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明細書 :交流き電回路用距離継電器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3660215号 (P3660215)
公開番号 特開2002-064929 (P2002-064929A)
登録日 平成17年3月25日(2005.3.25)
発行日 平成17年6月15日(2005.6.15)
公開日 平成14年2月28日(2002.2.28)
発明の名称または考案の名称 交流き電回路用距離継電器
国際特許分類 H02H  3/40      
H02H  3/44      
FI H02H 3/40 E
H02H 3/44 D
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2000-250050 (P2000-250050)
出願日 平成12年8月21日(2000.8.21)
審査請求日 平成14年12月24日(2002.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
発明者または考案者 【氏名】持永 芳文
【氏名】戸田 弘康
【氏名】久水 泰司
【氏名】上村 修
【氏名】長崎 寛美
【氏名】増山 隆雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100100712、【弁理士】、【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
【識別番号】100100929、【弁理士】、【氏名又は名称】川又 澄雄
【識別番号】100108707、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 友之
【識別番号】100095500、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 正和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100098327、【弁理士】、【氏名又は名称】高松 俊雄
審査官 【審査官】森川 幸俊
参考文献・文献 特開平04-048527(JP,A)
特開平06-070450(JP,A)
調査した分野 H02H 3/32-3/52
特許請求の範囲 【請求項1】
入力電流と入力電圧を一定の周期でサンプリングして記憶するサンプルホールド手段と、
このサンプリングしたアナログ値をディジタル値にA/D変換するA/D変換手段と、
各サンプリング毎にA/D変換されたサンプリングデータを記憶するデータ格納手段と、
前記データ格納手段に記憶された入力電流と入力電圧の各サンプリングデータから入力インピーダンスのベクトルを求め、入力インピーダンスベクトルが予め整定されたインピーダンス範囲内かどうかの比較結果から事故判定出力を実行する入力インピーダンス演算判定手段と、
前記データ格納手段に記憶された入力電流のサンプリングデータから基本波成分と任意の低次高調波成分をフィルタリング演算で求め、夫々求められた低次高調波成分の値に予め整定された任意の補正係数を乗じて加算して高調波成分の合計を求め、この高調波成分合計から基本波成分に対する含有率を求め、基本波成分に対する含有率と予め整定された高調波含有率整定値とを比較演算して入力電流に含まれる高調波成分が整定値以上か否かを判定する高調波成分演算判定手段と、
前記データ格納手段に記憶された入力電流のサンプリングデータから任意のサンプリング回数だけ前のサンプリングデータと現サンプリングデータとの差から電流ベクトル変化量を求め、求められた電流ベクトル変化量と予め整定された判定量の比較演算結果から電流ベクトル急変判定出力を実行する電流ベクトル変化量演算判定手段と、
前記入力インピーダンス演算判定手段、高調波成分演算判定手段、電流ベクトル変化量演算判定手段の夫々の判定結果を読込んで、前記入力電流と入力電圧から求められた入力インピーダンスベクトルが整定範囲内、且つ前記高調波成分の含有率が整定値以下、且つ電流ベクトル変化量が整定値以上という論理条件が成立した場合にき電遮断器を開放するための動作出力を実行する出力判定処理手段とを備えて成る交流き電回路用距離継電器。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はマイクロプロセッサを用い、一定周期で予め定められたプログラムに従ってデジタル演算処理を実行する交流き電回路用距離継電器に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に交流き電回路で故障が発生すると、故障点までの送電線インピーダンスと故障点インピーダンスに応じた電圧、電流変化が発生する。一方、き電回路の保護ゾーンを広くして、故障点のアーク抵抗分を含めると電気車電流のインピーダンスベクトルが故障検出範囲内に入り込む場合もある。
