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明細書 :PWMコンバータの制御回路

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4480240号 (P4480240)
公開番号 特開2002-034256 (P2002-034256A)
登録日 平成22年3月26日(2010.3.26)
発行日 平成22年6月16日(2010.6.16)
公開日 平成14年1月31日(2002.1.31)
発明の名称または考案の名称 PWMコンバータの制御回路
国際特許分類 H02M   7/12        (2006.01)
FI H02M 7/12 B
請求項の数または発明の数 1
全頁数 10
出願番号 特願2000-218561 (P2000-218561)
出願日 平成12年7月19日(2000.7.19)
審査請求日 平成18年11月21日(2006.11.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
発明者または考案者 【氏名】村井 敏昭
【氏名】山本 貴光
【氏名】長谷川 均
【氏名】塩田 剛
【氏名】大山 裕二
個別代理人の代理人 【識別番号】100100930、【弁理士】、【氏名又は名称】長澤 俊一郎
審査官 【審査官】服部 俊樹
参考文献・文献 特開平05-204461(JP,A)
特開2000-152631(JP,A)
調査した分野 H02M 7/12
特許請求の範囲 【請求項1】
誘導性内部インピーダンスおよび抵抗性内部インピーダンスを有する3相電源より直流出力を得るPWMコンバータの制御回路において、
離散時間的に検出される相電流を入力して電源角周波数を検出する手段と、この電源角周波数と3相電流からPWMコンバータを3相電源側から見た等価回路が、容量性インピーダンスと抵抗性インピーダンスの直列回路となるような3相入力端子電圧値を演算する手段と、
制御装置の演算時間遅れと、PWM電圧制御が演算周期内の平均値出力であることにより生ずる制御遅れを補正するための予め設定された補正時間と、前記3相入力端子電圧値と、3相ベクトル関係を利用した前記3相入力端子電圧値の微分値とから3相入力端子電圧指令値を演算する手段と、
この3相入力端子電圧指令値により3相入力端子電圧をパルス幅変調によって制御する手段とを有し、
上記3相入力端子電圧指令値を演算する手段は、前記離散時間的に検出される電流検出時の時点をtn、演算周期をTs、上記補正時間をTcとしたとき、各相の入力端子電圧を時間関数とみなして、上記補正時間Tcについて各相の入力端子電圧を所定の次数までテイラー展開し、テイラー展開した式中の各微分項を、3相ベクトル関係を用いて各相の入力端子電圧と電源角周波数を用いた式に置き換え、該各微分項が各相の入力端子電圧と電源角周波数で置き換えられた式を用いて、次回およびその次の演算周期であるtn+Ts、tn+2Tsの間のtn+Tcの時点における入力端子電圧指令値を演算する
することを特徴とするPWMコンバータの制御回路。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内部インピーダンスの大きい交流電源から効率的に直流電力を得て、発変電所から遠方に設置された電源装置やモータ駆動装置などに供給するPWMコンバータの制御回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内部インピーダンスの大きい電源から大電力を取り出すためのPWMコンバータについては、先の特開平6-54540号公報「PWMコンバータの制御方法」にも記載されている。
以下に、従来のPWMコンバータについて述べる。
図3に従来のPWMコンバータと3相電源系統を示す。同図において、1~3は、それぞれU,V,W相の3相電源、4~6はインダクタンスLsを有する3相電源1~3の誘導性内部インピーダンス(Zls)、7~9は抵抗Rsを有する3相電源1~3の抵抗性内部インピーダンス(Zrs)である。
また、10~12は、それぞれU,V,W相の相電流Iu,Iv,Iw検出用ACCT、13~15は、PWM変換器および直流部から成るPWMコンバータ部100の3相入力端子、16~21はPWM変換器を構成するスイッチング素子、22は直流ステージの直流電圧Edcを検出するDCPT、23は負荷である。
【0003】
このような内部インピーダンス4~9を有する3相電源1~3から最大電力を取り出すためには、電源と負荷系統の全体リアクタンスが零で、かつ相変換した負荷抵抗Rが電源内部抵抗Rsと等しいことが必要である。
