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明細書 :電鉄用直流き電システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3618273号 (P3618273)
公開番号 特開2001-260719 (P2001-260719A)
登録日 平成16年11月19日(2004.11.19)
発行日 平成17年2月9日(2005.2.9)
公開日 平成13年9月26日(2001.9.26)
発明の名称または考案の名称 電鉄用直流き電システム
国際特許分類 B60M  3/06      
H02J  1/00      
FI B60M 3/06 B
H02J 1/00 306L
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2000-073281 (P2000-073281)
出願日 平成12年3月16日(2000.3.16)
審査請求日 平成14年8月30日(2002.8.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
発明者または考案者 【氏名】持永 芳文
【氏名】中道 好信
【氏名】長谷 伸一
【氏名】上村 正
【氏名】渡辺 秀夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100096459、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 剛
審査官 【審査官】長馬 望
参考文献・文献 特開平11-091415(JP,A)
特開平08-168182(JP,A)
特開平02-106447(JP,A)
特開昭55-132330(JP,A)
調査した分野 B60M 3/06
H02J 1/00 306
特許請求の範囲 【請求項1】
交流電源から整流器または順変換器を介してき電線に直流電力を供給し、該整流器または順変換器の直流側に設けたエネルギー蓄積装置により、電気車からの回生電力を直流電力貯蔵装置の充電電力として回生する電鉄用直流き電システムにおいて、
前記エネルギー蓄積装置は、き電線電圧が充電制御設定電圧以上にあるときにき電線から前記直流電力貯蔵装置への充電電流を制御し、き電線電圧が放電制御設定電圧以下にあるときに前記直流電力貯蔵装置からき電線への放電電流を制御する昇降圧チョッパを備え、
前記エネルギー蓄積装置は、前記直流電力貯蔵装置の電圧のうち、き電線との充放電に寄与しない電圧を基にして定める電圧分だけ低くした構成とし、
前記昇降圧チョッパは、前記直流電力貯蔵装置の電圧からき電線への所期の充放電電圧を得る高い昇降圧比にした構成とし、
前記昇降圧チョッパとき電線との間に、前記直流電力貯蔵装置から昇降圧チョッパを通してき電線側への自然放電を阻止するストッパースイッチを設けたことを特徴とする電鉄用直流き電システム。
【請求項2】
前記エネルギー蓄積装置は、前記昇降圧チョッパからき電線側に流れる高調波を抑止するフィルタを設けたことを特徴とする請求項1に記載の電鉄用直流き電システム。
【請求項3】
前記エネルギー蓄積装置は、前記昇降圧チョッパの充放電電流を制御する電流制御手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の電鉄用直流き電システム。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電鉄用直流き電システムに係り、特に電気車からの回生電力を蓄積するエネルギー蓄積装置を設けたシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
電鉄用直流き電システムは、図2に概略構成を示すように、変電所1で交流電源から整流器2(順変換器)を通して得る直流電力を、き電線3およびトロリー線4を通して負荷となる直流電気車5に給電できるようにする。
【0003】
最近の直流電気車は、その減速時のエネルギーをき電線側に回生することで省エネを図る電力回生方式が多く採用されている。この回生電力は、き電線やトロリー線から他の電気車への供給電力として消費するか、変電所の回生変電設備から交流電力として回生することができる。