【0003】
このため、従来の交流き電回路用距離継電器は、電気車電流に15~20%程度の第3高調波成分が含まれることを利用して、入力電流に含まれる第3高調波成分の含有率を求め、求められた第3高調波の含有率と予め整定された値の比較結果を故障検出の条件にしている。すなわち入力されたき電回路の電圧値と電流値から求められた入力インピーダンスベクトルが動作整定範囲内にあり、且つ入力電流から求められた第3高調波の含有率が予め整定された値以下である場合に故障検出を行なっているのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の交流き電回路用距離継電器による故障検出方式では、次のような問題点があった。すなわち、最近の高力率で制御される電気車電流に含まれる第3高調波成分は、従来のダイオード整流車やサイリスタ位相制御車に比べて1/3以下に減少しているため、電気車電流と故障電流の判別が困難になり、交流き電回路用距離継電器が不要動作する問題点があった。
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたもので、交流回生や高力率制御を行う電気車電流による不要動作を抑制し、き電回路の故障を迅速且つ的確に検出できる交流き電回路用距離継電器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の交流き電回路用距離継電器は、入力電流と入力電圧を一定の周期でサンプリングして記憶するサンプルホールド手段と、このサンプリングしたアナログ値をディジタル値にA/D変換するA/D変換手段と、各サンプリング毎にA/D変換されたサンプリングデータを記憶するデータ格納手段と、前記データ格納手段に記憶された入力電流と入力電圧の各サンプリングデータから入力インピーダンスのベクトルを求め、入力インピーダンスベクトルが予め整定されたインピーダンス範囲内かどうかの比較結果から事故判定出力を実行する入力インピーダンス演算判定手段と、前記データ格納手段に記憶された入力電流のサンプリングデータから基本波成分と任意の低次高調波成分をフィルタリング演算で求め、夫々求められた低次高調波成分の値に予め整定された任意の補正係数を乗じて加算した高調波成分の合計を求め、この高調波成分合計から基本波成分に対する含有率を求め、基本波成分に対する含有率と予め整定された高調波含有率整定値とを比較演算して入力電流に含まれる高調波成分が整定値以上か否かを判定する高調波成分演算判定手段と、前記データ格納手段に記憶された入力電流のサンプリングデータから任意のサンプリング回数だけ前のサンプリングデータと現サンプリングデータとの差から電流ベクトル変化量を求め、求められた電流ベクトル変化量と予め整定された判定量の比較演算結果から電流ベクトル急変判定出力を実行する電流ベクトル変化量演算判定手段と、前記入力インピーダンス演算判定手段、高調波成分演算判定手段、電流ベクトル変化量演算判定手段の夫々の判定結果を読込んで、前記入力電流と入力電圧から求められた入力インピーダンスベクトルが整定範囲内、且つ前記高調波成分の含有率が整定値以下、且つ電流ベクトル変化量が整定値以上という論理条件が成立した場合にき電遮断器を開放するための動作出力を実行する出力判定処理手段とを備えたものである。
【0007】
請求項1の発明の交流き電回路用距離継電器では、従来の構成に、電流ベクトル変化量演算判定手段と高調波成分演算判定手段とを加え、入力インピーダンス演算判定手段と、高調波成分演算判定手段と、電流ベクトル変化量演算判定手段の夫々判定結果が、予め定められた論理条件を満足したか否か判定してき電遮断器を開放するように作用させる。つまり、入力電流と入力電圧から求められた入力インピーダンスベクトルが整定範囲内、且つ任意次数調波の高調波成分も整定値以下、且つ電流ベクトル変化量が整定値以上の場合にき電遮断器を開放するのである。これにより、交流回生や高力率制御を行う電気車電流による不要動作を抑制し、き電回路の故障を迅速且つ的確に検出してき電遮断器を開放することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は、マイクロプロセッサを用い、一定周期で予め定められた手順に従ってデジタル演算処理を実行する交流き電用距離継電器1の機能構成を示すブロック図である。