図4はこのような条件を満たす負荷の等価回路を示すもので、同図において、101~103は直列容量C、104~106は負荷抵抗Rである。
電源から最大電力を取り出すためには、図4における直列容量C、負荷抵抗Rが下記の(1),(2)式の条件を満たせばよい。
したがって、図3に示すPWMコンバータの3相入力端子電圧Eu,Ev,EWが、下記の(3)~(5)式となれば、PWMコンバータ部100は等価的に図4と等しくなる。ここで(1/j)は位相を90°遅らせる演算子である。
【0004】
【数1】
JP0004480240B2_000002t.gif【0005】
図5に、従来のPWMコンバータの制御回路例を示す。同図において、201は検出された電流Iu,Ivから入力端子電圧Eu,Ev,Ewを算出する入力端子電圧演算回路、202は割り算器、203は比較器、204はゲート発生回路、205は三角波発生器、206はF/V変換器、207はパターン回路、208は瞬時値/実効値変換器である。
入力端子電圧演算回路201は前記(3)~(5)式の演算を行う。ここで、Iwは(-Iu-Iv)と等しいことと、(3)式における〔{1/(jωC)}×Iu〕は図4における直列容量Cの両端電圧を表わし、Iuよりも90°遅れの位相を持つが、IuとIvが120°位相差を持つことを利用して、〔(Iu+2Iv)/{(√3)×ωC}〕より算出する。他の相も同様であり、入力端子電圧Eu,Ev,Ewは次の(6)~(8)式のごとく算出される。
【0006】
【数2】
JP0004480240B2_000003t.gif【0007】
割り算器202は、入力端子電圧Eu,Ev,Ewを指令値として、それぞれ直流電圧検出値Edcの半分、すなわちEdc/2で除算し、PWMコンバータの変調率Eou,Eov,Eowを出力する。比較器203は変調率Eou,Eov,Eowと三角波発生器205の出力ETを比較し、スイッチング素子16~21の各相のゲート信号Gu,Gv,Gwを作成する。ロジック回路204は、ゲート信号Gu,Gv,Gwを各々スイッチング素子ゲート信号UP,UN,VP,VN,WP,WNに振り分ける。
【0008】
F/V変換器206は電流検出値Iuから電源角周波数ωを出力する。演算回路201は、上記電源角周波数ωおよびパターン変換回路207が出力する容量C、および、電流Iu,Ivから入力端子電圧値Eu,Ev,Ewを算出する。
また、瞬時値/実効値変換回路208は電流検出値Iuの実効値Iを算出し、パターン変換回路207は、上記実効値Iが所定値を越えたとき、上記(6)~(8)式の演算に使用する直列容量Cを増加させる。これは、過電流などにより電力を制限する必要が生じた場合、直列容量C(もしくは抵抗R)を変え前記(1),(2)式の関係を崩して電力を制限するためである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したPWMコンバータによれば、内部インピーダンスの大きい3相電源から最大電力を取り出すことができるが、図5のPWMコンバータの制御回路に示された動作をDSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)で実現させようとした時の演算時間による遅れ、及びPWM電圧制御が電圧指令値と三角波との比較によるスイッチング素子のON、OFFにより行われる演算周期Ts内の平均値出力制御であるために、検出した相電流に基づいて(6)~(8)式で表わされる電圧の制御がリアルタイムに行えず、従来のPWMコンバータの制御回路では、最大電力が取り出せなかった。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、大きな内部インピーダンスを有する3相電源に接続されるPWMコンバータの演算時間遅れ等を補正することにより、最大電力を取り出すことができるPWMコンバータの制御回路を実現することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
図2に、例えばU相における演算時間遅れ補正の原理図を示す。
同図は、上述した(6)式におけるU相入力端子電圧の演算時間遅れ補正を行うための、演算周期Tsと補正時間Tcの関係を説明する図であり、横軸は時間、縦軸はU相の入力端子電圧を示しており、他の相についても同様の関係で補正できる。
