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明細書 :交流き電用ベクトル形継電器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3715517号 (P3715517)
公開番号 特開2002-064930 (P2002-064930A)
登録日 平成17年9月2日(2005.9.2)
発行日 平成17年11月9日(2005.11.9)
公開日 平成14年2月28日(2002.2.28)
発明の名称または考案の名称 交流き電用ベクトル形継電器
国際特許分類 H02H  3/44      
B60M  3/00      
FI H02H 3/44 D
B60M 3/00 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 27
出願番号 特願2000-250054 (P2000-250054)
出願日 平成12年8月21日(2000.8.21)
審査請求日 平成14年12月24日(2002.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【識別番号】000221096
【氏名又は名称】東芝システムテクノロジー株式会社
発明者または考案者 【氏名】持永 芳文
【氏名】戸田 弘康
【氏名】久水 泰司
【氏名】長崎 寛美
【氏名】平松 博
【氏名】上村 修
【氏名】吉舗 幸信
【氏名】増山 隆雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100100712、【弁理士】、【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
【識別番号】100100929、【弁理士】、【氏名又は名称】川又 澄雄
【識別番号】100108707、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 友之
【識別番号】100095500、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 正和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100098327、【弁理士】、【氏名又は名称】高松 俊雄
審査官 【審査官】西山 昇
参考文献・文献 特開平06-070450(JP,A)
特開平03-078439(JP,A)
調査した分野 H02H 3/08 - 3/253
H02H 7/22 - 7/30
G01R 31/08 -31/11
H02J 3/01
特許請求の範囲 【請求項1】
電鉄用交流き電回路のき電線電流の値を一定の間隔でサンプリングし、き電線電流Iの瞬時値Iq(qは、データの順番を示す)として記憶するサンプルホールド手段と、
前記サンプルホールド手段のデータIqから交流き電線電流の定格周波数のnサイクル前(n:所定の整数)の前記サンプルホールド手段で記憶したデータを差し引き、差分き電線電流の瞬時値ΔIqを演算する差分電流演算手段と、
前記差分電流演算手段にて得られたデータΔIqを用いて数A1式の演算を実行してΔIf1qを算出し、算出したΔIf1qを用いて数A2式の演算を実施してΔIf2qを算出するディジタルフィルタ第1の手法にて、直流成分と基本波電流成分以外の低次奇数倍調波成分を除去したデータを算出し、数A2式にて得られたΔIf2qを用いて数A3式の演算を実施してΔIf3qを得るディジタルフィルタ第2の手法にて、前記ΔIf2qのデータに対して偶数倍調波成分を除去したデータΔIf3qを算出する差分基本波フィルタ手段と、
【数A1】
JP0003715517B2_000020t.gif
【数A2】
JP0003715517B2_000021t.gif
【数A3】
JP0003715517B2_000022t.gif
前記差分基本波フィルタ手段にて得られたデータΔIf3qをもとに差分基本波振幅値を演算する差分基本波振幅値演算手段と、
前記差分基本波振幅値演算手段の算出した差分基本波振幅値を予め定められた値と比較判定する比較判定手段とを備えて成る交流き電用ベクトル形継電器。
【請求項2】
電鉄用交流き電回路のき電線電流の値を一定の間隔でサンプリングし、き電線電流Iの瞬時値Iq(qは、データの順番を示す)として記憶するサンプルホールド手段と、
前記サンプルホールド手段のデータIqから交流き電線電流の定格周波数のnサイクル前(n:所定の整数)の前記サンプルホールド手段で記憶したデータを差し引き、差分き電線電流の瞬時値ΔIqを演算する差分電流演算手段と、
前記差分電流演算手段にて得られたデータΔIqを用いて数B1式の演算を実行してΔIf1qを算出し、算出したΔIf1qを用いて数B2式の演算を実施してΔIf2qを算出するディジタルフィルタ第1の手法にて、直流成分と基本波電流成分以外の低次奇数倍調波成分を除去したデータを算出し、数B2式にて得られたΔIf2qを用いて数B3式の演算を実施してΔIf3qを得るディジタルフィルタ第2の手法にて、前記ΔIf2qのデータに対して偶数倍調波成分を除去したデータΔIf3qを算出する差分基本波フィルタ手段と、
【数B1】
JP0003715517B2_000023t.gif
【数B2】
JP0003715517B2_000024t.gif
【数B3】
JP0003715517B2_000025t.gif
前記差分基本波フィルタ手段にて得られたデータΔIf3qをもとに差分基本波振幅値を演算する差分基本波振幅値演算手段と、
前記サンプルホールド手段にて得られたデータIqをもとに数B4式の演算を実行してIf1qを算出し、算出したIf1qを用いて数B5式の演算を実施してIf2qを算出するディジタルフィルタ第3の手法にて、直流成分と基本波電流成分以外の低次奇数倍調波成分を除去したデータを算出し、数B5式にて得られたIf2qを用いて数B6式の演算を実施してIf3qを得るディジタルフィルタ第4の手法にて、前記If2qのデータに対して偶数倍調波成分を除去したデータIf3qを算出する基本波フィルタ手段と、
【数B4】
JP0003715517B2_000026t.gif
【数B5】
JP0003715517B2_000027t.gif
【数B6】
JP0003715517B2_000028t.gif
前記基本波フィルタ手段にて得られたデータIf3qをもとに振幅値を演算する基本波振幅値演算手段と、
前記サンプルホールド手段の得たデータIqをもとに数B7式の演算を実行してIf4qを算出し、算出したIf4qを用いて数B8式の演算を実施してIf5qを算出するディジタルフィルタ第5の手法にて、低次奇数倍調波成分を除去したデータを算出し、数B8式にて得られたIf5qを用いて数B9式の演算を実施してIf6qを得るディジタルフィルタ第6の手法にて、前記If5qのデータに対して直流成分と第2調波成分以外の低次偶数倍調波成分を除去したデータIf6qを算出する第2高調波フィルタ手段と、
【数B7】
JP0003715517B2_000029t.gif
【数B8】
JP0003715517B2_000030t.gif
【数B9】
JP0003715517B2_000031t.gif
前記第2高調波フィルタ手段にて得られたデータIf6qをもとに振幅値を演算する第2高調波振幅値演算手段と、
前記第2高調波振幅値演算手段にて得られたデータを前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第2高調波の含有率を演算する第2高調波含有率演算手段と、
前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して前記第2高調波含有率演算手段にて得られた第2高調波の含有率と任意の定数として与えられる第2高調波抑制係数とを乗算して求められる抑制量を演算する第2高調波抑制演算手段と、
前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから前記第2高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較判定する比較判定手段とを備えたことを特徴とする交流き電用ベクトル形継電器。
【請求項3】
電鉄用交流き電回路のき電線電流の値を一定の間隔でサンプリングし、き電線電流Iの瞬時値Iq(qは、データの順番を示す)として記憶するサンプルホールド手段と、
前記サンプルホールド手段のデータIqから交流き電線電流の定格周波数のnサイクル前(n:所定の整数)の前記サンプルホールド手段で記憶したデータを差し引き、差分き電線電流の瞬時値ΔIqを演算する差分電流演算手段と、
前記差分電流演算手段にて得られたデータΔIqを用いて数C1式の演算を実行してΔIf1qを算出し、算出したΔIf1qを用いて数C2式の演算を実施してΔIf2qを算出するディジタルフィルタ第1の手法にて、直流成分と基本波電流成分以外の低次奇数倍調波成分を除去したデータを算出し、数C2式にて得られたΔIf2qを用いて数C3式の演算を実施してΔIf3qを得るディジタルフィルタ第2の手法にて、前記ΔIf2qのデータに対して偶数倍調波成分を除去したデータΔIf3qを算出する差分基本波フィルタ手段と、
【数C1】
JP0003715517B2_000032t.gif
【数C2】
JP0003715517B2_000033t.gif
【数C3】
JP0003715517B2_000034t.gif
前記差分基本波フィルタ手段にて得られたデータΔIf3qをもとに差分基本波振幅値を演算する差分基本波振幅値演算手段と、
前記サンプルホールド手段にて得られたデータIqをもとに数C4式の演算を実行してIf1qを算出し、算出したIf1qを用いて数C5式の演算を実施してIf2qを算出するディジタルフィルタ第3の手法にて、直流成分と基本波電流成分以外の低次奇数倍調波成分を除去したデータを算出し、数C5式にて得られたIf2qを用いて数C6式の演算を実施してIf3qを得るディジタルフィルタ第4の手法にて、前記If2qのデータに対して偶数倍調波成分を除去したデータIf3qを算出する基本波フィルタ手段と、
【数C4】
JP0003715517B2_000035t.gif
【数C5】