【0009】
交流き電回路の電圧vと電流iは、入力変換回路2,3を介して導入される。サンプルホールド回路4は入力データを一定周期でサンプルホールドする。サンプルホールドされたアナログデータvsp,ispはA/D変換回路5でデジタル量vd ,id に変換され、データメモリ6に格納される。
【0010】
入力インピーダンス演算判定要素7はデータメモリ6に格納された電流データid,…,id -nと電圧データvd ,…vd -nを読み出して入力インピーダンスベクトルZdを算出し、算出されたベクトル値が整定保護範囲Zsetの範囲内か否かを判定する。
【0011】
入力電流高調波成分演算判定要素8はデータメモリ6に格納された電流データid ,…,id -nを読み出して、基本波成分と任意の低次高調波成分をフィルタリング演算で求め、夫々求められた低次高調波成分に、この高調波成分合計から基本波成分に対する含有率Σf%を求め、基本波成分に対する含有率Σf%と予め整定された高調波含有率整定値kΣf%とを比較演算して入力電流に含まれる高調波成分が整定値以上か否かを判定する。
【0012】
ベクトル変化量演算判定要素9はデータメモリ6に格納された電流データid ,…,id -nを読み出して、任意のサンプリング回数だけ前のサンプリングデータid -nと現サンプリングデータid との差の値から電流ベクトル変化量Δivを求め、電流ベクトル変化量Δivが予め整定された判定量ΔIVset以上か否かを判定する。
【0013】
出力判定処理要素11は、入力インピーダンス演算判定要素7の事故判定出力Zd=1と、入力電流高調波成分演算判定要素8の電気車電流判定出力Hf=1と、ベクトル変化量演算判定要素9の電流ベクトル急変判定出力Δiv=1の夫々判定結果を読込み、予め定められた論理条件が成立したか否かを判定する。
【0014】
次に、上記の構成の交流き電回路用距離継電器1の動作を説明する。交流き電回路の電圧vと電流iは、入力変換回路2,3で低レベルの電圧値に変換され、サンプルホールド回路4で一定の周期毎にサンプルホールドされる。
【0015】
サンプルホールドされたアナログデータはA/D変換回路5で工学単位デジタル量vd ,id に変換されて、一定の周期毎にデータメモリ6に格納され、予め定められた範囲の時系列データも更新される。
【0016】
入力インピーダンス演算判定要素7はデータメモリ6に格納されているサンプリング時系列毎の電流データid ,…,id -nと電圧データvd ,…vd -nを読み出して入力インピーダンスベクトルZdを算出する。例えば、入力インピーダンスベクトルを求める例として、数1式~数4式の直接インピーダンス演算により直交する抵抗成分Rfとインダクタンス成分Xfを次のようにして求める。
【0017】
【数1】
JP0003660215B2_000002t.gif【数2】
JP0003660215B2_000003t.gif【数3】
JP0003660215B2_000004t.gif【数4】
JP0003660215B2_000005t.gifある時刻(t)でサンプリングされた電流i(t)と電圧v(t)には数1式が成立する。同様に、任意の回数だけ前のサンプリング時刻(t-T)にサンプリングされた電流i(t-T)と電圧v(t-T)にも数2式が成立する。
【0018】
これらの数1式と数2式を解けば、数3式と数4式が成立する。数3式、数4式により、入力インピーダンスベクトルの直交する抵抗成分Rfとインダクタンス成分Xfを求める。さらに、求められた抵抗成分Rfとインダクタンス成分Xfから、入力インピーダンスベクトル値が予め整定された整定保護範囲Zsetの範囲内であれば、事故判定出力Zd=1を実行する。
【0019】
図2の入力インピーダンス演算判定要素7の特性図を用いて演算方式の一例を説明する。整定保護範囲Zsetは、縦軸のインダクタンス成分X、横軸の抵抗成分Rで示され、夫々の軸上に2点ずつ整定されたインダクタンス成分整定値Xset,XBset、抵抗成分整定値Rset,RBsetの4本の直線で囲まれたエリア内を事故判定範囲としている。尚、抵抗成分の整定直線2本は予め整定された動作感度角θだけ傾斜している。