すなわち、本願発明が対象とする電源は、内部インピーダンスの大きい3相電源であるために、検出した相電流Iu,Ivは、ほぼ正弦波となり、上記(6)式のU相入力端子電圧Euもほぼ正弦波になる。そこで、この事を利用して、離散時間的に検出される電流検出時の時間をtn、演算周期Tsを一定としたときに、時間(tn+Tc)のU相入力端子電圧Eu(Tc)の値を、次回演算周期である時間(tn+Ts)から(tn+2Ts)間に出力する入力端子電圧指令値とすることができる。
上記(6)式のU相入力端子電圧Euを時間関数とみなして、補正時間Tcを用いて3次までのテイラー展開を行うと(9)式となり、V,W相についても同様に(10)、(11)式として求められる。
【0011】
【数3】
JP0004480240B2_000004t.gif【0012】
上記1次~3次の微分式は、各相入力端子電圧を正弦波とみなし、3相ベクトル関係を利用して、電源角周波数ωを用いると、例えばU相については(12)式により求められる。
【0013】
【数4】
JP0004480240B2_000005t.gif【0014】
従って、次回演算周期の3相入力端子電圧指令値は、最終的には以下の(13)~(15)式の如く表される。
【0015】
【数5】
JP0004480240B2_000006t.gif【0016】
本発明は、このように(9)~(11)式で表される、補正時間Tcにおける3相入力端子電圧Eu(Tc)、Ev(Tc)、Ew(Tc)を3相入力端子電圧指令値として用い、PWMコンバータの3相入力端子電圧をパルス幅変調によって制御するようにしたものである。
【0017】
本発明は上記原理に基づき、前述の課題を解決するものであり、誘導性内部インピーダンスおよび抵抗性内部インピーダンスを有する3相電源より直流出力を得るPWMコンバータの制御回路において、相電流を入力して電源角周波数を検出する手段と、この電源角周波数と3相電流からPWMコンバータを3相電源側から見た等価回路が、容量性インピーダンスと抵抗性インピーダンスの直列回路となるような3相入力端子電圧値を演算する手段と、補正時間と、前記3相入力端子電圧値と、3相ベクトル関係を利用した前記3相入力端子電圧値の微分値とから3相入力端子電圧指令値を演算する手段と、この3相入力端子電圧指令値により3相入力端子電圧をパルス幅変調によって制御する手段とで構成する。
上記3相入力端子電圧指令値を演算する手段において、補正時間は、制御装置の演算時間遅れと、PWM電圧制御が演算周期内の平均値出力であることにより生ずる制御遅れを補正するものであり、上記3相入力端子電圧指令値を演算する手段は、前記図2に示したように、離散時間的に検出される電流検出時の時点をtn、演算周期をTs、上記補正時間をTcとしたとき、次回およびその次の演算周期であるtn+Ts、tn+2Tsの間のtn+Tcの時点における入力端子電圧指令値を演算する。
上記3相入力端子電圧指令値を演算する手段における入力端子電圧指令値の算出は、前記したように、電源の内部インピーダンスが大きいため、入力電流より演算する交流入力端子電圧が正弦波状になることを利用して、交流入力端子電圧値の微分値に相当する値を、各相の入力端子電圧と電源角周波数から求め、これを利用して次回とその次の演算周期の間の交流入力端子電圧指令値を求める。
すなわち、各相の入力端子電圧を時間関数とみなして、上記補正時間Tcについて各相の入力端子電圧を所定の次数までテイラー展開し、テイラー展開した式中の各微分項を、3相ベクトル関係を用いて各相の入力端子電圧と電源角周波数を用いた式に置き換え、該各微分項が各相の入力端子電圧と電源角周波数で置き換えられた式を用いて、tn+Tcの時点における入力端子電圧指令値を演算する。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明が適用されたPWMコンバータの制御回路構成例を示す。同図において、図5と同符号を付したものは同一構成部品を表わし、209は容量指令発生回路、210は電圧指令値演算回路を表わす。なお、本発明における入力端子電圧演算回路201、電圧指令値演算回路210、割り算器202等は、前記したDSPにより実行されるソフトウェアにより実現することができ、電流Iu,Iv等の検出値は前記したようにサンプリングされてDSPに取り込まれ、DSPはソフトウェアにより演算周期Tsで上記入力端子電圧演算回路201、電圧指令値演算回路210における演算を行う。
以下、図1について説明する。電源角周波数を検出する手段としてのF/V変換器206は、U相電流検出値Iuから電源角周波数ωを出力する。容量指令発生回路209は電源角周波数ωを入力して、(1)式を満足する直列容量Cを算出する。
【0019】