JP0003715517B2_000036t.gif
【数C6】
JP0003715517B2_000037t.gif
前記基本波フィルタ手段にて得られたデータIf3qをもとに振幅値を演算する基本波振幅値演算手段と、
前記サンプルホールド手段にて得られたデータIqをもとに数C7式の演算を実行してIf7qを算出するディジタルフィルタ第7の手法にて、直流成分と偶数倍調波成分を除去したデータを算出し、前記数C7式にて得られたIf7qを用いて数C8式の演算を実施してIf8qを得るディジタルフィルタ第8の手法にて、前記If7qのデータに対して第3調波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去したデータIf8qを算出する第3高調波フィルタ手段と、
【数C7】
JP0003715517B2_000038t.gif
【数C8】
JP0003715517B2_000039t.gif
前記第3高調波フィルタ手段にて得られたデータIf8qをもとに振幅値を演算する第3高調波振幅値演算手段と、
前記第3高調波振幅値演算手段にて得られたデータを前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第3高調波の含有率を演算する第3高調波含有率演算手段と、
前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して前記第3高調波含有率演算手段にて得られた第3高調波の含有率と任意の定数として与えられる第3高調波抑制係数とを乗算して求められる抑制量を演算する第3高調波抑制演算手段と、
前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第3高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較判定する比較判定手段とを備えて成る交流き電用ベクトル形継電器。
【請求項4】
電鉄用交流き電回路のき電線電流の値を一定の間隔でサンプリングし、き電線電流Iの瞬時値Iq(qは、データの順番を示す)として記憶するサンプルホールド手段と、
前記サンプルホールド手段のデータIqから交流き電線電流の定格周波数のnサイクル前(n:所定の整数)の前記サンプルホールド手段で記憶したデータを差し引き、差分き電線電流の瞬時値ΔIqを演算する差分電流演算手段と、
前記差分電流演算手段にて得られたデータΔIqを用いて数D1式の演算を実行してΔIf1qを算出し、算出したΔIf1qを用いて数D2式の演算を実施してΔIf2qを算出するディジタルフィルタ第1の手法にて、直流成分と基本波電流成分以外の低次奇数倍調波成分を除去したデータを算出し、数D2式にて得られたΔIf2qを用いて数D3式の演算を実施してΔIf3qを得るディジタルフィルタ第2の手法にて、前記ΔIf2qのデータに対して偶数倍調波成分を除去したデータΔIf3qを算出する差分基本波フィルタ手段と、
【数D1】
JP0003715517B2_000040t.gif
【数D2】
JP0003715517B2_000041t.gif
【数D3】
JP0003715517B2_000042t.gif
前記差分基本波フィルタ手段にて得られたデータΔIf3qをもとに差分基本波振幅値を演算する差分基本波振幅値演算手段と、
前記サンプルホールド手段にて得られたデータIqをもとに数D4式の演算を実行してIf1qを算出し、算出したIf1qを用いて数D5式の演算を実施してIf2qを算出するディジタルフィルタ第3の手法にて、直流成分と基本波電流成分以外の低次奇数倍調波成分を除去したデータを算出し、数D5式にて得られたIf2qを用いて数D6式の演算を実施してIf3qを得るディジタルフィルタ第4の手法にて、前記If2qのデータに対して偶数倍調波成分を除去したデータIf3qを算出する基本波フィルタ手段と、
【数D4】
JP0003715517B2_000043t.gif
【数D5】
JP0003715517B2_000044t.gif
【数D6】
JP0003715517B2_000045t.gif
前記基本波フィルタ手段にて得られたデータIf3qをもとに振幅値を演算する基本波振幅値演算手段と、
前記サンプルホールド手段の得たデータIqをもとに数D7式の演算を実行してIf4qを算出し、算出したIf4qを用いて数D8式の演算を実施してIf5qを算出するディジタルフィルタ第5の手法にて、低次奇数倍調波成分を除去したデータを算出し、数D8式にて得られたIf5qを用いて数D9式の演算を実施してIf6qを得るディジタルフィルタ第6の手法にて、前記If5qのデータに対して直流成分と第2調波成分以外の低次偶数倍調波成分を除去したデータIf6qを算出する第2高調波フィルタ手段と、
【数D7】
JP0003715517B2_000046t.gif
【数D8】
JP0003715517B2_000047t.gif
【数D9】
JP0003715517B2_000048t.gif
前記第2高調波フィルタ手段にて得られたデータIf6qをもとに振幅値を演算する第2高調波振幅値演算手段と、
前記第2高調波振幅値演算手段にて得られたデータを前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第2高調波の含有率を演算する第2高調波含有率演算手段と、
前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して前記第2高調波含有率演算手段にて得られた第2高調波の含有率と任意の定数として与えられる第2高調波抑制係数とを乗算して求められる抑制量を演算する第2高調波抑制演算手段と、
前記サンプルホールド手段にて得られたデータIqをもとに数D10式の演算を実行してIf7qを算出するディジタルフィルタ第7の手法にて、直流成分と偶数倍調波成分を除去したデータを算出し、前記数D10式にて得られたIf7qを用いて数D11式の演算を実施してIf8qを得るディジタルフィルタ第8の手法にて、前記If7qのデータに対して第3調波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去したデータIf8qを算出する第3高調波フィルタ手段と、
【数D10】
JP0003715517B2_000049t.gif
【数D11】
JP0003715517B2_000050t.gif
前記第3高調波フィルタ手段にて得られたデータIf8qをもとに振幅値を演算する第3高調波振幅値演算手段と、
前記第3高調波振幅値演算手段にて得られたデータを前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第3高調波の含有率を演算する第3高調波含有率演算手段と、
前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して前記第3高調波含有率演算手段にて得られた第3高調波の含有率と任意の定数として与えられる第3高調波抑制係数とを乗算して求められる抑制量を演算する第3高調波抑制演算手段と、
前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから前記第2高調波抑制演算手段にて得られた第2高調波抑制量と第3高調波抑制演算手段にて得られた第3高調波抑制量とを減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較判定する比較判定手段とを備えて成る交流き電用ベクトル形継電器。
【請求項5】
請求項1に記載の交流き電用ベクトル形継電器において、前記比較判定手段に代えて、前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータの変化分を検出して判定する変化分検出判定手段を備えたことを特徴とする交流き電用ベクトル形継電器。
【請求項6】
請求項2に記載の交流き電用ベクトル形継電器において、前記比較判定手段に代えて、前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第2高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値の変化分を検出して判定する変化分検出判定手段を備えたことを特徴とする交流き電用ベクトル形継電器。
【請求項7】
請求項3に記載の交流き電用ベクトル形継電器において、前記比較判定手段に代えて、前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第3高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値の変化分を検出して判定する変化分検出判定手段を備えたことを特徴とする交流き電用ベクトル形継電器。
【請求項8】
請求項4に記載の交流き電用ベクトル形継電器において、前記比較判定手段に代えて、前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから前記第2高調波抑制演算手段にて得られた第2高調波抑制量と第3高調波抑制演算手段にて得られた第3高調波抑制量とを減算して得られる振幅値の変化分を検出して判定する変化分検出判定手段を備えたことを特徴とする交流き電用ベクトル形継電器。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電鉄用の交流き電回路の地絡事故や短絡事故を検出する交流き電用ベクトル形継電器に関する。
【0002】
【従来の技術】
電鉄用の交流き電回路保護装置として、従来よりき電線に流れる電流の変化分に応動する電流変化分検出継電器が用いられている。この種の継電器の検出原理は次に述べる通りである。図9は電流変化分検出方法の原理を説明する概念図であり、コンデンサCと抵抗Rとによってき電線電流Iの変化分ΔIを検出するものである。図9に示されるように、この回路はCとRの微分回路であり、次の数1式の関数により変化分電流ΔIが得られる。
【0003】
【数1】
JP0003715517B2_000002t.gifここで、tdは時定数(=C・R)である。
【0004】
なお、図9は電流変化分検出方法の原理を説明するためにアナログ回路の例を示したが、マイクロコンピュータによるディジタル演算によっても同一原理のものが実現できる。これについては後述する。