【0020】
入力インピーダンスベクトルの直交する抵抗成分Rfとインダクタンス成分Xfは夫々、各成分の整定範囲内か否かが次の数5式、数6式で判定され、双方の成分Rf,Xfが共に保護範囲内判定式を満足すれば、事故判定出力Zd=1を実行する。
【0021】
抵抗成分Rfの保護範囲内判定式:
【数5】
RBset+(Xf/tanθ)≦ Rf ≦Rset+(Xf/tanθ)
インダクタンス成分Xfの保護範囲内判定式:
【数6】
XBset≦ Xf ≦Xset
高調波成分演算判定要素8はデータメモリ6に格納された電流データid ,…,id -nを読み出して、基本波成分1fと任意の低次高調波成分をフィルタリング演算で求め、高調波成分が所定値以上か否かを判定する。例えば、高調波成分を含有率で判定する場合は、求められた任意次数の高調波成分に、夫々次数に対応して予め整定された任意の補正係数knfを夫々乗じた後に加算し、高調波成分合計値Σfを求め、次に基本波成分1fに対する高調波含有率Σf%を求める。求められた高調波含有率Σf%が予め整定された高調波含有率整定値kΣf%以上であれば電気車電流判定出力Hf=1を実行する。
【0022】
ベクトル変化量演算判定要素9はデータメモリ6に格納された電流データid ,…,id -nを読み出して、任意のサンプリング回数だけ前のサンプリングデータid -nと現サンプリングデータid との差の値求め、求められた任意数の差データを実効値演算して電流ベクトル変化量Δivを求める。さらに、求められた電流ベクトル変化量Δivが予め整定された判定量ΔIVset以上なら電流ベクトル急変判定出力Δiv=1を実行する。
【0023】
出力判定処理要素11は、入力インピーダンス演算判定要素7の事故判定出力Zd=1と、入力電流高調波含有率演算判定要素8の電気車電流判定出力Hf=1と、ベクトル変化量演算判定要素9の電流ベクトル急変判定出力Δiv=1の夫々が予め定められた論理条件を満たしたとき、き電遮断器を開放するための動作出力OUT=1を実行する様に構成する。
【0024】
定められた論理条件とは次の数7式の成立である。
【0025】
【数7】
[(Zd=1)×(Hf=0)×(Δiv=1)]
これにより、本実施の形態によれば、従来の構成に、ベクトル変化量演算判定要素9と高調波成分演算判定要素8とを加え、入力インピーダンス演算判定要素7と高調波成分演算判定要素8とベクトル変化量演算判定要素9の夫々の判定結果が、予め定められた論理条件、入力電流と入力電圧から求められた入力インピーダンスベクトルが整定範囲内、且つ任意次数調波の高調波成分も整定値以下、且つ電流ベクトル変化量が整定値以上の条件を満たした場合にき電遮断器を開放するようにしたことにより、交流回生や高力率制御を行う電気車電流による不要動作を抑制し、き電回路の故障を迅速且つ的確に検出してき電遮断器を開放することができる。
【0026】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明によれば、電流の大きさ(絶対値)において電気車電流と故障電流の判別が困難な場合でも、故障電流の位相変化を電流ベクトル変化量として検出して故障判定することにより、電気車電流が保護範囲に進入しても不要動作するのを抑制することができ、従来の様にダイオード整流車やサイリスタ位相制御車に含まれる第3高調波成分の含有率によって不要動作するのを抑制できる。すなわち、交流き電回路用距離継電器の保護範囲を電気車電流近辺まで拡大することが可能になり、交流回生や高力率制御を行う電気車走行中もき電回路の故障を迅速かつ的確に検出することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1つの実施の形態の構成を示すブロック図。
【図2】上記の実施の形態における入力インピーダンス演算判定要素の特性を示すグラフ。
【符号の説明】
1 交流き電回路用距離継電器
2 電圧入力変換回路
3 電流入力変換回路
4 サンプルホールド回路
5 アナログ/ディジタル変換回路(A/D変換回路)
6 データメモリ
7 入力インピーダンス演算判定要素
8 高調波成分演算判定要素
9 ベクトル変化量演算判定要素
10 整定値データメモリ
11 出力判定処理要素
図面
【図1】
0
【図2】
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