入力端子電圧演算回路201は前記図5の入力端子電圧演算回路201と同一構成要素であり、相電流Iu,Ivを離散時間的に入力し、前記電源角周波数ω、直列容量C、及び負荷抵抗Rより、前記(6)~(8)式に基づき離散時間的な入力端子電圧値Eu,Ev,Ewを演算し、電圧指令値演算回路210に出力する。
【0020】
演算周期内の入力端子電圧指令値を演算する手段としての電圧指令値演算回路210は、前記入力端子電圧値Eu,Ev,Ew、補正時間Tcおよび前記電源角周波数ωを入力して、前記(13)~(15)式に基づき、演算時間遅れ,及びPWM電圧制御が電圧指令値と三角波との比較によるスイッチング素子のON、OFFにより行われる演算周期Ts内の平均値出力制御である事を補正した3相入力端子電圧指令値Eu(Tc),Ev(Tc),Ew(Tc)を演算して、割り算器202に出力する。
ここで、補正時間Tcは、演算遅れとPWM電圧制御が演算周期Ts内の平均値出力制御である事を考慮して、通常、演算周期Tsの1.5倍程度の値に設定される。
なお、前記(9)~(11)式、又は前記(13)~(15)式はテイラー展開の3次までを数式化したものであるが、DSPでの演算時間が演算周期Tsを超えるようであれば、精度が多少下がるが、テイラー展開の2次、又は1次の展開式でも十分であり、精度を上げたければ4次以上の展開式を用いても良い。
【0021】
割り算器202は、3相入力端子電圧指令値Eu(Tc),Ev(Tc),Ew(Tc)をEdc/2で除算し、PWMコンバータの変調率Eou,Eov,Eowを求める。そして、比較器203で変調率Eou,Eov、Eowと三角波発生器205の出力ETを比較し、スイッチング素子16~21の各相のゲート信号Gu,Gv,Gwを作成する。ゲート回路204は、ゲート信号Gu,Gv,Gwを各々スイッチング素子ゲート信号UP,UN,VP,VN,WP,WNに振り分ける。
【0022】
これにより、PWMコンバータ部100の交流入力端子13~15の電圧が制御され、交流電源1~3の電源周波数が変化した場合でも、演算時間の遅れ及びPWM電圧制御が電圧指令値と三角波との比較によるスイッチング素子のON、OFFにより行われる平均値出力制御であるという事の補正により、前記(1),(2)式の関係が常に満たされるように制御され、内部インピーダンスの大きい交流電源から最大電力を取り出す事ができる。
【0023】
なお、上記実施例では、内部インピーダンスの大きい交流電源から最大電力を取り出す場合について説明したが、前記の特開平6-54540号公報に記載されるように、最大電力を取り出すだけではなく、所定の電力を取り出す場合には、図1の制御回路における直列容量Cや抵抗Rを変えることにより同様に対処できる。
【0024】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明は、大きな内部インピーダンスを有する電源より直流出力を得るPWMコンバータの制御回路において、DSP等を使用する場合に発生する演算遅れと、PWM電圧制御が演算周期内の平均値出力制御であるという事を補正するために、正弦波状の入力電流と電源角周波数より求めた入力端子電圧値とそのテイラー展開及び補正時間より入力端子電圧指令値を演算し、この入力端子電圧指令値によりPWMコンバータを制御しているので、電圧の制御を遅れなく行うことができる。このため、PWMコンバータの出力を増大させて、電源から最大電力を取り出すことが可能となり、実用上おおいに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるPWMコンバータの制御回路を示す図である。
【図2】本発明の演算時間遅れ補正の原理を説明する図である。
【図3】従来のPWMコンバータと交流電源系統を示す系統図である。
【図4】従来のPWMコンバータの等価回路を示す図である。
【図5】従来のPWMコンバータにおける制御回路の一例を示す図である。
【符号の説明】
1~3 交流電源
4~6 誘導性内部インピーダンス(Zls)
7~9 抵抗性内部インピーダンス(Zrs)
13~15 交流入力端子
22 DCPT
23 負荷
101~103 直列容量(C)
104~106 負荷抵抗(R)
201 入力端子電圧演算回路
202 割り算器
203 比較器
204 ゲート発生回路
205 三角波発生器
206 F/V変換器
207 パターン回路
208 瞬時値/実効値変換器
209 容量指令発生回路
210 電圧指令値演算回路
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4