【0005】
図10は、図9の応動を説明する図であり、き電線電流が負荷により変化する場合を示している。図10(a)は、き電線電流Iのタイムチャート、(b)は変化分電流ΔIのタイムチャートである。(a)の実線部において、時刻t1で短絡事故が発生してき電線電流Iが上昇し、その変化分に応じたΔIが(b)の実線に示すように得られる。この得られた変化分ΔIが予め定められた整定値Kを超えれば、継電器は動作出力を生じることになる。
【0006】
通常の電流変化では、ΔIがこの整定値Kを超えることはないが、き電線に短絡事故が発生した場合にはき電線電流の変化分が極めて大となるので、それに応じてΔIも大となり、整定値Kを超えて継電器が動作する。この様にして、ΔIの大きさを判定することにより、き電線に流れる電流が負荷電流なのか事故電流なのかを選択できる。
【0007】
しかし、鉄道の電気車両は力行、惰行、制動の3つの動作交差を繰り返して運転される。き電線保護継電器の場合、この電気車両が主な負荷となるので、電気車両の負荷状態を速やかに検出することが保護を確実なものにする。
【0008】
近年、電気車両の3つの動作の中で制動の方法が変わりつつあり、中でも回生ブレーキと呼ばれる駆動用モータを制動時のエネルギーで逆回転させて電気を発電し、その電流をき電線へ戻す方法が主流となり、新形車両に積極的に導入されている。
【0009】
このような車両が回生制御中にき電線に系統事故が発生した場合、回生車両からも事故点に電流が供給されるため、き電線電流の絶対値の変化がわずかとなることが考えられ、従来のき電線に流れる電流の絶対値の変化分に応動する電流変化分検出継電器では事故検出が困難となり、場合によっては事故検出できない可能性もある。
【0010】
また、従来の車両に力行あるいは制動を行う際には系統周波数に対する第3高調波が多く発生し、第3高調波の発生を確認して系統事故か電気車両による負荷の接近かを判別していた。しかし、近年の新形車両では、第3高調波の発生を低減させるものが開発されてきており、第3高調波による電気車両の接近を判別するのが難しく、従来のき電線用の保護継電器では電気車両による負荷の接近での誤動作の可能性がある。
【0011】
そこで最近では、前述のように車両が回生制御中にき電線に系統事故が発生したときに、回生車両からも事故点に電流が供給されるためにき電線電流の絶対値の変化がわずかとなる場合でも事故検出が可能なき電線保護継電器として、電流の大きさでなく位相変化でも応動が行えるようなき電線保護継電器が検討されており、ある時点のき電線電流とその数サイクル前のき電線電流のデータとの差分を求めて差分電流の変化で位相変化を捉えて応動するき電線保護継電器が提案されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような提案されているき電線保護継電器でも、次のような問題点があった。上記で示したある時点のき電線電流とその数サイクル前のき電線電流データとの差分を求めて差分電流の変化で位相変化を捉えて応動するき電線保護継電器では、数2式~数7式で示すようなフーリエ級数展開を応用して系統周波数の基本波電流や第2高調波、第3高調波などを抽出しているが、フーリエ級数展開を用いると乗算が多くなり、演算負担が大きくなる問題がある。
【0013】
【数2】
JP0003715517B2_000003t.gif【数3】
JP0003715517B2_000004t.gif【数4】
JP0003715517B2_000005t.gif【数5】
JP0003715517B2_000006t.gif【数6】
JP0003715517B2_000007t.gif【数7】
JP0003715517B2_000008t.gifまた、フーリエ級数展開の場合にはサンプリングデータに定数を掛け合わせるが、多くの定数を掛け合わせることは、定数に含まれる演算誤差を含んでしまうことも懸念される。
【0014】
本発明はこのような従来の技術的課題を解決するためになされたものであって、フーリエ級数展開を用いずに、任意のディジタルフィルタを組み合わせることによって系統周波数の基本波電流や第2高調波、第3高調波などを抽出し、演算負担の軽減を図り、さらに演算誤差の軽減も行うことができる交流き電用ベクトル形継電器を提供することを目的とする。
【0015】
本発明はまた、ある時点のき電線電流と数サイクル前のき電線電流データとの差分を求めて差分電流の変化で位相変化を捉えたデータを用いて従来の変化分電流ΔIの演算を行うことにより、系統で発生した電流変化が事故であるか否かの選択性を高めた交流き電用ベクトル形継電器を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の交流き電用ベクトル形継電器は、電鉄用交流き電回路のき電線電流の値を一定の間隔でサンプリングして記憶するサンプルホールド手段と、前記サンプルホールド手段のデータから交流き電線電流の定格周波数のnサイクル前(n:所定の整数)の前記サンプルホールド手段で記憶したデータを差し引いた差分を演算する差分電流演算手段と、前記差分電流演算手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第1の手法と、当該ディジタルフィルタ第1の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第2の手法とから構成される差分基本波フィルタ手段と、前記差分基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する差分基本波振幅値演算手段と、前記差分基本波振幅値演算手段の算出した振幅値を予め定められた値と比較判定する比較判定手段とを備えたものである。
【0017】
請求項1の発明の交流き電用ベクトル形継電器では、回生制御中にき電線に系統事故が発生した場合に、き電線電流の位相が変化することに着目して事故検出が可能となるようにするため、サンプルホールド手段が電鉄用交流き電回路のき電線電流をその定格周波数よりも短い時間間隔でサンプリングを行い、そのデータを記憶し、差分電流演算手段がこのサンプルホールド手段にて記憶したき電線電流データから系統周波数のnサイクル前の同じくサンプルホールド手段にて記憶したき電線電流データを減算したデータにてき電線電流の大きさや位相が変化したことが検出可能となるデータを演算して記憶する。
【0018】
そして差分基本波フィルタ手段が任意のディジタルフィルタ[例えば、「保護継電工学」、オーム社発行の109ページに記載のディジタルフィルタ]を組み合わせて、差分電流演算手段にて得られたデータから基本波電流成分を抽出し、他の低次高調波成分を除去する演算を行い、この差分基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに、差分基本波振幅値演算手段が振幅値演算[例えば、上記の「保護継電工学」の112ページに記載の演算原理]にて振幅値を演算し、比較判定手段が差分基本波振幅値演算手段にて得られた振幅値を保護動作用として予め定められた値と比較し判定を行う。
【0019】
これにより、フーリエ級数展開を用いずに、ディジタルフィルタ組み合わせることで基本波電流成分を抽出し、他の低次高調波成分を除去する演算を行い、演算負担を軽くしながらも、き電線電流の絶対値の変化がわずかである場合でも位相変化に応動して事故検出し、この事故検出をすれば必要な保護動作を働かせることでき電線を保護する。
【0020】
請求項2の発明の交流き電用ベクトル形継電器は、電鉄用交流き電回路のき電線電流の値を一定の間隔でサンプリングして記憶するサンプルホールド手段と、前記サンプルホールド手段のデータから交流き電線電流の定格周波数のnサイクル前(n:所定の整数)の前記サンプルホールド手段で記憶したデータを差し引いた差分を演算する差分電流演算手段と、前記差分電流演算手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第1の手法と、当該ディジタルフィルタ第1の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第2の手法とから構成される差分基本波フィルタ手段と、前記差分基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する差分基本波振幅値演算手段と、前記サンプルホールド手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第3の手法と、当該ディジタルフィルタ第3の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第4の手法とから構成される基本波フィルタ手段と、前記基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する基本波振幅値演算手段と、前記サンプルホールド手段の得たデータをもとに奇数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第5の手法と、当該ディジタルフィルタ第5の手法にて得られたデータをもとに直流成分と第2調波成分以外の低次偶数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第6の手法とから構成される第2高調波フィルタ手段と、前記第2高調波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する第2高調波振幅値演算手段と、前記第2高調波振幅値演算手段にて得られたデータを前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第2高調波の含有率を演算する第2高調波含有率演算手段と、前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して前記第2高調波含有率演算手段にて得られた第2高調波の含有率と任意の定数として与えられる第2高調波抑制係数とを乗算して求められる抑制量を演算する第2高調波抑制演算手段と、前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから前記第2高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較判定する比較判定手段とを備えたものである。