【0004】
回生電力を変電所の交流電源側へ回生する場合、変電所から交流電源への逆潮流の問題や回生変電設備のコストの問題がある。この問題を解消する方式として、直流側に設ける抵抗器で熱として消費するものもある。
【0005】
上記の回生電力を抵抗器で消費する方式では電気車が回生機能をもつにもかかわらず、電力回生効率を高めることができなくなる。この課題を解消する方式として、回生電力を直流側に設けた直流電力貯蔵装置に貯蔵しておき、この貯蔵電力を電気車の力行に際しての給電電力の一部として放電する方式がある(例えば、特開平11-91415号公報)。
【0006】
この方式は、図3に示す構成にされる。整流器6からき電線に直流電力を供給するにおいて、整流器6の直流側に電流制御回路(昇降圧チョッパ)7と直流電力貯蔵装置(二次電池、キャパシタ、電気二重層キャパシタ)8からなるエネルギー蓄積装置を設備し、電気車が回生状態にある場合は電流制御回路7を通して直流電力貯蔵装置8を充電し、電気車が力行状態にある場合は直流電力貯蔵装置8から電流制御回路7を通して放電させる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電力貯蔵装置は、回生電力の有無によって単に直流電力貯蔵装置を充電/放電させる制御方式になるため、その利用効率および設備効率が悪くなる問題がある。
【0008】
例えば、直流電力貯蔵装置としての電池は、き電系統電圧が充電制御設定電圧1600V以上で充電を行い、放電制御設定電圧1400V以下で放電を行う構成とし、き電系統の最低電圧が1200V、最大電圧が1800Vとすると、き電系統電圧が1800~1600Vでは充電を行い、1400~1200Vでは放電を行う。
【0009】
この場合、電池は、その0~1200Vに相当する電圧分は充放電に寄与することなく、単にバイアス電圧として維持するためのものになる。仮に、電池の定格電圧を1600Vとすると、その電圧利用率は、
【0010】
【数1】
(1600-1200)/1600=0.25
となり、装置の定格電圧からみて25%の電圧分しか充放電に寄与せず、残りの電圧分は単に定格電圧を確保するためであり、この電圧確保のために多数の電池を多段直並列接続で設ける構成になる。
【0011】
一方、電鉄用き電システムでは、電気車からの回生電力も大きく、電力貯蔵装置での充放電電流定格も非常に大きくなる。
【0012】
これら事情から、電流制御回路および直流電力貯蔵装置が大型で高価な設備になり、しかもその利用率が低いことから、設備効率を低下させてしまう。
【0013】
本発明の目的は、エネルギー蓄積装置の利用効率および設備効率を高めた電鉄用直流き電システムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のエネルギー蓄積装置は、直流電力貯蔵装置の電圧のうち、き電線との充放電に寄与しない電圧を基にして定める電圧分だけ低くし、これに伴って昇降圧チョッパの昇降圧比を高くすることにより、装置の利用効率及び設備効率を高め、さらには昇降圧チョッパとき電線との間に、直流電力貯蔵装置から昇降圧チョッパを通してき電線側への自然放電を阻止するストッパースイッチを設け、かつ直流電力貯蔵装置の充放電制御にはき電線電圧および充放電電流を基にした制御を行うことにより、エネルギー蓄積装置の保護等も可能にするもので、以下の構成を特徴とする。
【0015】
交流電源から整流器または順変換器を介してき電線に直流電力を供給し、該整流器または順変換器の直流側に設けたエネルギー蓄積装置により、電気車からの回生電力を直流電力貯蔵装置の充電電力として回生する電鉄用直流き電システムにおいて、
前記エネルギー蓄積装置は、き電線電圧が充電制御設定電圧以上にあるときにき電線から前記直流電力貯蔵装置への充電電流を制御し、き電線電圧が放電制御設定電圧以下にあるときに前記直流電力貯蔵装置からき電線への放電電流を制御する昇降圧チョッパを備え、
前記エネルギー蓄積装置は、前記直流電力貯蔵装置の電圧のうち、き電線との充放電に寄与しない電圧を基にして定める電圧分だけ低くした構成とし、
