は、本発明の一実施の形態に係るトンネル緩衝工5の開口部6を示す側面図である。同図に示す如く、このトンネル緩衝工5は、覆体2の側面のうち、トンネル緩衝工5を退出する列車が通る側の側面に、トンネル緩衝工5の開放側端面5aから連続する矩形状の開口部6を形成したものである。
【0013】
このように、開口部6の数を一つとすることにより、圧力変動の発生回数を一回に減らすことができる。また開口部6の一辺を緩衝工5の開放側端面5aに面して設けることにより、開口部6の上下方向の一辺が無くなり、そこでの圧力変動は発生しなくなる。上下方向の辺は、他方の側において一辺だけ残ることになるが、圧力変動が生じる回数を減少させることで、近くの家屋の建具を加振する回数を減少させることができ、これによって建具の振動振幅を小さくし、建具のガタツキ音を緩和することが可能である。
【0014】
またこのような開口部6の場合、当該トンネル緩衝工5へ突入する列車によって発生するトンネル出口側での微気圧波も列車がトンネル緩衝工5へ突入するときの圧縮波が連続した矩形状の開口部6から放出されることによって緩和され、微気圧波を低減させることも可能である。
【0015】
図2の図(A)及び図(B)は、この実施の形態に係る開口部6の構成を、前述した実際のトンネルの緩衝工へ適用してトンネル退出波とトンネル微気圧波の圧力変動波形を測定した結果を示すものである。これによれば、図(A)に示すように、トンネル退出波の発生は列車先頭部による一回だけであり、波の大きさも小さくすることができた。また図(B)に示すように、上り列車がトンネル西口へ突入したときに発生するトンネル東口でのトンネル微気圧波は、その大きさが29~40Paであり、図6の図(B)に示す従来の場合に比較して1Pa増加しただけであり、問題となるレベルではない。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にあっては、トンネル状の覆体と該覆体に設けられた矩形状の開口部とからなるトンネル緩衝工において、前記開口部の一辺を緩衝工の開放側端面に面して設けたから、開口部の上下方向の一辺が無くなり、そこでの圧力変動が発生しなくなる。開口部の上下方向の辺は、他方の側において一辺残ることになるが、圧力変動が生じる回数は減少する。そのため、近くの家屋の建具を加振する回数を減少させることができ、建具の振動振幅を小さくし、建具のガタツキ音を緩和することができる。また、この矩形状の開口部の場合は、トンネル微気圧波の減少をも実現することが可能である。つまり、本発明にあっては、トンネル退出波とトンネル微気圧波の両方の圧力変動に起因する問題を解決することができ、列車の高速化に対応した上で、トンネル近傍の環境改善に寄与することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るものであり、トンネル緩衝工の開口部を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るものであり、図(A)はトンネル退出波の測定波形を、図(B)はトンネル微気圧波の測定波形を示す図面である。
【図3】従来のトンネル緩衝工を示す斜視図である。
【図4】従来のトンネル緩衝工の開口部を示す側面図である。
【図5】実際のトンネルにおけるトンネル退出波とトンネル微気圧波の測定状態を示す平面図である。
【図6】従来技術に係るものであり、図(A)はトンネル退出波の測定波形を、図(B)はトンネル微気圧波の測定波形を示す図面である。
【図7】トンネル退出波を減少させるためのトンネル緩衝工に設ける開口部を示す側面図である。
【図8】図7に示すトンネル緩衝工における圧力変動波形を示すものであり、図(A)はトンネル退出波を、図(B)はトンネル微気圧波を示す図面である。
【符号の説明】
2…覆体、5…トンネル緩衝工、5a…トンネル緩衝工の開放側端面、6…矩形状の開口部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7