【0021】
請求項2の発明の交流き電用ベクトル形継電器では、サンプルホールド手段が電鉄用交流き電回路のき電線電流の値を一定の間隔でサンプリングして記憶し、差分電流演算手段がサンプルホールド手段のデータから交流き電線電流の定格周波数のnサイクル前の同じくサンプルホールド手段が記憶しているデータを差し引いた差分を演算する。
【0022】
そして差分基本波フィルタ手段においてディジタルフィルタ第1の手法で差分電流演算手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第2の手法で当該ディジタルフィルタ第1の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去し、さらに、差分基本波振幅値演算手段が差分基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。
【0023】
これと並行して、基本波フィルタ手段においてディジタルフィルタ第3の手法でサンプルホールド手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第4の手法で当該ディジタルフィルタ第3の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去し、さらに、基本波振幅値演算手段が基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。
【0024】
さらにこれらと並行して、第2高調波フィルタ手段においてディジタルフィルタ第5の手法でサンプルホールド手段の得たデータをもとに奇数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第6の手法で当該ディジタルフィルタ第5の手法にて得られたデータをもとに直流成分と第2高調波成分以外の低次偶数倍調波成分を除去し、さらに、第2高調波振幅値演算手段が第2高調波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。
【0025】
そして第2高調波含有率演算手段が、第2高調波振幅値演算手段にて得られたデータを基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第2高調波の含有率を演算し、第2高調波抑制演算手段が基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して第2高調波含有率演算手段にて得られた第2高調波の含有率と任意の定数として与えられる第2高調波抑制係数とを乗算して抑制量を求め、比較判定手段が前述の差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから当該第2高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較して判定する。
【0026】
これにより、き電線に励磁突入電流が通電された時に発生する第2高調波に応じて判定量に抑制をかけて励磁突入電流に対して不要動作することのない交流き電用ベクトル形継電器を得る。
【0027】
請求項3の発明の交流き電用ベクトル形継電器は、電鉄用交流き電回路のき電線電流の値を一定の間隔でサンプリングして記憶するサンプルホールド手段と、前記サンプルホールド手段のデータから交流き電線電流の定格周波数のnサイクル前(n:所定の整数)の前記サンプルホールド手段で記憶したデータを差し引いた差分を演算する差分電流演算手段と、前記差分電流演算手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第1の手法と、当該ディジタルフィルタ第1の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第2の手法とから構成される差分基本波フィルタ手段と、前記差分基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する差分基本波振幅値演算手段と、前記サンプルホールド手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第3の手法と、当該ディジタルフィルタ第3の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第4の手法とから構成される基本波フィルタ手段と、前記基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する基本波振幅値演算手段と、前記サンプルホールド手段にて得られたデータをもとに直流成分と偶数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第7の手法と前記ディジタルフィルタ第7の手法にて得られたデータをもとに第3調波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第8の手法とから構成される第3高調波フィルタ手段と、前記第3高調波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する第3高調波振幅値演算手段と、前記第3高調波振幅値演算手段にて得られたデータを前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第3高調波の含有率を演算する第3高調波含有率演算手段と、前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して前記第3高調波含有率演算手段にて得られた第3高調波の含有率と任意の定数として与えられる第3高調波抑制係数とを乗算して求められる抑制量を演算する第3高調波抑制演算手段と、前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第3高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較判定する比較判定手段とを備えたものである。
【0028】
請求項3の発明の交流き電用ベクトル形継電器では、サンプルホールド手段が電鉄用交流き電回路のき電線電流の値を一定の間隔でサンプリングして記憶し、差分電流演算手段がサンプルホールド手段のデータから交流き電線電流の定格周波数のnサイクル前の同じくサンプルホールド手段が記憶しているデータを差し引いた差分を演算する。
【0029】
そして差分基本波フィルタ手段においてディジタルフィルタ第1の手法で差分電流演算手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第2の手法で当該ディジタルフィルタ第1の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去し、さらに、差分基本波振幅値演算手段が差分基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。
【0030】
これと並行して、基本波フィルタ手段においてディジタルフィルタ第3の手法でサンプルホールド手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第4の手法で当該ディジタルフィルタ第3の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去し、さらに、基本波振幅値演算手段が基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。
【0031】
さらにこれらと並行して、第3高調波フィルタ手段においてディジタルフィルタ第7の手法でサンプルホールド手段にて得られたデータをもとに直流成分と偶数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第8の手法でこのディジタルフィルタ第7の手法にて得られたデータをもとに第3高調波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去し、第3高調波振幅値演算手段が第3高調波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。
【0032】
そして第3高調波含有率演算手段が第3高調波振幅値演算手段にて得られたデータを基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第3高調波の含有率を演算し、第3高調波抑制演算手段が基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して第3高調波含有率演算手段にて得られた第3高調波の含有率と任意の定数として与えられる第3高調波抑制係数とを乗算して抑制量を求め、さらに比較判定手段が前述の差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第3高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較して判定する。
【0033】
これにより、き電線に電気車両が進入した時に発生する第3高調波に応じて判定量に抑制をかけて電気車両の力行、制動が行われた時に不要動作することのない交流き電用ベクトル形継電器を得る。
【0034】