前記昇降圧チョッパは、前記直流電力貯蔵装置の電圧からき電線への所期の充放電電圧を得る高い昇降圧比にした構成とし、
前記昇降圧チョッパとき電線との間に、前記直流電力貯蔵装置から昇降圧チョッパを通してき電線側への自然放電を阻止するストッパースイッチを設けたことを特徴とする。
【0017】
また、前記エネルギー蓄積装置は、前記昇降圧チョッパからき電線側に流れる高調波を抑止するフィルタを設けたことを特徴とする。
【0018】
また、前記エネルギー蓄積装置は、前記昇降圧チョッパの充放電電流を制御する電流制御手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態を示すエネルギー蓄積装置の主回路構成図であり、変電所では従来システムと同様に、交流電源から整流器(または順変換器)10によって定格電圧になる直流電力に変換してき電線側に供給する。
【0020】
電力貯蔵装置11は、二次電池、キャパシタまたは電気二重層キャパシタにされ、その充放電装置として昇降圧チョッパ12が接続される。
【0021】
昇降圧チョッパ12の主回路構成は、IGBTで示す半導体スイッチSW1,SW2を直列接続し、これらスイッチSW1,SW2にそれぞれ逆並列にフライホイールダイオードD1,D2を設けて上下アームを構成し、上下アームの接続点から直流リアクトルLを介して電池11との間を接続する。
【0022】
昇降圧チョッパ12による直流電力貯蔵装置11の降圧充電は、スイッチSW1,SW2の両端に印加される直流電圧に対して、スイッチSW1をチョッパ動作させ、そのオン期間にはスイッチSW1からリアクトルLを通して直流電力貯蔵装置11に充電電流を供給し、そのオフ期間にはリアクトルLの電流エネルギーを直流電力貯蔵装置11→ダイオードD2の経路で直流電力貯蔵装置11に充電電流を供給する。
【0023】
昇降圧チョッパ12を通した直流電力貯蔵装置11からの昇圧放電は、スイッチSW2をチョッパ動作させ、そのオン期間には直流電力貯蔵装置11からリアクトルLに短絡電流を流すことでリアクトルLに電流エネルギーを蓄積し、そのオフ期間にリアクトルLからダイオードD1を通してき電線側に放電する。
【0024】
昇降圧チョッパ12の高圧側には、ストッパスイッチ13を設ける。このストッパスイッチ13は、き電線側からチョッパ12への流入電流にはダイオードD3で常に導通可能にし、チョッパ12からき電線側への電流にはGTOで示す半導体スイッチSW3でオン・オフ制御可能にする。
【0025】
このストッパスイッチ13は、き電線側の電圧が直流電力貯蔵装置11の電圧よりも低くなった場合にき電線側に自然放電されるのを防止し、チョッパ13のチョッパ動作によって直流電力貯蔵装置11からき電線側に昇圧放電する場合のみその電流路を形成するためのものである。
【0026】
ストッパスイッチ13とき電線側の間には、並列接続のコンデンサ14と直列接続のリアクトル15を設ける。これらコンデンサ14とリアクトル15は、直流電力貯蔵装置11から昇降圧チョッパ12を通した充放電電流に含まれる高調波(チョッパ動作による高調波)を抑制するためのものである。この高調波抑制は、沿線の通信障害や鉄道信号機器への障害および車内ラジオ等への障害を防止する。
【0027】
リアクトル15とき電線との間には直流高速しゃ断器16を設け、さらにはしゃ断器17を設け、レール側には断路器18を設ける。しゃ断器16は、き電線系統の事故発生時に系統からエネルギー蓄積装置を高速に解列し、しゃ断器17と断路器18はシステムの運転停止時などに系統からエネルギー蓄積装置を解列するためのものである。
【0028】
電圧検出器19はき電線電圧を検出し、電流検出器としての変流器20は直流電力貯蔵装置11の充放電電流を検出するためのものである。これら検出器による検出電圧および電流は、図示省略するエネルギー蓄積制御装置に検出信号として取り込み、該制御装置は昇降圧チョッパ12のチョッパ制御と、ストッパスイッチ13のオン・オフ制御を行う。
【0029】
以上のように構成したエネルギー蓄積装置において、その利用効率および設備効率を高めるため、チョッパ12の昇降圧比を高くし、直流電力貯蔵装置11は定格電圧を低くする。