請求項4の発明の交流き電用ベクトル形継電器は、電鉄用交流き電回路のき電線電流の値を一定の間隔でサンプリングして記憶するサンプルホールド手段と、前記サンプルホールド手段のデータから交流き電線電流の定格周波数のnサイクル前(n:所定の整数)の前記サンプルホールド手段で記憶したデータを差し引いた差分を演算する差分電流演算手段と、前記差分電流演算手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第1の手法と、当該ディジタルフィルタ第1の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第2の手法とから構成される差分基本波フィルタ手段と、前記差分基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する差分基本波振幅値演算手段と、前記サンプルホールド手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第3の手法と、当該ディジタルフィルタ第3の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第4の手法とから構成される基本波フィルタ手段と、前記基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する基本波振幅値演算手段と、前記サンプルホールド手段の得たデータをもとに奇数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第5の手法と、当該ディジタルフィルタ第5の手法にて得られたデータをもとに直流成分と第2調波成分以外の低次偶数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第6の手法とから構成される第2高調波フィルタ手段と、前記第2高調波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する第2高調波振幅値演算手段と、前記第2高調波振幅値演算手段にて得られたデータを前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第2高調波の含有率を演算する第2高調波含有率演算手段と、前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して前記第2高調波含有率演算手段にて得られた第2高調波の含有率と任意の定数として与えられる第2高調波抑制係数とを乗算して求められる抑制量を演算する第2高調波抑制演算手段と、前記サンプルホールド手段にて得られたデータをもとに直流成分と偶数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第7の手法と前記ディジタルフィルタ第7の手法にて得られたデータをもとに第3調波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去するディジタルフィルタ第8の手法とから構成される第3高調波フィルタ手段と、前記第3高調波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する第3高調波振幅値演算手段と、前記第3高調波振幅値演算手段にて得られたデータを前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第3高調波の含有率を演算する第3高調波含有率演算手段と、前記基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して前記第3高調波含有率演算手段にて得られた第3高調波の含有率と任意の定数として与えられる第3高調波抑制係数とを乗算して求められる抑制量を演算する第3高調波抑制演算手段と、前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから前記第2高調波抑制演算手段にて得られた第2高調波抑制量と第3高調波抑制演算手段にて得られた第3高調波抑制量とを減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較判定する比較判定手段とを備えたものである。
【0035】
請求項4の発明の交流き電用ベクトル形継電器では、サンプルホールド手段が電鉄用交流き電回路のき電線電流の値を一定の間隔でサンプリングして記憶し、差分電流演算手段がサンプルホールド手段のデータから交流き電線電流の定格周波数のnサイクル前の同じくサンプルホールド手段が記憶しているデータを差し引いた差分を演算する。
【0036】
そして差分基本波フィルタ手段においてディジタルフィルタ第1の手法で差分電流演算手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第2の手法で当該ディジタルフィルタ第1の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去し、さらに、差分基本波振幅値演算手段が差分基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。
【0037】
これと並行して、基本波フィルタ手段においてディジタルフィルタ第3の手法でサンプルホールド手段にて得られたデータをもとに直流成分と基本波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第4の手法で当該ディジタルフィルタ第3の手法にて得られたデータをもとに偶数倍調波成分を除去し、さらに、基本波振幅値演算手段が基本波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。
【0038】
またこれらと並行して、第2高調波フィルタ手段においてディジタルフィルタ第5の手法でサンプルホールド手段の得たデータをもとに奇数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第6の手法で当該ディジタルフィルタ第5の手法にて得られたデータをもとに直流成分と第2高調波成分以外の低次偶数倍調波成分を除去し、さらに、第2高調波振幅値演算手段が第2高調波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。そして第2高調波含有率演算手段が、第2高調波振幅値演算手段にて得られたデータを基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第2高調波の含有率を演算し、第2高調波抑制演算手段が基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して第2高調波含有率演算手段にて得られた第2高調波の含有率と任意の定数として与えられる第2高調波抑制係数とを乗算して抑制量を求める。
【0039】
さらにこれらと並行して、第3高調波フィルタ手段においてディジタルフィルタ第7の手法でサンプルホールド手段にて得られたデータをもとに直流成分と偶数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第8の手法でこのディジタルフィルタ第7の手法にて得られたデータをもとに第3高調波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去し、第3高調波振幅値演算手段が第3高調波フィルタ手段にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。そして第3高調波含有率演算手段が第3高調波振幅値演算手段にて得られたデータを基本波振幅値演算手段にて得られたデータによって除算して基本波に対する第3高調波の含有率を演算し、第3高調波抑制演算手段が基本波振幅値演算手段にて得られたデータに対して第3高調波含有率演算手段にて得られた第3高調波の含有率と任意の定数として与えられる第3高調波抑制係数とを乗算して抑制量を求める。
【0040】
そして最終的に、比較判定手段が前述の差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第2高調波抑制演算手段にて得られた第2高調波抑制量と第3高調波抑制演算手段にて得られた第3高調波抑制量とを減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較して判定する。
【0041】
こうして請求項4の発明によれば、請求項2の発明と請求項3の発明とを組み合わせたことにより、差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第2高調波抑制演算手段にて得られた第2高調波抑制量を減算し、さらに第3高調波抑制演算手段にて得られた第3高調波抑制量をも減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較して判定を行うことにより、き電線に励磁突入電流が通電された時に不要動作することがなく、さらにき電線に電気車両が進入した時にも不要動作することのない交流き電用ベクトル形継電器を得ることができる。
【0042】
請求項5の発明は、請求項1の交流き電用ベクトル形継電器において、前記比較判定手段に代えて、前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータの変化分を検出して判定する変化分検出判定手段を備えたものである。
【0043】
請求項5の発明の交流き電用ベクトル形継電器では、請求項1の交流き電用ベクトル形継電器に対して、前述の従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算手段にて得られた振幅値データより変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【0044】
請求項6の発明は、請求項2の交流き電用ベクトル形継電器において、前記比較判定手段に代えて、前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第2高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値の変化分を検出して判定する変化分検出判定手段を備えたものである。
【0045】
請求項6の発明の交流き電用ベクトル形継電器では、請求項2の交流き電用ベクトル形継電器に対して、前述の従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第2高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値データにて変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【0046】
請求項7の発明は、請求項3の交流き電用ベクトル形継電器において、前記比較判定手段に代えて、前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第3高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値の変化分を検出して判定する変化分検出判定手段を備えたものである。
【0047】
請求項7の発明の交流き電用ベクトル形継電器では、請求項3の交流き電用ベクトル形継電器に対して、前述の従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第3高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値データにて変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【0048】
請求項8の発明は、請求項4の交流き電用ベクトル形継電器において、前記比較判定手段に代えて、前記差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第2高調波抑制演算手段にて得られた第2高調波抑制量と第3高調波抑制演算手段にて得られた第3高調波抑制量とを減算して得られる振幅値の変化分を検出して判定する変化分検出判定手段を備えたものである。
【0049】
請求項8の発明の交流き電用ベクトル形継電器では、請求項4の交流き電用ベクトル形継電器に対して、前述の従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第2高調波抑制演算手段にて得られた抑制量と第3高調波抑制演算手段にて得られた抑制量とを減算して得られる振幅値データにて変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は本発明の第1の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器の回路構成を示している。図1において、き電線電流信号Iは電鉄用変電所の母線から保護対象のき電線の遮断器の後に配置されたき電線電流変成器を介して得られる。
【0051】
このき電線電流Iが入力されるサンプルホールド部1はき電線電流Iの出力をアナログフィルタに通過させた上で予め定められた一定の時間間隔でサンプリングを行い、その時の電流データを記憶する。差分電流演算部2は、サンプルホールド部1にて記憶されたき電線電流Iのサンプリングデータを用いて予め定められた系統周波数のnサイクル前(n:予め定めた整数)の同じくサンプルホールド部1にて記憶されているき電線電流のサンプリングデータを減算した差分電流データを記憶する。
【0052】
差分基本波フィルタ部3は、差分電流演算部2にて得られた差分電流データに対して既知のディジタルフィルタを1つあるいは既知のディジタルフィルタを複数組み合わせて構成し、系統周波数の基本波電流成分を抽出して他の低次高調波成分を除去したデータを記憶する。差分基本波振幅値演算部4は、差分基本フィルタ部3にて得られた基本波電流成分を抽出したデータより振幅値演算を行い、系統周波数のnサイクル前との差分電流の振幅値を記憶する。
【0053】
比較判定部5は、差分基本波振幅値演算部4にて得られたき電線の差分電流の振幅値と予め定められた値とを比較して判定を行い、その結果を後段の出力処理側(図示せず)へ渡す。
【0054】
上述した差分基本波フィルタ部3のディジタルフィルタについて、例を示して説明する。サンプルホールド部1のサンプリング間隔を系統周波数の電気角15度とした場合に得られるき電線電流Iの瞬時値をIqとしたとき(q:電気角15度毎のデータの順番を示し(ここで、「q-1」としたときは、qに対して電気角15度前のデータのこととする)、差分電流演算部2で得られる差分き電線電流の瞬時値ΔIqを用いて数8式の演算を実行してΔIf1qを算出し、算出したΔIf1qを用いて、さらに数9式の演算を実施してΔIf2qを得ることができる。
【0055】
こうして得られたΔIf2qのデータは、ΔIqのデータに対して直流成分と基本波電流成分以外の低次奇数倍調波成分を除去したデータである(ディジタルフィルタ第1の手法)。
【0056】
さらに数9式にて得られたΔIf2qを用いて数10式の演算を実施してΔIf3qを得ることができる。算出して得られたΔIf3qのデータは、ΔIf2qのデータに対して偶数倍調波成分を除去したデータである(ディジタルフィルタ第2の手法)。
【0057】
【数8】
JP0003715517B2_000009t.gif【数9】
JP0003715517B2_000010t.gif【数10】
JP0003715517B2_000011t.gifこの第1の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器の動作を説明する。回生制御中にき電線に系統事故が発生した場合に、き電線電流の位相が変化することに着目して事故検出が可能となるようにするため、サンプルホールド部1が電鉄用交流き電回路のき電線電流Iをその定格周波数よりも短い時間間隔でサンプリングを行い、そのデータを記憶し、差分電流演算部2がこのサンプルホールド部1にて記憶したき電線電流Iのデータから系統周波数のnサイクル前の同じくサンプルホールド部1にて記憶したき電線電流データを減算したデータにてき電線電流の大きさや位相が変化したことが検出可能となるデータを演算して記憶する。
【0058】
そして差分基本波フィルタ部3がディジタルフィルタを組み合わせて、差分電流演算部2にて得られたデータから基本波電流成分を抽出し、また他の低次高調波成分を除去する演算を行う。そしてこの差分基本波フィルタ部3にて得られたデータをもとに、差分基本波振幅値演算部4が振幅値を演算し、比較判定部5が差分基本波振幅値演算部4にて得られた振幅値を保護動作用として予め定められた値と比較し判定を行う。
【0059】
これにより、フーリエ級数展開を用いずに、ディジタルフィルタ組み合わせることでき電線電流Iの基本波電流成分を抽出し、他の低次高調波成分を除去する演算を行い、演算負担を軽くしながらも、き電線電流の絶対値の変化がわずかである場合でも位相変化に応動して事故検出し、この事故検出をすれば必要な保護動作を働かせることでき電線を保護することができる。
【0060】
図2は本発明の第2の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器の構成を示し定いる。図2に示した第2の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器において、図1に示した第1の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器と異なる構成は、基本波フィルタ部6と基本波振幅値演算部7、第2高調波フィルタ部8と第2高調波振幅値演算部9と第2高調波含有率演算部10と第2高調波抑制演算部11と比較判定部12である。
【0061】
基本波フィルタ部6は、サンプルホールド部1にて記憶されたき電線電流のサンプリングデータに対して既知のディジタルフィルタを1つあるいは既知のディジタルフィルタを複数組み合わせて構成し、系統周波数の基本波電流成分を抽出し、他の低次高調波成分を除去したデータを記憶する。基本波振幅値演算部7は、基本波フィルタ部6にて得られた基本波電流成分を抽出したデータより振幅値演算を行い、き電線電流Iの基本波電流成分の振幅値を記憶する。
【0062】
第2高調波フィルタ部8は、サンプルホールド部1にて記憶されたき電線電流のサンプリングデータに対して既知のディジタルフィルタを1つあるいは既知のディジタルフィルタを複数組み合わせて構成し、系統周波数の第2高調波電流成分を抽出し、基本波電流成分や他の低次高調波成分を除去したデータを記憶する。第2高調波振幅値演算部9は、第2高調波フィルタ部8にて得られた第2高調波電流成分を抽出したデータより振幅値演算を行い、き電線電流の第2高調波電流成分の振幅値を記憶する。
【0063】
第2高調波含有率演算部10は、第2高調波振幅値演算部9より得られたき電線電流の第2高調波電流成分の振幅値を、基本波振幅値演算部7より得られたき電線の基本波電流成分にて除算を行い、き電線電流の基本波に対する第2高調波の含有率を記憶する。そして第2高調波抑制演算部11は、第2高調波含有率演算部10にて得られたき電線電流Iの基本波に対する第2高調波の含有率に、任意の定数として与えられる第2高調波抑制係数を乗算して得られる第2高調波による抑制量を記憶する。
【0064】
比較判定部12は、前述の差分基本波振幅値演算部4にて得られたき電線の差分電流の振幅値より、第2高調波抑制演算部11にて得られた第2高調波による抑制量を減算し、得られた振幅値と予め定められた値と比較して判定を行い、その結果を後段の出力処理側へ渡す。
【0065】
ここで、基本波フィルタ部6のディジタルフィルタについて説明する。例えば、サンプルホールド部1のサンプリング間隔を系統周波数の電気角15度とした場合に得られるき電線電流の瞬時値をIqとしたとき、き電線電流の瞬時値Iqを用いて、前述の数8式~数10式と同様の数11式~数13式の演算を実施してIf3qを得る。こうして得られたIf3qのデータは、差分基本波フィルタ部6と同様にき電線電流の瞬時値Iqのデータに対して直流電流成分と基本波電流成分以外の低次高調波成分が除去されたデータである。
【0066】
【数11】
JP0003715517B2_000012t.gif【数12】
JP0003715517B2_000013t.gif【数13】
JP0003715517B2_000014t.gif また第2高調波フィルタ部8のディジタルフィルタについて説明する。例えば、き電線電流の瞬時値Iqを用いて数14式の演算を実施してIf4qを得ることができる。得られたIf4qのデータは、き電線電流の瞬時値Iqのデータに対して奇数倍調波成分を除去したデータである(ディジタルフィルタ第の手法)。さらに数14式にて得られたIf4qを用いて数15式の演算を実行してIf5qを算出し、算出したIf5qを用いてさらに数16式の演算を実施してIf6qを得る。得られたIf6qのデータは、If4qのデータに対して直流電流成分と第2高調波電流成分以外の低次偶数倍調波成分を除去したデータである(ディジタルフィルタ第の手法)。