【0030】
この構成において、例えば、前記と同様に、エネルギー蓄積装置を、き電系統電圧が1600V以上で充電動作させ、1400V以下で放電動作させる場合、昇降圧チョッパ12の最大昇圧比を2.5とすると、直流電力貯蔵装置11は560~1400Vの電圧範囲にあれば、チョッパ12により1400Vまで昇圧してき電系統へ放電することができる。
【0031】
この場合、直流電力貯蔵装置11の電圧のうち、充放電に利用されない電圧(バイアス)分は0~560Vになり、その利用率は、
【0032】
【数2】
(1400-560)/1400=0.6
となり、直流電力貯蔵装置電圧の60%が充放電電圧に寄与することになり、利用効率を高めることができる。また、必要とする直流電力貯蔵装置電圧が低くなるため、そのコストダウンおよび小型化を図ることができ、設備効率を高めることができる。
【0033】
次に、エネルギー蓄積装置の充放電制御は、き電系統電圧が直流電力貯蔵装置を充電する電圧範囲または直流電力貯蔵装置から放電する電圧範囲にあるか否かで切り替え、この切り替えは電圧検出器19の検出信号から判定することができる。このような充放電制御は、直流電力貯蔵装置11に二次電池を使用する場合はその電圧がほぼ一定のため、なんら問題はない。
【0034】
しかし、直流電力貯蔵装置11としてキャパシタや電気二重層キャパシタを使用する場合、そのときの電圧によって充放電電流が大きく変化する。この大きな電流変化は、チョッパ12やストッパスイッチ13等に使用する半導体スイッチやダイオードに電流破壊や過熱を起こす恐れがあるし、電流性能が高い高価な素子を必要とする。また、高速遮断器16等が誤動作する恐れがある。
【0035】
例えば、直流電力貯蔵装置電圧が1000V、き電線電圧が1400Vで直流電力貯蔵装置から放電し、このときのき電系統の負荷電流が2000Aとなる場合、エネルギー蓄積装置からの放電電流は、
【0036】
【数3】
2000×(1400/1000)=2800A
となる。この電流増加は、直流電力貯蔵装置11の電圧を低くするほど大きくなる。
【0037】
そこで、本実施形態では、エネルギー蓄積装置の最大充放電電流を設定しておき、直流電力貯蔵装置11の充放電電流を電流検出器20によって検出し、この検出電流が最大充放電電流以下になるようチョッパ12の導通期間を制限する。
【0038】
次に、直流電力貯蔵装置11として二次電池とする場合、その充電は、低電流化したほうが電池寿命等の点で優れる。そこで、本実施形態では、き電線電圧を基にした直流電力貯蔵装置の充電制御に加えて、電流検出器12による検出電流を基にして充電電流を制限する。
【0039】
これら電流制御機能を設けることは、閑散線区のき電システムでのピークカット対策としても有効となる。すなわち、閑散線区では、電気車がたまにしか運転されないことから、閑散時間帯に電池を低電流充電しておき、電気車が運転される時間帯に大電流放電することにより、変電所の交流電源からみて負荷の平準化が可能となる。
【0040】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、エネルギー蓄積装置の直流電力貯蔵装置の電圧を低くし、昇降圧チョッパの昇降圧比を高くするようにしたため、き電線への充放電に寄与しない電圧分を低くすることができ、エネルギー蓄積装置の利用効率及び設備効率を高めることができる。
【0041】
また、直流電力貯蔵装置の充放電制御にはき電線電圧および充放電電流を基にした制御を行うことにより、装置の保護等も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す主回路構成図。
【図2】電鉄用直流き電システムの概略構成図。
【図3】エネルギー蓄積装置の概略構成図。
【符号の説明】
10…整流器
11…直流電力貯蔵装置
12…昇降圧チョッパ
13…ストッパースイッチ
14…フィルタコンデンサ
15…リアクトル
16…高速しゃ断器
19…電圧検出器
20…変流器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2