【0067】
【数14】
JP0003715517B2_000015t.gif【数15】
JP0003715517B2_000016t.gif【数16】
JP0003715517B2_000017t.gif次に、上記の構成の第2の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器の動作を説明する。サンプルホールド部1、差分電流演算部2、差分基本波フィルタ部3、そして差分基本波振幅値演算部4の演算処理動作は図1に示した第1の実施の形態と同様である。また基本波フィルタ部6、基本波振幅値演算部7の演算処理動作も同様である。
【0068】
そして第2の実施の形態の特徴である第2高調波フィルタ部8は、そのディジタルフィルタ第5の手法でサンプルホールド部1の得たデータをもとに奇数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第6の手法で当該ディジタルフィルタ第5の手法にて得られたデータをもとに直流成分と第2高調波成分以外の低次偶数倍調波成分を除去する。そして第2高調波振幅値演算部9が第2高調波フィルタ部8にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。
【0069】
そして第2高調波含有率演算部10が、第2高調波振幅値演算部9にて得られたデータを基本波振幅値演算部7にて得られたデータによって除算して基本波に対する第2高調波の含有率を演算し、第2高調波抑制演算部11が基本波振幅値演算部7にて得られたデータに対して第2高調波含有率演算部10にて得られた第2高調波の含有率と任意の定数として与えられる第2高調波抑制係数とを乗算して抑制量を求める。
【0070】
そして比較判定部12が、差分基本波振幅値演算部4にて得られたデータから第2高調波抑制演算部11にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較して判定する。
【0071】
これにより、第2の実施の形態によれば、き電線に励磁突入電流が通電された時に発生する第2高調波に応じて判定量に抑制をかけて励磁突入電流に対して不要動作することのない交流き電用ベクトル形継電器を得ることができる。
【0072】
図3は本発明の第3の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器の構成を示している。図3に示す交流き電用ベクトル形継電器において、図1に示した第1の実施の形態と異なる構成は、基本波フィルタ部6と基本波振幅値演算部7、そして第3高調波フィルタ部13と第3高調波振幅値演算部14と第3高調波含有率演算部15と第3高調波抑制演算部16と比較判定部17である。なお、これらのうち、基本波フィルタ部6と基本波振幅値演算部7とは、図2に示した第2の実施の形態のものと同様である。
【0073】
第3高調波フィルタ部13は、サンプルホールド部1にて記憶されたき電線電流Iのサンプリングデータに対して既知のディジタルフィルタを1つあるいは既知のディジタルフィルタを複数組み合わせて構成し、系統周波数の第3高調波電流成分を抽出して基本波電流成分や他の低次高調波成分を除去したデータを記憶する。第3高調波振幅値演算部14は、第3高調波フィルタ部13にて得られた第3高調波電流成分を抽出したデータより振幅値演算を行い、き電線電流の第3高調波電流成分の振幅値を記憶する。
【0074】
第3高調波含有率演算部15は、第3高調波振幅値演算部14より得られたき電線電流の第3高調波電流成分の振幅値を基本波振幅値演算部7より得られたき電線の基本波電流成分にて除算を行い、き電線電流の基本波に対する第3高調波の含有率を記憶する。第3高調波抑制演算部16は、第3高調波含有率演算部15にて得られたき電線電流の基本波に対する第3高調波の含有率に、任意の定数として与えられる第3高調波抑制係数を乗算して得られる第3高調波による抑制量を記憶する。
【0075】
比較判定部17は、差分基本波振幅値演算部4にて得られたき電線の差分電流の振幅値より、第3高調波抑制演算部16にて得られた第3高調波による抑制量を減算して得られた振幅値と予め定められた値と比較して判定を行い、その結果を後段の出力処理側へ渡す。
【0076】
第3高調波フィルタ部13のディジタルフィルタについて説明する。例えば、サンプルホールド部1のサンプリング間隔を系統周波数の電気角15度とした場合に得られるき電線電流の瞬時値をIqとしたとき、き電線電流の瞬時値Iqを用いて数17式の演算を実施してIf7qを得る。算出して得られたIf7qのデータはき電線電流の瞬時値Iqのデータに対して直流電流成分と偶数倍調波成分を除去したデータである(ディジタルフィルタ第の手法)。
【0077】
さらに数17式にて得られたIf7qを用いて数18式の演算を実行してIf8qを得る。得られたIf8qのデータは、If7qのデータに対して第3高調波電流成分以外の低次奇数倍調波成分を除去したデータである(ディジタルフィルタ第の手法)。
【0078】
【数17】
JP0003715517B2_000018t.gif【数18】
JP0003715517B2_000019t.gif次に、上記の第3の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器の動作を説明する。サンプルホールド部1、差分電流演算部2、差分基本波フィルタ部3、そして差分基本波振幅値演算部4の演算処理動作は図1に示した第1の実施の形態と同様である。また基本波フィルタ部6、基本波振幅値演算部7の演算処理動作も同様である。
【0079】
そして第3の実施の形態の特徴である第3高調波フィルタ部13は、そのディジタルフィルタ第7の手法でサンプルホールド部1にて得られたデータをもとに直流成分と偶数倍調波成分を除去し、ディジタルフィルタ第8の手法でこのディジタルフィルタ第7の手法にて得られたデータをもとに第3高調波成分以外の低次奇数倍調波成分を除去する。そして第3高調波振幅値演算部14が第3高調波フィルタ部13にて得られたデータをもとに振幅値を演算する。
【0080】
さらに第3高調波含有率演算部15が第3高調波振幅値演算部14にて得られたデータを基本波振幅値演算部7にて得られたデータによって除算して基本波に対する第3高調波の含有率を演算し、第3高調波抑制演算部16が基本波振幅値演算部7にて得られたデータに対して第3高調波含有率演算部15にて得られた第3高調波の含有率と任意の定数として与えられる第3高調波抑制係数とを乗算して抑制量を求める。
【0081】
そして比較判定部17が差分基本波振幅値演算部4にて得られたデータから第3高調波抑制演算部16にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較して判定する。
【0082】
これにより、第3の実施の形態によれば、き電線に電気車両が進入した時に発生する第3高調波に応じて判定量に抑制をかけて電気車両の力行、制動が行われた時に不要動作することのない交流き電用ベクトル形継電器を得ることができる。
【0083】
次に、本発明の第4の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器について説明する。図4は第4の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器の構成を示している。第4の実施の形態の特徴は、図2に示した第2の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器に対して、第3の実施の形態と同様の第3高調波フィルタ部13と第3高調波振幅値演算部14と第3高調波含有率演算部15と第3高調波抑制演算部16とを追加し、また比較判定部12に代えて比較判定部18を備えた点である。
【0084】
比較判定部18は、差分基本波振幅値演算部4にて得られたき電線の差分電流の振幅値より、第2高調波抑制演算部11にて得られた第2高調波による抑制量を減算し、さらに第3高調波抑制演算部16にて得られた第3高調波による抑制量をも減算して得られた振幅値を予め定められた値と比較して判定を行い、その結果を後段の出力処理側へ渡す。
【0085】
次に、この第4の実施の形態の動作について説明する。差分基本波振幅値演算部4、基本波振幅値演算部7、第2高調波抑制演算部11は図2に示した第2の実施の形態と同様の演算処理を行う。そして第3高調波抑制演算部16は図3に示した第3の実施の形態と同様の演算処理を行う。
【0086】
そして比較判定部18は、差分基本波振幅値演算部4にて得られたデータから第2高調波抑制演算部11にて得られた第2高調波抑制量と第3高調波抑制演算部16にて得られた第3高調波抑制量とを減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較して判定する。
【0087】
こうして第4の実施の形態によれば、第2の実施の形態と第3の実施の形態とを組み合わせた構成にしたことにより、差分基本波振幅値演算部4にて得られたデータから第2高調波抑制演算部11にて得られた第2高調波抑制量を減算し、さらに第3高調波抑制演算部16にて得られた第3高調波抑制量をも減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較して判定するので、き電線に励磁突入電流が通電された時に不要動作することがなく、さらにき電線に電気車両が進入した時にも不要動作することのない交流き電用ベクトル形継電器を得ることができる。
【0088】
次に、本発明の第5の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器を図5に基づいて説明する。図5は第5の実施の形態の構成を示している。この図5に示した第5の実施の形態において、図1に示した第1の実施の形態と異なる構成要素は変化分検出判定部21である。その他の構成は、図1に示した第1の実施の形態のものと共通である。
【0089】
この変化分検出判定部21は、差分基本波振幅値演算部4より得られたき電線の差分電流の振幅値より変化分ΔIを演算し、ΔIと予め定められた値とを比較して判定を行い、その結果を後段の出力処理側へ渡す。
【0090】
この第5の実施の形態によれば、図1に示した第1の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器に対して、従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算部4にて得られた振幅値データより変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【0091】
次に、本発明の第6の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器を図6に基づいて説明する。図6に示す第6の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器において、図2に示した第2の実施の形態のものと異なる構成要素は、変化分検出判定部22である。その他の構成は、図2に示した第2の実施の形態のものと共通である。
【0092】
この変化分検出判定部22は、差分基本波振幅値演算部4より得られたき電線の差分電流の振幅値から第2高調波抑制演算部11にて得られた第2高調波による抑制量を減算して得られた振幅値より変化分ΔIを演算し、ΔIと予め定められた値とを比較し判定を行い、その結果を後段の出力処理側へ渡す。
【0093】
この第6の実施の形態によれば、図2に示した第2の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器に対して、従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算部4にて得られたデータから第2高調波抑制演算部11にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値データにて変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【0094】
次に、本発明の第7の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器を図7に基づいて説明する。図7に示す第7の実施の交流き電用ベクトル形継電器において、図3に示した第3の実施の形態のものと異なる構成要素は、変化分検出判定部23である。その他の構成は、図3に示した第3の実施の形態のものと共通である。
【0095】
この変化分検出判定部23は、差分基本波振幅値演算部4より得られたき電線の差分電流の振幅値から第3高調波抑制演算部16にて得られた第3高調波による抑制量を減算して得られた振幅値より変化分ΔIを演算し、このΔIと予め定められた値とを比較して判定を行い、その結果を後段の出力処理側へ渡す。
【0096】
この第7の実施の形態によれば、第3の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器に対して、従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算部4にて得られたデータから第3高調波抑制演算部16にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値データにて変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【0097】
次に、本発明の第8の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器を、図8に基づいて説明する。図8に示す第8の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器において、図4に示した第4の実施の形態のものと異なる構成要素は変化分検出判定部24である。その他の構成は、図4に示した第4の実施の形態のものと共通である。
【0098】
この変化分検出判定部24は、差分基本波振幅値演算部4より得られたき電線の差分電流の振幅値から第2高調波抑制演算部11にて得られた第2高調波による抑制量を減算し、さらに第3高調波抑制演算部16にて得られた第3高調波による抑制量をも減算して得られた振幅値より変化分ΔIを演算し、このΔIと予め定められた値とを比較して判定を行い、その結果を後段の出力処理側へ渡す。
【0099】
この第8の実施の形態によれば、図4に示した第4の実施の形態の交流き電用ベクトル形継電器に対して、従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算部4にて得られたデータから第2高調波抑制演算部11にて得られた抑制量と第3高調波抑制演算部16にて得られた抑制量とを減算して得られる振幅値データにて変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【0100】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明によれば、フーリエ級数展開を用いずに、ディジタルフィルタ組み合わせることで基本波電流成分を抽出し、他の低次高調波成分を除去する演算を行い、演算負担を軽くしながらも、き電線電流の絶対値の変化がわずかである場合でも位相変化に応動して事故検出し、この事故検出をすれば必要な保護動作を働かせることでき電線を保護することができる。
【0101】
請求項2の発明によれば、き電線に励磁突入電流が通電された時に発生する第2高調波に応じて判定量に抑制をかけて励磁突入電流に対して不要動作することのない交流き電用ベクトル形継電器を得ることができる。
【0102】
請求項3の発明によれば、き電線に電気車両が進入した時に発生する第3高調波に応じて判定量に抑制をかけて電気車両の力行、制動が行われた時に不要動作することのない交流き電用ベクトル形継電器を得ることができる。
【0103】
請求項4の発明によれば、請求項2の発明と請求項3の発明とを組み合わせたことにより、差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第2高調波抑制演算手段にて得られた第2高調波抑制量を減算し、さらに第3高調波抑制演算手段にて得られた第3高調波抑制量をも減算して得られる振幅値を予め定められた値と比較して判定を行うので、き電線に励磁突入電流が通電された時に不要動作することがなく、さらにき電線に電気車両が進入した時にも不要動作することのない交流き電用ベクトル形継電器を得ることができる。
【0104】
請求項5の発明によれば、請求項1の発明の交流き電用ベクトル形継電器に対して、前述の従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算手段にて得られた振幅値データより変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【0105】
請求項6の発明によれば、請求項2の発明の交流き電用ベクトル形継電器に対して、前述の従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第2高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値データにて変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【0106】
請求項7の発明によれば、請求項3の発明の交流き電用ベクトル形継電器に対して、前述の従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第3高調波抑制演算手段にて得られた抑制量を減算して得られる振幅値データにて変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【0107】
請求項8の発明によれば、請求項4の発明の交流き電用ベクトル形継電器に対して、前述の従来技術に記載の電流の絶対値の変化で判定を行う変化分検出継電器の機能も兼ね備えたものとなり、差分基本波振幅値演算手段にて得られたデータから第2高調波抑制演算手段にて得られた抑制量と第3高調波抑制演算手段にて得られた抑制量とを減算して得られる振幅値データにて変化分ΔIを演算し、このΔIを予め定められた値と比較して判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第2の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の第3の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図4】本発明の第4の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図5】本発明の第5の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図6】本発明の第6の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第7の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図8】本発明の第8の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図9】従来の電流変化分検出方法の原理を説明する回路図。
【図10】図9の等価回路におけるき電線電流とその変化分電流の応動を示すグラフ。
【符号の説明】
1 サンプルホールド部
2 差分電流演算部
3 差分基本波フィルタ部
4 差分基本波振幅値演算部
5 比較判定部
6 基本波フィルタ部
7 基本波振幅値演算部
8 第2高調波フィルタ部
9 第2高調波振幅値演算部
10 第2高調波含有率演算部
11 第2高調波抑制演算部
12 比較判定部
13 第3高調波フィルタ部
14 第3高調波振幅値演算部
15 第3高調波含有率演算部
16 第3高調波抑制演算部
17 比較判定部
18 比較判定部
21 変化分検出判定部
22 変化分検出判定部
23 変化分検出判定部
24 変化分検出判定部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9